各社世論調査と総選挙に向けての三大警戒事項
7月の各社世論調査結果が発表され始めた。これまでに発表された朝日新聞、毎日新聞、共同通信、時事通信の調査結果を速報する。
主な調査項目として、
①麻生内閣支持率、②首相にふさわしい人、③総選挙比例区での投票政党、④総選挙後の政権の枠組み、⑤政党支持率、に関する調査結果を以下に掲示する。
①麻生内閣支持率
支持する 支持しない
共同 20.6
毎日 17 67
時事 16.3
②首相にふさわしい人
麻生首相 鳩山代表
共同 21.0 48.4
時事 11 28
③比例区での投票政党
自民党 民主党
共同 15.6 36.2
朝日 19 42
毎日 18 45
④総選挙後の政権の枠組み
自民党中心 民主党中心
共同 14.8 39.3
朝日 22 49
毎日(*) 23 56
⑤政党支持率
自民党 民主党
朝日 20 31
毎日 18 36
時事 15.1 18.6
(単位:%、④の毎日は勝ってほしい政党)
自民党の内紛に関する質問では、朝日新聞が、
「総裁選の前倒しを求める行動など、麻生首相による解散宣言後に自民党内で起きた一連の動きで、同党への印象が変化したか」について、
「悪くなった」が50%
「変わらない」が43%
と、「悪くなった」が上回ったことを示した。
毎日新聞は、
「衆院選の直前に麻生太郎首相に退陣を求める自民党内の動き」について、
「評価しない」が73%
「評価する」が22%
と、「評価しない」が上回ったことを示した。
また、朝日新聞は衆院選の投票に際しての民主党鳩山代表の政治資金問題の影響について、
「重視する」が26%
「重視しない」が62%
で、「自民に投票する」人でも、
「重視しない」が55%
だったことを明らかにした。
東京都議選での得票率は、
自民 26% 民主 41%
で、今回世論調査での「比例区で投票する政党」調査結果と類似する数値だった。
比例区得票率と獲得議席数の関係は以下の通り。
1996年10月20日総選挙
自民 得票率33% 議席239
新進 得票率28% 議席156
2005年9月11日総選挙
自民 得票率38% 議席296
民主 得票率31% 議席113
小選挙区制度下の総選挙では、獲得議席数の乖離(かいり)が得票率の乖離をはるかに上回る。現在の状況が維持されれば、次期総選挙を通じて、本格的な政権交代が実現する可能性が高い。
「麻生おろし」をめぐる自民党内の内紛はあまりにも「さもしい」ものだった。2005年に見られた「郵政民営化」をめぐる党内抗争と異なり、政策路線の対立に基づく内紛ではなかった。
次期総選挙で落選しそうな議員が、総選挙を目前に控えて、選挙の顔のすげ替えに動いたものだった。内閣閣僚の与謝野馨氏と石破茂氏までが、首相辞任を直談判したことは、内閣の崩壊を意味する。
ところが、その後の情勢変化で麻生氏続投がほぼ固まった。すると、与謝野氏と石破氏は、一転して、麻生首相の下での総選挙を主張し始めた。与謝野氏と石破氏は麻生首相に向けて、いったんは弓を引いたのだから、情勢が変化したら辞職するべきである。その石破氏がテレビに出演し、自己正当化の発言を続けている。
また、「麻生おろし」の中核メンバーである中川秀直氏-武部勤氏-塩崎恭久氏-世耕弘成氏などは、クーデターが失敗に終わったのなら、責任を明確化すべきだろう。党内紛争とはいえ、筋の通らない行動を押し通してしまう人物が多数存在しているところに、自民党の危機が端的に示されているように思われる。
8月30日の投票日まで、40日の期間が存在する。政権交代実現を目指す野党勢力は、結束してこの戦いに勝ち抜く基本を一瞬たりとも忘れてはならない。
三つのことがらを警戒すべきだ。
第一は、「悪徳ペンタゴン」の一角を占める、御用メディアが偏向報道をさらに強化する可能性が高いことだ。
7月19日放送のNHK「日曜討論」、テレビ朝日「サンデープロジェクト」に、その片鱗(へんりん)は表れている。
両番組の中心議題は、
①自民党は「両院議員懇談会」を公開しないのか、
②鳩山由紀夫民主党代表の政治資金問題をどう考えるか、
