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2009年7月30日 (木)

小泉元首相に続き津島雄二氏も世襲候補擁立

自民党津島派会長の津島雄二氏が次期総選挙に立候補しないことを表明した。自民党青森県連は空白になる青森1区の衆議院選候補者に津島雄二氏の長男である津島淳氏を擁立する方針を決めた。

形式的には公募の形をとったが、実体は世襲議員候補の擁立である。自民党本部は世襲批判を考慮して津島淳氏を公認しないことを検討しているが、仮に公認しなくても、選挙で当選すれば追加公認するのだろう。

自民党は世襲議員のたまり場と化している。世襲議員でも能力があり、国民のために心血を注いで仕事をする人物であれば、国会議員になることを妨げる理由はない。本人の意思と能力は尊重されるべきであろう。

しかし、選挙で当選するには「地盤、看板、かばん」の三つが必要と言われるように後援会組織、知名度、政治資金が求められる。世襲議員は、この三つを引き継ぐため、他の候補者と競争条件が同一でない。

このため世襲議員は当選しやすく、自民党には世襲議員がごろごろしている。

世襲しやすいと言っても、子が親の仕事を引き継ぎたいと思わなければ世襲は成立しない。地方都市のシャッター街商店では子が店を引き継がないために閉店を余儀なく迫られるケースが多数を占める。農業などでも若い後継者が激減している。

自民党で世襲議員が多いのは、世襲したいとのインセンティブが働くからだろう。その要因のひとつに「企業献金」があると考えられる。

企業は企業にメリットがあるから献金をする。見返りがないのに献金をすれば、株主から背任であると突き上げられる。したがって、企業献金には献金と、献金を受けた政治家や政党の仕事との因果関係が必ず生まれることになる。

実際、2007年の政治献金実績を見ると

自民:総額224億円、うち企業献金168億円
民主:総額 40億円、うち企業献金18億円

もの献金が行なわれている。

 他方、2007年の政党交付金は以下の通りだ。

自民党 165億9583万7000円 
民主党 110億6382万4000円 

だ。政党助成金は、企業団体献金を制限する代償として、国費で政党活動を助成するために1994年の立法で導入された制度である。

 だが、自民党は政党交付金を上回る金額を政治献金で獲得している。

 この政治献金が日本の政治を歪めていると言わざるを得ない。政治献金の不当性についての専門的考察は、本ブログに寄稿下さった鬼頭栄美子弁護士の論考(その1)(その2)(その3)を参照いただきたいが、巨大な政治献金が自民党政治を国民の側にではなく、大企業の側に向かせる原動力になってきたことは否めない。

 自民党政治家は大企業のために行動し、大企業はその対価として自民党議員ないし自民党に政治献金を支払う。

 政治家個人に対する政治献金は禁止されているが、企業から政党支部への献金は認められており、政党支部から政治家個人の資金管理団体への資金移転が認められているから、実体的には政治家個人への政治献金は存続している。

 こうしたことから、自民党議員が政治献金を得ることを政治活動の目的としてしまうことも考えられる。自民党議員で世襲が際立って多いのは、自民党議員という職業が政治献金の存在を前提としたときに、営利的視点から極めて魅力のある職業になっていることが一因であると考えられるのだ。

 この見地に立って考えてみても、企業献金を全面禁止する意義は極めて大きいと考えられる。国民は「お金が儲かるから政治家になる」と考える人に政治家になってほしいと思わない。

 ほとんどの国民は純粋に国民のために心血を注ごうと思う人に政治家になってほしいと考えている。企業献金の存在は営利目的で政治家を目指す人物を生み出す原因になっていると考えられるのだ。

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 国政を担う国会議員を選出するにあたっては、国民にとって優れた人物を選出することが大切である。世襲を無制限に認めると、「地盤、看板、かばん」で優位に立つ世襲候補が有利な状況で選挙が行なわれてしまう。国会議員候補者における「機会の平等」が損なわれる。

 そこで、「機会の平等」を確保するための制限措置が求められることになる。

 具体的には、

①同一選挙区からの立候補を認めない

②政治資金の承継を認めない

の二つの対応が有効であると考えられる。

 先代が国会議員をやめて20年も時間が経過したのなら、同一選挙区から立候補しても構わないだろう。しかし、10年なり、15年なり、一定期間以内の立候補は禁止するべきだ。

 政治資金には税制上の優遇措置が取られている。この資金力の差が、最も大きな競争条件の格差を生む。政治資金の承継を禁止するべきである。

世襲候補が選挙区を変えても、一般的には「知名度」は残る。したがって、上記の二つの制限を課せられても、世襲候補はなお有利な条件を保持するのである。

民主党は政権公約に企業献金禁止と世襲制限を盛り込んだ。

民主党のマニフェストから、企業献金全面禁止、議員世襲制限にかかる記述を以下に転載する。

【企業献金】

○政治資金規正法を改正し、その3年後

 から企業団体の献金及びパーティー券

 購入を禁止する。

○当面の措置として、国や自治体と1件

 1億円以上の契約関係にある企業等の

 政治献金・パーティー券購入を禁止する。

【世襲制限】

○現職の国会議員の配偶者及び三親等以

 内の親族が、同一選挙区から連続して

 立候補することは、民主党のルールと

 して認めない。

○政治資金を取り扱う団体を親族に引き

 継ぐことは、法律で禁止する。

自民党の対応は、まったく逆である。

小泉純一郎氏は二男の小泉進次郎氏を世襲候補として擁立した。「小泉改革」の真価をいかんなく発揮する対応だ。

自民党青森県連は津島氏の擁立方針を変えないだろう。自民党に「変革」の意欲はない。また、1970年最高裁判例を金科玉条に政治献金の存続を図ろうとするのだろう。

自民党は31日にマニフェストを発表する予定だが、企業献金、世襲制限について、どのような判断を示すのかが注目される。

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