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2009年6月25日 (木)

東国原氏の不見識と総選挙に臨む国民の心構え

 自民党の古賀誠選対委員長が宮崎県の東国原知事に衆院選出馬を要請したことが話題になっている。選挙に際して有名人を出馬させ、一般国民からの得票を増やそうとする、いわゆる「タレント候補擁立」。

この行動自体が、有権者を見下す行為である。

小泉政権が郵政民営化を推進しようとしたとき、竹中平蔵郵政民営化担当相が指揮した政府広報では一般国民を見下す卑劣な手法が用いられた。

拙著『知られざる真実-勾留地にて-』第一章「偽装」28「蔑視されていた国民」に記述したが、以下に概要を再掲する。

郵政民営化に際して、小泉政権は竹中平蔵氏の秘書であった岸博幸氏が関係していると伝えられる「有限会社スリード」という会社に1億5000万円規模の政府広報業務を随意契約で発注した。

この政府広報では、竹中氏とタレントのテリー伊藤氏を登場させたB4サイズ、二つ折り4ページ・フルカラーの「郵政民営化ってそうだったんだ通信」と題する新聞折り込みチラシが作成され、2005年2月20日に全国の約1500万世帯に配布された。

国会では随意契約も問題にされたが最大の問題とされたのは「有限会社スリード」が提示した企画書である「郵政民営化・合意形成コミュニケーション戦略(案)」に、「B層にフォーカスした、徹底したラーニングプロモーションが必要と考える」との総括が示されていたことだ。

企画書が記した「B層」とは何か。「B層」はグラフによって説明されていた。タテ軸にIQ(知能指数)の高低、ヨコ軸に構造改革への肯定度合いが記された。下半分がIQの低いゾーンで、このゾーンが四角で囲まれて「小泉政権支持基盤=B層」と特定された。

内容は、「主婦層&子供を中心」、「シルバー層」で、「具体的なことはわからないが、小泉総理のキャラクターを支持する層、内閣官僚を支持する層」と説明された。

国民をIQで分類し、IQの低い層にターゲットを絞ったPR戦略が実行されていたわけだ。このような卑劣な、国民を軽蔑した姿勢が取られていたことをどれだけの国民が知っていたことか。

「郵政民営化ってわたしたちの街と暮らしを元気にする そのためのもの」

郵政民営化街の元気をつくるんだ」

「郵政民営化こそ改革の本丸なのです」

こんな言葉が並ぶパンフレットが作成された。

2005年9月11日の総選挙では、小泉政権の「B層」にターゲットを絞った戦術が効果をあげて自民党は大勝した。 

しかし、その結果、何がもたらされたのか。

「弱者切り捨て」=「弱肉強食奨励」=「拝金主義」のすさんだ日本社会がもたらされた。

「郵政民営化」で郵政サービスは低下し、「かんぽの宿」にみられる国民資産収奪の実態が明らかにされた。

詳しいことをよく知らない国民をたぶらかせて郵政民営化の法律を成立させ、ごく一部の人々がハゲタカのように国民資産を喰い物にしているのが「郵政民営化」の実相である。

自民党は2005年9月の郵政民営化選挙の幻想からまだ離れられないのだろう。

東国原宮崎県知事がなぜ高く評価されているのか。

テレビが東国原知事を頻繁に出演させ、東国原知事が宮崎県の宣伝をしているからだ。テレビが東国原氏をこれほどテレビに登場させていなければ、東国原人気が上昇することはない。これは、橋下徹大阪府知事についてもあてはまる。

知事として地道に努力を積み重ね、着実に実績をあげていても、テレビが大きく取り上げなければ全国人気にはならない。

議員にしろ、知事にしろ、重責を担おうとする候補者は、公職をまっとうすることを有権者に誓う。有権者は候補者を信用して重責を信託するのだ。当選した以上、任期をまっとうすることは最低限の責務である。有権者から国政への転身を強く要望されて転身するのならともかく、知事としての職責を途上で投げ出すのは無責任極まりない対応と言うほかない。

