心に響く鳩山代表党首討論・人間尊重の政治
民主党鳩山由紀夫代表と麻生太郎首相による2回目の党首討論が行なわれた。鳩山代表の言葉に思わず涙が溢(あふ)れた。鳩山代表は一人一人が居場所を確保できるための施策を懸命に訴えた。心に響く訴えかけだった。
この4月から生活保護の母子加算が打ち切られた。鳩山代表は小学生の女の子が高校に進学するのをあきらめた話を紹介した。高校生の子が親に修学旅行に行かなくてもいいと話をした事例を紹介した。
母子加算の廃止に伴う支出削減は200億円とのことだ。どうしてこのような支出に手を入れるのか。麻生政権は一方で13.9兆円の補正予算を編成した。
補正予算には、本予算で6490億円しか予算が計上されない公的部門の施設整備費に2.8兆円もの国費が投入される。大盤振る舞いの補正予算で、役人が使用する公共施設を豪華に刷新するのだ。マンガ・アニメの殿堂には建設費だけで117億円が用意される。
また、「エコカー」、「エコ家電」にかこつけて、役所の公用車が1万5000台=588億円、地デジ対応テレビが7万1000台=71億円、購入される。
さらに、58の基金に4.6兆円の国費が投入される。4.6兆円のうち、どれだけが事務経費に充当されるのかは国会審議でも明らかにされなかった。58基金への4.6兆円が「天下り」利権拡大に利用されることは間違いない。
5月30日付記事
「お手盛り・バラマキ補正予算成立と総選挙日程」
に次のように記述した。
14兆円もの国費を投入するなら、はるかに優先順位の高い費目が存在する。
①失業者の生活保障、非正規労働者のセーフティネット整備、
②高齢者の介護、医療体制整備、
③子育て・教育費助成、
④障害者自立支援法改正、
⑤後期高齢者医療制度廃止、
⑥消えた年金修復事業の早期完結、
⑦生活保護強化、
などの施策が優先されなければならなかった。
本当に必要とされる対象には国費が投入されず、「大資本」と「官僚」への利益供与だけが実行された。
鳩山代表は自殺が若者の死因トップになっている現状を指摘した。20代の死因の49%、30代の死因の36%が自殺で、死因のトップになっているとの衝撃的な数値が紹介された。
自殺の原因がすべて経済問題に起因している訳ではないが、国民の生活をしっかりと支える施策が、問題の縮小につながることは間違いない。
政府の支出には、多くの無駄が含まれている。「大資本」と「官僚」に利益を供与する政策が極めて多いのだ。自民党政治は「企業献金」によって支えられている。巨大な企業献金が自民党政治を国民の側でなく、大資本の側に向かせてしまうのだ。だから、企業献金の全面禁止が有効な施策になる。
補正予算を見れば、自民党政治がいかに官僚利権と一体のものであるのかが分かる。公用車588億円、公共部門のデジタルテレビ71億円で、どれほど国民生活に直結する施策を賄うことができるか。
党首討論では、日本郵政西川社長続投問題と社会保障政策と財源問題が論じられた。
日本郵政西川社長問題では、麻生首相が「民間会社の人事に政府は極力介入すべきでない」ことを訴えた。少し前まで西川社長更迭方針を示していた麻生首相が、突然、「小泉-竹中-中川(秀)-菅(すが)-石原」の「郵政××化ペンタゴン」の言葉を用いるようになった。
鳩山代表は西川社長続投に異論を唱え、政権交代が実現すれば西川社長を更迭する方針を明言したが、細かな点については説明を省略した。日本郵政の労働組合が西川社長続投に賛成の見解を示し、民主党の対応が注目されたが、鳩山代表の姿勢は明確だった。
日本郵政の労働組合は、組合出身者の処遇で西川社長に籠絡(ろうらく)されたのではないかと伝えられているが、本来、内部から経営を厳しく監視すべき立場にある。労働組合がその役割を果たさないのであれば、国民や国会、行政が日本郵政の経営を厳しく監視しなければならない。
鳩山代表は時間の関係で詳細の説明を省いたのだと考えられるが、株式会社形態であっても、日本郵政は100%政府出資会社であり、国民に不利益を与える不祥事が行なわれた疑惑が濃厚に存在する以上、政府が法律の定めに基づいて行動するのは当然のことである。民間会社であるからと、問題を放置するのは政府の責任放棄以外の何者でもない。
国民の利益を守るために責任を果たさない政府は、このことだけでも不信任に値する。できれば、この程度の責任追及を示して欲しかった。
社会保障政策と財源問題では、鳩山代表と麻生首相の基本スタンスの相違が鮮明に示された。
麻生首相は「財源なくして施策を検討するべきでない」との姿勢を明確に示した。政府は社会保障費を毎年2200億円削減する基本方針を堅持している。この数字は、財政収支を改善することを目的にはじかれたものである。
「何がどれだけ必要なのか」
ではなく、
「必要不必要にかかわりなく、財政の事情で支出を切る」
政策が、2200億円の社会保障費削減だった。
麻生首相は、今後の社会保障財源が不足するから、2011年度以降に消費税大増税を実施する方針を明言した。政府の試算では消費税が12%にまで引き上げられる可能性がある。
鳩山代表の説明は、根本的な発想の相違を明確に示すものだった。
すべての国民に居場所を確保するための政策を最優先する。そのために必要な政策を、責任をもって実行するのが政府の役割だとする。
「カネが足りないから必要不可欠な政策を切る」
のではなく、
「必要不可欠な政策を実現するために財源をねん出する」
のが鳩山代表の示した基本スタンスだった。
鳩山代表は財源の捻出方法が三つあると述べた。①増税、②借金、③無駄の排除、である。
鳩山代表は、官僚丸投げの自民党政治からは、②借金、と、①増税、の発想しか出てこないことを厳しく糾弾(きゅうだん)した。
鳩山代表は、まず徹底的に取り組むべき課題を、③無駄の排除、であるとした。
③無駄の排除を徹底するために、政権交代を実現すれば、次の総選挙までの4年間は、増税を封印することを国民に約束することを明言した。
麻生首相は民主党の財源論を批判したが、鳩山代表の説明は明快だった。210兆円の財政支出から、義務的支出を取り除いた部分が70兆円あり、この70兆円のなかから、無駄な支出、先送りできる支出を約10兆円捻出することを訴えた。十分に実現可能性のある数値である。
また、天下り機関への12.1兆円の国費投入のうち、無駄なものを排除することについて、融資資金などを除く8.4兆円のうち、約半分の4兆円程度が随意契約で、ここから無駄を取り除くことが可能であることを主張した。
これに対して、麻生首相は随意契約にあたる支出は2兆円しかないと反論した。
全体を通じて、鳩山代表の説明に多くの国民が賛同したと思われる。
鳩山代表は「友愛社会の創設」を掲げるが、今日の討論を聞いて、政治に必要な最大の視点は「愛」であることを改めて痛感した。「愛」のない言葉は心に響かない。鳩山代表の言葉には「愛」が込められていた。
浮ついた意味でなく、すべての国民のかけがえのない命、かけがえのない人生を尊重する姿勢は、「愛」からしか生まれない。政権交代を一刻も早く実現して、日本の政治に「愛」を吹き込んで欲しいと痛感した。
拙著『知られざる真実-勾留地にて-』にも「人間愛」の大切さを書いた。ぜひお目通しを賜りたい。
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知られざる真実―勾留地にて― 著者:植草 一秀 |
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