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2009年6月

2009年6月30日 (火)

岡田幹事長自制と野党共闘確立が求められる

総選挙に向けて、本格政権交代実現を目指す野党勢力は、結束力を強め、共闘体制を強化しなければならない。民主党は5月16日に体制を立て直す代表選を実施した。公明正大な選挙の結果、鳩山由紀夫氏が代表に選出された

代表選には岡田克也氏も立候補し、鳩山氏とは異なる主張を展開したが、選挙によって鳩山氏が新代表に就任した。

その後、麻生首相との間で2度の党首討論が実施された。鳩山由紀夫氏が民主党代表に就任して以降、世論調査における民主党に対する支持率は急激に上昇した。次期首相にふさわしい人物としても、鳩山由紀夫氏が麻生太郎氏を大きく引き離してトップに躍り出た。

マスメディアは意図的に岡田克也氏をテレビ等に登場させている。その狙いは、鳩山代表の見解と異なる発言を岡田氏から引き出すことにあると考えられる。岡田氏が鳩山代表と異なる発言をすれば、政府・与党とマスメディアは、その相違を針小棒大に取り上げて、鳩山代表の発言を攻撃する。この目的のために岡田氏を頻繁にテレビに登場させている。

岡田氏はテレビ番組等に出演する際に、岡田氏が民主党の鳩山代表執行部の一員であることを十分に踏まえるべきだ。岡田氏の個人的な見解が鳩山代表の主張と異なる点はあるだろう。しかし、岡田氏のテレビ出演は個人の資格によるものではなく、党の施行部の一人としてのものである。

鳩山代表が党首討論党で発言する内容は、党の代表としての発言であるから、政党としての責任を伴うものである。岡田氏はテレビ等での発言に際して、鳩山代表発言との整合性を何よりも重視する必要がある。岡田氏が鳩山代表発言に疑問を持つなら、鳩山代表との間、あるいは民主党執行部のなかですり合わせするべきである。テレビ番組などで整合的でない発言を示すことは百害あって一利なしだ。

岡田氏発言と鳩山代表発言とのずれは、以下の四点に表われている。

①日本郵政西川社長解任

②ガソリン暫定税率廃止

③消費税大増税問題

④新規施策と財源のバランス

鳩山代表は党首討論で日本郵政の西川社長について、政権交代を実現すれば、更迭する方針を明言した。ところが、岡田氏は6月28日のNHK日曜討論で「党として正式に決定したわけではない」と発言した。これを「代表の顔に泥を塗る発言」と言う。自分を前に出し過ぎるのでは幹事長として失格だ。

ガソリン暫定税率廃止、新規施策と財源とのバランスについても、岡田氏の発言は岡田氏の持論である「緊縮財政論」に傾斜がかかり過ぎている。NHK日曜討論などの場は、岡田氏の主張を開陳する場ではなく、民主党の考え方を述べる場である。言い換えれば、鳩山代表に成り代わって発言する場である。

「天の時、地の利」が得られているのに、「人の和」が乱れては大事を成就できない。岡田氏は組織人に徹しなければならない。

消費税増税問題についての鳩山代表の姿勢は明確である。天下り根絶など、「官の無駄」を根絶するまでは安易に消費税増税を認めないとするものである。国民の多数の声を代弁している。「官の無駄排除」をおろそかにしたままで、消費税増税論議に傾斜することは、必ず「官の無駄排除」の不徹底につながる。

鳩山代表は民主党代表選でもこの考え方を力説した。そのうえで代表に選出された。代表選の延長であるかのごとく、岡田氏が持論を展開することは反党行為であると同時に、政権交代を希求する多数の有権者に対する背信行為になってしまう。

他方、政権交代を実現するには、社会民主党、国民新党、新党日本、新党大地との共闘体制を強固にすることが不可欠である。

民主党は比例区を中心に国会議員定数削減を提案しているが、この提案を撤回するべきである。日本の国会議員定数は国際的に見てすでに少ない。官僚丸投げの政治を是正するには、専門能力を持つ多数の議員が必要である。官僚機構の無駄排除を優先するべきであり、議員定数の削減に拙速に進む必要はない

Photo

グラフは神戸学院大学上脇博之教授作成

 

また、比例代表の定数を削減することは、少数政党の議席を削減する効果を持つ。選挙における投票に示される民意をきめ細かく政治に反映するには、少数政党の議席減少につながる比例代表の定数削減は有害である。民主党は野党共闘を重視して、定数削減問題についてのスタンスを変更するべきだ。

企業献金全面禁止については、国民新党の譲歩が求められる。企業献金が「政治とカネ」問題の根幹に横たわる。企業が「浄財」として政治資金を社会貢献活動の一環として提供することも考えられない訳ではないが、企業献金の大半は、何らかの形での見返りを求める資金である。この利益動機に基づく企業献金が政治を歪めてしまうのだ。

また、野党共闘においては、社民党の主張に配慮して、自衛隊の海外における武力行使を認める恒久法の制定に慎重であるべきだ。また、憲法第9条の改正を急ぐ必要性も低い。

「小異を残して大同に付く」ことが肝要である。異なる政党であるから、すべてで完全一致することは不可能である。基本政策において、お互いに譲歩し、共闘による政権交代実現を優先するべきだ。

_72 「政・官・業・外・電の悪徳ペンタゴン」による利権政治を打破し、全国民の幸福実現を追求する、公正で、透明な政府を樹立することが、優先されなければならない。既得権益を守ろうとする執念はすさまじい。野党が結束して政権交代を目指さなければ、大事は成就しない。

民主党の党内結束、「小異を残して大同に付く」野党勢力の共闘体制確立が、政権交代実現に不可欠である。最後の決定権を持つのは主権者である国民だ。野党共闘による政権交代実現を希求する国民が、政党に積極的に働き掛けてゆくことが大切である。

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2009年6月29日 (月)

「小泉王国」横須賀市で反撃の狼煙が上がった

 6月28日に実施された神奈川県横須賀市長選で、無所属新人の元市議吉田雄人氏(33)が、無所属の現職蒲谷亮一氏(64)ら二氏を破り、初当選した。投票率は45.22%で前回の40.19%を上回った。

吉田氏は6月14日に当選した千葉市の熊谷俊人市長(31)らに次ぎ、全国で三番目に若い市長となる。

横須賀市長選が発する最大のニュースは、地元出身の小泉純一郎元首相が集会や街頭演説で声をからして全面支援した、再選を目指した現職の蒲谷亮一氏(64)が落選したことである。

蒲谷候補には自民、公明だけでなく民主党も推薦して支援した。民主党は自民党との相乗りを原則禁止した小沢一郎前代表の方針を遵守するべきであった。

だが、「小泉王国」とまで言われた横須賀市で、小泉純一郎元首相が全面支援した現職候補が落選した衝撃は絶大である。

副島隆彦氏との共著

『売国者たちの末路 私たちは国家の暴力と闘う』

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を紹介する祥伝社のコピーは以下の通りだ。

流れは、変わった!
衰退するアメリカ 小泉・竹中政治の闇と終幕 財務省利権 政権交代を阻止する勢力 地獄へひた走る世界経済
――新たな時代を予測する、衝撃の対論!

確実に流れが変わりつつある。

小泉竹中政治は

①弱肉強食奨励の市場原理主義経済政策

②官僚の天下り利権の温存

③外国資本への利益供与

を軸に据え、

④議員世襲の容認

⑤企業献金の容認

を基軸に据えてきた。

この路線に対する見直しの機運が、日本全体に広がりつつある。

①セーフティネットの再構築

②官僚天下り利権の根絶

③外国資本でなく国民の幸福を追求

④議員世襲の制限

⑤企業献金の全面禁止

をマニフェストに掲げる勢力による本格政権を樹立しなければならない。

 民主党・社民党・国民新党・新党日本・新党大地が強固な共闘体制を構築し、次期総選挙に臨まねばならない。

 巨大な政治利権を死守しようとする「悪徳ペンタゴン勢力」は、利権死守のためにあらゆる手を尽くしてくると考えられる。目くらましの「新党設立」の動きも本格化するだろう。

 また、検察権力を行使した野党攻撃がさらに拡大される可能性もある。国民本位の政府樹立を目指す国民は、これらの「目くらまし工作」に惑わされてはならない。巨大権力の手先に堕してしまっている大半のマスメディアは、工作活動に全面協力するだろう。

 しかし、これらのすべての妨害工作を克服し、総選挙に勝利し、国民の利益を追求する政府樹立に全力を注がねばならない。

 静岡県知事選では自公推薦候補に有利な立候補者乱立の下で選挙戦が展開されているが、この状況下で野党推薦候補が勝利すれば、その意義は極めて大きい。心ある有権者の力を結集しなければならない。

 日本の流れを転換する狼煙(のろし)が「小泉王国」と言われた神奈川県横須賀市からあがった。この民衆の力の爆発を日本全国に広げなくてはならない。民主党は鳩山由紀夫代表の下に結束し、一糸乱れぬ行動を示してゆかねばならない。

 「天の時、地の利、人の和」がそろう時に、大事は成就される。民主党の引き締めが求められる。

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副島隆彦氏のメッセージと高橋清隆氏論評記事

 副島隆彦氏学問道場の掲示板にありがたいメッセージを掲載下さった。副島氏からは今回の最高裁不当判決の直後から、温かな激励のお言葉を賜り続けており、心から深く感謝している。副島氏からは植草救援委員会を作り、信頼できる人々と連携して行動するなどの身に余るありがたいご提案まで賜っている。温かな激励のお言葉に感謝の言葉を見出すことができない。ありがたくお心を賜り、弁護団とも相談して対応申し上げさせていただきたいと考えている。

 以下に、副島隆彦氏が学問道場掲示板に掲載下さったメッセージを転載させていただく。

「副島隆彦です。 

 私、副島隆彦は、この判決の4日前に、植草氏との対談本「売国者(ばいこくしゃ)たちの末路」(祥伝社刊)を出したばかりである。私は、この司法官僚どもの暴挙に、激しい怒りを覚える。

 植草氏は、この判決で、実刑判決を受けたようである。2006年の未決拘留(みけつこうりょう)の132日間のうち、60日ぐらいしか算入しない決定で、実刑の、刑務所への収監の残余の2か月が執行されるようである。私には、これ以上の詳しいことは今の時点では分からない。植草氏の弁護団がいろいろと教えてくれるだろう。私は、氏と連絡を取り合っています。

 私たち学問道場は、植草氏を支援し、警察・検察・裁判所(すなわち法務省官僚ども)の、権力犯罪、言論弾圧を許さず、植草氏への実刑攻撃に対して、強く抗議すべく、私は、弟子たちと慎重に協議した上で、何らかの抗議行動に打って出ることにします。

 植草氏を支援する人々と一緒になって、協力し合って、権力犯罪との闘いを始めなければならないと思います。これからは、私たちは、慎重に注意深く動かなければならないと思います。相手は、政治警察(公安警察)と法務省だからです。
                     副島隆彦拝」 

 身に余るありがたいお言葉に心より感謝申し上げたい。

副島隆彦氏がご紹介下さったが、高橋清隆氏ライブドアPJニュース

「植草被告の上告を棄却=小泉・竹中政権の犯罪暴露を恐れてか」

と題する論評記事を掲載下さったので、ご閲覧賜りたい。被害者とされる女性が事件発生当時未成年で、被害者の特定につながる情報を一切公開できず、また、被害者供述も非公開で行われたため、被害者とされる女性についての情報がまったく伝えられずにきたが、この点についても重大な問題が存在している。

その内容については、いずれかの適切な機会に明らかにしたいと思うが、高橋清隆氏が記述下さったように、今回の事件および裁判には、極めて強い政治的背景が存在すると私は考えている。

高橋氏は私が巻き込まれた冤罪事件について、これまで継続的に公正な記事を執筆してきて下さっている。改めて深く感謝の意を表したい。

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判決に伴う当事者への影響において決定的に重要な事項は、有罪・無罪の違いはもちろんだが、実刑か執行猶予かの相違にある。日本の刑事事件取り調べにおいては、「犯罪を認めれば早期保釈・執行猶予付き判決」、「犯罪を否認すれば長期勾留・実刑判決」という取り扱いを示唆し、一種の「司法取引」的手法により自白の強要が行なわれているのが実情である。

西松建設事件初公判の罪状認否では、西松建設前社長の国沢氏が起訴事実を全面的に認めた。このため、メディア報道は検察側主張が全面的に正しいとの前提で報道する傾向が強くなる。

しかし、6月19日付記事

「西松事件初公判と政権交代実現への課題」

に記述したように、求刑および判決での刑の軽減と引き換えに、被告が検察側主張を全面的に認めるインセンティブが働く点に十分な注意が必要である。

関係者が複数存在する事件においては、被告の一部がこうした司法取引で犯罪を認めてしまうと、真実に基づいて犯罪を否認する被告が存在しても、その主張が退けられてしまうとの問題も発生する。村上正邦氏などの事例は、このケースに該当するように思われる。

いずれにせよ、判決における「実刑」と「執行猶予」の落差は極めて大きい。真実に基づき犯罪を否認し続ける限り、不当な長期勾留を科せられ、また、判決において実刑が科せられる。つまり、無実の主張を貫くことに極めて大きなコストが発生するのが日本の現実である。

したがって、状況によっては、節を屈して事実に反して犯罪を認めてしまうことも生じやすい。逆に言えば、この状況下で無実の主張を貫くことは、強い真実の裏打ちがなければ、基本的には不可能であると言えるのだ。

ライブドア株式取得に関連してインサイダー取引疑惑で検挙された村上世彰氏は、逮捕勾留され、犯罪事実を認める供述をしたために、早期に保釈された。ところが、保釈されてから否認に転じ、第一審では実刑判決を受けた。一般的には取り調べで犯罪を認め、保釈後に犯罪を否認するのは悪質と見られる。

ところが、第二審では刑が軽減され、執行猶予付き判決になった。極めて珍しいケースであると考えられる。

村上ファンドの最大の出資者はオリックスである。村上ファンドは、極めて重大な機密情報を多数保持していると考えられる。

「かんぽの宿」疑惑などのオリックスに関連する問題などと村上ファンドが何らかの関わりを持つことも考え得る。また、村上ファンドへの出資者として福井俊彦前日銀総裁の名前が表面化したが、これ以外の出資者については、関係者名がまったく公開されていない。

村上氏に対する判決が実刑から執行猶予に減刑された背景に、これらの事情が関係しているとの見方も成り立ちうるように思う。

日本の警察・検察・司法制度において、直ちに是正が求められることは、

①取り調べの全面可視化

②否認事件における不当長期勾留の禁止

③適法手続きの遵守

を確実に確立することである。

04年の事件では、私を逮捕したという警官が、「逮捕する旨を告げたところ本人がうなずいたので逮捕した」との趣旨の現行犯人逮捕手続書を作成していたが、公判で、逮捕する旨を説明したかと問われ、そのような発言を一切していないことを明言した。

この警官は証人尋問で、手続書を警察署で事務的に作成したことを証言した。つまり、逮捕、勾留といった基本的人権の根幹にかかわる公権力の行使に際しての「適法手続き」="Due Process of Law"が完全に形骸化(けいがいか)しているのである。

また、取り調べに際して、「認めないなら裁判で家族を徹底的に苦しめてやる」などの「脅迫」に基づく自白の強要も行なわれる。「取り調べの全面可視化」を実現して、不当な取り調べを排除することも必要である。

私の身の安全を心配して下さる声を多数賜り、大変ありがたく思う。私は自殺しないことをここに宣言する。三浦和義氏が米国政府に拘束されている間に死亡されたが、私は、自殺する道を選択しないことをここに明言しておく。

日本の民主化、政治の刷新に向けて、微力ではあるが力を注いで参る所存である。なにとぞ、今後ともご支援ならびにご指導を賜りますよう謹んでお願い申し上げたい。

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2009年6月28日 (日)

サンプロがかんぽの宿疑惑適正検証を行なうか

 麻生首相は7月2日の衆院解散を断念しかけている。7月12日の東京都議会選で自民党が敗北しなければ、直ちに衆議院を解散し、8月2日の総選挙に臨むことになるだろうが、都議選で自民党が敗北すれば「麻生おろし」の突風が吹くことになる。自民党は総裁選を前倒しすることになるだろう。

総選挙は8月30日、9月6日、ないし10月4日に先送りされることになる。自民党はお祭り騒ぎの総裁選を実施して、その勢いで総選挙になだれ込むことになるだろう。国民は総選挙目当ての4度目の総裁選を容認するだろうか。

6月28日のテレビ朝日『サンデープロジェクト』に鳩山邦夫前総務相が出演した。「かんぽの宿」疑惑について田原総一朗氏が鳩山前総務相に質問した。

田原総一朗氏-竹中平蔵氏-大谷昭宏氏-高野孟氏-財部誠一氏の「サンプロペンタゴン」は、一貫して西川善文日本郵政社長の続投を支持してきた。

鳩山邦夫氏の語り口は、田原氏が在野で西川続投擁護論を唱える中心人物の一人である事実を鳩山氏が把握していないことを示すものだった。鳩山氏は麻生首相周辺の「振付師」が麻生首相を恫喝して西川社長続投をごり押ししたとの推測を述べたが、田原氏自身が「振付師」の一味であることに気付いていない様子だった。

「サンプロペンタゴン」の主張の概要は以下の通りだ。

①「かんぽの宿」は年間40~50億円の赤字を垂れ流している。

②3200人の従業員の雇用維持条件が付されており、109億円は安すぎる価格でない。

③27社による価格競争入札でオリックス不動産選定への売却が決められた。

④日本郵政は民間会社であり、政府が人事に介入すべきでない。

⑤一連の騒動は郵政民営化反対派による陰謀であり、109億円でしか売れない物件に2400億円もの巨費が投入されたことが非難されるべきだ。

「サンプロペンタゴン」の主張が間違っていることを本ブログで詳しく説明してきた。概要については

「テレ朝報道ステーションの救いようのない欺瞞」(6月13日)

「鳩山総務相更迭問題を逃げたテレ朝サンプロ」(6月14日)

「千葉市長選民主大勝と日本郵政の巨大犯罪疑惑」(6月15日)

「それでも日本郵政西川社長を解任すべき理由」(6月23日)

「国会出頭要請をもう逃げられない竹中平蔵氏」(6月24日)

を参照いただきたい。

鳩山前総務相が「李下(りか)に冠(かんむり)を正さず」と述べた。

「かんぽの宿」は貴重な国民財産であるから、その売却にあたっては、不正が入り込まないよう厳正な手続きが必要であり、客観的な透明性を確保することが絶対に必要である。

日本郵政の内規(総務省に届け出たもので会計法に準じている)は、資産売却の手続きについて、「一般競争入札」、「指名競争入札」、「随意契約」の三類型を定めている。

日本郵政は「かんぽの宿」売却を「競争入札」による売却と説明してきた。「競争入札」には「一般競争入札」と「指名競争入札」の2種類があるが、国会審議を通じて明らかになった「かんぽの宿売却」はこの二つの類型のいずれにも属さない「随意契約」であった。

「かんぽの宿」売却先決定プロセスが不透明極まりないものだったのだ。この不透明性から鳩山総務相が「出来レース」との疑惑を指摘した。鳩山氏の指摘は、国会審議で明らかになった事実に照らして正論である。単なる言いがかりではない。日本郵政の行動が「李下(りか)に冠を正さず」の姿勢からかけ離れていることは間違いない。

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「かんぽの宿」は2400億円の資金を投じ、時価1000億円以上の価値があると判断される不動産である。時価評価の最も有力な基準は固定資産税評価基準額だが、固定資産税評価基準額は857億円である。

1000億円の価値がある「かんぽの宿」資産を109億円(承継負債を含めると129億円)で売却することを正当化した根拠は、「かんぽの宿」の簿価が日本郵政内部で129億円に引き下げられたことにあった。

「かんぽの宿」の簿価は2006年3月期から、突然大幅に引き下げられたのだ。「週刊ポスト2009年3月13日号」に掲載された「かんぽの宿79施設」の簿価推移を以下に示す。日本郵政から総務省に運ばれた「17箱の段ボール」資料に示された数値だ。

2003年4月 1726億円
2004年3月 1620億円
2005年3月 1535億円
2006年3月  672億円
2007年3月  326億円
公社閉鎖時    129億円
2008年3月  125億円
2008年9月  123億円

2007年3月の326億円を129億円に書き換えたのが「承継財産評価委員会」で、その中心的役割を果たしたと見られているのがオリックス関連企業取締役を務める奥田かつ枝氏である。

宮内義彦会長の著書「経営論改訂新版」(2007年)には、宮内氏の「かんぽの宿」に対する認識が記述されている。

「「かんぽの宿」は、料金の割に施設が充実しているため、主婦層を中心にした顧客基盤をしっかりと築いています。こうした施設に民間のホテル、旅館業が対抗していくのは容易ではありません。」

オリックスグループは、ここ数年、経営難に直面したホテルや旅館を買収する「再生ビジネス」に力を入れてきた。宮内氏はかねてより「施設の充実した「かんぽの宿」」に注目し、「かんぽの宿」が民間宿泊施設よりも「競争力」を有しているとの認識を有してきたのである。

宮内氏が指摘する「顧客基盤」に関連して重要な事実は、「かんぽの宿」が会員数100万人を超える「メンバーズ」を保有していることだ。オリックス不動産が昨年年末にHPで明らかにした「かんぽの宿」取得の広報では、この「メンバーズ」に対して、オリックスグループ商品を供給する方針が示された。

79施設の一括売却が、「オリックス」のビジネスモデルに合わせて設計されたとの見方が十分に成り立つのである。全国チェーンに見合わない物件は、それ以前に売却されており、オリックスが必要とする物件だけが売却対象に盛り込まれたとの見方が十分に成り立つ。

安値売却を生み出した二つの「マジック」は、

①事業収支に基づく不動産鑑定評価

②3200名の従業員の雇用維持と転売規制

である。

安値売却を正当化する人々は、かんぽの宿の「40~50億円」の赤字を前提とした不動産鑑定評価と、雇用維持条件を「正当性の根拠」に持ちだす。

ところが、この「40~50億円の赤字」が不透明極まりない。

「かんぽの宿」事業収支の赤字は2008年3月期では5億円に過ぎない。2010年3月期には10億円の黒字計上が見込まれていたことも明らかにされている。「40~50憶円の赤字」の意味が明らかにされなければならない。

そもそも「かんぽの宿」は「加入者福祉施設」であって、赤字であることが予定されている施設である。したがって、この事業収支を前提とする鑑定評価は適正でない。総務省は「取引事例比較法」に基づく鑑定評価を実施する必要がある。

3200名の従業員の雇用維持が強調されるが、オリックス不動産に課せられた雇用維持条件は次のものだった。

3200人の従業員のなかの620人の正社員のなかの550人について、たったの1年だけ雇用条件を維持するとの条件が付されただけだったのだ。また、転売規制にも抜け穴条項が用意されていた。

550人の雇用だけが雇用維持条件の対象であるなら、これらの人々に全員1000万円の早期退職勧奨金を支払っても、その合計金額は55億円である。55億円の支払いを実施して、純粋不動産として売却すれば、はるかに大きな売却代金を確保できるはずである。

貴重な国民資産である以上、日本郵政は最高の価格で資産を売却する責務を負っている。ところが現実には、オリックス不動産に対して、法外に低い価格で国民財産を横流ししようとしたとの疑いを払拭できない。

鳩山前総務相も指摘したが、今回の売却には当初、400億円の価格を打診した買い手が存在した。この業者が門前払いされ、不透明な選考手続きを経て、3社にだけ第二次選考への参加が許された。

その1社が住友不動産で、住友不動産には別の物件が提供され、住友不動産が二次選考への参加を辞退したことが明らかになった。第二次選考に参加したHMI社に対しては、応募締め切り後に、目玉物件の世田谷レクセンターが外され、HMI社も結局辞退した。その結果、オリックス不動産への売却が決まった。これらの経過を見て、「出来レース」と考えない方がおかしい。

今日の「サンデープロジェクト」でも「サンプロペンタゴン」一員の財部誠一氏は、「100億円でも高い」などと叫んでいたが、上述した検証に対する説得力のある反論はまったく示されていない。

田原氏は「サンプロ」で次週、この問題を扱うと発言した。どのような検証が行なわれるのか注目される。

予想されるのは、総務省が実施した250億円の鑑定評価を報道することだ。この鑑定がどのような経緯で実施されたのかが定かでないが、西川続投擁護派が関係しているはずである。

また、高い鑑定評価額提示は「承継財産評価委員会の決定」を完全否定することをもたらす。この場合、さらに大きな問題に発展し、多くの関係者の責任問題が浮上する。総務省がこの責任を回避した可能性が高い。

適正な数値を得るには、「収益還元法」ではない、「取引事例比較法」に基づく鑑定評価が不可欠である。

温泉旅館の全国チェーン展開を計画していたオリックス不動産にしてみれば、1000億円の価値を持つ「かんぽの宿70施設プラス9ヵ所の首都圏社宅施設」を129億円で取得できれば、巨大な利得になる。

雇用条件は550人に対して1年だけ保証すればよいのだ。全国展開を図る際に、逆に従業員を確保することが大きな課題になるが、雇用条件を維持しないでよい2650人の旧従業員が存在するのだから、まったくコストをかけずに従業員を確保することができる。

「かんぽの宿」メンバーズの100万人の会員は、オリックス生命が販売する保険商品のターゲットとなる100万人である。オリックスにとって、これほど有利な取引は存在しない。

鳩山前総務相が指摘したように、西川社長が更迭され、清廉潔白の新社長が就任し、これまでの悪事の山を白日の下に晒(さら)すことを、力づくで阻止しなければならない人々が存在するのだと考えられる。

収益還元法に基づく不動産鑑定評価と取引事例比較法による不動産鑑定評価の相違は、1万円で売却された物件が直ちに6000万円で売却された事例を考えれば分かりやすい。

「サンプロ」が次週、総務省が実施した鑑定評価額250億円を適正売却の根拠に持ち出すとしても、これだけでは「正当性の根拠」にはならない。「取引事例比較法に基づく不動産鑑定評価」が実施され、その鑑定評価額と比較することが不可欠である。

「かんぽの宿不正売却疑惑」はまったく払拭されていない。検察は政治権力の意図に従ってしか行動しないから、疑惑が解明されるのは、政権交代後になるだろう。この意味でも政権交代を実現しなければならないのである。

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皆様の温かなご支援に感謝申し上げます

 日本の警察、検察、司法権力は腐敗している。私は今回の最高裁不当判決が示されるまで、慎重に裁判所批判を避けてきたが、現実は予想通りのものであった。

民主主義制度、基本的人権を守る上で、警察・検察・司法制度における前近代性除去は何よりも優先されるべき事項である。しかし、日本では政治家でさえ、これらの勢力を敵に回したくないとの理由から、本格的な改革に取り組むことを躊躇(ちゅうちょ)する。

本ブログでしばしば取り上げる「フランス人権宣言」がたった17条の条文のなかに、「政治的自由」、「法の下の平等」、「罪刑法定主義」、「適法手続き」、「無罪推定の原則」などを定めているのは、人権に対する警察権力行使に内在する危険性を深く認識したからに他ならない。

フランス人権宣言はアメリカ合衆国で自由主義精神の洗礼を受けたラ・ファイエットによって起草され、1789年にフランス国民会議によって議決され、1791年のフランス初の憲法冒頭に掲載されたものである。

爾来(じらい)、220年の時間を経た日本では、いまも警察・検察・司法制度、人権軽視がフランス人権宣言以前の状況に放置されている。この問題の潜在的な重大さは極めて深い。

日本の議院内閣制は、法令上の規定によって付与されている権能を最大に活用すると、三権を掌握する独裁者としての地位を内閣総理大臣に付与しかねない危険性を内包している。内閣総理大臣は警察・検察権力の上位に位置し、その活動を指揮し得る立場にある。また、最高裁長官の指名権、および最高裁長官以外の裁判官の任命権は内閣にある。

つまり、内閣総理大臣は司法権を掌握しうる地位にあるのだ。

日本でも建前上は「罪刑法定主義」、「適法手続き」、「無罪推定の原則」、「法の下の平等」、「政治的自由」を基本に据えていることとされているが、現実が異なる。

白川勝彦氏が指摘されるようにDue Process of Law=「適法手続き」の取り扱いが極めて杜撰(ずさん)である。このために、無数の冤罪が生まれている。

足利事件で菅家利和さんの無実が明らかにされ、菅家さんは17年ぶりに自由を取り戻した。しかし、17年の時間を誰も埋め合わせることができない。私たちが考えなければならないことは、目に見えない水面下に多数の冤罪被害者が存在することである。

今回の最高裁不当判決についてのコメントを掲載したところ、本当に多くの皆さまから身に余る温かなお言葉を賜った。心から深く感謝申し上げる。私が罪を犯しているなら、私は潔く事実を認め、罪を償う道を選択している。

98年事件、04年事件、06年事件のいずれについても、私は事実をありのままに述べてきた。天に誓って無実潔白である。心に一点の曇りもない。

「天知る、地知る、汝知る、我知る」との「四知」という言葉があり、拙著『知られざる真実-勾留地にて-』にも記述した。心に一点の曇りもないから、人の世でいかなる弾圧を受けようとも、恥じることはなく、正々堂々と前に向かって進んでゆくことができる。

同時に、多くの心ある人々が、真実を見つめようとし、私の言葉を信じてくれる。この心が私を支えてくれている。真実を見つめる皆様のお心に心から感謝を申し上げたい。

副島隆彦氏は著名人の立場にあり、実名を明らかにするなかで、私の言葉を信じて下さり、対談として著書を出版下さった。そのご決断に心より感謝申し上げている。一人でも多くの皆様に真実を伝えるうえで、この上ない大きな力を賜った。

ネット上でも本当に多くの皆さまから温かなお言葉を賜っていることに、深く感謝を申し上げたい。

 「神州の泉」様「カナダde日本語」様Aobadai Life」様「晴天とら日和」様「文藝評論家山崎行太郎」様「反戦な家づくり」様Easy Resistance」様「東京サバイバル情報」様「一秀君の同級生のブログ」様「どなんとぅ ぬ だぁ」様をはじめ、多数の皆さまから本当にありがたいお言葉を賜った。すべてを紹介申し上げられないが心より感謝申し上げたい。

 また、本ブログへの情報伝達の重責を担って下さっている「植草事件の真相掲示板」様にも、非常に多くの皆さまからありがたいお言葉を多数賜っている。

 

 また、日本電子新聞社様が、『売国者たちの末路 私たちは国家の暴力と闘う』について、ありがたい書評を掲載くださった。書評掲載にお礼申し上げるとともに、ご高覧賜りたい。

 次期総選挙が目前に迫り、日本は歴史上、最も重要な時を迎えている。フランス革命前夜と言い換えてもよいかも知れない。

 政権交代を実現し、警察・検察・司法制度の前近代性を除去しなければならない。日本に本当の意味での民主主義を初めて確立することが求められている。

 

 _72既得権益勢力である「悪徳ペンタゴン勢力」は総選挙まで、あらゆる手段を用いて、本格政権交代阻止に向けての工作活動を展開してくると考えられる。この時期の上告棄却もその一環であると考えられる。

 私も残された時間のなかで、可能な限り情報を発信する所存である。

 マハトマ・ガンディーの「真実と愛は必ず勝利する」の言葉を刻み、進んで参りたいと思う。

 Aobadai Life」様が拙著『知られざる真実-勾留地にて-』から、以下の記述を掲載下さった。

「人として生まれた貴重な時間をどう充実させるか。

 それが人生の課題だ。

 不条理や理不尽を与えられることもある。

 その困難、試練を乗り越える原動力は愛の力だと思う。

 『愛を知ること』が生きることの素晴らしさだと感じた。

 心と心は時空を超えてつながる。

 それを感じることができるなら、いかなる困難も克服できると思う。

 苦難を克服し、信念を守って生きてゆきたい。

 発言を続けることは危険を伴う。

 しかし、人はパンのために生きる存在ではない。

 いかなる妨害があろうとも屈服せず、

 勇気をもって今後も発言を続ける覚悟だ」

 ここで言う「愛」とは人間愛、「無償の愛」である。人を人として慈しむ心=「無償の愛」の力が人を救済すると思う。

 本当に多くの皆様から「無償の愛」を賜り、そのエネルギーは宇宙を貫く。

 微力ながら私も自分のできること、自分の使命を果たしてまいる所存である。なにとぞ今後ともご支援とご指導を賜りますようお願い申し上げます。

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2009年6月27日 (土)

痴漢冤罪事件最高裁不当判決について

 私が巻き込まれた冤罪事件について、最高裁第三小法廷が上告を棄却する決定を下した。言語道断の不当判決である。

もとより政治的な背景のある事案であるから、公正な裁判が行なわれるとは考えられなかったが、先般、痴漢冤罪事件で最高裁が逆転無罪判決を示したため、私のケースにおいても適正な判断が示されるのかどうかを注目してきた。

この事件でも、私を犯人とする証拠は被害者とされる女性のあいまいな証言だけであった。事件を目撃したという証人が出廷したが、警察に出頭した日付も公判での証言と事実が異なり、証言内容にも重大な矛盾が数多くあり、極めて信憑性の低いものであった。

公判では、もう一人の目撃証人が名乗り出てくれ、法廷で証言してくれた。この証人は、事件があったとされる時間帯に、私が何もせずに吊革につかまってぐったりしている様子を明確に記憶されていたことを克明に証言してくれた。証言の詳細な内容は事実に即しており、極めて信憑性の高い証言を示して下さった。

また、私の手指の付着物から採取された獣毛繊維数本が、被害者の着用していたスカート構成繊維と「類似している」との警察証言が証拠採用されたが、弁護側が私が駅事務室でもみ合った駅員の制服生地の構成繊維と比較する大学教授鑑定を行なったところ、手に付着した獣毛繊維が、駅員の制服生地の構成繊維と「極めて類似している」との鑑定結果が得られ、繊維鑑定からも私の無罪が推定されていた。

今回の裁判について、副島隆彦氏との共著『売国者たちの末路 私たちは国家の暴力と闘う』に以下のように記述した。

「私の裁判は現在、最高裁での上告審に移っていますが、こちらの主張を厳正に判断してくれれば、逆転無罪になる。ただ、私の場合は裏側に“政治”があると見ているので油断できないと思っています。」

予想通り、政治がこのような不当判決をもたらしたと考える。

事件の概要については、拙著『知られざる真実-勾留地にて-』巻末資料に記述したのでご参照賜れればありがたく思う。

裁判所がどのような判断を示そうとも、真実はただ一つである。

私は嘘を言わない。私は天に誓って無実潔白である。したがって、心には一点の曇りもない。このような不当判決に遭遇して、怒りは沸騰するが、これが残念ながら日本の現状である。

幸い、多くの皆様が真実を見つめ、私の発する真実の声に真摯(しんし)に耳を傾けて下さっている。私を信じ、私の無実を確信して下さる方が多数存在する。

この皆様方の心を支えとして、私は自信を持って、今後も進んで参りたいと思う。

日本の命運を決する総選挙に向けて、微力ではあるが私もネットから全身全霊を込めて情報を発信している。そのタイミングでこのような不当判決が下されたことに対して、大変強い憤りを感じるが、いかなる弾圧に直面しても、節を屈せず、微力ながら一歩ずつ前進して参りたいと考えている。

多くの心ある人々の力を結集して、政権交代をあらゆる障害を乗り越えて達成しなくてはならないと考えている。

日本の警察・検察・司法制度の前近代性除去は、政権交代後の新政府の最重要課題のひとつになる。

なにとぞ、今後とも温かいご支援とご指導を賜りますよう心よりお願い申し上げます。

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8月2日総選挙を選択するしかない麻生首相

6月25日の記者会見で、麻生首相は「そう遠くない日」に解散することを明言した。同時に麻生首相の手で解散・総選挙を実施する意向を明言した。

自民党議員はこれまで、解散は「首相の専権事項」だと言いながら、ここへきて言いたい放題の状況に陥っている。

細田博之幹事長くらいは、思っていなくても「首相の専権事項」と言わねばならぬところ、「重要法案があるから早期解散が難しい」と発言している。

中川秀直氏に至っては公然と首相退陣論を述べ始めた。中川秀直氏は日本郵政西川社長更迭問題でも、西川氏更迭方針を明示した鳩山邦夫総務相について、「堂々と内閣から退出されたらよい」と述べて、鳩山氏更迭論を展開した。

日本郵政株式会社法は取締役選任に関する総務大臣の認可権を明記している。日本郵政株式の100%を日本政府が保有しており、日本郵政取締役および指名委員会は株主である政府の意向を意思決定に反映させる責務を負っている。

西川氏の続投方針を決めた日本郵政取締役会および指名委員会は意思決定に際して完全出資者である日本政府の意向を斟酌(しんしゃく)する行動をまったく取らなかった。

鳩山総務相が認可権を行使して日本郵政取締役会の決定を認めないのは当然である。中川秀直氏の行動には「正統性の根拠」がない。

日本郵政の西川体制は、かつて認可権を有していた竹中平蔵氏と菅義偉氏が決めたものであって、現時点でこれらの人々が介入することには、何らの正統性もない。中川秀直氏の主張は、小泉竹中一家による日本郵政占拠に部外者は一切手を入れるなというようなものである。

「郵政私物化」の主張でしかない。日本郵政には解明しなければならない巨大な闇が渦巻いている。「かんぽの宿疑惑」、「日本郵政公社による不動産払い下げ」に関する疑惑は、必ず解明されなければならない。

疑惑解明には政権交代が不可欠である。日本郵政の巨大疑惑を解明するためにも政権交代を何としても実現しなければならない。

自民党は昨年9月に麻生首相を選出した。2005年9月の総選挙以来、小泉首相、安倍首相、福田首相、麻生首相と4人の首相が政権をたらい回しにしてきた。安倍首相も福田首相も、政権を担って1年もしないうちに、無責任に政権を放り出した。そのたびに自民党はお祭り騒ぎの総裁選を実施してきた。国民不在の政治行動である。

自分たちが選挙で総裁を選出しておきながら、政権支持率が低下すると総裁交代を口にするのは不見識も甚だしい。中川秀直氏などは昨年9月に総選挙の顔として麻生首相を自分たちの手で選出した事実を忘れてしまっているのか。

また、解散権が首相の専権事項であるなら、首相以外の者が、解散時期についてあれこれ見解を述べるのも不見識である。自民党はもはや泥船状態である。

私は6月22日付記事

「都議選前解散を阻止しようとする麻生首相側の奸」

に次のように記述した。

麻生首相に真実の情報を届ける人物がいるなら、次の事実を伝える必要がある。麻生首相が自身の手で国民に信を問うなら、衆議院を7月2日までに解散するしか道がないことを。」

この記事を読んでのことかは分からないが、誰かが麻生首相に真実の情報を届けたと考えられる。

7月2日までに衆議院を解散しない限り、麻生首相は確実に自民党総裁の地位から引きずり降ろされるだろう。麻生首相の手で総選挙に臨むことはできなくなる。

臓器移植法案が廃案になる恐れがあるが、その場合には秋の臨時国会で対処するしかない。2005年には悪名高い障害者自立支援法が臨時国会送りにされた。

麻生首相が自身の手で解散総選挙を打つ考えを持つのなら、7月2日までに解散するしか道はない。ここまで来れば8月2日も30日も大差はない。それにもかかわらず、8月2日に対する反論が極めて強いのは、麻生おろしが念頭にあるからだ。

この情報も必ず麻生首相に届けられることになる。そのうえで麻生首相がどのように判断するのかは麻生首相に委ねられる。

海部俊樹元首相は1991年に「重大な決意」を表明しながら自民党内の反対に直面して解散権を封じられ、解散権を行使できないまま退陣に追い込まれた。

麻生首相は海部元首相の徹(てつ)を踏まないことを考えていると思われる。

自民党役員人事と同時に解散を決定する可能性が高い。

自民党・公明党と民主党を軸とする野党は、政権構想を明確に掲げて、堂々と政権選択選挙を戦うべきである。足元の覚束ない「偽装CHANGE新党」のような目くらましの姑息(こそく)な行動に国民は目を奪われてはならない。

「かんぽの宿疑惑」で麻生首相が小泉路線の継承を選択した以上、総選挙の最大の争点は、「小泉竹中政治の是非」になる。具体的には、

①セーフティネット強化の是非

②企業献金全面禁止の是非

③天下り根絶の是非

④消費税大増税封印の是非

⑤議員世襲制限の是非

が五大争点になる。

とりわけ、「アニメの殿堂と生活保護母子加算のいずれを優先するか」に代表される

①セーフティネット強化の是非

が最重要の争点になる。

「かんぽの宿疑惑」に象徴される「郵政私物化」、「郵政米営化」の真相解明に進むのか、疑惑に蓋をするのかどうかも重要争点になる。

これ以上の政治混乱を避けるため、麻生首相は7月2日に衆議院解散を決断し、8月2日の「決戦の総選挙」に臨むべきである。

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2009年6月26日 (金)

東国原知事が“新党・偽装CHANGE”創設を誘導

 東国原知事にしても橋下知事にしても、世間の関心が高いのはテレビメディアが両氏を頻繁に画面に登場させるからだ。メディアが両氏に関する報道を最小限にとどめるなら、両氏の動向が世間の強い関心を呼ぶことはない。

つまり、東国原氏と橋下氏の行動がクローズアップされる背景に、マスメディアの「意図」が存在し、その裏側にメディアを支配する巨大権力の「意図」が存在すると考えられる。

東国原氏の報道を見ると、奇妙な点が浮かび上がる。

東国原氏の行動を批判する人々を「抵抗勢力」と描く演出が施されているのである。

「アホらしい」との感想を述べた笹川尭自民党総務会長、「東国原君、顔を洗ってくれたまえ」と発言した松浪健四郎議員の映像は、守旧派勢力として描かれ、悪いイメージを被せられている。

東国原氏を支持する意見を誰が述べているか。

武部勤氏、中川秀直氏、町村信孝氏などである。

自民党清和政策研究会、とりわけ小泉竹中一家、「郵政××化ペンタゴン」に連なる人々が、知事グループに好意的な対応を示している。

昨年来、本ブログで警戒を呼び掛けてきた「偽装CHANGE」勢力が、いよいよ正体を現し始めたと考えられる。

鳩山由紀夫民主党代表が述べたように、これらの人々が本当に「地域主権」、「地方分権」を唱えるなら、この主張を明確に示している民主党に合流すればよいだけのことだ。ところが、これらの人々は、民主党に合流しようとしない。

「霞が関改革」、「地方分権」は有権者の声を反映するスローガンだ。この方針を明確にマニフェストに盛り込んでいるのは民主党である。ところが、二番煎じと言えるこのスローガンを持ちだして、新たな政治勢力を創設しようとしている。

小泉純一郎氏-中川秀直氏-竹中平蔵氏-武部勤氏-小池百合子氏からなる「市場原理主義ペンタゴン」、

渡辺喜美氏-江田憲司氏-高橋洋一氏-岸博幸氏-屋山太郎氏からなる「脱藩官僚ペンタゴン」、

東国原宮崎知事-橋下徹大阪知事-中田宏横浜知事-露木順一開成町長-中村時広松山市長からなる「首長ペンタゴン」、

らが結集して、第三極を編成しようとしている。

 有権者は目くらましに騙されてはならない。この第三極は自民別働隊の「偽装CHANGE」勢力である。

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 _72_2  

 既得権益の死守を至上命題とする既得権益勢力=「悪徳ペンタゴン勢力」は、本格的な政権交代実現により、既得権益を破壊されることを力づくで阻止しようとしている。 

 民主党を中心とする野党勢力が衆議院の過半数を確保すれば、本格的な政権交代が実現する。官僚利権、大資本との癒着、メディアの支配、外国勢力への利益供与、すなわち「政官業外電の悪徳ペンタゴン」が維持し続けてきた巨大政治利権が破壊されてしまうのである。

 巨大利権構造を破壊されないためには、民主党に向かう投票を、第三極に分散しなければならない。「霞が関改革」、「地方分権」の旗を掲げる「第三極」を立ち上げることによって、有権者の目から見ると、民主党を中心とする野党勢力とこの第三の勢力との区別がつきにくくなる。

 この結果、野党に向かうはずの票が分散され、民主党が打撃を受けて、自民党が漁夫の利を得る。これが小選挙区制の最大の特徴である。

 多数の自民党内「小泉チルドレン」は、どちらにしても消滅する運命を背負っている。どうせ消滅するなら、自民党別働隊として民主潰(つぶ)しに貢献できれば、いずれまた浮かぶ瀬もあると考える。第三極で立候補すれば、比例復活当選の道も開ける。

 また、この第三極は、民主党右派との大連立を誘うものでもある。民主党内の前原誠司氏-渡部恒三氏-長島昭久氏-渡辺周氏-馬渕澄夫氏の「民主党内市場原理主義ペンタゴン」は、自民党小泉一家との連携を視野に入れていると考えられる。

中川秀直氏は「霞が関改革」を掲げるが、小泉政権中枢に位置していたときに、「天下り根絶」に向けて行動した形跡がまったくない。小泉政権は財務省利権を拡大させることに尽力したのであり、中川秀直氏が財務省利権の根絶に動くとは到底考えられない。

この勢力の人々に共通する思想は、「市場原理主義」である。市場を通じる「競争」が「進歩」を生み出し、「競争」の結果もたらされる「格差」は各個人が甘んじて受け入れるべきとの考えを有する。

セーフティネットを強化するのでなく、セーフティネットを簡素化することに軸足を置いている。

同時に、いま声をあげている地方自治体の首長は、すべて自民党の支援によって知事に当選した面々である。とりわけ、小泉一家との距離が近い。

いまの日本政治の課題は「小泉政治との訣別」、「小泉政治が破壊した社会の連帯の修復」にある。

また、「かんぽの宿」疑惑は、小泉政治の「売国性」の本質を浮かび上がらせた。同時に小泉改革は「霞が関利権」にまったく手を入れず、「天下り利権」を温存し続けたのである。

次期総選挙で政権交代を実現して達成しなければならない課題は、

①セーフティネット強化による連帯の回復

②天下り官僚利権の根絶

③売国政策の排除

である。

「小泉一家ペンタゴン」=「脱藩官僚ペンタゴン」=「地方首長ペンタゴン」=「民主党内市場原理主義ペンタゴン」の目指す方向は、上記三方向と逆なのだ。

昨年夏に放送されたフジテレビ月九ドラマ「CHANGE」は、本来、民主党への投票集中を回避するための「偽装CHANGE」勢力旗揚げにタイミングを合わせるものであったはずだ。実際、「脱藩官僚の会」が発足し、その後、「日本の夜明け」なる運動体が始動したが、まったく大きな動きにはならなかった。

総選挙日程が丸1年ずれたために、「偽装CHANGE」勢力の正式な旗揚げが1年遅れたが、いよいよ総選挙が迫り、自民党大敗が免れない状況が生まれ、最終的に第三極発足に動かざるを得ない情勢となった。

この動きは、必ず「渡辺喜美氏-江田憲司氏」、「中川秀直氏-武部勤氏-小泉チルドレン」、「東国原氏-橋下徹氏-中田宏氏」の三者が結合する「新党」に向かうはずである。新党は「自民別働隊」であり、名称を「新党・偽装CHANGE」とすれば、内実が分かりやすくなる。

この勢力が仕切るテレビ朝日「TVタックル」は、この勢力に所属する屋山太郎氏と北野たけし氏が、「新党・偽装CHANGE」を全面支援するメッセージを発することになるだろう。

新党設立の目的は、「本格政権交代の阻止」である。本格政権交代を希求する有権者は「新党・偽装CHANGE」に惑わされてはならない。この勢力に投票しても、日本政治の刷新は絶対に生じないと考えられる。

なぜなら、この新党設立の目的が「本格政権交代を実現させないこと」にあるからだ。これらの人々が本格的な政治刷新を目指すなら、民主党に合流すれば、それで済むのである。その方がはるかに国民にとって分かりやすい。

「新党・偽装CHANGE」設立の目的が本格的政権交代阻止にあることを全有権者に正しく伝え、「新党・偽装CHANGE」への投票回避を徹底的に呼び掛けてゆかねばならない。

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『売国者たちの末路』(祥伝社)の大増刷決定

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副島隆彦氏との共著

『売国者たちの末路――私たちは国家の暴力と闘う』
(祥伝社、1680円)

の全国書店店頭での発売が開始されました。

ご高覧賜りますようお願い申し上げます。

お陰さまで、発売開始2日で大増刷が決定されました。

Amazon 等で品薄状況が生じており、ご購読希望の皆様には大変ご迷惑をお掛けしておりますが、順次商品が供給されると思いますので、ネットショップならびに全国書店にお求め下さいますようお願い申し上げます。

すでに、多くの皆さまからありがたい読後感などを賜っております。

副島隆彦先生の学問道場サイトでは、中田安彦様が貴重な書評を掲載下さった。心よりお礼申し上げるとともに、以下にその一部を転載させていただく。

「この本は出来るだけ早めにお求めになることをおすすめします。私は、普段はそういうことは思わないのですが、この本はたぶん、全国の書店で売り切れが相次ぐことになると予感しました。それだけ、この本に書かれている内容は、生々しいものなのです。

 生々しい内容としては、94ページに書かれている、ある外資系ファンドの人々の植草評価である。植草先生の知人で外資系の債券回収業を日本で立ち上げた人物がいる。その人が、外資系ファンドの人たちの集まりの中で、参加者の外資系の人々が、口々に、「ウエクサはガリレオだ。ガリレオを火あぶりにしろ!」と叫んだと植草氏本人に話したという。

 つまり、外資系金融業者が、竹中路線を否定する植草先生を「火あぶりにしろ」と叫んだというのである。この恐ろしいエピソードは、あの当時、主流派エコノミストにとって、小泉・竹中路線に反対することが命をかける行為だったのかを如実に物語っている。

 この本では、副島隆彦先生は持論を述べるというよりは、植草先生の聞き役に回っています。経済学者であり、国策捜査の犠牲者になった、植草一秀先生の緻密な経済分析、そして自ら体験してきた日本の政界との関わりについて、熱心に聞きに回っているのです。

 もちろん、聞き手のうまさ、相手から絶妙な答えを引き出す能力というのも対談本ではきわめて重要なのです。その点、副島先生の植草先生に対する合いの手は、要所要所で重要な証言を引き出すことに成功していると思いました。

 植草先生は、数年前に、痴漢(ちかん)えん罪事件で警察に捕まってしまい、拘置所に勾留されている際に書きまとめた原稿を集めた本、『知られざる真実-勾留地にて-』(イプシロン出版企画)を出版されています。この本の内容も凄かったのですが、今回はこの本の流れをくみつつも、さらにストレートに「権力犯罪」の真相を語っているのです。」

「私が急いで読んだ印象では、この本の内容は大きく三つに分かれます。

 一つ目が、現在アメリカを襲い世界に波及している、アメリカ初の世界金融恐慌についての分析です。ここで植草先生は、的確に数字を引用し、現在の危機の深刻さについて議論を展開します。植草先生は、一級のエコノミストであり、この本でも書かれていますが、おそらく、竹中平蔵や小泉純一郎元首相のような「アメリカの手先」勢力の謀略にはまってしまわなければ、金融大臣になっていただろうと言われる人物です。(本書、83ページ前後)

 二番目が、そんな有力エコノミストである植草先生に襲いかかった、痴漢の罪をでっち上げて、「破廉恥(はれんち)罪」というレッテルを貼り、拘置所に閉じこめ、社会的に抹殺しようとした、「国家権力の手先」との熾烈な戦いの記録です。

「対談集なので、三つの論点は、話の流れに沿って随時、説明されていく。植草先生は、大蔵省で働いていたこともある人なので、若い頃の竹中平蔵の姿も実際に見ている。この時代の目撃者である植草先生の証言は、実に生々しいものである。」

「さて、この植草×副島対談本『売国者たちの末路』の内容について、私としては、詳しく引用して紹介したい。そういう欲望に駆られた。しかし、それでは本が売れなくなる。だから、私が読んでみて、強く印象に残った部分を一カ所だけ引用したいと思います。

