日本郵政は誰のものか中川(秀)氏石原氏の誤り
麻生首相は日本郵政西川善文社長更迭問題について、国会答弁で繰り返し、
「所管大臣である総務大臣が適切に判断する。」
と明言してきた。
所管大臣の鳩山邦夫総務大臣は、西川社長の続投を認めない方針を明言した。
日本郵政株式会社法は第九条に、
「会社の取締役の選任及び解任並びに監査役の選任及び解任の決議は、総務大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。」
と定めている。
この三者を踏まえて判断すれば、西川社長は更迭される。
ところが、麻生首相の発言が急変した。
「鳩山総務大臣が所管大臣、株主が財務大臣、人事をやるのが官房長官、三者で話う合うのがいいんじゃないか」
国会答弁とまるで違う。またまた、「ぶれぶれ」炸裂だ。
株主は財務大臣ではない。株主は日本政府である。政府資産を財務省が一元管理しているから、政府を代表して株主総会に出席する。
政府のなかで、日本郵政株式会社の取締役等選任についての権限を有するのは総務大臣である。したがって、総務大臣の判断が政府の判断になる。総務大臣の判断を総理大臣が否定する場合、総理大臣は総務大臣を罷免(ひめん)して内閣総理大臣の意向に反しない判断を示す人物を総務大臣に任命することになる。
財務大臣が日本郵政の人事に独自に権限を持つわけではない。
「人事をやるのが官房長官」の発言は「謎」である。
日本郵政取締役人事がいつから内閣官房長官の所管になったのか。
日本は法治国家である。法律に基づいて行政が行なわれるのは当然のことだ。
法治国家の行政権の長である首相が、このような正統性を持たない政権運営をすることは許されない。
日本郵政株式会社法は、総務大臣に日本郵政株式会社取締役等選任に関する最終権限を付与している。
日本郵政株式会社法第九条が、
「総務大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。」
と明記しているのは、日本郵政の指名委員会、取締役会、株主総会の決定よりも、最終的な総務大臣による決定を重いものとして扱っていることを示している。
御用メディアは鳩山総務相が一人で反乱を起こしているかのような伝え方をするが、行政の最高責任者である麻生首相が、この問題について、
「所管大臣の総務大臣が適切に判断する」
と明言し、総務大臣の判断に委ねる方針を国会答弁で何度も明言したのである。
批判するならその対象は、手の平を返したような発言の「ぶれ」を示した麻生首相でなければおかしい。
鳩山総務大臣が職権を濫用して、自分の利益を拡大するために、人事に横やりを入れ、情実人事を行なうのなら、鳩山総務相を批判してもよいだろう。しかし、鳩山総務相が主張する西川社長更迭方針は「正論」そのものである。
この問題に関して「正義」は鳩山総務相の側にある。
日本郵政は2400億円の資金を投じた、固定資産税評価基準額が856億円の貴重な国民資産を、極めて不透明な手続きを経て、オリックス不動産に109億円で売却しようとしたのである。国会での追及により、この売却先決定が、極めて不透明で不正な手法によって行われたことが明らかになった。
だからこそ、野党議員12名が西川善文社長を刑事告発したのである。刑事告発は東京地検に正式に受理された。
「かんぽの宿」売却先決定は、西川社長直属の特命チームが担当したが、このプロジェクトの意思決定者は以下の三名と指摘されている。
日本郵政取締役代表執行役社長 西川善文
同専務執行役 横山邦男
同執行役 伊藤和博
野党議員は西川社長に引き続き、横山氏と伊藤氏についても、刑事告発する見通しである。
疑惑はこれだけに留まらない。
日本郵政が西川社長の出身母体である三井住友ファイナンシャルグループを中心に三井住友系列の私企業に利益供与を図っていたとの疑惑も浮上している。以下の事実が指摘されている。
①郵便局会社が取り扱う第三分野保険で、アフラックのがん保険とともに住友生命の医療保険が選ばれた
②変額個人年金保険で、住友生命、三井住友海上メットライフ生命が選ばれた
③ゆうちょのカード事業で、三井住友ビザカードが選ばれた
④従業員持ち株会の幹事証券業務に大和証券SMBCが選ばれた
などの事実が明らかにされている。
