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2009年6月10日 (水)

西川続投で日本郵政は売国勢力の食い物に?

――サンプロ一族“暴走”の背景

 

テレビ朝日が西川社長続投に向けて総力を結集している。

裏を返せば、西川社長続投の確約が得られていないことの表れである。

6月9日午前のテレビ朝日の偏向報道は突出している。

テレビ朝日番組『サンデープロジェクト』メンバーは、足並みを揃えて西川社長続投をごり押しするいびつな論陣を張っている。

田原氏、竹中氏、大谷氏、高野氏が足並みを揃えている。三井住友の裏側にはゴールドマンサックスが存在しており、強い力が働いていると見るべきである。

6月9日午前のテレビ朝日は「やじうまプラス」、「スーパーモーニング」と連続して偏向報道のオンパレードであった。ここまで来ると放送法第3条の「政治的公平」に違反している疑いがあると考えられる。アリバイ作りのためか、森永卓郎氏が出演して正論を述べていたが、番組の色を薄めるには至らなかった。

そもそも「かんぽの宿」疑惑とは何であったのか。この評価が決定的に重要である。

この疑惑が「プロセスに多少とも不透明な部分がない訳ではないが、全体として背任などの犯罪に該当する事案ではない」のなら、大きな問題として扱う必要はないだろう。世間も強い関心を寄せたりはしなかっただろう。

しかし、現実は違う。「背任などの犯罪に該当する可能性が十分にある」と考えられる。

日本郵政から段ボールが17箱提出されたといっても、検察が抜き打ちで家宅捜索に入ったわけではない。都合の悪い資料をわざわざ提出するわけがない。

「かんぽの宿疑惑」の核心は、かんぽの宿79施設を破格の安値で「オリックス不動産」に売却することが「仕組まれた」のではないかとの疑惑である。現段階では、まだ「仮説」の領域である。しかし、多くの状況証拠が、疑惑を強化しているのは事実である。

①売却の告知が十分とは言えなかった
②当初の打診で400億円見当の金額を提示した業者が門前払いされている
③第一次選考、および第二次選考の過程が極めて不透明
④第二次選考ではHMI社が一番札を入れている。

⑤第二次選考のあとで世田谷レクセンターが外されている。
⑥アドバイザーから3度にわたって売却中止提案があったが、売却が強行された。
⑦「かんぽの宿」の簿価が、2006年3月期から急激に引き下げられた。
⑧日本郵政が財産承継する際の財産評価委員会委員で調査部会委員を担った不動産鑑定士奥田かつ枝氏がオリックス関連企業の社外取締役を務めている。
⑨日本郵政で「かんぽの宿」売却の担当部長が、オリックスの出資する不動産会社ザイマックス社から日本郵政入りしている。
⑩「かんぽの宿」売却が「チーム西川」と呼ばれる、三井住友銀行から出向している横山邦男専務執行役、ザイマックス社出身の伊藤和博氏のラインだけで進められた。

 まだまだ、いくらでも挙げることができるが、上記した「疑惑の仮説」を補強する数々の事実が判明している。

 不動産市況が悪化するなかで売却を進めれば、売却価格が低くなることが予想される。これは、買い手に好都合な状況で、本来、売り手はいったん売却方針を凍結するべき環境である。

 売却契約締結後のオリックス不動産の広報を見ると、「かんぽの宿79施設」は、オリックス不動産が全国展開を考えていたホテル事業にうってつけの資産構成になっている。

 こうしたことから、このディール全体が、周到に仕組まれた「出来レース」であるとの疑惑を拭えないのである。

 仮に、これが仕組まれた出来レースであったとするなら、会社法の特別背任未遂に該当することは明らかである。

 現段階では証拠が不十分であるが、問題の潜在的な重大さは極めて深刻である。選考過程での不透明さは、無理やり「オリックス不動産」を売却先とするための工作に起因しているとの疑いを払拭できない。

 これ以外にも、カード事業での三井住友カードの採用、博報堂との独占契約、メリルリンチのアドバイザー選任、などにかかる疑惑も浮上している。

 これだけの事実が判明しているなかで鳩山総務相が、社長交代が必要と判断したのである。この判断が私情によるもの、あるいは、根拠が不明確なものであれば、批判は鳩山総務相に向かうはずだ。

 しかし、鳩山総務相の指摘に瑕疵(かし)はない。きわめて順当で正当な主張を示している。

 竹中氏は日本郵政が利益をあげていることを強調するが、ゆうちょ銀行には200兆円の資産があり、利ザヤが0.8%確保されている。これだけで1.6兆円の粗利益が確保される。利益はこの資金が生んだものであり、誰がトップに座っても生まれる利益である。