東国原知事は、自民党が東国原氏を次期総裁候補として掲げて総選挙を戦う覚悟があるかを古賀誠氏に尋ねたという。まともな思考回路が存在すると思われない。

次期総選挙は政権を選択する「政権選択選挙」である。政党は次期首相候補を掲げ、国民に次期政権と次期首相の選択を迫る。東国原氏の発言は、古賀氏と会談した直後と翌日で大きな変化が生じていた。自民党総裁選の規則、総選挙との時間的関係などについて、詳しいことを考えずに発言していたとしか考えられない。

総選挙後に自民党総裁選が行なわれることを前提にすると、東国原氏の発言に従えば、総選挙後の東国原氏を次期総裁候補に担ぐことを宣言しながら自民党が総選挙を戦うことを要求したことになる。しかし、総裁選には誰が立候補するか分からないから、東国原氏は誰が総理になるか分からない状態で自民党が総選挙に臨めと主張しているのか。発言の意味が分からない。

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このような失態を演じていることに、自民党の末期的状況が象徴されている。一方で自民党は総選挙前に総裁選を前倒ししようとしているが、昨年9月にお祭り騒ぎの総裁選を実施したのは何だったのか。

次期総選挙を戦う総選挙の顔をお祭り騒ぎ総裁選で選んだのではなかったのか。要するに自民党は主権者である国民に対する敬意を有していないのだ。

総選挙は、総選挙後にどのような政治を実現するのかを明示し、その政策の内容について国民の審判を仰ぐ場である。その場限りの人気投票を行なう場ではない。

①企業と政治の関係をどうするか。

②官僚の天下りを断ち切るか

③消費税大増税に踏み込むか

④セーフティネットを強化するか

⑤政治家世襲を制限するか

の5点が大きな争点になる。

 さらに、日本郵政の「郵政私物化疑惑」を徹底解明するかどうかも重要な争点になる。

 企業と政治の関係、「政治とカネ」の問題を断ち切るには、「企業団体献金の全面禁止」が不可欠である。野党が「企業献金全面禁止」で合意を形成できるかどうかが注目される。

 「天下り根絶」は日本政治を刷新する最大の施策である。官僚利権の根幹に「天下り利権」がある。官僚が在任期間に関係した業界に再就職することを一定年限禁止することが「官と業」の癒着を断ち切る大きな力になる。

 「郵政民営化」の実相は「郵政私物化」、「郵政米営化」であった。「郵政民営化」を推進する人々の実態は「郵政米営化」、「郵政私物化」推進者であった。

 「政官業の癒着トライアングル」のなかにある族議員を「官僚派」

 「政外電の癒着トライアングル」のなかにある議員を「売国派」

と呼ぶことができる。この「官僚派」族議員と「売国派」議員によって形成されるのが「政官業外電=悪徳ペンタゴン」による利権政治である。

 これに対抗する政治が

 「政民労の民主政治トライアングル」実現を目指す野党勢力である。

 「民」は生活国民であり、地域住民である。

 「労」は勤労者、労働者である。

政権交代を実現する意義は、日本の政治をこれまでの、

「資本の論理」、「官僚の論理」、「中央の論理」に基づく姿から、

「生活者の論理」、「国民の論理」、「地域の論理」に基づく姿

に転換することにある。

明治維新から140年、1955年体制構築から55年、日本の政治構造は一貫して「資本の論理」、「官僚の論理」、「中央の論理」に従うものだった。

主権者である日本国民は、選挙の期間だけ主権者となり、目くらましの投票誘導政策に惑わされてしまった。あるいは、マスメディアの情報操作によって投票が誘導された。国民の利益を代弁する強力な野党が存在しなかったことも、旧来の政治が長期間残存した大きな要因である。

この政治構造を転換するチャンスが到来している。

民主党を中心とする野党は、目くらましの「さもしい」人気取りの手段に目をやらずに、王道を進むべきである。国民も政治の主役が国民であることを自覚して、どのような政治実現を目指すのかを熟慮して総選挙の投票行動に臨まねばならない。

民主党の原口一博議員が、自民党の行動について、「好きなようにどうぞ」と突き放していたが、賢明な対応である。野党勢力は国民と連携して本格的な政権交代実現を目指さねばならない。

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