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2009年7月22日 (水)

総選挙の投票を誤らないための五大争点

8月30日の投票に向けて、事実上、選挙戦が始まった。

麻生首相は記者会見で、①景気回復、②市場原理主義の修正、③消費税増税の方針を掲げた。「天下り・わたりの廃止」などにも言及した。

「小泉改革の総括」をテーマのひとつに掲げる野党の主張の一部を取り入れ、争点を見えにくくする戦術である。

民主党を中心とする野党は、自公両党の政策方針との違いを明確に示す必要がある。

今回の総選挙の最大のテーマは「政権交代」である。

明治以来140年にわたって続いた「官僚政治」に終止符を打つのかどうか。1955年以来54年にわたって続いた自民党政治は、同時に「大資本のための政治」でもあった。政治の主役を「大資本」から「国民」に転換することができるのかどうか。

さらに、2001年に発足した小泉政権以来、日本政治が日本国民ではなく、外国資本の側を向き始めた。「外国資本のための政治」を「日本国民のための政治」に変えることができるか。

①官僚主権構造

②大資本のための政治

③外国資本のための政治

を排除して、

国民の幸福を追求する政治

を新たに樹立できるのかどうかが、今回の総選挙の最大のテーマである。

これまでの政治を支えていたもうひとつの力が、御用メディアである。

「政官業外電の悪徳ペンタゴン利権政治」を打破し、「国民を幸福を追求する政治」を、日本の歴史上、初めて構築できるのかが問われる。

①「官僚主権構造」を打破するうえで、もっとも重要な政策課題が

「天下り根絶」

である。

麻生首相も「天下り・わたりの廃止」を述べたが、内容がまったく違う。

自公政権は、天下り機関が独自に官僚OBを採用することを「天下り」や「わたり」ではないとする。また、官僚OBが所管する業界企業に「天下り」することも「職業選択の自由」の観点から容認する。つまり、実質的にこれまでの「天下り・わたり」を完全に容認するスタンスを変えていない。

これに対して、民主党が主張する「天下り・わたり」禁止は、完全に抜け穴をふさぐものである。

「天下り・わたりの禁止」の言葉に騙されてはならない。

②「大資本のための政治」を排するうえで、もっとも重要な公約が以下の三つである。

a.企業献金の全面禁止

b.消費税大増税の廃止

c.セーフティネットの整備

自公両党は鳩山由紀夫民主党代表の政治資金報告書の誤りを執拗(しつよう)に攻撃している。誤りは正さなければならないが、問題の本質は「政治とカネ」の問題にあり、その中心は、政治と企業の癒着だ。

この意味で「政治とカネ」の問題の中心は「金権体質の自民党」にある。

民主党は以下の数字を積極的にアピールするべきだ。

自民、民主両党の2007年政治献金実績。

自民:総額224億円、うち企業献金168億円

民主:総額 40億円、うち企業献金18億円

経団連加盟企業の経団連を通じる企業献金は、

自民:29億1000万円

民主:8000万円

企業献金にとっぷりと浸かっているのは自民党である。

民主党は、「政治とカネ」の問題に対する根本的な対応策として、

「企業団体献金の全面禁止」

の方針を決定した。これ以上にこの問題に対する明確な姿勢はない。

 民主党ではテレビ討論で岡田克也幹事長が登場する頻度(ひんど)が格段に増加した。岡田幹事長は民主党が決定した「企業団体献金全面禁止」の方針を徹底的にアピールするべきだ。この問題で、自公両党のスタンスの弱さを的確に指摘するべきである。

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 民主党候補者として長崎2区から出馬した福田えりこさん。街頭演説で極めて分かりやすい訴えかけをした。

「弱い者から吸い上げて、強い者にばらまく政治を変えなくてはならない」

これが、政権交代の大きな目的である。

b.消費税大増税を封印すること、

c.セーフティネットを整備すること

が、この目的に沿う政策公約である。

消費税は低所得者に対する負担の大きい、逆進性を有している。将来、社会保障財源として消費税増税が必要になる可能性は高いが、その前に実行すべきことがある。

「天下り」を廃止し、予算を組み替えて、国民生活を守ることである。

子育て支援や学校教育の無料化などの民主党提案を、自民党はバラマキだと批判するが、民主党の提案は、これまで自公政権が、強い者にバラマいていた予算を根本から組み替えて、弱い者をしっかりと支える分野に配分し直そうとしているのだ。

「官僚と大企業優遇を是正するまでは、消費税大増税を許さない」

これが、民主党の提案である。

また、消費税の論議に入る前に、セーフティネットを確実に整備する。優先順位を明確に転換するのである。

③「外国資本のための政治」を排除する上で避けて通れないのが日本郵政経営体制の刷新である。

 「かんぽの宿疑惑」は、時価が1000億円程度と見られる国民共有の貴重な財産が、不透明な手続きによって、規制改革論議に関わった一業者に、129億円(継承負債を含めた金額)という不正に低い価格で横流しされようとした疑惑である。

 「かんぽの宿疑惑」は「郵政民営化」の下で進められている、「郵政私物化」や「郵政米営化」の実態を垣間(かいま)見せる「氷山の一角」である可能性が高い。政権交代が実現する場合には、日本郵政の経営体制を刷新して、「かんぽの宿疑惑」の全容解明を突破口にして、「郵政民営化の暗い闇」を明らかにしなければならない。

 要約すると、

①官僚主権構造

②大資本のための政治

③外国資本のための政治

を排除して、

国民の幸福を追求する政治

を樹立するために、

①「天下り」の根絶

②企業献金の全面禁止

③消費税大増税の封印

④セーフティネットの整備

⑤日本郵政経営体制の刷新

の五つの政策公約が重要になる。

 選挙用に分かりやすく表現するなら、

「献金・天下り・消費税」

が、最重要争点である。

 民主党は、自公政権との政策の相違を分かりやすく整理し、考えられる「想定問答」を準備して対応するべきである。

 岡田幹事長の説明では、「企業献金全面禁止」の方針が国民に正確に伝わってこない。「政治とカネ」の問題に対する、もっとも明確な回答がこの方針であることを再確認するべきだ。

 また、消費税増税の論議については、その前に、「予算の組み替え」と「天下りを軸にする無駄の排除」が優先されるべきことを強調するべきである。

 政策論争を活発化させて、どのような政権を創設するのかを主権者である国民が選択する。明確な政権の姿を示して総選挙が戦わなければならない。

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