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2009年6月 7日 (日)

麻生首相が仕切れる総選挙は8月2日しかない

サッカーW杯アジア最終予選で、日本代表はウズベキスタンに1対0で辛勝し、世界第1号のW杯出場権を獲得した。久しぶりに明るいニュースが舞い込んだ。日本代表のW杯本選での活躍が期待される。

政治はこう着状態に陥っているが、民主党を中心とする野党が国会審議を順調に進展させており、6月中に主な法案処理が完了する見通しである。通常国会の会期は7月28日まで、55日間延長されたが、7月は審議する内容がなくなり、事実上閉会になる。

当面の焦点は、西川善文日本郵政社長更迭問題である。マスメディアのなかで、読売新聞が主張を変えた。6月6日付朝刊に
「日本郵政人事 核心は不祥事の経営責任だ」
と題する社説を掲載した。

このなかで、次の記述を示した。
「総務省の業務改善命令にも、日本郵政は回答していない。そんな段階で西川社長再任の人事案を決めたのは、手順としておかしいのではないか。人事案は自発的に白紙に戻すのが筋だろう。」

本ブログ5月23日付記事
「西川善文日本郵政社長続投論を覆う黒い霧」
に、
読売新聞の渡邉恒雄氏が『文藝春秋』2009年1月号のインタビュー記事で語った次の言葉を紹介した。

「僕は竹中さんから直接聞いたことがあるんだが、彼は「日本の四つのメガバンクを二つにしたい」と明言した。僕が「どこを残すんですか?」と聞くと、「東京三菱と三井住友」だと言う。あの頃はまだ東京三菱とUFJは統合していなかったんだが、「みずほとUFJはいらない」というわけだ。どうして三井住友を残すのかというと、当時の西川善文頭取がゴールドマン・サックスから融資を受けて、外資導入の道を開いたからだと言う。「長銀をリップルウッドが乗っ取ったみたいに、あんなものを片っ端から入れるのか」と聞くと、「大丈夫です。今度はシティを連れてきます」と言った。今つぶれかかっているシティを連れてきて、日本のメガバンクを支配させていたらどうなったか、ゾッとする。」
(「文藝春秋」からの引用)

 この発言の重要性については、「神州の泉」主宰者の高橋博彦様も記事を掲載されたが、竹中氏が金融相時代に、米国投資銀行ゴールドマン・サックスによる三井住友への出資を斡旋(あっせん)した疑いが存在するのだ。竹中氏と西川氏の昵懇(じっこん)の関係は、2002年12月11日のゴールドマン:ポールソン&セイン氏と西川氏、竹中氏による4者密会に始まっている。

日本経済は2003年5月にかけて、小泉竹中経済政策によって破壊し尽くされたが、株価暴落誘導とその後の「りそな処理」を中核とする政策対応が、米国資本への利益供与を目的に実行された疑いが存在する。この問題についての詳細は、拙著『知られざる真実-勾留地にて-』をご高覧賜りたい。

読売新聞の渡邉氏は、竹中氏を中心とする人々の「売国的政策」に異を唱える姿勢を、時折、垣間(かいま)見せる。CIAと深い関わりを持つと見られる読売新聞であるから、その真意を測りかねるが、マスメディアのなかから、西川社長続投に反対意見が表明された意味は大きい。

「かんぽの宿」疑惑は、「郵政民営化」の実態が、実は「郵政私物化」、「郵政米営化」であったことを証明する「氷山の一角」である。「かんぽの宿」疑惑は、すでに野党議員によって刑事告発の対象となり、東京地検が正式に刑事告発を受理したから、今後の地検の対応が注目されるわけだが、重大な不祥事であることははっきりしている。

「かんぽの宿」売却プロジェクトは、西川社長直系である三井住友銀行出身の横山邦男専務執行役と、やはり西川社長人事で不動産会社ザイマックス社から日本郵政入りした伊藤和博執行役のラインによって仕切られた。西川社長の責任が問われるのは当然である。

日本郵政株式会社は企業形態こそ、2007年10月に株式会社に変わったが、株式の100%を政府が保有する「純然たる国有会社」である。

日本郵政株式会社法は所管大臣である総務大臣に極めて強力な監督権限を付与している。そして、この法律は竹中平蔵氏を中心とする郵政民営化推進議員が核になって起草されたものである。