 竹中平蔵氏、中川秀直氏、石原伸晃氏などが、口を揃えて間違った主張を示している。竹中氏の考え方は、竹中氏の著書に明記されているから分かりやすいが、その主張の核心は以下の記述にある。

「辞書によると、民営化とは、「民間の経営に任せること」とある。文字通り郵政民営化とは、郵政の経営を民間に任せることであり、政府はそれが可能なように、また効率的に行われるように枠組みを作ることである。これで、西川氏に、経営のすべて、民営化のすべてが委ねられることになった。」
(竹中氏の著書『構造改革の真実』239ページ)

 「これで」とあるのは、日本郵政の初代CEOに西川氏が就任することが内定したことを示している。この言葉は、2005年11月11日に西川氏の初代CEO就任内定を受けて西川氏と竹中氏が行なった記者会見の時点での竹中氏の判断を示している。

 日本郵政は2007年10月1日に株式会社形態に企業形態が移行した。竹中氏は、株式会社に経営形態が変わることをもって「民営化」が実現したとして、「民営化」した以上、日本郵政の経営のすべてが西川氏に委ねられることになったと「勘違い」したのである。

 この間違った判断から、「民営化した日本郵政の経営に総務大臣が介入することは根本的な誤り」だとする、「根本的に誤った」判断が導かれたのだ。

 日本郵政が会社法第2条に定められた委員会設置会社である。委員会設置会社では指名委員会が取締役等の選任を行なう。指名委員会の委員が取締役によって構成されることは当然のことだ。

 御用メディアや西川氏続投論を主張する人々は、日本郵政の指名委員会が決定したことを尊重するべきだとするが、指名委員会が取締役全員の再任を決定する行為は、取締役である指名委員会委員を含む当人たち自身の再任を決定するわけで「お手盛り委員会」と呼ばれてもやむを得ない。

日本の企業のなかで委員会設置会社方式を採用している企業はあるが、米国などの事例を取り入れたと言う以上の特段の実績は示されていない。また、取締役の構成において、社外取締役の比率が過半を占めている事例は決して多くない。実際には、常勤でない社外取締役が「お飾り」的な意味しか有していないケースが圧倒的に多いと考えられる。

日本郵政の場合に、プロパー職員である旧郵政職員が一人も取締役に選任されていないのはいかにも不自然である。

日本郵政のガバナンス(統治)を考えるときに、企業経営が株主の意向を反映して行なわれるべきであることは基本の基本である。

現在の日本郵政は株式の100%を日本政府が保有している、したがって、取締役会にしろ、指名委員会にしろ、その意志決定においては、100%株主である政府の意向を反映しなければならないはずだ。ところが、今回の取締役等選任の人事案決定に際しては、指名委員会が100%株主である政府の意向を事前に斟酌(しんしゃく)した形跡がない。これは、指名委員会が当然果たすべき責務を怠ったものと言わざるを得ない。

日本は法治国家である。法律に基づく運営が確保されなければならない。

日本郵政株式会社法は総務大臣に極めて強い権限を付与している。2005年9月の郵政民営化総選挙での民意を尊重すべきだと言うなら、この選挙を受けて成立した「日本郵政株式会社法」の条文を忠実に遵守(じゅんしゅ)することこそ、民意を尊重する姿勢である。この法律に西川社長の続投を擁護すべきとは書かれていない。書かれていることは、「取締役等選任については総務大臣の認可がなければ効力を生じない」ということである。

財務大臣は株式を保有する政府において財産を一元管理する所管大臣として株主総会に出席する。しかし、取締役等選任に関する決議について判断する権限は総務大臣の専権事項とされていることから、財務大臣は取締役等の選任にかかる決議案については、総務大臣の判断に従って行動することが求められる。

したがって、総務大臣が西川社長の続投を認可しない考えを明示しているなら、財務大臣は株主総会で決議案に反対しなければならない。

麻生首相はこの問題について、5月21日の衆議院予算委員会で「所管大臣である鳩山総務大臣がしかるべく判断される」と明言していた。鳩山総務相の判断に委ねる考えを示していたのだ。麻生首相の「ぶれ」が問題を拡大する最大の要因になっている。

「かんぽの宿」疑惑は「郵政民営化」の実態が「郵政私物化」あるいは「郵政米営化」であることを示す氷山の一角と捉えるべきである。これだけ重大な事案が表面化し、詳細を調べても疑惑が深まるばかりであるのに、西川社長の退陣を求めない人々は、「郵政私物化」、「郵政米営化」に加担する一味であると判断せざるを得ない。

たしかに、西川社長更迭論を唱える人々のなかに、旧来の郵政勢力による日本郵政支配を目論む人々が存在するのは事実であろう。私は、日本郵政の官僚による支配を望ましいと考えていない。

