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2009年7月29日 (水)

民主党マニフェストを批判する無知な人々(1)

 民主党がマニフェストを発表した。自民党はまだ発表していない。麻生首相は昨年10月に解散総選挙を宣言したのに対応が遅い。細目でまだ調整がつかないらしい。

民主党マニフェストの最大の特徴は、予算を大幅に組み替える点にある。

7月24日付記事

「民主党対自民党:経済成長を促すのはどちら」

をもう一度、よく読みなおしてほしい。

ドイツの財政学者マスグレイブの整理によれば、財政の機能には次の三つがある。

①資源配分機能

②所得再分配機能

③景気安定化機能

 一般会計、特別会計を合計すると、年間の政府支出は207兆円に達する。この207兆円をどのように配分するのかを決めるのが政治である。

 政権が変われば、支出内容が変わるのは当たり前だ。政府支出の内容に多くの政策が反映されるのだ。

 民主党はこれまでの自公政権の政治をどのように変えるのか。

 予算の規模を変化させようとはしていないから、これまでの支出を削り、新しい支出に回す。

 大きな特徴で言えば、必要のない公共事業、「天下り」や「天下り機関」、役所へのお手盛り予算、あらゆる分野での無駄、などを徹底的に削減する。

 他方、子ども手当、公立高校の無償化、医療・介護の再生、農業の所得補償、ガソリン税の暫定税率廃止、高速道路の無料化、雇用対策、などを拡充するとしている。

 天下りや公的機関へのお手盛り予算を徹底的に削減すること、必要のない公共事業を実施しないこと、あらゆる無駄を排除すること、は望ましことである。民主党のマニフェストでは、4年後に公共事業削減で1.3兆円、人件費の削減で1.1兆円、無駄の排除や補助金の削減で6.1兆円の財源をねん出するとしている。

 207兆円の支出のうち、国債費などの80兆円、社会保障給付の46兆円、その他繰入金など10兆円には手をつけないから、残りの71兆円の政府支出のなかから、9兆円支出を切り詰めるとしている。13%程度の支出切り詰めは十分可能だと考えられる。

 この金額を切り詰めるのは2013年度であり、4年後だ。

 政府支出のなかの無駄と考えられる部分を切り詰めることは資源配分上望ましいことだ。「小さな政府」を「資源配分上の無駄を排除すること」と定義するなら、この意味での「小さな政府」は望ましい。民主党の政策は、この意味での「小さな政府」を目指すものだ。

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 しかし、②所得再分配の機能では、民主党の主張は「大きな政府」を志向するものである。小泉政治の「市場原理主義」は、すべてを市場に委ね、結果における格差を放置した。その結果、政府が守らねばならない人々が悲惨な状況に追い込まれ、多くの国民が没落し、下流社会が形成された。

 民主党はすべての国民が安心して暮らせる、人間性を尊重する政治を志向する。すべての人々の暮らしを支えるため、子育て、医療、年金、介護、経済的弱者支援に、財政支出の多くを振り向けようとしている。

 ガソリン暫定税率廃止や高速道路無料化も、家計の所得を増加させる効果を持つ。

③の景気安定化の視点では、短期の経済政策の課題としての「景気回復」と、長期の経済政策の課題としての「経済成長」に、財政がどのような役割を果たすのかが問われる。

短期の景気安定化と財政の関係で最も重要なことは、財政収支の変化である。財政赤字拡大が非難されることが多いが、景気安定化との関係で言えば、「財政赤字拡大=景気回復誘導」、「財政赤字縮小=景気抑制誘導」になる。

したがって、短期的に景気回復を目指す経済政策とは、「財政赤字を拡大させる政策」ということになる。

他方、長期の「経済成長」は、技術進歩によって促される。人口の増加も影響する。これから未来に向かって成長する産業を育てることが、長期の「経済成長戦略」になる。

③景気安定化機能の視点から民主党の政策をどのように評価できるのかも考えなくてはならない。

民主党のマニフェストに対して自民党議員が批判しているという。メディアが一斉に自民党議員の民主党マニフェスト批判を右から左へと垂れ流すから、何も知らない国民は、民主党の政策に「欠陥がある」と勘違いしてしまう。これは、とんでもない間違いであり、選挙妨害である。

経済学を理解しない自民党議員が、民主党の政策だからと批判し、やはり経済学を理解しない御用メディアがその三流の感想を垂れ流している。

自民党議員の批判はおおむね、以下の三つに要約できる。

①財源が不明確だ。

②バラマキ政策である。

③成長戦略がない。

                 (その2)に続く

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