 植草先生は、竹中平蔵・元金融大臣と小泉純一郎・元首相の二人が実際に政権担当していたときに起こった権力の乱用(りそな銀行救済を巡る自民党議員のインサイダー取引)、そして、最近の「かんぽの宿」の安値払い下げの問題までカバーしている。

 植草氏は、「かんぽの宿」のオリックス(宮内義彦会長)への安値払い下げ問題には、払い受け企業の選定、その払い下げ価格を巡る資産価格査定について、外資も関与した不可解な状況があるとして次のように述べている。本書の一〇〇ページ以下から引用してみよう。」

 本文はぜひ、「副島隆彦の学問道場」様「今日のぼやき」をご覧くださいますようお願い申し上げる。長文の極めて示唆に富む講評を賜った。改めて深く感謝申し上げたい。

 また、「植草事件の真相掲示板」にも、トミ様、Aobadai Life」様をはじめ、多くの皆さまから感想を寄せていただいている、深く感謝申し上げたい。

 以下に、トミ様と「Aobadai Life」様のご寄稿を転載させていただく。

「拝啓

たった今、『売国者たちの末路』私たちは国家の暴力と戦うを読み終えました。副島先生が、本書の冒頭に書かれた一節を拝読し、涙が溢れてきました。

「この対談本は、植草秀一氏と、私が現下の重苦しい金融・経済情勢、およびやがて来るべき民主党政権誕生への生みの苦しみの最中に編まれた。植草さんは、小泉・竹中構造改革政治(2001~2006)の荒れ狂った嵐の中で、日本国でいちばんひどい目にあった人である(後略)」と書かれています。

「生みの苦しみ」「日本国でいちばんひどい目にあった人」という文字が胸に迫ってきました。こうした現実の中に植草先生がおられる。厳しい状況であるのに、先生は毎日ブログを発信して下さり、私たちはそのことを励みにしている。そんな日々の光景が急に蘇り、胸がいっぱいになってしまったのです。

本書は、政治・経済の過去と現在の真実が凝縮されています。私たちは未来をどうしなくてはならないのかも分かりやすく書かれています。日本が忘れてしまった「信念」と「勇気」が溢れています。

特に、箱崎のロイヤルパークホテルで、小泉純一郎氏に激しく攻撃された場面は壮絶なるものでした。それでも一歩も信念を曲げなかった植草先生に、私の心は揺さぶられました。目の前においしい地位と名誉がありながらも、先生は魂を売ることをしなかったのです。その結果、日本で一番ひどい目にあったのです。何も語らなくとも、このことが先生の全てを語っている、と強く感じた部分です。

本書の「あとがき」で、植草先生は、「私は幸せな人間だと痛感する。思えば、筆舌に尽くせぬ日々を送った過去5年間だったが、苦しみに勝る喜びを得ることができた(後略)」と、本書出版にあたり、副島先生への感謝の意を述べられておられます。

日本で最も秀でた識者であられ、なおかつ、心の温かい、心の深さを同時に兼ね備えた植草先生と副島先生の存在は、私たち一般国民の輝きそのものです。日本の未来は明るい、と今確信を持つことができます。植草先生、そして、副島先生にこころより感謝申しあげます。どうも有難うございます。

敬具 トミ」

「まさに、これ以上ないタイミングで、すごい本が出版されたものだ。
今週発売したばかりの副島隆彦氏と、植草一秀氏の共著、
『売国者たちの末路 -私たちは国家の暴力と闘う-
を、いっきに読み上げた。

この本は一人でも多くの人に読んでいただきたい。
amazon
の書評レビューの勢いも発売間もないのにすごく、
間違いなくベストセラーになると確信しているが、
願わくば、インターネットで真実を知ることのできない
お年寄りや、情報弱者の人々にこそ、
の本を手にとって、今、日本がどういう状況にあるか、
ということを知ってほしいのである。

http://ameblo.jp/aobadai0301/

僕は昨日、アマゾンより入荷。読み終わりました。
内容は教えません。営業妨害になるからです。^^」

 多くの皆様のご支援に心から感謝申し上げたい。

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売国者たちの末路 Book 売国者たちの末路

著者:副島 隆彦,植草 一秀
販売元:祥伝社
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知られざる真実―勾留地にて― Book 知られざる真実―勾留地にて―

著者:植草 一秀
販売元:イプシロン出版企画
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2009年6月25日 (木)

紺谷典子氏著『平成経済20年史』を読み解く

 

平成経済20年史 (幻冬舎新書 こ 9-1) Book 平成経済20年史 (幻冬舎新書 こ 9-1)

著者:紺谷 典子
販売元:幻冬舎
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 

 

総選挙を目前に控え、政治の動きが慌ただしくなっているが、次期総選挙が政権選択の選挙であるとの原点を忘れてはならない。

官僚主権政治、売国政治、中央集権政治を民衆の手で打破する、歴史上初めてのチャンスが近づいている。

これまでの60年間の政治、小泉政権発足以来の8年間の政治を振り返り、新しい日本の道筋を見出すことが求められている。

小泉竹中経済政策を厳しく批判されてきた紺谷典子(こんやふみこ)氏が、

『平成経済20年史』と題する労策を出版されている。

平成を迎えて20年間の日本経済の足取りを丹念に追跡された労作である。ご高覧を賜りたい。

詳しい解説は改めて掲載させていただくが、ここでは、とりあえず目次から内容を紹介させていただく。

『平成経済20年史』(幻冬舎新書)

1章 平成の20年が日本を壊した

2章 「改革」という名の破壊

3章 バブル崩壊

4章 回復のチャンスを潰した

5章 橋本改革

6章 橋本郵政改革

7章 作られた「財政危機」

8章 金融ビッグバン

9章 拓銀と山一

10章 「ダメな銀行は潰せ」

11章 外資だけが利益を得た

12章 回復なくして改革なし

13章 小泉改革が始まった

14章 道路公団の民営化

15章 意図された金融危機

16章 景気回復の嘘

17章 格差の拡大と日本的経営の破壊

18章 年金は本当に危機なのか

19章 医療崩壊

20章 誰のための郵政民営化

最終章 サブプライム・ローン問題の教訓

 格差社会の原因、金融処理の要諦、年金財政の実態、平成長期不況の原因につき、極めて有益な指摘が展開されている。

 私と意見が異なる部分もあるが、建設的な論議を深めるうえで有益で貴重な指摘が多い。また、時系列で日本経済直近20年間を俯瞰(ふかん)するうえで、極めて重要な資料を提供されている。

 経済人だけでなく一般市民も必携の書であると思う。

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売国者たちの末路 Book 売国者たちの末路

著者:副島 隆彦,植草 一秀
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知られざる真実―勾留地にて― Book 知られざる真実―勾留地にて―

著者:植草 一秀
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東国原氏の不見識と総選挙に臨む国民の心構え

 自民党の古賀誠選対委員長が宮崎県の東国原知事に衆院選出馬を要請したことが話題になっている。選挙に際して有名人を出馬させ、一般国民からの得票を増やそうとする、いわゆる「タレント候補擁立」。

この行動自体が、有権者を見下す行為である。

小泉政権が郵政民営化を推進しようとしたとき、竹中平蔵郵政民営化担当相が指揮した政府広報では一般国民を見下す卑劣な手法が用いられた。

拙著『知られざる真実-勾留地にて-』第一章「偽装」28「蔑視されていた国民」に記述したが、以下に概要を再掲する。

郵政民営化に際して、小泉政権は竹中平蔵氏の秘書であった岸博幸氏が関係していると伝えられる「有限会社スリード」という会社に1億5000万円規模の政府広報業務を随意契約で発注した。

この政府広報では、竹中氏とタレントのテリー伊藤氏を登場させたB4サイズ、二つ折り4ページ・フルカラーの「郵政民営化ってそうだったんだ通信」と題する新聞折り込みチラシが作成され、2005年2月20日に全国の約1500万世帯に配布された。

国会では随意契約も問題にされたが最大の問題とされたのは「有限会社スリード」が提示した企画書である「郵政民営化・合意形成コミュニケーション戦略(案)」に、「B層にフォーカスした、徹底したラーニングプロモーションが必要と考える」との総括が示されていたことだ。

企画書が記した「B層」とは何か。「B層」はグラフによって説明されていた。タテ軸にIQ(知能指数)の高低、ヨコ軸に構造改革への肯定度合いが記された。下半分がIQの低いゾーンで、このゾーンが四角で囲まれて「小泉政権支持基盤=B層」と特定された。

内容は、「主婦層&子供を中心」、「シルバー層」で、「具体的なことはわからないが、小泉総理のキャラクターを支持する層、内閣官僚を支持する層」と説明された。

国民をIQで分類し、IQの低い層にターゲットを絞ったPR戦略が実行されていたわけだ。このような卑劣な、国民を軽蔑した姿勢が取られていたことをどれだけの国民が知っていたことか。

「郵政民営化ってわたしたちの街と暮らしを元気にする そのためのもの」

郵政民営化街の元気をつくるんだ」

「郵政民営化こそ改革の本丸なのです」

こんな言葉が並ぶパンフレットが作成された。

2005年9月11日の総選挙では、小泉政権の「B層」にターゲットを絞った戦術が効果をあげて自民党は大勝した。 

しかし、その結果、何がもたらされたのか。

「弱者切り捨て」=「弱肉強食奨励」=「拝金主義」のすさんだ日本社会がもたらされた。

「郵政民営化」で郵政サービスは低下し、「かんぽの宿」にみられる国民資産収奪の実態が明らかにされた。

詳しいことをよく知らない国民をたぶらかせて郵政民営化の法律を成立させ、ごく一部の人々がハゲタカのように国民資産を喰い物にしているのが「郵政民営化」の実相である。

自民党は2005年9月の郵政民営化選挙の幻想からまだ離れられないのだろう。

東国原宮崎県知事がなぜ高く評価されているのか。

テレビが東国原知事を頻繁に出演させ、東国原知事が宮崎県の宣伝をしているからだ。テレビが東国原氏をこれほどテレビに登場させていなければ、東国原人気が上昇することはない。これは、橋下徹大阪府知事についてもあてはまる。

知事として地道に努力を積み重ね、着実に実績をあげていても、テレビが大きく取り上げなければ全国人気にはならない。

議員にしろ、知事にしろ、重責を担おうとする候補者は、公職をまっとうすることを有権者に誓う。有権者は候補者を信用して重責を信託するのだ。当選した以上、任期をまっとうすることは最低限の責務である。有権者から国政への転身を強く要望されて転身するのならともかく、知事としての職責を途上で投げ出すのは無責任極まりない対応と言うほかない。

東国原知事は、自民党が東国原氏を次期総裁候補として掲げて総選挙を戦う覚悟があるかを古賀誠氏に尋ねたという。まともな思考回路が存在すると思われない。

次期総選挙は政権を選択する「政権選択選挙」である。政党は次期首相候補を掲げ、国民に次期政権と次期首相の選択を迫る。東国原氏の発言は、古賀氏と会談した直後と翌日で大きな変化が生じていた。自民党総裁選の規則、総選挙との時間的関係などについて、詳しいことを考えずに発言していたとしか考えられない。

総選挙後に自民党総裁選が行なわれることを前提にすると、東国原氏の発言に従えば、総選挙後の東国原氏を次期総裁候補に担ぐことを宣言しながら自民党が総選挙を戦うことを要求したことになる。しかし、総裁選には誰が立候補するか分からないから、東国原氏は誰が総理になるか分からない状態で自民党が総選挙に臨めと主張しているのか。発言の意味が分からない。

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このような失態を演じていることに、自民党の末期的状況が象徴されている。一方で自民党は総選挙前に総裁選を前倒ししようとしているが、昨年9月にお祭り騒ぎの総裁選を実施したのは何だったのか。

次期総選挙を戦う総選挙の顔をお祭り騒ぎ総裁選で選んだのではなかったのか。要するに自民党は主権者である国民に対する敬意を有していないのだ。

総選挙は、総選挙後にどのような政治を実現するのかを明示し、その政策の内容について国民の審判を仰ぐ場である。その場限りの人気投票を行なう場ではない。

①企業と政治の関係をどうするか。

②官僚の天下りを断ち切るか

③消費税大増税に踏み込むか

④セーフティネットを強化するか

⑤政治家世襲を制限するか

の5点が大きな争点になる。

 さらに、日本郵政の「郵政私物化疑惑」を徹底解明するかどうかも重要な争点になる。

 企業と政治の関係、「政治とカネ」の問題を断ち切るには、「企業団体献金の全面禁止」が不可欠である。野党が「企業献金全面禁止」で合意を形成できるかどうかが注目される。

 「天下り根絶」は日本政治を刷新する最大の施策である。官僚利権の根幹に「天下り利権」がある。官僚が在任期間に関係した業界に再就職することを一定年限禁止することが「官と業」の癒着を断ち切る大きな力になる。

 「郵政民営化」の実相は「郵政私物化」、「郵政米営化」であった。「郵政民営化」を推進する人々の実態は「郵政米営化」、「郵政私物化」推進者であった。

 「政官業の癒着トライアングル」のなかにある族議員を「官僚派」

 「政外電の癒着トライアングル」のなかにある議員を「売国派」

と呼ぶことができる。この「官僚派」族議員と「売国派」議員によって形成されるのが「政官業外電=悪徳ペンタゴン」による利権政治である。

 これに対抗する政治が

 「政民労の民主政治トライアングル」実現を目指す野党勢力である。

 「民」は生活国民であり、地域住民である。

 「労」は勤労者、労働者である。

政権交代を実現する意義は、日本の政治をこれまでの、

「資本の論理」、「官僚の論理」、「中央の論理」に基づく姿から、

「生活者の論理」、「国民の論理」、「地域の論理」に基づく姿

に転換することにある。

明治維新から140年、1955年体制構築から55年、日本の政治構造は一貫して「資本の論理」、「官僚の論理」、「中央の論理」に従うものだった。

主権者である日本国民は、選挙の期間だけ主権者となり、目くらましの投票誘導政策に惑わされてしまった。あるいは、マスメディアの情報操作によって投票が誘導された。国民の利益を代弁する強力な野党が存在しなかったことも、旧来の政治が長期間残存した大きな要因である。

この政治構造を転換するチャンスが到来している。

民主党を中心とする野党は、目くらましの「さもしい」人気取りの手段に目をやらずに、王道を進むべきである。国民も政治の主役が国民であることを自覚して、どのような政治実現を目指すのかを熟慮して総選挙の投票行動に臨まねばならない。

民主党の原口一博議員が、自民党の行動について、「好きなようにどうぞ」と突き放していたが、賢明な対応である。野党勢力は国民と連携して本格的な政権交代実現を目指さねばならない。

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著者:植草 一秀
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2009年6月24日 (水)

国会出頭要請をもう逃げられない竹中平蔵氏

日本郵政は西川社長ら幹部の報酬の一部を3ヵ月間返上し、売却先選定に関与した担当部長を配置転換するなどの社内処分も行うことで、疑惑に幕引きを図る。佐藤総務相は西川社長続投を承認した。

巨大経済犯罪の疑惑が濃厚に存在するなかで、疑惑に幕引きを図る動きが本悪化しているが、「かんぽの宿疑惑」も総選挙の争点のひとつになる。

西川社長更迭を阻止しようとしてきた
小泉純一郎氏-中川秀直氏-竹中平蔵氏-菅義偉(すがよしひで)氏-石原伸晃氏による「郵政××化ペンタゴン」
と「郵政××化ペンタゴン」に指令で動いているかのような
田原総一朗氏-竹中平蔵氏-大谷昭宏氏-高野孟氏-財部誠一氏の「サンプロペンタゴン」
は、「かんぽの宿」疑惑に大きな問題点はなかったと主張するが、重大な疑惑はまったく晴らされていない。

「かんぽの宿」は2400億円の資金を投じ、時価1000億円以上の価値があると判断される不動産である。時価評価の最も有力な基準は固定資産税評価基準額だが、固定資産税評価基準額は857億円である。

109億円での売却が不正売却であるとの見方が客観的な評価である

日本郵政は「競争入札」で売却先を決めたと説明してきたが、売却先決定は「競争入札」によっていない。

1000億円規模の国民資産をオリックス不動産に100億円で払い下げる「不正払い下げ」が実行されたとの疑いはまったく晴れていない。

仮に、1000億円の国民資産を100億円水準でオリックス不動産に払い下げる不正が画策されていたとしたら、その実現のために何が必要であったか。

三つの環境整備が必要であったと考えられる。

①日本郵政サイドで100億円売却を正当化する財務状況を整備すること。

②購入希望を呼び掛けて応募した業者のなかから100億円とかけ離れた購入価格を提示しない業者を最低1社作り出すこと。

③一連の売却が正当であるとの第三者発言を確保すること。

 「かんぽの宿」売却はこうしたことを念頭に入れて売却先が決定された可能性がある。

 ①の問題について、6月23日付記事
「それでも日本郵政西川社長解任すべき理由」
に日本郵政の「かんぽの宿」簿価の激烈な引き下げの事実を指摘した。

日本郵政は2006年3月期から、「かんぽの宿」の簿価を激烈に引き下げている。「週刊ポスト2009年3月13日号」に掲載された「かんぽの宿79施設」の簿価の推移を以下に再掲する。日本郵政から総務相に運び込まれた「17箱の段ボール」に含まれていた資料だ。

2003年4月 1726億円
2004年3月 1620億円
2005年3月 1535億円
2006年3月  672億円

2007年3月  326億円
公社閉鎖時    129億円
2008年3月  125億円
2008年9月  123億円

 最後に326億円を129億円に書き換えたのが「承継財産評価委員会」だが、不動産鑑定評価の中心的役割を果たしたと考えられるのが、オリックス関連企業の取締役を務める奥田かつ枝氏であった。

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 ②オリックス不動産に売却するためには、他の業者に高い価格を提示されてはまずい。日本郵政が売却の告知を示した際、400億円程度の価格を打診した業者が存在した。この業者は詳しい説明もなく「競争入札」から門前払いされた。

 私は実際にこの会社の代表者と面会したが、この業者は79施設をすべて調べたうえで、最低でも400億円程度の費用が必要であると判断して、応募に臨んだとのことである。79施設の不動産としての評価金額は固定資産税評価基準額の857億円が基準となると考えられるのだ。

 日本郵政は「事業譲渡」を強調して、「かんぽの宿」の赤字を強調したと考えられる。また、転売規制、雇用維持条件について、個別に情報を提供していることが問題である。

 例えば5年間は一切転売できないこと。最低5年間は3200名の職員の雇用条件ならびに雇用維持を義務付けること。これらの条件が明示されれば、透明な価格競争入札を行なうことが可能であったはずだ。

 郵政民営化法が成立した際に付帯決議が採択され、雇用維持に配慮することが定められた。安値売却肯定派はこの決議に基づいて雇用維持条件が付されたことが、安値での売却の理由だと主張する。

 しかし、雇用維持を重要とし、施設売却に際して、最低限、この条件が守られることが不可欠という雇用維持条件があるなら、その条件を明示したうえで「価格競争入札」を実施すれば良かったのだ。

 オリックス不動産への売却契約には、3200人の従業員のなかの620人の正社員のなかの550人について、たったの1年だけ雇用条件を維持するとの条件が付されただけである。また、転売規制にも抜け穴条項が用意されていた。

 「通常のM&Aでの手法」などの言葉を、「通常のM&Aの手法」をよく知りもしない人々が使うところが痛々しい。

 27社の応募に対して22社に第一次応募が認められ、その後価格競争入札に近い第二次応募への参加が許されたのは、たったの3社だった。

 この3社のなかには、三井住友グループの住友不動産が含まれていた。この住友不動産には、「かんぽの宿」とは別に池袋物件が水面下で提供されていた。結局、住友不動産は第二次選考への参加を辞退した。

 最終的にオリックス不動産とHMI社の2社だけが第二次選考に参加したが、この応募を締め切ったあとで、日本郵政は対象物件から世田谷レクセンターを除外する通知を行ない、HMI社は応募を取りやめた。HMI社は世田谷レクセンターを最大のターゲットとして選考に参加した可能性が高い。

 最終選考を2社に絞り、HMI社が辞退するように仕組んだと言われてもやむを得ないだろう。

 選考に参加した企業は、日本郵政が提供した財務状況の悪い個別データと雇用負担、あるいは転売規制を前提に選考への積極姿勢を示さなかったのだと考えられる。

 また、そもそも、全国79ヵ所の温泉旅館施設を一括で運用しようと考える企業は多くない。全国79施設を、雇用維持を遵守して、しかも転売できないことを前提とすれば、購入希望の業者が限られることは火を見るよりも明らかだ。

 この点、オリックス不動産はこの手の温泉旅館施設の全国展開を企業戦略として有していたと見られる。この視点で、宮内義彦氏は早い段階から「かんぽの宿」施設に目を付けていたのだろう。

 こうしてみると、日本郵政による「かんぽの宿」売却はオリックス不動産のためにすべてが用意されたものである疑いが濃厚なのだ。

①「かんぽの宿」をいくつかの地域に分割して、地域ごとに売却を図る。

②高齢者福祉施設などへの転用を容認し、地方自治体への売却を優先する。

③個別物件ごとに地域振興の物件として売却する。

さまざまな売却方法が検討されるべきであった。

 1万円で売却した物件が直ちに6000万円で売却されることなど、当たり前のことだ。1万円はあくまで帳簿上の事業収支を前提に示される数値で、これが物件の不動産時価評価金額とかけ離れていることは明白なのだ。

 田原総一朗氏はオリックスの宮内義彦氏が2009年になって、「白紙に還元されてホッとしている」と述べたと言うが、これは、オリックスの経営全体が破綻の危機に直面したからだ。オリックスは温泉旅館施設の全国展開に極めて強いインセンティブを有していたのであり、時価1000億円の施設を100億円で一括入手できることを切望していたのだと考えられる。

 「かんぽの宿疑惑」を追及し続けている社会民主党保坂展人議員6月23日のブログ記事で、衆議院予算員会で郵政問題の集中審議を求め、竹中平蔵氏の参考人招致を求めることを記述された。

 株式会社形態に移行した以上、日本郵政を西川社長の好き放題にして構わないとの主張をし続けてきたのが竹中平蔵氏である。竹中氏によると竹中氏が定めた日本郵政株式会社法第9条の総務大臣の取締役等認可権は意味を持たないらしい。

 また、「かんぽの宿」が本業でない、コア事業でないから売却することを日本郵政株式会社法に盛り込ませたのが竹中平蔵氏であるにもかかわらず、その竹中氏が、日本郵政による「本業でない」不動産事業への積極進出を奨励してきたのも大きな矛盾である。

 また、竹中氏が2002年12月11日の密会で、ゴールドマン-三井住友の異例のファイナンスにどのように関わったのかなども糺(ただ)されなければならない。

 竹中平蔵氏はこれまで国会への出頭を拒否し続けてきた理由を、出頭要請が三日前で日程調整ができなかったことにあると説明しているから、今回は4日以上前に出頭要請をしてもらいたい。竹中氏は遠吠えばかり続けているが、国会議員職も任期途中で投げ出しているのだから、国会への出頭を逃げ続けることは許されない。

「かんぽの宿」の深い闇は必ず白日の下に明らかにされなければならない。

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2009年6月23日 (火)

『売国者たちの末路』店頭販売開始のお知らせ

売国者たちの末路 Book 売国者たちの末路

著者:副島 隆彦,植草 一秀
販売元:祥伝社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

  

副島隆彦氏との共著

『売国者たちの末路――私たちは国家の暴力と闘う』
(祥伝社、1680円)

の全国書店店頭での発売が開始されました。

ご高覧賜りますようお願い申し上げます。

 祥伝社サイトより、本書のご案内を転載させていただきます。

流れは、変わった!
衰退するアメリカ 小泉・竹中政治の闇と終幕 財務省利権 政権交代を阻止する勢力 地獄へひた走る世界経済
――
新たな時代を予測する、衝撃の対論!

危機を乗り越えるために――副島隆彦

植草さんは、小泉・竹中構造改革政治(2001年~2006年)の荒れ狂った嵐の中で、日本国でいちばんひどい目に遭った人である。例の痴漢冤罪事件の謀略である。

今や小泉純一郎と竹中平蔵を頭目とする売国奴たちが退場しつつある。彼らは日本国民から石の礫を投げられ、追われようとしている。私はこの8年間、自分の金融・経済本で、この頭目2人を含めたアメリカの手先となって動いた者たちを、名指しで厳しく批判してきた。このあとも「売国者たちの末路」をしっかりと見届けたいと思う。

植草一秀氏は、今すぐにでも日本国の金融・財政の担当大臣になれる人物で器の持ち主である。日本がアメリカ発の世界恐慌の嵐を何とか越えられるように、今こそ植草一秀という立派な男を皆で応援しましょう。
(本書「まえがき」より)

日本を苦しめる「悪」を許すな!(本書の内容)

「デリバティブのブラックホール」を生んだアメリカは謝罪せよ

なぜ財務省が「財政出動の大盤振る舞い」を許したのか

郵政民営化の本当の狙いは、巨大な「不動産」だ

「竹中大臣辞任」と「植草事件」の奇妙なタイミング

アメリカで「洗脳」された財務官僚

小沢一郎攻撃のきっかけは「米軍不要」発言だ

ドル暴落を支えつづけた日本の売国政策

 

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 また、『知られざる真実-勾留地にて-』第5刷品薄につき、第6刷が6月30日に出来上がります。こちらも、ぜひご高覧賜りますようお願い申し上げます。

 渡邉良明氏書評    もご高覧下さい。

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それでも日本郵政西川社長を解任すべき理由

 依然として焦点は麻生首相が7月2日の衆議院解散を決断するのかどうかである。麻生首相が自分の手で信を問うタイミングはこれが最終期限であると思われる。麻生首相が解散を決断しない場合、自民党は総裁選の前倒しに動くだろう。

麻生首相側近の菅義偉(すがよしひで)氏は麻生首相による解散決断を阻止するべく行動していると考えられる。菅義偉氏は日本郵政西川社長続投と、麻生首相による衆議院解散封殺を至上命題としていると考えられる。

麻生首相は自分の手で衆議院を解散し、8月30日ないし9月6日総選挙の日程を想定していると見られるが、7月12日の都議選後に麻生おろしの突風が吹くことは確実だと思われる。

日本郵政西川社長更迭問題は結局、西川社長の続投で決着した。「かんぽの宿疑惑」で表面化した「日本郵政私物化疑惑」により、日本郵政取締役一掃が必要だったが、小泉純一郎氏-中川秀直氏-竹中平蔵氏-菅義偉氏-石原伸晃氏の「郵政××化ペンタゴン」の強引な横やりにより、事態は転覆された。

田原総一朗氏-竹中平蔵氏-大谷昭宏氏-高野孟氏-財部誠一氏の「サンプロペンタゴン」と「郵政××化ペンタゴン」が直結していることも、「かんぽの宿疑惑」が鮮明に映し出した。

副島隆彦氏が指摘されるように、鳩山総務相の主張を後押しした読売・渡邉恒雄氏の裏側にD.ロックフェラー=シティの意向が働いていたことは事実であると思われる。ロスチャイルドVSロックフェラーの代理戦争の側面が存在することを見落とすことはできない。

しかし、三井住友=ゴールドマンによる日本郵政私物化・米営化を容認することはできない。

「かんぽの宿」疑惑の本質を探る淵源は2002年12月11日の密会にある。5月23日付記事
「日本郵政西川社長続投論を覆う黒い霧」
の記述を転載する。

「二つの視点から問題を見つめる必要がある。

第一は、竹中平蔵氏と西川善文氏の個人的な接点において決定的に重要だと考えられる出来事が、2002年12月11日の密会であることだ。この日まで、西川氏は反竹中金融相の急先鋒(きゅうせんぽう)と言える存在だった。

ところが、12月11日の密会を境に、西川氏は竹中氏との蜜月時代に移行した。この密会こそ、秘密を解く鍵を握る。

第二の視点は、菅義偉氏が2005年11月に総務副大臣に就任し、その後、2006年9月に総務相に就任した事実である。2005年11月は竹中氏が総務大臣に就任した時期である。竹中氏は「郵政民営化」=「郵政私物化」=「郵政米営化」プロジェクトを実行するパートナーに菅氏を選任したのだと考えられるのだ。

第一の視点について内容を補足する。この会合は、米国投資銀行ゴールドマン・サックスのCEOであるヘンリー・ポールソン氏、同COOであるジョン・セイン氏と、西川善文氏、竹中平蔵氏の4名による密会であった。

この後、ゴルードマン・サックスは三井住友銀行に5000億円のファイナンスを実施した。三井住友ファイナンシャルグループは、このファイナンスを契機に、限りなくゴールドマン・サックスの影響を受けることになる。

このことについて、読売新聞の渡邉恒雄氏は『文藝春秋』2009年1月号に、次のように証言している。

「僕は竹中さんから直接聞いたことがあるんだが、彼は「日本の四つのメガバンクを二つにしたい」と明言した。僕が「どこを残すんですか?」と聞くと、「東京三菱と三井住友」だと言う。あの頃はまだ東京三菱とUFJは統合していなかったんだが、「みずほとUFJはいらない」というわけだ。どうして三井住友を残すのかというと、当時の西川善文頭取がゴールドマン・サックスから融資を受けて、外資導入の道を開いたからだと言う。「長銀をリップルウッドが乗っ取ったみたいに、あんなものを片っ端から入れるのか」と聞くと、「大丈夫です。今度はシティを連れてきます」と言った。今つぶれかかっているシティを連れてきて、日本のメガバンクを支配させていたらどうなったか、ゾッとする。」
(この部分は「文藝春秋」からの引用)

三井住友グループによる日本郵政支配は、その裏側にあるゴールドマン・サックスによる日本郵政支配の図式のなかで捉えなければならないのだ。これが第一の視点である。

 第二の視点は、菅義偉(すがよしひで)氏の役割である。

 菅氏は2006年9月に総務相に就任し、翌2007年3月に日本郵政公社総裁の生田正治氏を解任している。生田氏を排除して、西川氏による日本郵政公社支配を生み出した。西川氏は日本郵政公社総裁職を兼務したのちに、2007年10月に発足した持株会社としての日本郵政社長に就任した。

 日本郵政はこれまで指摘してきたように、財界による日本郵政私物化を絵に描いたような人事を実行した。日本郵政プロパー職員、日本郵政サービス利用者、生活者が取締役に一人も登用されない、異様な姿での出立であった。

 また、日本郵政公社時代の日本郵政保有不動産のバルク売却の不透明性も表面化している。旧郵政公社時代の所管大臣が竹中平蔵氏と菅義偉氏である。」

 また、6月15日付記事
「内閣支持率急落・西川社長続投反対の世論調査」
に以下の記述を示した。

「2002年12月11日の密会は重要である。6月14日付記事から、重要事項を転載する。

「2002年12月11日、ゴールドマン・サックスのCEOヘンリー・ポールソン氏、COOジョン・セイン氏、三井住友頭取西川善文氏、金融相竹中平蔵氏が東京で密会した。

この後、ゴールドマン・サックスから三井住友銀行に対して、2003年1月に1500億円の普通株への転換権付き優先株出資、2月に3500億円の優先株出資が行なわれた。

ゴールドマン・サックスの1500億円優先株には4.5%の配当利回りが付与された。当時、みずほ銀行が実施した優先株資金調達での配当利回りは2%であったから、4.5%の利回り付与は法外なものだった。

三井住友銀行がなぜ、このような国辱的な条件を付与するのか、金融市場ではさまざまな憶測が飛び交った。

仮の話であるが、竹中金融相が三井住友を破綻させないことを保証していたとすれば、大筋の説明を付けることができる。

①三井住友は高いコストを払うが、銀行存続の確約を手に入れる

②ゴールドマンは三井住友の破たん回避を保証されるとともに、法外に高い利回りを確保する。

③竹中平蔵氏は両者から「感謝」される。

これを「三方一両得」と言う。

「郵政民営化」は、「ゴールドマン-竹中氏-西川善文氏-三井住友」の図式の中で推進されているプロジェクトと見るべきだろう。」

西川社長の行動は三井住友銀行に損害を与える行動であった可能性がある。

竹中平蔵氏がどのように「感謝」されたのかも問題になる。」

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 さらに、本ブログ5月1日付記事
「かんぽの宿不正売却で西川善文氏引責辞任へ」
などに記述したように、

①郵便局会社が取り扱う第三分野保険で、アフラックのがん保険とともに住友生命の医療保険が選ばれたこと

②変額個人年金保険で、住友生命、三井住友海上メットライフ生命が選ばれたこと

③ゆうちょのカード事業で、三井住友カードが選ばれたこと

④従業員持ち株会の幹事証券業務に大和証券SMBCが選ばれたこと

など、日本郵政が三井住友ファイナンシャルグループを優遇してきたとの疑いを裏付ける事実が明らかにされている。

 これ以外に

⑤メリルリンチ日本証券が不自然な選考過程を経てアドバイザーに選任された疑惑

⑥「かんぽの宿」売却に際し、社宅9件が簿価を下回って売却されようとした問題

⑦博報堂とのCM関連一括契約に関する疑惑

⑧メリルリンチ日本証券が3回にわたって「かんぽの宿」売却凍結提案をしたのに無視された問題

などが指摘されている。

また、住友グループ企業関係者が日本郵政グループ幹部に多数配置されている。

日本郵政
執行役副社長  寺阪元之(元スミセイ損保社長)
常務執行役   妹尾良昭(住友銀行、大和証券SMBC)

郵便局
代表取締役社長 寺阪元之(元スミセイ損保社長)
専務執行役   日高信行(住友海上火災)
常務執行役   河村 学(住友生命保険)

ゆうちょ銀行
執行役副社長  福島純夫(住友銀行、大和証券SMBC)
常務執行役   向井理奇(住友信託銀行)
常務執行役   宇野 輝(住友銀行、三井住友カード)
執行役     村島正浩(三井住友銀行)

また、日本郵政取締役および指名委員会委員を下記に再掲する。

日本郵政取締役

代表取締役 西川 善文(にしかわ よしふみ)

代表取締役 高木 祥吉(たかぎ しょうきち)

社外取締役 牛尾 治朗(うしお じろう)
ウシオ電機株式会社代表取締役会長

社外取締役 奥田 碩(おくだ ひろし)
トヨタ自動車株式会社取締役相談役

社外取締役 西岡 喬(にしおか たかし)
三菱重工業株式会社相談役

社外取締役 丹羽 宇一郎(にわ ういちろう)
伊藤忠商事株式会社取締役会長

社外取締役 奥谷 禮子(おくたに れいこ)
株式会社ザ・アール代表取締役社長

社外取締役 高橋 瞳(たかはし ひとみ)
青南監査法人代表社員

社外取締役 下河邉 和彦(しもこうべ かずひこ)
弁護士

日本郵政の指名委員会メンバーは以下の通り。

委員長 牛尾 治朗(うしお じろう)

委員  西川 善文(にしかわ よしふみ)

委員  高木 祥吉(たかぎ しょうきち)

委員  奥田 碩(おくだ ひろし)

委員  丹羽 宇一郎(にわ ういちろう)

「かんぽの宿」売却先決定は、西川社長直属の特命チームが担当した。このラインは以下の通り。
日本郵政取締役代表執行役社長 西川善文
同専務執行役 横山邦男
同執行役   伊藤和博

 「かんぽの宿疑惑」は2400億円を投じ、時価が1000億円規模の国民財産を不正な方法で、オリックスに100億円で横流ししようとした巨大経済犯罪疑惑である。

 田原総一朗氏は、「27社による価格競争入札」であったかのような主張を展開するが、実態は「27社による価格競争入札」とはかけ離れたものであった。国会審議でこの点は明らかにされている。国会審議で明らかにされている事実を「27社による価格競争入札でオリックス不動産が最高値を入れた」かと思わせるように説明するところに、田原氏の説明の「歪み」が表れている。

「かんぽの宿」の簿価引き下げは2006年3月期決算から始まった。2005年10月の立法で「かんぽの宿」売却が決定されたことを受けての措置であったと考えられる。

「週刊ポスト2009年3月13日号」に掲載された「かんぽの宿79施設」の簿価の推移を以下に記載する。

2003年4月 1726億円
2004年3月 1620億円
2005年3月 1535億円
2006年3月  672億円

2007年3月  326億円
公社閉鎖時    129億円
2008年3月  125億円
2008年9月  123億円

オリックスへの売却に向けて、簿価を1500億円から強引に129億円に引き下げたとの疑惑が濃厚に存在する。

簿価を129億円に引き下げた「承継財産評価委員会」では、オリックス出資会社の取締役を務める奥田かつ枝氏が中心人物として関わったことも明らかにされている。

「かんぽの宿」79施設は固定資産税評価基準が857億円、時価では1000億円を下らない物件と見られている。

安値入札の最大の根拠とされているのが「年間40~50億円の赤字」なのだが、この数字の「怪しさ」が明らかになっている。「かんぽの宿」が2009年に10億円の黒字になるとの日本郵政資料が発見されているのだ。

また、3200人の雇用維持条件があり安値落札になったと言われるが、雇用維持条件は、3200人の中の620人の正規社員のなかの550人について、1年だけ雇用条件を維持するというものだった。施設の転売規制にも抜け穴条項が用意されていた。

1000億円の資産を100億円でオリックスに横流しするプロジェクトが進行していたと見なさざるを得ない状況証拠が数多く浮上している。

「サンプロペンタゴン」はこれらの疑惑に対して、まったく説得力のある反論を示していない。

西川社長一派を日本郵政から追放し、国民の視点から日本郵政を適切に運営する新経営陣を日本郵政に送り込まなければならない。その際、重要なことは日本郵政プロパー職員から清廉潔白で有能な人材を幹部に登用することである。

これは「天下り」ではない。組織の幹部への人材登用は、基本的に「プロパー職員からの登用」を基礎に据えるべきだ。外部からの色のついた民間人を登用することが今回の日本郵政のような事態を招く原因になる。

政権交代実現後の新しい人事体制について、いまから準備を進める必要がある。

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2009年6月22日 (月)

都議選前解散を阻止しようとする麻生首相側の奸

 麻生首相が盟友としてきた人物が次々と麻生首相の元を離れた。

 イタリアローマG7でもうろう会見を行なった中川昭一前財務相、熱海への不適切旅行で退いた鴻池祥肇(こうのいけよしただ)前内閣官房副長官、日本郵政の黒い霧を指摘して逆に罷免(ひめん)された鳩山邦夫総務相。麻生首相の盟友が次々に麻生首相の元を離れた。

 最後に残った側近が菅義偉(すがよしひで)元総務相だ。菅氏の最大の特徴は、麻生氏の側近でありながら、小泉純一郎氏-中川秀直氏-竹中平蔵氏-石原伸晃氏と連なり「郵政××化ペンタゴン」の一員でもあることだ。

 菅氏は西川社長続投を認めなければ麻生おろしの突風が吹くとの麻生首相への恫喝(どうかつ)を伝えるとともに、鳩山総務相罷免(ひめん)の前日には安倍晋三元首相とともに麻生首相を訪問し、鳩山総務相が麻生首相を見下す発言をしたとの記者懇メモを麻生首相に伝えたと言われている。

 また、読売の渡邉恒雄氏が鳩山氏を支援していることも告げて、渡邉氏の影響力をそぐことが重要だと伝えたと見られている。これらの点については、上杉隆氏が「週刊朝日2009年6月26日号」で明らかにしている。

 麻生首相が鳩山氏を斬る判断を固めた直接の原因は、菅(すが)氏の情報にあると見られている。

 これまで本ブログで記述してきたように、「郵政××化ペンタゴン」は、歩調を合わせて西川社長続投論をごり押しする「サンプロペンタゴン」と足並みを揃えて、「鳩山斬り=西川続投」を強引に主張してきた。その背景には、西川社長が君臨する日本郵政が実行してきたと考えられる「郵政私物化」、「郵政米営化」路線を死守するとともに、悪事の露見を回避しようとする死に物狂いの思惑が存在すると考えられる。

 田原総一朗氏が主張する西川社長続投擁護論は竹中平蔵氏が展開する稚拙で歪み切った主張と変わるところがない。各種資料を詳細に分析すれば、「かんぽの宿疑惑」の本質が、1000億円規模の国民財産を不正な方法で、オリックスに100億円で横流ししようとした巨大経済犯罪であるとの疑惑であることは明白だ。

 日本郵政によるかんぽの宿売却プロセスは、「27社による価格競争入札」とはかけ離れたものである。最終的に「価格入札的なもの」が行なわれたのは、オリックス不動産とHMI社の2社の間だけである。しかも、両者には、「人為的操作が加えられた個別物件の非常に悪い事業収支」を前提とした査定価格提出を求めたと考えられる。

 一連の売却プロセスが「オリックス」に売却先を決定するための「偽装工作」であった可能性は、いまも、色濃く残っている。だからこそ、国会議員12名が日本郵政幹部3名を特別背任未遂で刑事告発しているのである。

 麻生首相は菅(すが)氏の「情報」を受け入れて、鳩山総務相を斬り、西川社長を続投させる決断を示した。この結果、麻生政権の支持率が急落した。

 田原総一朗氏、竹中平蔵氏、高野孟氏、中川秀直氏、大谷昭宏氏、財部誠一氏、菅義偉人氏などが、テレビ朝日、フジサンケイ、日経系列各社を総動員して、西川社長続投擁護論を展開しても、世論は西川社長続投論を容認しなかった。この点についての世論調査結果は妥当なものと考えられる。

 「郵政民営化」の実態が、「民営化」の装いの下での「かんぽの宿」、「国民貯蓄300兆円」、「日本郵政保有巨大不動産」を収奪する「巨大利権プロジェクト」であるとの「知られざる真実」に、多くの国民が気付き始めてしまった。「サンプロ一族」が足並みを揃えて西川社長続投論を唱えている異様さも特記に値する。

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 私は6月6日に、
「西川社長続投誘導は麻生おろしの策略か」
を掲載した。

 麻生首相は鳩山総務相を斬り、西川社長を続投させる道を選択したために、支持率急落に直面して、解散を決断しづらくなった。

 菅(すが)氏は麻生首相に西川社長続投を決断するよう、熱弁を振るったと考えられる。田原総一朗氏は、
「今の自民党は衆院選で小泉純一郎さんのもと、郵政民営化で大勝した。だから、郵政民営化で反対できるはずがない」
と主張するが、西川社長更迭論は郵政民営化反対論ではない。

「郵政民営化の悪の本性」を掃除する主張なのだ。「悪の本性」が利権だから、「郵政民営化」の本質を「郵政利権化」、「郵政私物化」と捉える人々は、「悪の本性」を除去する提案に賛成することができないのだ。

 いずれにせよ、麻生首相は鳩山総務相を斬り、西川社長続投の道を選択した。

 「君側の奸(くんそくのかん)」という言葉があるが、菅義偉(すがよしひで)氏の行動には疑問点が多い。

 シェークスピアの戯曲「オセロー」に、情報を操作して主人を惑わす旗手イアーゴーが登場する。イアーゴーの讒言(ざんげん)を聞き入れてしまったオセローは、最愛の妻デスデモーナを刺し殺してしまう。鳩山総務相罷免劇には戯曲「オセロー」を彷彿(ほうふつ)とさせるものがある。麻生首相は鳩山総務相を刺してしまった。

 菅(すが)氏が注力してきたことは以下の二点だろう。

 第一は、西川社長続投をごり押しすること。

 第二は、麻生首相に都議会選挙前に解散させないことである。

 都議会選挙で自民党は敗北するだろう。都議選で自民党が敗北すれば、必ず麻生おろしの突風が吹き始める。「郵政××化ペンタゴン」は西川社長続投を要求する際に、麻生首相による解散・総選挙を「保証」したと考えられる。しかし、この「保証」は反故(ほご)にされるだろう。

 麻生首相が自分の手で解散、総選挙に臨むには、7月2日までに衆議院を解散し、8月2日の総選挙を選択するしか道はない。7月12日の都議選で敗北すれば、天皇が不在の7月17日までの間、解散権が封殺され、この間に総裁選前倒し論が一気に広がるだろう。

 菅(すが)氏を含めて自民党の多数派は自民党総裁選を前倒しして選挙の顔をすげ替えて、8月30日ないし9月6日の総選挙に臨む考えを有していると思われる。

 8月20日前後に2009年4-6月期のGDP統計が発表される。GDP激減の反動が出るために、大幅プラス数値が発表されることが予想されている。高めの数値が出ても、反動高にすぎず、景気の停滞に大きな変化が生じていることを示すものではないが、政府はこの数値を総選挙に利用することを考えるだろう。

 麻生首相は「裸の王様」になっている。信用している最後の側近に裏切られて、哀れな最期(さいご)を遂げる可能性が高い。

 麻生首相に真実の情報を届ける人物がいるなら、次の事実を伝える必要がある。麻生首相が自身の手で国民に信を問うなら、衆議院を7月2日までに解散するしか道がないことを。

 小泉元首相が退任して以来、自公政権は政権をたらいまわしにし続けてきた。総選挙だけを目的にした4回目の総裁選を国民は許さないだろう。

 それでも7月2日にまでに解散が行なわれない場合、自民党は総裁交代に動くだろう。民主党、社民党、国民新党、新党日本の野党各党は、選挙戦術を練り直さなければならない。

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2009年6月21日 (日)

細田博之氏サンプロ田原氏の西川擁護論を暴露

 6月21日放送のテレビ朝日「サンデープロジェクト」

 自民党幹事長細田博之氏が、田原総一朗氏が寄稿した「週刊朝日2009年6月26日号」のコラム「田原総一朗のギロン堂」について言及したために、田原氏が西川社長続投論を主張していることが暴露された。

 「サンデープロジェクト」は麻生首相が鳩山総務相を実質罷免(ひめん)した直後の6月14日放送で、西川社長続投問題に頬(ほお)かむりした。世論が鳩山総務相支持の強い風向きを示すなかで、西川社長続投論を展開することを損だと考えて頬かむりしたのだろう。

 田原総一朗氏-財部誠一氏-大谷昭宏氏-高野孟氏-竹中平蔵氏の「サンプロペンタゴン」が足並みを揃えて西川社長続投論を展開する。サンプロ-テレビ朝日の背後に強い力が働いていると考えるのが自然だ。

 この問題に関する「サンプロ一族」の説明はまったく説得力を持たない。

 小泉純一郎氏-中川秀直氏-竹中平蔵氏-菅義偉(すがよしひで)氏-石原伸晃氏の「郵政××化ペンタゴン」とまったく同じ説明を示す。

 これらの人々の主張は概要以下の通りである。

①「かんぽの宿」は年間40~50億円の赤字を垂れ流している。

②雇用維持条件が付されており、109億円は安すぎる価格でない。

③オリックス不動産選定のプロセスは通常のM&Aの手法によるものである。

④日本郵政は民間会社であり、政府が人事に介入すべきでない。

⑤一連の騒動は郵政民営化反対派による陰謀である。

 この主張が間違っていることを詳しく説明してきた。概要については

「テレ朝報道ステーションの救いようのない欺瞞」(6月13日)

「鳩山総務相更迭問題を逃げたテレ朝サンプロ」(6月14日)

「千葉市長選民主大勝と日本郵政の巨大犯罪疑惑」(6月15日)

を参照いただきたい。

 田原氏は上記週刊朝日コラム記事にいかがわしい記述を示している。

①「オリックス不動産は入札に参加した27社のなかで最も高い値段をつけたのである。」

②「オリックスの宮内氏は「白紙になってホッとした。高い買い物なので経営に自信がなかった」と漏らしている。」

③「要するに、郵政民営化推進派と反対派の露骨な戦いだったのである。」

 「オリックス不動産が入札に参加した27社のなかで最も高い値段をつけた」などの事実と相違する記述されたのではかなわない。

 「かんぽの宿」売却は昨年4月15日にHPで告知された。入札参加意志表明締め切りは5月15日で27社が応募した。日本郵政はこの27社のうち、22社にだけ第一次選考への参加を許可した。5社は門前払いされた。全国79物件を調査して400億円程度の価格を打診した応募者は選考から一方的に除外されたのである。

 22社のうち、8月15日に締め切られた第一次選考に応募したのは7社である。どのようなやり取りがあって15社が参加を取りやめたのかも明らかにされていない。

 8月15日の第1次選考で第二次選考へ参加できる企業が3社に絞られた。この選考過程も明らかにされていない。

 3社のうち、第二次選考に応募したのはオリックス不動産とHMI社の2社だけだった。応募を辞退した住友不動産には、これにやや先立って池袋物件が提供されている。池袋物件が新たな疑惑対象として浮上している。

 10月31日の第二次選考にオリックス不動産とHMI社が応募し、金額で高い価格を提示したのはHMI社だった。ところが、日本郵政は第二次応募提出後に、売却条件を変更した。この結果、HMI社は最終提案提示を行なわなかった。結局、オリックス不動産1社だけが応募して、オリックス不動産への売却が決定されたのだ。

 日本郵政は「競争入札」と説明しながら、「競争入札」を行なっていない。M&Aの手法が必要というが、問題になるのは雇用条件だけである。従業員何名の雇用条件を何年維持するかだけが明らかにされれば良いわけで、透明な価格競争入札を実施することが可能だったはずだが、透明な措置は取られなかった。

最終的にオリックス不動産との間に交わされた契約では、3200名の従業員のなかの620名の正規社員のうち、550人について1年だけ雇用条件が維持される、というのが「雇用維持条件」とされた。また転売規制にも抜け穴が用意されたのである。

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オリックスの宮内氏が「ホッとした」のは理由が別にある。不動産価格の暴落などを背景にオリックスグループ全体が破綻の可能性すら取りざたされる経営危機に直面したからである。「自己責任原則」、「市場原理主義」を唱えてきたオリックスが破綻の危機に直面して、結局政府に救済を求めた。日本政策投資銀行による企業救済融資を受けることになったのだ。この問題も十分な論議が必要である。

「かんぽの宿」79施設の固定資産税評価基準額は857億円で、実勢価格は1000億円を下らないと見られている。これを日本郵政が、偽装された事業収支の赤字数値を活用して129億円の簿価に書き換えたのだ。この簿価引き下げは、不正売却のための行為であるとの疑いが存在する。

「40~50億円の赤字」が独り歩きしているが、この数値の意味を明らかにしなければならない。日本郵政資料では「かんぽの宿」は2009年に10億円の黒字が見込まれているのだ。「偽装された赤字」の真相を白日の下に晒さねばならない。

破綻の危機に直面したオリックスにとっては、「かんぽの宿」売却白紙撤回は渡りに船であったかも知れないが、これは結果論である。日本郵政はサブプライム金融危機が進行するなかで、できるだけ低い価格でオリックスに資産を横流ししようとしたと考えられるのだ。

日本郵政の全株式を日本政府が保有しており、日本郵政株式会社法が総務大臣に取締役選任認可権を含めた強い権限を付与している。

田原氏は、
「日本郵政の幹部たちが、オリックス不動産からキックバックを受けることになっていたという噂もない」
ことを、不正がないことの根拠とするが、巨大な不正が行なわれるときに、その痕跡を見えなくしようとするのは当然で、まともな理由になっていない。

1000億円の財産が不正な手法で小泉改革関係者に100億円で横流しされようとしたのであれば、これは重大な経済犯罪である。その疑いが濃厚に存在する以上、この問題を「小さな問題」として片付けることはできない。

こうした重大な問題を解明しようとすることが、どうして「郵政民営化反対」になるのか。鳩山総務相の行動は「郵政民営化」から不純なものを取り除こうとしただけのものである。

鳩山総務大臣の至極まともな、正当な主張を「郵政民営化反対勢力による陰謀」(竹中平蔵氏の表現)と決めつけて、無理やりに西川社長の続投をごり押しするから、これらの人々の行動がますます怪しく見えるのである。

田原氏を筆頭とする「サンプロ一族」が、まっとうな根拠を示すこともできずに鳩山総務相批判を展開することの「歪み」を明らかにしておかなければならない。

「サンプロ一族」に属する人々の発言全体に対する信憑性が著しく低下すると言わざるを得ない。

6月21日のTBS「時事放談」に出演した鳩山前総務相は、「かんぽの宿」が氷山の一角であるとの判断を示した。鳩山総務相は麻生首相の周りにいる「振付師」が、「郵政××化ペンタゴン」の意向を受けて、麻生首相をねじ伏せたとの認識を示した。「振付師」とは恐らく菅義偉(すがよしひで)氏を指しているのだと思われる。

野中広務氏も外国資本の思惑を指摘し、「西川社長続投論を覆う黒い霧」に言及した。日本郵政の闇を暴き、国民資産の防衛を果たさねばならない。そのためには、どうしても政権交代の実現が必要である。

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フジ新報道2001も不公平な4党討論方式を採用

 6月21日放送のフジテレビ「新報道2001」

 政党討論会で西松建設事件を取り扱った。狙いは民主党攻撃である。

 民主党攻撃の偏向報道では、各局が足並みを揃えているが、フジサンケイとテレビ朝日の偏向が突出している。

 サンデープロジェクトが採用し始めた「4党討論形式」。

 出席政党は、自民、公明、民主、共産だ。

 国会の政党別議席数を調べると下記の通り。

衆議院  480議席 

与党   336議席
自民党  305議席
公明党   31議席 

野党など 144議席
民主党  113議席
共産党    9議席
社民党    7議席
国民新党   4議席
新党日本   0議席
その他    1議席
無所属    9議席 

欠員     1議席

参議院  242議席 

与党   105議席
自民党   84議席
公明党   21議席 

野党など 137議席
民主党  110議席
共産党    7議席
社民党    5議席
国民新党   4議席
新党日本   1議席
無所属   10議席 

 共産党は次期総選挙を控えて、テレビ番組などでの討論では、自民党攻撃よりも民主党攻撃に力点を置くことが多い。反自民票が民主党に集中することを避けるためなのか、自民党を側面支援するためなのか、理由は定かでないが、民主党攻撃を示す。とりわけ、「政治とカネ」の問題では、不思議なことに金権政党自民党に対するより、民主党に対する攻撃の方が激しい。

 自民、公明、民主、共産の4党討論形式は、民主党を1対3の討論に追い込むための設定である。この意味で「政治的公平」に反するものである。

 田原総一朗氏がMCを務めるテレビ朝日「サンデープロジェクト」がこの形式を採用して以来、NHKも時折、この形態を採用することがある。

 共産党と社会民主党の議席数は、

共産 衆9 参7 計16

社民 衆7 参5 計12

で大差がない。

 社民に国民、新党日本を加えると、

社+国+日 衆11 参10 計21

になり、共産党を大幅に上回る。

 与野党全面対決の総選挙を目前に控えていること、バランスの取れた討論を実施するには、共産を除く野党勢力からもう一人出演させなければ、適正な討論を行なうことができない。

 拙著『知られざる真実-勾留地にて-』に詳述したが、NHK日曜討論でも出演者を決定する段階で、番組の結論をコントロールすることができる。

 力の拮抗した論者を2対2で出演させれば論議は互角になる。3対2で出演させれば3が有力だとの印象が生まれる。2対2でも論者の格に格差を付ければ、一方に有力な印象が生まれる。

 テレビ討論は時間が限られている。適正な舞台設定を確保しないことが放送会社の「偏向」を示している。

 民主党の蓮舫議員の討論術は自民党の大村秀章氏の討論力をはるかに上回っている。本日の新報道2001では、蓮舫議員の討論力が設定の不公平さをカバーしたが、放送会社は放送法第3条を遵守するスタンスを守らなければならない。

 また、西松事件国沢前社長の公判での検察側陳述は、一方的なもので、あまりにもお粗末なものだった。自民党議員に対する「他人名義による献金」が摘発の対象から外されたことに対する説明もまったくなされなかった。この公判を材料に民主党を攻撃することは不可能である。

 番組後半では女性が代表を務めるマナー研修会社を礼賛する放送が行なわれたが、日本郵政株式会社取締役を務める奥谷禮子氏が代表を務める株式会社ザ・アールの業務とイメージを重ね合わせようとしているのだろうか。「新報道2001」の映像を見て、以下の記事がすぐに頭に浮かんだ。

 株式会社ザ・アールは日本郵政公社から7億円もの業務を受注した実績を有しており、その背景の不透明さが指摘されている。週刊ダイヤモンド2009年5月23日号がザ・アールによる日本郵政公社でのマナー研修に関する記事を掲載しているので、以下に転載する。

 

週刊 ダイヤモンド 2009年 5/23号 [雑誌] Book 週刊 ダイヤモンド 2009年 5/23号 [雑誌]

販売元:ダイヤモンド社
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週刊ダイヤモンドは「7億円をどぶに捨てたマナー向上運動の顛末」の見出しを付けて株式会社ザ・アールによるマナー研修の内容を紹介している。

「「これがスカイブルーの挨拶です」--元キャビンアテンダント(CA)だという講師はそう言うと、深々とお辞儀をしてみせた。お辞儀をされたお客さんが青空のような爽快さを感じるから「スカイブルー」なのだそうな。

続いて、書留配達のロールプレイング。配達先でまず自身の所属局と部署、名前を言ってスカイブルーのお辞儀をし、満面の笑みで「○○様、本日は書留をお届けに上がりました」と告げなければならない。参加した職員はたまらず、研修を見守る幹部に尋ねた。

「あんなことをしたら配達先が気味悪がってドアを開けてくれなくなるけど、本当にやるんですか」--。

 この接遇マナー研修や、後述する「星」獲得のための筆記試験を公社設立以前から一手の請け負ったのが、奥谷禮子氏率いる人材派遣会社ザ・アール。公社から7億円もの仕事を受注していたことが明らかになっている。

公社は非常勤を含む約38万人の職員全員の接客態度をランク付けしようとした。ランクは上から三つ星、二つ星、一つ星、星なし。星の獲得には研修参加が不可欠で、二つ星、三つ星には筆記試験が課される。獲得すれば星の絵柄入りのバッジが支給される。

当初、「星のない職員は接客業務からはずす」とまで宣言していたが、現実には慢性的人手不足のために職員が星を獲得するまで待っている余裕などなかった。加えて、7億円もの取引がある奥谷氏が日本郵政の社外取締役に就任したことが国会で問題となり、民営化後は星の認定制度そのものが雲散霧消してしまった。「7億円はどぶに捨てたようなもの」(郵政関係者)だ。

「人にマナーを説く前に、経営者としての“マナー違反”をなんとかしてほしい」とは郵政関係者の弁。しかし、相変わらず西川善文・日本郵政社長の懐にはがっちり食い込んでいるのだという。」

 テレビで放映されたような研修が日本郵政公社職員に行なわれたのかどうかは定かでないが、郵便集配業務職員に対するこのような研修実施が噴飯ものであることは間違いない。

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知られざる真実―勾留地にて― Book 知られざる真実―勾留地にて―

著者:植草 一秀
販売元:イプシロン出版企画
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副島隆彦氏との共著『売国者たちの末路』上梓

 

このたび、副島隆彦氏との共著

『売国者たちの末路――私たちは国家の暴力と闘う』

が祥伝社から出版されることになりました。6月24日に発売開始予定です。

 

 

売国者たちの末路 Book 売国者たちの末路

著者:副島 隆彦,植草 一秀
販売元:祥伝社
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Amazon等のネットブックショップ、ならびに全国書店にてお買い求めくださいますようお願い申し上げます。

 祥伝社サイトより、本書のご案内を転載させていただきます。

 スキャナー不調のため、表紙画像と詳しいご案内は改めて掲載させていただきます。

 総選挙に向けて、必読の書と考えます。ご一読賜りますよう謹んでお願い申し上げます。

 以下は、祥伝社HPからの転載です。

流れは、変わった!
衰退するアメリカ 小泉・竹中政治の闇と終幕 財務省利権 政権交代を阻止する勢力 地獄へひた走る世界経済
――
新たな時代を予測する、衝撃の対論!