また、住友グループ企業関係者が日本郵政グループ幹部に多数配置されている事実も明らかにされている。
日本郵政
執行役副社長 寺阪元之(元スミセイ損保社長)
常務執行役 妹尾良昭(住友銀行、大和証券SMBC)
郵便局
代表取締役社長 寺阪元之(元スミセイ損保社長)
専務執行役 日高信行(住友海上火災)
常務執行役 河村 学(住友生命保険)
ゆうちょ銀行
執行役副社長 福島純夫(住友銀行、大和証券SMBC)
常務執行役 向井理奇(住友信託銀行)
常務執行役 宇野 輝(住友銀行、三井住友カード)
執行役 村島正浩(三井住友銀行)
こうした現実を踏まえれば、西川社長更迭は当然の措置である。
西川社長続投を主張する自民党議員は、このような「郵政私物化」の実態が明らかにされるなかで、その直接の責任者であり首謀者と考えられる日本郵政西川社長を擁護する立場を示すのであるか。総選挙で堂々とその主張を明示できるのか。
5月27日に鳩山由紀夫民主党代表と麻生太郎首相との間で実施されたのち、世論調査が行われていない。総選挙が近づき、毎月末に世論調査が実施されてきたのに、なぜ、世論調査が急に中止になったのか。
小沢代表秘書逮捕の問題で、頼まれもしないのに世論調査をしつこいほどに繰り返していたマスメディアは、この問題こそ世論調査すべきではないのか。
世論調査をすれば、党首討論では鳩山由紀夫代表圧勝の結果が出ることは明らかだろう。世論調査を実施したが、結果を見て発表を取りやめたのではないか。
かんぽの宿疑惑では、国民の貴重な資産を破格の安値で特定企業に横流ししようとした事実が明らかにされ、その責任を明確化するために所管大臣が社長を更迭する方針を明示した。事実を正しく伝えたうえで世論調査をすれば、圧倒的多数の国民が西川氏更迭に賛成するだろう。
西川社長の続投を必要とする「売国勢力」、「外国勢力」からは、外資系保険会社を通じて巨額の広告費が多くのテレビメディアに投入され、メディア支配力が強化されている。マスメディアの大半が、本来の役割を放棄して権力に迎合し、歪んだ獣道(けものみち)を歩んでしまっている。
テレビのインタビューで、石原伸晃氏と中川秀直氏が口裏を合わせたかのように、間違った発言をした。
「民間会社の問題に総務相が介入しないほうがよい。」
「民間会社」とは日本郵政株式会社のことだろうか。
日本郵政株式会社は「民間会社」ではない。正真正銘の「完全国有会社」である。「完全」と言っても森田健作氏の辞書にある「完全」ではない。
日本郵政株式会社はその株式の100%を政府が保有する純然たる「国有会社」である。「国有会社」である以上、政府、所管官庁、国会、そして国民が厳しく監視しなければならないのだ。
西川善文社長の続投方針を決めたのは、日本郵政の「指名委員会」であるが、この指名委員会のメンバーは以下の5名である。
委員長 牛尾 治朗(うしお じろう)
委員 西川 善文(にしかわ よしふみ)
委員 高木 祥吉(たかぎ しょうきち)
委員 奥田 碩(おくだ ひろし)
委員 丹羽 宇一郎(にわ ういちろう)
これらの委員は、全員が日本郵政の取締役である。
内輪の人々が、自分たち取締役全員の再任を決めただけのことである。
世論調査が大好きなマスメディア各社は、このような問題こそ、詳細な説明をしたうえで、国民がどのような判断を示すかを調査するべきだろう。
ある時は、誰にも頼まれないのに毎日のように「世論調査」なるものを振りかざすのに、どうしてこのような、世論調査が求められる局面では、死んだふりをするのだろうか。
国民は声こそ出さないが、冷静に見つめていると思われる。鳩山総務相は「更迭はありえても辞任はあり得ない」と明言している。
「総務大臣がしかるべく判断する」と断言した麻生首相が、鳩山総務相の判断を無視して西川社長の続投を決めるなら、国民は、麻生首相も結局、「市場原理主義者」、「売国勢力」に名実ともに取りこまれたと判断するだろう。
麻生首相は首相になったのだから、せめて、ただひとつでも筋を通した実績を歴史に残すべきではないのだろうか。国民の目を侮(あなど)ってはいけない。
知られざる真実―勾留地にて― 著者:植草 一秀 |
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