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2009年10月20日 (火)

日本郵政西川社長解任の方向が明らかになった

鳩山内閣は10月20日の閣議で郵政改革の基本方針を閣議決定し、郵政事業を抜本的に見直す「郵政改革法案」(仮称)を次期通常国会に提出し、成立を目指す方針を明確にした。

また、民主、社民、国民新3党の連立政権は郵政民営化を見直すため、日本郵政傘下のゆうちょ銀行、かんぽ生命保険および持株会社である日本郵政の株式売却を凍結する法案を臨時国会に提出する見通しである。

小泉政権以来の郵政民営化路線に反対する亀井郵政担当相は、西川氏に自発的な辞任を求めてきたが、日本郵政の西川善文社長(71)が辞意を固めたことが報道されている。郵政民営化の見直しを政権公約に掲げ、自発的辞任を求める政府の意向を受け入れたとみられる。28日の日本郵政の取締役会までに正式に辞任を表明する見通し。

小泉竹中政権が実行した郵政民営化が、ようやく根本から修正されることになった。これも政権交代実現の大きな成果である。小泉竹中政権が実行した郵政民営化は、典型的な売国政策であった。郵政民営化の具体的手法は米国政府の意向を反映し、「米国の米国による米国のための民営化」であったと考えられる。

350兆円存在した国民資金と日本郵政が保有する膨大な一等地不動産を収奪する巨大な「売国プロジェクト」が「改革」の美名の下に推進されたのである。

郵政の特定郵便局ネットワークは、日本の津々浦々に張り巡らされ、地方に在住するすべての国民にユニバーサルな金融サービスを提供すると同時に、地域コミュニティーの核としての役割を果たしてきた。

巨大な国民資金と一等地不動産の収奪を目的とする外国資本にとって、特定郵便局ネットワークが提供するユニバーサル金融サービスと地域コミュニティー機能提供は単なるコストであり、邪魔な存在であった。

「郵政民営化」の名の下に、ユニバーサル金融サービス提供が破壊され、地域コミュニティーの核としての特定郵便局ネットワークは破壊される運命を着実に辿り始めていた。鳩山新政権の発足は、この流れに明確にNOを突き付けたのである。

2009年前半に表面化した「かんぽの宿疑惑」は郵政民営化の実相を端的に示す分かりやすい事例であった。郵政民営化の細目を決定した竹中平蔵氏は郵政民営化の総指揮者に西川善文氏を起用した。同時に、2005年10月に成立した郵政民営化法に「かんぽの宿売却規定」を潜り込ませた。

「かんぽの宿」疑惑の本質を探る淵源は、2002年12月11日のゴールドマン・サックス会長ヘンリー・ポールソン氏、同社長ジョン・セイン氏、三井住友銀行頭取西川善文氏、金融相竹中平蔵氏4名による密会にある。

5月23日付記事

「日本郵政西川社長続投論を覆う黒い霧」

の記述を転載する。

「二つの視点から問題を見つめる必要がある。

第一は、竹中平蔵氏と西川善文氏の個人的な接点において決定的に重要だと考えられる出来事が、2002年12月11日の密会であることだ。この日まで、西川氏は反竹中金融相の急先鋒(きゅうせんぽう)と言える存在だった。

ところが、12月11日の密会を境に、西川氏は竹中氏との蜜月時代に移行した。この密会こそ、秘密を解く鍵を握る。

第二の視点は、菅義偉氏が2005年11月に総務副大臣に就任し、その後、2006年9月に総務相に就任した事実である。2005年11月は竹中氏が総務大臣に就任した時期である。竹中氏は「郵政民営化」=「郵政私物化」=「郵政米営化」プロジェクトを実行するパートナーに菅氏を選任したのだと考えられるのだ。

第一の視点について内容を補足する。この会合は、米国投資銀行ゴールドマン・サックスのCEOであるヘンリー・ポールソン氏、同COOであるジョン・セイン氏と、西川善文氏、竹中平蔵氏の4名による密会であった。