危機を乗り越えるために――副島隆彦

植草さんは、小泉・竹中構造改革政治(2001年~2006年)の荒れ狂った嵐の中で、日本国でいちばんひどい目に遭った人である。例の痴漢冤罪事件の謀略である。

今や小泉純一郎と竹中平蔵を頭目とする売国奴たちが退場しつつある。彼らは日本国民から石の礫を投げられ、追われようとしている。私はこの8年間、自分の金融・経済本で、この頭目2人を含めたアメリカの手先となって動いた者たちを、名指しで厳しく批判してきた。このあとも「売国者たちの末路」をしっかりと見届けたいと思う。

植草一秀氏は、今すぐにでも日本国の金融・財政の担当大臣になれる人物で器の持ち主である。日本がアメリカ発の世界恐慌の嵐を何とか越えられるように、今こそ植草一秀という立派な男を皆で応援しましょう。
(本書「まえがき」より)

日本を苦しめる「悪」を許すな!(本書の内容)

「デリバティブのブラックホール」を生んだアメリカは謝罪せよ

なぜ財務省が「財政出動の大盤振る舞い」を許したのか

郵政民営化の本当の狙いは、巨大な「不動産」だ

「竹中大臣辞任」と「植草事件」の奇妙なタイミング

アメリカで「洗脳」された財務官僚

小沢一郎攻撃のきっかけは「米軍不要」発言だ

ドル暴落を支えつづけた日本の売国政策

 早ければ、週明けにも全国書店店頭にてお求めいただけると思います。

 このような出版を企画下さいました副島隆彦先生と出版の労をお取り下さいました祥伝社の角田勉様、岡部康彦様に深く感謝申し上げます。

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売国者たちの末路 Book 売国者たちの末路

著者:副島 隆彦,植草 一秀
販売元:祥伝社
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知られざる真実―勾留地にて― Book 知られざる真実―勾留地にて―

著者:植草 一秀
販売元:イプシロン出版企画
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2009年6月20日 (土)

森田実氏HPへの渡邉良明氏拙著書評に深謝

5月15日に収録した天木直人氏との対談動画

小泉・竹中経済政策の罪 ~日本経済混迷の真相~

「小沢事件の真相と政権交代 ~これからの日本に在るべき政治~」

について、888(スリーエイト)様が、「植草事件の真相掲示板」様にメッセージを寄せて下さった。以下に引用させていただく。

「植草様

貴殿ブログおよび天木様ブログにて掲載のある「植草・天木対談ビデオ」、この度の値下げ案内を機(笑)に2本とも購入視聴させて頂きました。

この内容でこの価格は、購入者に十分納得して頂けるだけでなく間違いなく「超お買い得」だと思いますよ!!

大変判りやすく、このビデオを見るだけでも近年の政権与党や偏向メディアをはじめとした「郵政××××ペンタゴン」の暴走、腐敗ぶりが観た人に十分伝わると感じました。

政権交代のためになるべく多くの人に必要な情報を拡散すべきとは日々考えておりましたが

最近はネット上だけでも手に余る程の情報が氾濫しており、個人的に草の根運動を展開するにしてもその選別に苦労しております。」

ありがたいメッセージをいただき、深く感謝申し上げる。動画については、

「豊中ではたらく社長のブログ」様1

「豊中ではたらく社長のブログ」様2

「Easy Resistance」様

「kobaちゃんの徒然なるままに」様

もありがたいコメントを掲載して下さっているので、ご参照賜りたい。

 なお、動画の販売価格を天木氏、「まぐまぐ」社と協議のうえで、一本2100円から1050円に引き下げさせていただいた。当初ご購入下さった皆様には大変ご迷惑をおかけしてしまったことをお詫び申し上げる。

 「まぐまぐ」社と協議した結果、契約上の規定により「まぐまぐ」社からご購入者のご登録アドレスを私や天木氏に伝達することができないので、「まぐまぐ」社に対して返金を希望される旨のメールを送信いただいたご購入者に対して「まぐまぐ」社が私か天木氏のメールアドレスを伝え、いずれかに連絡を取っていただいた上で返金の手続きを取ることになった。

 大変ご面倒をおかけ申し上げるが、返金を希望される場合には、誠に恐縮ですが、「まぐまぐ」社のご一報をお願い申し上げたい。返金の金額については、まぐまぐ社への入金額を差し引き、振り込み手数料を差し引かせていただくことになることをご理解賜りたい。

 動画は、1時間強の対談2本で、小泉竹中経済政策の総括と、次期総選挙に向けての政治状況について、時事問題を含めて論じており、今後の日本政治を展望するうえでの一助にしていただけると考える。

 多数の皆様のご高覧を謹んでお願い申し上げる。

 他方、拙著『知られざる真実-勾留地にて-』について、過分なお言葉を賜ったので、紹介させていただく。

弾圧を受けている高名な政治評論家である森田実氏のHPに、政治学者の渡邉良明氏が過分な書評を掲載下さった。

 また、高橋敏男様からもありがたいお言葉を賜った。

 渡邉良明様が記述下さった文章から知ったのだが、驚くことに渡邉氏は私が学んだ東京都立両国高校において、倫理と政経を教えられた経験を有するとのことだ。高校時代の授業科目のなかで、私が最も熱心に受けた授業は倫理・社会だった。拙著にこの点を詳述した。

渡邉氏の長文の記述

植草一秀著『知られざる真実勾留地にて』を読んで

植草一秀著『知られざる真実勾留地にて』を読んで  続き 1

植草一秀著『知られざる真実勾留地にて』を読んで  続き 2

から一部を転載させていただく。

本書は、絶望の淵から生還した植草氏の清冽な魂の書 

 読書には大まかに言って速読と精読の二つがある。若い頃の私は精読派だった。昔は一頁の一行目から丹念に読み始めたものだ。大学時代(ほぼ40年前)、杉浦明平氏(作家、評論家、19132001)の晴耕雨読の合間に「1日に4、5冊読んでいます」という文章を読んだことがある。内心、嘘だろうと思った。だが近年、同氏と同じ立場になってみて、1日、4~5冊の読書が可能だと感じる。 

 書物には必ずキーワードや要点、要約が潜んでいる。それらを自分なりに見出し、著者の心や執筆意図に共感できれば、文章をまるで一幅の絵のように読み進むことができる。ただ、文章や言葉自体の情感を重んじる文学の場合はそうはいかないかもしれない。 

 だが、若い頃から読み慣れている論説文や社会科学系の論文などはだいぶ速読できるようになった。つまり、各所の要点や要約を掴み、それを最終的に自分の頭の中で統合あるいは再構成できれば、筆者の執筆意図はだいたい把握できると思うのだ。 

 しかし、今回の植草一秀氏の著書は謹んで精読しようと思った。なぜなら、本著には単に植草氏の経済理論や経済分析だけでなく、彼が経済学を志した経緯や彼の思想や価値観、それに先年のでっち上げ事件の詳細が丹念に記述されているからだ。 

 著者が渾身の思いで書いたものを安直な気分で読み流すことはできない。この種の著書に対して、速読は何の意味もない。むしろ読む方も魂を込めて読まなければならない。それほどに本著は植草氏の魂のこもった作品なのだ。同書を日本の全国民に読んでほしいと思う。それと同時に、私自身、自ら何度でも読みたいと思う名著である。 

 本書はプロローグ、第一章~第三章、エピローグ、巻末資料からなる。その各章の合間に、著者は先人とご自分が書いた和歌を付している。それは次のとおりだ。 

「かくすれば かくなるものと 知りながら やむにやまれぬ 大和魂」
(吉田松陰) 

「世の人は 我を何とも ゆはば言へ 我がなすことは 我のみぞ知る」
(坂本龍馬) 

「ひと挿しの 野に咲く花の 香ぐはしき かをりがわれに いのち与へり」
(植草一秀) 

 私自身、何冊かの本を書き、そのなかに吉田松陰の上記の和歌をとり上げたことがある。それゆえ、植草氏の思いがよく理解できる。同氏は、政治的謀略による不当な逮捕・勾留を通じて絶望の淵に落された。まさに地獄を見たとも言えよう。あの聡明・明晰な植草氏が、その耐え難い絶望の淵で自殺さえも試みた。よほどのことがあったのだろう。 

 しかし、家族、親族、恩師、同級生たちが彼の無実を信じた。また、彼を支援する人も多く出た。彼らの愛と支援を一輪の花に託して詠んだ「かをりがわれに いのち与へり」のなかに植草氏の万感の思いがある。本書は、絶望の淵から生還した同氏の魂の書だ。」

 渡邉氏の文章は滔々(とうとう)と続く。身に余る慈愛に満ちた言葉を賜り、お礼の申し上げようもない。この場を借りて謹んでお礼申し上げたい。

 格調高い筆致に敬服する次第であるが、ぜひご高説をご高覧賜りたい。また、森田実氏にはこのような文章をHPに掲載下さったことに深く感謝申し上げる。

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 また、高橋敏男氏が記述下さった文章から後半部分を転載させていただく。

「植草一秀氏が闘った記録だ。
読んでもらえれば、真摯な言葉が綴られているのがよく分かるのだが。
題目だけ記しておく。

第1章 偽装 
1  沖縄知事選と徳州会病院臓器売買事件
2  テレビ・メディアの散薄さ  
3  偽装三兄弟  
4  耐震構造偽装  
5  偽装タウンミーティング
6  福井日銀総裁追求の深層
7  摘発される人・されない人
8  りそな銀実質国有化
9  小泉政権五つの大罪
10 自由党定例研究会
11 日本経済混迷の真相
12 異論の表明
13 小泉純一郎氏への進講
14 日本経済の崩壊
15 標的にされたりそな銀
16 1・3・5の秘密
17 小泉・竹中経済政策の破綻
18 巨大国家犯罪疑惑
19 りそな銀処理の闇
20 求めれれる事実検証
21 天下り全廃なくして改革なし
22 第一種国家公務員の廃止
23 切り捨てられる弱者
24 米国隷属の外交
25 外国資本への利益供与
26 露見した郵政米営化の実態
27 濫用される権力
28 蔑視されていた国民
29 言論封殺のメディア・コントロール
30 竹中氏の抗議

この見出しから分るだろう。植草氏は経済の専門家である。
いろんな経済関係の会議・プロジェクト委員であった経済のプロだ。
彼自身が不条理な事件に巻き込まれた理由も詳細に書かれている。
権力の意向に沿わない考えの者を認めない、
小心者の権力者が狂信する政策だけを進めるため、
他者の意見は一切聞かずに権力を使った「大人の苛め」を実行していたのだ。

 
政治家だったら政治の世界から抹殺されたであろう。
政権に不都合な者は追い落とされる。
追い落とされる人たちの声はマスコミの偏向報道によって、
国民の耳には届かない。
届くのは偽装報道の犠牲となった者が犯罪者であるが如く、
晒し者にされる姿だけである。

 
報道の裏で高笑いをしている権力者を温存させてはならない。
小泉政権以降の安部政権、福田政権、麻生政権は国民の信を得ず、
自公政権が何でもありのデタラメ政治を行っているが、
元凶は小泉純一郎元首相が郵政民営化法案が参議院で否決されたことに、
腹を立て衆議院を解散するという憲法違反の暴挙だったのだ。
こんなデタラメを何時まで国民は許しているのだろう。
世界の笑いものになっているのが分からないのは報道規制があるからだ。

 
正しい情報が国民の耳に届いていないことが原因なのだ。
そして国民が政治に示す関心が少ないことにも原因がある。
現政権に不満があれば、次回は必ず野党に投票することだ。
不満があるのなら満足する政権になるまで野党に投票し、
必ず政権交代を成し遂げることが必要なのだ。

 
本の内容は、第2章 炎、第3章 不撓不屈 と続く。
全体を通して、植草氏は政治の貧困の原因が官僚制度にある。
第一種国家公務員制度にあると言う。

 
天下り、渡りで莫大な税金を吸い上げるシステムを廃止すべきだと訴えているのだ。
官僚が定年まで勤め上げることを保障すれば、
このようなことはなくなるのではないか。
更に前例主義を見直すべきだと私は考える。」

これまでも、拙著については、

「神州の泉」主宰者の高橋博彦氏が

2007年8月17日に
警醒の名著知られざる真実 勾留地にて』」

2007年9月27日に
植草一秀氏著『知られざる真実勾留地にて

を執筆くださった。

また、「Aobadai Life」様

「植草一秀事件も国策逮捕だったことを知らなかった個人的反省(1)

「植草一秀事件も国策逮捕だったことを知らなかった個人的反省(2)

「植草一秀事件も国策逮捕だったことを知らなかった個人的反省(3)

「植草一秀事件も国策逮捕だったことを知らなかった個人的反省(4)

「植草一秀事件も国策逮捕だったことを知らなかった個人的反省(5)

と、5回にわたって、拙著について、身に余る、そして深みのある論評を掲載下さった。

すべてを掲載できないが、多数の皆さまから温かなお言葉を賜っている。心よりお礼申し上げたい。

日本社会、日本政治をすべての国民の幸福を追求する方向に刷新することを、私は強く願う。拙著をこの方向でものを考えるためのひとつの素材にしていただければ、誠にありがたいと思う。

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知られざる真実―勾留地にて― Book 知られざる真実―勾留地にて―

著者:植草 一秀
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郵政私物化・郵政米営化勢力と渡辺喜美新党

延長国会の焦点であった税制改正法、改正国民年金法、海賊対処法は6月19日、衆院本会議でいずれも与党など三分の二以上の賛成多数で再可決され、成立した。麻生内閣の下での衆議院再可決による法律成立は8回目。

野党が過半数を占める参議院の意向は無視され続けている。国民の意志の半分が否定され続けている状況で、できるだけ早期に衆参ねじれを解消する必要がある。

26日には補正予算関連2法案が再可決される見通しで、今次通常国会の重要法案処理がほぼ完了する。

衆議院で可決された臓器移植法案、船舶検査法案、公務員改革法案などが残されており、とりわけ臓器移植法案と船舶検査法案については、今国会での成立を求める声が強い。この二法案の取り扱いが焦点として残存するが、いよいよ国会は会期末を迎え、解散総選挙の日程に関心が集まる。

7月5日に静岡県知事選、7月12日に東京都議会選が予定され、7月8-10日にはイタリア・ラクイラでサミットが開催される。

麻生内閣の支持率が急落しているため、自民党内では総選挙を先送りしたいとの意向が強まっている。総選挙の動向を占う前哨戦として東京都議会選があるため、都議選で自民党が敗北する場合には、9月に任期満了を迎える自民党総裁の改選を前倒する論議が沸騰すると予想される。

7月12日の東京都議選では自民党の苦戦が予想されている。したがって、麻生首相が自身の手で衆議院を解散し総選挙に臨むには、東京都議選前に衆議院解散を決断するしかないとの見方が強まっている。

1991年11月に首相の座を退いた海部俊樹氏は解散権行使を掲げながら自民党の反対に直面し、解散権を封じ込められた。

麻生首相が同様に解散権を封殺されるのかが注目される。

麻生首相が自分の手で解散、総選挙を実施することを重視するなら、7月2日解散を選択するだろう。日本郵政西川社長続投人事で、麻生首相は西川氏を更迭すれば、麻生おろしを本格化させるとの脅しを受け、この脅しに屈服して鳩山総務相を斬ったのだと考えられる。

「郵政××化ペンタゴン」は、西川氏続投を容認すれば麻生おろしを封じるとの「保証」を麻生首相に伝えたと見られるが、このような約束はいつでも反故にされる。2001年の自民党総裁選では、亀井静香議員が総裁選後の条件を確約されたうえで小泉純一郎氏支持に回ったが、小泉氏は総裁に就任すると直ちに約束を反故にした。すさんだ世界である。

東京都議選で自民党が敗北すれば、麻生氏は必ず首相の座から引きずり降ろされるだろう。このとき、麻生首相には衆院解散に進む大義名分がない。

したがって、麻生首相は7月2日解散・8月2日総選挙の道を選ぶ可能性が高いと考えられる。野党は7月2日までに重要法案の処理が完了するように協力するべきだ。

このなかで、野党による内閣不信任案国会提出の可能性が浮上している。自民党内からの造反が期待されるとともに、仮に内閣不信任案が否決されれば、内閣は信任されたことになり、麻生おろしが正統性を失う。自民党は麻生体制で総選挙に臨まなければならないことになる。

総選挙に向けての野党の警戒要因を、

6月18日付記事
「西松事件初公判と政権交代実現への課題」

6月19日付記事
「アクセス解析と政権交代実現へのネット力結集」

に記述した。

三つの警戒要因とは、

①警察・検察権力の政治利用

②偽装CHANGE勢力などを用いた野党票分断工作

③野党共闘のほころび

である。

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ここでは、②偽装CHANGE勢力を用いた野党分断工作について記述する。

静岡県知事選は6月18日に告示され、

民主党・社民・国民新党推薦で前静岡文化芸術大学長の
川勝平太氏(60)

に対し、

無所属で元民主党参院議員の海野徹(60)、

共産党公認で党県委員会常任委員の平野定義(59)、

自民・公明推薦で前自民党参院議員の坂本由紀子(60)

が立候補し、4名で争われることになった。

単純な与野党激突選挙ではない。

元民主党参議院議員の海野徹氏の応援に、渡辺喜美衆院議員が駆け付けた。自民党元幹事長の中川秀直氏は日本郵政西川社長更迭問題で麻生首相を批判したが、西川氏が更迭されれば徹底的に闘うとの姿勢を示した。「闘い」のなかには新党結成も含まれると理解された。

中川秀直氏、小泉純一郎氏、竹中平蔵氏、菅義偉(すがよしひで)氏、石原伸晃氏の「郵政××化ペンタゴン」が、西川社長の続投をごり押しした。日本郵政取締役等選任の認可権は総務大臣に付与されており、上記ペンタゴンの面々には何の権限もない。

取締役選任案を作るのは「指名委員会」、日本郵政内部での原案を決定するのは「取締役会」だが、この意志決定において株主の意向を踏まえることは当然のことだ。

日本郵政は株式の100%を政府が保有する「完全国有会社」である。社長人事、取締役人事などの企業経営の根幹にかかわる事案の決定について、取締役会が株主である政府の意向を踏まえることは当然の責務であった。しかし、日本郵政の取締役会はこの責務を果たしていない。

政府の意向を反映しない日本郵政指名委員会や取締役会の決定に所管大臣である鳩山総務相が異論を唱えるのは当然のことで、この鳩山総務相を斬って、政府の意向を無視した日本郵政取締役会の決定をそのまま容認した麻生首相は、もはや首相としての統治能力を完全に失っていると言わざるを得ない。

日本郵政取締役人事に不当な横やりを入れたのが上記「郵政××化ペンタゴン」である。これらの人々が、なぜ、西川社長続投をごり押ししたのか、その背景を探ることが重要だ。

一番大切なポイントは「かんぽの宿」疑惑をどのように評価するかだ。西川社長続投擁護派は、「かんぽの宿」疑惑の重大性を否定しようとする。その根拠は以下の通りだ。

①「かんぽの宿」は年間40~50億円の赤字を垂れ流している。

②雇用維持条件が付されており、109億円は安すぎる価格でない。

③オリックス不動産選定のプロセスは通常のM&Aの手法によるものである。

「かんぽの宿」問題の概要については6月15日付記事

「千葉市長選民主大勝と日本郵政の巨大犯罪疑惑」

にまとめて記述したので参照いただきたいが、上記の三つの反論はいずれもまったく説得力を持たない。

「かんぽの宿40~50億円の赤字」は偽装された数値である。国会では、まずこの数値を徹底的に解明するべきだ。「かんぽの宿」は2008年時点ですでに2009年以降の黒字化が見込まれていたのである。

また、竹中平蔵氏がいう「コア事業でないから売却」の方針は、日本郵政が不動産事業に本格進出する方針と完全に矛盾する。

雇用維持条件は3200名のなかの550名について、1年限り雇用条件を維持するとのもので、また、転売規制にも抜け穴が用意されていた。

オリックス不動産選定プロセスが通常のM&Aの手法と同じとの説明も正しくない。できるだけ高く売却しようとするときに、日本郵政が取ったようなプロセスを取ることはあり得ない。

109億円は固定資産税評価基準額857億円と比較して不当に低い。「かんぽの宿」を黒字化して売却する限り、このような安値での売却はあり得ない。この点は、今後の売却で必ず立証されることになる。

結局、1000億円規模の時価を持つ国民資産が不正な手法を用いて「オリックス」に横流ししようとした悪事が進行していたとの疑いが濃厚に存在するのである。政権交代が実演すれば、適正に検察捜査が実施されることになるだろう。

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渡辺喜美氏は、上記の「郵政××化ペンタゴン」と極めて近い関係にある。中川秀直氏は霞が関改革を主張するが、小泉政権が5年半も政権を担当する間、官僚利権を根絶する行動をほとんど示さなかった。

郵政民営化は米国資本による日本収奪の政策として推進されてきたと見なさざるを得ない。「かんぽの宿」は全体からみれば「氷山の一角」の問題だ。

米国資本は300兆円の国民資産、日本郵政保有の巨大不動産をターゲットにしていると考えられる。「郵政民営化」の実態は「郵政私物化」、「郵政米営化」なのである。

先述した「郵政××化ペンタゴン」は、日本郵政経営トップを「インナーサークル」から選出することを最優先事項としているのだ。日本郵政最高幹部に「郵政私物化」、「郵政米営化」を阻止する人物が就任したら、巨大プロジェクトが果実の刈り取り寸前に挫折することになる。

西川社長続投に対する激しい執着は、この理由によるものであると考えられる。

ところが、法律にはこのことが盛り込まれていない。日本郵政への強い権限は時の総務大臣に付与されている。したがって、「郵政××化ペンタゴン」の主張は、完全に歪んだものになっている。

彼らは、竹中平蔵氏が主導した「郵政××化体制」を死んでも手放さないと暴れているだけにすぎない。竹中平蔵氏は鳩山邦夫氏のような、「郵政私物化」や「郵政米営化」の前に立ちはだかる人物が総務大臣に就任することを想定していなかったに違いない。

大騒ぎの末に西川社長続投をごり押ししてはみたものの、この騒動によって、日本郵政を取り巻く黒い霧が誰の目にもはっきりと映ってしまった。

天網恢恢疎(てんもうかいかいそ)にして漏らさず

との老子の言葉をかみしめなければならない。

閑話休題。

中川秀直氏-竹中平蔵氏-菅義偉氏-石原伸晃氏-渡辺喜美氏-高橋洋一氏-屋山太郎氏-武部勤氏、そしてその裏側に控える小泉純一郎氏。これらの人々は皆、同じ穴のむじなである。

「政官業外電の悪徳ペンタゴン」にあてはめると、彼らはそのなかで「政外電の新悪徳トライアングル」を形成している。

_72  

これに対して旧来の自民党が「政官業の元祖トライアングル」を形成する。次期総選挙では「政官業の元祖トライアングル」を代表する自民党の別働隊として、「偽装CHANGE」の装いをまとった「政外電の新悪徳トライアングル」が登場する可能性が高い。

静岡県の有権者は、「偽装CHANGE」勢力に惑わされてはならない。この「偽装CHANGE」勢力の使命は、民主党に向かう投票を喰うことにより、「元祖トライアングル」である自民党候補者の当選に貢献することにあると考えられる。

選挙が終われば「政官業の元祖トライアングル」と「政外電の新悪徳トライアングル」は合流して、「政官業外電の悪徳ペンタゴン」に戻るのだ。

民主、社民、国民新党の野党3党は、「政・民・労の民主政府トライアングル」を結成しなければならない。

民は地域住民、主権者としての生活国民を表わす。

労は労働者としての国民を表わす。

「偽装CHANGE」勢力が自民党との連携を完全に否定しない限り、この勢力に対して気を許してはならない。この勢力の裏側には、間違いなく米国の諜報組織が存在する。日本は真の自主独立を果たさねばならない。

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知られざる真実―勾留地にて― Book 知られざる真実―勾留地にて―

著者:植草 一秀
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2009年6月19日 (金)

西松事件西松献金との大久保氏の認識について

本日6月19日、西松建設事件の第一回公判が開かれた。公判での注目点については、本日の公判開始前に掲載した、
「西松事件初公判と政権交代実現への課題」
に記述した。

今日の公判では、民主党小沢前代表の公設第一秘書である大久保隆規氏が、取り調べで、献金の資金の出所が西松建設であることを知っていたとの供述調書があることが示されたと報道されている。

私は、本ブログでこの可能性を繰り返し指摘してきた。

3月25日午前零時にNHKが、「大久保氏が容疑事実を認める供述を始めた」と報道したときに、

3月25日付記事
小沢民主党代表渾身記者会見とNHK情報操作報道」

このことを指摘した。

以下に転載する。

「NHKは不思議なことに、この記者会見報道を一通り終えた25日午前零時の定時ニュースで、新たなニュースを報道した。

報道内容は、「大久保隆規氏が検察に対して、最近になって「うその記載」を認める供述をしていることが関係者への取材で明らかになった」とするものだ。

お決まりの「関係者への取材」が出てきた。大久保氏は勾留されている。恐らく接見禁止の措置が取られているだろう。となると、大久保氏の発言を知ることができるのは、大久保氏の弁護人か検察しかないことになる。弁護人がこのようなことを話す可能性はゼロであり、情報は検察のリークによるものでしかないことになる。

検察のリークであれば、そもそも公務員の守秘義務に違反する。こうした守秘義務違反を地検特捜部は捜査して逮捕すべきとも思われるが、リーク情報ほどいかがわしいものはない。私も実体験としてよく知っている。

たとえば、大久保氏が政治団体の資金が西松建設に関連したものであるとの漠然とした認識があったと供述したとしよう。政治献金を受けた窓口はあくまでも政治団体である。しかし、その政治団体が西松建設と関わりがある印象を持っていたと述べたとする。

これを検察は、被疑者は「資金が西松建設のものであることを知っていた」と置き換え、さらに、「西松建設の資金であることを知りながら政治資金報告書にうその記載をした」と述べたように伝えるのだ。

今回のケースの真実を確かめたわけではないから、上記の表現は、ひとつのシナリオとして記述している。」

「たとえば、大久保氏が次のような説明を受けた可能性もある。

政治資金規正法では資金拠出者ではなく、寄付行為者を記載すれば良いことになっている。上述した通りだ。このことを大久保氏に告げて納得を得たうえで、「寄付行為者が政治団体であるとの認識で政治資金報告書に政治団体を記載したのだろうけれども、その政治団体が西松建設と関係しているとはまったく考えなかったのか」と質問する。この質問に、大久保氏が「関連があると聞いたことはある」と答えたとしよう。

このやり取りを、検察が「大久保氏は献金が西松建設からのものだと知っていたとの趣旨の発言をした」、あるいは、それをさらに「大久保氏は西松建設からの献金であることを知りながら、政治団体からの献金であるとのウソの記載をしたと供述している」と検察がリークして、ニュース報道になることも十分に考えられる。」

(ここまで転載)

 また、

5月27日付記事
「大久保隆規氏保釈実現と西松事件の本質」

6月2日付記事
「西松事件不正政治利用に見られる謀略の全貌」

6月11日付記事
「読売社説 民主「西松」報告批判は的外れだ」

に詳細を記述したので、ご高覧賜りたい。

 最大の問題は、
「犯罪構成要件としての法令の解釈・罰則適用基準」の曖昧さ」
にある。

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 6月11日付記事から関連部分を転載する。

「(民主党第三者委員会)の)報告書は、政治資金規正法が収支報告書に「寄付行為者」の記載を義務付けており、「資金拠出者」の記載を求めていないと指摘する。小沢前代表の秘書が「新政治問題研究会」「未来産業研究会」という二つの政治団体からの献金を「新政治問題研究会」「未来産業研究会」からの献金と記載した行為は虚偽記載にあたらないと指摘する。

この記載が「虚偽記載」に該当するには、「新政治問題研究会」「未来産業研究会」という二つの政治団体が、資金の拠出者から政治団体に金銭や利益を供与するための単なる「トンネル」のような実体のない団体であることが立証される必要があるが、報告書は、
「西松建設が2009 5 15 日に公表した内部調査委員会による調査報告書に記載された政治団体の実態によれば、二つの政治団体を単なる「トンネル」のような実体のない団体とは認め難い」
と指摘する。

この指摘が正しければ、小沢氏の秘書が仮に「資金拠出者」が西松建設であると認識していたとしても、「虚偽記載」で罪を問われることはないということになる。

ところが、検察当局の行動をみると、検察当局は小沢氏の秘書が、資金拠出者が西松建設であることを認識していたかどうかを問題とし、西松建設であると認識していた場合には、政治資金規正法が認めていない企業から政治家個人の資金管理団体への献金を隠ぺいするために「工作」をしたことになるとして摘発しようとしているように見える」

「ただ、この点についても)報告書は、現在の政治資金規正法は企業から政党支部への企業献金を容認しており、小沢氏サイドは西松建設からの献金を政党支部で受け入れることが可能だったのであり、問題に重大性はないと結論している。

話がやや込み入ったが、問題の根源は、政治資金規正法の運用における、「犯罪構成要件としての法令の解釈・罰則適用基準」の曖昧さにある。この点が明確でなければ、小沢氏はうっかり発言を示すことができない。

読売新聞の社説は検察の説明にそのまま乗ったものであるが、検察の評価基準が客観的で適正な評価基準である保証はどこにもない。現行法規では、企業から政党支部への献金が認められており、現に自民党議員の多数が政党支部で受け入れた企業献金を個人の資金管理団体に移し替える「迂回献金」を実行している。

この意味では、小沢氏の資金管理団体が西松建設からの企業献金を受け入れていたとしても、「悪質な献金元隠し」などの批判はあたらない。政治献金を西松建設から政党支部への献金に修正報告すれば済むようなことである。」

引用が長くなり、少し分かりにくくなったが、法律の規定が具体的に何をどのように禁止しているのかがはっきりしないことが最大の問題なのだ。

郷原信郎氏が指摘する解釈を踏まえれば、大久保氏が二つの政治団体名を収支報告書に記載したことは、法律違反に該当しないのである。この場合には、大久保氏が献金の資金の出所が西松建設であることを認識していたとしても、問題にはならない。

法律の解釈が明確でないことが最大の問題である。日本国憲法が定める「罪刑法定主義」は、事前に法律解釈が明確でなければ、何人も罰することができないとの考え方である。

大久保氏の供述については、この大原則を踏まえて考えることが必要である。常識的な法律解釈によれば、大久保氏が二つの政治団体名を収支報告書に記載し、なおかつ、資金の出所が西松建設であることを知っていたとしても、二つの政治団体に何らかの実体があるのなら、大久保氏の行為は適法行為になるのである。

報道に際しては、このような詳細を正確に伝えることが不可欠なのだ。

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アクセス解析と政権交代実現へのネット力結集

 変則的だが5月20日から6月18日までの30日間のアクセス解析を示す。

トータルアクセスは127.8万件、一日当たり42,600件、
ユニークアクセスは56.3万件、一日当たり18,772件、
だった。

 5月11日の民主党小沢代表辞意表明以来、高水準のアクセスをいただいている。5月16日には鳩山由紀夫氏が民主党新代表に選出され、5月27日に麻生首相との初めての党首討論が行なわれた。

 また、日本郵政西川善文社長更迭問題が国民的な関心事に発展し、このなかで6月12日、鳩山総務相が麻生首相によって事実上罷免措置を受けた。

 朝日、日経、産経系列メディアを中心に、西川社長続投を擁護するキャンペーンが展開されたが、その後に実施された世論調査では、鳩山総務相を罷免した麻生首相の決定に批判が集中、西川氏については辞任すべきとの声が圧倒した。

 それでも、朝日、日経、産経系列メディアは西川社長続投関連の質問を行なわない、あるいは、最小にとどめるとの偏向ぶりを示した。

 6月4日には、足利事件で無期懲役が確定し、17年6ヵ月も拘束された菅谷利和さんが釈放された。冤罪で無実の人に重大な罪が着せられたことが明らかになった。巨大な冤罪の闇の中の氷山の一角に光が当たった。冤罪を生み出す構造が解明され、是正措置が直ちに取られなければならない。

 「かんぽの宿」疑惑では、郵政民営化を推進してきた小泉一家の横暴が際立った。中川秀直氏などは、日本郵政西川社長更迭を決断した鳩山総務相に対して、内閣を去ることを求める発言を示すなど、「法治国家」の乱れが顕著になった。

 2005年9月の郵政民営化選挙で示された民意は、同年10月に成立した「郵政民営化関連法」に体現されている。民意を尊重するということは、ここで定められた法律をしっかりと踏まえることである。

 日本郵政株式会社法は、総務大臣の強い権限を定めており、日本郵政の取締役人事を総務大臣の認可事項としている。

 日本郵政株式会社の全株式は日本政府が保有している。したがって、日本郵政取締役は株主である日本政府の意向を踏まえて意志決定することが求められる。これが「ガバナンス(統治)」の基本である。

 ところが、日本郵政の取締役会は日本政府の意向を反映した意思決定を行なわなかった。このときに総務大臣が認可権を行使して、人事案を認めないのは当然だ。

 ところが、麻生首相および、小泉一家に属する人々は、日本政府の意向を反映しない日本郵政の取締役会決定を総務大臣が認可しないことを、「民間会社への総務大臣の不当な介入」だとして否定したのだ。このような理屈で首相が総務大臣を罷免するのでは世も末だ。

 本ブログでは、本年1月以来、「かんぽの宿」問題を追及し続けてきたが、ようやく世論が正しく問題を認識する状況に到達したことに安堵している。

 しかし、麻生首相が間違った判断を示したために、日本郵政経営陣の刷新は政権交代実現後に先送りされることになった。

 こうした大きな変化が生じるなかで、関連する記事への多くの閲覧を賜った。深くお礼申し上げる。

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アクセス推移(2009520日~618日)

アクセス数合計: 1,278,009  (日平均: 42,600

訪問者数合計: 563,151  (日平均: 18,772

ページ別アクセス数(トップページを除く)

2 西川善文日本郵政社長続投論を覆う黒い霧 11,554

3 足利事件冤罪本質はDNA精度でなく警察の体質 6,973

4 テレ朝報道ステーションの救いようのない欺瞞 6,845

5 「かんぽの宿疑惑」報道を封殺する巨大な闇の力 5,692

6 盟友鳩山邦夫総務相実質更迭がもたらす報い 5,260

7 失政主犯竹中平蔵氏延命に懸命の田原総一朗氏 4,864

8 西川続投で日本郵政は売国勢力の食い物に? 4,762

9 足利事件菅谷さん釈放麻生首相の不熱意発言 4,527

10 「人気ブログランキング」でのポイント急減について 4,503

11 日テレNEWSZERO西川社長関連偏向報道 4,396

12 かんぽの宿が戦後最大疑獄事件に発展の可能性 4,221

13 世論調査で西川社長続投に圧倒的多数が反対 4,192

14 テレ朝偏向TVタックル「かんぽの宿」疑惑隠蔽 3,970

15 TVタックル小沢氏攻撃屋山太郎氏転向ですか 3,896

16 麻生首相が仕切れる総選挙は8月2日しかない 3,818

17 西川社長続投誘導は麻生首相おろしの策略か 3,728

18 麻生首相の矜持が問われる西川社長更迭問題 3,724

19 党首討論鳩山代表西松発言核心をカットしたNHK 3,694

20 竹中平蔵氏が国会出頭から逃げ回っていた理由 3,692

21 千葉市長選民主大勝と日本郵政の巨大犯罪疑惑 3,691

22 日本郵政は誰のものか中川(秀)氏石原氏の誤り 3,433

23 鳩山邦夫総務相の政治生命を決す日本郵政人事 3,358

24 総選挙接近で御用メディア偏向報道が全開 3,320

25 鳩山総務相更迭問題を逃げたテレ朝サンプロ 3,224

26 「人気ブログランキング」ポイント急減問題(その2) 3,097

27 国会に出頭すべき竹中平蔵氏と郵政民営化の嘘 2,937

28 お手盛り・バラマキ補正予算成立と総選挙日程 2,924

29 「人気ブログランキング」ポイント急減問題(その3) 2,892

30 元外交官天木直人氏との対談収録動画配信開始 2,850

31 インフルエンザと急減する鳩山新生民主党報道 2,776

32 鳩山邦夫総務相の真価が問われる日本郵政人 2,742

32 政権交代への胎動が響くさいたま市長選 2,742

34 高橋洋一氏事件・検察警察の裁量とマスコミ報道 2,668

35 ビジョン明示の鳩山発言が共感を呼ぶ党首討論 2,636

 逆アクセスランキングでは、以下の結果が得られた。

 
1.Benjamin Fulford 24,019

2.カナダde日本語 6,220

3.神州の泉 2,513

4.News for the People in Japan  2,567

5.ジャパン・ハンドラーズと国際金融情報 2,387

6.らくちんランプ  2,365

7.植草事件の真相 2,335

8.誠天調書  1,296

9.ミクロネシアの小さな島・ヤップより 1,054

10文藝評論家山崎行太郎のブログ 1,021

11晴天とら日和 911

12rの憂国アンテナ 562

13喜八ログ 542

14反戦 541

15ギャラリ 392

 多くの優良ブロガー様のお力添えで、本ブログに多くの皆様が訪問下さったことに心から感謝申し上げる。また、Bejamin Fulford氏「カナダde日本語」の美爾依さま、「神州の泉」の高橋博彦様、「NPJ」様をはじめ、多くの皆様に本ブログ記事を紹介賜り、深く感謝申し上げる。

 麻生首相が自分の手で解散・総選挙を実施するなら、6月末から7月初にかけて衆議院を解散し、8月2日総選挙を選択するしか道はないと思われる。

 麻生首相がこの道を選択しない場合、自民党は総裁選を前倒しし、新しい総裁の下で10月4日の総選挙を選択することになるだろう。

 いずれにしても、総選挙まで秒読みの段階である。検察権力とメディアを利用した民主党攻撃が激化すると予想されるが、あらかじめ攻撃を想定して、動揺しないことが肝要である。

 偽装CHANGE新党が立ち上げられ、民主党への投票をかすめ取ろうとする動きが拡大すると予想されるが、「偽装CHANGE新党」が自民党別働隊であるとの基本を確実に押さえることが大切である。有権者には「まがいもの商法」への注意を喚起する必要がある。

 また、民主党は社民党、国民新党と強固な信頼関係を構築しなければならない。政権交代は生半可な気持ちでは成就できない。相互理解を進めて、盤石の協力体制を構築することを最重視するべきである。

 今後とも変わらぬ本ブログへのご支援を心からお願い申し上げる。

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西松事件初公判と政権交代実現への課題

6月17日の党首討論でも鳩山由紀夫民主党代表は圧勝した。次期総選挙に向けて、政権交代実現の機運は盛り上がりつつあるが、政権交代を阻止しようとする「政官業外電の悪徳ペンタゴン」の執念はすさまじく、総選挙投票日まで、悪徳ペンタゴンは手段を選ばずに攻撃を仕掛けてくると考えられる。

また、政権交代を目指す野党勢力も気の緩みに警戒しなければならない。政治には権力をめぐる闘争の側面がある。闘いに勝ち抜くには、一瞬の気の緩みにも警戒を怠れない。政権を奪取するには、野党勢力が盤石の共闘体制を構築することが不可欠である。

総選挙に向けて、三つの警戒が求められる。このハードルを越えなければ、政権交代の大願成就は見えてこない。麻生太郎首相は6月末から7月初解散、8月2日総選挙日程を描いていると考えられる。このタイミングを逃せば、麻生おろしに直面する可能性が極めて高い。麻生首相が自ら進んで身を引くとは考えにくい。

三つの警戒要因とは、

 
①警察・検察権力の政治利用

偽装CHANGE勢力などを用いた野党票分断工作

③野党共闘のほころび

である。

①警察・検察権力の政治利用では、西松建設事件公判と郵便割引制度不正利用事件に警戒が求められる。さらに鳩山由紀夫代表の政治資金についても、政治的な追及が行なわれる可能性がある。

西松建設事件では本日6月19日に初公判が開かれる。この公判日程の設定そのものが、事件の政治利用を象徴している。今回の公判は1日で結審する。西松建設の国沢前社長が起訴事実を全面的に認めているためだ。

検察側の主張を被告が全面的に認めているため、メディア各社は公判で示される検察側冒頭陳述の内容などを、事実同様に取り扱って報道するだろう。被告側が認めているのだから、事実と考えて間違いないとの説明を施すだろう。

しかし、この判断には大きな落とし穴がある。被告側が検察側に全面協力して、その見返りとして判決での刑の軽減を期待している場合があるからだ。

刑事事件の判決において決定的に重要なのは、実刑と執行猶予の相違である。小室哲哉氏の詐欺事件でも、メディアは判決に執行猶予が付くかどうかを注目した。被告人への実体的な影響では、執行猶予の有無が決定的に重要になる。

したがって、被告側には、判決における執行猶予を獲得するために、検察側主張を全面的に認めようとする誘因が存在するのである。したがって、本日の公判で示される「事実経過」をそのまま鵜呑みにすることはできない。被告サイドが検察サイドのストーリーに同調している可能性があるからだ。

小沢民主党前代表秘書逮捕事件との関連で言えば、本日の公判には、三つのポイントがある。

①西松建設が小沢氏サイドへの献金を偽装するために二つの政治団体を設立したのかどうか。

②小沢氏サイドのへの献金に関するいわゆる「迂回献金のシステム」を、小沢氏サイドと協議の上で構築したか。

③小沢前代表の公設第一秘書であった大久保隆規氏が、この「迂回献金システム」を認知していたか。

である。

 国沢前社長は、これらの点について、検察側が用意したストーリーを全面的に認める可能性がある。政権交代阻止を使命として与えられているマスメディアは、この説明を利用して一斉に民主党攻撃に向かうかもしれない。

 しかし、冷静な判断が必要である。

第一は、すでに述べたように、国沢氏には検察のストーリーを全面的に認めることについて誘因が存在していることだ。この点を念頭に入れる必要がある。

 第二は上述のストーリーがすでに明らかにされている事実と整合的でないことだ。この点については、Easy Resistance」様6月15日付記事に記述されている。民主党の第三者委員会報告書7ページに記載されているように、西松建設関連の二つの政治団体から小沢氏サイドへの献金は、2002年までは政党支部である「改革国民会議」宛てに行なわれていた。

 小沢氏個人の資金管理団体である「陸山会」への献金は2003年から2006年にかけて行なわれたものであることが明らかにされた。

 政党支部への献金は合法であり、したがって、「新政治問題研究会」「未来産業研究会」という二つの政治団体が、偽装献金を行なうために設立されたとのストーリーは完全に否定されているのである。

 大久保氏に対する起訴事実は、2003年から2006年にかけて二つの政治団体から陸山会に献金された2100万円について、寄付行為者を西松建設と記載しなかったことを「虚偽記載」とされ、追加的に、同期間に二つの政治団体から政党支部に献金された1400万円も「虚偽記載」とされたことである。

 これ以前の献金は、政党支部に行なわれており、政治家個人への献金をそうではないように偽装したとの仮説は成り立たないのだ。

 二つの政治団体を設立して行なわれた献金の仕組み作りに関与したのは、大久保氏ではなく、以前に小沢氏の秘書を務めていた高橋嘉信氏であると指摘する情報が多い。高橋氏はその後自民党に籍を移し、次期総選挙で小沢氏の地元である岩手4区から自民党公認候補として立候補する予定になっている。公判で高橋嘉信氏の関わりが明らかにされるのかどうかも注目される。

 公判では大久保氏が一連の献金システムに関与したとの説明がなされる可能性があるが、この点については、慎重な見極めが求められる。検察サイドが求めているのは、突き詰めればこの一点であり、この点に国沢氏が「協力」することが十分に予想されるからだ。

 より重要な問題は、仮に大久保氏が二つの政治団体が西松建設と関わりを持つことを知っていたとしても、それだけでは政治資金規正法の虚偽記載の罪を問えないことだ。二つの政治団体に何らかの実体があれば、政治資金規正法が「資金拠出者」ではなく、「寄付行為者」を記載することを求めている以上、二つの政治団体名の記載は正当な報告ということになるからだ。

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 第三の問題は、二つの政治団体から自民党議員への献金が立件から除外されたことだ。この点については、第三者委員会 報告書の10~11ページに詳しい記述がある。

 国沢前社長は「他人名義での100万円の寄付」容疑で逮捕されており、この基準にあてはめれば、「時効完成前の同様の寄附の事実として、藤井孝男衆議院議員の資金管理団体に100万円、藤野公孝参議院議員の政党支部に100万円、林幹雄衆議院議員の政党支部への100万円などの自民党議員側への寄附の事実」が不問に付されているのは整合性を持たないのである。

