« 日米株価1万ポイント割れと今後の経済政策 | トップページ | 短期景気回復・中期財政再建を目標に定めよ »

2009年10月31日 (土)

臨時国会論戦の焦点と鳩山政権の対応

10月26日に召集された鳩山政権下での初めての臨時国会で、鳩山由紀夫首相の所信表明演説に対する代表質問が行われた。鳩山首相をはじめ鳩山内閣の閣僚は官僚が用意した原稿を棒読みすることなく、自らの言葉で答弁に立ち、国会の光景が大きく変化した。

野党に転落した自民党は、民主党を攻撃しようと躍起になっているが、効果的な追及を示せずにいる。10月25日の参議院補欠選挙でも民主党は2勝を確保し、高い国民の支持に支えられて順調な滑り出しを示している。

政権が発足してまだ一月半しか経過していないが、鳩山政権は多くの新基軸を提示している。ダム建設凍結などは、これまでの長い年月の歴史的経緯を覆す新方針であるだけに、政策実施にあたっては、地域住民や地方自治体関係者の同意を得るための慎重な手続きが必要になる。

前原国交相の対応には、拙速な面が存在し、調整が難航することも予想されるが、新政権を支持する国民は、大きな変革には大きな軋轢(あつれき)が生じることを覚悟しなければならないことを再認識するべきである。

国会論戦と国会論戦に対するマスメディアの対応に関連して、以下の三点を考察することが求められる。

第一は、2010年度予算編成に関する論議である。鳩山政権の2010年度概算要求が95兆円を突破したことについて、メディアが「ばらまき」批判を展開している。しかし、本ブログで再三指摘しているように、積極財政で財政規模と財政赤字を激増させたのは鳩山政権ではなく麻生政権である。このことを正確に踏まえた論議が求められる。

第二は、沖縄普天間基地移転問題に関する鳩山政権閣僚の発言に相違が見られることについて、メディアが鳩山政権を批判していることだ。沖縄県民の戦争被害、基地負担は想像を絶するものである。鳩山政権はこの現実をしっかりと見すえて、最善の着地点を見出そうとしている。結論が簡単に出ないのはそのためである。安易に結論を得ることよりも、最善の努力を注ぐことの方が適正な姿勢であると言える。

第三は、2010年度予算編成に向けての事業仕分けのプロジェクトチーム編成に、民主党の小沢一郎幹事長が意見を示し、メンバーが変更になったことについて、メディアが小沢幹事長批判を展開していることだ。小沢一郎氏は総選挙での民主党亜圧勝の最大の功労者である。政権交代実現後に大きな発言権を維持するのは当然である。鳩山政権の閣僚が小沢幹事長と連絡を密にすることは当然の責務であり、根回し不足から問題が生じたのなら、批判されるべきは小沢氏ではなく当該閣僚ということになる。

国会論戦を視聴するに際しては、こうした基本を踏まえておくことが必要である。沖縄の基地問題は日米外交の懸案事項であり、解決は容易ではない。自民党政権がキャンプシュワブへの移転で米国政府と合意してしまっているために解決が困難になっている。

キャンプシュワブ地域の自然資源はかけがえのないものであり、沖縄県の住民が自然環境保護を求めるのは当然のことである。辺野古地域の自然を破壊せずに済ませる方策を、最後まで追求することは正しい行動である。

嘉手納基地への時限を切った統合案も十分に検討に値する。来年早々に名護市長選が予定されている。市長選の結果を踏まえたいとの鳩山首相の意向も理解できるものである。オバマ大統領の訪日が予定されており、この問題の決着が迫られているが、沖縄の人々の意向を最大限尊重して、最善の結論を得ることが求められている。

2010年度予算編成に関しては、財政政策が日本経済の再悪化の引き金を引かないための配慮が強く求められる。予算規模が102.5兆円になり、財政赤字=国債発行金額が50兆円を突破するのは麻生政権の責任である。

鳩山首相をはじめとする鳩山政権の国会答弁で、この点が明らかにされていることは望ましいことである。鳩山政権はこの点を分かり易く国民に説明し、2010年度予算編成についての国民の理解を得なければならない。