この後、ゴルードマン・サックスは三井住友銀行に5000億円のファイナンスを実施した。三井住友ファイナンシャルグループは、このファイナンスを契機に、限りなくゴールドマン・サックスの影響を受けることになる。

このことについて、読売新聞の渡邉恒雄氏は『文藝春秋』2009年1月号に、次のように証言している。

「僕は竹中さんから直接聞いたことがあるんだが、彼は「日本の四つのメガバンクを二つにしたい」と明言した。僕が「どこを残すんですか?」と聞くと、「東京三菱と三井住友」だと言う。あの頃はまだ東京三菱とUFJは統合していなかったんだが、「みずほとUFJはいらない」というわけだ。どうして三井住友を残すのかというと、当時の西川善文頭取がゴールドマン・サックスから融資を受けて、外資導入の道を開いたからだと言う。「長銀をリップルウッドが乗っ取ったみたいに、あんなものを片っ端から入れるのか」と聞くと、「大丈夫です。今度はシティを連れてきます」と言った。今つぶれかかっているシティを連れてきて、日本のメガバンクを支配させていたらどうなったか、ゾッとする。」
(この部分は「文藝春秋」からの引用)

三井住友グループによる日本郵政支配は、その裏側にあるゴールドマン・サックスによる日本郵政支配の図式のなかで捉えなければならないのだ。これが第一の視点である。

 第二の視点は、菅義偉(すがよしひで)氏の役割である。

 菅氏は2006年9月に総務相に就任し、翌2007年3月に日本郵政公社総裁の生田正治氏を解任している。生田氏を排除して、西川氏による日本郵政公社支配を生み出した。西川氏は日本郵政公社総裁職を兼務したのちに、2007年10月に発足した持株会社としての日本郵政社長に就任した。

 日本郵政はこれまで指摘してきたように、財界による日本郵政私物化を絵に描いたような人事を実行した。日本郵政プロパー職員、日本郵政サービス利用者、生活者が取締役に一人も登用されない、異様な姿での出立であった。

 また、日本郵政公社時代の日本郵政保有不動産のバルク売却の不透明性も表面化している。旧郵政公社時代の所管大臣が竹中平蔵氏と菅義偉氏である。」

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 また、6月15日付記事

「内閣支持率急落・西川社長続投反対の世論調査」

に以下の記述を示した。

「2002年12月11日の密会は重要である。6月14日付記事から、重要事項を転載する。

「2002年12月11日、ゴールドマン・サックスのCEOヘンリー・ポールソン氏、COOジョン・セイン氏、三井住友頭取西川善文氏、金融相竹中平蔵氏が東京で密会した。

この後、ゴールドマン・サックスから三井住友銀行に対して、2003年1月に1500億円の普通株への転換権付き優先株出資、2月に3500億円の優先株出資が行なわれた。

ゴールドマン・サックスの1500億円優先株には4.5%の配当利回りが付与された。当時、みずほ銀行が実施した優先株資金調達での配当利回りは2%であったから、4.5%の利回り付与は法外なものだった。