 また、同報告書10ページには、「新政治問題研究会」の名称が用いられたことに関連して、東京都港区に故橋本龍太郎氏が代表を務める同名の資金管理団体が存在することとの関係を取り上げている。報告書は、
「橋本氏の資金管理団体と同一の名称の団体を千代田区内に設立することで、西松建設から自民党議員への寄附の具体的内容を、所在地を区までしか記載しない官報では容易に知り得ない状態にすることにあったのではないかとの推測も成り立ち得る」
と記述する。自民党議員への献金の方がより悪質との評価も成り立ちうる。

 また、全体を貫く大きな問題として、犯罪構成要件としての法令の解釈・罰則適用基準について事前に明確な定めが示されていない問題の重要性を指摘しなければならない。この点は、6月11日付本ブログ記事
「読売社説 民主「西松」報告批判は的外れだ」
に詳述したが、「罪刑法定主義」の根本原則が踏みにじられているのだ。

「何が罪になり、何が罪にならないのか」が明確でなければ、警察、検察が、恣意(しい)的に市民を逮捕したり、起訴できることになってしまう。

 西松建設事件公判報道を冷静に受け止める必要があるが、政治権力が御用メディアを総動員して民主党攻撃を展開することには、十分な警戒が必要だ。

 また、郵便割引制度不正利用事件では、民主党議員がターゲットにされていると伝えられている。総選挙を目前にしたこの時期に、このような検察捜査が集中することは、「国策捜査」疑惑を自ら認めるようなものである。国民は「国策捜査」の現実に目を向けて、このような陽動作戦に惑わされないように気を付けなければならない。

 二番目の大きな問題は、民主党・社民党・国民新党への投票集中を妨げるための工作活動が活発化していることだ。

 静岡県では、元民主党参議院議員が渡辺喜美議員の応援を受けて知事選に立候補する。民主党推薦候補の得票を減らすことが目的であると考えられる。

 本ブログで指摘してきた「偽装CHANGE」勢力創設は、民主党への投票集中を阻止することに最大の狙いがあると考えられる。本心は、自民党が野党に転落することを回避する点にある。

 読売新聞の渡邉恒雄氏が鳩山邦夫氏を支援し、場合によっては新党設立が考えられる状況が生まれているのも、自民党を含む連立政権樹立を目指すことを目的とするものと考えられる。

 民主、社民、国民新党は、野党三党による連立政権樹立を目指すべきである。「政官業外電=悪徳ペンタゴン」による利権政治=これまでの自公政権を打破するには、本格的な政権交代を実現することが不可欠である。

 自民党を含む連立樹立に向けての工作活動を十分に警戒しなければならない。静岡知事選では本格政権交代を目指す有権者の投票を川勝平太氏に集中させなければならない。民主党と関わりの深い候補者が二名出馬することで、自民系候補が圧倒的に有利な状況が生まれている。この意味で、単純な与野党決戦にはならないが、勝利することの意味は大きい。

 第三の大きな問題は、民主党が野党共闘を盤石にするために注力すべきことだ。参議院選挙で単独過半数を確保したら連立解消などの暴言を示してはならない。

 社民党と共闘することにより、「平和主義の重視」が確保される。国民新党と共闘することにより、「郵政民営化の不正を暴く」ことが可能になる。

 民主主義の健全な発展のためには少数意見を尊重することが不可欠だ。比例区定数の削減は、二大政党には有利だが、少数政党を消滅に向かわせるものである。

_72   

日本の国会議員定数は諸外国と比較して決して多すぎない。国会議員を削減すれば、官僚の横暴は間違いなく拡大するだろう。民主党は国会議員定数削減方針を撤回し、少数政党を尊重するスタンスを明示するべきだ。

 野党共闘が崩壊すれば、政権交代は雲散霧消するだろう。自民党、あるいは自民党の一部との連立政権が樹立されても、日本政治の構造は変わらない。これまでの「悪徳ペンタゴンによる利権政治構造」が永遠に固定化されるだけだ。

 民主党が歪んだ方向に進むことを阻止し、野党共闘による本格政権交代を実現させるために、ネットから有権者が強い牽制力を働かせることが求められる。ネットから政党行動に圧力をかけてゆかねばならない。

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2009年6月18日 (木)

党首討論メディア論評と8月2日総選挙の争点

6月17日に行なわれた鳩山由紀夫民主党代表と麻生太郎首相とによる第2回党首討論は、総選挙に向けての争点を明確にするものだった。討論に対する国民の受け止め方はさまざまだと思うが、鳩山代表の完勝と受け止めた人が多かったと推察する。

しかし、党首討論が行なわれる時間帯が昼間であるために、多くの国民は党首討論の全体を見ることができない。わずか45分間の討論であるのだから、NHKは夜の時間帯に、党首討論を再放送するべきだ。

インターネットを利用する国民は、動画を見ることができるが、まだその比率は大きくない。総選挙を控え、国民が自分の目で党首討論を見て判断することが大切である。

党首討論では、①日本郵政西川社長続投問題、②社会保障政策の位置づけ、③財源問題が主要テーマになった。麻生首相は残り1分の時点で安全保障問題を持ち出したが、論議する時間はなく失笑を買った。

党首討論に対するメディア各社の反応はまちまちである。各社論説記事等の見出しを以下に列挙する。

読売:首相の「郵政」弁明は苦しい(社説)

朝日:鳩山氏「政権とれば西川社長解任」党首討論で明言

   麻生VS.鳩山―論戦の場を早く総選挙へ(社説)

毎日:党首討論 「対決前夜」の気迫を欠く(社説)

日経:日本郵政社長「政権取ったら解任」 党首討論で

中日:党首討論第2弾 勢いの差がにじみ出た(社説)

産経:説明責任に徹した首相 スローガン目立つ鳩山氏

共同:2度目の党首討論、焦る首相  鳩山氏「無駄削減で10兆」

時事:反転へ機会生かせず=再対決、鳩山氏に主導権-党首討論

FNN:鳩山代表が日本郵政・西川社長の更迭求めるも、麻生首相は介入に慎重姿勢

日本郵政西川社長続投問題については、論評が分かれた。

読売が「首相の「郵政」弁明は苦しい」としたのに対し、

朝日、日経、FNNが、「解任」や「介入」の用語を見出しに使い、「強権発動」のニュアンスを強調した。産経も、本文で続投支持の主張を全面展開した。

本ブログで指摘してきたように、朝日、日経、産経が、日本郵政西川社長続投を強く支持している。これらメディアは、小泉-中川(秀)-竹中-菅(すが)-石原各氏による「郵政××化ペンタゴン」と連携している姿が鮮明である。

この問題で、唯一正論を示したのが読売である。読売は次の指摘を示す。

「鳩山代表は、「民主党が政権を取れば社長を交代させる」と断言し、首相に社長更迭を迫った。

 これに対する首相の弁明は、いかにも苦しいものだった。

 「民間に対する政府の人事介入は慎重であるべきだ」と従来の見解を繰り返し、前総務相だけを更迭したのも、首相の人事権が及ぶのは閣僚で、日本郵政には直接及ばないから、と説明した。

 日本郵政は、政府が全株式を保有する「国有企業」である。法律にも人事の認可権を総務相が持つと明記されている。

 業務改善命令に対する対応が不十分なら、認可しなければよい。それは「介入」どころか、行政の「責務」であろう。首相は西川社長の経営責任に明確なけじめをつけるべきだ。」

(ここまで転載)

 本ブログの主張を書き写したかのような論評だが、正論そのものである。

 完全国有会社が起こした不祥事に対して、法律で定められた権限を持つ総務大臣が権限を行使するのは「介入」でなく「責務」である。

 「かんぽの宿」疑惑で表面化している問題は、固定資産税評価額857億円、時価評価が1000億円近辺の国民財産を、小泉改革近親者に109億円の安値で横流ししようとした疑惑なのだ。数百億円単位の利益供与未遂事件に発展する可能性を秘めている。

 現在はまだ「事件」でなく、「不祥事」の段階だが、日本郵政の売却先決定プロセスは不透明極まりなく、「限りなく黒に近いグレー」が現状である。「グレー」である責任は日本郵政サイドにあり、西川社長が責任を問われる合理的な理由が存在する。

 この問題について、産経新聞は以下のように記述する。

「ここで鳩山氏は「私どもが政権を取ったら日本郵政の西川さんにお辞めいただくしかない」と明言してみせたが、首相はこれを逆手に取った。

 「民間会社の人事を世論で決めるのか。うかつにやるべきでない」

 これこそが問題の本質といえよう。確かにかんぽの宿譲渡問題は不透明な部分が多く、西川氏は説明責任を怠ってきた。首相も「西川氏の行状」という表現を使い、西川氏への不満をにじませた。

 だが、世論を背景に政治が人事介入を繰り返せば、民営化する意味はない。何より自民党は、民営化の是非を問うた先の衆院選を否定することになる。「正義」を振りかざし、西川氏に辞任を迫る邦夫氏を更迭した理由はここにある。」
(ここまで転載)

 産経新聞は、日本郵政の株式100%を政府が保有する「完全国有会社」であることをまったく押さえていない。「完全国有会社」の財産処分は、国民財産の処分の意味を持つ。国民の利益を守るには、売却が適正に行なわれることが不可欠で、この売却に不正があったとの疑惑があれば、監督官庁が厳しい姿勢を取るのは当然である。「介入」でなく「責務」なのだ。

 GMが破綻して株式の過半を政府が保有したとする。このとき、GMの経営委員会が政府の意向を無視して新しい役員人事を決めたとする。政府が、人事案は政府の意向を反映していないとして人事案に反対するとき、産経新聞は米国政府の対応を「不当な介入」として批判するのか。

 発行部数が激減しているとはいえ、いやしくも全国紙の一角を占める新聞である。このような稚拙な論議を振りかざすのでは、ますます読者が減ってしまうと、部外者ながら甚だ心配になる。

 同じフジサンケイグループに属するFNNも同様の論調を示す。

 朝日、日経、産経の主張が「郵政民営化」についての考え方を歪めている。この歪み方は、上述した「郵政××化ペンタゴン」の歪んだ主張と軌を一にしている。

 郵政民営化が特定の人々、あるいは米国資本に利益を供与することを目的に推進されてはならないのだ。幸い、現段階では株式の100%を政府が保有しているから、政府に強い監督、あるいは認可権限があり、日本郵政の暴走を抑制する法体系が存在している。

 鳩山前総務相の行動は、法律に基づいて「郵政私物化」や「郵政米営化」を遮断しようとするものであったが、それでも「郵政××化勢力」は、力づくで、間違った行動をごり押ししようとしている。

 複数の大手メディアが汚染されていることも由々しき事態である。

 歪んだ考え方を代表するのが民営化について竹中氏が著書に記した以下の言葉である。

「辞書によると、民営化とは、「民間の経営に任せること」とある。文字通り郵政民営化とは、郵政の経営を民間に任せることであり、政府はそれが可能なように、また効率的に行われるように枠組みを作ることである。これで、西川氏に、経営のすべて、民営化のすべてが委ねられることになった。」
(「構造改革の真実」239ページ)

 竹中氏は、日本郵政株式会社が発足した時点で、日本郵政を西川社長のやりたい放題にして構わないとの根本的に誤った考えを持った。この根本的に誤った考え方が「かんぽの宿問題」を引き起こした最大の背景であると考えられる。

 この考え方が「完全に誤っている」ことを明確にしておかなければならない。鳩山民主党代表には、党首討論でこの点を明確に指摘してもらいたかった。

 メディアの論評で客観性を有していると評価できるのは、中日、共同、時事の三社である。「気迫を欠く」とした毎日の論評には首をかしげる。気迫は十分にこもっていたと感じられた。

 麻生首相は支持率急落に見舞われ、党首討論での態勢挽回を狙ったが、失敗に終わった。中日、共同、時事の三社は、この点についての客観的評価を記述している。

 私は次期総選挙の争点が以下の五点になると記述してきた。

①企業献金全面禁止
②「天下り」、「渡り」全面禁止
③世襲立候補制限
④消費税大増税阻止
⑤人間尊重の政治

 
 6月17日の党首討論で、④と⑤の争点が明確になった。

麻生首相は、「消費税大増税を主張するのが政権担当能力の証し」だと主張する。

これに対して鳩山代表は、「政府の無駄を徹底的に排除するために消費税大増税を封印する」ことが、政権与党が優先するべき責務だと主張した。

私は後者の主張を支持する。有権者はどちらの考え方を支持するかを考えて総選挙に臨むことになる。

鳩山民主党代表が生活保護母子加算切り捨てに伴う弊害を、実例をまじえて説明したことについて、河村官房長官が、
「お涙ちょうだいの議論をやるゆとりはないのではないか」
と批判した。これが、文部科学大臣を経験した者の発言か。唖然とする。

アニメの殿堂117億円は文部科学省予算だが、こんなものに巨大なお金を注ぐより、国民の生活にお金を回すべきだと多くの国民が考えたはずだ。鳩山代表の説明は非常に分かりやすかったと多くの国民が感じていると思う。

官房長官のこうした一言が、麻生内閣の支持率をさらに下落させることに寄与するのだ。

企業献金全面禁止、天下り根絶、世襲制限についても、与野党の政策の違いが明確になっている。いつ総選挙があっても問題はない。

6月26日に補正予算関連法案の処理が終結する見込みだ。その後、6月末から7月初めに衆議院を解散しない限り、麻生首相は自分の手で総選挙に臨むことができなくなるだろう。麻生おろしが本格化することは間違いない。

自民党議員は抵抗を示すが、麻生首相は総選挙を前に身を引くことを選択せず、8月2日総選挙に進むと考えられる。決戦の総選挙が目前に迫っている。

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2009年6月17日 (水)

心に響く鳩山代表党首討論・人間尊重の政治

民主党鳩山由紀夫代表と麻生太郎首相による2回目の党首討論が行なわれた。鳩山代表の言葉に思わず涙が溢(あふ)れた。鳩山代表は一人一人が居場所を確保できるための施策を懸命に訴えた。心に響く訴えかけだった。

この4月から生活保護の母子加算が打ち切られた。鳩山代表は小学生の女の子が高校に進学するのをあきらめた話を紹介した。高校生の子が親に修学旅行に行かなくてもいいと話をした事例を紹介した。

母子加算の廃止に伴う支出削減は200億円とのことだ。どうしてこのような支出に手を入れるのか。麻生政権は一方で13.9兆円の補正予算を編成した。

補正予算には、本予算で6490億円しか予算が計上されない公的部門の施設整備費に2.8兆円もの国費が投入される。大盤振る舞いの補正予算で、役人が使用する公共施設を豪華に刷新するのだ。マンガ・アニメの殿堂には建設費だけで117億円が用意される。

また、「エコカー」、「エコ家電」にかこつけて、役所の公用車が1万5000台=588億円、地デジ対応テレビが7万1000台=71億円、購入される。

さらに、58の基金に4.6兆円の国費が投入される。4.6兆円のうち、どれだけが事務経費に充当されるのかは国会審議でも明らかにされなかった。58基金への4.6兆円が「天下り」利権拡大に利用されることは間違いない。

5月30日付記事
「お手盛り・バラマキ補正予算成立と総選挙日程」
に次のように記述した。

14兆円もの国費を投入するなら、はるかに優先順位の高い費目が存在する。

①失業者の生活保障、非正規労働者のセーフティネット整備、

②高齢者の介護、医療体制整備、

③子育て・教育費助成、

④障害者自立支援法改正、

⑤後期高齢者医療制度廃止、

⑥消えた年金修復事業の早期完結、

⑦生活保護強化、

などの施策が優先されなければならなかった。

本当に必要とされる対象には国費が投入されず、「大資本」と「官僚」への利益供与だけが実行された。

鳩山代表は自殺が若者の死因トップになっている現状を指摘した。20代の死因の49%、30代の死因の36%が自殺で、死因のトップになっているとの衝撃的な数値が紹介された。

自殺の原因がすべて経済問題に起因している訳ではないが、国民の生活をしっかりと支える施策が、問題の縮小につながることは間違いない。

政府の支出には、多くの無駄が含まれている。「大資本」と「官僚」に利益を供与する政策が極めて多いのだ。自民党政治は「企業献金」によって支えられている。巨大な企業献金が自民党政治を国民の側でなく、大資本の側に向かせてしまうのだ。だから、企業献金の全面禁止が有効な施策になる。

補正予算を見れば、自民党政治がいかに官僚利権と一体のものであるのかが分かる。公用車588億円、公共部門のデジタルテレビ71億円で、どれほど国民生活に直結する施策を賄うことができるか。

党首討論では、日本郵政西川社長続投問題と社会保障政策と財源問題が論じられた。

日本郵政西川社長問題では、麻生首相が「民間会社の人事に政府は極力介入すべきでない」ことを訴えた。少し前まで西川社長更迭方針を示していた麻生首相が、突然、「小泉-竹中-中川(秀)-菅(すが)-石原」の「郵政××化ペンタゴン」の言葉を用いるようになった。

鳩山代表は西川社長続投に異論を唱え、政権交代が実現すれば西川社長を更迭する方針を明言したが、細かな点については説明を省略した。日本郵政の労働組合が西川社長続投に賛成の見解を示し、民主党の対応が注目されたが、鳩山代表の姿勢は明確だった。

日本郵政の労働組合は、組合出身者の処遇で西川社長に籠絡(ろうらく)されたのではないかと伝えられているが、本来、内部から経営を厳しく監視すべき立場にある。労働組合がその役割を果たさないのであれば、国民や国会、行政が日本郵政の経営を厳しく監視しなければならない。

鳩山代表は時間の関係で詳細の説明を省いたのだと考えられるが、株式会社形態であっても、日本郵政は100%政府出資会社であり、国民に不利益を与える不祥事が行なわれた疑惑が濃厚に存在する以上、政府が法律の定めに基づいて行動するのは当然のことである。民間会社であるからと、問題を放置するのは政府の責任放棄以外の何者でもない。

国民の利益を守るために責任を果たさない政府は、このことだけでも不信任に値する。できれば、この程度の責任追及を示して欲しかった。

社会保障政策と財源問題では、鳩山代表と麻生首相の基本スタンスの相違が鮮明に示された。

麻生首相は「財源なくして施策を検討するべきでない」との姿勢を明確に示した。政府は社会保障費を毎年2200億円削減する基本方針を堅持している。この数字は、財政収支を改善することを目的にはじかれたものである。

「何がどれだけ必要なのか」
ではなく、
「必要不必要にかかわりなく、財政の事情で支出を切る」
政策が、2200億円の社会保障費削減だった。

麻生首相は、今後の社会保障財源が不足するから、2011年度以降に消費税大増税を実施する方針を明言した。政府の試算では消費税が12%にまで引き上げられる可能性がある。

鳩山代表の説明は、根本的な発想の相違を明確に示すものだった。

すべての国民に居場所を確保するための政策を最優先する。そのために必要な政策を、責任をもって実行するのが政府の役割だとする。

「カネが足りないから必要不可欠な政策を切る」
のではなく、
「必要不可欠な政策を実現するために財源をねん出する」
のが鳩山代表の示した基本スタンスだった。 

鳩山代表は財源の捻出方法が三つあると述べた。①増税、②借金、③無駄の排除、である。

鳩山代表は、官僚丸投げの自民党政治からは、②借金、と、①増税、の発想しか出てこないことを厳しく糾弾(きゅうだん)した。

鳩山代表は、まず徹底的に取り組むべき課題を、③無駄の排除、であるとした。

③無駄の排除を徹底するために、政権交代を実現すれば、次の総選挙までの4年間は、増税を封印することを国民に約束することを明言した。

麻生首相は民主党の財源論を批判したが、鳩山代表の説明は明快だった。210兆円の財政支出から、義務的支出を取り除いた部分が70兆円あり、この70兆円のなかから、無駄な支出、先送りできる支出を約10兆円捻出することを訴えた。十分に実現可能性のある数値である。

また、天下り機関への12.1兆円の国費投入のうち、無駄なものを排除することについて、融資資金などを除く8.4兆円のうち、約半分の4兆円程度が随意契約で、ここから無駄を取り除くことが可能であることを主張した。

これに対して、麻生首相は随意契約にあたる支出は2兆円しかないと反論した。

全体を通じて、鳩山代表の説明に多くの国民が賛同したと思われる。

鳩山代表は「友愛社会の創設」を掲げるが、今日の討論を聞いて、政治に必要な最大の視点は「愛」であることを改めて痛感した。「愛」のない言葉は心に響かない。鳩山代表の言葉には「愛」が込められていた。

浮ついた意味でなく、すべての国民のかけがえのない命、かけがえのない人生を尊重する姿勢は、「愛」からしか生まれない。政権交代を一刻も早く実現して、日本の政治に「愛」を吹き込んで欲しいと痛感した。

拙著『知られざる真実-勾留地にて-』にも「人間愛」の大切さを書いた。ぜひお目通しを賜りたい。

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西川社長逆切れ封殺メディアと8月2日総選挙

6月16日の自民党代議士会で、環境政務官を務める古川禎久議員が麻生首相に内閣総辞職を進言した。

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「今般の鳩山政変をもって、わが党は決定的に国民の信を失った。自民党はこの際、『大政奉還』を決断して、国民の懐深くに帰るべきだ。」

麻生首相は、鳩山前総務相が麻生首相から日本郵政西川社長後任人事案を記述した私信を受け取ったことを公にしたことを批判したが、鳩山前総務相を批判する前に、「売国勢力」に魂を売り渡した自分自身の「ぶれ」と、法律軽視の姿勢を恥じるべきだ。

鳩山前総務相は私信の内容に触れたが、私信に触れなくても、麻生首相が西川社長更迭(こうてつ)の方針を鳩山氏に伝えていた事実を公表しただけでも意味は変わらない。重箱の隅をつつく麻生首相の発言は、お得意の「さもしさ」を表わすものでしかない。

鳩山前総務相は、国民の利益を守るために行動した。貴重な国民資産を不正に小泉改革近親者に破格の安値で横流ししようとしたとの疑惑を持たれているのは日本郵政である。その経営責任を厳しく追及することは当然である。

しかも、鳩山前総務相は日本郵政株式会社法第9条の規定に基づいて、西川社長の再任を認可しない方針を固めて公表したのだ。麻生首相は、国会答弁、ぶら下がり記者会見で、何度も「この問題は担当大臣である鳩山総務大臣がしかるべく判断される」と発言し、鳩山総務大臣の判断に委ねることを明言していたではないか。私もこの耳で何度もこの発言を聞いている。

この方針が明言されるなかで、鳩山総務大臣が西川社長更迭の方針を示したのである。そこに、小泉純一郎氏-中川秀直氏-竹中平蔵氏-菅義偉(すがよしひで)氏-石原伸晃氏からなる「郵政××化××ペンタゴン」が、法的根拠もなく「横やり」を入れてきた。麻生首相は「横やり」に屈服して、疑惑の中心にいる西川社長を続投させ、盟友の鳩山総務相を斬る決断を示したのだ。

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国民の麻生首相に対する強い批判は、政策の内容もさることながら、その生きざまに対するものであると考えられる。鳩山前総務相が、麻生首相が西川社長更迭方針を明言していたことを暴露しているのは、「私怨(しえん)」に基づくものでなく「公益」に配慮するものである。

鳩山前総務相は国民の「知る権利」に応えているのであり、この「公益性」を踏まえれば、麻生首相の批判は適切でない。

西川社長続投論を支援するテレビ朝日は、早速、鳩山前総務相批判を展開している。社会の木鐸としてのマスメディアは、鳩山前首相の上げ足を取るのでなく、麻生首相の政策運営スタンスの「ぶれ」を事実に即して検証し、批判的検討を加えるべきだ。

私は昨年12月22日に、
「大政奉還を決断すべき麻生首相」
の記事を掲載した。

麻生首相は、6月16日の古川議員の発言について記者会見で問われると、
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「あの、大政っていうのは、奉還するっていうのは、何の大政をどう奉還するのか、ちょっと、正直、意味が分かりませんでしたので、どういう意味かなーと思って、拝聴していましたけど」
と、よく意味の分からぬコメントを示したが、私は昨年12月の上記記事に次のように記述した。

「麻生首相が首相の座に1日でも長く居座るために、理念も哲学もなく政策手段を濫用することは、主権者である国民には、はなはだ迷惑なことだ。

政治は首相の私物ではない。国民の支持を完全に失っている首相は政治を私物化せずに、一刻も早く政治権力を主権者である国民に返還するべきである。

「大政奉還」されれば国民は直ちに総選挙を実施して、危機に対応する本格政府を樹立することになる。」

この言葉は昨年12月に記述したものだが、いまも状況はまったく変わらない。この間に、バラマキ、官僚焼け太りの14兆円の補正予算が編成されるなど、国民の迷惑は大幅に拡大した。

「大政奉還」とは、政治を主権者である国民に返還することを比喩的に表現したものだ。具体的には野党に政権を明け渡し、野党が直ちに選挙管理内閣を組織して総選挙を実施することを意味する。

政治は国民のために存在する。麻生首相はこの基本をないがしろにして、自分の延命のためだけに、盟友である鳩山前総務相まで斬ってしまった。

日本郵政の罪は大きい。総務省が極めて根拠の不確かな直近の事業収支に基づく「収益還元法」による「かんぽの宿」鑑定評価を実施したのは、問題を最小限に収めようとする「武士の情け」によるものだったのだと思う。

転売を認めない事業の長期継続、3200人の全従業員の長期雇用を絶対条件をして売却するなら、事業評価をベースとした鑑定が必要だが、「かんぽの宿」の売却条件はそのようなものでなかった。

国民の利益最大化の見地に立てば、「かんぽの宿」を最高値で売却することが最重視されねばならなかったわけで、その見地からすれば、不動産としての鑑定評価を行ない、この基準に照らして売却することが不可欠だった。

事業評価に基づく鑑定評価と、不動産としての実勢売買価格に基づく鑑定評価の差が、1万円の物件が直ちに6000万円で売却される現実を生んでいるのだ。

かんぽの宿売却に付随された雇用維持条件には、620名の正規社員のなかの550名について、1年間だけ雇用条件を維持することが定められていただけである。この550名全員に1人1000万円の退職金積み増しを実施しても、その費用は55億円だ。109億円が857億円で売却されれば、十分にお釣りがくる。雇用への配慮はさまざまな形で実施できた。

事業として売却するのなら、黒字化してから売却すれば、鑑定評価も一変する。繰り返すが「40億円の赤字」も疑惑の対象なのである。鳩山前総務相は、巨大な疑獄事件に発展させずに問題を収束させようと配慮したのだと考えられる。

本来は、真実を明らかにして、経済犯罪を完全に摘出し、関係者の責任を厳しく追及しなければならない。それだけの潜在的な問題は大きく残存していると思われる。政権交代後に巨大疑獄事件に発展することになるだろう。

6月16日、総務省を訪問した日本郵政西川善文社長が、記者の質問にブチ切れたと伝えられた。すでに、「きっこのブログ」様「ライフログ ダイアリー」様が伝えているが、西川社長が、
「けじめもつけたい」
と述べたことについて、記者が
「もう一度聞くが、辞任ということも含めてか。けじめとは」
と聞いた際に、西川社長が少しうつむいたために記者が、
「うなずかれたということでいいか」
と言うと、西川社長は、
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「(質問した記者をにらみ、語気を強めて)失礼なことをいうな!! 何がうなずいたんだ!!」
と怒声を浴びせたという。記者は、
「顔が動いたように見えたので・・・」
と応答したが、西川社長はそのままエレベーターの中へ消えたとのことだ。

テレビカメラは西川社長を追い回しているはずで、このような場面こそ正確に伝えてほしいが、このような情報はほとんど伝えられない。

事実のなかから取捨選択されて報道されている。朝日、日経、産経の世論調査では、西川社長続投問題が大きく取り上げられない。

「かんぽの宿疑惑」は国民の貴重な財産が不当な安値で、小泉改革近親者に不正に横流しされようとしたとの疑惑であり、極めて重大な問題である。この疑惑に絡む日本郵政取締役人事問題も重大な国政事案である。野党は国会での集中審議を求めており、必ず十分な審議を行なわなければならない。

麻生首相が7月12日都議選に注力していることについて、都議選の結果では麻生首相が退陣するのではないかとの憶測が生まれているが、読み方が間違っていると思う。麻生首相は8月2日総選挙の腹を固めたのだと思われる。8月2日総選挙に向かうには、7月12日の都議選で大敗できない。そのために、都議選に注力しているのだと思われる。8月2日総選挙を念頭に入れるべきだ。

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世論調査続報と悪魔に魂を売った麻生首相

6月15日付記事
「内閣支持率急落・西川続投反対の世論調査」に世論調査結果を紹介したが、その後に数社の世論調査結果が追加的に発表されたので、併せて再掲する。

主な調査項目として、
①麻生内閣支持率、②首相にふさわしい人、③総選挙比例区での投票政党、④総選挙後の政権の枠組み、⑤政党支持率、⑥麻生首相による鳩山総務相更迭について、⑦日本郵政西川社長続投について、⑧鳩山総務相の行動について、
に関する調査結果を以下に掲示する。

麻生内閣支持率
      支持する   支持しない
 共同   17.5   70.6
 
朝日   19     65
 読売   22.9   67.8
 毎日   19     60
 日経   25     65
 JNN  24.4   74.5
 日テレ  23.5   61.7

首相にふさわしい人
      麻生首相   鳩山代表
 共同   21.5   50.4
 
朝日   24     42
 読売   26     46

 毎日   15     32
 JNN  25     40

比例区での投票政党
      自民党    民主党
 共同   18.7   47.8
 
朝日   23     43
 読売   25     42

総選挙後の政権の枠組み
      自民党中心  民主党中心
 共同   14.9   35.9
 
朝日   23     52
 毎日() 27     53

政党支持率
      自民党    民主党
 共同   19.8   38.5
 
朝日   22     29
 読売   25.0   29.2

 毎日   20     34
 JNN  25.8   25.6

麻生首相による鳩山総務相更迭
      適切だ    適切でない
 共同   17.5   74.8
 読売          65%
 日経   24     56
 JNN  17     81
 日テレ  25.2   55.7

日本郵政西川社長
      続投すべき  辞任すべき
 共同   17.2   75.7
 
読売          67
 JNN  16     73

鳩山総務相の行動
      評価しない  評価する
 日経   21     59
 JNN  34     57

(単位:%、④の毎日は勝ってほしい政党。赤字が追加分)

 麻生内閣の支持率が急落した。大きな原因になったのが、日本郵政西川社長更迭をめぐる麻生首相の「ぶれ」である。

 上記の比較表には掲載されていないが、読売新聞は、日本郵政による「かんぽの宿」一括売却に「問題があった」が81%に達したことを伝えた。 

 読売、毎日系列は西川社長続投に批判的な見解を示し、世論調査でもこの問題に関する世論調査結果を記述しているが、他の報道機関は、西川社長続投問題に関する記述を省いている。麻生政権の支持率に影響する最重要の事項を記事から排除するところに、現在のマスメディアの「歪んだスタンス」が如実に示されている。

 民主党前代表の小沢一郎氏秘書が不透明な検察捜査によって逮捕されたのち、メディア各社は世論調査を繰り返し、小沢代表辞任を求める大キャンペーンを繰り返した。そのマスメディアは、西川社長更迭問題に関しては突然の沈黙を示す。誰もマスメディアを信用しなくなる。

 世論調査結果では

①麻生内閣の支持率が急落
②首相にふさわしいのは鳩山民主党代表
③比例区では民主党に投票
④総選挙後の政権は民主党中心
⑤政党支持率で民主党が首位
⑥麻生首相の鳩山総務相更迭は不適切
⑦日本郵政西川社長は辞任すべき
⑧西川社長辞任を求めた鳩山総務相は適切
だとする世論調査結果が示された。

 日本郵政西川社長を続投させる方針について、世論は明確にNOの見解を示している。鳩山前総務相と麻生首相の対応について、圧倒的多数の国民が鳩山前総務相の行動を支持し、麻生首相の対応を不適切としている。

 麻生太郎首相は16日、鳩山総務相を更迭した理由について、
「政府が100%株主でも、上場を目指している民間会社が決めた話に、後から政府が介入するのは慎重の上にも慎重であるべきだ。決まった後から色々言うのは、政府の不当介入というような誤解を招きかねない。これが今回の話を決めた決定の基だ」と説明した。

 麻生首相と鳩山前総務相。非難合戦の様相を呈しているが、客観的に見てどちらが正しいか。

 三つの論点について考察する。

①「上場を目指している民間会社が決めた話に政府が介入するのは慎重の上にも慎重であるべき」との麻生首相の主張。

 「上場を目指している企業」と「上場を目指していない企業」との間で、政府の姿勢が何か変わるのか。政府は介入すべき問題に介入すべきで、介入すべきでない問題に介入すべきでないだけではないのか。

「上場を目指している企業」の言葉が意味不明である。

繰り返すが、西川社長続投派の人々は「民間会社」と言うが、日本郵政株式会社を「民間会社」と呼ぶことは適切でない。

日本郵政株式会社は100%政府出資の「完全国有会社」である。文字通り、日本最大の国有会社である。資産売却の不正も、「1000億円の資産を100億円で売却した」なら、900億円規模の利益供与ということになる。障害者団体の郵便料金割引不正利用問題が取り沙汰されているが、数億円単位の問題だ。「かんぽの宿疑惑」は数百億円単位の問題なのだ。

日本最大の国有会社の経営問題に所管官庁、所管大臣が厳しい監視の目を光らせるのは当然だ。日本郵政の指名委員会が決めたというが、指名委員会メンバーは日本郵政発足時点の総務大臣認可によって委員になったメンバーで、現時点の認可を受けていない。

決定事項は2009年7月以降の日本郵政取締役人事である。現時点の総務大臣の認可が必要であることは当然だ。日本郵政に重大な不祥事があり、西川社長が深く関与していることも明らかになっている。これらのことを踏まえて総務大臣が西川社長更迭方針を決めたのだ。日本郵政株式会社法は総務大臣の認可権を明記している。

麻生首相の発言は認可権の行使を否定する発言だ。この発言を正しいと思うなら、日本郵政株式会社法を改正して、第9条の総務大臣認可権を廃止するか、第9条を、

(取締役等の選任等の決議)

第九条  会社の取締役の選任及び解任並びに監査役の選任及び解任の決議は、小泉純一郎、中川秀直、竹中平蔵、菅義偉、石原伸晃の認可を受けなければ、その効力を生じない。 

と改めるべきだ。

 麻生首相の発言は、小泉純一郎氏-竹中平蔵氏-中川秀直氏-菅義偉(すがよしひで)氏-石原伸晃氏の「郵政××化ペンタゴン」の発言と同じになってしまった。麻生首相が悪魔に魂を売り渡したことを示している。

_72

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②麻生首相の「決まった後からいろいろ言うのはおかしい」発言。

 日本郵政の指名委員会が取締役全員の再任方針を決めたのは5月18日である。当初、22日の委員会で決定する予定であったが、西川社長が刑事告発されるとの情報が入り、急遽(きゅうきょ)、18日に前倒しされた。

 野党国会議員12名は、西川善文社長を会社法の特別背任未遂で刑事告発したが、刑事告発は5月15日に実行された。日本郵政が指名委員会を前倒しすることを見通して、刑事告発を前倒ししたのだ。

 西川社長が刑事告発されるなかで、5月18日に日本郵政が西川社長続投、取締役再任を決定することが間違っている。

 日本郵政の100%出資者は日本政府である。日本郵政取締役は株主の意向に沿って経営判断しなければならない存在だ。竹中平蔵氏が大好きな言葉「ガバナンス(企業統治)」の基本の基本がこの点にあることは明白だ。

 日本郵政の指名委員会のメンバーは、100%株主である日本政府の意向を十分に踏まえたうえで社長人事、取締役選任を行なう責務を負っている。指名委員会がこの当然のプロセスを経て決定したのなら、政府は決定を尊重しなければならないだろう。

 しかし、指名委員会はこうした行動を取っていない。政府の意向を受けた指名委員会メンバーの奥田碩(ひろし)氏が、西川社長に西川社長交代の協議を持ちかけたところ、小泉-竹中ラインがこの動向をキャッチして「横やり」を入れてきたと多くの媒体が伝えている。これが事実であるなら、これこそ、郵政民営化の「私物化」そのものである。

 指名委員会が100%株主である政府の意向を反映せずに意思決定を行なったのなら、総務大臣が指名委員会の決定を認可しないことは正当である。この場合、責められるのは指名委員会であって総務大臣ではない。

 麻生首相はものごとの道理、法治国家における「法の支配」について、一から勉強し直すべきである。

 中川秀直氏、竹中平蔵氏をはじめとする、法治国家の基本に反する行動を示して憚(はばか)らない人々は「国賊」と呼ばれて反論できないだろう。

③麻生首相は自分自身の「ぶれ」を棚の上に置いて、鳩山総務相を非難するべきでないこと。

 麻生首相は5月21日の衆議院予算員会で、
「この問題については、所管大臣である総務大臣がしかるべく判断される」
と繰り返し述べて、この問題についての判断を総務大臣に委ねることを明言した。

 例えば衆議院の解散については、
「解散は私が判断させていただきます」
と、自身で判断することを明言してきた。西川社長続投問題は、はっきりと、鳩山総務相に委ねると明言してきたのだ。

 そのなかで、麻生首相自身が西川社長更迭方針を決めて、後任人事候補を記述した手紙を鳩山総務相に送っていたのだ。「ぶれ」たのは麻生首相である。

 御用メディアは鳩山総務相罷免(ひめん)について、
「泣いて馬謖(ばしょく)を斬(き)る」などと伝えるが、これは用法を誤っている。

 「泣いて馬謖を斬る」とは、
「間違ったことをした部下を、私情をはさまずに斬る」
ことだが、麻生首相の行動は、
「間違ったことをしていない部下を、自分の私的な利益のために斬る」
もので、意味がまったく違う。

 鳩山総務相は「郵政私物化」、「郵政米営化」の現状に憤りを感じたのだ。「かんぽの宿」を契機に、「郵政私物化」、「郵政米営化」を排除することを麻生首相に促した。

 麻生首相はいったんこの路線に乗ったが、最終局面で「郵政××化ペンタゴン」から恫喝されて、悪魔に魂を売ってしまった。

 日本郵政株式会社の取締役と指名委員会委員の顔ぶれを改めて見てみよう。

Photo

代表取締役  西川 善文(にしかわ よしふみ) 

代表取締役  高木 祥吉(たかぎ しょうきち) 

社外取締役  牛尾 治朗(うしお じろう)
ウシオ電機株式会社代表取締役会長 

社外取締役  奥田 碩(おくだ ひろし)
トヨタ自動車株式会社取締役相談役 

社外取締役  西岡 喬(にしおか たかし)
三菱重工業株式会社相談役 

社外取締役 丹羽 宇一郎(にわ ういちろう)
伊藤忠商事株式会社取締役会長 

社外取締役 奥谷 禮子(おくたに れいこ)
株式会社ザ・アール代表取締役社長 

社外取締役 高橋 瞳(たかはし ひとみ)
青南監査法人代表社員 

社外取締役 下河邉 和彦(しもこうべ かずひこ)
弁護士

一方、取締役を選任する「指名委員会」は西川氏を含む5名によって構成されている。その顔ぶれは以下の通り。

委員長 牛尾 治朗(うしお じろう) 

委員  西川 善文(にしかわ よしふみ) 

委員  高木 祥吉(たかぎ しょうきち) 

委員  奥田 碩(おくだ ひろし) 

委員  丹羽 宇一郎(にわ ういちろう)

 日本郵政取締役に、日本郵政プロパー職員がただの一人も含まれていない。一言で表せば、「大資本」による「日本郵政乗っ取り」である。

 財界で、中小企業団体の性格を持つのが日本商工会議所である。

日本商工会議所会頭を山口信夫氏が務めていた。見識のある立派な人物である。小泉改革に対しても苦言を呈していた。このような人物は外されている。

 牛尾治郎氏は1969年に日本青年会議所会頭を務めており、78年に会頭を務めた麻生氏の先輩にあたる。牛尾氏も麻生首相に西川続投を要請したと伝えられている。麻生首相は正論を貫くことができないのだろう。

 日本郵政取締役は、小泉-竹中-西川ラインで決められたと考えられ、国民の意志を反映していない。小泉竹中時代にはこれでやむを得なかったが、鳩山総務大臣の時代には正統性を持たない。

 麻生政権は今回の決定で、「財界による郵政私物化」、「郵政米営化」を容認したことになる。小泉改革路線に訣別するのかと思ったが、麻生首相は結局、小泉改革路線に屈服してしまった。小泉改革路線が国民に不幸しかもたらさなかったことは誰の目にも明らかになった。

 国民は次期総選挙で「小泉改革路線の継続を容認してしまうのか。それとも小泉改革路線から明確に訣別するのか。」この点を基準に投票を判断しなければならない。

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2009年6月16日 (火)

テレ朝偏向TVタックル「かんぽの宿」疑惑隠蔽

6月13日付記事
「テレ朝報道ステーションの救いようのない欺瞞」
に、「かんぽの宿」、「郵政民営化」、「日本郵政西川社長更迭問題」に関するマスメディアの著しい偏向を記述した。

とりわけ、朝日、産経、日経の偏向が著しい。読売系列は「かんぽの宿」問題では鳩山総務相の主張を支援する方向にスタンスを修正しているが、その背後には「政権交代」を「大連立」に誘導しようとの思惑が働いているとの指摘がある。

突出している偏向三番組が「サンデープロジェクト」、「TVタックル」、「報道ステーション」である。

6月15日の「TVタックル」も酷かった。BPOに番組の是正を申し入れる必要があると思う。

日本郵政西川社長続投問題。

番組の流れは出演者の構成で決まる。

この番組は、もともと自民党小泉一家につながる人物が主要アンカーを務めている。

北野たけし氏三宅久之氏が常に小泉一家寄りのスタンスを維持している。

6月15日放送では、ここに自民党田村耕太郎議員、竹中平蔵氏の秘書官を務めていた岸博幸氏が登場。また、元朝日新聞編集委員の萩谷順氏が出演した。岸氏はネットでも論考を発表しているが、読むに堪えないような文章しか発表していない。

自民党の田村耕太郎参院議員は政府紙幣発行論などを通じて、中川秀直氏、元財務相職員の高橋洋一氏などとも関わりの深い議員である。また、竹中平蔵氏、奥田かつ枝氏、オリックス専務取締役小島一雄氏などが関わるCMSA本支部でも講演し、竹中平蔵氏ともつながる議員である。

番組でVTR出演するのが屋山太郎氏だが、完全な小泉一家陣営の御用言論人的な発言を繰り返す。

こうしてみると、西川社長問題を論じるための番組に、もとより西川社長続投を擁護するとみられるメンバーが6人も用意されていることになる。

江田憲司氏は一見、中立公正の論議をしているように装うが、「かんぽの宿」の40億円の赤字だけを強調することに象徴されるように、小泉一家の別働隊の一員とみるべきだろう。渡部喜美氏とともに行動する「偽装CHANGE勢力」は小泉一家別働隊であると理解するべきだろう。江田氏を含めると西川社長続投派が7名になる。あいまいな発言を示した北野氏を除いても6名だ。

唯一、日本郵政の問題を追及したのが民主党の長妻昭議員だが、長妻議員は年金問題に重点を置いて国会活動を展開しており、かんぽの宿問題の詳細までは把握していないとみられる。大竹まこと氏だけが、国民目線の素朴な疑問を提示するが、大竹氏の正しい指摘を補強する専門家が出演しないと、西川社長続投派が詭弁を展開して問題をすり替えてしまう。

この出演者構成で「かんぽの宿」を論議させるのは、放送法第3条の「政治的公平」に反していると言わざるをえない。

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偏向した番組制作は以下の点にポイント置いた。

①「かんぽの宿」が「年間40億円の赤字を垂れ流している」との印象を視聴者に植え付ける。

②「かんぽの宿」売却手続きは「第三者委員会」に違法性なしとのお墨つきを得ていることを強調する。

③鳩山総務相の行動は政治的なパフォーマンスであることを強調する。

江田憲司氏は「かんぽの宿」が毎年40億円もの赤字を垂れ流し続けるなかで、売却を先送りしたことが国民に損失を与えることを強調した。「真実」を知らない視聴者は、「かんぽの宿」売却が正しい行動だったのではないかと錯覚してしまう。

「第三者委員会」がお手盛り委員会であることは、6月9日付記事
「参院総務委日本郵政西川社長更迭問題集中審議」

ならびに、6月1日付記事
「かんぽの宿が戦後最大疑獄事件に発展の可能性」
に記述した。

日本郵政株式会社の2008年3月期損益計算書における宿泊事業収支には、4億円の赤字しか計上されていない。

日本郵政が総務省に提出した17箱の段ボール資料から発見されたメルリリンチ作成の「かんぽの宿売却関連資料」には、2007年の27億円の赤字が、

2009年以降に10億円、13億円、16億円、17億円、17億円の黒地になるとの見通しが示されていたことが明らかにされている。

「毎年40億円の赤字を垂れ流す「かんぽの宿」」の事実は確認されていないし、存在もしていない。

公共の放送であるのだから、最低限以下の2点を視聴者に示すことが必要だ。

第一は、かんぽの宿79施設の固定資産性評価基準が857億円であるという事実。首都圏社宅9施設、ラフレさいたまだけで、時価評価は140億円に達する。全国79施設の売却価格が109億円などということはあり得ない。

第二は、かんぽの宿の事業収支が大幅に改善してきた事実である。しかも、2009年以降には黒字化が見込まれていたのである。「年間40億円の赤字が垂れ流される」との説明は「嘘」である。 

民営化されたのなら、経営を合理化する努力を注ぐことは当然である。利用料金も見直す必要がある。これらの経営努力によって早期に黒字化することは明らかだ。

竹中氏は「かんぽの宿」が本業でなく、コア事業でないから、売却することを決定したと説明するが、一方で、日本郵政の不動産事業を積極推進する。発言が完全に矛盾している。

ホテル事業は一般に、不動産事業の一部門に分類される。本業でない不動産事業を積極推進しておきながら、その一部門とも言える宿泊事業を、本業でないから売却を法律に盛り込んだことが、極めて不自然である。当初からオリックスに売却する予定が存在したのだとも考えられる。

仮に売却するなら、その前に黒字化することが先決だ。日本郵政株式会社法附則第2条は「かんぽの宿」売却期限を2012年9月30日と定められており、資産価格が暴落している局面に売却を拙速に強行する積極的理由は皆無である。むしろ、安く売るタイミングを選んだとも考えられる。

「TVタックル」は最重要な真実を隠蔽(いんぺい)し、一般視聴者を騙す「嘘」で固めた放送を行なっていると言わざるを得ない。

国会議員のなかに、「かんぽの宿」問題に精通した多数の議員が存在する。

民主党:川内博史氏原口一博氏、松野頼久氏、

社民党:保坂展人氏

国民新党:亀井久興氏自見庄三郎氏長谷川憲正氏

などが、問題にきわめて詳しく、ジャーナリストの町田徹氏、週刊朝日編集長の山口一臣氏など朝日関係者でも問題の詳細を知る人物は存在する。

 川内氏、原口氏、保坂氏に出演を要請しないところに、番組の歪んだスタンスが示されている。

 西川社長更迭問題を論じるのなら、論議が成り立つ出演者を確保するのが、公共の電波を取り扱う放送局の責務である。このような「ゴミ」のような放送を繰り返すから「マスゴミ」と呼ばれるのだ。

 新聞も放送も政治権力から、電波の供与、再販価格の維持など、特別の取り計らいを許認可の形で受けている。新聞、放送は重大な公共性を背負っているのであり、「偏向しない」最低限の「政治的公平」を義務付けられている。テレビ朝日番組は放送法の「政治的公平」を逸脱する程度があまりに大きい。

 「かんぽの宿」問題の詳細を知る論客を登場させ、公平なルールの下で論議させる番組をどこかの局が制作するべきだ。

 NHKは「かんぽの宿」問題を取り扱う番組を編成する方針を有していたが、政治状況を見極めている間に、政治状況が変化してしまった。

 1000億円の国民財産が、「郵政民営化」の名の下で、小泉改革関係者に109億円という破格の安値で売却されようとしていたとすれば、これは重大な経済犯罪である。2005年9月総選挙の唯一のテーマであった「郵政民営化」とは何であったのかとの重大な問題を国民に突き付けるものだ。

 個別議員のパフォーマンスであるとか、大騒ぎするような大きな問題ではないなどとする悪質な評論に惑わされてはならない。

 「テレビ朝日」は放送に対する信用を失墜させている偏向報道の現実を直視して、是正する措置を施すべきだ。

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2009年6月15日 (月)

内閣支持率急落・西川続投反対の世論調査

5月中旬以来、マスメディアが意図的にサボタージュしてきたとみられる世論調査が再開された。5月27日の初めての党首討論後の調査もなかった。日本郵政西川社長更迭問題が焦点になっているのに、ほとんど調査は行なわれてこなかった。

定例世論調査の時期が到来し、各社が調査を実施している。

主な調査項目として、
①麻生内閣支持率、②首相にふさわしい人、③総選挙比例区での投票政党、④総選挙後の政権の枠組み、⑤政党支持率、⑥麻生首相による鳩山総務相更迭について、⑦日本郵政西川社長続投について、⑧鳩山総務相の行動について、
Jnn2009 関する調査結果を以下に掲示する。

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麻生内閣支持率
      支持する   支持しない
 共同   17.5   70.6
 毎日   19     60
 日経   25     65
 JNN  24.4   74.5
 日テレ  23.5   61.7

首相にふさわしい人
      麻生首相   鳩山代表
 共同   21.5   50.4
 毎日   15     32
 JNN  25     40

比例区での投票政党
      自民党    民主党
 共同   18.7   47.8

総選挙後の政権の枠組み
      自民党中心  民主党中心
 共同   14.9   35.9
 毎日() 27     53

政党支持率
      自民党    民主党
 共同   19.8   38.5
 毎日   20     34
 JNN  25.8   25.6

麻生首相による鳩山総務相更迭
      適切だ    適切でない
 共同   17.5   74.8
 日経   24     56
 JNN  17     81
 日テレ  25.2   55.7

日本郵政西川社長
      続投すべき  辞任すべき
 共同   17.2   75.7
 JNN  16     73

鳩山総務相の行動
      評価しない  評価する
 日経   21     59
 JNN  34     57

(単位:%、④の毎日は勝ってほしい政党)

 麻生内閣の支持率が急落した。

①麻生内閣の支持率が急落
②首相にふさわしいのは鳩山民主党代表
③比例区では民主党に投票
④総選挙後の政権は民主党中心
⑤政党支持率で民主党が首位
⑥麻生首相の鳩山総務相更迭は不適切
⑦日本郵政西川社長は辞任すべき
⑧西川社長辞任を求めた鳩山総務相は適切
だとする世論調査結果が示された。

 本ブログでの主張と重なる世論調査結果が示された。

 

 「かんぽの宿」問題の概要については、6月14日付記事
「千葉市長選民主大勝と日本郵政の巨大犯罪疑惑」
に記述した。

 「かんぽの宿」疑惑は重大な経済犯罪に発展する可能性を秘めている。

5月13日付記事
「日本郵政西川社長続投論を覆う黒い霧」

6月14日付記事
「鳩山総務相更迭問題を逃げたテレ朝サンプロ」

に記述した「郵政民営化」の背後にある竹中平蔵氏-外資-西川善文氏の関係も、重大な問題を内包している。

 2002年12月11日の密会は重要である。6月14日付記事から、重要事項を転載する。

「2002年12月11日、ゴールドマン・サックスのCEOヘンリー・ポールソン氏、COOジョン・セイン氏、三井住友頭取西川善文氏、金融相竹中平蔵氏が東京で密会した。

この後、ゴールドマン・サックスから三井住友銀行に対して、2003年1月に1500億円の普通株への転換権付き優先株出資、2月に3500億円の優先株出資が行なわれた。

ゴールドマン・サックスの1500億円優先株には4.5%の配当利回りが付与された。当時、みずほ銀行が実施した優先株資金調達での配当利回りは2%であったから、4.5%の利回り付与は法外なものだった。

