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2009年6月 6日 (土)

総選挙の争点と国会議員定数削減論への反対論

次期総選挙の最大の焦点は日本の政治を「政官業外電の悪徳ペンタゴン」から国民の手に奪取できるかどうかである。「政権交代」の是非が最大の争点である。具体的な政策としては、

①大資本の利益を優先する経済政策
②官僚の天下り利権の根絶
③消費税大増税の阻止
④議員世襲の制限
⑤セーフティネットの強化
が争点になる。

大資本と政治の癒着を象徴するのが、企業献金である。

民主党は「3年以内の企業団体献金全面禁止」を政権公約に明示することを決定した。西松事件でクローズアップされたのは「政治とカネ」の問題である。企業が政治に資金を提供し、政治が国民ではなく資本の利益を満たすように行動することが問題なのだ。企業献金を得ること、「カネ」を得ることが政治の目的になってしまうことが問題なのだ。

自民、民主両党の2007年政治献金実績は以下の通りだ。

自民:総額224億円、うち企業献金168億円
民主:総額 40億円、うち企業献金18億円

経団連加盟企業の経団連を通じる企業献金は、
自民:29億1000万円
民主:8000万円
である。

自民党の政治が「金まみれ」であり、自民党の政治が「企業と癒着」しているのである。この問題を断ち切るのが「企業献金全面禁止」の提案である。

官僚主権の政治を象徴するのが巨大な「天下り」利権である。「天下り」を受け入れる政府機関に年間12.1兆円もの財政資金が投入されている。天下りを根絶することによって、大きな財政支出の削減を実現することができる。

「悪徳ペンタゴン」は官僚と大資本へのバラマキ、無駄遣いてんこ盛りの補正予算を編成し、そのツケを一般国民に大型消費税増税として負担させようとしている。

民主党は「天下り」などを温存したままでの消費税大増税を認めない方針を明示した。岡田克也氏は2005年9月の総選挙で、消費税の3%引き上げ方針を示したが、鳩山新代表は、次期総選挙後の4年の任期中は消費税増税を封印することを明示した。

したがって、「献金・天下り・消費税」が分かりやすい総選挙の争点になる。

民主党が「政権交代」の大きな旗を掲げ、
「企業献金全面禁止・天下り根絶・消費税大増税阻止」
の具体的提案を政権公約に掲げて総選挙を闘えば、有権者の多くが民主党を支持するだろう。

自民党は総選挙を目前に控えて、総選挙の争点を独自に提示しようと考え、御用メディアにその普及に努めさせている。

その争点が、
①社会保障と安全保障の二つの「保障」問題
②国会議員の議員定数削減
③世襲議員制限
の三つである。

①の社会保障と安全保障の二つの「保障」を争点に掲げる狙いは、消費税増税を正当な政策と位置付ける理屈付けと、野党分断作戦だ。

年金制度の安定性を確保するためには大きな財源が必要で、消費税増税を避けられないとするのが自民党の主張である。消費税増税を封印する民主党の姿勢を「無責任」と攻撃しようとしている。

しかし、民主党の主張は「増税に手をつける前に天下りなどの無駄を排除することが先決だ」というもので、国民は民主党の主張に賛同するだろう。

社会民主党は武力行使を伴う自衛隊の海外派兵を恒久化する立法措置には断固反対する意向を示している。自民党は安全保障問題をクローズアップすることにより、野党共闘にひびを入れようとしている。姑息(こそく)な考えである。

③の世襲制限について、自民党は紆余曲折を示しているが、結局、実効性のある施策を示すことができなかった。6月5日付日本経済新聞によると、次期総選挙で同一選挙区から3親等以内の親族が連続して立候補する「連続世襲」候補者は、自民党57人に対し、民主党6人である。

民主党連続世襲と政治資金の承継を禁止するルールを明示したが、自民党は世襲制限を結局、次の次の総選挙からの実施にすることで、先送りを決めたようである。4代目世襲になる小泉元首相次男は自民党から公認を得る可能性が高い。自民党は世襲制限でも実効性のあるルールを作れない。

