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2009年7月19日 (日)

何があっても私が決めさせていただく解散の実施

「政権交代」を実現して日本政治を刷新するか。それとも、これまでの自民党政治を維持するのか。「政権交代」の是非を問う総選挙が実施される。

麻生首相は7月21日に衆議院を解散し、8月30日に総選挙を実施することを決める。

「何があっても私が決めさせていただく解散」

である。

総選挙は権力奪取をめぐる戦いである。戦いに勝利し、大事を成就するには「天の時、地の利、人の和」が整うことが必要である。

自民党は、このすべてを欠いている。

麻生首相は「解散については、しかるべき時期に私が決めさせていただく」と発言し続けてきた。そもそも、麻生首相は昨年10月10日に発売された月刊誌に論文を掲載し、「私は決断した。国会の冒頭、堂々とわたしと自民党の政策を民主党の小沢一郎代表にぶつけ、その賛否をただした上で国民に信を問おうと思う」と臨時国会冒頭の解散を宣言した。

昨年10月の衆議院解散を月刊誌で宣言した。

ところが、自民党内部の調査で、総選挙敗北予想が示されたために、解散を先送りした。雨が降り始めたので、ひとまず雨宿りする選択を示した。

その後、麻生首相の首相としての資質欠如が原因となり、内閣支持率が下落の一途を辿った。このなかで、3月3日に民主党代表小沢一郎氏の秘書が突然逮捕された。政治情勢の転換を狙っての謀略であるとの疑いが濃厚である。

この一件が発生したのちに、風向きが変化したが、小沢一郎氏が政権交代実現を優先して柔軟な対応を示したために、情勢は再び転換し、内閣支持率は再低下した。

このなかで、小泉改革の象徴である郵政民営化の縮図とも言える「かんぽの宿疑惑」が表面化した。麻生内閣の鳩山邦夫総務相は「かんぽの宿疑惑」を摘出し、日本郵政の経営体制を刷新する方向で行動した。麻生首相がこの方向を後押しして、日本郵政の経営体制を刷新し、解散・総選挙に進む道があった。

麻生首相はこの最後のタイミングを自ら手放した。雨宿りをやめて歩き出すタイミングは何度もあった。しかし、麻生首相は決断できなかった。決断できない間に、雨は本降りになった。

4月から総選挙前哨戦の大型地方選6連戦が始まった。名古屋市、さいたま市、千葉市、静岡県、東京都議選、奈良市の首長選および議会選だ。この地方選で自民党は6連敗した。東京都議選では自民党と民主党の得票率が26%対41%となった。自民党にとっては、土砂降りの本降りになった。

麻生首相の雨宿りは、江戸川柳にいう、

「本降りに なって出てゆく 雨宿り」

そのものになった。

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東京都議選後、自民党内で麻生おろしの動きが本格化した。麻生首相は解散を決定しない限り、首相、総裁の座から引きずり降ろされる情勢に直面した。麻生首相は、最終的に「麻生おろし」を回避するために解散の決断を下した。

「しかるべき時期」は、結果的に「土砂降りの時期」になった。

「土砂降りの総選挙」が決まることになって慌てふためいたのは、土砂降り選挙で落選しそうな議員たちだった。

麻生政権は2008年度に三度も補正予算を編成した。三度目の補正予算は14兆円の史上空前の規模になった。国民の生活不安を解消するに十分な予算規模だった。

ところが、麻生内閣はこの巨大な補正予算を官僚のお手盛りと大企業支援に集中させてしまった。わずか200億円の生活保護母子加算を冷酷に排除してマンガ博物館建設に117億円もの予算を配分した。この事例に、麻生政権の基本姿勢が象徴されている。

「かんぽの宿疑惑」では、日本郵政が郵政民営化の大義名分を隠れ蓑(みの)にして、貴重な国民資産を一部の外資系企業に私物化させようとしていたのではないかとの疑惑が一段と強まったが、麻生首相は疑惑を封印する方向に舵を切った。