三井住友銀行がなぜ、このような国辱的な条件を付与するのか、金融市場ではさまざまな憶測が飛び交った。

仮の話であるが、竹中金融相が三井住友を破綻させないことを保証していたとすれば、大筋の説明を付けることができる。

①三井住友は高いコストを払うが、銀行存続の確約を手に入れる

②ゴールドマンは三井住友の破たん回避を保証されるとともに、法外に高い利回りを確保する。 

③竹中平蔵氏は両者から「感謝」される。 

これを「三方一両得」と言う。 

「郵政民営化」は、「ゴールドマン-竹中氏-西川善文氏-三井住友」の図式の中で推進されているプロジェクトと見るべきだろう。」

西川社長の行動は三井住友銀行に損害を与える行動であった可能性がある。

竹中平蔵氏がどのように「感謝」されたのかも問題になる。

事実関係が明確でないので、現段階はすべてが闇のなかの事項であるが、現職の金融担当相が個別銀行の個別ファイナンスに関与したということになれば、それだけで重大な問題だ。

竹中平蔵氏は国会への参考人招致から逃げ回っているにもかかわらず、テレビ番組で詭弁を主張し続けている。遠吠えばかり続けずに、国会でいくらでも説明するべきだ。

政権交代が実現すれば、竹中平蔵氏は証人喚問されることになるだろう。

「かんぽの宿疑惑」は時価1000億円近辺の国民資産を、適正でない手続きによって109億円の安値で払い下げようとした疑惑であり、不正が明確になれば、巨大経済犯罪事件に発展する。

鳩山前総務相は、「かんぽの宿が氷山の一角である」可能性を明言した。

日本郵政株式会社法は日本郵政取締役等選任について、総務大臣の認可がなければ効力を生じないことを明記している。

日本郵政株式会社は100%政府出資の完全国有会社であり、真の株主である国民に代わって総務大臣が日本郵政を厳しく監視することは、当然の責務である。

西川社長続投支持派は日本郵政の取締役5名から構成される「指名委員会」が西川社長の続投を決定したのだから、政府が介入するのは不当だと主張するが、このような詭弁を大きく取り上げるメディアも異常、このような「横車」に魂を売り渡す麻生首相も異常である。

現在の指名委員会のメンバーである日本郵政取締役は取締役に選任された時点の総務大臣に認可された人々である。

いま論議の対象になっているのは、2009年7月以降の取締役についての認可である。西川社長続投支持派は、日本郵政が発足した時点の総務大臣の意向によってすべてを決めなければならないと言っているに等しい。まったく歪んだ詭弁としか言いようがない。

「小泉純一郎氏-竹中平蔵氏-中川秀直氏-菅義偉(すがよしひで氏)-石原伸晃氏」の「郵政民営化=郵政××化ペンタゴン」が、日本郵政取締役人事に正統性のない横やりを入れている。このペンタゴンは、西川社長が辞任させられると、よほど都合の悪い事態に直面するのだろう。

_72_3 国民にも多くの真実の情報が伝えられ、国民が正しく、西川社長の辞任を求め、麻生首相の鳩山総務大臣更迭(こうてつ)を批判し、鳩山総務相の行動を支持する見解を表明するようになった。

私は現在の自公政権による政治が「政官業外電=悪徳ペンタゴン」の巨大利権を死守するための政治体制であることを訴えてきた。

「かんぽの宿」疑惑が重大であるにもかかわらず、麻生首相は西川社長を解任しようとした鳩山総務相を斬ったが、一方で麻生首相は官僚利権を温存する「天下り容認」姿勢、官僚機構へのバラマキ補正予算などを決めた。

巨大企業献金を受け続ける自民党は大資本との癒着(ゆちゃく)を断ち切れない。「郵政民営化」は外国資本への巨大利益供与の政策であることも明確だ。マスメディアが「御用機関」となって、政府政策への迎合報道を続けている。

「官僚」、「大資本」、「外国資本」、「御用マスメディア」と癒着する「自公政権」、すなわち「悪徳ペンタゴン政治」を打破しなければならない。「かんぽの宿」疑惑はこの構造を明確に示す、分かりやすい事例である。

7月12日の東京都議選を経れば、麻生首相は麻生降ろしへの強烈な圧力を排除できなくなるだろう。この場合、自民党総裁が差し替えられ、総選挙は10月4日に先送りされるだろう。

麻生首相が自分の手で解散、総選挙を実施するには、6月末ないし7月初解散、8月2日投票日日程を選ぶしか道はない。決断力のない麻生首相は、ぎりぎりまで決断できないだろう。

西松事件公判、郵便割引不正利用事件を、政治的に利用する動きが拡大しているが、民主党は、政治権力による警察、検察権力の不正利用を厳しく糾弾(きゅうだん)する姿勢を強めるべきだ。

いかなる妨害、弾圧が行なわれても、次期総選挙で野党連合は大勝利しなければならない。「悪徳ペンタゴン利権政治」を打破し、「国民の生活が一番の国民主権政治」を確立しなければならない。

一段と気を引き締めて闘いに臨まねばならない局面を迎えている。

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千葉市長選民主大勝と日本郵政の巨大犯罪疑惑

6月14日に実施された千葉市長選挙で、民主党推薦の熊谷俊人候補が自公推薦の前副市長林孝二郎氏らを破って初当選した。各候補者の獲得票数は以下の通り。

170629 熊谷 俊人=無新[]

117560 林 孝二郎=無新[][]

30933 結城 房江=共新

 4月の名古屋、5月のさいたまに続き、政令指定都市の市長選で民主党推薦候補が三連勝を果たした。

 千葉市長選後には、7月5日に静岡県知事選、7月12日に東京都議選が予定されており、今回の千葉市長選は大型地方選5連戦の第3戦目にあたる。

ここまでの戦績は民主の3戦3勝、自公の3戦3敗になった。

 7月5日の静岡県知事選では、民主系候補2名が名乗りを挙げており、候補者を一本化しなければ自民党系候補が漁夫の利を得ることになる。民主系候補の一角が候補者一本化に難色を示している背景に、自公側の工作活動が影響しているとの見方もある。

 民主党としては候補者の一本化を実現する必要があるが、これまでのところ難航している。

 日本郵政取締役人事では、法律の規定を覆(くつがえ)す運用が示された。民主主義国家、法治国家の基本は、国民の代表者によって構成される国会がルールに基づいて法律を制定し、その法律に従って国家や行政が運営されることにある。

 内閣総理大臣は国会の議決によって指名されるために地位の正統性を確保する。内閣総理大臣によって任命された国務大臣により内閣が組織され、内閣が行政権を掌握する。

 行政は法律の規定に基づいて執行されなければならないが、今回の日本郵政人事では、権限を有する総務大臣の判断に監督下の企業社長が従わず、大臣の首が斬られる事態が発生した。

 総理大臣は国会答弁で総務大臣の判断に委ねるとの方針を明確に示していたが、一部勢力から「横やり」が入り、総理大臣は総務大臣を斬って、「横やり」を認めてしまった。

 日本郵政の西川社長の責任が追及されたのは、日本郵政が巨大な経済犯罪に手を染めたとの有力な状況証拠が明らかにされたためである。

 国民の貴重な財産であり、固定資産税評価基準額が857億円の全国79の日本郵政資産が、その8分の1にあたる109億円で、小泉改革と極めて深い関係にある宮内義彦氏が代表を務める企業グループに、競争入札の偽装を施して横流しされようとしたとの疑惑が明らかになったのだ。

 犯罪として摘発されるかどうかは、今後の推移を待たねばならないが、オリックス不動産が売却先に決定される経緯が不透明極まりなく、「競争入札」と説明していた売却先決定方式が「随意契約」であったことが国会審議で明らかにされた。

 日本郵政がオリックス不動産への売却を白紙に撤回したのは、一連の選考過程に「瑕疵(かし)」=(欠陥)があったことを認めたからである。

 かんぽの宿79施設のうち、9施設は首都圏の社宅で、この9施設の時価評価は40億円前後とみられている。また、79施設のひとつである「ラフレさいたま」は、300億円程度の費用が投入された2000年6月に竣工したばかりの豪華宿泊施設で、時価は100億円を下らないと見られている。

 Photo_2  

 この10施設だけで時価評価は140億円に達する。

 79施設の109億円での売却が不正売却であることは明白だ。西川社長続投擁護派は、総務省が実施した79施設の不動産鑑定評価で250億円の金額が提示されたことを、不正売却でない根拠とするが、この不動産鑑定評価は、前提に重大な問題がある。

 「かんぽの宿」79施設の「時価」は、不動産としての売却価格を積算することが必要だが、総務省の不動産鑑定評価は「事業評価」に基づくものである。「事業評価」は直近の事業収支に強く影響されるが、この「事業収支」を不動産鑑定評価の基準に用いるには不適正なのである。

 また、「かんぽの宿」事業収支の数値に大きな疑惑がある。

 この点についての詳細は6月13日付記事
「テレ朝報道ステーションの救いようのない欺瞞」
を参照いただきたい。

 このほか、テレ朝「サンプロ」メンバーの高野孟氏の妄論

「西川更迭で日本郵政は官僚勢力の食い物に?
  ――鳩山邦夫“暴走”の背景

に対する反論として記述した6月10日付記事

「西川続投で日本郵政は売国勢力の食い物に?
  ――サンプロ一族“暴走”の背景

に、「かんぽの宿疑惑」の概要、日本郵政のガバナンス(統治)に関する法的規定、宮内義彦氏と郵政民営化の関係、などについて記述した。

 また、その補論として6月11日付記事

「国会に出頭すべき竹中平蔵氏と郵政民営化の嘘」

に、竹中平蔵氏の主張の根本的な誤りと財政投融資改革と郵政民営化の関係についての考察を記述した。

 また、日本郵政取締役から構成される「指名委員会」と、日本郵政が「かんぽの宿」疑惑を調査するために設置した「第三者委員会」の「お手盛り性質」について6月9日付記事、

「参院総務委日本郵政西川社長更迭問題集中審議」に、

「郵政民営化」の背後にある竹中平蔵氏-外資-西川善文氏の関係については、

「西川善文日本郵政社長続投論を覆う黒い霧」(5月23日)

「鳩山総務相更迭問題を逃げたテレ朝サンプロ」(6月14日)

に概要を記述した。

宮内義彦氏と小泉規制改革との関係については、
『規制緩和を利権にした男宮内義彦』(有森隆講談社)


『サラリーマン政商宮内義彦の光と影』(森功講談社)

「規制改革」を利権にした男 宮内義彦-「かんぽの宿」で露見した「政商の手口」 (講談社プラスアルファ文庫) Book 「規制改革」を利権にした男 宮内義彦-「かんぽの宿」で露見した「政商の手口」 (講談社プラスアルファ文庫)

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サラリーマン政商―宮内義彦の光と影 Book サラリーマン政商―宮内義彦の光と影

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の著作に詳しいので、参照いただきたい。

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 「かんぽの宿疑惑」は、郵政民営化の実態が「郵政私物化」、「郵政米営化」であったことを象徴的に示す「氷山の一角」である疑いが濃厚なのだ。

 この問題を白日の下に晒(さら)した鳩山邦夫総務相の功績は、高く評価されなければならない。鳩山氏は、
「いずれ歴史が私の正しさを証明してくれる。歴史と言っても50年、100年先ではなく、1年以内にも証明される」
と述べたが、必ず真相を明らかにしなければならない。

 時価が800億円から1200億円程度の物件を、「競争入札」を偽装して関係者に不正売却しようとしたのなら、これは天地を揺るがす巨大犯罪である。

 これ以外にも、カード事業の業者選定、資金運用委託業者選定などで、日本郵政が三井住友グループ、ならびにゴールドマン・サックスやメリル・リンチに便宜供与を図ったとの疑いも浮上しているのだ。

6月1日付記事

宿戦後最大疑獄事件に発展可能性」

の表現は、決して誇張でない。

 小泉純一郎氏、竹中平蔵氏、中川秀直氏、菅義偉(すがよしひで)氏、に石原伸晃氏を加えた「ペンタゴン勢力」が、「横やり」を入れたグループ中核メンバーである。

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 テレビ出演者関係では、田原総一朗氏、竹中平蔵氏、大谷昭宏氏、高野孟氏、財部誠一氏の「サンプロペンタゴン」が、西川氏続投支持で足並みを揃えている。

 「サンプロ」以外では、田崎史郎氏、竹田圭吾氏、田勢康弘氏、古館伊知郎氏、三宅久之氏が「悪徳ペンタゴン」を編成しているように見える。

 政治評論家では、時事通信解説委員長の田崎史郎氏と日経新聞コラムニストの田勢康弘氏が西川社長擁護派の双璧をなす。両者とも社命を帯びて発言していると考えられる。

 6月14日のフジテレビ「サキヨミ」では、今回の麻生首相による鳩山総務相罷免についてのインターネット調査結果が紹介された。

結果は、麻生首相の行動を、

評価する  25%
評価しない 75%

だった。

 これについて、司会者がインターネット調査は偏っている趣旨の発言を示した。

 また、田崎史郎氏は、鳩山総務相の行動が「パファーマンス」であることを必死に印象付ける発言を繰り返した。

 番組は「一刀両断」と呼ぶ視聴者調査の手法を持っているのだから、これで調べれば良い。だが、そのような調査を行わない。

 3月3日に小沢民主党代表秘書が逮捕され、5月11日に小沢代表が辞意を表明するまで、メディア各社はどれほど「世論調査」を多用したことか。

 民主党代表選に際してマスメディアは「鳩山代表就任は小沢院政」の大キャンペーンを展開した。私は5月11日に、

「逆風を順風に転じさせる小沢主党代表の英断

を掲載したが、マスメディアは民主党新代表に鳩山由紀夫氏が就任すれば民主党に対する批判が強まると喧伝(けんでん)した。フジテレビ「サキヨミ」コメンテーターの池上彰氏は、「民主党は愚かな選択をした」と断言した。

鳩山由紀夫代表が就任すると各社は早速世論調査を実施した。

 ところが、代表選後に実施した世論調査では鳩山由紀夫新代表が高く評価され、民主党支持率が急騰した。本ブログでは、

「フジテレビ偏向民主攻撃を粉砕する毎日世論調査」

「逆風下で党勢急騰を示す鳩山民主党世論調査」

を掲載した。

 これ以後、各社の世論調査がピタリと行なわれなくなった。五月雨式に、ポツリポツリと世論調査が実施されるが、西川社長問題が質問されない。こんなメディアは「ジャ-ナリズム」ではない。単なる御用機関である。

 日本郵政株式会社が100%政府出資の完全国有会社である以上、「かんぽの宿」は紛れもない国民財産である。その国民財産の売却が不正に行なわれて良いはずがない。

 しかも、郵政民営化の行く末に、300兆円の国民財産収奪、日本最大級の一等地不動産所有会社収奪のリスクが聳(そび)え立っている。

 この問題こそ、メディア各社は世論調査を繰り返し実施するべきである。

 本当に日本が腐り切ってしまったことを残念に思うが、この日本を腐敗から脱却させ、国民の幸福を追求する政治を樹立するには、次期総選挙で野党連合が大勝し、大連立ではない、本格政権交代を樹立するしか道はない。

 明治維新が実現し、明治政府が樹立されたのちに「政官業癒着の構造」が生み出されていった。現在はこの「政官業」に「外」と「電」が加わり、「政官業外電=悪徳ペンタゴン」が形成され、利権政治が氾濫してしまっている。

 日本郵政西川社長続投論のもう一つの側面に、

財界日本郵政私物化」改革必要」(5月21日)

に記述した「財界による日本郵政私物化」の問題がある。

 「電」であるマスメディアは財界からの広告収入に経営を依存している。西川社長続投論を糾弾(きゅうだん)できないのだ。糾弾すればテレビCMを打ち切られてしまう。

 西郷隆盛は、明治政府に対して
「政府に尋問の筋これあり」
と異を唱え、西南戦争に決起したが、力及ばずに敗れてしまった。

1877年の西南戦争から132年を経たいま、多くの国民が
「政府に尋問の筋これあり」
と感じている。

西南戦争の時代にはインターネットがなかった。真実の情報を日本全体に伝え、全国民を決起させることができなかった。インターネットの普及した現在は状況が異なる。ネットから真実の情報を津々浦々にまで伝え、平成の日本一新を成就させ、悪徳ペンタゴンを粉砕(ふんさい)しなければならない。

大型地方選5連戦に勝利し、総選挙で大勝利を果たし、日本政治から「悪」を排し、「正義」を樹立しなければならない。

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2009年6月14日 (日)

鳩山総務相更迭問題を逃げたテレ朝サンプロ

鳩山邦夫総務大臣を麻生首相が事実上罷免(ひめん)した。

麻生首相の言葉。

「郵政事業っていうのは国民の財産だと思っています。その郵政事業に関して政府と郵政会社との間に混乱を生じたような印象を与えたということは、はなはだ遺憾なことなんであって、この状況は早急に解決されてしかるべきだ。基本的にそう思って判断させてもらいました。」

辞表を提出した鳩山邦夫総務相は次のように述べた。

「世の中、正しいことが通らないときがある。

私は自分が正しい人間とは思わないが、汚れたことをやる人間は許せない。それを許しては政治にならないというのが私の信念だ。」

麻生首相は西川社長が鳩山総務相に謝罪をするとの妥協案を提示した。この妥協案についての鳩山氏の発言。

「西川さんが謝罪すべきは国民に対してであって私にではない。国民の財産をかすめとろうとしたのに加わった。国民に謝るべきであって、私に謝ってどうするというものではない。一切拒否した。そんなばかな妥協案はない。」

最後に鳩山総務相は西郷隆盛の言葉を引いた。

「政府に尋問の筋これあり」という西郷隆盛さんの有名な言葉があるが、そういう心境だ。」

今回の問題についての法律の規定と「かんぽの宿」疑惑の概要については6月13日付記事
「テレ朝報道ステーションの救いようのない欺瞞」
に詳しく書いた。

麻生首相は5月21日の衆議院予算員会で次の発言を繰り返した。

「この問題については所管大臣である鳩山総務大臣がしかるべく判断されると思います。」

所管大臣の鳩山総務相の判断に委ねることを明言していた。麻生首相は2月の段階で、後任人事案を含めて西川氏の更迭方針を鳩山氏に示していたと伝えられている。

混乱を招いたのは麻生首相であって鳩山総務相でない。麻生首相はいつも責任を他人に転嫁する。「さもしさ」が麻生首相の特徴だ。

麻生首相が「ぶれ」た。いつも首相の「ぶれ」を追及するマスメディアが今回は麻生首相の「ぶれ」を追及しない。西川社長続投の方向に大きな力が働いているのが分かる。

改めてはっきりさせておかねばならないことがある。

第一は、日本郵政が100%政府出資の完全国有会社であること。「民営化」が実施されて経営形態が株式会社になった。しかし、企業の所有者は日本政府である。「完全国有会社」であるということは、「国民が株主である」ということだ。

西川社長続投論を唱える勢力は、「民間会社の人事に政府が介入することは好ましくない」と主張するが、法治国家の根本をないがしろにしている。

日本郵政株式会社法は総務大臣に強い権限を付与している。日本郵政の取締役人事は総務大臣の認可がなければ効力を生じない。

日本郵政株式会社法第9条の条文は以下の通り

(取締役等の選任等の決議)

第九条  会社の取締役の選任及び解任並びに監査役の選任及び解任の決議は、総務大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。

 中川秀直氏、竹中平蔵氏、菅義偉(すがよしひで)氏、さらに裏にいる小泉純一郎氏などの主張は法的な正統性を持たない。これらの人々は、2005年9月の郵政民営化選挙で自民党が大勝したのだから、日本郵政人事は当時の郵政民営化推進勢力の言うままにしなければならないと主張している。

 この主張をごり押しするなら、上記条文を次のように改めるべきだ。

(取締役等の選任等の決議)

第九条  会社の取締役の選任及び解任並びに監査役の選任及び解任の決議は、小泉純一郎、中川秀直、竹中平蔵、菅義偉、石原伸晃の認可を受けなければ、その効力を生じない。 

 「かんぽの宿」疑惑は、2400億円の費用を投じ、固定資産税評価基準856億円の国民資産を109億円という破格の安値で、競争入札を偽装して、「オリックス不動産」に横流ししようとした、との疑惑である。

巨大な経済犯罪の疑惑が濃厚に存在している。

また、カードビジネスや資金運用の委託等において三井住友グループ企業が優遇されているとの疑惑も存在している。

日本郵政株式会社は340兆円もの国民資産を預かる、日本最大の企業であり、その運用において不正がまかり通ることは絶対に許されない。

巨大な経済犯罪の疑いが生じている責任は明らかに日本郵政サイドにある。しかも、「かんぽの宿」案件は西川社長直結のチームが担当したものである。これだけの要件が整えば、西川社長の続投を容認できる余地はない。

この意味で、「正しいことが通らない。国民の財産をかすめとろうとしたのに加わった、汚れたことをやる人間は許せない」との鳩山総務相の発言は正論そのものである。

それでは、なぜ、正統性のない西川社長続投論がまかり通ってしまったのか。

直接的な理由は、小泉純一郎氏-竹中平蔵氏-中川秀直氏-菅義偉氏の「郵政民営化推進勢力」が麻生政権に脅しをかけて、巻き返しをはかったことだ。

麻生首相は、「西川社長続投を受け入れれば、麻生おろしを行なわない」との条件を提示されたと考えられる。しかし、都議選で自民党が敗北すれば、約束は反故にされる。麻生おろしを確実に避けるには、麻生首相は6月末解散8月2日総選挙を選ぶしか道はない。

「郵政民営化推進勢力」は内容を正確に表現すれば「郵政私物化勢力」、「郵政米営化勢力」と呼ぶことができるだろう。

この勢力は、2007年10月1日に日本郵政株式会社が発足した時点で、日本郵政を好き放題にできると勘違いした。実際に好き放題をしてきたと考えられる。

ところが、そのなかから「かんぽの宿」疑惑が表面化してしまった。西川社長が更迭されれば、悪事の数々が露見してしまう。この事態を絶対に避けなければならない。これが、横車(よこぐるま)の理由だと考えられる。

西川社長はパンドラの箱の蓋(ふた)である。西川社長が更迭されれば、パンドラの箱からすべてが噴出する。

麻生首相が脅しに屈してしまったため、パンドラの蓋の撤去は政権交代後に先送りされることになった。

「神州の泉」主宰者である高橋博彦氏による6月12日付記事
「西川氏続投は、ゴールドマン・サックスの郵政資金収奪プロジェクトの中心にある!!」
に問題の本質の一端が示されている。

2002年12月11日、ゴールドマン・サックスのCEOヘンリー・ポールソン氏、COOジョン・セイン氏、三井住友頭取西川善文氏、金融相竹中平蔵氏が東京で密会した。

この後、ゴールドマン・サックスから三井住友銀行に対して、2003年1月に1500億円の普通株への転換権付き優先株出資、2月に3500億円の優先株出資が行なわれた。

ゴールドマン・サックスの1500億円優先株には4.5%の配当利回りが付与された。当時、みずほ銀行が実施した優先株資金調達での配当利回りは2%であったから、4.5%の利回り付与は法外なものだった。

三井住友銀行がなぜ、このような国辱的な条件を付与するのか、金融市場ではさまざまな憶測が飛び交った。

仮の話であるが、竹中金融相が三井住友を破綻させないことを保証していたとすれば、大筋の説明を付けることができる。

①三井住友は高いコストを払うが、銀行存続の確約を手に入れる

②ゴールドマンは三井住友の破たん回避を保証されるとともに、法外に高い利回りを確保する。

③竹中平蔵氏は両者から「感謝」される。

これを「三方一両得」と言う。

「郵政民営化」は、「ゴールドマン-竹中氏-西川善文氏-三井住友」の図式の中で推進されているプロジェクトと見るべきだろう。

これらの勢力にとって、悪事を露見させないことは重要だが、重要な目標はそれだけではない。

「ゆうちょ銀行」、「かんぽ生命」の全株式を市場に放出させ、その株式の51%を取得すれば、280兆円の日本郵政資金を収奪することができる。

また、日本郵政株式を51%取得すれば、簿価で2.6兆円の日本郵政保有不動産を獲得できる。

郵便事業会社と郵便局会社を分けているのは、収益性の低い郵便事業を多数の人員とともに日本郵政から切り離し、純然たる不動産会社を収奪するための手段であると考えられる。

6月14日のテレビ朝日「サンデープロジェクト」は日本郵政問題を取り扱わなかった。詳細を深く掘り下げれば、西川社長続投論がいかに不正と欺瞞に満ちたものであるかが明らかになるからだろう。

鳩山総務相は問題をここまで拡大させた責任を負っている。大臣を辞任して、「はいこれまで」との対応を示すなら、鳩山総務相に対する評価は急落する。意味のないパフォーマンスを演じたことになる。

日本郵政の本当の意味での株主である国民は、「郵政私物化勢力」=「郵政米営化勢力」の暴挙をこのまま許してはならない。

麻生首相が市場原理主義勢力=郵政私物化勢力に魂を売ったことで、次期総選挙の争点に、新たに「小泉改革の是非を問う」ことが浮上することになった。

「正義」が「悪魔」に屈してはならない。

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2009年6月13日 (土)

天木直人氏との対談動画配信価格改定について

民主党代表選前日の5月15日に憂国の元外交官天木直人氏と対談をさせていただいた。対談は、2本のファイルに収録され、「まぐまぐ」から配信されている。すでに6月1日付記事に掲載した通りだ。

「まぐまぐ」にお願いしての収録であるため、有料配信でご高覧賜る皆様にご負担をおかけすることを申し訳なく感じている。

天木氏との協議で、収録動画全体で2100円程度の価格設定を想定していたが、事前の事務連絡が不十分で実際の販売価格が1本2100円の設定になってしまった。

「植草事件の真相掲示板」様でも、価格を低くできないかとのコメントをいただき、天木氏とも相談して各種検討をした結果、このたび、1本1050円でご提供させていただくことになった。

なにとぞご高覧賜りたく、謹んでお願い申し上げたい。

収録された対談は、

対談Ⅰ

「小泉竹中経済政策の罪~日本経済混迷の真相~」

対談Ⅱ

「小沢事件の真相と政権交代~これからの日本に在るべき政治~」

の2本の動画として収録されている。

発売当初の2100円の価格でご購入賜った皆様には、大変なご迷惑をおかけすることになってしまい、大変申し訳なく感じている。

「まぐまぐ!」へのご登録アドレスを通じて、私と天木氏とで可能な対応を取らせていただきたく思う。この点については、改めてご報告させていただきたい。

「まぐまぐ!マーケットに関するお問い合わせ先」
support@mag2market.com
があるので、ご不明な点があればご一報賜りますようお願い申し上げます。

配信動画をご高覧下さった皆様が、コメントをブログに掲載くださっているので、ご紹介させていただきたい。

「豊中ではたらく社長のブログ」様は、

 
天木直人氏&植草一秀氏 対談動画」(5月31日)

 
これからの日本に在るべき政治とは」(6月4日)

 
の2回にわたって掲載下さった。一部を転載させていただく。

【動画:対談Ⅰ】について

「経済学者 植草一秀氏と元外務省官僚の天木直人氏の60分超にわたる対談動画です。ダウンロードコンテンツですので、購入後すぐに見ることができます。

 

以下、対談の内容です。

 
・小泉、竹中政策との関わり
・小泉政策の特徴
・市場原理主義の矛盾
・小泉政権の対米隷属
・りそな銀行の問題について
・米金融資本主義のこれから
・市場資本の拡大と日本資産の暴落
・郵政事業民営化の本質

 

内容は、かなり濃い対談動画となっておりますので、政治または世界経済に興味のある方はぜひ閲覧して頂ければと思います。個人的には、リーマンブラザーズ破綻とロックフェラーの覇権が関わっているということついてのご説明が心に深く残りました。

 

植草氏によると、リーマンブラザーズは破綻したのではなく、破綻させた

わけでありますが、このように世界経済までもが特定の人間により自由に操ることができてしまう利権構造が存在することは誠に遺憾であり、断じて許すことはできません。

 

この裏で起こっているとても恐ろしい事実を私達は知っておくべきなのです。

 

そして、世界的な金融恐慌からイラク戦争まで。世界や日本で起こっている問題は全て一つの輪に繋がっており、郵政民営化、かんぽの宿問題はその縮図であるということです。特定の権力者の利益の為に様々なものを動かしている側面があり、市場原理主義者達のやってきたことがいかに深い問題であるかがよくわかります。」

【動画:対談Ⅱ】について

「第2弾の内容は以下になります。

 
・小沢事件と民主党の今後
・既存のメディアとインターネットメディア
・政権交代の意義
・アメリカとの向き合い方
2009年総選挙とこれからの政治
・これからの日本に在るべき政治
・小さな政府 大きな政府

 

今回、起きた西松献金事件。これは歴史に残る大事件になるでしょう。

 
しかし、誰がこれをやったのか(仕組んだのか)、そういったことは抜きにして、元検察官の郷原信郎氏が、この事例でしかもこのタイミングに逮捕に踏み切ることは理解に苦しむという見解を示されてらっしゃいますが、その見解に正当性があるにも関わらず、次期総理になる可能性が高い人物を選挙前に、いとも簡単に逮捕出来てしまう、といった検察のシステム・在り方の根本的な問題点を国民に露呈してしまったというのが大きかったのではないでしょうか。

 

植草氏と天木氏の対談動画は、これらの不正に行われる小沢潰しが今回の事件以前から幾度も工作されていたことから始まり、政権交代した後、どう政治を動かしていくことが重要なのか、ということが対談されています。

 

前回の対談でもそうでしたが、普段、お二人が更新されているブログではあまり聞くことができない内容が対談中に籠められているからです。もちろんそれだけではないのですが、前回が非常に有意義な対談内容だと思いましたので、早速拝見させて頂いた次第です。とても勉強になりました。」

 kobaちゃんの徒然なるままに」様もありがたいメッセージを掲載下さった。

いつも、温かなご支援を賜り心から感謝申し上げたい。

「植草、天木両氏の対談を視聴、まさに必見だ!」

「有料配信(各篇共2100円)ではあるが、視聴された方ならその内容の凄さに納得していただけるものと思う。

昨日私も視聴したが、権力に信念を持って立ち向かった両氏の実体験から繰り出される発言は、驚愕的でも有り、しかしなるほどと納得出来るものであった。

 
特に小泉・竹中経済政策の罪 ~日本経済混迷の真相~では、小泉元総理の人間性を丸裸にし、小泉政権発足当時から日本の経済や金融は元より政治のあり方まで変えてしまう、大変な状況に陥る危険性を指摘されてきた植草氏は、経済、金融のプロとしてだけでなく、政治に関しても相当精通した政治的洞察力に長けた方であることを再確認した。

 

小泉も両氏に対しては相当警戒していたようで、表面的な強さとは裏腹に案外臆病な一面を窺わせる指摘を両氏はされていた。
有料配信なのでほんの一部を紹介したが、1時間6分の収録の中には私たちがこれまで知らなかった真実が植草氏によって明かされていますので、視聴する価値は十分あると思います。

 

真実を報道しないゴミ新聞を読むよりは、数段価値は有りますよ。
しかしネット配信とは言え、時の権力者を丸裸にし、これだけ鋭く指摘した対談はこれまであっただろうか?

 
植草氏も天木氏もこれからの日本の政治に欠かすことの出来ない人であることを、この対談から再確認した。」

 Easy Resistance」様も貴重なメッセージを掲載下さった。

 

 「Easy Resistance」様は、政府部門の効率化について、ブログ上論争の形で貴重なご見解を数多く提示してくださっている。私も論議に参加しなければならないと思いながら、時間的な制約があり、見解の表出を先送りしてしまってきた。改めて機会をみて私なりの補足意見を掲載させていただきたく思う。いつも、ご高見を参考にさせていただいていることを申し添えさせていただく。

 「Easy Resistance」様には、6月8日付記事にありがたいお言葉を賜った。

「植草氏天木氏対談ビデオ是非ご視聴を」

「こんな不況の最中で有難いことに本業に忙しくなかなか時間が取れません、やっと植草一秀氏、天木直人氏の対談のビデオやっと視聴しました。 

小泉・竹中経済政策の罪 ~日本経済混迷の真相

小沢事件の真相と政権交代 ~これからの日本に在るべき政治

有料で配信されるものですから内容には触れませんが凄いです、権力者丸裸、時代の変わり目を実感します、かつてこんなことを公けに発言できた人達がいただろうか?

特に際立ったのが植草氏の情報の質量水準の高さ、天木氏も指摘していましたが、経済だけでなく、政治に関しても当事者としてのダイナミックな推論が的を得て、近年の日本の推移がどのようなものか理解する助けになります。

なぜ「博士の独り事」が一位なんでしょう?

私が持つ最大の謎です。」

 皆様から過分なお言葉を賜り、心からお礼申し上げたい。

 総選挙を目前に控え、すべての国民が過去10年を正しく検証し、次の時代の政治を作り上げていかねばならない。未来の日本を考える一助にしていただければ誠にありがたく思う。

 また、さる4月21日に開催された
ワールド・ブロガー協会 設立記念 第一回取材会・講演会

のプログラム終了時に、代表世話人の佐宗邦皇氏ならびに世話人の高橋清隆氏のお計らいで、短い時間ではあったが挨拶をさせていただいた。

 「ワールド・ブロガー協会」公式サイト様がその動画を掲載下さったので、ぜひご高覧賜りたい。

 この挨拶について、Aobadai Life」様がありがたいお言葉を掲載下さった。

「ワールド・ブロガー協会での、植草一秀さんの挨拶に感動」(6月8日)

「最近、小泉政権の本質が、CIAの手先となって、
アメリカに日本人の財産を売り渡すための、
「売国奴内閣」だったという実態がよくわかって、



植民地日本への指示書である「年次改革要望書」を読むにつけ、
いかにこの国が、アメリカの植民地と化したかと、
アメリカ、CIAの手先となっている政治家や、
大手マスコミの実情にムカムカしながら、


どうやったら、この国の「かたち」を健全な独立国家に戻すことができるか、


そういうことを考えていたわけだが、



ひょんなところから、ワールドブロガー協会での、
植草一秀さんの挨拶の動画を見つけて、
その言葉が、素晴らしくて、感動したので、ブログで紹介させていただきたい。


この国を変えていくのは、私たち自身なんだと、希望をいただいた.

(中略)

まさにそのとおりだ。


われわれの希望はインターネットである。


国民の一人一人が、インターネットで真実を語ることにより、
アメリカや売国奴に支配された、この国を救うことができるのである。



そのためには、私たち一人一人が「熱い心」をもって、立ち上がらなければならない。



いまだに、植草一秀さんのことを、チカン犯人だと決めつけて、
誤解している人たちがいる。


竹中平蔵の経済政策を批判し、りそなのインサイダー疑惑を指摘したために、
国策捜査によって、元首相のSPに尾行され、国策逮捕され、
マスコミを使って、偽情報を流されたという真実を知らない人が多い。


でも、この挨拶での、植草さんの表情を見ていただければ、
真実はどこにあるかということはわかるだろう。



私たちは、誰が売国奴で、誰が愛国者かということを、
ちゃんと見抜いていかなければいけない。


そもそもマスコミは、CIAの影響下にあるのだ。



さて、私は、そんな植草さんの事件が国策逮捕であったということを、

世間ではかなり認識されてきているということに、気づいた。

(後略)」

 「Aobadai Life」様は、拙著『知られざる真実-勾留地にて-』についても、身に余るご紹介をして下さった。私自身が「Aobadai Life」様が掲載下さった

植草一秀事件も国策逮捕だったことを知らなかった個人的反省(5

に感動して、涙があふれるのを止められなかったのだが、

・植草一秀事件も国策逮捕だったことを知らなかった個人的反省(1

・植草一秀事件も国策逮捕だったことを知らなかった個人的反省(2

・植草一秀事件も国策逮捕だったことを知らなかった個人的反省(3

・植草一秀事件も国策逮捕だったことを知らなかった個人的反省(4

・植草一秀事件も国策逮捕だったことを知らなかった個人的反省(5

の記事を掲載下さっているので、なにとぞご高覧賜りたい。

 今回掲載できなかったが、「植草事件の真相掲示板」様へのメッセージをはじめ、これ以外にも多くの皆様から温かいお言葉を賜っており、この場を借りて謹んでお礼申し上げたい。

 私としては、ひとりでも多くの方に真実の情報を発信して参りたいと考えている。微力ではあるが、一歩ずつ進んで参りたく思う。なにとぞ、今後とも温かなご支援とご指導を賜りたく謹んでお願い申し上げたい。

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テレ朝報道ステーションの救いようのない欺瞞

麻生首相による鳩山総務相更迭を各社が報道した。

朝日、産経、日経が「郵政民営化推進」の名を借りた「郵政私物化」、「郵政米営化」勢力と結託し、西川社長続投をごり押しした。

なかでもテレビ朝日の偏向ぶりは突出している。

6月12日「報道ステーション」の偏向は救いがたいものだった。

古館伊知郎氏、田崎史郎氏、堀田力氏は「偏向トリオ」のユニットを結成するのだろうか。懸命の情報操作だった。堀田氏には作為が無いのかも知れないが、ユニットに完全に組み込まれていた。

しかし、真実を正しく知る視聴者は騙されない。また、情報操作空間にはネットの抜け穴がある。ネットの抜け穴から真実の情報が発信されるから、情報操作空間は撹乱される。

西川社長更迭問題の基本を押さえなければならない。重要なことは、日本が民主主義国家であり、法治国家であることだ。公的事項の運営、決定には、民主主義のルール法治国家の基本に照らした「正統性」が不可欠である。

西川社長更迭問題では次の三点を踏まえることが絶対に必要である。 

第一は、日本郵政株式会社が現時点で、100%政府出資の完全国有会社であること。

第二は、日本郵政株式会社存立の根拠法規が日本郵政株式会社法であり、日本郵政株式会社の運営にあたっては、根拠法に準拠した対応が必要であること。

第三は、「郵政民営化」の実施にあたっては、郵政民営化法の規定に準拠した対応が求められること。

日本郵政株式会社は現在、株式の100%を政府が出資する完全国有会社である。したがって、「民間会社」と称することは正しくない。株式の過半を民間が保有したときに、初めて「民間会社」の呼称を用いるべきだ。

米国でGMが破綻して、政府が60%、あるいは70%の株式を取得することを「実質国有化」と表現していることを踏まえるべきだ。

日本郵政株式会社法は、日本郵政の経営に関して、総務大臣に極めて強い権限を付与している。監督権限、検査権限、取締役等選任にかかる認可権限などは総務大臣の専権事項である。

日本郵政の経営は、日本郵政の取締役に委ねられているが、取締役に経営が委ねられる「正統性」の根拠は、これらの取締役が総務大臣の認可を受けているからである。

西川善文氏をはじめとする日本郵政の現取締役の地位は、これらの取締役が選任された時点における所管大臣である総務大臣の認可によって「正統性」を保持している。

国民が国会議員を選び、国会の多数勢力によって内閣総理大臣が指名される。内閣総理大臣は内閣を組織し、行政権を司る。民意を受けた内閣であるから「正統性」を持つ。

今回、2009年6月末をもって、取締役の任期が満了になる。したがって、2009年7月以降の期間における日本郵政取締役は、現在の総務大臣の認可を得て、初めて「正統性」の根拠を得ることになる。

選挙の洗礼を受けない西川善文氏は、現職の総務大臣に認可されない限り「正統性」の根拠を持たない。

2009年7月以降の取締役は鳩山総務大臣の認可を得て、初めて「正統性」を得ることができるのだ。小泉純一郎氏、竹中平蔵氏、中川秀直氏、菅義偉(すがよしひで)氏が暴れようと叫ぼうと、まったく関係がない。

鳩山総務相が西川社長の再任を認めないとの決断を示した根拠は、西川社長の下で、日本郵政の経営が適正に行われていないことを示す事例が数多く表面化したからである。

表面化したなかでの最大の問題が「かんぽの宿」疑惑だった。

「かんぽの宿疑惑」とは、2400億円を投じた79施設が109億円でオリックス不動産に売却されかかった問題である。

79施設の固定資産税評価基準額は856億円である。つまり、資産価値の8分の1程度の低価格で貴重な国民資産が不正売却されようとした疑惑なのだ。

西川社長続投支持派は、この点で四つの反論を示す。
①日本郵政の行なった鑑定結果は250億円だった。
②「かんぽの宿」は年間40~50億円の赤字を垂れ流している。
③3200名の従業員の雇用義務があったため、価格が低くなった。
④郵政族が2400億円もの資金を投下したことが問題だ。

これらの反論はまったく説得力を持たない。問題を解く鍵は「かんぽの宿事業」が営利事業でなかったことである。「かんぽの宿」は加入者福祉施設であり、「営利事業」の資産ではなかった。

「年間40~50億円の赤字を垂れ流している」ことの「真相」が解明されなければならない。

国民新党の長谷川憲正議員は、日本郵政が総務省に提出した17箱の段ボール資料に関連して、メルリリンチが作成した入札参加者に提供した資料に、2007年の27億円の赤字が、2009年以降に10億円、13億円、16億円、17億円、17億円と黒字化する見通しが示されていたとの事実を指摘している。

実際、2008年3月期の日本郵政株式会社損益計算書によると、宿泊事業収支の赤字がわずか約4億円にとどまっていることが分かる。

料金体系を見直し、経営の効率化を進めれば、十分に黒字化できる施設なのである。

250億円の鑑定評価は、あくまでも「事業評価」に基づくもので、不動産の実勢価格調査をしたものでない。「事業評価」としての「資産価値鑑定」は直近の財務指標に大きく左右される。「加入者福祉事業」を「ホテル事業」として「事業評価」すれば、鑑定評価額が著しく低く算出されるのは当然だ。

79施設の不動産としての実勢価格は、固定資産税評価基準に極めて近いと考えるべきである。「事業評価」に基づく鑑定評価額は、不動産売却の実勢価格を大幅に下回ることがあり、このため、1万円の簿価物件が6000万円で転売されるのだ。

「事業資産」の「不動産鑑定評価額」は、この意味で、極めて不安定なものである。事業収支の数値を意図的に悪く置けば、低い鑑定評価額を得ることが可能になる。「不動産」としての取引事例に基づく鑑定評価と、「事業資産」としての鑑定評価との間で、巨大な格差が生まれることは当然なのだ。

「40~50億円の赤字」が初めて提示されたのは、竹中平蔵氏の産経新聞への寄稿記事「かんぽの宿は不良債権」である。竹中氏は、

かんぽの宿は、今でも年間約50億円の赤字を計上している。」
と記述したが、この数値をどこから入手したのか。

「かんぽの宿」の簿価に関しては、2005年3月期決算までは、減価償却に連動する小幅引き下げだけが実施されてきたが、2006年3月期から突然、激しい勢いで「減損処理」された。

「かんぽの宿」売却規定が法律に盛り込まれたのは、2005年5月頃の法律案確定直前であり、指示したのが竹中平蔵氏であることが国会答弁で明らかにされた。

「かんぽの宿」売却方針決定を受けるかのように、「かんぽの宿」の簿価が大幅に引き下げられ、2007年3月末には129億円まで引き下げられた。この簿価を承認したのが「承継財産評価委員会」であり、調査部会委員を兼ねた委員会メンバーのなかの唯一の不動産鑑定士である奥田かつ枝氏が財産評価に深く関わったと考えられる。

奥田氏は緒方不動産鑑定事務所に所属し、オリックス・キャピタルが出資する企業の社外取締役を務めている。また、竹中平蔵氏と日本不動産鑑定協会副会長である緒方事務所代表の緒方瑞穂氏との関わりを示す怪文書も出回っている。

また、雇用義務について3200人の正規・非正規従業員の雇用維持のため一括売却が必要だったと言われるが、オリックス不動産が締結した契約に盛り込まれた雇用維持義務は620名の正規労働者のなかの550名だけで、しかも、当初の処遇維持期間は1年と定められていたことが判明している。

また、不動産の転売規制についても但し書きがあって、抜け穴が用意されていた。

細かくなりすぎたが、「かんぽの宿」疑惑の核心は、

①固定資産税評価額856億円の79施設が109億円で売却されようとしていたこと。

②選考過程では不透明なプロセスでオリックス不動産が選ばれたが、この選定が「客観基準」ではなく、「人為的操作」によったのではないか。

の2点にある。西川社長続投支持派は109億円の価値しかないものに2400億円も投じたのが問題と言うが、不動産実勢価値は856億円に近いはずで、2400億円の投資物件が長い時間を経過して856億円というのは、極めて優良な投資が行なわれたことを示唆している。

この疑惑で不正が確認されれば、問題は確実に刑事問題に発展する。

6月12日の「報道ステーション」が提示した主張は、

①「かんぽの宿」建設に2400億円もの費用が投じられたことが問題にされなければならない。

②2005年9月の郵政民営化選挙の結果として日本郵政株式会社が発足したのであり、そのなかで、日本郵政の「指名委員会」、「取締役会」が西川社長続投を決めたのだから、総務大臣が介入して西川社長の続投を認めないのは、民意に反している。

というものだった。

堀田力氏が以下の点を付け加えた。

③田中角栄元首相は、政治家に資金が還流する仕組みを作る点で天才的であり、「かんぽの宿」に2400億円もの資金を流しこんだ「族議員」は、主に旧田中派の議員であって、こうした利権がらみの議員が「郵政民営化反対論」を唱えている。

結論として、鳩山氏が主張した西川氏更迭方針は、「郵政民営化に賛同した民意」に反しており、西川社長の続投は容認されるべきとの主張が強調された。

あまりにも低レベルでお話しにならない。サンプロ一族も同様の論調を示している。週末のテレビ朝日番組が注目される。

郵政民営化法第2条に定められた「郵政民営化」の「基本理念」を示す。

(基本理念)

第二条

 郵政民営化は、内外の社会経済情勢の変化に即応し、公社に代わる新たな体制の確立等により、経営の自主性、創造性及び効率性を高めるとともに公正かつ自由な競争を促進し、多様で良質なサービスの提供を通じた国民の利便の向上及び資金のより自由な運用を通じた経済の活性化を図るため、地域社会の健全な発展及び市場に与える影響に配慮しつつ、公社が有する機能を分割し、それぞれの機能を引き継ぐ組織を株式会社とするとともに、当該株式会社の業務と同種の業務を営む事業者との対等な競争条件を確保するための措置を講じ、もって国民生活の向上及び国民経済の健全な発展に寄与することを基本として行われるものとする。

 「かんぽの宿」疑惑は、「国民の利便の向上」、「公正かつ自由な競争」、「地域社会の健全な発展」、「国民生活の向上及び国民経済の健全な発展」に反するものだ。

 「民意の尊重」を唱えるなら、「かんぽの宿疑惑」が郵政民営化の理念に適合するのかどうかの点検を実行するべきだ。

 鳩山総務大臣は、日本郵政株式会社法第9条の規定に則って、取締役選任に関する認可権を行使しようとした。

 中川秀直氏、竹中平蔵氏、菅義偉氏、石原伸晃氏、そして麻生太郎氏と裏に控える小泉純一郎氏が、現職の総務大臣の認可権を否定するなら、日本郵政株式会社法第9条を以下の通りに改正するべきだ。

(取締役等の選任等の決議)

第九条  会社の取締役の選任及び解任並びに監査役の選任及び解任の決議は、小泉純一郎、中川秀直、竹中平蔵、菅義偉、石原伸晃の認可を受けなければ、その効力を生じない。

 鳩山総務相は政府に対抗して決起する際に西郷隆盛が示した言葉を引いた。

「今般政府に尋問の筋これあり」

 鳩山総務相は野党陣営に合流するだろう。国民新党と連携する可能性が高いと思われる。これで、野党連合の総選挙勝利が盤石になる。

 麻生太郎氏は政権交代実現に大きく貢献したと評価されることになるだろう。

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2009年6月12日 (金)

盟友鳩山邦夫総務相実質更迭がもたらす報い

鳩山総務相が麻生首相に辞表を提出し辞任した。

事実上の更迭である。

鳩山総務相が対立に敗北したように見えるが、歴史的失敗を犯したのは麻生首相である。麻生首相は何かの脅しを受けていたことと考えられるが、目先の小事に目を奪われて大事を見失った。

今次通常国会は重要法案処理の最終挙局面を迎えている。

16日に年金法案、19日に海賊法案、26日に補正関連法案の衆議院再可決が見込まれているが、衆議院再可決の成立にも黄信号が灯り始めた。

麻生首相は5月21日の衆議院予算委員会で、日本郵政社長人事について、「所管大臣である総務大臣がしかるべく判断される」と述べて、鳩山総務相の判断に委ねることを明言した。

日本郵政株式会社法は総務大臣に日本郵政の取締役等選任についての認可権を付与している。

(取締役等の選任等の決議)

第九条  会社の取締役の選任及び解任並びに監査役の選任及び解任の決議は、総務大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。

日本郵政取締役人事の認可は総務大臣の専権事項である。しかも、現状では日本郵政の全株式を日本政府が保有している。日本郵政は完全な国有会社である。日本郵政の取締役会、あるいは取締役等選任の提案を示す指名委員会は、100%株主である日本政府の意向を十分に踏まえる責務を負うが、日本郵政はその責務を果たさなかった。

鳩山総務相が西川社長の更迭方針を決めたのは、「かんぽの宿」売却などで極めて不透明な、今後の捜査によっては重大な疑獄事件に発展しかねない不祥事が表面化したためである。

客観的に見て、鳩山総務相の主張が正論であった。国民世論も圧倒的多数が西川社長更迭を支持していた。この意味で、鳩山総務相更迭は「法治国家の否定」である。

政治が正常に機能しているなら、何の問題もなく西川社長が更迭される局面でありながら、いびつな現実が表出した唯一にして最大の理由は、「郵政民営化推進勢力」と呼ばれる「郵政私物化勢力」、あるいは「郵政米営化勢力」が恫喝を含めた横やりを入れたからだ。

「郵政民営化推進勢力」は西川社長が更迭され、日本郵政内部に蓄積された悪事の数々が、すべて白日の下に晒(さら)されることを心底恐れたのだと考えられる。

鳩山氏が辞任に際して、「世の中、正しいことが通らないことがある。今回の麻生首相の判断は誤っている」と述べたが、真実を突くこの言葉が、確実に麻生政権にのしかかることになる。

麻生首相は10月まで総選挙をたな晒しにする考えを有しているとも考えられるが、その目算は通用しないだろう。麻生首相は早晩、解散総選挙に追い込まれ、壊滅的な打撃を受けることになると考えられる。

麻生首相の活路は、日本郵政問題で筋を通すところにしか存在しなかった。最も重要な局面で最も重大な誤りを犯した。これが麻生首相の器の大きさを示している。鳩山総務相は、「いずれ歴史が私の正しさを証明してくれる。歴史と言っても50年、100年先ではなく、1年以内にも証明される」と述べた。

西川社長続投派の薄汚れた横車が通ってしまったことが、逆に西川社長続投派に大きな不幸をもたらすだろう。歴史は皮肉なものである。

 天網恢恢疎(てんもうかいかいそ)にして漏(も)らさず

麻生首相は斬ってはならぬ人を斬り、迎合してはならぬ勢力に魂を売った。この決断の意味がこれから3ヵ月の間に明らかになる。

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民主党第三者委員会報告の限界を克服する方策

 西松建設違法献金事件に関連して民主党が設置した有識者会議「政治資金問題をめぐる政治・検察・報道のあり方に関する第三者委員会」(座長・飯尾潤政策研究大学院大教授)が6月10日に提出した報告書に関して、私の見解を捕捉する。

 6月11日付記事
「読売社説 民主「西松」報告批判は的外れだ」
は、読売社説に対する批判を主眼にして記述したために、報告書の優れている点を強調したが、報告書には大きな限界と欠陥が存在し、この限界を踏まえた対処が不可欠である点を捕捉しなければならない。

