郵政私物化・郵政米営化勢力と渡辺喜美新党
6月20日付本ブログ記事再掲載
延長国会の焦点であった税制改正法、改正国民年金法、海賊対処法は6月19日、衆院本会議でいずれも与党などの三分の二以上の賛成多数でで再可決され、成立した。麻生内閣の下での衆議院再可決による法律成立は8回目。
野党が過半数を占める参議院の意向は無視され続けている。国民の意志の半分が否定され続けている状況で、できるだけ早期に衆参ねじれを解消する必要がある。
26日には補正予算関連2法案が再可決される見通しで、今次通常国会の重要法案処理がほぼ完了する。
衆議院で可決された臓器移植法案、船舶検査法案、公務員改革法案などが残されており、とりわけ臓器移植法案と船舶検査法案については、今国会での成立を求める声が強い。この二法案の取り扱いが焦点として残存するが、いよいよ国会は会期末を迎え、解散総選挙の日程に関心が集まる。
7月5日に静岡県知事選、7月12日に東京都議会選が予定され、7月8-10日にはイタリア・ラクイラでサミットが開催される。
麻生内閣の支持率が急落しているため、自民党内では総選挙を先送りしたいとの意向が強まっている。総選挙の動向を占う前哨戦として東京都議会選があるため、都議選で自民党が敗北する場合には、9月に任期満了を迎える自民党総裁の改選を前倒する論議が沸騰すると予想される。
7月12日の東京都議選では自民党の苦戦が予想されている。したがって、麻生首相が自身の手で衆議院を解散し総選挙に臨むには、東京都議選前に衆議院解散を決断するしかないとの見方が強まっている。
1991年11月に首相の座を退いた海部俊樹氏は解散権行使を掲げながら自民党の反対に直面し、解散権を封じ込められた。
麻生首相が同様に解散権を封殺されるのかが注目される。
麻生首相が自分の手で解散、総選挙を実施することを重視するなら、7月2日解散を選択するだろう。日本郵政西川社長続投人事で、麻生首相は西川氏を更迭すれば、麻生おろしを本格化させるとの脅しを受け、この脅しに屈服して鳩山総務相を斬ったのだと考えられる。
「郵政××化ペンタゴン」は、西川氏続投を容認すれば麻生おろしを封じるとの「保証」を麻生首相に伝えたと見られるが、このような約束はいつでも反故にされる。2001年の自民党総裁選では、亀井静香議員が総裁選後の条件を確約されたうえで小泉純一郎氏支持に回ったが、小泉氏は総裁に就任すると直ちに約束を反故にした。すさんだ世界である。
東京都議選で自民党が敗北すれば、麻生氏は必ず首相の座から引きずり降ろされるだろう。このとき、麻生首相には衆院解散に進む大義名分がない。
したがって、麻生首相は7月2日解散・8月2日総選挙の道を選ぶ可能性が高いと考えられる。野党は7月2日までに重要法案の処理が完了するように協力するべきだ。
このなかで、野党による内閣不信任案国会提出の可能性が浮上している。自民党内からの造反が期待されるとともに、仮に内閣不信任案が否決されれば、内閣は信任されたことになり、麻生おろしが正統性を失う。自民党は麻生体制で総選挙に臨まなければならないことになる。
総選挙に向けての野党の警戒要因を、
6月18日付記事
「西松事件初公判と政権交代実現への課題」
6月19日付記事
「アクセス解析と政権交代実現へのネット力結集」
に記述した。
三つの警戒要因とは、
①警察・検察権力の政治利用
②偽装CHANGE勢力などを用いた野党票分断工作
③野党共闘のほころび
である。
ここでは、②偽装CHANGE勢力を用いた野党分断工作について記述する。
静岡県知事選は6月18日に告示され、
民主党・社民・国民新党推薦で前静岡文化芸術大学長の
川勝平太氏(60)
に対し、
無所属で元民主党参院議員の海野徹(60)、
共産党公認で党県委員会常任委員の平野定義(59)、
自民・公明推薦で前自民党参院議員の坂本由紀子(60)
が立候補し、4名で争われることになった。
単純な与野党激突選挙ではない。
元民主党参議院議員の海野徹氏の応援に、渡辺喜美衆院議員が駆け付けた。自民党元幹事長の中川秀直氏は日本郵政西川社長更迭問題で麻生首相を批判したが、西川氏が更迭されれば徹底的に闘うとの姿勢を示した。「闘い」のなかには新党結成も含まれると理解された。
中川秀直氏、小泉純一郎氏、竹中平蔵氏、菅義偉(すがよしひで)氏、石原伸晃氏の「郵政××化ペンタゴン」が、西川社長の続投をごり押しした。日本郵政取締役等選任の認可権は総務大臣に付与されており、上記ペンタゴンの面々には何の権限もない。
取締役選任案を作るのは「指名委員会」、日本郵政内部での原案を決定するのは「取締役会」だが、この意志決定において株主の意向を踏まえることは当然のことだ。
日本郵政は株式の100%を政府が保有する「完全国有会社」である。社長人事、取締役人事などの企業経営の根幹にかかわる事案の決定について、取締役会が株主である政府の意向を踏まえることは当然の責務であった。しかし、日本郵政の取締役会はこの責務を果たしていない。
政府の意向を反映しない日本郵政指名委員会や取締役会の決定に所管大臣である鳩山総務相が異論を唱えるのは当然のことで、この鳩山総務相を斬って、政府の意向を無視した日本郵政取締役会の決定をそのまま容認した麻生首相は、もはや首相としての統治能力を完全に失っていると言わざるを得ない。
日本郵政取締役人事に不当な横やりを入れたのが上記「郵政××化ペンタゴン」である。これらの人々が、なぜ、西川社長続投をごり押ししたのか、その背景を探ることが重要だ。