このなかで、自民党は議員定数削減を掲げようとしている。他に目玉になる施策を示せないため、消去法で議員定数削減が掲げられるわけだが、この提案も実効性を伴うのかはっきりしない。

私は国会議員の定数削減を急ぐ必要がないと思う。「植草事件の真相掲示板」様に「風太」様が6月2日に意見を提示されたが、私も同感だ。理由を三つ示す。

第一は、日本の国会議員が人口に比べて、決して多すぎると言えないことだ。グラフは神戸学院大学の上脇博之教授が作成したものだが、人口10万人当たりの国会議員数は、日本の場合、0.57人である。

Photo  

米国が0.17人で極端に少ないが、それ以外の欧米主要国は、日本よりも人口当たりの国会議員定数が多い。

国会は国民生活の全般にわたる重要問題をすべて審議する場である。各分野に強い国会議員が求められるし、各種委員会で、内容のある論議をしてもらわなければならない。国会議員の定数を削減する強い根拠は存在しない。

第二は、国会議員定数削減が比例区の削減を中心に提唱されているが、比例区定数が削減されると、少数政党が不利な影響を受けやすくなる。

小選挙区と比例の併用により、小選挙区で当選しなかった議員に向けられた投票が各政党の議員を復活当選させるために生かされる。比例の併用によって、投票がまったく意味を持たないという「死票」を減らす効果を持つ。

自民、民主が二大政党としての地位を確実にしているが、多様な国民の民意を正確に国政に反映することを重視するなら、「死票」を減らし、少数政党からの議員が輩出される現行制度のメリットは大きい。

第三に、参議院を廃止して一院制にしようとの主張があるが、日本の政治風土を踏まえるとリスクが大きい。2005年9月に自民党は単独で衆議院の3分の2に迫る議席を確保した。

一院制の下で、特定の政党が、何らかの要因で議会の3分の2を確保し、例えば憲法改正などの行動を取れば、その行動が成立してしまう。いま振り返っても、2005年9月の総選挙は、一種の「熱病」による選挙結果と評価されるわけで、この結果だけを根拠に、諸制度が根本から変更されてしまうのはあまりにもリスクが大きい。

二院制により、政治体制の変化は一気に生じない。とりわけ参議院では議会の解散がなく、議員の任期が6年で、3年ごとに半数ずつ議員が入れ替わる制度が取られており、政治体制の変更にはどうしても時間を要する仕組みになっている。

ドラスティックに制度を変更するうえでは障害になるが、国民が制度の抜本変更に際して、現実を見ながらじっくり時間をかけて考えることができるメリットがある。

2007年7月の参議院選挙で参議院では野党が過半数を確保した。次期総選挙で野党が衆議院でも過半数を確保すれば、本格的な政権交代が実現する。有権者は2007年7月から次期総選挙までの約2年の時間をかけて、「政権交代」の是非をじっくり考える時間を得たのである。

マスメディアが作り出す空気によって、選挙結果が振れやすい日本の政治風土を踏まえれば、二院制で、政治体制の変更に時間を要することは、極めて重要な安全弁の役割を果たしていると言える。

また、企業献金を廃止すると個人献金が重要になると言われるが、政治活動に必要な資金は国家が保障することが望ましいと思われる。政治資金の収支を全面開示することが必要条件であるが、政治活動に対する国家予算からの助成金を拡大することを検討するべきだ。

その一方で、政治活動の資金を献金に頼る仕組みを解消させるべきである。

財政の膨大な無駄は徹底的に削減するべきだが、この流れの中で、国会議員の定数削減などの論議を安易に、雰囲気だけで進めるべきでない。国会議員が減れば、個別政策に詳しい官僚がますます政策立案での実権を握ってしまう。国会議員を減らすのでなく、国会議員に精力的に仕事をしてもらうことが肝要だ。

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