報告書は第5章、第6章で、民主党の対応について論じている。

第5章 政党の危機管理の観点からの分析

第6章 政治的観点から見た民主党の対応

に、今回のような問題が生じた場合の対応についての分析が示された。

報告書は昨日付記事
「読売社説 民主「西松」報告批判は的外れだ」
に示したように、
民主的正当性を持たない検察の不当・違法な捜査権限の行使による政治介入が行われ得ること、それが、とりわけ時の政府に都合の良い形で行使される傾向があることは、第3 章の31.で述べたとおりであり、そのような権限行使が行われたた疑いがあるのであれば、民主主義を担う政党として、憲法及び法令によって認められた手段を駆使して、検察の不当な政治介入に対して毅然たる姿勢を示すことも重要である
との基本判断を示した。

ところが、第5章、第6章の分析では、政党としての検察批判に対するスタンスが著しい「揺らぎ」を示す。

この点は、「カナダde日本語」の美爾依さんも鋭い指摘を示されている。

報告書は第5章に、
露骨な検察批判を行うことによって、司法軽視との批判を招いたり、誤解を受けたりすることがないよう十分に留意する必要がある。捜査の容疑事実や捜査手法等に対して疑問な点があれば端的に指摘すべきであるが、「国策
捜査」「不当捜査」などと主観的なコメントをすることは差し控えるべきであろう」、

露骨な検察批判を行うことによって、司法軽視との批判を招いたり、誤解を受けたりすることがないよう留意する必要がある

と記述する。また、第6章では、

当事者的立場にある政治家が、総選挙の時期とからめて検察の措置を批判し、さらに進んで、検察のあり方そのものを直接批判することは、控えるべきであり、慎重な言い回しが求められる。総選挙の結果次第では、内閣総理大臣になることが予想される民主党の代表として、検察の独立性に疑問を呈するのは、政権の座に着いたら、逆に検察の活動に介入するのではないかという疑いを抱かせかねないからである。

民主党、とりわけ幹部は、先に述べた当事者的立場にある政治家と政党の立場を区別するという観点から、検察批判的な発言を抑制することが、より強く求められる。ところが、幹事長など党の幹部によって「国策捜査」という言葉が使われ、また検察に圧力を加えると誤解されかねない発言が相次いだのは、適切ではなかった

と記述している。

 このように指摘した後で、今度は逆に、

ただ、検察の措置に問題があるということを、全く論じていけないわけではなく、そうした問題の所在に人々の関心を向けさせる発言は認められる。政治的有効性からすれば、民主党関係者が抑制の効いた発言を続けるなかで、第三者の間から、検察の措置に関する批判がわき起こるといった事態の方が、より民主党にとって、好ましい事態であったと考えられる

と指摘し、逆の見解を付け加えている。

第三者委員会の座長代理を務めた郷原信郎氏は、今回の事件で、法律の専門家として極めて適切な見解を示し、民主党の被害を最小にとどめるうえで、大きな貢献をした人物である。

しかし、郷原氏自身は、当初から「国策捜査」的な背景については否定的な見解を示し続けてきた。個人の見解は人によって異なるのであり、郷原氏の見解は郷原氏の見解として尊重されなければならないが、郷原氏とは完全に異質の見解を持つ人々が多数存在することを見落としてはならない。私もその一人だが、同種の見解を示してきた代表的な識者の一人に元自治大臣の白川勝彦氏が存在する。今回の事案を「紛れもない政治謀略」と判断する。

検察捜査が常に適正に行われているとの「性善説」に立つのか、それとも政治権力が検察権力を不正に使用することがあり得るとの「性悪説」に立つのかによって、政党や政治家が示すべき対応はまったく異なってくる。

報告書にはさまざまな留保条件が付されているが、第三者委員会のメンバーは、基本的に「性善説」に立った主張を展開しており、この基本的な立ち位置が今回の報告書に大きな限界をもたらしている。

「性悪説」に立つことが、政権交代が実現する場合に現在の野党が必ず検察権力を不正利用して報復を行なうことを意味するわけではない。これまでの現実を反面教師として活用し、過去の誤りを正して適正な検察行政の在り方を追求する行動も考えられる。これがあるべき対応だろう。

郷原氏は検察出身者であり、正義の論陣を張られてはいるが、検察当局全体に対する強い配慮を保持しているのだと考えられる。私は飯尾氏と「21世紀臨調」で数年間、佐々木毅部会長が統括する政治部会の主査として、一緒に仕事をさせていただいた経験を持つ。飯尾氏は優れた学識を有する「良識の人、常識の人」である。これらの人々が報告書をまとめれば、「性善説」に立った総括になることはやむを得ない。

本来は第三者委員会に、白川勝彦氏のように警察・検察行政を熟知し、国家公安委員長として警察トップを務め、さらに弁護士として辣腕をふるわれているような方がメンバーとして加われば、「性悪説」を前提とする正しい対処の方法についても意義深い提案が示されたと考える。

報告書は「国策捜査」などの言葉を用いるべきでないとのスタンスを示すが、これは、警察・検察当局の激しい焦燥感を反映したものであるとも言える。

現実には、多数の「国策捜査」、不当な警察・検察権力行使の存在を隠し切れない状況が広がっているからだ。「性善説」だけでは説明のつかない多くの事例が存在することを、多くの人々が気付き始めているのが現実である。

「性悪説」の前提を排除し切れないことを踏まえれば、「性悪説」を前提とする危機管理の在り方が論じられなければならない。

報告書は、事件が表面化した段階で小沢代表が辞任しないとの意向を示したことを前提としたケースについて、具体的な対応方法を提示しており、これはこれで参考になる部分が多くある。この意味で、報告書の有用性は小さくないが、「性悪説」を前提とする対処方針がほとんど示されていないことが最大の欠陥である。

報告書は検察捜査の問題点を縷々(るる)指摘している。総選挙を目前にした時期に、次期総理大臣候補である野党党首を狙い撃ちにした、犯罪の構成要件をも満たしていない恐れの高い微罪案件が、このような騒ぎに発展させられた現実を踏まえれば、第5章、第6章の主張の前提が著しく「性善説」に偏っているのは、いささか不自然だ。

私は今回の事案が、政治的背景を持つ検察権力の行使である可能性が極めて高いと判断する。この前提に立つと、第5章、第6章の記述は、適正さを欠いていることになる。

民主党や小沢前代表が詳細な事実を開示して、積極的に国民に実情を説明してゆくべきであったことは、報告書の提言に賛同する。そのうえで、民主党が結束して、不正な検察権力が行使された可能性について、丁寧に国民に説明するべきであった。

この場合には、事情を分かりやすく説明するために、「国策捜査」や「政治謀略」などの言葉をむしろ多用すべきだと考える。

「清冽な水」が流れているのに、それをあえて「濁った水」と言う必要はない。しかし、「水がドロドロに濁っている」と多くの人々が証言しているなかで、「水が濁っている」と言ってはいけない、とするのはリアリズムを欠いた行動と言わざるを得ない。

報告書は問題を丁寧に分析し、詳細な提言を盛り込んでいる点で高く評価できるが、警察・検察当局が忌避(きひ)しようとする「正義の警察・検察神話の否定」に一歩も足を踏み入れていない点に欠陥がある。

警察・検察当局はテレビメディアを駆使して、さまざまなドラマやドキュメンタリーで「正義の警察・検察神話」の流布(るふ)に務めている。

御用メディアも警察・検察との癒着(ゆちゃく)が大きな利得になることから、「正義の警察・検察神話」流布に尽力する。

しかし、今回の足利事件をはじめ、無数の現実が「正義の警察・検察神話」を粉々に打ち砕(くだ)きつつある。

民主党は今回の報告書の有用な部分を積極的に活用するべきだが、報告書が政府や警察・検察の性善説に立脚していることに伴う限界を十分に認識する必要がある。その欠陥を補うため、可能であれば、「性悪説」に立脚した危機対応策を追加的に検討するべきである。

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2009年6月11日 (木)

読売社説 民主「西松」報告批判は的外れだ

 西松建設違法献金事件に関連して民主党が設置した有識者会議「政治資金問題をめぐる政治・検察・報道のあり方に関する第三者委員会」(座長・飯尾潤政策研究大学院大教授)が6月10日、報告書を岡田克也幹事長に提出した。

報告者は、

①事件の概要と法律解釈上の問題点、

②検察当局の対応の問題点、

③メディア報道の問題点、

④民主党の対応の問題点、

について詳細な分析を示したうえで、

⑤関係者からのヒアリング等の内容、

をも開示する、極めて有用性の高いものである。

短期日にこのような詳細な分析を行い、分かりやすい形で報告書をまとめられた関係者の尽力に敬意を表したい。

報告書は今回摘発された事例について、綿密な法律解釈を施しており、今後の公判において争点になると考えられる問題について、適切な判断の視点を提示している。

報告書が提起した多くの論点のなかから、重要と考えられる五つの点を以下に提示したい。

罪刑法定主義との関連

今回の事案では、政治資金規正法違反を理由として刑罰権が発動されている。罪刑法定主義の大原則に立つなら、犯罪構成要件としての法令の解釈・罰則適用基準について事前に明確な定めが示されることが不可欠である。

ところが、報告書によれば、
「同法の解釈をめぐって、総務省は刑罰の問題であるとして具体的な解釈指針を示さず、他方で法務省は法律の所管官庁でないとして解釈基準を示そうとせず、両省の間で責任の押し付け合いともいえる状況が生じている」のである。

すなわち、会計責任者があらかじめどのように記載すればよいかが不明確な状況が放置されていたなかで、後から記載が法律に違反するとして処罰されるというようなことが生じているのである。

公職選挙法の「虚偽記載」の事例でも同様の問題が生じているが、法令全般、とりわけ刑罰を伴う法令においては、事前に犯罪構成要件としての法令の解釈と罰則適用基準が厳密に明示されていることが不可欠である。罪刑法定主義は「法の支配」を実現するうえで不可欠な事項である。しかし、今回の問題では、この点が曖昧極まりなく、事後的にも総務省、法務省当局が明確な見解を表明できない事態が生じている。

マスメディアは小沢一郎民主党前代表の「説明責任」を追及するが、小沢氏の説明が困難であることの最大の理由が、法令解釈の不透明性にある。この点については後述する。

②検察当局の行動に関する問題

 報告書は政治資金規正法の関連条文について詳細な分析を施したうえで、今回の検察当局の行動を厳しく批判している。詳細は報告書の本文を閲覧いただくしかないが、政治資金規正法の考え方を踏まえたうえで、違法行為について詳細な論点を提示している。

そのうえで、検察捜査が及ぼす影響を踏まえたうえで、今回の検察当局の行動の不当性を厳しく指摘している。世論は自民党議員に捜査が波及していないことに対する疑義を提示してきたが、この点についても、検察当局の行動の不当性が厳しく指摘されている。

③民主党の行動に対する建設的な提言

小沢前代表を含めて、民主党幹部が検察による摘発が行なわれた当初に、検察当局の行動に厳しい批判を示したことについて、報告書は一定の積極的評価を示した。報告書は次の指摘を示した。

「民主的正当性を持たない検察の不当・違法な捜査権限の行使による政治介入が行われ得ること、それが、とりわけ時の政府に都合の良い形で行使される傾向があることは、第3 章の31.で述べたとおりであり、そのような権限行使が行われたた疑いがあるのであれば、民主主義を担う政党として、憲法及び法令によって認められた手段を駆使して、検察の不当な政治介入に対して毅然たる姿勢を示すことも重要である」

適正な指摘である。この点に関連して言えば、民主党の岡田克也氏や前原誠司氏が示した事件発生当初の対応は、極めて不適切であった。検察の不当な政治介入が存在し得る可能性を考慮せず、両氏をはじめとする一部の民主党議員が検察捜査に対して毅然とした姿勢を結束して示さなかったことが、のちに民主党代表辞任という事態にまで問題を波及させてしまった大きな原因になったと考えられる。

岡田氏は報告書の提出を受けた際のインタビューでも、「党としての検察批判は避けたい」との発言を繰り返したが、不適切な対応を繰り返している。岡田氏は報告書を熟読して、相手が検察であろうとも毅然とした姿勢を示さねばならない局面があることを正しく理解するべきである。

報告書は検察に対する毅然とした対応に積極的評価を与えているが、同時に、いざ問題が発生した場合に、政党が問題を真摯(しんし)に受け止めることの重要性、およびその影響を政党として最小限に食い止めるための具体的な対応の方法についても、きめ細かい提言を示している。

小沢代表の説明が不足した大きな理由に、上述した「法令解釈の曖昧さ」の問題があり、この点に対する理解は不可欠であるが、それでも、報告書が指摘するような問題が存在したことを否定できない。

民主党は今回の報告書を詳細に検討したうえで、報告書が示す建設的な提言を可能な限り生かしてゆくべきだ。報告書が建設的な視点で、具体的提言を示したことは高く評価される。

NHK報道の重大な問題の指摘

報告書は3月25日午前零時のNHK報道の悪質さを厳しく糾弾した。この報道については、私も放送を聞いた瞬間にその悪質性に気付き、ブログ記事を執筆したが、この問題について、適切な対応を求める重要性が高い。

⑤メディア報道全般の問題

報告書はNHK報道にとどまらず、メディア報道全般についての問題点を厳しく糾弾している。過大・歪曲報道、検察リーク報道、などの重要な問題を的確に指摘している。各報道機関は報告書が示した的確な指摘に謙虚に耳を傾けて、報道姿勢の適正化に取り組む必要がある。

しかし、現在のマスメディア報道の問題は、大半のマスメディアが権力に迎合し、報道機関としての本来の役割を放棄してしまっていることに原因があると考えられ、短期にその改善を見込める状況にない。政権交代後に、報道の実態について本格的検証を行ったうえで、抜本的対応を施すことが不可欠である。

このような質の高い報告書が提出されたにもかかわらず、一部の報道機関が的外れな論評を掲載した。その典型的事例が読売新聞社説である。読売社説は以下の記述を示した。

「民主「西松」報告 検察・報道批判は的はずれだ」
「的はずれもいいところだ。小沢氏に持たれた疑惑の核心部分はもっと別のところにある。

 秘書が西松建設幹部と相談し、ダミーの政治団体からの献金額や割り振り先を決めていたとして、検察当局は悪質な献金元隠しと認定した。小沢氏はこれまで、「献金の出所は知る術(すべ)もないし、詮索(せんさく)することはない」「秘書に任せていた」などと繰り返してきた。

 だが、同様に献金を受けた他の与野党議員と比べても巨額だ。出所や趣旨を吟味するのは、政治家として当然の責任だろう。

 小沢氏は今なお、疑惑に正面から答えようとしていない。代表辞任で、国民が求める説明責任を免れることはできない。」

 メディアは、小沢氏が献金の出所を知らなかったと説明したことに対して、鬼の首を取ったかのように執拗に攻撃を続けてきた。攻撃する部分が極めて少ないために、一般的に疑問と感じられる点を針小棒大に取り上げて「説明責任」の言葉を繰り返している。

 それほど「説明責任」を重視するなら、「検察の説明責任」、「西川善文日本郵政社長の説明責任」も同様に追及するべきだろう。マスメディアの小沢氏批判は「あげ足取り」の域を出ない。

 小沢氏の説明が不足する要因のひとつに、先述した「犯罪構成要件としての法令の解釈・罰則適用基準」の曖昧さの問題がある。

報告書は、政治資金規正法が収支報告書に「寄付行為者」の記載を義務付けており、「資金拠出者」の記載を求めていないと指摘する。小沢前代表の秘書が「新政治問題研究会」「未来産業研究会」という二つの政治団体からの献金を「新政治問題研究会」「未来産業研究会」からの献金と記載した行為は虚偽記載にあたらないと指摘する。

この記載が「虚偽記載」に該当するには、「新政治問題研究会」「未来産業研究会」という二つの政治団体が、資金の拠出者から政治団体に金銭や利益を供与するための単なる「トンネル」のような実体のない団体であることが立証される必要があるが、報告書は、
「西松建設が2009 5 15 日に公表した内部調査委員会による調査報告書に記載された政治団体の実態によれば、二つの政治団体を単なる「トンネル」のような実体のない団体とは認め難い」
と指摘する。

この指摘が正しければ、小沢氏の秘書が仮に「資金拠出者」が西松建設であると認識していたとしても、「虚偽記載」で罪を問われることはないということになる。

ところが、検察当局の行動をみると、検察当局は小沢氏の秘書が、資金拠出者が西松建設であることを認識していたかどうかを問題とし、西松建設であると認識していた場合には、政治資金規正法が認めていない企業から政治家個人の資金管理団体への献金を隠ぺいするために「工作」をしたことになるとして摘発しようとしているように見える。

ただ、この点についても報告書は、現在の政治資金規正法は企業から政党支部への企業献金を容認しており、小沢氏サイドは西松建設からの献金を政党支部で受け入れることが可能だったのであり、問題に重大性はないと結論している。

話がやや込み入ったが、問題の根源は、政治資金規正法の運用における、「犯罪構成要件としての法令の解釈・罰則適用基準」の曖昧さにある。この点が明確でなければ、小沢氏はうっかり発言を示すことができない。

読売新聞の社説は検察の説明にそのまま乗ったものであるが、検察の評価基準が客観的で適正な評価基準である保証はどこにもない。現行法規では、企業から政党支部への献金が認められており、現に自民党議員の多数が政党支部で受け入れた企業献金を個人の資金管理団体に移し替える「迂回献金」を実行している。

この意味では、小沢氏の資金管理団体が西松建設からの企業献金を受け入れていたとしても、「悪質な献金元隠し」などの批判はあたらない。政治献金を西松建設から政党支部への献金に修正報告すれば済むようなことである。

読売社説は検察の主張をそのままなぞらえただけのものである。問題の根源に、「罪刑法定主義」の大原則からはずれる、法令解釈や罰則適用基準の不明確さがあることを忘れてならない。

いずれにせよ、西松建設の献金をめぐる小沢前代表秘書の逮捕、起訴問題は、本来、犯罪に該当するようなものでなく、仮に犯罪性が指摘されたとしても、形式的で軽微な問題であることが改めて明確にされたと判断できる。

このような軽微な問題が、政治的な背景を伴って政治情勢に重大な影響をあたえる事案として取り扱われたことの問題がはるかに重要だ。

報告書は多くの重要な問題を提起しており、この報告書を最大限に活用することが求められる。

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国会に出頭すべき竹中平蔵氏と郵政民営化の嘘

郵政民営化関連法を起案した責任者は竹中平蔵氏である。

「かんぽの宿」疑惑に象徴される日本郵政の「郵政私物化」疑惑の根本原因に竹中氏の根本的に間違った認識がある。

竹中氏が著書「構造改革の真実」に記述した「民営化」の理解が根本的に間違っており、このことが「かんぽの宿」を氷山の一角とする、日本郵政の不適切な事業運営を招く元凶になったと考えられる。

竹中氏は「民営化」について、次のように記述する。

「辞書によると、民営化とは、「民間の経営に任せること」とある。文字通り郵政民営化とは、郵政の経営を民間に任せることであり、政府はそれが可能なように、また効率的に行われるように枠組みを作ることである。これで、西川氏に、経営のすべて、民営化のすべてが委ねられることになった。」
(「構造改革の真実」239ページ)

 「これで」とあるのは、日本郵政初代CEOへの西川氏就任が内定したことを示している。この言葉は、2005年11月11日に西川氏の初代CEO就任内定を受けて西川氏と竹中氏が記者会見を行なった時点での竹中氏の判断を示している。

 細かいことだがCEOは日本郵政株式会社法には登場しない用語であり、竹中氏の興奮ぶりが伝わる記述である。

 日本郵政は2007年10月1日に株式会社形態に企業形態が移行した。竹中氏は、株式会社に経営形態が変わることをもって「民営化」が実現したと理解し、「民営化」した以上、日本郵政の経営のすべてが西川氏に委ねられることになったと「勘違い」したのである。

 この間違った判断から、「民営化した日本郵政においては、すべてを西川氏の思いのままにして構わない」、「民営化した日本郵政の経営に総務大臣が介入することは根本的な誤りだ」とする、「根本的に誤った」考え方が導かれたのだろう。

 日本郵政は日本政府が株式を100%保有する「完全国有会社」であって、「民間会社」ではない。竹中氏が起案した日本郵政株式会社法は総務大臣に極めて強い権限を付与し、総務大臣は日本郵政に対して監督および検査の権限を有し、取締役等選任については、「総務大臣が認可しなければ効力を生じない」との定めが置かれている。

日本は法治国家である。竹中氏は法律制定の責任者であるのだから、法の遵守(じゅんしゅ)を基本に据えて発言するべきである。

竹中平蔵氏など、西川善文社長続投をごり押ししようとする人々は、西川氏更迭(こうてつ)を「改革の後退」と唱えるが、郵政民営化に関連する不祥事を引き起こした責任者の責任を問うことが、どうして「改革の後退」になるのか。

「郵政民営化」を一点の曇りなく推進するうえでは、不祥事の存在を白日の下に晒(さら)し、責任ある当事者の責任を適正に追及しようとする鳩山総務相の行動に対して、竹中氏などが感謝と敬意を表明するのが当然であって、鳩山総務相を「根本的に誤っている」と非難するのは、筋違いも甚(はなは)だしい。

日本郵政株式会社法は総務大臣に日本郵政の取締役等選任の認可権を付与しており、総務大臣の認可がなければ取締役選任の効力が生じない。麻生首相は「担当大臣である鳩山総務相がしかるべく判断される」と、鳩山総務相の判断に委ねることを明言した。

一連の意志決定プロセスは法律に則っており、2005年9月の郵政民営化選挙で示された民意を尊重するなら、この選挙を受けて成立した「日本郵政株式会社法」の条文を忠実に遵守(じゅんしゅ)することが求められ、麻生政権は粛々と西川社長更迭を決定すればよいのだ。

総務相の判断に横やりを入れて、日本郵政人事に竹中平蔵氏や中川秀直氏が介入することについては、日本郵政株式会社法のどこをひっくり返しても、その根拠を見出すことができない。日本郵政株式会社法の条文に従って行動する鳩山総務相を批判する人々の行動が、民意に反していることは明らかだ。

所管大臣が法律の規定に則って認可権を行使することに異を唱え、「認可権を行使するなら総務大臣を辞任すべき」などの発言を示す人物が、首相が総裁を務める政権与党の一員として国会議員でいることが驚異である。

大臣も内閣も、法律の規定に沿って粛々と判断し、決定すればよいだけで、そもそも総務大臣と、監督下にある特殊会社社長とを対等に扱い、同レベルでの対立の図式に見立てて説明することが異常である。

竹中平蔵氏、中川秀直氏、菅義偉(すがよしひで)氏などが西川氏更迭に異常なまでの抵抗を示すことが、とても不自然である。「これらの人々は、西川社長が更迭されたあとで巨大な不祥事が発覚することを心底恐れている」との憶測が生まれるのは、この不自然さに原因がある。

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テレビ各局は、誰から指令があったのか知らないが、竹中平蔵氏へのインタビューを多用し、竹中氏はねじ曲がった論拠を示して、西川氏続投論を懸命に主張している。

竹中氏は単なる民間人ではない。郵政民営化関連法を成立させた首謀者である。国会は、竹中平蔵氏に対して何度も参考人としての出頭を求めている。その要請を「多忙」を理由に拒否し続けているのが竹中平蔵氏である。

竹中氏は、竹中氏が大好きな「イコールフィッティング」の討論の場には、決して姿を現さない。テレビに出演する際は、必ず応援団の同席を求める。竹中氏は姑息に逃げ回るのをやめて、国会で堂々と意見を陳述するべきである。与野党の議員が竹中氏の出頭を、首を長くして待っている。

竹中氏が逃げ続けるなら、国会は竹中平蔵氏の証人喚問を求めるべきだ。民法各局も、国会への出頭を拒み続ける人物へのインタビューを自粛するべきである。

郵政民営化が財政投融資の巨大な構造にメスを入れるために必要不可欠であったとの意見が散見されるが、これも違う。この点について私は、直接、小泉純一郎氏と意見を闘わせたことがある。

詳細については稿を改めるが、郵貯や簡保、年金で集められた資金が、政府系金融機関、事業実施機関、独立行政法人などに投融資される仕組みが従来の「財政投融資」だった。

私は「天下り」を中心とする官僚利権の本丸は、財政投融資の「出口」である特殊法人、独立行政法人側にあり、こちらの改革を実行しなければ意味がないと主張し続けた。

これに対し、小泉氏は、「入り口」の郵貯、簡保が問題であるとして、この民営化だけを主張した。意見対立は平行線で終わった。郵政民営化が実現したが、「出口」の天下り等の問題には、まったく手がつけられなかった。

詳細は拙著『知られざる真実-勾留地にて-』「週刊金曜日2005年9月30日号」所収の拙稿『小泉・竹中の二枚舌を斬る』等をご参照賜りたい。

2005年9月の総選挙に際し、私は民主党幹部に、自民党の「郵政民営化」主張に対して、「天下り根絶」の旗を掲げ、「本当の改革はどちらか」との勝負を挑むべきだと提言した。

結局、小泉政権は郵政民営化を実行したが、「天下り根絶」には一切手を付けなかった。「天下り」への対応の象徴になると指摘し続けた政府系金融機関改革においても、小泉政権は「天下り」を温存する選択を示したのである。 

郵政民営化によって、これまで「官」にしか流れなかった資金が「民」に流れるようになると言われたが、そのような現実が生じているだろうか。答えは「否」である。

ゆうちょ銀行かんぽ生命の資産内容を見る限り、運用のほぼすべてが有価証券保有で、民営化以前とほとんど変化が生じていない。事実に基づかない説明で、一般国民を誤導しようとする人がいるが、事実に基づかない説明は悪質である。

郵政民営化の実態が「郵政私物化」、「郵政米営化」であるとの指摘は正鵠(せいこく)を射(い)ている。いずれにせよ、竹中平蔵氏には国会に出頭していただき、正々堂々と国会の場で意見を陳述してもらいたい。

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2009年6月10日 (水)

西川続投で日本郵政は売国勢力の食い物に?

――サンプロ一族“暴走”の背景

 

テレビ朝日が西川社長続投に向けて総力を結集している。

裏を返せば、西川社長続投の確約が得られていないことの表れである。

6月9日午前のテレビ朝日の偏向報道は突出している。

テレビ朝日番組『サンデープロジェクト』メンバーは、足並みを揃えて西川社長続投をごり押しするいびつな論陣を張っている。

田原氏、竹中氏、大谷氏、高野氏が足並みを揃えている。三井住友の裏側にはゴールドマンサックスが存在しており、強い力が働いていると見るべきである。

6月9日午前のテレビ朝日は「やじうまプラス」、「スーパーモーニング」と連続して偏向報道のオンパレードであった。ここまで来ると放送法第3条の「政治的公平」に違反している疑いがあると考えられる。アリバイ作りのためか、森永卓郎氏が出演して正論を述べていたが、番組の色を薄めるには至らなかった。

そもそも「かんぽの宿」疑惑とは何であったのか。この評価が決定的に重要である。

この疑惑が「プロセスに多少とも不透明な部分がない訳ではないが、全体として背任などの犯罪に該当する事案ではない」のなら、大きな問題として扱う必要はないだろう。世間も強い関心を寄せたりはしなかっただろう。

しかし、現実は違う。「背任などの犯罪に該当する可能性が十分にある」と考えられる。

日本郵政から段ボールが17箱提出されたといっても、検察が抜き打ちで家宅捜索に入ったわけではない。都合の悪い資料をわざわざ提出するわけがない。

「かんぽの宿疑惑」の核心は、かんぽの宿79施設を破格の安値で「オリックス不動産」に売却することが「仕組まれた」のではないかとの疑惑である。現段階では、まだ「仮説」の領域である。しかし、多くの状況証拠が、疑惑を強化しているのは事実である。

①売却の告知が十分とは言えなかった
②当初の打診で400億円見当の金額を提示した業者が門前払いされている
③第一次選考、および第二次選考の過程が極めて不透明
④第二次選考ではHMI社が一番札を入れている。

⑤第二次選考のあとで世田谷レクセンターが外されている。
⑥アドバイザーから3度にわたって売却中止提案があったが、売却が強行された。
⑦「かんぽの宿」の簿価が、2006年3月期から急激に引き下げられた。
⑧日本郵政が財産承継する際の財産評価委員会委員で調査部会委員を担った不動産鑑定士奥田かつ枝氏がオリックス関連企業の社外取締役を務めている。
⑨日本郵政で「かんぽの宿」売却の担当部長が、オリックスの出資する不動産会社ザイマックス社から日本郵政入りしている。
⑩「かんぽの宿」売却が「チーム西川」と呼ばれる、三井住友銀行から出向している横山邦男専務執行役、ザイマックス社出身の伊藤和博氏のラインだけで進められた。

 まだまだ、いくらでも挙げることができるが、上記した「疑惑の仮説」を補強する数々の事実が判明している。

 不動産市況が悪化するなかで売却を進めれば、売却価格が低くなることが予想される。これは、買い手に好都合な状況で、本来、売り手はいったん売却方針を凍結するべき環境である。

 売却契約締結後のオリックス不動産の広報を見ると、「かんぽの宿79施設」は、オリックス不動産が全国展開を考えていたホテル事業にうってつけの資産構成になっている。

 こうしたことから、このディール全体が、周到に仕組まれた「出来レース」であるとの疑惑を拭えないのである。

 仮に、これが仕組まれた出来レースであったとするなら、会社法の特別背任未遂に該当することは明らかである。

 現段階では証拠が不十分であるが、問題の潜在的な重大さは極めて深刻である。選考過程での不透明さは、無理やり「オリックス不動産」を売却先とするための工作に起因しているとの疑いを払拭できない。

 これ以外にも、カード事業での三井住友カードの採用、博報堂との独占契約、メリルリンチのアドバイザー選任、などにかかる疑惑も浮上している。

 これだけの事実が判明しているなかで鳩山総務相が、社長交代が必要と判断したのである。この判断が私情によるもの、あるいは、根拠が不明確なものであれば、批判は鳩山総務相に向かうはずだ。

 しかし、鳩山総務相の指摘に瑕疵(かし)はない。きわめて順当で正当な主張を示している。

 竹中氏は日本郵政が利益をあげていることを強調するが、ゆうちょ銀行には200兆円の資産があり、利ザヤが0.8%確保されている。これだけで1.6兆円の粗利益が確保される。利益はこの資金が生んだものであり、誰がトップに座っても生まれる利益である。

 竹中平蔵氏、中川秀直氏、石原伸晃氏などが、口を揃えて間違った主張を示している。竹中氏の考え方は、竹中氏の著書に明記されているから分かりやすいが、その主張の核心は以下の記述にある。

「辞書によると、民営化とは、「民間の経営に任せること」とある。文字通り郵政民営化とは、郵政の経営を民間に任せることであり、政府はそれが可能なように、また効率的に行われるように枠組みを作ることである。これで、西川氏に、経営のすべて、民営化のすべてが委ねられることになった。」
(竹中氏の著書『構造改革の真実』239ページ)

 「これで」とあるのは、日本郵政の初代CEOに西川氏が就任することが内定したことを示している。この言葉は、2005年11月11日に西川氏の初代CEO就任内定を受けて西川氏と竹中氏が行なった記者会見の時点での竹中氏の判断を示している。

 日本郵政は2007年10月1日に株式会社形態に企業形態が移行した。竹中氏は、株式会社に経営形態が変わることをもって「民営化」が実現したとして、「民営化」した以上、日本郵政の経営のすべてが西川氏に委ねられることになったと「勘違い」したのである。

 この間違った判断から、「民営化した日本郵政の経営に総務大臣が介入することは根本的な誤り」だとする、「根本的に誤った」判断が導かれたのだ。

 日本郵政が会社法第2条に定められた委員会設置会社である。委員会設置会社では指名委員会が取締役等の選任を行なう。指名委員会の委員が取締役によって構成されることは当然のことだ。

 御用メディアや西川氏続投論を主張する人々は、日本郵政の指名委員会が決定したことを尊重するべきだとするが、指名委員会が取締役全員の再任を決定する行為は、取締役である指名委員会委員を含む当人たち自身の再任を決定するわけで「お手盛り委員会」と呼ばれてもやむを得ない。

日本の企業のなかで委員会設置会社方式を採用している企業はあるが、米国などの事例を取り入れたと言う以上の特段の実績は示されていない。また、取締役の構成において、社外取締役の比率が過半を占めている事例は決して多くない。実際には、常勤でない社外取締役が「お飾り」的な意味しか有していないケースが圧倒的に多いと考えられる。

日本郵政の場合に、プロパー職員である旧郵政職員が一人も取締役に選任されていないのはいかにも不自然である。

日本郵政のガバナンス(統治)を考えるときに、企業経営が株主の意向を反映して行なわれるべきであることは基本の基本である。

現在の日本郵政は株式の100%を日本政府が保有している、したがって、取締役会にしろ、指名委員会にしろ、その意志決定においては、100%株主である政府の意向を反映しなければならないはずだ。ところが、今回の取締役等選任の人事案決定に際しては、指名委員会が100%株主である政府の意向を事前に斟酌(しんしゃく)した形跡がない。これは、指名委員会が当然果たすべき責務を怠ったものと言わざるを得ない。

日本は法治国家である。法律に基づく運営が確保されなければならない。

日本郵政株式会社法は総務大臣に極めて強い権限を付与している。2005年9月の郵政民営化総選挙での民意を尊重すべきだと言うなら、この選挙を受けて成立した「日本郵政株式会社法」の条文を忠実に遵守(じゅんしゅ)することこそ、民意を尊重する姿勢である。この法律に西川社長の続投を擁護すべきとは書かれていない。書かれていることは、「取締役等選任については総務大臣の認可がなければ効力を生じない」ということである。

財務大臣は株式を保有する政府において財産を一元管理する所管大臣として株主総会に出席する。しかし、取締役等選任に関する決議について判断する権限は総務大臣の専権事項とされていることから、財務大臣は取締役等の選任にかかる決議案については、総務大臣の判断に従って行動することが求められる。

したがって、総務大臣が西川社長の続投を認可しない考えを明示しているなら、財務大臣は株主総会で決議案に反対しなければならない。

麻生首相はこの問題について、5月21日の衆議院予算委員会で「所管大臣である鳩山総務大臣がしかるべく判断される」と明言していた。鳩山総務相の判断に委ねる考えを示していたのだ。麻生首相の「ぶれ」が問題を拡大する最大の要因になっている。

「かんぽの宿」疑惑は「郵政民営化」の実態が「郵政私物化」あるいは「郵政米営化」であることを示す氷山の一角と捉えるべきである。これだけ重大な事案が表面化し、詳細を調べても疑惑が深まるばかりであるのに、西川社長の退陣を求めない人々は、「郵政私物化」、「郵政米営化」に加担する一味であると判断せざるを得ない。

たしかに、西川社長更迭論を唱える人々のなかに、旧来の郵政勢力による日本郵政支配を目論む人々が存在するのは事実であろう。私は、日本郵政の官僚による支配を望ましいと考えていない。

「私物化」でも、「米営化」でもなく、また、「官僚支配」でもない日本郵政を創設しなければならないのだ。そのためには、国民の利益のために行動する、「私物化」と「官僚化」とを厳格に排除する優れた人材を登用しなければならない。適正な人事はたやすいことではないが、だからといって、「私物化」の濃厚な疑いを持たれている人物を、目をつぶって再任することは正当化されない。

一部の人々がこれほど執拗に西川社長更迭に抵抗するのは、西川氏が解任されることに、余程、不都合を感じる理由があるからと考えざるを得ない。テレビ朝日の報道姿勢は一種異様な空気を帯びている。

ここまで切羽詰まった行動を示すことは、西川氏続投工作が必ずしも順調に進展していないことを暗示する。

麻生首相は恐らく取引を持ちかけられているのだと考えられる。

「郵政私物化勢力」は麻生氏が西川氏続投を決定すれば、麻生おろしを封印し、10月総選挙まで麻生体制を支えるとの条件を示しているのだろう。

麻生政権にとっては5月16日以降、総選挙への逆風が立ってしまったために、解散総選挙へのためらいがある。できれば、10月まで時間を稼ぎ、その間に体制を立て直したいと考えているのだろう。この意味で、「郵政私物化勢力」の提示した取引は魅力的ではある。

しかし、6月14日千葉市、7月5日静岡県、7月12日東京都で自民党が三連敗すれば、麻生おろしは封印し切れない。その場合、麻生氏は総選挙を前に辞任を迫られる。

世論の圧倒的多数は西川氏の辞任を求めており、日本郵政の「大掃除」を求めている。6月末に西川氏更迭を決めて、8月2日総選挙に臨む選択肢も捨てがたいのだ。麻生首相はこちらを選択する可能性を残しており、ややその可能性の方が高いために、「郵政私物化勢力」が焦燥感を隠せないのだと思われる。

最後に宮内義彦氏と郵政民営化との関係について、事実を指摘する。宮内氏が著書で「かんぽの宿」への関心を示していたことはよく知られている。しかし、竹中氏は本年1月19日付産経新聞「ポリシーウォッチ・かんぽの宿は不良債権」に次の記述を示している。

「郵政民営化のプロセスに規制改革会議が関係したことはない。(中略)宮内氏が郵政民営化にかかわったというのは、ほとんど言いがかりのようなものである。」

 宮内氏は総合規制改革会議の議長を務めていた。竹中氏は著書の中で、郵政民営化について、2003年9月26日の「経済財政諮問委員会」でキックオフの論議がなされたと記述している。

 その直後にあたる2003年10月7日に2003年度第5回総合規制改革会議が開催された。この議事録から関連部分を転載する。

「その他
 7月の第3回会議で、複数の委員から提案があり、その後当会議としての取組み方を検討していた「郵政三事業の民営化など」に関する取り扱いについては、金子大臣が小泉総理とご相談されていたところであるので、その内容について大臣からご説明を頂戴したい。

(金子大臣)本年夏以降、総合規制改革会議の委員の間では、郵政三事業の民営化などについて同会議で取り扱うべきとの議論があったと聞いている。一方、ご存知のとおり小泉総理からは、本件を経済財政諮問会議において集中的に取扱うこととし、そのとりまとめを竹中大臣にお願いしたいとの指示が公式にあった。
 そこで、こちらの会議との関係について、先週の閣議終了後、小泉総理と相談させていただいたが、総理は総合規制改革会議でそのような議論があったことについては、石原前大臣からも聞いていたとのことである。しかし、2箇所で検討を行うよりは1箇所に集中して、来年の秋までに基本方針をまとめるというスケジュール感をもって取り組んでいきたいので、経済財政諮問会議で一元的に検討させたいとのことであった。委員の皆様には何とぞご理解願いたい。なお、総理からは規制改革の推進についてしっかりやって欲しいとの激励があり、また、これから議論される事項についてもしっかり進めて欲しいとのお言葉があったことを申し添えたい。

(宮内議長)当会議と経済財政諮問会議とは、引き続きできる限り連携を保っていくことを考えているので、同会議から本件についていろいろな検討依頼がされることも想定できるのではないかと思うが、大臣が話された事情のとおり、当面、アクションプランの追加項目からは外すこととしたものである。」
(転載ここまで)

 総合規制改革会議でも郵政民営化は議論の俎上に載せられたのである。

「「郵政三事業の民営化など」について、総合規制改革会議としての取組み方を検討していた」ことが明記されている。しかし、結果として、経済財政諮問会議に一本化されることになった。宮内氏は「引き続きできる限り連携を保っていく」とも述べている。宮内氏が郵政民営化とまったく関わりがなかったわけではない。

 すべてを総合的に判断して、西川社長については、法律の規定に基づいて、総務大臣の決断に従い、更迭することが求められる。

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2009年6月 9日 (火)

参院総務委日本郵政西川社長更迭問題集中審議

6月6日付記事
「西川社長続投誘導は麻生首相おろしの策略か」
に記述したように、本日6月9日午後、参議院総務委員会が日本郵政に関する問題で集中審議を行なった。

審議の冒頭で、民主党・新緑風会、国民新党、新党日本を代表して質問に立った国民新党の長谷川憲正氏が次の事実を指摘した。

今日の集中審議は日本郵政の西川社長続投問題などを議題としており、関係各位に参考人としての出席を求めた。

そのなかで、日本郵政指名委員会の委員長を務める牛尾治郎氏に出席を求めたが拒絶された。牛尾氏に代わり、2名の指名委員に出席を要請したが、やはり拒絶された。

また、かんぽの宿問題について検討した「第三者検討委員会」委員長の川端和治氏にも出席を要請したが拒絶された。さらに、同委員会委員の黒田克司氏、澁井和夫氏にも出席を要請したが出席を拒否された。

さらに、「かんぽの宿」売却の担当部長である伊藤和博執行役は、体調不良で出席を拒否したことが明らかにされた。

日本郵政の取締役等を選任したのは日本郵政の指名委員会であるが、委員会の5名の委員は、全員が日本郵政の取締役である。5名の委員は以下の通りである。

委員長 牛尾 治朗(うしお じろう)

    ウシオ電機株式会社代表取締役会長

委員  西川 善文(にしかわ よしふみ) 

委員  高木 祥吉(たかぎ しょうきち) 

委員  奥田 碩(おくだ ひろし)

    トヨタ自動車株式会社取締役相談役 

委員  丹羽 宇一郎(にわ ういちろう)

    伊藤忠商事株式会社取締役会長

集中審議に出席したのは高木祥吉氏1名だけであった。この指名委員会が西川社長を含む9名の日本郵政取締役全員の再任を決定した。委員会では実質的な審議がほとんどなされなかったとのことである。

 他方、日本郵政が設置した第三者検討委員会のメンバーは以下の通り。

 Photo6月1日付記事
「かんぽの宿が戦後最大の疑獄事件に発展の可能性」
に以下の記述を示した。

「委員長は弁護士の川端和治氏。詳しくは「東京サバイバル情報」様を参照いただきたいが、ポイントは川端氏が「放送倫理検証委員会委員長」であること。

「放送倫理検証委員会」はNHKと民放連で構成する放送倫理・番組向上機構(略称BPO)が作った、
「虚偽放送と疑われる事案が発生した場合に放送倫理上の問題の有無を審理する委員会」
である。

つまり、放送メディアは川端氏を批判できないところがポイントだ。

また、川端氏は旧長銀の内部調査委員会委員長を務めたが、日本郵政公社による不動産バルク売却と旧長銀出身者が密接な関わりを持つことも明らかにされている。

澁井和夫氏は日本不動産鑑定協会常務理事だが、この「日本不動産鑑定協会」がもうひとつのポイントである。

「日本不動産鑑定協会」副会長に緒方瑞穂氏が在任し、この緒方氏が株式会社緒方不動産鑑定事務所代表を務めている。

「かんぽの宿」の帳簿価格が不正に引き下げられた疑惑が存在するが、「かんぽの宿」の著しく低い帳簿価格にお墨付きを与えた本尊である
「郵政民営化承継財産評価委員会」
委員のなかにただ一人、不動産鑑定士が名前を連ねている。その不動産鑑定士が
奥田かつ枝氏
であり、奥田氏が緒方不動産鑑定事務所取締役を務めるとともに、オリックスが出資する企業の社外取締役を務めているのだ。

不動産鑑定協会の常務理事が協会副会長の鑑定事務所の業務を否定できるはずがない。また緒方瑞穂氏と竹中平蔵氏との関係を論じる怪文書も存在する。

また、日本公認会計士協会は金融庁の実質的監督下に置かれている。金融庁は竹中氏、元金融庁長官で現日本郵政副社長の高木祥吉氏とともに西川氏のお仲間である。」
(ここまで転載)

「かんぽの宿疑惑」を原因として西川社長更迭問題が浮上している。この問題を論じるために、国会の委員会で集中審議が行われるのに、関係当事者の大半が国会からの参考人招致を拒絶している。竹中平蔵氏も再三にわたって国会への参考人招致を拒絶しているが、これらの当事者は最低限の責任を果たす責務を負っている。

竹中氏などは、国会への出頭を拒絶しながら、場外の「やらせ舞台」では好き勝手な発言を繰り返している。竹中氏に関しては「証人喚問」を検討するべきである。

本日の集中審議では、多数の重要な論点が改めて明らかになった。ここでは、その中から9点を取り出して提示する。

①総務大臣の位置づけ

 長谷川憲正氏は、日本郵政の「ガバナンス」に関して、根本的な問いを西川氏に投げかけた。総務大臣が日本郵政の人事などに介入する権限を持つのかどうかという問題である。

竹中平蔵氏は著書の中で、日本郵政の「ガバナンス」について著書「構造改革の真実」239ページに次のように記述している。

「辞書によると、民営化とは、「民間の経営に任せること」とある。文字通り郵政民営化とは、郵政の経営を民間に任せることであり、政府はそれが可能なように、また効率的に行われるように枠組みを作ることである。これで、西川氏に、経営のすべて、民営化のすべてが委ねられることになった。」

 「これで」とあるのは、日本郵政の社長に西川氏が内定したことを示している。この言葉は、2005年11月に西川氏起用を決めた時点での竹中氏の判断を示している。 

 竹中氏はこの判断をベースに置いていると見られ、本年1月19日付産経新聞への寄稿「かんぽの宿は“不良債権”」でも、同様の主張を展開し、鳩山総務相の行動が「根本的に誤っている」と批判した。

 日本郵政の株式が市場で売却され、日本郵政の支配権が国から完全に離れたのなら、竹中氏の発言も妥当性を持つだろう。それでも、日本郵政株式会社法が残る限りは総務相に強い権限は残る。

 しかし、現状では、日本郵政グループの株式は100%が政府に保有されており、日本郵政の運営形態が「株式会社」に変わっただけである。日本郵政株式会社法は総務大臣の強大な権限を規定しており、所管大臣であると同時に強大な監督権限を有する総務大臣が、日本郵政の適切な運営に関与することは総務大臣の権限であると同時に責務である。

 竹中氏の考え方は完全に間違いである。

 この点に関する長谷川氏の質問に対し、西川氏は、日本郵政は100%政府出資会社であり、株主が権限を行使することは当然であることを明言した。

 竹中平蔵氏の見解と竹中氏の発言をなぞらえた中川秀直氏、石原伸晃氏などの見解が、西川氏自身によって完全に否定された。

 長谷川氏はマスメディアの一部が、「民間の経営に総務相が口出しするのは間違いだ」と主張したことも批判したが、マスメディアも同様の間違いを犯したことが明確になった。

②指名委員会の行動の誤り

 日本郵政は100%政府出資の国有会社である。企業経営が株主の意向を反映して執行されるべきことは当然であり、日本郵政の指名委員会が取締役等選任に際して、株主である日本政府の意向を尊重するべきことは当然である。

 今日の質疑で高木祥吉氏が陳述した内容によると、日本郵政は株主の意向を取締役等選任に反映する行動を取っていない。日本郵政は指名委員会の決定を西川氏続投の正統性の根拠とするが、そもそも指名委員会が、本来取るべき行動を取っていないことが明らかになった。

③取締役等選任にかかる総務大臣、財務大臣の権限

 日本郵政株式会社法における総務大臣の権限については、本ブログ6月4日付記事
「日テレNEWS ZERO西川社長関連偏向報道」
に記述した。取締役等選任に関する権限は総務大臣の専権事項である。

 財務大臣と総務大臣の共管事項ではない。

 財務大臣が株主として株主総会に出席するのは株式を保有する日本政府を代表して出席するものである。帳簿上での株主は財務大臣となっているが、財務大臣は株式を100%保有する政府を代表しているだけであって、株主総会で財務大臣は政府を代表する立場に立って行動することが求められている。

政府のなかで日本郵政の取締役等の選任について権限を持つのは総務大臣であり、財務大臣は株主総会における日本郵政取締役人事に関する決議においては、総務大臣の判断に従って行動することが求められる。総務大臣の判断と異なる判断に基づく行動を財務大臣が取ることは、「閣内不一致」に該当する。内閣の「ガバナンス」の崩壊を意味する。

鳩山総務相はやや異なる見解を表明しているが、与謝野財務大臣は株主総会で鳩山総務相の判断に基づいて人事決議案に対処しなければならない。

④西川社長更迭問題と政局との関わり

マスメディアが西川社長更迭問題を「政局絡み」と報道している点について、長谷川氏が鳩山総務相の見解を質した。

鳩山総務相は、これらの報道の誤りを一刀両断に切り捨てた。「かんぽの宿疑惑」は、国民の貴重な財産が不透明に、また不適切な手続きによって、郵政民営化に関連した人物が経営する企業に「出来レース」のような形で売却されようとした問題である。

そして、この問題が西川社長に直結する「チーム西川」と呼ばれる三井住友グループと関わりの深い幹部によって仕切られたものであることから、西川氏の責任を追及するものであって、「政局」とはまったく関わりがないことが明言された。

「売国勢力」に支配されるマスメディアが、西川社長更迭を阻止するために、このような偏向した報道を展開しているのだと思われる。

 これ以外に、
⑤クレジット・カード業務で三井住友カードが選択されたこと等に関する疑惑
⑥メリルリンチ日本証券が不自然な選考過程を経てアドバイザーに選任された疑惑
⑦「かんぽの宿」売却に際し、社宅9件が簿価を下回って売却されようとした問題
⑧博報堂とのCM関連一括契約に関する疑惑
⑨メリルリンチ日本証券が3回にわたって「かんぽの宿」売却提案をしたのに無視された問題
などが改めて指摘されたが、詳細は紙幅の関係で省略する。

①日本郵政の経営への総務大臣の介入は、総務大臣が果たすべき当然の責務であること。

②日本郵政指名委員会が取締役選任案決定に際して100%株主である日本政府の意向を踏まえる必要があったのに、これを怠ったこと。

③日本郵政株式会社法が日本郵政の取締役等選任について、総務大臣に専権を付与しており、財務大臣は総務大臣の判断を踏まえて株主総会での取締役等人事決議案に対処する必要があること。

などが明らかになった。

麻生首相が最終決断を国会での重要法案の衆議院再可決後に先送りしようとしていると見られるが、党内の造反を恐れて西川社長更迭の決断を示せないのなら、その時点で、麻生首相は自民党を代表する総裁を務める資格を失っていることになる。

麻生首相が西川氏を更迭し、自民党議員の一部が造反して、衆議院再可決で3分の2の賛成を得られぬなら、自民党は分裂して総選挙になだれ込むことになる。このような自爆行為を自民党議員が取れるはずがない。このことを恐れて麻生首相が決断できないなら、麻生内閣が総辞職するべきだ。

結局、麻生首相には、西川社長更迭を決断し、6月末衆議院解散、8月2日総選挙に向かう以外に道は残されていないと考えられる。

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日本郵政西川善文社長更迭決断の環境が整った

6月8日付記事に
「世論調査で西川社長続投に圧倒的多数が反対」
を記述した。

鳩山総務相は6月8日、「世論の8割は続投に反対。世論が常識、鳩山が常識を示している」と語った。

世論調査好きの御用メディアが、西川社長更迭(こうてつ)問題に関しては、世論調査を封印してきた。このなかで、フジテレビ「サキヨミ」が世論調査を実施した。

結果は、西川社長続投に8割が反対だった。この世論調査は、国民の判断を正しく反映していると思われる。

「市場原理主義者」=「郵政私物化勢力」は西川社長の更迭を阻止するために、西川社長更迭は「改革後退」を印象付け、政権にとってマイナスだと主張し続けてきた。

これに対して、鳩山総務相は「民営化」を汚(けが)す行為が発覚し、その「大掃除」をするのに、なぜ「改革後退」になるのか。郵政民営化推進論者には不祥事を一掃することに感謝されても、批判されるのは考えられない、との趣旨の発言を示した。

これも正論である。

郵政民営化に国民が賛成したのは、郵政事業を効率化して、国民の利益を増大させることを期待したからであった。ところが、「かんぽの宿疑惑」で明らかになったのは、「郵政民営化」の名の下に、日本郵政幹部が、一部の特定業者に便宜を供与し、貴重な国民財産を不当に安い価格で横流ししようとしていたとの重大な事実であった。

このような不正を横行させ、国民に大きな損失を与えるために「郵政民営化」が進められたのではたまらない。これが、国民の率直な感想である。「かんぽの宿疑惑」の全容解明が完了していないため、疑惑が「犯罪」であることがまだ確認されていないが、「入札」とされた売却先決定が「入札」とは程遠い、特定業者への無理な売却決定であったことが明らかになっている。