三井住友銀行がなぜ、このような国辱的な条件を付与するのか、金融市場ではさまざまな憶測が飛び交った。

仮の話であるが、竹中金融相が三井住友を破綻させないことを保証していたとすれば、大筋の説明を付けることができる。

①三井住友は高いコストを払うが、銀行存続の確約を手に入れる

②ゴールドマンは三井住友の破たん回避を保証されるとともに、法外に高い利回りを確保する。 

③竹中平蔵氏は両者から「感謝」される。 

これを「三方一両得」と言う。 

「郵政民営化」は、「ゴールドマン-竹中氏-西川善文氏-三井住友」の図式の中で推進されているプロジェクトと見るべきだろう。」

西川社長の行動は三井住友銀行に損害を与える行動であった可能性がある。

竹中平蔵氏がどのように「感謝」されたのかも問題になる。」

 さらに、本ブログ5月1日付記事

「かんぽの宿不正売却で西川善文氏引責辞任へ」

などに記述したように、

①郵便局会社が取り扱う第三分野保険で、アフラックのがん保険とともに住友生命の医療保険が選ばれた

②変額個人年金保険で、住友生命、三井住友海上メットライフ生命が選ばれた

③ゆうちょのカード事業で、三井住友カードが選ばれた

④従業員持ち株会の幹事証券業務に大和証券SMBCが選ばれた

など、日本郵政が三井住友ファイナンシャルグループを優遇してきたとの疑いを裏付ける事実が明らかにされている。

 これ以外に

⑤メリルリンチ日本証券が不自然な選考過程を経てアドバイザーに選任された

⑥「かんぽの宿」売却に際し、社宅9件が簿価を下回って売却されようとした

⑦博報堂とのCM関連一括契約に関する疑惑

⑧メリルリンチ日本証券が3回にわたって「かんぽの宿」売却凍結提案をしたのに無視された問題

などが指摘されている。

また、住友グループ企業関係者が日本郵政グループ幹部に多数配置されてきた。

日本郵政
執行役副社長  寺阪元之(元スミセイ損保社長)
常務執行役   妹尾良昭(住友銀行、大和証券SMBC)

郵便局
代表取締役社長 寺阪元之(元スミセイ損保社長)
専務執行役   日高信行(住友海上火災)
常務執行役   河村 学(住友生命保険)

ゆうちょ銀行
執行役副社長  福島純夫(住友銀行、大和証券SMBC)
常務執行役   向井理奇(住友信託銀行)
常務執行役   宇野 輝(住友銀行、三井住友カード)
執行役     村島正浩(三井住友銀行)

「かんぽの宿」売却先決定は、西川社長直属の特命チームが担当した。このラインは以下の通り。

日本郵政取締役代表執行役社長 西川善文
同専務執行役 横山邦男
同執行役   伊藤和博

 「かんぽの宿疑惑」は2400億円を投じ、時価が1000億円規模の国民財産を不正な方法で、オリックスに100億円で横流ししようとした巨大経済犯罪疑惑である。

 「かんぽの宿」の簿価がオリックス不動産への安値売却に向けて、無理やり引き下げられていった経緯も明らかにされつつある。

 鳩山政権の誕生によって、日本郵政の深い闇、かんぽの宿疑惑に本格的なメスが入れられる可能性が高まった。

現在の日本郵政取締役および指名委員会委員は下記の通りだ。

日本郵政取締役

代表取締役 西川 善文(にしかわ よしふみ)

代表取締役 高木 祥吉(たかぎ しょうきち)

社外取締役 牛尾 治朗(うしお じろう)
ウシオ電機株式会社代表取締役会長

社外取締役 奥田 碩(おくだ ひろし)
トヨタ自動車株式会社取締役相談役

社外取締役 西岡 喬(にしおか たかし)
三菱重工業株式会社相談役

社外取締役 丹羽 宇一郎(にわ ういちろう)
伊藤忠商事株式会社取締役会長

社外取締役 奥谷 禮子(おくたに れいこ)
株式会社ザ・アール代表取締役社長

社外取締役 高橋 瞳(たかはし ひとみ)
青南監査法人代表社員

社外取締役 下河邉 和彦(しもこうべ かずひこ)
弁護士

日本郵政の指名委員会メンバーは以下の通り。

委員長 牛尾 治朗(うしお じろう)

委員  西川 善文(にしかわ よしふみ)

委員  高木 祥吉(たかぎ しょうきち)

委員  奥田 碩(おくだ ひろし)

委員  丹羽 宇一郎(にわ ういちろう)

 国民財産である日本郵政が自民党政権と密着してきた財界人に占拠されている。この人事構成を刷新することが郵政改革の第一歩である。

 日本郵政社長および取締役には、主権者である国民および地域住民の利益を代表する人材を登用するべきである。日本郵政公社常務理事を務めながら、郵政民営化方針に異議を唱えて職を辞した稲村公望氏を軸に後継社長人事を検討するべきだ。

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