マスメディアの歪んだ情報操作に警戒が必要
鳩山新政権の初めての予算編成となる2010年度予算の概算要求が改めて実施された。2009年度当初予算が88.5兆円の規模であったのに対して鳩山新政権の2010年度概算要求額は95兆円を突破した。
朝日、読売、日経、産経各グループは、懸命に鳩山新政権批判を展開しているが、公正さを欠く論評は有害無益である。
本ブログでも繰り返し指摘してきたが、第二次大戦後の日本政治には米国が不正な内政干渉を繰り返してきた。その内政干渉には米国の情報・諜報機関であるCIAが深く関与してきた。
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1946年の吉田茂内閣発足、47年から48年にかけての片山哲内閣、芦田均内閣崩壊、吉田茂内閣への回帰には米国の意志が働いていた。米国は1954年に発足した鳩山一郎内閣に対する強い警戒感を保持し、56年末に発足した石橋湛山内閣をさらに警戒した。
米国は岸信介内閣発足を支援し、岸内閣の解散総選挙を支援した。明らかな内政干渉が実施された。
日本の国民が総選挙を通じて鳩山新政権を発足させたにもかかわらず、日本のマスメディアは主権者である国民の意志を尊重していない。2005年9月の総選挙後、小泉政権万歳を繰り返したマスメディアは、今回の総選挙後に鳩山政権万歳の報道をまったく展開していない。
新潮、文春も下品な鳩山政権批判を繰り返している。これらの異常なマスメディアの背景に大きな力が働いていることを、十分に認識しなければならない。
日本テレビ系列番組で、太田光氏は必死の形相で民主党攻撃を展開しているが、論理性を完全に欠いた主張には「マスゴミ」以外の名称を考えつかない。主権者である国民は、この番組でアジテートする三流、四流の出演者の醜悪(しゅうあく)な主張の誤謬(ごびゅう)を見抜いて、冷静さを失わないように留意しなければならない。
太田光氏、金美齢氏の発言はあまりにも下品である。金美齢氏は自民党が大好きで民主党が大嫌いなのだろう。大好きな自民党が大惨敗して平常心を失っているのだろうが、冷静さのかけらも示さないアジ演説を繰り返すほど、自民党の苦しさが増大する現実を踏まえるべきだと思われる。
自民党が少数野党に転落し、「政官業外電の悪徳ペンタゴン」が狼狽(ろうばい)するのはよくわかる。しかし、公共の電波を利用して、不公正極まりない番組を編成して垂れ流すことは、許されざることである。
民主党が総選挙に際してマニフェストに掲げ、2010年度に実行しようとしている政策として、子ども手当、高校授業料無償化、高速料金無料化、農家個別所得補償が提示されている。
鳩山新政権は責任をもってこれらの施策を2010年度に実行しようとしている。頼もしいとしか言いようのない姿勢である。これらの施策を盛り込んだ概算要求の規模が95兆円を突破したことを、三流の論者は批判するが、見当違いも甚だしい。
麻生政権は2009年度が始まる前に14兆円もの巨大な規模の補正予算を編成して、衆議院の多数の力だけで成立させた。2009年度の一般会計予算は103兆円規模に膨張したのである。この補正後予算の規模と比較すれば、2010年度当初予算の規模は大幅に縮小したものになる。
財政赤字の拡大を問題にするなら、批判の対象には鳩山政権でなく、14兆円規模の2009年度補正予算を編成した麻生政権の行動があてられなければならない。偏向マスメディアは麻生政権のバラマキ補正予算編成をまったく糾弾しなかった。そのマスメディアが、鳩山新政権が発足した途端に、財政収支に目くじらを立て始めるのは滑稽としか言いようがない。
また、2010年度予算の規模を経済学的に論じるためには、2009年度補正後予算と比較しなければ意味がない。2009年度補正後予算が大膨張した以上、不況下の2010年度に予算規模を急減させる選択肢は存在しない。
また、2009年度予算で麻生政権が国税収入を46兆円と見積もったが、この見通しが40兆円水準に下方修正される可能性が浮上している。税収が減少すれば財源を調達しなければならない。見かけ上、国債増発を避けるなら埋蔵金を活用すればよいが、会計の透明性の視点からは国債を増発する方が健全とも言える。
2001年度は小泉首相が30兆円の国債発行枠の公約を守るために、本来33兆円規模に拡大した国債発行を、粉飾処理によって見かけ上、30兆円に圧縮した。この例に従うなら、鳩山政権が財源不足を埋蔵金で賄い、見かけ上の財政赤字を増加させない手法も検討されておかしくない。マスメディアが本質を見ないで、ヒステリックな新政権批判を展開するなら、この方法も検討せざるを得ないだろう。
いずれにせよ、税収見積もりを誤ったのは麻生政権であり、この責任を鳩山政権に帰すのは筋違いも甚だしい。金美齢氏は公共の電波を使って筋違いのアジ演説を展開するべきでない。このような低レベルの出演者に筋の通らない発言を許すこと自体、公共電波の濫用と言わざるを得ない。
八ツ場ダム建設中止方針を打ち出した前原国交相の問題処理に向けての手順には改善の余地が大いにある。中止方針を示す前に地元との会合を経なければ、収まるものも収まりにくくなってしまう。
しかし、50余年継続した自民党政権が崩壊し、まったく存立基盤を異にする新政権が樹立されたのであるから、政策は大転換するのが自然である。地元の住民がダム建設を前提に生活設計を立ててきたために、突然の中止方針に狼狽(ろうばい)するのは無理もない。しかし、政権交代が実現した以上、旧政権の下での方針を盾にしての主張には自ずから限界がある。
聞きわけなく自己主張だけを展開しても主権者である国民全体の賛同は得られない。鳩山新政権は地元住民や地方自治体への補償措置を適切に策定した上で、着地点を見出す行動を遅滞なく進展させるべきだ。
地元の住民も、現実の変化から目をそらすことなく、事態収拾に向けて前向きの対応を示す必要がある。
鳩山新政権発足後の新政権の政策対応に大きな問題は存在しない。にもかかわらず、マスメディアが公共の電波等を濫用して、鳩山政権を攻撃する無理な世論誘導を図ろうとしていることは、常軌を逸している。鳩山新政権は、こうした意味でのマスメディアの暴走、公共電波の私物化に対して、腰を上げる必要があると思われる。
米国諜報機関の存在を認識し、マスメディア論調が操作されていることについて、主権者である国民は、はっきりとした現状認識を持たねばならない。マスメディア報道に流されては、政権交代の歴史的偉業の足元がすくわれることが生じないと言い切れなくなる。
読売、朝日、日経、産経の偏向は、日本のマスメディア全体の偏向と言い換えてもよい事象だ。情報空間のゆがみを早期にかつ適切に是正する必要性が急速に高まっている。その役割を活字媒体、ネット媒体が担わねばならない。
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知られざる真実―勾留地にて― 著者:植草 一秀 |
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