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2009年7月 7日 (火)

総選挙に向けて国民が考えなばならないこと

総選挙が近付き、慌ただしい動きが続いているが、自民党は、長期間握り続けてきた政治権力を死守することしか考えていないように見える。

宮崎県知事の東国原氏の支持率が高いのは、テレビメディアが東国原氏を頻繁(ひんぱん)に取り上げてきたからではないか。東国原氏が頻繁にテレビに登場することで、宮崎県の認知度は上がり、宮崎県の特産品の販売が増加したことは事実だろう。

しかし、知事としての活動が傑出しているというわけではない。知事の任期は4年である。東国原氏は知事職を全うすることを有権者に誓って知事選に出馬したのではないのか。有権者の信託を受けて当選を果たした以上、知事職に全力を投入して任期を全うするのが最低限求められる行動だ。

自民党は、このような正論を無視してまで、東国原人気にすがろうとするのだろうか。これからの4年間の政策方針を明示し、野党が示す政策基本方針と比較して、有権者に対して自らの主張の正しさを訴え、自民党を中心とする政権の維持を有権者に訴えるべきではないのか。

2005年9月の郵政民営化選挙では自民党が地すべり的勝利を得た。この選挙が終わって間もないころ、ある落選した民主党前議員の後援会に呼ばれて講演した。このとき、元議員は次期総選挙がいつあるとも分からないと述べた。

しかし、結局、前回総選挙から丸4年間、総選挙は行なわれなかった。総理大臣は4人目になった。郵政民営化に反対した議員も自民党に復党した。総理大臣が3回も交代したから、政策方針は右へ左へと揺れた。しかし、国会の議席構成だけは不変なのだ。

この議席構成によって、国民生活に直結するすべての政策が決定されてきた。2007年7月以降、参議院では野党が過半数を握った。しかし、日本国憲法は衆議院の優越を定めており、多数の法律案が衆議院での再可決で決定されてきた。それほど、衆議院の議席構成が持つ意味は大きい。

総選挙は、これから4年間の国民生活を決定づける最重要の政治イベントである。したがって、有権者はそのときの空気、ムードだけで投票してはならない。2005年9月の失敗を繰り返してはならない。

自民党は、政治権力を死守するために、東国原人気にすがり、民主党の鳩山由紀夫代表を理不尽に攻撃している。大きな問題は、世論形成に大きな影響を与える「マスメディア=電」が政治権力の走狗(そうく)になり下がってしまっていることだ。有権者がじっくりとものを考えずに、マスメディアの情報操作に籠絡(ろうらく)されてしまうと、再び間違った判断を示してしまう懸念が存在する。

2005年9月の総選挙は「郵政民営化に賛成するか反対するか」の選挙になってしまった。御用メディアは「郵政民営化が正義」で「郵政民営化に反対するのは抵抗勢力で悪」との図式を日本中に流布した。多くの国民がこの情報操作に籠絡(ろうらく)されて、小泉元首相を支持してしまった。

ところが、小泉竹中政治は「市場原理主義」を基軸に据えて、日本社会を冷酷な弱肉強食社会に作り変えてしまった。同時に、「郵政民営化」が「かんぽの宿」に象徴されるように、一部の財界人と外国資本に国民財産を横流しするための政策であることが明らかになった。

しかし、ひとたび巨大な議席数を政権与党に付与してしまうと、4年間もその呪縛(じゅばく)から解き放たれない。すべては「後の祭り」なのである。

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このことを十分に踏まえて総選挙に臨まなければならない。目先の瑣末(さまつ)なことがらに惑わされて総選挙の投票行動を決定してはならないのだ。

次期総選挙は政権交代の是非を問う選挙である。しかし、政権交代は「手段」であって「目的」ではない。政権交代によって、何をどのように変えるのかが問題だ。

政権交代の意味を私は次のように考える。

①大企業のための政治

②官僚のための政治

③外国勢力のための政治

①国民のための政治

に変えることである。

つまり、これまでの自公政権の政治は、

_72 ①大企業(業)、②官僚(官)、③外国勢力(外)、に利益をもたらす政治(政)だった。この政治体制が維持されるように御用メディア(電)が、世論操作を担当してきた。これを「政官業外電=悪徳ペンタゴン」による利権政治構造と表現している。

①大企業のための政治、を正すには、企業献金を全面禁止することが最も有効である。これまでの自民党政治は企業からの巨大な政治献金に支えられてきたから、政策は必然的に企業の側を向く。「年越し派遣村」は労働政策が企業の側だけを向き、労働者に背を向けたために発生した問題である。

②官僚のための政治、を正すには、天下りを全面禁止することが最も有効である。これまでの自民党政治は官僚に政策立案を丸投げする代わりに官僚の天下りを全面的に擁護するものだった。

③外国勢力のための政治、を正すには、まず郵政民営化を抜本的に見直さなければならない。外国勢力に利益を供与するために郵政民営化を実行してはならない。日本郵政の経営陣を刷新して、まずは、日本郵政株式の売却を凍結し、国民の利益を最大化するための方策を検討しなければならない。

①大企業と②官僚、③政治屋の利益を維持するために、巨大な消費税大増税が計画されている。安易な増税容認は、政府の無駄排除をおろそかにする原因になる。これからの4年間は消費税増税を封印し、「天下り排除」などの無駄の排除に全力を注ぐべきである。

政府予算の内容をゼロベースで見直し、国民生活を守る施策に重点的に財政資金を投入する。政策の抜本組み換えが求められている。小泉竹中政治がもたらした「弱肉強食社会」を「共生社会」に創り変えなければならない。

①企業献金の全面禁止

②天下りの全面禁止

③消費税大増税の封印

④セーフティネットの構築

⑤郵政私物化・郵政米営化の阻止

を基軸に据える新しい政権を樹立することが、次期総選挙の最大の目標になるのだ。

政権交代が実現しても、これらの課題を確実に実行するには、さまざまな障害があるだろう。政権交代を実現したその先の課題は決して小さくない。しかし、ひとたび政権交代を実現すれば、4年間の時間を確保できる。この4年間の時間を生かして、新しい強い構造を作り出せば良いのである。

このためには、何よりも次期総選挙で、本格的な政権交代を実現することが大切なのである。民主・社民・国民新党が結束して、総選挙大勝利に照準を合わせなければならない。

鳩山由紀夫民主党代表の政治資金の取り扱いに悪質な問題があるなら別だが、そうでなければこの問題を針小棒大に取り扱うことは賢明でない。政治資金問題を徹底究明するなら、二階俊博氏、与謝野馨氏、森喜朗氏、尾身幸次氏などの政治資金の不透明性を徹底解明することが優先されるべきだ。

日本政治を刷新するために、民主・社民・国民新党の共闘体制を強化し、有権者が次期総選挙で野党連合に投票を集中させることの重要性を、日本の津々浦々にまで浸透させることに全力を注ぐべきである。

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