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2009年6月 2日 (火)

西松事件不正政治利用に見られる謀略の全貌

 5月27日の党首討論で麻生首相が執着した西松事件。5月31日放送のフジテレビ「新報道2001」では、自民党の細田博之幹事長がフリップまで用意して説明する熱心さだった。

 この点について、問題点を明確にしておく必要がある。

 小沢氏の資金管理団体「陸山会」は、
「新政治問題研究会」と「未来産業研究会」という二つの政治団体からの献金を受け入れ、収支報告書に記載した。

 検察は、この二つの政治団体が西松建設のダミー団体であり、収支報告書に虚偽の記載をしたとして小沢氏の資金管理団体会計責任者の大久保隆規氏を政治資金規正法違反で起訴した。

 この問題の第一人者である郷原信郎元検事・名城大教授は、
①政治資金規正法は「資金拠出者」ではなく、「寄付行為者」を収支報告書に記載することを求めており、「新政治問題研究会」と「未来産業研究会」の名称を収支報告書に記載したことを「虚偽記載」とすることは難しい。
との判断を示たうえで、
「虚偽記載」で犯罪が成立するためには、
②「新政治問題研究会」と「未来産業研究会」の二つの団体には実体がまったくなく、完全な架空団体であり、
③大久保氏がその全体を完全に認識していたとの確実な証拠
が必要であると指摘している。

 ただし、仮にこのことで、犯罪が立証されたとしても、もとより、企業からの政治献金は政治家が支部長を務める政党支部に行なうことが可能であり、多くの自民党議員が政党支部への企業献金を政治家個人の資金管理団体に移し替える「迂回献金」を広範に実行している。

したがって、小沢氏の場合も政党支部で資金を受け入れ、個人の資金管理団体に資金を移せば「合法」であったことになる。この意味で、仮に今回の問題が、形式上、政治資金規正法に抵触するとしても、軽微な「形式的犯罪」に過ぎないことは明白である。細田氏の説明は適切でない。

また、地検は「虚偽記載」等による摘発の基準を1億円としてきた経緯があり、今回、3500万円の事例で摘発したこと自体が異例である。

このような点を踏まえれば、「虚偽記載」にあたるかどうかという今後の裁判の焦点そのものが、極めて軽微な問題であることがよくわかる。

郷原氏が指摘してきたように、小沢氏の問題が「収賄」、「あっせん利得」、「裏献金」につながる場合には、内容によっては「重大事案」となる可能性が生まれるが、「虚偽記載」だけでの摘発は、摘発事案そのものが「極めて軽微」であると言わざるを得ない。

この問題を、「重大問題」として取り扱おうとする与党と御用メディアの姿勢が、「極めて政治的である」として糾弾(きゅうだん)されるべきだ。

こうした点を踏まえて今後の公判を見る必要がある。

検察は西松建設幹部を摘発した事件を通じて、西松建設による政治団体を通じた献金について、小沢氏サイドと通じて実行したことを主張すると予想される。そのなかで、検察は大久保氏も「迂回献金システム」に関与したと主張するのだろう。

しかし、仮にそのような「迂回献金システム」が存在したとしても、その「システム」に深く関与したのは、大久保隆規氏ではなく、前々任者である高橋嘉信氏ではないかとの見方が有力である。

高橋嘉信氏は小沢氏秘書をやめて、次期総選挙で小沢前代表の地元である岩手4区から自民党公認候補として立候補する見通しである。

こうした背景の考察をも通じて全体を概観すると、今回の西松事件全体が、政治権力による民主党小沢前代表攻撃を目的とする「政治謀略」であるとの疑いが一段と濃厚になる。

3月24日の夜、大久保氏が虚偽記載で起訴された日、小沢民主党代表が無実潔白であるとの見解を表明した。NHKは小沢氏記者会見関連報道を終えた直後の、25日午前零時の定時ニュースで、「大久保氏が政治資金収支報告書にウソの記載をしたとの起訴事実をおおむね認める供述を始めた」との報道を行なった。