この不透明な処理を実行した責任者は、横山邦男専務執行役であり、担当部長は伊藤和博執行役であった。横山氏は三井住友銀行からの出向者であり、伊藤氏は日本債券信用銀行から株式会社ザイマックスを経て、日本郵政入りした。二人とも西川社長による人事であると伝えられている。伊藤氏が10年以上在籍した株式会社ザイマックスはオリックスが出資する不動産会社である。

日本郵政関係者によると、かんぽの宿売却に関する意思決定は、少数の関係者だけで行われ、不透明な部分が多かったという。不動産売却の経済環境が悪化し、アドバイザーから再三、売却中止の提案が示されたにもかかわらず、売却が強行されたことも明らかになっている。

このような経緯を踏まえたときに、西川社長の責任が問われるのは当然である。日本郵政株式会社法は総務大臣の強大な権限を定めており、取締役等選任についても、総務相の認可がなければ効力を生じないことが明記されている。

鳩山総務相が個人の好き嫌いで認可権を振りかざしているなら、国民は鳩山総務相に批判の矛先(ほこさき)を向けるだろう。しかし、鳩山総務相の主張は国民の利益を守らねばならない閣僚としての基本に沿ったものであり、このため、世論の支持を受けているのである。

麻生首相の指導力のなさ、決断力の欠如が問題混乱に拍車をかける最大の要因になっているが、世論調査結果が初めて明らかにされたことで、ようやく、判断が促進されることになる。

本ブログの声も届いているのと思われるが、麻生首相は、自分の手で総選挙を実施することを優先するために、西川社長更迭を決断することになるのではないか。麻生首相としては、今国会での各種法案再可決の前に西川社長更迭を決定して郵政民営化推進派に揺さぶりをかけられるのを防ぐために、重要法案再可決を行なった後に、西川社長更迭を決定したいのだと思われる。

しかし、そこまで先送りすることは難しいだろう。逆に西川社長続投を容認するには、その前に鳩山総務相を罷免しなければならない。鳩山総務相を罷免し、西川社長続投を容認すれば、世論の麻生内閣不支持に拍車がかかるのは火を見るよりも明らかだ。総選挙を目前にしてのこの決断は、常識的にはあり得ない。

また、総選挙日程を10月に先送りすれば、自民党は確実に総裁選を前倒しするだろう。結局、麻生首相は今国会で衆議院を解散せざるを得ない。麻生首相は西川社長更迭を決断し、そのうえで、衆議院解散を決断する可能性が高い。総選挙日程は8月2日大安になると考えられる。

日本郵政人事について、旧郵政省職員を排除する論調が強いが、これははなはだ奇異なことである。旧郵政省職員の幹部登用は「天下り」ではない。旧郵政省職員は日本郵政の「プロパー職員」である。

政府関係機関の幹部人事に際しては、「天下り」や「天上がり」を排して、「プロパー職員の登用」を基本とするべきである。小泉政権は民間人を政府機関のトップに据えることを「改革」と称していたが、「改革」などと呼べるものではない。「御用財界人」を増大させるために、公職を「餌(えさ)」として活用しただけに過ぎない。

組織の幹部には、組織の仕事に精通し、組織に対する愛情と、仕事への熱意を持つ、プロパー職員のなかから、有能な人材を登用することが最も望ましい。

旧郵政職員が日本郵政株式会社の取締役にただの一人も含まれていないことが異常である。

日本郵便代表取締役の團宏明氏や、旧日本郵政公社常務理事を務めた稲村公望氏など、旧郵政職員のなかの優れた人材を日本郵政トップに起用することを検討するべきである。

「市場原理主義者」=「郵政私物化勢力」=「郵政米営化勢力」は西川社長続投をごり押ししようとしているが、世論調査結果なども明らかにされ、西川社長続投の「無理」が表面化した。麻生首相に適正な判断力が残っているなら、西川社長の更迭を決断するだろう。麻生首相が最後の命綱を握るかどうか。注目される。

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2009年6月 8日 (月)

世論調査で西川社長続投に圧倒的多数が反対

6月7日放送のフジテレビ「サキヨミ」が、西川善文日本郵政社長更迭(こうてつ)問題について、独自に行った世論調査結果を公表した。

6月6日記事
「西川社長続投誘導は麻生おろしの策略か」
に記述したように、世論調査が大好きなマスメディアが、5月27日の鳩山由紀夫民主党代表と麻生太郎首相とによる初めての党首討論後、まったく世論調査を行なっていない。

3月3日に小沢一郎民主党前代表の公設第一秘書が逮捕されてから、5月16日に鳩山由紀夫氏が民主党の後継代表に選出されるまで、マスメディアは誰も頼んでいないのに、毎日のように世論調査を実施していた。

マスメディアは、世論調査で小沢代表の辞任を求める声が多いことを、小沢代表辞任要求の最大の論拠とした。

同じ理屈で考えるなら、日本郵政西川社長更迭問題こそ、世論調査で民意を探るべきでないのか。また、党首討論の勝敗も世論調査で確かめるべきではないのか。

小沢前代表の進退問題は、ひとつの政党内部の人事問題である。民主党支持者には重要な問題だが、一般国民に意見を求めることは適正でない。

自民党はそもそも、小沢氏の力量が非常に高いから、小沢氏の代表辞任を熱望し続けてきた。自民党支持者は、道義上の判断からではなく、自民党にとっての損得勘定から小沢氏辞任を唱えた可能性が高い。この意味で、小沢氏辞任の是非を問う世論調査は適正な調査と言い難い。

他方、西川社長更迭問題、鳩山総務相の政治姿勢を有権者がどのように捉えるのかは、世論調査にふさわしい調査項目である。

「かんぽの宿」は貴重な国民資産であって、これを郵政民営化と関わりの深い宮内義彦氏が総帥を務めるオリックスグループに不正廉売しようとしたことの是非を、国民がどのように受け止めているのかは、重要な世論調査のテーマになる。

ところが、マスメディアはこの問題での世論調査をまったく実施してこなかった。今回のフジテレビ調査が初のケースであると言ってよいだろう。

サキヨミの調査結果は以下の通り。

①西川社長続投を認めないとの鳩山総務相の姿勢を
支持する  58%
支持しない 42%

日本郵政西川社長は
辞任すべき 80%
続投すべき 20%
だった。

 国民は「かんぽの宿」疑惑を正しく捉えている。

 コメンテーターの森永卓郎氏が指摘したように、「郵政民営化」の実態は
「郵政私物化」
「郵政米営化」
であった。

 「かんぽの宿」疑惑は「郵政民営化」が「郵政私物化」であったことを示す「氷山の一角」である。

 ネットから多くの情報が提供され、多くの国民が「かんぽの宿」疑惑の内実を知るようになっている。

 「かんぽの宿」不正売却問題は、三井住友銀行出身の西川善文社長が、日本郵政内部の三井住友人脈による「特命チーム」に担当させたプロジェクトであり、「郵政私物化」の実態を、非常に分かりやすく示す事例である。

 マスメディアの大半は、事実を中立公正の視点から正しく国民に伝えることをしないが、ネットから真実の情報が数多く発信され、多くの国民に真実に近い情報が届いていると考えられる。

 朝日新聞、産経新聞、日本経済新聞、テレビ朝日、TBSテレビの偏向が顕著である。

 「ライフログ ダイアリー」様が実施されたアンケート調査では、
日本郵政西川社長続投
 賛成 10%
 反対 90%
 (投票総数1397票)

竹中平蔵氏の国会での証人喚問
賛成 96.3%
反対  3.7%
(投票総数3045票)

の結果が示されている。

 国民は日本郵政西川社長の更迭(こうてつ)に賛成であり、
鳩山総務相の西川社長続投を認可しない姿勢を支持している。

 最終的には麻生首相が判断しなければならない。この点については、6月7日付記事

「麻生首相が仕切れる総選挙は8月2日しかない」

 
に詳述した。

 麻生首相が自分の手で解散・総選挙を断行して国民の審判を仰ぎたいのなら、その唯一のチャンスは6月末解散、8月2日総選挙しかないと考えられる。

 7月12日の都議会選挙は自民党に厳しいものになるだろう。7月12日を待つと、解散・総選挙を打つことが非常に難しくなる。国会は、6月末で、実質審議を完了してしまう。

 こうなると、9月10日に臨時国会を召集して衆議院を解散し、10月4日大安総選挙か10月18日先負総選挙のいずれかを選択することになる。

 この場合、自民党は間違いなく8月ないし9月に自民党総裁選を前倒しするだろう。総選挙の顔は麻生太郎氏から別の人物にすげ替えられる。

 したがって、麻生氏が自分の手で総選挙を実施したいのなら、6月下旬解散、8月2日総選挙を選ぶしか道はない。鳩山総務相は麻生首相をこのシナリオに誘導しようとしているのだろう。

 この場合、麻生政権にとっては、日本郵政西川社長更迭を決定する方が、はるかに有利である。国民世論は西川氏辞任を求めており、この問題に関しては、圧倒的に鳩山総務相支持が多いからだ。

 御用メディアが日本郵政西川社長更迭問題を世論調査で取り扱わない最大の理由は、御用メディアの大半が、「売国勢力」に支配されてしまっているからだ。「サキヨミ」では、ニューズウィーク日本語版編集長の竹田圭吾氏が、当然のことながら、「売国勢力」サイドに立った発言を示した。

 しかし、国民の大半は、「郵政私物化」の現状に怒りを感じている。多くの国民は2005年9月の郵政民営化総選挙での投票行動を反省しているのだ。だからこそ、2007年7月参議院選挙で民主党を勝利させ、現在は、政権交代を期待する国民が多数派を形成しているのだ。

 テレビ番組に登場する大半のコメンテーターと政治評論家は、根の腐った「御用」人間である。「御用人間」は、
①日本郵政が民間会社であり、
②内部の指名委員会が西川氏続投を決めた。
③総務相は民間会社の人事に介入すべきでない
④日本郵政は決算で利益を計上した
⑤鳩山総務相の行動は政局狙いのパファーマンスである
ことを述べて、西川氏続投が正しい選択だとする。

 これらの主張がことごとく間違っていることはこれまで何度も指摘してきた。①~③は根本的に間違っている。石原伸晃氏は、ものごとを正確に理解する能力に欠けていると考えられる。6月7日のテレビ朝日「サンデープロジェクト」でも「根本的に間違っている」発言を繰り返した。

日本郵政は株式を100%政府が保有する、純然たる「完全国有会社」であって、現段階では「民間会社」ではない。株式の政府保有比率が2分の1を下回れば、「民間会社」と呼んで差し支えないが、現状では「完全国有会社」である。

日本郵政が「完全国有会社」であることを踏まえると、総務大臣の権限と比較すれば、日本郵政指名委員会など、「吹けば飛ぶ存在」だ。そもそも、指名委員会委員は、日本郵政の9名の取締役のなかの5名が兼務しており、指名委員会は完全な「お手盛り委員会」である。

現段階では、総務大臣に絶大な監督権限が認められるのは当然だ。この絶大な監督権限の正統性の根拠は、郵政民営化推進議員が成立させた「日本郵政株式会社法」の条文にある。石原伸晃氏、竹中平蔵氏、中川秀直氏などは、法律の条文をまともに理解する力すら保持していないとしか考えられない。恐るべき現実だ。

日本郵政が利益を計上するのは、300兆円の資金が存在し、調達コストと運用利回りとの「利ざや」が存在するからだ。誰が社長でも計上できる利益で、西川氏続投の理由にならない。

鳩山総務相が主張する「正義」は「正論」である。常識的に捉えれば、誰が見ても「かんぽの宿」売却は不正売却にしか見えない。2400億円を投じ、固定資産評価基準額が856億円の「かんぽの宿」を109億円で売却しようとした行為を正当化する根拠はない。売却先決定方法が極めて不透明、不適切であったから、日本郵政は売却契約を白紙に戻したのである。

テレビで情報操作を請け負っている人物の「パージリスト」をそろそろ用意する必要がある。これ以上、情報操作の弊害を拡大させないように、リストを公開し、視聴者に注意を呼び掛けることも必要と考えられる。

「きっこのブログ」様が6月7日付記事
「民放連の世論調査に情報操作の疑い」
に、重大な疑惑を記述された。

民放連が行なった「ラジオ・オピニオン2009」の「東京オリンピックの招致」に関するアンケート結果に、悪質な情報操作の疑いが浮上しているのだ。

私はオリンピックの東京招致に反対である。オリンピックに注ぐお金があるなら、その前に国民生活を支えるべきと考えるからだ。いまやオリンピックは「巨大利権」としてもてはやされているのである。オリンピックを招致しようとする人々の大半は、「利権」を主目的としている。

オリンピック招致に賛成の国民が多数とは到底考えられない。石原都知事がオリンピック招致のために強引な手法を展開していることが目につく。

政治が世論調査を都合よく使ったり使わなかったり、使う場合も、姑息(こそく)な数値操作を行なっている現実に、しっかり目を光らせなくてはならない。

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2009年6月 7日 (日)

麻生首相が仕切れる総選挙は8月2日しかない

サッカーW杯アジア最終予選で、日本代表はウズベキスタンに1対0で辛勝し、世界第1号のW杯出場権を獲得した。久しぶりに明るいニュースが舞い込んだ。日本代表のW杯本選での活躍が期待される。

政治はこう着状態に陥っているが、民主党を中心とする野党が国会審議を順調に進展させており、6月中に主な法案処理が完了する見通しである。通常国会の会期は7月28日まで、55日間延長されたが、7月は審議する内容がなくなり、事実上閉会になる。

当面の焦点は、西川善文日本郵政社長更迭問題である。マスメディアのなかで、読売新聞が主張を変えた。6月6日付朝刊に
「日本郵政人事 核心は不祥事の経営責任だ」
と題する社説を掲載した。

このなかで、次の記述を示した。
「総務省の業務改善命令にも、日本郵政は回答していない。そんな段階で西川社長再任の人事案を決めたのは、手順としておかしいのではないか。人事案は自発的に白紙に戻すのが筋だろう。」

本ブログ5月23日付記事
「西川善文日本郵政社長続投論を覆う黒い霧」
に、
読売新聞の渡邉恒雄氏が『文藝春秋』2009年1月号のインタビュー記事で語った次の言葉を紹介した。

「僕は竹中さんから直接聞いたことがあるんだが、彼は「日本の四つのメガバンクを二つにしたい」と明言した。僕が「どこを残すんですか?」と聞くと、「東京三菱と三井住友」だと言う。あの頃はまだ東京三菱とUFJは統合していなかったんだが、「みずほとUFJはいらない」というわけだ。どうして三井住友を残すのかというと、当時の西川善文頭取がゴールドマン・サックスから融資を受けて、外資導入の道を開いたからだと言う。「長銀をリップルウッドが乗っ取ったみたいに、あんなものを片っ端から入れるのか」と聞くと、「大丈夫です。今度はシティを連れてきます」と言った。今つぶれかかっているシティを連れてきて、日本のメガバンクを支配させていたらどうなったか、ゾッとする。」
(「文藝春秋」からの引用)

 この発言の重要性については、「神州の泉」主宰者の高橋博彦様も記事を掲載されたが、竹中氏が金融相時代に、米国投資銀行ゴールドマン・サックスによる三井住友への出資を斡旋(あっせん)した疑いが存在するのだ。竹中氏と西川氏の昵懇(じっこん)の関係は、2002年12月11日のゴールドマン:ポールソン&セイン氏と西川氏、竹中氏による4者密会に始まっている。

日本経済は2003年5月にかけて、小泉竹中経済政策によって破壊し尽くされたが、株価暴落誘導とその後の「りそな処理」を中核とする政策対応が、米国資本への利益供与を目的に実行された疑いが存在する。この問題についての詳細は、拙著『知られざる真実-勾留地にて-』をご高覧賜りたい。

読売新聞の渡邉氏は、竹中氏を中心とする人々の「売国的政策」に異を唱える姿勢を、時折、垣間(かいま)見せる。CIAと深い関わりを持つと見られる読売新聞であるから、その真意を測りかねるが、マスメディアのなかから、西川社長続投に反対意見が表明された意味は大きい。

「かんぽの宿」疑惑は、「郵政民営化」の実態が、実は「郵政私物化」、「郵政米営化」であったことを証明する「氷山の一角」である。「かんぽの宿」疑惑は、すでに野党議員によって刑事告発の対象となり、東京地検が正式に刑事告発を受理したから、今後の地検の対応が注目されるわけだが、重大な不祥事であることははっきりしている。

「かんぽの宿」売却プロジェクトは、西川社長直系である三井住友銀行出身の横山邦男専務執行役と、やはり西川社長人事で不動産会社ザイマックス社から日本郵政入りした伊藤和博執行役のラインによって仕切られた。西川社長の責任が問われるのは当然である。

日本郵政株式会社は企業形態こそ、2007年10月に株式会社に変わったが、株式の100%を政府が保有する「純然たる国有会社」である。

日本郵政株式会社法は所管大臣である総務大臣に極めて強力な監督権限を付与している。そして、この法律は竹中平蔵氏を中心とする郵政民営化推進議員が核になって起草されたものである。

鳩山総務相は、この法律に則って、日本郵政西川社長の再任を認可しない方針を明示したのであり、日本郵政株式会社法に基づいて政府が対応を決定する限り、西川社長を続投させる方策はない。

唯一あり得るのは、麻生首相が鳩山総務相を罷免(ひめん)して、西川氏続投を認可する総務相を新たに任命する場合に限られる。この場合、麻生首相は、自民党内「市場原理主義者」=「売国勢力」の要請に屈服することを、高らかに宣言することになる。

罷免された鳩山氏は自民党を離党することになるだろう。

国会審議が6月末で実質的に完了することを踏まえると、総選挙の日程は、もはや二通りしか存在しなくなっている。補正関連法案の国会決議までは解散できないことを前提とすると、7月12日の都議選との同日選の可能性はすでにほぼ消えている。

6月末に国会審議が実質終了してしまうことを踏まえると、この段階で解散すれば、総選挙日程は8月2日大安になる。8月9日は長崎の原爆被災日で、総選挙を行なうのには問題が多い。

ここで解散がない場合、衆議院解散は国会閉会中にはないため、解散は9月10日の任期満了日にならざるを得ない。9月10日に臨時国会を召集し、召集時解散を行なうのだ。この場合、投票日は10月18日先負になる可能性が高い。任期満了選挙である。

民主党の小沢前代表が辞任し、後任の新代表に鳩山由紀夫氏が就任した。この結果、風向きは再び民主党に順風、自民党に逆風に転換した。このため、麻生首相は体制を立て直し、10月18日投票の総選挙日程を頭に置いたと考えられる。

しかし、この考えは甘い。

麻生自民党総裁の任期が9月で満了になるからだ。したがって、総選挙日程を10月に先送りする場合、必ず総選挙前に自民党総裁選が行われることになる。自民党議員は、選挙の顔を間違いなく差し替えるはずだ。

つまり、麻生首相が自分の指揮の下で総選挙を実施しようと考えるなら、そのチャンスは6月末解散8月2日総選挙しかないのである。

麻生首相に西川日本郵政社長続投を強く要求している勢力は、
①まず、西川社長続投をごり押しする。
②西川社長続投が確定した段階で、自民党総裁選前倒し論を党内で高め、麻生おろしを実行する。
③そのうえで、10月総選挙に臨む。
のシナリオを頭に置いていると考えられる。

麻生首相は二つの問題に結論を出さなければならない。

第一は、西川社長更迭の判断を示した鳩山総務相の意向を尊重するのか否か。結論を出すことだ。西川社長を更迭すれば、党内に亀裂は生じるだろう。逆に、西川社長を続投させるためには、その前に鳩山総務相を罷免しなければならず、鳩山邦夫氏の離党まで覚悟に入れる必要が生まれる。

第二は、6月末に自分の手で衆議院の解散に踏み切るかどうかを決断することだ。6月末に解散しない限り、ほぼ確実に、次の総選挙の際の自民党総裁は麻生氏ではなくなっているだろう。

優柔不断に、重要事項に対する決断を先送りし続けてきたツケが、いま、はっきりと表れている。本ブログでは、西川社長解任問題を2月18日付記事以来、繰り返し論じてきた。すでにすべて着地していなければおかしい時期に、麻生首相が「ぶれぶれ」なのだから、そもそも首相の器を持たれていないと考えるべきかも知れない。

麻生首相が有終の美を飾れる選択肢はひとつしか存在しない。西川氏更迭を決断し、6月末解散、8月2日総選挙を決断することだ。サミット直後の7月12日都議選の結果を見てからでは解散は打てない。解散する場合は、6月末が唯一のチャンスである。

鳩山総務相はこのシナリオを念頭に置いて、着実に演技を進行させているのかも知れない。このシナリオが麻生首相と鳩山総務省で共有されている場合、西川社長は更迭され、6月末に衆議院解散が決定され、8月2日に総選挙が実施されることになる。麻生首相がものを考えることがあるとすれば、この可能性が高いように思われる。

ここで解散がない場合は、8月ないし9月に自民党総裁選が実施され、新しい自民党総裁の下での10月18日総選挙になるだろう。しかし、国民から見ると、小泉首相が総裁を退いてから、4回目の総裁選になる。もう誰も評価しない。自民党惨敗は必至だ。

 

果たして麻生首相にこの明白な現実が見えているか。答えは間もなく示される。

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2009年6月 6日 (土)

総選挙の争点と国会議員定数削減論への反対論

次期総選挙の最大の焦点は日本の政治を「政官業外電の悪徳ペンタゴン」から国民の手に奪取できるかどうかである。「政権交代」の是非が最大の争点である。具体的な政策としては、

①大資本の利益を優先する経済政策
②官僚の天下り利権の根絶
③消費税大増税の阻止
④議員世襲の制限
⑤セーフティネットの強化
が争点になる。

大資本と政治の癒着を象徴するのが、企業献金である。

民主党は「3年以内の企業団体献金全面禁止」を政権公約に明示することを決定した。西松事件でクローズアップされたのは「政治とカネ」の問題である。企業が政治に資金を提供し、政治が国民ではなく資本の利益を満たすように行動することが問題なのだ。企業献金を得ること、「カネ」を得ることが政治の目的になってしまうことが問題なのだ。

自民、民主両党の2007年政治献金実績は以下の通りだ。

自民:総額224億円、うち企業献金168億円
民主:総額 40億円、うち企業献金18億円

経団連加盟企業の経団連を通じる企業献金は、
自民:29億1000万円
民主:8000万円
である。

自民党の政治が「金まみれ」であり、自民党の政治が「企業と癒着」しているのである。この問題を断ち切るのが「企業献金全面禁止」の提案である。

官僚主権の政治を象徴するのが巨大な「天下り」利権である。「天下り」を受け入れる政府機関に年間12.1兆円もの財政資金が投入されている。天下りを根絶することによって、大きな財政支出の削減を実現することができる。

「悪徳ペンタゴン」は官僚と大資本へのバラマキ、無駄遣いてんこ盛りの補正予算を編成し、そのツケを一般国民に大型消費税増税として負担させようとしている。

民主党は「天下り」などを温存したままでの消費税大増税を認めない方針を明示した。岡田克也氏は2005年9月の総選挙で、消費税の3%引き上げ方針を示したが、鳩山新代表は、次期総選挙後の4年の任期中は消費税増税を封印することを明示した。

したがって、「献金・天下り・消費税」が分かりやすい総選挙の争点になる。

民主党が「政権交代」の大きな旗を掲げ、
「企業献金全面禁止・天下り根絶・消費税大増税阻止」
の具体的提案を政権公約に掲げて総選挙を闘えば、有権者の多くが民主党を支持するだろう。

自民党は総選挙を目前に控えて、総選挙の争点を独自に提示しようと考え、御用メディアにその普及に努めさせている。

その争点が、
①社会保障と安全保障の二つの「保障」問題
②国会議員の議員定数削減
③世襲議員制限
の三つである。

①の社会保障と安全保障の二つの「保障」を争点に掲げる狙いは、消費税増税を正当な政策と位置付ける理屈付けと、野党分断作戦だ。

年金制度の安定性を確保するためには大きな財源が必要で、消費税増税を避けられないとするのが自民党の主張である。消費税増税を封印する民主党の姿勢を「無責任」と攻撃しようとしている。

しかし、民主党の主張は「増税に手をつける前に天下りなどの無駄を排除することが先決だ」というもので、国民は民主党の主張に賛同するだろう。

社会民主党は武力行使を伴う自衛隊の海外派兵を恒久化する立法措置には断固反対する意向を示している。自民党は安全保障問題をクローズアップすることにより、野党共闘にひびを入れようとしている。姑息(こそく)な考えである。

③の世襲制限について、自民党は紆余曲折を示しているが、結局、実効性のある施策を示すことができなかった。6月5日付日本経済新聞によると、次期総選挙で同一選挙区から3親等以内の親族が連続して立候補する「連続世襲」候補者は、自民党57人に対し、民主党6人である。

民主党連続世襲と政治資金の承継を禁止するルールを明示したが、自民党は世襲制限を結局、次の次の総選挙からの実施にすることで、先送りを決めたようである。4代目世襲になる小泉元首相次男は自民党から公認を得る可能性が高い。自民党は世襲制限でも実効性のあるルールを作れない。

このなかで、自民党は議員定数削減を掲げようとしている。他に目玉になる施策を示せないため、消去法で議員定数削減が掲げられるわけだが、この提案も実効性を伴うのかはっきりしない。

私は国会議員の定数削減を急ぐ必要がないと思う。「植草事件の真相掲示板」様に「風太」様が6月2日に意見を提示されたが、私も同感だ。理由を三つ示す。

第一は、日本の国会議員が人口に比べて、決して多すぎると言えないことだ。グラフは神戸学院大学の上脇博之教授が作成したものだが、人口10万人当たりの国会議員数は、日本の場合、0.57人である。

Photo  

米国が0.17人で極端に少ないが、それ以外の欧米主要国は、日本よりも人口当たりの国会議員定数が多い。

国会は国民生活の全般にわたる重要問題をすべて審議する場である。各分野に強い国会議員が求められるし、各種委員会で、内容のある論議をしてもらわなければならない。国会議員の定数を削減する強い根拠は存在しない。

第二は、国会議員定数削減が比例区の削減を中心に提唱されているが、比例区定数が削減されると、少数政党が不利な影響を受けやすくなる。

小選挙区と比例の併用により、小選挙区で当選しなかった議員に向けられた投票が各政党の議員を復活当選させるために生かされる。比例の併用によって、投票がまったく意味を持たないという「死票」を減らす効果を持つ。

自民、民主が二大政党としての地位を確実にしているが、多様な国民の民意を正確に国政に反映することを重視するなら、「死票」を減らし、少数政党からの議員が輩出される現行制度のメリットは大きい。

第三に、参議院を廃止して一院制にしようとの主張があるが、日本の政治風土を踏まえるとリスクが大きい。2005年9月に自民党は単独で衆議院の3分の2に迫る議席を確保した。

一院制の下で、特定の政党が、何らかの要因で議会の3分の2を確保し、例えば憲法改正などの行動を取れば、その行動が成立してしまう。いま振り返っても、2005年9月の総選挙は、一種の「熱病」による選挙結果と評価されるわけで、この結果だけを根拠に、諸制度が根本から変更されてしまうのはあまりにもリスクが大きい。

二院制により、政治体制の変化は一気に生じない。とりわけ参議院では議会の解散がなく、議員の任期が6年で、3年ごとに半数ずつ議員が入れ替わる制度が取られており、政治体制の変更にはどうしても時間を要する仕組みになっている。

ドラスティックに制度を変更するうえでは障害になるが、国民が制度の抜本変更に際して、現実を見ながらじっくり時間をかけて考えることができるメリットがある。

2007年7月の参議院選挙で参議院では野党が過半数を確保した。次期総選挙で野党が衆議院でも過半数を確保すれば、本格的な政権交代が実現する。有権者は2007年7月から次期総選挙までの約2年の時間をかけて、「政権交代」の是非をじっくり考える時間を得たのである。

マスメディアが作り出す空気によって、選挙結果が振れやすい日本の政治風土を踏まえれば、二院制で、政治体制の変更に時間を要することは、極めて重要な安全弁の役割を果たしていると言える。

また、企業献金を廃止すると個人献金が重要になると言われるが、政治活動に必要な資金は国家が保障することが望ましいと思われる。政治資金の収支を全面開示することが必要条件であるが、政治活動に対する国家予算からの助成金を拡大することを検討するべきだ。

その一方で、政治活動の資金を献金に頼る仕組みを解消させるべきである。

財政の膨大な無駄は徹底的に削減するべきだが、この流れの中で、国会議員の定数削減などの論議を安易に、雰囲気だけで進めるべきでない。国会議員が減れば、個別政策に詳しい官僚がますます政策立案での実権を握ってしまう。国会議員を減らすのでなく、国会議員に精力的に仕事をしてもらうことが肝要だ。

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西川社長続投誘導は麻生首相おろしの策略か

三つの素朴な疑問。

その一。日本郵政西川善文社長更迭(こうてつ)問題。これまでの経緯、法律、意志決定の正当な手順を踏まえれば、西川社長更迭以外に選択肢はない。はっきりしている話が複雑に見えているのは、西川社長が更迭されると困る市場原理主義勢力=売国勢力と連携する御用メディアの偏向報道の影響による。

その二。世論調査が行われないこと。5月27日に半年ぶりに党首討論が実現した。小沢代表秘書逮捕以降、頼まれもしないのに執拗に世論調査を実施してきたマスメディアが、なぜか、突然世論調査をやめてしまった。

日本郵政西川社長更迭問題こそ、世論調査の格好のテーマである。日本郵政は国民の貴重な財産である。日本郵政が保有する資産は国民の貴重な財産だ。その財産を不正に横流ししようとした「悪事」が白日(はくじつ)の下(もと)に晒(さら)されたのである。日本郵政の株式を100%政府が保有するのだから、その人事について、国民の意向を問うのは当然だろう。

民主党の党首が辞任すべきかどうかよりも、はるかに国民の利益に直結し、国民が権利を有することがらだ。

その三。足利事件の冤罪被害者である菅谷利和さんが明らかにした、自白を強要する警察の不当な取り調べを是正するために、取り調べの全面可視化が不可欠であることが明白であるのに、自民党が反対姿勢を変えないこと。

まず、日本郵政西川社長更迭問題だが、問題処理は法律に基づいて行なうべきだ。日本郵政株式会社法第九条は以下の通り。

「会社の取締役の選任及び解任並びに監査役の選任及び解任の決議は、総務大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。」

日本郵政の取締役人事について、最終的な権限は総務大臣に付与されている。財務大臣に権限はない。この点は6月4日付記事
「日テレNEWSZERO西川社長関連偏向報道」
に詳しく記述した。

この法律は2005年10月21日に成立した。2005年9月11日の郵政民営化選挙で自民党が大勝し、この選挙結果を受けて成立した法律である。

その法律が、日本郵政の取締役選任について総務大臣の認可権を明記しているのだ。

麻生首相は5月21日の衆議院予算委員会審議で、
「この問題については、所管大臣である総務大臣がしかるべく判断される」
と繰り返し明言した。

その鳩山総務相は、日本郵政が「かんぽの宿」問題で、国民の信用を大きく損ねたことを重視して、西川社長の続投を認めない方針を示した。国民の大半が同意できる理由で、法律の規定に基づいて、総務相の権限を行使しようとしている。

最終判断を下す立場の首相は、国会答弁で「総務相がしかるべく判断する」と明言してきたのだから、もはや、異論をさしはさむ余地はない。麻生首相は「ぶれる」ことなく、西川氏更迭の鳩山総務相の判断を尊重して、最終判断を示すべきだ。

歪みきった発言を示したのが中川秀直元幹事長である。

「鳩山さんが信念を持って主張されるのなら仕方がない。堂々と内閣から去るべきだ」

どのような思考回路から、この判断が出てくるのか。首をかしげざるをえない。

鳩山総務相の発言は法と正義に基づいている。日本郵政株式会社法は、法案がいったん参議院で否決された後、衆議院を解散して多数の議席を確保するという強引な手法を用いて、小泉氏、竹中氏、中川氏などが成立させたものである。その法律の規定に基づいて、鳩山総務相が西川氏の退任を求めているのである。法律を制定した一員として、法律の条文を尊重すべきである。

中川氏らが成立させた法律に沿って行動する鳩山総務相の行動が気に入らないなら、去るべきは中川秀直氏である。自民党から離党して新党でも何でも作ればよいのではないか。

中川秀直氏と石原伸晃氏は、日本郵政を「民間会社」だとして、「民間会社」の人事に総務相が介入するのはおかしいと異を唱えている。中川氏と石原氏の発言の誤りについては、6月4日付記事
「日本郵政は誰のものか中川()氏石原氏の誤り」
に記述した。

日本郵政は経営形態が株式会社になったが、「民間会社」ではない。100%日本政府が出資する「完全国有会社」である。

日本郵政の指名委員会が取締役全員の再任を決めたと言うが、指名委員会のメンバーが誰であるのかを見れば、そこに正統性がないことは明白である。

日本郵政株式会社には西川社長を含めて9名の取締役がいる。9名の取締役は以下の通り。

代表取締役 西川 善文(にしかわ よしふみ)

代表取締役 高木 祥吉(たかぎ しょうきち)

社外取締役 牛尾 治朗(うしお じろう)
ウシオ電機株式会社代表取締役会長

社外取締役 奥田 碩(おくだ ひろし)
トヨタ自動車株式会社取締役相談役

社外取締役 西岡 喬(にしおか たかし)
三菱重工業株式会社相談役

社外取締役 丹羽 宇一郎(にわ ういちろう)
伊藤忠商事株式会社取締役会長

社外取締役 奥谷 禮子(おくたに れいこ)
株式会社ザ・アール代表取締役社長

社外取締役 高橋 瞳(たかはし ひとみ)
青南監査法人代表社員

社外取締役 下河邉 和彦(しもこうべ かずひこ)
弁護士

一方、取締役を選任する「指名委員会」は西川氏を含む5名によって構成されている。その顔ぶれは以下の通り。

委員長 牛尾 治朗(うしお じろう)

委員  西川 善文(にしかわ よしふみ)

委員  高木 祥吉(たかぎ しょうきち)

委員  奥田 碩(おくだ ひろし)

委員  丹羽 宇一郎(にわ ういちろう)

指名委員会委員の全員が日本郵政の取締役である。この5名からなる指名委員会が、自分たち5名を含む日本郵政取締役9名全員の再任を決めたのだ。「お手盛り人事」そのものである。

そもそも、どのように日本郵政取締役が決められたのかが問題である。日本郵政取締役決定に国会の意向は反映されていない。竹中平蔵氏が西川善文氏を起用し、西川氏と特定の政治家によって役員が決定された。

このなかには、経済同友会人脈で宮内義彦氏と関わりの深い奥谷禮子氏が名前を連ねているが、奥谷氏が代表を務める企業は、日本郵政公社から7億円もの業務発注を受けたことが明らかにされている。

取締役のなかに、日本郵政プロパー職員が一人も入っていないことも異常であるし、郵政利用者や特定郵便局の意向を反映する人も一人も入っていない。

株式会社形態に移行した日本郵政は、西川社長のやりたい放題にして構わない。政府が口を差し挟むのは根本的に間違っている。と主張するのは竹中平蔵氏である。中川秀直氏や石原伸晃氏の発言は、竹中氏のこの考え方と重なる。

この竹中氏の考え方が諸悪の根源である。とんでもない大間違いだ。

竹中氏の考え方を端的に示しているのが、竹中氏の著書「構造改革の真実」239ページにある次の表現だ。

「辞書によると、民営化とは、「民間の経営に任せること」とある。文字通り郵政民営化とは、郵政の経営を民間に任せることであり、政府はそれが可能なように、また効率的に行われるように枠組みを作ることである。これで、西川氏に、経営のすべて、民営化のすべてが委ねられることになった。」

 
 「これで」とあるのは、日本郵政の社長に西川氏が内定したことを示している。この言葉は、2005年11月に西川氏起用を決めた時点での竹中氏の判断を示している。

 竹中氏、西川氏をはじめとする郵政民営化推進者たちは、この時点から、大きな勘違いをして、日本郵政を根元から歪めてしまったのだ。これらの勢力を「郵政私物化勢力」と言わざるを得ない。

 彼らは、日本郵政を自分たちのために、好き放題にできると勘違いしたのだ。その結果生まれた行動の氷山の一角が「かんぽの宿疑惑」だった。特定の者に、国民の貴重な財産を不当な安値で払い下げようとしていたことが発覚してしまった。

 竹中氏の感覚が正常と考えられないのは、問題が発覚したのちでさえ、「総務相が口を差し挟むのは根本的に誤っている」と公言してはばからないことだ。

 日本郵政は西川氏や竹中氏、宮内義彦氏などの個人の所有物ではないのだ。100%国有の資産なのだ。したがって、国会や監督官庁、あるいは所管大臣が、厳しく目を光らせて監視し、おかしなことがあれば全面的に介入するのは当然のことなのである。竹中氏が作った法律にその定めが明記されていることを竹中氏は理解できないのだろうか。

 参議院総務委員会は6月9日午後に、日本郵政に関する問題について、集中審議を行なうことを決めた。西川社長も参考人として招致される。竹中平蔵氏は国会による参考人出頭要請から逃げ回っているが、竹中氏が出頭を拒否し続けるなら、国会は竹中平蔵氏の証人喚問を検討するべきだ。

 竹中平蔵氏や菅義偉(すがよしひで)元総務相などが総務相を務めている時代であれば、「郵政私物化」を着々と進展させることも可能だっただろう。日本郵政を監督する立場にある人間が、同じ仲間であれば、誰も気付かぬうちに私物化を進展させ、株式売却を完了させ、「完全犯罪」を成立させることができたかもしれない。

 しかし、「天網恢恢疎(てんもうかいかいそ)にして漏らさず」である。悪事がそのまま通用して良いはずがない。

 麻生首相が西川氏更迭の決断を下せば、麻生内閣の支持率は多少なりとも上昇するだろう。次期総選挙での野党勝利と本格的政権交代実現を強く希望する私としては、この事態を進んでは望まない。しかし、不正義がまかり通ることは許さることでない。麻生首相は正しく決断するべきだ。

 麻生首相が西川氏を更迭しても、市場原理主義者=郵政私物化勢力は、補正関連法案の衆院再可決に反対できない。反対して関連法案が成立しなければ、自民党が全体として壊滅的な打撃を受けるだけだからだ。

 世論調査の大好きなマスメディアは直ちに世論調査を行なうべきだ。回答者への説明、質問の仕方によって回答を誘導できるから、一概に正しい調査結果が得られるとは限らないか、適切な説明をしたうえで調査すれば、圧倒的多数が鳩山総務相の判断を支持するはずである。

 鳩山総務相は「続投を認めないし、辞任もしない」と明言している。

ボールは完全に麻生首相の手の中にある。その麻生首相は、5月21日の国会答弁で、「所管大臣の総務大臣がしかるべく判断される」と明言しているのだ。鳩山総務相が「しかるべく判断した」のだから、その判断を尊重すればよい。

この期(ご)に及んで麻生首相が、手の平を返して西川氏続投を決めるなら、国民からの麻生首相批判が噴出するだろう。麻生首相は月末までに鳩山総務相を罷免(ひめん)しなければならない。世論は反発するだろう。

「市場原理主義勢力」=「郵政私物化勢力」=「売国勢力」は、西川社長続投で麻生内閣の支持率が急落することを狙っているのかも知れない。麻生首相の支持率低下を理由に、自民党総裁選前倒しを要求し、自民党総裁の顔を変えて総選挙に臨もうとしているのではないか。

他方、鳩山総務相は麻生首相が最終的に西川社長更迭を決定することによる麻生内閣支持率の引き上げを狙っているのかも知れない。ひょっとすると麻生首相と「出来レース」を演じていることも考え得る。

いずれにせよ、西川社長続投を支える正統性のある論理は存在しない。鳩山総務相の発言が正論である。日本郵政幹部を刷新し、日本郵政の大掃除をしなければならない。日本郵政の株式が1株たりとも売却されていなかったことは幸いである。

また、後任社長に旧郵政官僚が就任することがおかしいとの主張が目につくが、これもおかしな話である。郵政省、総務省からの「天下り」ならば問題だが、旧郵政省が独立して日本郵政公社、日本郵政になったのであり、旧郵政省職員は日本郵政のプロパー職員なのである。

すべての公的機関の幹部への人材登用は、プロパー職員からの登用を基本とするべきなのだ。民間人起用と言っても、小泉政権以降の人事の大半は、民間人が希望する公職の高い地位を、一種の利権として民間人に付与してきたものである。民間人を支配するための利益誘導の手段として公職ポストが用いられてきた。

実際に政府系機関に民間人が登用されても、その大半は「お飾り」にしか過ぎないのが現状である。「お飾り民間人」を登用するより、プロパー職員を引き上げることを基本とするべきだ。この意味で、旧郵政省職員が日本郵政社長に就任することは、おかしなことではない。日本郵政取締役に旧郵政職員が一人も含まれていないことの方がはるかに異常である。

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2009年6月 5日 (金)

足利事件冤罪本質はDNA精度でなく警察の体質

足利事件で菅谷利和さんが釈放される決め手になったのがDNA鑑定である。しかし、1991年に菅谷さんが逮捕される決め手になったとされているのもDNA鑑定である。

報道で伝えられる説明は次のようなものだ。

DNA鑑定の技術が急激な進歩を遂げている。1991年に菅谷さんが逮捕された時点では、DNA鑑定が導入された当初であり、DNA鑑定の精度が低かった。

精度については、いろいろな説明がなされているが、1991年当時は精度が低く、別人で一致する可能性は1000人に1・2人、あるいは185人に1人であったものが、現在は、4兆7000億人に1人の精度に進化したという。

つまり、1000人に1人の精度で菅谷さんを犯人にしてしまったが、4兆7000億人に1人の技術が確立されたから、冤罪が立証されることになったというのだ。

検察出身の土本某(ぼう)氏は、検察捜査は当時としては適切に対応したが、技術水準に問題があり、このようなことになったと説明し、当時の捜査が適正であったことを強調する。

テレビ報道でもこの説明が繰り返される。1000分の1の精度で菅谷さんが犯人とされたけれども、4兆7000億分の1の精度の技術を利用したことにより、菅谷さんのDNAが犯人のDNAとは異なることが明らかになったというのだ。

本当だろうか。テレビ報道によると、1991年当時のDNA鑑定では、菅谷さんのDNAと犯人のDNAが含まれると考えられる試料から、両者とも「18・30」型のDNAが検出されたとのことである。ところが、再鑑定の結果、菅谷さんのDNAが「18・29」型、犯人のものとされる試料から検出されたDNAが「18・24」型であることが判明したという。

問題は次の点である。仮に当時の技術が1000分の1の精度だったとしよう。そうなると、菅谷さん逮捕は「万にひとつ」ではないにしても、「千にひとつ」の確率では「間違いのない」逮捕だったということになる。ところが、結果的に「万にひとつ」の確率での間違いが生じてしまったということになる。

警察、検察が「千にひとつ」の確率で、間違いのない捜査を行ない、結果的に「万にひとつ」以上の確率が表面化して、冤罪を引き起こしてしまったのなら、警察、検察の捜査には、やむを得ない面があったと言わざるを得ないだろう。検察関係者、テレビ報道は、このストーリーを前提に説明する。

しかし、これは、実態とかけ離れているのではないか。このストーリーが成り立つ確率がゼロとは言えないが、今回の菅谷さんのように、冤罪が明らかになるようなケースは、一万分の一の確率でしか発生しないということになる。

このストーリーでないケースとは、1991年のDNA鑑定が、実は信頼に足るレベルのものではなかった、とのケースである。この疑惑が確実に存在する。

「科学的捜査」、「科学的鑑定」の言葉が使われると、それだけで「絶対的判断基準」とされてしまいがちだ。「週刊現代2009年6月13日号」に、DNA鑑定の第一人者とされる石山いくお氏のコメントが掲載されている。石山氏は、「科学警察研究所の技官は素人集団のようなもので、何回もやり直しをしなければならないような技術しか持っていなかった」と指摘する。

石山氏は当時から、「あと10年もすればDNA再鑑定の要請が山ほど起きるだろう」と言っていたそうである。これより先は、「週刊現代」本誌を読んでいただきたいが、技術的に、当時の科警研では精度の高い鑑定を行える状況が存在しなかったことが示唆されている。

「科警研はDNA鑑定のための予算を取ってしまったから是が非でも成果を出さねばならぬ状況があり」、「無理な鑑定」を行なってしまった可能性が指摘される。

つまり、今回の冤罪発生原因について、二つの仮説が存在することになる。

第一の仮説は、1000分の1の確率で被疑者を特定し、菅谷さんを逮捕したが、4兆7000億分の1の精度を持つ新技術により、当初の鑑定が間違いであることが判明した、というもの。

第二の仮説は、技術的に十分に確立されていない「DNA鑑定」を利用して、間違った結論を出してしまい、その「間違った鑑定結果」に基づいて菅谷さんを誤認逮捕し、その誤認が新しいDNA鑑定技術によって明らかになった、というものだ。

当時の鑑定試料や鑑定技術を再検証する必要があるが、後者の可能性が高いのではないだろうか。第一の仮説と第二の仮説の相違は決定的に重要である。第一の仮説通りであれば、警察・検察の責任は幾分か減殺(げんさい)されるだろうが、第二の仮説が成り立つならば、警察・検察の責任は極めて重大である。

検察・司法関係者は「自白した」ことを、逮捕、起訴、有罪確定の有力な根拠とするが、冤罪であるにもかかわらず、「自白」が存在したことが重大なのだ。無実の人間が好き好んで「自白」することはあり得ない。「自白」が本人に決定的なマイナスになることを知りながら、「自白」すろところまで、強大な力が加えられたことが推察されるのだ。このことが無理な「自白の強要」の存在を証明する何よりの証拠になる。

私が巻き込まれている冤罪事件で、弁護人が上告趣意書でも強調したが、警察当局は、繊維鑑定についても「顕微分光光度計」による鑑定により、紫外部-可視部透過プロファイル、可視部プロファイルを測定範囲とした色調の客観的評価を実現する技術を確立し、保有している。このことが警察庁科学警察研究所の教科書にも記載されている。

私の手指から採取された青色獣毛繊維は駅員が着用していた衣服の構成繊維と「極めて類似している」との鑑定結果を、繊維鑑定専門家である大学教授から提示していただいた。しかし、この繊維鑑定について、警視庁は科学捜査研究所職員による肉眼での原始的な判断しか示さず、裁判所もこの職員の証言しか証拠として採用していない。

今回の足利事件では1997年の段階で、弁護側は最新技術を用いたDNA再鑑定を求めている。この段階で、最新技術を用いた再鑑定が実施されていれば、菅谷さんの被害を、いまよりははるかに軽微に食い止めることができたはずだ。

また、殺人事件の時効まで8年程度の時間が残り、真犯人発見も可能になったかも知れない。

「無辜の不処罰」の根本原則を重視するなら、信頼に足りる最新の技術を用いて、真相解明に最善を尽くす努力が注がれるべきことは当然である。私が巻き込まれた冤罪事件では、私の無実を確実に証明する防犯カメラ映像が警察の手で闇に葬られてしまった。これでは「真相」を解明する捜査ではなく、「犯罪」を捏造(ねつぞう)する捜査になってしまう。

足利事件においても、予算を獲得できた「DNA鑑定」を「活かす」ために、犯罪を「捏造」する捜査が行われた可能性を否定できない。

テレビ番組では司会者が、あたかもこれまでずっと菅谷さんの支援者であったかのごとく、「これからの人生をぜひ楽しんで下さい」と発言するが、事件報道において、「無罪推定の原則」を踏まえず、検察リーク情報を右から左に垂れ流してきたマスメディアの報道姿勢について反省の弁を述べるのが先ではないか。

総理大臣が「法を犯したから逮捕される」と公言してはばからないこの国で、「推定無罪の原則」の重要性を説くことは難しいが、日本の風土、メディアの報道姿勢を根本から改めるとともに、警察・検察・司法の近代化をなんとしても実現しなければならないと思う。

菅谷さんはあくまでも氷山の一角である。氷山の下に隠れている多くの冤罪犠牲者の存在を忘れてはならない。冤罪が生まれる実態については拙著『知られざる真実-勾留地にて-』をご高覧賜りたい。

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足利事件菅谷さん釈放麻生首相の不熱意発言

「栃木県足利市で1990年、保育園女児=当時(4)=が誘拐、殺害された事件で無期懲役が確定し、再審請求中の菅家利和さん(62)が4日午後、服役先の千葉刑務所から釈放された。91年12月の逮捕から17年6カ月ぶり。東京高裁は今後、再審開始を決定する見通し。」
共同通信配信記事2009年6月4日23時09分)

 無期懲役の刑が確定し、刑の執行中にあった菅谷利和さんが釈放された。心から祝福申し上げたい。しかし、失われた17年6カ月は戻ってこない。

菅谷さんが釈放されたのは、再審請求審で弁護側、検察側がそれぞれ推薦した鑑定人2人が先月、女児の肌着に残った体液のDNA型と菅家受刑者の型について、いずれも「DNA型が一致しない」とする鑑定結果を高裁に報告したことによる。

以下、朝日新聞配信記事から引用する。

「東京高検は4日、女児の肌着に残った体液のDNA型と菅家受刑者の型が一致しないとするDNA型の再鑑定結果を受けて、「新鑑定が無罪を言い渡すべき明らかな証拠にあたる可能性が高いと判断した」とする意見書を東京高裁(矢村宏裁判長)に提出した。あわせて菅家受刑者の刑の執行を停止する手続きを取った。この意見書により、再審が始まることは確定的になった。」

菅谷さんは4日に開かれた記者会見で、取り調べの模様を次のように述べた。

「2件の女児殺害事件を認めたのも、刑事に無理やり体を揺さぶられて「おまえがやったのは分かっている」と言われたから。髪を引っ張られたり、足でけ飛ばされたりもし、どうにもならなくなって「やりました」と言ってしまいました。」
河北新報2009年6月4日

菅谷さんは6月4日夜の日本テレビ「NEWSZERO」に生出演した。菅谷さんは、いま一番やりたいことの質問に対して、
「同じような状況で苦しんでいる方のために力になりたい」
と話された。

フランス人権宣言第9条
「何人も、有罪と宣告されるまでは無罪と推定される。ゆえに、逮捕が不可欠と判断された場合でも、その身柄の確保にとって不必要に厳しい強制は、すべて、法律によって厳重に抑止されなければならない。」

に示される「無罪推定の原則」

 「推定無罪の原則」がデモクラシーの根本原理の一つであるが、これを言い換えたものが、

「10人の罪人を逃しても、1人の無辜(むこ=無実の人)を処罰することなかれ」

の言葉である。「無辜(むこ)の不処罰」と呼ばれる根本原則だ。

 ネット上にある「無辜の不処罰」コラム記事から、重要な指摘を転載する。

「無罪推定の原則」「防御(ぼうぎょ)権の保障」など近代刑事手続きの諸原則はこの原点を実現するためと言ってよい。それゆえ、現代の刑事手続きが語られる場合にしばしば引用される重要なことわざである。

ただ残念なことに、日本では、警察や検察はもとより裁判官や多くの法学者が、このことわざを本当に重要なものと考えているとは思えない。ある裁判官は、無罪判決を出す時に「犯罪者を取り逃がすことになったら」と心配するそうだ。「野放しの犯罪者が犯罪を繰り返したらどうする」と詰め寄られた時に、「それでも無実の者が処罰されるよりましだ」と言い切る者が何人いるだろうか。

それどころか、日本の現状は、「処罰された者が無辜ではあってはならない」とこのことわざを転倒させ、再審の門を固く閉ざして誤判の訂正と無辜の救済を拒否している。

国家権力の規制を目的とする憲法の下に刑訴法(けいそほう=刑事訴訟法)が存在する以上、その目的は「犯罪者」をいかに効率良く処罰するかではなく、十分な証拠もなしに片端から犯人扱いしかねない国家に、でたらめな処罰させないということでなければならない。だから、検挙率や有罪率の高さは日本の刑事手続きの欠陥を示しているのだ。