③自衛隊のインド洋への派遣をどうするか、
だった。
本来のテーマは以下の通りだ。
①企業献金全面禁止の是非
②天下り根絶の是非
③消費税大増税の是非
④日本郵政経営体制刷新の是非
⑤セーフティネット強化の是非
である。
⑥議員世襲に対する制限設定の是非
も加えられるだろう。しかし、これらの問題についての論議はなかった。
NHKの影山日出夫氏やサンプロでの田原総一朗氏の司会進行は、自民党が希望するものである。御用メディアや御用言論人は、政権交代が実現すれば、「パージ」の対象とされる。彼らも政権交代阻止に死力を尽くさねばならない瀬戸際に追い込まれている。
こうした偏向報道が、40日間、繰り広げられることを踏まえなければならない。この間、誰がどのように発言し、どのように議事進行したかを記録する必要がある。
第二は、総選挙に向けて、「偽装CHANGE勢力」が行動を仕掛ける可能性があることだ。サンデープロジェクトに出演した森喜朗氏は、中川秀直氏が新政治勢力編成に向けての意向を有していることを明言した。森氏は、中川氏の行動を総選挙後だとしたが、このなかで、重大な事実を指摘した。
中川氏が民主党の一部議員との連携を検討していることである。自民党の小泉一家は、「市場原理主義」と「対米隷属路線」を基礎に据え、反霞が関政策と軍事拡張主義的な方針を示している。この主張と、民主党内の「市場原理主義グループ」の主張と共通する部分が多い。
小泉一家-小泉チルドレン-民主党内市場原理主義グループがまとまり、単一の政治勢力を形成するのなら、非常に分かりやすい。これは、望ましい政治分化である。
しかし、この勢力が政界再編の旗を掲げて、民主党内に手を入れることは、百害あって一利なしである。
「小泉一家-小泉チルドレン-官僚OBグループ-自民別働隊地方首長グループ-民主市場原理主義者グループ」の連携による、政界再編への仕掛けに十分な警戒を払わなければならない。
政権交代を通じて樹立すべき新政府は、
①大資本、②官僚、③外国資本、と癒着する「悪徳ペンタゴン利権政治」
ではない、
「国民の幸福を追求する政府」
である。
経済政策から「市場原理主義」を排し、「セーフティネット構築」を重視し、「平和主義を基礎に据えた自主独立外交」を展開する政府を樹立するのだ。
自民党別働隊の自民分派勢力は、野党共闘を分断して、「大連立」の方向に新政府を誘導し、「悪徳ペンタゴン利権政治」の復活を策謀してくるはずである。
民主党は「悪徳ペンタゴン利権政治」への回帰を許してはならない。そのためには、社民党との連携を強化し、共産党とも共闘できる部分での共闘を進めるべきである。
東京都議選後、共産党が民主党攻撃の基本姿勢を修正し、自公政治を終焉させることを望む有権者の声を踏まえ、政権交代実現と野党勢力での共闘の重要性を確認したことは意義深い。
総選挙後に、新政権が「悪徳ペンタゴン利権政治」の方向に引き戻されないための監視と、それを防ぐマニフェスト段階での明確な縛りが重要になる。
第三は、総選挙に向けて、権力が謀略を仕掛けてくる可能性が存在することだ。私の発言が封じられることも個人的には重大なことだと認識している。
さまざまな可能性が存在するため、一瞬も油断しない心構えが重要になる。2005年9月の総選挙から、今回の総選挙まで、結局4年の月日が流れた。衆議院の任期は4年であり、国民の総選挙における意思表示は、基本的に4年間の国のかたちを定めてしまうものである。
目先の空気で投票を決めてはならない。「熟慮し決断し行動すること」が求められている。
①投票率を最大限高めること
②政権交代推進勢力に投票を集中すること
③「偽装CHANGE新党」が結成されても、決して「偽装CHANGE新党」には投票しないこと
も改めて確認しなければならない。
日本の歴史上初めて、民衆が政治権力を奪取し、民衆の幸福を追求する政府を樹立できるチャンスが近付いている。道を誤らずに新政府を樹立し、新政府を正しく育ててゆかねばならない。
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