マスメディアの誘導によって、橋本政権や小泉政権が犯した財政デフレの失敗を繰り返してはならない。

マスメディアは引き続き小沢一郎氏に対する攻撃を続けている。小沢氏の政治的力量が強く警戒されていることの表れである。小沢氏は2010年夏の参院選に照準を定め、鳩山政権による日本政治刷新を推進するための環境整備に力を注いでいる。

 11月2日からは、いよいよ予算委員会での論戦が開始される。鳩山政権閣僚は、マスメディアの攻撃をものともせずに、分かり易い言葉で新しい政策、新しい思想と理念を語って欲しい。日本政治刷新によって国民生活は飛躍的に改善されるのである。鳩山政権の検討を強く期待する。

意義のある政治刷新であっても、国会での多数議席がなければ実現させることができない。国会における数は、それ自体が目的ではないが、大きな仕事を実現する上での非常に重要な力の源泉になる。小沢一郎民主党代表はこの点のリアリズムを的確に保持しているのである。

 

人気ブログランキングへ

人気ブログランキングへ

売国者たちの末路 Book 売国者たちの末路

著者:副島 隆彦,植草 一秀
販売元:祥伝社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 

知られざる真実―勾留地にて― Book 知られざる真実―勾留地にて―

著者:植草 一秀
販売元:イプシロン出版企画
Amazon.co.jpで詳細を確認する

« 日米株価1万ポイント割れと今後の経済政策 | トップページ | 短期景気回復・中期財政再建を目標に定めよ »

鳩山民主党の課題」カテゴリの記事

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 臨時国会論戦の焦点と鳩山政権の対応:

» 沖縄基地問題への一視点~八重山の片隅より [どなんとぅ ぬ だぁ]
沖縄を語る時にその自然の美しさ気候の通年の穏やかさといったみなさん決まって目を向 [続きを読む]

» 日本のマスコミは戦争屋の手先であり、大衆の敵である [日本を守るのに右も左もない]
『新ベンチャー革命』2009年11月1日「日本の大手マスコミはもはや国民の敵に等しい」の指摘に同意します。 今や日本のマスコミは戦争屋の手先であり、大衆の共認収束に抵抗する完全な反動勢力に他ならない。 いつも応援ありがとうございます。 ...... [続きを読む]

» 「拝啓、小沢一郎様」巻頭言バナー・コピー作者としてのご縁もあるので、雑談日記でも阿修羅アップした確実な小道をご案内します。 [雑談日記(徒然なるままに、。)]
 BBSなどでもWeb版として再び紹介されているようですが、掲示板は栄枯盛衰が極端なので「拝啓、小沢一郎様」への確実なアクセスを雑談日記でもご案内しておきます。  どうも、現在BBS界隈で撹乱者にひっかきまわされている様です。THE JOURNALなどでも紹介されネットで広く知られている「拝啓、小沢一郎様」巻頭言中コピー作者(SOBA制作バナー・コピー、どなんとぅ原文)としてのご縁もありご案内しておくべきと思いました。  左サイドエリアで「↓3・3を機に目覚め起ち上がった人々の感動の書簡集」として小... [続きを読む]

» 鳩山首相の所信表明演説に米軍基地問題の方向を読む [父さんの日記]
オバマ大統領来日を前に、マスメディアは沖縄の普天間基地問題をいかにも日米関係の最 [続きを読む]

« 日米株価1万ポイント割れと今後の経済政策 | トップページ | 短期景気回復・中期財政再建を目標に定めよ »

有料メルマガご登録をお願い申し上げます

  • 2011年10月より、有料メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」の配信を開始いたします。なにとぞご購読手続きを賜りますようお願い申し上げます。 foomii 携帯電話での登録は、こちらからQRコードを読み込んでアクセスしてください。

    人気ブログランキング
    1記事ごとに1クリックお願いいたします。

    ★阿修羅♪掲示板

主権者は私たち国民レジスタンス戦線

  • 主権者は私たち国民レジスタンスバナー

    主権者は私たち国民レジスタンスバナー

著書紹介

サイト内検索
ココログ最強検索 by 暴想
2025年3月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          

関連LINKS(順不同)

LINKS1(順不同)

LINKS2(順不同)

カテゴリー

ブックマーク

  • ブックマークの登録をお願いいたします
無料ブログはココログ