一番大切なポイントは「かんぽの宿」疑惑をどのように評価するかだ。西川社長続投擁護派は、「かんぽの宿」疑惑の重大性を否定しようとする。その根拠は以下の通りだ。
①「かんぽの宿」は年間40~50億円の赤字を垂れ流している。
②雇用維持条件が付されており、109億円は安すぎる価格でない。
③オリックス不動産選定のプロセスは通常のM&Aの手法によるものである。
「かんぽの宿」問題の概要については6月15日付記事
にまとめて記述したので参照いただきたいが、上記の三つの反論はいずれもまったく説得力を持たない。
「かんぽの宿40~50億円の赤字」は偽装された数値である。国会では、まずこの数値を徹底的に解明するべきだ。「かんぽの宿」は2008年時点ですでに2009年以降の黒字化が見込まれていたのである。
また、竹中平蔵氏がいう「コア事業でないから売却」の方針は、日本郵政が不動産事業に本格進出する方針と完全に矛盾する。
雇用維持条件は3200名のなかの550名について、1年限り雇用条件を維持するとのもので、また、転売規制にも抜け穴が用意されていた。
オリックス不動産選定プロセスが通常のM&Aの手法と同じとの説明も正しくない。できるだけ高く売却しようとするときに、日本郵政が取ったようなプロセスを取ることはあり得ない。
109億円は固定資産税評価基準額857億円と比較して不当に低い。「かんぽの宿」を黒字化して売却する限り、このような安値での売却はあり得ない。この点は、今後の売却で必ず立証されることになる。
結局、1000億円規模の時価を持つ国民資産が不正な手法を用いて「オリックス」に横流ししようとした悪事が進行していたとの疑いが濃厚に存在するのである。政権交代が実演すれば、適正に検察捜査が実施されることになるだろう。
渡辺喜美氏は、上記の「郵政××化ペンタゴン」と極めて近い関係にある。中川秀直氏は霞が関改革を主張するが、小泉政権が5年半も政権を担当する間、官僚利権を根絶する行動をほとんど示さなかった。
郵政民営化は米国資本による日本収奪の政策として推進されてきたと見なさざるを得ない。「かんぽの宿」は全体からみれば「氷山の一角」の問題だ。
米国資本は300兆円の国民資産、日本郵政保有の巨大不動産をターゲットにしていると考えられる。「郵政民営化」の実態は「郵政私物化」、「郵政米営化」なのである。
先述した「郵政××化ペンタゴン」は、日本郵政経営トップを「インナーサークル」から選出することを最優先事項としているのだ。日本郵政最高幹部に「郵政私物化」、「郵政米営化」を阻止する人物が就任したら、巨大プロジェクトが果実の刈り取り寸前に挫折することになる。
西川社長続投に対する激しい執着は、この理由によるものであると考えられる。
ところが、法律にはこのことが盛り込まれていない。日本郵政への強い権限は時の総務大臣に付与されている。したがって、「郵政××化ペンタゴン」の主張は、完全に歪んだものになっている。
彼らは、竹中平蔵氏が主導した「郵政××化体制」を死んでも手放さないと暴れているだけにすぎない。竹中平蔵氏は鳩山邦夫氏のような、「郵政私物化」や「郵政米営化」の前に立ちはだかる人物が総務大臣に就任することを想定していなかったに違いない。
大騒ぎの末に西川社長続投をごり押ししてはみたものの、この騒動によって、日本郵政を取り巻く黒い霧が誰の目にもはっきりと映ってしまった。
天網恢恢疎(てんもうかいかいそ)にして漏らさず
との老子の言葉をかみしめなければならない。
閑話休題。
中川秀直氏-竹中平蔵氏-菅義偉氏-石原伸晃氏-渡辺喜美氏-高橋洋一氏-屋山太郎氏-武部勤氏、そしてその裏側に控える小泉純一郎氏。これらの人々は皆、同じ穴のむじなである。
「政官業外電の悪徳ペンタゴン」にあてはめると、彼らはそのなかで「政外電の新悪徳トライアングル」を形成している。
これに対して旧来の自民党が「政官業の元祖トライアングル」を形成する。次期総選挙では「政官業の元祖トライアングル」を代表する自民党の別働隊として、「偽装CHANGE」の装いをまとった「政外電の新悪徳トライアングル」が登場する可能性が高い。
静岡県の有権者は、「偽装CHANGE」勢力に惑わされてはならない。この「偽装CHANGE」勢力の使命は、民主党に向かう投票を喰うことにより、「元祖トライアングル」である自民党候補者の当選に貢献することにあると考えられる。
選挙が終われば「政官業の元祖トライアングル」と「政外電の新悪徳トライアングル」は合流して、「政官業外電の悪徳ペンタゴン」に戻るのだ。
民主、社民、国民新党の野党3党は、「政・民・労の民主政府トライアングル」を結成しなければならない。
民は地域住民、主権者としての生活国民を表わす。
労は労働者としての国民を表わす。
「偽装CHANGE」勢力が自民党との連携を完全に否定しない限り、この勢力に対して気を許してはならない。この勢力の裏側には、間違いなく米国の諜報組織が存在する。日本は真の自主独立を果たさねばならない。
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売国者たちの末路 著者:副島 隆彦,植草 一秀 |
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知られざる真実―勾留地にて― 著者:植草 一秀 |
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