「私物化」でも、「米営化」でもなく、また、「官僚支配」でもない日本郵政を創設しなければならないのだ。そのためには、国民の利益のために行動する、「私物化」と「官僚化」とを厳格に排除する優れた人材を登用しなければならない。適正な人事はたやすいことではないが、だからといって、「私物化」の濃厚な疑いを持たれている人物を、目をつぶって再任することは正当化されない。

一部の人々がこれほど執拗に西川社長更迭に抵抗するのは、西川氏が解任されることに、余程、不都合を感じる理由があるからと考えざるを得ない。テレビ朝日の報道姿勢は一種異様な空気を帯びている。

ここまで切羽詰まった行動を示すことは、西川氏続投工作が必ずしも順調に進展していないことを暗示する。

麻生首相は恐らく取引を持ちかけられているのだと考えられる。

「郵政私物化勢力」は麻生氏が西川氏続投を決定すれば、麻生おろしを封印し、10月総選挙まで麻生体制を支えるとの条件を示しているのだろう。

麻生政権にとっては5月16日以降、総選挙への逆風が立ってしまったために、解散総選挙へのためらいがある。できれば、10月まで時間を稼ぎ、その間に体制を立て直したいと考えているのだろう。この意味で、「郵政私物化勢力」の提示した取引は魅力的ではある。

しかし、6月14日千葉市、7月5日静岡県、7月12日東京都で自民党が三連敗すれば、麻生おろしは封印し切れない。その場合、麻生氏は総選挙を前に辞任を迫られる。

世論の圧倒的多数は西川氏の辞任を求めており、日本郵政の「大掃除」を求めている。6月末に西川氏更迭を決めて、8月2日総選挙に臨む選択肢も捨てがたいのだ。麻生首相はこちらを選択する可能性を残しており、ややその可能性の方が高いために、「郵政私物化勢力」が焦燥感を隠せないのだと思われる。

最後に宮内義彦氏と郵政民営化との関係について、事実を指摘する。宮内氏が著書で「かんぽの宿」への関心を示していたことはよく知られている。しかし、竹中氏は本年1月19日付産経新聞「ポリシーウォッチ・かんぽの宿は不良債権」に次の記述を示している。

「郵政民営化のプロセスに規制改革会議が関係したことはない。(中略)宮内氏が郵政民営化にかかわったというのは、ほとんど言いがかりのようなものである。」

 宮内氏は総合規制改革会議の議長を務めていた。竹中氏は著書の中で、郵政民営化について、2003年9月26日の「経済財政諮問委員会」でキックオフの論議がなされたと記述している。

 その直後にあたる2003年10月7日に2003年度第5回総合規制改革会議が開催された。この議事録から関連部分を転載する。

「その他
 7月の第3回会議で、複数の委員から提案があり、その後当会議としての取組み方を検討していた「郵政三事業の民営化など」に関する取り扱いについては、金子大臣が小泉総理とご相談されていたところであるので、その内容について大臣からご説明を頂戴したい。

(金子大臣)本年夏以降、総合規制改革会議の委員の間では、郵政三事業の民営化などについて同会議で取り扱うべきとの議論があったと聞いている。一方、ご存知のとおり小泉総理からは、本件を経済財政諮問会議において集中的に取扱うこととし、そのとりまとめを竹中大臣にお願いしたいとの指示が公式にあった。
 そこで、こちらの会議との関係について、先週の閣議終了後、小泉総理と相談させていただいたが、総理は総合規制改革会議でそのような議論があったことについては、石原前大臣からも聞いていたとのことである。しかし、2箇所で検討を行うよりは1箇所に集中して、来年の秋までに基本方針をまとめるというスケジュール感をもって取り組んでいきたいので、経済財政諮問会議で一元的に検討させたいとのことであった。委員の皆様には何とぞご理解願いたい。なお、総理からは規制改革の推進についてしっかりやって欲しいとの激励があり、また、これから議論される事項についてもしっかり進めて欲しいとのお言葉があったことを申し添えたい。

(宮内議長)当会議と経済財政諮問会議とは、引き続きできる限り連携を保っていくことを考えているので、同会議から本件についていろいろな検討依頼がされることも想定できるのではないかと思うが、大臣が話された事情のとおり、当面、アクションプランの追加項目からは外すこととしたものである。」
(転載ここまで)

 総合規制改革会議でも郵政民営化は議論の俎上に載せられたのである。

「「郵政三事業の民営化など」について、総合規制改革会議としての取組み方を検討していた」ことが明記されている。しかし、結果として、経済財政諮問会議に一本化されることになった。宮内氏は「引き続きできる限り連携を保っていく」とも述べている。宮内氏が郵政民営化とまったく関わりがなかったわけではない。

 すべてを総合的に判断して、西川社長については、法律の規定に基づいて、総務大臣の決断に従い、更迭することが求められる。

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