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2009年8月16日 (日)

麻生首相が強調する景気回復重視の欠陥

7月22日付本ブログ記事再掲載

麻生政権は、「景気回復」を1枚看板に掲げる気配を示している。

 民主党を軸とする野党連合勢力は、この点に対する理論武装を急ぐべきである。

 麻生政権が売り込もうとするポイントは以下の通り。

①100年に1度の危機に対して、麻生政権は「政局より政策」で対応した。

②「全治3年」に見通しを示し、順調に改善が見られている。

③補正予算、本予算の4本の予算を成立させた。

④IMFの2010年成長見通しでは、日本の成長率が1.7%とされ、先進国で最も高くなる。

⑤8月17日に発表される2009年4-6月期GDP統計で高成長が発表される。

 このアピールにどう対応するか。

 麻生政権は、3度の補正予算でどれだけの追加財源を調達したか。

2008年度第1次補正予算  1.1兆円

2008年度第2次補正予算 11.9兆円
(歳出予算の増額規模は4.8兆円)

2009年度第1次補正予算 13.9兆円

合計            26.9兆円

麻生政権は3度の補正予算編成で、追加財源として27兆円もの真水を調達した。国債の増発が18.7兆円、埋蔵金の利用が7.6兆円である。

GDP比5%を超す史上空前のバラマキ予算が編成された。これだけの巨額の国費をバラマいて、経済が底入れしない訳がない。

 2009年7‐9月期GDP成長率は、経済崩壊の反動で高めの数値になる。この発表日が総選挙公示日前日の8月17日に意図的に設定された可能性がある。この「からくり」をあらかじめ指摘しておくべきだ。

 麻生政権は8月17日のGDP統計を最大限に活用すると考えられる。御用メディアも最大限の援護報道を展開するだろう。しかし、1四半期の成長率数値は振れが大きく、この数値を景気の基調判断に用いるのはミスリーディングである。

 また、IMFは2010年の日本経済の成長率を1.7%としたが、2009年の成長率見通しをマイナス6%としている。2009年のマイナスが大きい分だけ、2010年のプラスが大きくなるだけに過ぎない。両者を合わせても、まだ大幅マイナスである。

 鉱工業生産指数は2008年2月から2009年2月にかけて、36.9%も激減した。戦後最悪の景気崩壊だった。生産水準が4割近くも落ちたのだ。

 この生産指数が本年5月に79.1に回復した。13.8%も反発した。企業が生産を極限まで減少させた結果、在庫が減少し、増産に転じただけだ。

 生産指数は昨年2月には110.1だった。昨年2月を100とすると、まだ72の水準にしか戻っていない。景気の落ち込みがあまりにも激しかったから、大底から少し水準が上がったものの、生産水準は昨年2月よりも3割も低いのだ。

 3割も低いということは、依然として、深刻な失業、倒産、所得減少が持続していることを意味する。とても「景気回復」などと呼べる代物でない。

補正予算を3度も編成したのは、麻生政権が経済金融の見通しを誤ったためである。対応が遅れ、補正予算の規模が大きくなった。最後の補正予算は2009年度の補正予算である。

本予算を審議している間に補正予算を編成し、14兆円もの追加補正を行なった。当初の見通しがいかに甘かったかを示している。麻生政権が早い段階で迅速に抜本対応を示していれば、日本経済の悪化はもっと軽微にとどまったはずである。

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 より重要な問題は貴重な国費の使い方である。麻生内閣は14兆円もの国費を投入した2009年度補正予算で、

公的部門の施設整備費に2.8兆円、

58の政府の基金に4.6兆円

の国費を投入した。

また、

役所の公用車購入1万5000台=588億円、

役所等の地デジ対応テレビ購入7万1000台=71億円、

の予算を計上した。

大盤振る舞いの補正予算で、役人が使用する公共施設に巨額を注ぎ込んだ。

マンガ・アニメの殿堂には建設費だけで117億円が用意される一方、

生活保護の母子加算200億円は切り込まれたままにされた。

役人お手盛り予算満載と、「エコカー」、「エコ家電」支援策などの経団連企業への巨大補助金政策を軸とする補正予算である。

「弱い者から吸い上げて強い者にばらまく」政策の典型例である。

民主党長崎2区候補者福田えりこさんが指摘する、

①失業者の生活保障、非正規労働者のセーフティネット整備、

②高齢者の介護、医療体制整備、

③子育て・教育費助成、

④障害者自立支援法改正、

⑤後期高齢者医療制度廃止、

⑥消えた年金修復事業の早期完結、

⑦生活保護強化、

などの施策には、ほとんど対応が示されなかった。

 27兆円もの資金を投入すれば、誰でも景気改善を実現できる。GDPの5%を超える規模だからだ。問題は、貴重な国費をどの分野に投入し、どのようなプロセスで日本経済、国民生活を支えるのかである。

 自民党は民主党の政策について、財源論が不明確だと批判するが、1年間で27兆円もの借金や埋蔵金活用で景気対策を実行することが容認されるなら、民主党の財源論は、はるかに「骨太」である。

 自民党が「景気回復」に軸足を置くと主張するなら、

民主党も「財源確保を意図的にやや遅らせて、赤字になる分を景気支持に充当する」と答えれば十分である。

 財政政策と景気対策との関係では、短期的に発生する「赤字部分」がイコール「景気支持分」になるからだ。

 自民党が「景気対策優先」と述べていることは、そのまま、短期的には「財政赤字拡大を容認している」ことに他ならない。1年に27兆円も財政赤字を拡大させている政党に、民主党の財源論を批判する資格はない。

 麻生政権は3度の補正予算編成で、19兆円の国債増発、8兆円の埋蔵金で景気対策を打ち出したのである。

民主党は予算組み替えで、無駄な支出、必要度の低い支出をカットして、国民生活に直結する分野に支出をシフトしようとしている。国民生活支援の支出予算を先行実施すれば、予算の組み替えが完了するまでの間、財政赤字が多少拡大する可能性はある。

しかし、その財政赤字を景気支援策に位置付ければ良い。27兆円もの国費を役人と大企業お手盛り予算にばらまく一方、そのツケを大衆増税である消費税大増税に求める方が、はるかに無責任な財政運営である。

マスメディアは自民党と結託して民主党の財源論を攻撃するキャンペーンを展開しているが、自民党のバラマキ財政に対する適正な分析が求められる。

民主党は国民生活支援の財政支出政策実施と財源確保のタイムラグによって生じる差額を、景気支持策と位置付けるべきで、この視点を加味して、政策プログラムの実施時期を弾力的に検討する方針を示すべきである。

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