こうした状況を踏まえて、国民はようやく、政権交代の必要性を痛感することになった。政権交代を求める国民の声が沸騰し始めている。

これまでの自公政権が実現してきたものは、

①大企業

②官僚

③外国資本

のための政治だった。

 これを、

国民のための政治

に変えるのが、「政権交代」の目的だ。多数の有権者が「政権交代」を明確に希求している。「地の利」も自民党ではなく、民主党にある。

 土砂降りの総選挙で落選の危機に直面した自民党議員が、沈みかけた船から海に飛び込むネズミのように、慌てふためいている。

 麻生おろしを画策した中川秀直氏-武部勤氏-塩崎恭久氏らと、これらの人々に連なる小泉チルドレンは、すべて次期総選挙での有権者による洗礼を恐れていると考えられる。

 麻生内閣では与謝野馨氏と石破茂氏までが、首相に直談判して退陣を迫ったという。しかし、自民党は昨年9月にお祭り騒ぎの総裁選を実行して自民党の総意として麻生太郎氏を新総裁に選んだのである。麻生氏が自ら辞任するのならともかく、自民党議員が麻生おろしに奔走する姿はあまりにもさもしい。

 逆に、麻生氏が自ら辞職すれば、3年連続の政権放り出しになる。福田康夫氏が2年連続で政権を放り出したことに対する国民の批判を自民党議員は記憶に留めていないのか。昨年9月に総選挙の顔として麻生太郎氏を総裁に選出した自民党に、麻生氏体制の下で総選挙に進む以外に道がないことは明らかだ。

 中川秀直氏が集めたとされる両院議員総会開催を求める署名。128名以上の署名により、両院総会の開催を求められるとのことであったが、署名した議員の考え方はまちまちだった。中川氏は自民党総裁選の前倒し実施を両院総会で決定することを念頭に置いていたと考えられるが、この前提があるなら署名を撤回する意向を示す議員が続出した。

 国民新党の亀井静香氏が「解散が自由民主党の解散みたいになった」と述べたが、けだし名言だ。沈みゆく船の甲板で激しい内輪もめが繰り広げられ、船長、副船長が非難合戦を始めた。

 政官業外電の利権ペンタゴン=「悪徳ペンタゴン」は既得権益、政治利権喪失の危機に直面して浮足立っている。テレビ各局も政権交代が実現すれば、これまで偏向報道を続けてきたことの責任を問われる。

 テレビ朝日「サンデープロジェクト」で必死に民主党を攻撃する田原総一朗氏も、その表情に焦燥感と悲壮感を隠せない。

 7月13日付記事

「都議選民主党圧勝と総選挙を勝ち抜く三大戦術」

に、共産党の戦術について論評した。自民党とともに民主党を攻撃対象とし、「政権交代」を積極推進しない姿勢が、共産党議席減の背景になった可能性を指摘した。

 こうした声に耳を傾けていただいたのかは分からないが、その後、共産党が総選挙に向けてスタンスを修正したことが報道された。民主党を必ずしも攻撃の対象とせず、個別事案ごとに政策協力を検討するスタンスが示された。

 野党陣営が、ますは自公政権を終焉させることを優先させることで結束するなら、より大きな力を得ることになるだろう。野党陣営は「人の和」を確保しつつある。

 孟子は

「天の時は地の利に如かず。地の利は人の和に如かず」

と記している。

 大事を成すにあたって「人の和」は何よりも重要である。

 自民党は、権力を維持するために、新勢力を創設して民主党との連携をはかろうと策を弄してくるだろう。民主党は日本政治を刷新するために、自民党と明確に一線を画さねばならない。野党連合での「人の和」を強固に構築することが何よりも大切である。自民党市場原理主義者と連携したい民主党議員は、民主党を離党してそれら勢力と民主党の外で合流するべきだ。

 基本を確認し、基本に沿って進むことが、大事を成すための戦術である。

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