私は、NHK報道の悪質さを直感して直ちに記事を記述した。

政治資金規正法の「虚偽記載」での立件の犯罪構成要件には、あいまいな部分があり、複雑だが、二つの政治団体が西松建設と何らかの関わりがある程度の認識を大久保氏が何らかの形で示すようなことは十分に考えられると推察した。

ただ、仮に大久保氏がそのような会話をしたとしても、そのこと自体は、犯罪を認めることではまったくない。ところが、検察は取り調べのなかでの誘導尋問的な会話での応答を、都合良く言い換えて、あたかも被疑者が犯罪を認めたかのような発言に仕立てて、それをマスメディアに報道させることが、頻繁にある。そのような類(たぐ)いのことだと推察した。

そもそも、検察による情報リークは国家公務員の守秘義務違反に該当する。また、メディアは報道に際して、裏付けを取ることが鉄則である。松本サリン事件で、河野義行氏の人権を著しく侵害した教訓を忘れてはならないのだ。

「晴天とら日和」様が、5月25日に保釈された大久保隆規氏が発表したコメント全文を掲載下さっている。下記に転載させていただく。

「私、大久保隆規は、本日、勾留されていた東京拘置所より保釈が認められました。本件に関しましては、3月3日以来、関係者の方々に大変ご心配をおかけし、誠に申し訳ございませんでした。

現在私は、政治資金規正法違反被告事件で起訴され、公判を控えておりますので、事件の中身について発言を控えるべき立場にあることを皆様にご理解戴きたいと思います。

ただし、問題とされている政治資金に関しては、私は政治資金規正法の定めに従って適切に処理し、かつそのとおり政治資金収支報告書に正しく記載したものであり、法を犯す意図など毛頭無く、やましいことをした覚えはありません。この点は、裁判の中できちんと争うべきことで、自分の主張は法廷で明らかにして参りたいと思います。

最後に、この3ヵ月近く、私はもとより、私の家族に対し、多くの方々から暖かいご支援、励ましのお言葉を戴きました。この場を借りて、厚く御礼申し上げます。

大久保隆規」

(ここまで転載。太字は本ブログによる。)

つまり、3月25日午前零時以降、マスメディアが土石流のように報じた「大久保氏が起訴事実を認める供述を始めた」との報道は「嘘(うそ)」であった可能性が極めて高いのである。

小沢氏攻撃を強め、辞任に追い込むとの「謀略」が存在した可能性が極めて高い。

「晴天とら日和」様は、この問題に関する貴重な「証拠」を膨大に保存された。極めて重要な資料になる。

麻生政権の下で、西松事件での前社長第1回公判が6月19日、前事業部長第1回公判が7月15日に設定された。総選挙を睨んで日程が設定されたことは確実である。

検察サイドは迂回献金の「システム化」を悪質だとする主張を展開し、小沢氏サイドがその「システム化」に関与したことを強調すると考えられるが、上述したさまざまな事情を十分に考える必要がある。仮に「システム」的なものがかつて存在したとしても、大久保氏が認知していないことは十分に考えられるのだ。

 

また、被告となっている西松建設関係者が検察と一種の司法取引をして、求刑等を軽減する代わりに検察と口裏を合わせた供述を行うことも十分に考えられる。この点で、被告供述の信用性については十分な疑いをもって判断することが求められる。

「ダミー」とされる二つの団体を通じた献金を、二つの政治団体名を記載して処理した政治資金管理団体を有する国会議員は自民党に10名以上存在する。これらの議員がまったく摘発されないことの方が、はるかに重大な「犯罪的行為」である。

西松事件で検察が主張するロジックをあらかじめ摘出し、そのロジックを糾弾(きゅうだん)するとともに、それよりもはるかに重大な意味を持つ「政治謀略」の構造を明らかにすることがより重要である。

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