鳩山総務相は、この法律に則って、日本郵政西川社長の再任を認可しない方針を明示したのであり、日本郵政株式会社法に基づいて政府が対応を決定する限り、西川社長を続投させる方策はない。

唯一あり得るのは、麻生首相が鳩山総務相を罷免(ひめん)して、西川氏続投を認可する総務相を新たに任命する場合に限られる。この場合、麻生首相は、自民党内「市場原理主義者」=「売国勢力」の要請に屈服することを、高らかに宣言することになる。

罷免された鳩山氏は自民党を離党することになるだろう。

国会審議が6月末で実質的に完了することを踏まえると、総選挙の日程は、もはや二通りしか存在しなくなっている。補正関連法案の国会決議までは解散できないことを前提とすると、7月12日の都議選との同日選の可能性はすでにほぼ消えている。

6月末に国会審議が実質終了してしまうことを踏まえると、この段階で解散すれば、総選挙日程は8月2日大安になる。8月9日は長崎の原爆被災日で、総選挙を行なうのには問題が多い。

ここで解散がない場合、衆議院解散は国会閉会中にはないため、解散は9月10日の任期満了日にならざるを得ない。9月10日に臨時国会を召集し、召集時解散を行なうのだ。この場合、投票日は10月18日先負になる可能性が高い。任期満了選挙である。

民主党の小沢前代表が辞任し、後任の新代表に鳩山由紀夫氏が就任した。この結果、風向きは再び民主党に順風、自民党に逆風に転換した。このため、麻生首相は体制を立て直し、10月18日投票の総選挙日程を頭に置いたと考えられる。

しかし、この考えは甘い。

麻生自民党総裁の任期が9月で満了になるからだ。したがって、総選挙日程を10月に先送りする場合、必ず総選挙前に自民党総裁選が行われることになる。自民党議員は、選挙の顔を間違いなく差し替えるはずだ。

つまり、麻生首相が自分の指揮の下で総選挙を実施しようと考えるなら、そのチャンスは6月末解散8月2日総選挙しかないのである。

麻生首相に西川日本郵政社長続投を強く要求している勢力は、
①まず、西川社長続投をごり押しする。
②西川社長続投が確定した段階で、自民党総裁選前倒し論を党内で高め、麻生おろしを実行する。
③そのうえで、10月総選挙に臨む。
のシナリオを頭に置いていると考えられる。

麻生首相は二つの問題に結論を出さなければならない。

第一は、西川社長更迭の判断を示した鳩山総務相の意向を尊重するのか否か。結論を出すことだ。西川社長を更迭すれば、党内に亀裂は生じるだろう。逆に、西川社長を続投させるためには、その前に鳩山総務相を罷免しなければならず、鳩山邦夫氏の離党まで覚悟に入れる必要が生まれる。

第二は、6月末に自分の手で衆議院の解散に踏み切るかどうかを決断することだ。6月末に解散しない限り、ほぼ確実に、次の総選挙の際の自民党総裁は麻生氏ではなくなっているだろう。

優柔不断に、重要事項に対する決断を先送りし続けてきたツケが、いま、はっきりと表れている。本ブログでは、西川社長解任問題を2月18日付記事以来、繰り返し論じてきた。すでにすべて着地していなければおかしい時期に、麻生首相が「ぶれぶれ」なのだから、そもそも首相の器を持たれていないと考えるべきかも知れない。

麻生首相が有終の美を飾れる選択肢はひとつしか存在しない。西川氏更迭を決断し、6月末解散、8月2日総選挙を決断することだ。サミット直後の7月12日都議選の結果を見てからでは解散は打てない。解散する場合は、6月末が唯一のチャンスである。

鳩山総務相はこのシナリオを念頭に置いて、着実に演技を進行させているのかも知れない。このシナリオが麻生首相と鳩山総務省で共有されている場合、西川社長は更迭され、6月末に衆議院解散が決定され、8月2日に総選挙が実施されることになる。麻生首相がものを考えることがあるとすれば、この可能性が高いように思われる。

ここで解散がない場合は、8月ないし9月に自民党総裁選が実施され、新しい自民党総裁の下での10月18日総選挙になるだろう。しかし、国民から見ると、小泉首相が総裁を退いてから、4回目の総裁選になる。もう誰も評価しない。自民党惨敗は必至だ。

 

果たして麻生首相にこの明白な現実が見えているか。答えは間もなく示される。

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