しかし、日本の刑事手続きの関係者は、そうは考えず、より効果的な捜査のためと称して、警察の拷問的取り調べや職務質問の強制、盗聴など違法な捜査手法を次々に合法化し、防御権を踏みにじってきた。その彼らに、このことわざを語る資格があるだろうか。」

(ここまで転載。太字は本ブログによる。)

法律の専門家の言葉であるようなので、一般の人にはやや難解な部分があるが、極めて重要なことがらを指摘をしている。

無実の人間に罪を着せ、刑罰を科すことはあってはならないのである。しかし、冤罪は後を絶たない。日本の民主化、近代化を考えるのなら、警察・検察・司法の近代化を何よりも優先しなければならない。

菅谷さんに向かって多くの人が「おめでとうございます」の言葉をかけるが、何とも言い表せぬ複雑な思いがする。菅谷さんも「うれしい。良かった」と語るが、記者会見でもふと現実を振り返ると、言葉に表せぬ怒りがこみ上げてくるのが伝わってくる。

「釈放」や再審での無罪確定は、取り返しのつかない「巨大なマイナス」を「ほんのわずかに穴埋めする」ものであって、菅谷さんから奪い取った「巨大なマイナス」に比較すれば、まさに「大河の一滴」にしか過ぎない。

富山でも冤罪事件が明らかになった。このケースでは、刑の執行が終了した後に冤罪が明らかにされた。

菅谷さんがテレビ番組で「同じような状況で苦しむ人のためになりたい」と述べられたが、菅谷さんの「他者を思う心」に心を打たれた。「冤罪」は決して許されないとの強い思いが湧き上がるのだと思う。

「想像力」という言葉があるが、状況を変えるためには、すべての人が「想像力」を持つことが必要だ。

拙著『知られざる真実-勾留地にて-』プロローグに「想像力」について書いた。映画監督の山田洋二氏の言葉をひいた。

「一言で言えば想像力。想像することは、つまり思いやること」

「たとえばイラク戦争の空爆で死んでいく子どもや女性たちがどんなにつらい思いをしているのか。想像することは、つまり思いやること。いまの時代、注意深く相手を観察する能力がとても欠けていると思います。」

 冤罪はこの世に存在する「過ち」のなかでも、見落としてはならない重大な「過ち」のひとつである。人口に対する発生率が小さいから、経験者の力だけではどうにもならない。すべての人が想像力を働かせて、仕組み、制度を変えなければ事態は変わらない。

 取り調べ過程を完全録画、あるいは完全録音する「取り調べの全面可視化」の要請は、この問題意識から生まれている。民主党は「取り調べ全面可視化法案」を国会に上程し、4月24日、参議院で可決された。

 しかし、自民党は反対している。上記「無辜(むこ)の不処罰」のコラム記事の表現を用いれば、
「効果的な捜査のためと称して、警察の拷問(ごうもん)的取り調べや職務質問の強制、盗聴など違法な捜査手法を次々に合法化し、防御権を踏みにじる」
ことを容認する姿勢が感じられる。

6月4日のぶら下がり記者会見で麻生首相は次のように述べた。朝日新聞配信記事から転載する。

――総理、この件を受けて、冤罪防止のためにさらなる取り調べの可視化を求める議論が強まると思いますが、総理のお考えをお聞かせ下さい。

 
麻生首相「あ、可視化が、かの、必ずしも、それにつな、可視化にしたからといって途端に、あの、よ、それが良くなるという感じはありません」

――総理、そうは言っても、無実の人が捕まって刑に服することはあってはならないことだと思いますが…。

 
麻生首相「それ今答えた通りです」 

――そういった国家のあり方を考える上で…。

 
麻生首相「国家のあり方ってどういう意味です?」 

――冤罪が起きないような国にするために、総理は被疑者の言い分や自白がちゃんと録音されている可視化というのは必要だと思いませんか。

 
麻生首相「僕は、基本的、基本的には、一概に、可視化すれば直ちに冤罪が減るという感じがありません」

(ここまで転載)

 「可視化すれば直ちに冤罪が減るという感じがしない」が、可視化に「反対する」理由になると考えているのだろうか。

 全面的な「可視化」は欧米諸国だけでなく韓国、香港、台湾、モンゴルなどでも導入されている。「可視化」は人権に配慮したうえで、「被害者」や「目撃証人」にも適用されなければならない。被害者や目撃証人の供述調書がどのように作成されたのかが、事実認定での重要な判断要因になる場合があるからだ。

 「国策捜査」「冤罪」について、広く「真実」が伝えられる必要がある。そのうえで、制度、仕組みを根本的に改める必要がある。

 DNA鑑定に関連して、見落とせないもうひとつの重大事案がある。詳細については、改めて記述したいが、被疑者が一貫して犯行を否認し、無罪を主張したにもかかわらず、DNA鑑定が決め手となって死刑が確定した「92年飯塚事件」である。

被疑者が無実を訴え続けるなかで昨年10月28日、死刑が執行されてしまった。

 DNAの鑑定方式は足利事件と同じMCT118型だった。「週刊現代2009年6月13日号」が詳しく伝えている。事件があったのは福岡県飯塚市、麻生首相のお膝元である。

 私は当事者でもあるが、無辜の人間に罪を着せ、罰することは決してあってはならない。

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2009年6月 4日 (木)

日本郵政は誰のものか中川(秀)氏石原氏の誤り

麻生首相は日本郵政西川善文社長更迭問題について、国会答弁で繰り返し、
「所管大臣である総務大臣が適切に判断する。」
と明言してきた。

所管大臣の鳩山邦夫総務大臣は、西川社長の続投を認めない方針を明言した。

日本郵政株式会社法は第九条に、
「会社の取締役の選任及び解任並びに監査役の選任及び解任の決議は、総務大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。」
と定めている。

この三者を踏まえて判断すれば、西川社長は更迭される。

ところが、麻生首相の発言が急変した。

「鳩山総務大臣が所管大臣、株主が財務大臣、人事をやるのが官房長官、三者で話う合うのがいいんじゃないか

国会答弁とまるで違う。またまた、「ぶれぶれ」炸裂だ。

株主は財務大臣ではない。株主は日本政府である。政府資産を財務省が一元管理しているから、政府を代表して株主総会に出席する。

政府のなかで、日本郵政株式会社の取締役等選任についての権限を有するのは総務大臣である。したがって、総務大臣の判断が政府の判断になる。総務大臣の判断を総理大臣が否定する場合、総理大臣は総務大臣を罷免(ひめん)して内閣総理大臣の意向に反しない判断を示す人物を総務大臣に任命することになる。

財務大臣が日本郵政の人事に独自に権限を持つわけではない。

「人事をやるのが官房長官」の発言は「謎」である。

日本郵政取締役人事がいつから内閣官房長官の所管になったのか。

日本は法治国家である。法律に基づいて行政が行なわれるのは当然のことだ。

法治国家の行政権の長である首相が、このような正統性を持たない政権運営をすることは許されない。

日本郵政株式会社法は、総務大臣に日本郵政株式会社取締役等選任に関する最終権限を付与している。

日本郵政株式会社法第九条が、
総務大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。」
と明記しているのは、日本郵政の指名委員会、取締役会、株主総会の決定よりも、最終的な総務大臣による決定を重いものとして扱っていることを示している。

御用メディアは鳩山総務相が一人で反乱を起こしているかのような伝え方をするが、行政の最高責任者である麻生首相が、この問題について、
「所管大臣の総務大臣が適切に判断する」
と明言し、総務大臣の判断に委ねる方針を国会答弁で何度も明言したのである。

批判するならその対象は、手の平を返したような発言の「ぶれ」を示した麻生首相でなければおかしい。

鳩山総務大臣が職権を濫用して、自分の利益を拡大するために、人事に横やりを入れ、情実人事を行なうのなら、鳩山総務相を批判してもよいだろう。しかし、鳩山総務相が主張する西川社長更迭方針は「正論」そのものである。

この問題に関して「正義」は鳩山総務相の側にある。

日本郵政は2400億円の資金を投じた、固定資産税評価基準額が856億円の貴重な国民資産を、極めて不透明な手続きを経て、オリックス不動産に109億円で売却しようとしたのである。国会での追及により、この売却先決定が、極めて不透明で不正な手法によって行われたことが明らかになった。

だからこそ、野党議員12名が西川善文社長を刑事告発したのである。刑事告発は東京地検に正式に受理された。

「かんぽの宿」売却先決定は、西川社長直属の特命チームが担当したが、このプロジェクトの意思決定者は以下の三名と指摘されている。

日本郵政取締役代表執行役社長 西川善文
同専務執行役 横山邦男
同執行役   伊藤和博

 野党議員は西川社長に引き続き、横山氏と伊藤氏についても、刑事告発する見通しである。

疑惑はこれだけに留まらない。

日本郵政が西川社長の出身母体である三井住友ファイナンシャルグループを中心に三井住友系列の私企業に利益供与を図っていたとの疑惑も浮上している。以下の事実が指摘されている。

①郵便局会社が取り扱う第三分野保険で、アフラックのがん保険とともに住友生命の医療保険が選ばれた
②変額個人年金保険で、住友生命、三井住友海上メットライフ生命が選ばれた
③ゆうちょのカード事業で、三井住友ビザカードが選ばれた
④従業員持ち株会の幹事証券業務に大和証券SMBCが選ばれた
などの事実が明らかにされている。

また、住友グループ企業関係者が日本郵政グループ幹部に多数配置されている事実も明らかにされている。

日本郵政
執行役副社長  寺阪元之(元スミセイ損保社長)
常務執行役   妹尾良昭(住友銀行、大和証券SMBC)

郵便局
代表取締役社長 寺阪元之(元スミセイ損保社長)
専務執行役   日高信行(住友海上火災)
常務執行役   河村 学(住友生命保険)

ゆうちょ銀行
執行役副社長  福島純夫(住友銀行、大和証券SMBC)
常務執行役   向井理奇(住友信託銀行)
常務執行役   宇野 輝(住友銀行、三井住友カード)
執行役     村島正浩(三井住友銀行)

こうした現実を踏まえれば、西川社長更迭は当然の措置である。

西川社長続投を主張する自民党議員は、このような「郵政私物化」の実態が明らかにされるなかで、その直接の責任者であり首謀者と考えられる日本郵政西川社長を擁護する立場を示すのであるか。総選挙で堂々とその主張を明示できるのか。

5月27日に鳩山由紀夫民主党代表と麻生太郎首相との間で実施されたのち、世論調査が行われていない。総選挙が近づき、毎月末に世論調査が実施されてきたのに、なぜ、世論調査が急に中止になったのか。

小沢代表秘書逮捕の問題で、頼まれもしないのに世論調査をしつこいほどに繰り返していたマスメディアは、この問題こそ世論調査すべきではないのか。

世論調査をすれば、党首討論では鳩山由紀夫代表圧勝の結果が出ることは明らかだろう。世論調査を実施したが、結果を見て発表を取りやめたのではないか。

かんぽの宿疑惑では、国民の貴重な資産を破格の安値で特定企業に横流ししようとした事実が明らかにされ、その責任を明確化するために所管大臣が社長を更迭する方針を明示した。事実を正しく伝えたうえで世論調査をすれば、圧倒的多数の国民が西川氏更迭に賛成するだろう。

西川社長の続投を必要とする「売国勢力」、「外国勢力」からは、外資系保険会社を通じて巨額の広告費が多くのテレビメディアに投入され、メディア支配力が強化されている。マスメディアの大半が、本来の役割を放棄して権力に迎合し、歪んだ獣道(けものみち)を歩んでしまっている。

テレビのインタビューで、石原伸晃氏と中川秀直氏が口裏を合わせたかのように、間違った発言をした。

民間会社の問題に総務相が介入しないほうがよい。」

 「民間会社」とは日本郵政株式会社のことだろうか。

 日本郵政株式会社は「民間会社」ではない。正真正銘の「完全国有会社」である。「完全」と言っても森田健作氏の辞書にある「完全」ではない。

 日本郵政株式会社はその株式の100%を政府が保有する純然たる「国有会社」である。「国有会社」である以上、政府、所管官庁、国会、そして国民が厳しく監視しなければならないのだ。

 西川善文社長の続投方針を決めたのは、日本郵政の「指名委員会」であるが、この指名委員会のメンバーは以下の5名である。

委員長 牛尾 治朗(うしお じろう)

委員  西川 善文(にしかわ よしふみ)

委員  高木 祥吉(たかぎ しょうきち)

委員  奥田 碩(おくだ ひろし)

委員  丹羽 宇一郎(にわ ういちろう)

 これらの委員は、全員が日本郵政の取締役である。

 内輪の人々が、自分たち取締役全員の再任を決めただけのことである。

 世論調査が大好きなマスメディア各社は、このような問題こそ、詳細な説明をしたうえで、国民がどのような判断を示すかを調査するべきだろう。

 ある時は、誰にも頼まれないのに毎日のように「世論調査」なるものを振りかざすのに、どうしてこのような、世論調査が求められる局面では、死んだふりをするのだろうか。

 国民は声こそ出さないが、冷静に見つめていると思われる。鳩山総務相は「更迭はありえても辞任はあり得ない」と明言している。

 「総務大臣がしかるべく判断する」と断言した麻生首相が、鳩山総務相の判断を無視して西川社長の続投を決めるなら、国民は、麻生首相も結局、「市場原理主義者」、「売国勢力」に名実ともに取りこまれたと判断するだろう。

 麻生首相は首相になったのだから、せめて、ただひとつでも筋を通した実績を歴史に残すべきではないのだろうか。国民の目を侮(あなど)ってはいけない。

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日テレNEWSZERO西川社長関連偏向報道

「人気ブログランキング」で一時的にせよ初めて、第1位を獲得することができました。先日来、多くの皆様から温かな励ましのお言葉を賜り、また、多くの皆様が正義の声を発して下さったお陰だと心から感謝申し上げます。ランキングは目的でなく、皆様とともに大きな仕事を成し遂げてゆくためのひとつの手段に過ぎません。

また、1位を獲得することはさまざまな状況を考えると容易でないと思いますが、微力ながら、一歩ずつ、力を尽くして参りたいと思います。日本の政治を国民にとって良いものにしてゆくために、なにとぞ今後とも温かなご支援を賜りますように心よりお願い申し上げます。

「植草事件の真相掲示板」にも多くのお声をいただきまして、誠にありがとうございます。掲示板への書き込みをなかなか行なえませんが、すべてありがたく拝読させていただいております。今後ともよろしくお願い申し上げます。

日本郵政の西川善文社長更迭問題が引き続き緊迫した局面を迎えている。

数日前まで麻生首相は、国会答弁やぶら下がり会見で以下のように述べていた。

「その問題は(所管大臣である)総務相がしかるべく判断されることと思います。」

そして、鳩山総務相が西川善文日本郵政社長更迭の意向を明確に示した。

したがって、麻生首相はこの意志表示を踏まえて最終決断を下せばよい。

日本郵政の取締役選任に関する「法的根拠」は日本郵政株式会社法第9条である。この条文を改めて下記に掲載する。

(取締役等の選任等の決議)

第九条

 会社の取締役の選任及び解任並びに監査役の選任及び解任の決議は、総務大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。 

つまり、日本郵政取締役等選任については、総務相が最終的な決定権限を有している。首相が総務相に判断を委ね、総務相が西川社長更迭を明確に表明したのだから、これが最終決定にならなければおかしい。

NHKを除くマスメディアに、西川社長更迭をどうしても回避しなければならない「市場原理派勢力」=「郵政私物化=郵政米営化」勢力が、強烈な圧力を加えているのだろう。報道が歪んでいる。

昨日6月3日夜の日本テレビ「NEWS ZERO」。

おかしな説明を始めた。

日本郵政の取締役選任に権限を持つのは「総務相」と「財務省」の二人。
麻生首相は、西川社長の続投を前提に両者に調整を委ねた。
さらに、西川社長更迭を求める鳩山総務相の行動の裏には、政局的な思惑があることが強調された。

この報道は、鳩山総務相の主張が「純粋」なものでないとの「イメージ」を植え付けようとするものだ。卑劣な手法と言わざるを得ない。

日本郵政株式会社法の条文を改めて下記に示す。

(取締役等の選任等の決議)

第九条

 会社の取締役の選任及び解任並びに監査役の選任及び解任の決議は、総務大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。 

(事業計画)

第十条

 会社は、毎事業年度の開始前に、総務省令で定めるところにより、その事業年度の事業計画を定め、総務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。 

(定款の変更等)

第十一条

 会社の定款の変更、剰余金の配当その他の剰余金の処分(損失の処理を除く。)、合併、会社分割及び解散の決議は、総務大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。 

(財務諸表)

第十二条

 会社は、毎事業年度終了後三月以内に、その事業年度の貸借対照表、損益計算書及び事業報告書を総務大臣に提出しなければならない。 

(監督)

第十四条

 会社は、総務大臣がこの法律の定めるところに従い監督する。 

 総務大臣は、この法律を施行するため特に必要があると認めるときは、会社に対し、その業務に関し監督上必要な命令をすることができる。 

(報告及び検査)

第十五条

 総務大臣は、この法律を施行するため特に必要があると認めるときは、会社からその業務に関し報告をさせ、又はその職員に、会社の営業所、事務所その他の事業場に立ち入り、帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。 

 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人にこれを提示しなければならない。 

 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

 これらの規定に関連して、日本郵政株式会社法は罰則規定も設けている。以下に転載する。 

 第四章 罰則 

第十八条

 会社の取締役、執行役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)、監査役又は職員が、その職務に関して、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、三年以下の懲役に処する。これによって不正の行為をし、又は相当の行為をしなかったときは、五年以下の懲役に処する。 

 前項の場合において、犯人が収受した賄賂は、没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。 

第十九条

 前条第一項の賄賂を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、三年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。 

 前項の罪を犯した者が自首したときは、その刑を減軽し、又は免除することができる。 

第二十一条

 第十五条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合には、その違反行為をした会社の取締役、執行役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)、監査役又は職員は、三十万円以下の罰金に処する。

(転載ここまで)

ここには、財務大臣の権限に関する規定がない。財務大臣の権限については、唯一、第十六条に規定がある。

(財務大臣との協議)

第十六条

 総務大臣は、第八条第一項、第十条又は第十一条(定款の変更の決議に係るものにあっては、会社が発行することができる株式の総数を変更するものに限る。)の認可をしようとするときは、財務大臣に協議しなければならない。

 つまり、第八条第一項、第十条又は第十一条の認可に際しては、総務大臣が財務大臣と協議しなければならないことを定めているのである。第十条および第十一条については、上記の通りである。第八条を示す。

(株式)

第八条

 会社は、会社法第百九十九条第一項に規定する募集株式(第二十二条第三号において「募集株式」という。)若しくは同法第二百三十八条第一項に規定する募集新株予約権(同号において「募集新株予約権」という。)を引き受ける者の募集をし、又は株式交換に際して株式若しくは新株予約権を交付しようとするときは、総務大臣の認可を受けなければならない。 

 会社は、新株予約権の行使により株式を交付した後、遅滞なく、その旨を総務大臣に届け出なければならない。

 つまり、事業計画、定款の変更、および株式については、財務大臣との協議しなければならないことを定めているが、取締役等選任については、この定めがない。取締役等選任は総務大臣の専権事項である。

 財務大臣に人事権があるかのように伝えた日本テレビ「NEWS ZERO」の報道は正しくない。西川社長更迭を回避するために、事実をねじ曲げて報道しているものと考えられる。

 また、麻生首相は国会答弁で、「(所管大臣である)総務相が適切に判断されることと考える」と明言してきた。このことを伝えなければ中立公正な報道とは言えない。

 日本経済新聞は、日本郵政株式会社が「委員会設置会社」で取締役等選任を「指名委員会」が担っており、この指名委員会が西川社長を含む取締役の再任を決めたことを西川社長続投の正当な根拠とするが、これもまったくおかしい。

 日本郵政は株式を100%政府が保有する完全国有会社である。したがって、政府は国民の利益を守るために、日本郵政に全面的に介入する責任と義務を負っている。日本郵政株式会社法が極めて強い総務大臣の権限を定めているのはこのためと解釈される。

 日本郵政がどのような経営形態を採用しようとも、大きな問題でない。「かんぽの宿」問題のような重大な不祥事が表面化し、その不祥事が、西川社長に直結する特命チームによって引き起こされたのであるから、西川社長の更迭は避けて通れない。

 さらに言えば、日本郵政の取締役の構成、指名委員会の構成メンバーは著しく偏っている。

 日本郵政株式会社の取締役は以下の通り。

代表取締役 西川 善文(にしかわ よしふみ)

代表取締役 高木 祥吉(たかぎ しょうきち)

社外取締役 牛尾 治朗(うしお じろう)
ウシオ電機株式会社代表取締役会長

社外取締役 奥田 碩(おくだ ひろし)
トヨタ自動車株式会社取締役相談役

社外取締役 西岡 喬(にしおか たかし)
三菱重工業株式会社相談役

社外取締役 丹羽 宇一郎(にわ ういちろう)
伊藤忠商事株式会社取締役会長

社外取締役 奥谷 禮子(おくたに れいこ)
株式会社ザ・アール代表取締役社長

社外取締役 高橋 瞳(たかはし ひとみ)
青南監査法人代表社員

社外取締役 下河邉 和彦(しもこうべ かずひこ)
弁護士

西川社長を含む取締役全員の再任を決めた「指名委員会」のメンバーは以下の通りである。

委員長 牛尾 治朗(うしお じろう)

委員  西川 善文(にしかわ よしふみ)

委員  高木 祥吉(たかぎ しょうきち)

委員  奥田 碩(おくだ ひろし)

委員  丹羽 宇一郎(にわ ういちろう)

 身内の関係者だけで再任を決めているのだ。

 また、「かんぽの宿」を検証したと言われる「第三者検討委員会」もすでに本ブログで示してきたように、「お手盛り委員会」である。

 西川社長更迭が麻生首相に拒否された場合には、鳩山総務相が「辞任も辞さない」との報道があるが、これも正しくない。

 鳩山総務相は「なんで辞任しなければならないのか」と発言しており、鳩山総務相の判断が否定される場合には、麻生首相が総務相を「罷免(ひめん)」するべきだとの見解を示している。

 問題は麻生首相の行動である。「総務相がしかるべく判断される」と発言し続けてきたのに、いざ総務相が「西川氏続投を認めない」との明確な判断を示すと、今度は「鳩山総務相、河村官房長官、与謝野財務相の三人で協議してほしい」とは一体何か。

 だから「ぶれぶれ首相」と呼ばれてしまうのだ。

 国民は貴重な国民財産を不透明に特定業者に横流ししようとした「かんぽの宿」疑惑を極めて重大に受け止めている。その中心人物の西川善文社長続投をまったく支持していない。

 麻生首相が「売国勢力」に押し切られるなら、その瞬間に麻生首相は「政治的な死」を迎えるだろう。西川社長を含む取締役刷新の方針を早急に確定するべきだ。

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2009年6月 3日 (水)

麻生首相の矜持が問われる西川社長更迭問題

日本郵政の西川善文社長更迭問題が緊迫した局面を迎えている。鳩山総務相は西川氏更迭の意向を明確に示し、麻生首相がこの意向を拒絶する場合は、総務相を辞任する意向を示唆した。

この問題について、麻生首相は「担当相の総務相がしかるべく判断する」と答弁してきた。

日本郵政株式会社法は総務相に強い監督権限を付与し、取締役等選任についても総務相の認可権を明確に定めている。

日本郵政株式会社法は本則が23条からなる、簡素な法律であるが、そのなかから、総務相の権限を定めている条文を以下に転載する。

(取締役等の選任等の決議)

第九条

 会社の取締役の選任及び解任並びに監査役の選任及び解任の決議は、総務大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。 

(事業計画)

第十条

 会社は、毎事業年度の開始前に、総務省令で定めるところにより、その事業年度の事業計画を定め、総務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。 

(定款の変更等)

第十一条

 会社の定款の変更、剰余金の配当その他の剰余金の処分(損失の処理を除く。)、合併、会社分割及び解散の決議は、総務大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。 

(財務諸表)

第十二条

 会社は、毎事業年度終了後三月以内に、その事業年度の貸借対照表、損益計算書及び事業報告書を総務大臣に提出しなければならない。 

(監督)

第十四条

 会社は、総務大臣がこの法律の定めるところに従い監督する。 

 総務大臣は、この法律を施行するため特に必要があると認めるときは、会社に対し、その業務に関し監督上必要な命令をすることができる。 

(報告及び検査)

第十五条

 総務大臣は、この法律を施行するため特に必要があると認めるときは、会社からその業務に関し報告をさせ、又はその職員に、会社の営業所、事務所その他の事業場に立ち入り、帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。 

 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人にこれを提示しなければならない。 

 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

 これらの規定に関連して、日本郵政株式会社法は罰則規定も設けている。以下に転載する。 

 第四章 罰則 

第十八条

 会社の取締役、執行役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)、監査役又は職員が、その職務に関して、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、三年以下の懲役に処する。これによって不正の行為をし、又は相当の行為をしなかったときは、五年以下の懲役に処する。 

 前項の場合において、犯人が収受した賄賂は、没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。 

第十九条

 前条第一項の賄賂を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、三年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。 

 前項の罪を犯した者が自首したときは、その刑を減軽し、又は免除することができる。 

第二十一条

 第十五条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合には、その違反行為をした会社の取締役、執行役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)、監査役又は職員は、三十万円以下の罰金に処する。

(転載ここまで)

 極めて強い監督権限が法律に定められている。

 日本郵政株式会社が委員会設置会社であり、取締役等の選任を「指名委員会」が行なうこととされているが、このような日本郵政株式会社法の組織形態以前に、日本郵政株式会社法の規定が、一義的に重要な意味を持つ。

 竹中平蔵氏は小泉・竹中勢力の影響力が総務相に及ぶことを前提に、総務相に極めて強い認可権を付与したのだろうが、国民にとって幸いなことに、「郵政私物化」にメスを入れる人物が総務相に就任した。

 麻生政権の発足に際して鳩山邦夫氏は総務相就任を志願したことが伝えられているが、「郵政私物化」の動きを早い段階で捕捉していたのだと考えられる。

①麻生首相は総務相が「しかるべく判断する」とし、

②鳩山総務相が西川氏更迭の見解を明言し、

 
③日本郵政株式会社法が総務相の強力な認可権限を規定している。

この三点がそろっているのだから、結論ははっきりしている。

マスメディアが正常ならば、この三点が示された段階で、
「日本郵政西川社長更迭へ」
の見出しを打つのが当然だ。

ところが、実際には、
「鳩山総務相辞任も」
の見出しが示されている。

最後は麻生首相の決断が焦点である。

「かんぽの宿」疑惑は重大な問題である。

国民の貴重な財産が、破格の安値で、特定の利害関係者に、極めて不透明なプロセスで払い下げられようとしたのである。

現に、民主党、社民党、国民新党の国会議員12名により、西川社長は東京地検に刑事告発されているのである。

不正が明確になれば、西川社長らの刑事責任が追及されることになる。

日本郵政が設置した第三者検討委員会は、西川社長が指揮して設置した、いわゆる「お手盛り」委員会で、その人選を見ても、とても客観的な批評に堪えられるものでない。

そもそもの問題は、西川社長を起用した竹中平蔵氏の「郵政民営化」についての根本的に誤った考え方にある。竹中氏の考え方を竹中氏の著書と、新聞への投稿から改めて確認する。竹中氏は以下のように記述する。

「辞書によると、民営化とは、「民間の経営に任せること」とある。文字通り郵政民営化とは、郵政の経営を民間に任せることであり、政府はそれが可能なように、また効率的に行われるように枠組みを作ることである。これで、西川氏に、経営のすべて、民営化のすべてが委ねられることになった。」
(『構造改革の真実』239ページ)

また、本年1月19日付産経新聞への寄稿「かんぽの宿は“不良債権”」には、竹中氏の以下の主張が示されている。

「(「かんぽの宿」売却の時期や価格の判断は)市場や経営を知らない政治家や官僚に判断できる問題ではない。経営者が判断するべき問題である。そもそも民営化とは、民間の判断に任せることであり、経営判断の問題に政治が口出しすること、しかも機会費用の概念を理解しない政治家が介入することは、根本的に誤っている。」

 日本郵政の株式が市場で売却され、日本郵政の支配権が国から完全に離れたのなら、竹中氏の発言も妥当性を持つだろう。それでも、日本郵政株式会社法が残る限りは総務相に強い権限は残る。

 しかし、現状では、日本郵政グループの株式は100%が政府に保有されている。日本郵政の運営形態が「株式会社」に変わっただけで、日本郵政グループは完全な国有会社なのである。

 国有会社について、所管官庁の大臣が強い権限を有し、国有会社の経営に深く介入するのは、国民の利益を守るためである。

 今回の一連の経緯を見る限り、正義は鳩山総務相の側にある。

 2400億円の資金を投じた、固定資産税評価基準額が856億円の貴重な国民資産が、極めて不透明な手続きを経て、オリックス不動産に109億円で売却されようとしたのである。

 日本郵政が早々にオリックス不動産への売却契約を白紙に戻したのは、オリックス不動産の選定に問題があったことを自ら認めたからではないのか。このような重大な不祥事が明らかになって、担当相が更迭の意向を示しているのに、その方向に事態が進まないことが異常である。

 「かんぽの宿」疑惑は、「郵政民営化」の実態を示す「縮図」である。「郵政民営化」自体が壮大な「私物化」と「米営化」の疑惑に包まれている。問題が明らかになった以上、経営陣を刷新するべきことは当然だ。

 新聞が「西川社長を更迭すると改革後退の印象を招く」と伝えるが、このような論評を示すことが、マスメディアの堕落を物語っている。不正が発覚して、その原因を取り除くことの、どこが「改革後退」なのか。

 これを「改革後退」とするなら、「改革」など無用の長物である。

 自民党内「市場原理主義者」、「売国勢力」が西川社長更迭を阻止しようと暗躍していると伝えられている。日本郵政公社時代の不動産売却を含め、「郵政私物化」に関与する勢力が少なくないことを示唆している。

 菅義偉(すがよしひで)元総務相が、麻生首相に西川氏更迭の場合には補正予算関連法案等の衆議院再可決での造反を示唆し、西川氏続投を要請したとの観測記事を紹介したが、西川氏が更迭され、西川社長時代の日本郵政の悪行が白日の下に晒(さら)されることを強く警戒する勢力が存在するのだろう。

 3月4日に行われた定額給付金法案の衆議院再可決では、小泉元首相が造反の旗を振ったにもかかわらず、同調したのはたったの一人だった。関連法案が衆議院で再可決されなければ、補正予算の執行に重大な支障が生じる。自民党議員に造反の選択肢は存在しない。

 「総務相がしかるべく判断する」と明言した麻生首相が、鳩山総務相の判断を無視して西川社長続投を決断するなら、鳩山総務相は辞任するだろう。このとき、麻生首相は「売国勢力」に心を売った首相として、その政治生命を終えることになるだろう。

 取るべき方向は明確だ。国民は麻生首相の政治家としての「矜持(きょうじ)」を注視している。

 捕捉だが、6月4日に「主催者の会」が主催する緊急フォーラムが開かれることを、「どなんとぅ」様が告知して下さったので、お知らせする。企画の立案過程をまったく存じ上げないので詳細がわからないが、志ある者が連帯して政権交代実現に向けて力を結集してゆけるよう取り組んで参りたいと思う。

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「小沢事件の真相と政権交代」動画配信スタート

天木直人氏と行なった対談を収録した動画第2巻の配信が始まった。

収録は2009年5月15日で、第1巻、第2巻ともに約65分間の対談である。

第1巻タイトルは
「小泉竹中経済政策の罪~日本経済混迷の真相~」

第2巻タイトルは

「小沢事件の真相と政権交代~これからの日本に在るべき政治~」

である。両巻とも、無料サンプル動画が提供されているので、ご高覧賜りたい。

有料での配信になり、大変恐縮に存じるが、ぜひ全編をご高覧賜りたい。

民主党代表選前日の収録で、御用メディアは岡田氏代表就任を誘導していた。先行き見通しが難しい局面での対談であったが、その後の情勢推移を考える参考にしていただけると思う。

対談で述べた「りそな銀行」問題などの詳細は
『知られざる真実-勾留地にて-』
に記述しているので、併せてご参照賜りたい。

西松事件に引き続き、日本郵政不正郵便事件も政治的背景が指摘されている。今後の推移を監視しなければならない。

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2009年6月 2日 (火)

西松事件不正政治利用に見られる謀略の全貌

 5月27日の党首討論で麻生首相が執着した西松事件。5月31日放送のフジテレビ「新報道2001」では、自民党の細田博之幹事長がフリップまで用意して説明する熱心さだった。

 この点について、問題点を明確にしておく必要がある。

 小沢氏の資金管理団体「陸山会」は、
「新政治問題研究会」と「未来産業研究会」という二つの政治団体からの献金を受け入れ、収支報告書に記載した。

 検察は、この二つの政治団体が西松建設のダミー団体であり、収支報告書に虚偽の記載をしたとして小沢氏の資金管理団体会計責任者の大久保隆規氏を政治資金規正法違反で起訴した。

 この問題の第一人者である郷原信郎元検事・名城大教授は、
①政治資金規正法は「資金拠出者」ではなく、「寄付行為者」を収支報告書に記載することを求めており、「新政治問題研究会」と「未来産業研究会」の名称を収支報告書に記載したことを「虚偽記載」とすることは難しい。
との判断を示たうえで、
「虚偽記載」で犯罪が成立するためには、
②「新政治問題研究会」と「未来産業研究会」の二つの団体には実体がまったくなく、完全な架空団体であり、
③大久保氏がその全体を完全に認識していたとの確実な証拠
が必要であると指摘している。

 ただし、仮にこのことで、犯罪が立証されたとしても、もとより、企業からの政治献金は政治家が支部長を務める政党支部に行なうことが可能であり、多くの自民党議員が政党支部への企業献金を政治家個人の資金管理団体に移し替える「迂回献金」を広範に実行している。

したがって、小沢氏の場合も政党支部で資金を受け入れ、個人の資金管理団体に資金を移せば「合法」であったことになる。この意味で、仮に今回の問題が、形式上、政治資金規正法に抵触するとしても、軽微な「形式的犯罪」に過ぎないことは明白である。細田氏の説明は適切でない。

また、地検は「虚偽記載」等による摘発の基準を1億円としてきた経緯があり、今回、3500万円の事例で摘発したこと自体が異例である。

このような点を踏まえれば、「虚偽記載」にあたるかどうかという今後の裁判の焦点そのものが、極めて軽微な問題であることがよくわかる。

郷原氏が指摘してきたように、小沢氏の問題が「収賄」、「あっせん利得」、「裏献金」につながる場合には、内容によっては「重大事案」となる可能性が生まれるが、「虚偽記載」だけでの摘発は、摘発事案そのものが「極めて軽微」であると言わざるを得ない。

この問題を、「重大問題」として取り扱おうとする与党と御用メディアの姿勢が、「極めて政治的である」として糾弾(きゅうだん)されるべきだ。

こうした点を踏まえて今後の公判を見る必要がある。

検察は西松建設幹部を摘発した事件を通じて、西松建設による政治団体を通じた献金について、小沢氏サイドと通じて実行したことを主張すると予想される。そのなかで、検察は大久保氏も「迂回献金システム」に関与したと主張するのだろう。

しかし、仮にそのような「迂回献金システム」が存在したとしても、その「システム」に深く関与したのは、大久保隆規氏ではなく、前々任者である高橋嘉信氏ではないかとの見方が有力である。

高橋嘉信氏は小沢氏秘書をやめて、次期総選挙で小沢前代表の地元である岩手4区から自民党公認候補として立候補する見通しである。

こうした背景の考察をも通じて全体を概観すると、今回の西松事件全体が、政治権力による民主党小沢前代表攻撃を目的とする「政治謀略」であるとの疑いが一段と濃厚になる。

3月24日の夜、大久保氏が虚偽記載で起訴された日、小沢民主党代表が無実潔白であるとの見解を表明した。NHKは小沢氏記者会見関連報道を終えた直後の、25日午前零時の定時ニュースで、「大久保氏が政治資金収支報告書にウソの記載をしたとの起訴事実をおおむね認める供述を始めた」との報道を行なった。

私は、NHK報道の悪質さを直感して直ちに記事を記述した。

政治資金規正法の「虚偽記載」での立件の犯罪構成要件には、あいまいな部分があり、複雑だが、二つの政治団体が西松建設と何らかの関わりがある程度の認識を大久保氏が何らかの形で示すようなことは十分に考えられると推察した。

ただ、仮に大久保氏がそのような会話をしたとしても、そのこと自体は、犯罪を認めることではまったくない。ところが、検察は取り調べのなかでの誘導尋問的な会話での応答を、都合良く言い換えて、あたかも被疑者が犯罪を認めたかのような発言に仕立てて、それをマスメディアに報道させることが、頻繁にある。そのような類(たぐ)いのことだと推察した。

そもそも、検察による情報リークは国家公務員の守秘義務違反に該当する。また、メディアは報道に際して、裏付けを取ることが鉄則である。松本サリン事件で、河野義行氏の人権を著しく侵害した教訓を忘れてはならないのだ。

「晴天とら日和」様が、5月25日に保釈された大久保隆規氏が発表したコメント全文を掲載下さっている。下記に転載させていただく。

「私、大久保隆規は、本日、勾留されていた東京拘置所より保釈が認められました。本件に関しましては、3月3日以来、関係者の方々に大変ご心配をおかけし、誠に申し訳ございませんでした。

現在私は、政治資金規正法違反被告事件で起訴され、公判を控えておりますので、事件の中身について発言を控えるべき立場にあることを皆様にご理解戴きたいと思います。

ただし、問題とされている政治資金に関しては、私は政治資金規正法の定めに従って適切に処理し、かつそのとおり政治資金収支報告書に正しく記載したものであり、法を犯す意図など毛頭無く、やましいことをした覚えはありません。この点は、裁判の中できちんと争うべきことで、自分の主張は法廷で明らかにして参りたいと思います。

最後に、この3ヵ月近く、私はもとより、私の家族に対し、多くの方々から暖かいご支援、励ましのお言葉を戴きました。この場を借りて、厚く御礼申し上げます。

大久保隆規」

(ここまで転載。太字は本ブログによる。)

つまり、3月25日午前零時以降、マスメディアが土石流のように報じた「大久保氏が起訴事実を認める供述を始めた」との報道は「嘘(うそ)」であった可能性が極めて高いのである。

小沢氏攻撃を強め、辞任に追い込むとの「謀略」が存在した可能性が極めて高い。

「晴天とら日和」様は、この問題に関する貴重な「証拠」を膨大に保存された。極めて重要な資料になる。

麻生政権の下で、西松事件での前社長第1回公判が6月19日、前事業部長第1回公判が7月15日に設定された。総選挙を睨んで日程が設定されたことは確実である。

検察サイドは迂回献金の「システム化」を悪質だとする主張を展開し、小沢氏サイドがその「システム化」に関与したことを強調すると考えられるが、上述したさまざまな事情を十分に考える必要がある。仮に「システム」的なものがかつて存在したとしても、大久保氏が認知していないことは十分に考えられるのだ。

 

また、被告となっている西松建設関係者が検察と一種の司法取引をして、求刑等を軽減する代わりに検察と口裏を合わせた供述を行うことも十分に考えられる。この点で、被告供述の信用性については十分な疑いをもって判断することが求められる。

「ダミー」とされる二つの団体を通じた献金を、二つの政治団体名を記載して処理した政治資金管理団体を有する国会議員は自民党に10名以上存在する。これらの議員がまったく摘発されないことの方が、はるかに重大な「犯罪的行為」である。

西松事件で検察が主張するロジックをあらかじめ摘出し、そのロジックを糾弾(きゅうだん)するとともに、それよりもはるかに重大な意味を持つ「政治謀略」の構造を明らかにすることがより重要である。

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TVタックル小沢氏攻撃屋山太郎氏転向ですか

6月1日放送のテレビ朝日『TVタックル』では、MCの北野たけし氏が、5月27日の党首討論について、双方がけなし合いをしているだけでひどい党首討論であったとの趣旨の発言を示した。

党首討論をじっくりと見た人はよく理解するが、この批評は間違っている。本ブログでも何度も指摘してきたが、鳩山由紀夫民主党代表の発言は、実に多くの内容を含むものだった。

①北朝鮮核実験情報に関する政府の情報入手時期報道の混乱
②「友愛」社会についての具体的事例を用いた説明
③「官僚主権国家」の現状=「天下りの実態」の追及
④「政治とカネ」の問題に関する「企業献金全面禁止」提案
⑤補正予算における巨大な無駄、官僚利権焼け太り政策批判
⑥消費税大増税方針への反対方針提示
⑦世襲立候補規制への具体的提案
が鳩山代表発言には盛り込まれた。

非難の応酬があったのは、麻生首相がひたすら西松建設問題に執着し、不適正な発言を繰り返したからだ。鳩山代表が党首討論の初めから非難合戦を始めたわけではない。鳩山代表の麻生首相への非難は、麻生首相の「不適切な」発言に対応するもので、討論上必要不可欠な正当性のある反論だった。

つまり、常識的な感覚で党首討論を見る限り、鳩山代表の圧勝は明確であり、御用メディアはこのことを熟知しているはずだ。

だからこそ、この「真実」の認識を妨げるための「イメージ操作」が多用されているのだと考えられる。今回の事例で用いられた「イメージ操作」の手法は、次の三つに分類される。

①カットなし生映像「党首討論」をできるだけ放映しない
②鳩山代表圧勝と発言しないコメントだけを拾い集める
③「非難合戦でどっちもどっちだった」と討論そのものを批判する
の三つが用いられた。

①本来は討論をそのまま放送すれば良いはずだ。NHK放送時間を弾力的に扱えるのだから、平日夜に党首討論をそのまま再放送するべきだった。45分の時間など、いくらでも調整できるはずだ。

テレビ朝日「サタデースクランブル」、「サンデースクランブル」は、党首討論を取り扱わなかった。これまで散々「党首討論」を開催するべきだと主張してきたのに、番組で取り上げないのはおかしいだろう。

②テレビが報道した党首討論の感想では、
a.自民党細田博之氏、菅義偉氏の麻生首相勝利発言、
b.鳩山邦夫氏による鳩山由紀夫代表15点、「小沢代表の操り人形」発言、
C.民主党渡部恒三氏の「いい勝負」
発言ばかりが繰り返し放映された。

社民党福島瑞穂代表、国民新党糸川正晃氏の鳩山代表圧勝発言は、ほとんど放送されなかった。

③北野たけし氏の「非難合戦でひどい党首討論」発言は三つ目の分類に入る。

「TVタックル」、「サキヨミ」での北野氏発言には、首尾一貫した「偏り」が観察される。「特命」を帯びていると判断される。

5月31日付記事
「総選挙接近で御用メディア偏向報道が全開」
に、テレビ東京「週刊ニュース新書」での田勢康弘氏発言、
「党首討論は五分五分だった」発言を記述した。鳩山代表圧勝と思いながら、このように発言したのだろうと書いた。

このことについて、「ensyu」様が「植草一秀事件の真相掲示板」様に次のように記述して下さった。番組エンドの「今日のあとがき」コーナーで田勢氏が次のように発言したのだという。

「麻生vs鳩山討論を、かつての祖父どうしの対立になぞらえて、田勢氏曰く、
鳩山さんは、かつてお爺さんがそうだった様に、現実を観ずに夢みたいなことばかり言っているんだそうな。」

 私はこの部分を見落としたが、田勢氏も「特命」を帯びて行動していると推察される。

 日本のジャ-ナリズムの堕落は目を覆うばかりである。

 「カナダde日本語」様が、5月31日付記事
「小沢スキャンダル報道で、日本のメディアは権力の言いなり(NYタイムズ全文和訳)」
に、NYタイムズ(アジアパシフィック)5月28日付記事の全文和訳と論評を掲載された。記事は、社会民主党の保坂展人議員によるメディア批判と保坂氏のブログ記事も取り上げた。美爾依さんが貴重な記事を紹介して和訳して下さったので、ぜひご高覧賜りたい。

 日本のメディアの偏向はすでに国際的に認知されるレベルに達している訳だ。

 6月1日の「TVタックル」で、ひとつの異変が起きた。これまで、徹底的に小沢一郎批判、民主党批判を展開してきた屋山太郎氏の民主党攻撃が突然、後退し、攻撃の対象が麻生首相に切り替えられた。

 政権交代実現の可能性が高まり、突然、保身に走ったのか。あるいは、テレビ局、番組全体が、屋山太郎氏を使って路線修正を図ろうとするのか。あまりに白々しい発言に、スタジオはすぐに言葉をつなげない状況に陥った。

 「悪徳ペンタゴン」の一角を担う御用メディアは、政権交代が実現すれば、総括の対象になる。「ペコラ委員会」ではないが、「偏向メディア検証委員会」を設置して、偏向報道の真実を明らかにしなければならない。

 それにしても、この段階で、行動を急変させるのは、あまりにも目立ち過ぎる。

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2009年6月 1日 (月)

元外交官天木直人氏との対談収録動画配信開始

気骨の元外交官である天木直人氏と5月15日に行なった対談の収録動画の「まぐまぐ」による配信が始まった。サンプルは無料で配信されているが、全編は誠に申し訳ないが有料配信である。大変申し訳なく思うが、ご高覧賜れれば大変うれしく思う。

収録された対談は、

Vol.1「小泉竹中経済政策の罪~日本経済混迷の真相~」

Vol.「小沢事件の真相と政権交代~これからの日本に在るべき政治~」

の2本に収録された。Vol.1の配信がすでに始まっており、
サンプル映像
を閲覧していただくことができる。

「豊中ではたらく社長のブログ」様が早速、動画をご高覧下さったことを記事にして掲載下さった。心から感謝申し上げる。

非常に実りの多い対談だった。民主党代表選前日という、事態急変の局面での収録だったが、過去10年、現在、未来10年を改めて見つめ直していただくための材料を提供できたのではないかと思う。

有料配信で大変恐縮に思うが、一人でも多くの皆様のご高覧を賜れれば大変ありがたく思う。

また、拙著『知られざる真実-勾留地にて-』について、「たま」様がありがたい書評を掲載下さった。名作映画『エデンの東』について拙著に記述した内容を一部引用下さったが、私としても、思いのある部分についてのご記述でとても嬉しく思う。

本ブログの「人気ブログランキング」へのポイントカウントが削減され、またランキングリストから排除された問題については、非常に多くの皆様から、貴重なご助言や温かなご支援のお言葉をいただいた。心から感謝申し上げたい。

この問題について、極めて早い段階で貴重な情報を提供くださった「高原千尋の暗中模索」様が、5月31日付記事に改めて考察を提示下さった。記して深く感謝申し上げたい。また、「雑談日記(徒然なるままに、。)」様からもメッセージを賜った。「SOBA」様にはいつもご支援賜り、心よりお礼申し上げたい。

 

高原千尋様は本ブログに情報を提供下さる際に、「神州の泉」主宰者の高橋博彦様にご連絡を下さり、高橋博彦様が記事を掲載くださった。その高橋博彦様が5月31日に新しい記事を掲載下さり、「植草事件の真相掲示板」様の活用について論考を示された。

高橋博彦様は以前、「植草事件の真相掲示板」様の管理者を兼ねておられたが、現在の管理者であるgigi様とともに、掲示板の活用をご承認下さった。記して感謝申し上げたい。大変恐縮であるが、「真相掲示板」様を利用させていただければ大変ありがたく思う。

また、「右から見たら左-一分の虫にも五分の魂-」様過分なメッセージを掲載下さった。身に余るお言葉を賜り、誠に恐縮に存じるが、サイドバーに2001年に行なった小沢一郎氏との対談についての小沢前代表公式サイトの資料ページにリンクを張らせていただいたのでご参照賜れればありがたく思う。

「右から見たら左」様のブログタイトルにも感銘した。

 

天木直人氏との対談を通じて、「日本政治刷新」の重要性を改めて痛感した。「決戦の総選挙」は目前に迫っている。日本郵政不正郵便事件における検察捜査の動向を監視する必要性も高まっている。「悪徳ペンタゴン」は、利権構造維持のために今後も手段を選ばずに攻撃を仕掛けてくると考えられる。ネットからの真実の情報発信の重要性が一段と高まる。

 

多くの志を共有する皆様と手を携えて努力して参りたい。

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かんぽの宿が戦後最大疑獄事件に発展の可能性

早いものでもう6月になった。6月は二つの意味で非常に重要な月になる。

ひとつは、西川善文日本郵政社長更迭問題が期限を迎えることだ。「かんぽの宿・郵政利権化・郵政私物化」問題が全面解明の方向に向かうのか、それとも「真相解明」が封印されてしまうのか。日本にとって極めて重要な分岐点になる。

もうひとつの問題は、第171通常国会がクライマックスを迎えることだ。総選挙から逃げ続ける麻生首相は、逃げ道を精一杯長く確保しようと7月下旬、もしくは8月上旬までの会期延長を決定すると見られるが、逃げ道は早晩ふさがれるだろう。

6月中に法案処理が完了し、昨年10月に宣言した解散総選挙から逃げ回る麻生首相に対する問責決議が参議院で可決されれば、麻生首相は解散総選挙に踏み切るしかない。6月に補正予算関連法案の衆議院再可決が見込まれる。これが6月中の大きなイベントになる。

日本郵政西川善文社長の更迭問題が緊迫した局面を迎えている。この問題について、城内実前衆院議員ブログに記事を掲載された。極めて重要な指摘であるので、一部を下記に転載させていただく。

「(西川社長が)強く非難されるには理由がある。やはり、郵政利権の問題と障害者向けの郵便物の不正利用の問題だろう。後者についても、「私は知りませんでした。そんな昔の話は関係ありません。」ですまされる問題ではないはずだ。」

「これほどまで西川社長続投に某関係者数名がこだわることには理由がある。西川社長自身はもしかしたら、これだけ非難されているので本音はやめたいのかもしれない。しかし本人の意志がどうあれやめられないのである。それは、西川社長がやめたら、パンドラの箱が開いてしまうからだ。」

「想像してみよう、もし、西川社長が辞任して竹中元大臣のお友達でない全く公正中立な新しい社長が就任したらどうなるか。その新社長が、鳩山邦夫大臣のように秘密の簡保の宿関係資料をとり寄せてみると、「なんじゃこりゃ。競争入札を装って特定の不動産会社に簡保の宿はじめ関連不動産が二束三文で落札するようにしくんでいるではないか。いかさまだ。国民の貴重な資産を国民の知らないところでお仲間同士で勝手に超安値で払い下げるなんて。これは背任行為で大問題になってしまうぞ。国民に知らせるべきか。その前に東京地検特捜部が入ったらどうしよう。」となるのではないか。」

「最近郵政利権集団のあせりを感じる。彼らも必死なのだろう。野党三党が東京地検特捜部に刑事告発してそれが受理されたようであるが、地検が動くとしたら選挙のあとか。戦後最大の疑獄事件に発展する可能性があるし、アメリカも巻き込む大問題であるだけに、完全に封印されるかもしれない。」
(ここまで転載。太字は本ブログによるもの)

私も「かんぽの宿」問題が「戦後最大の疑獄事件」に発展する可能性があると思う。「第二のりそな疑惑」(いまのところ事件にはなっていないが)と呼ばれるゆえんである。

「かんぽの宿」問題については城内実氏だけでなく、
保坂展人衆議院議員
国民新党長谷川憲正参院議員
民主党川内博史衆院議員、原口一博衆院議員、松野頼久衆院議員
などの政治家が精力的に問題を追及してきたが、ネット界では、

「東京サバイバル情報」様
Tokyonotes東京義塾」様
「ライフログ ダイアリー」様
をはじめ、多くのブロガーが真相究明に真剣に取り組まれている。

「ライフログ ダイアリー」様は、
日本郵政西川社長の続投に賛成?反対?アンケート
竹中平蔵氏を国会で証人喚問すべきか?アンケート
を実施されているので、多くの皆様の投票参加をお願い申し上げたい。

日本郵政が設置した第三者検討委員会が5月29日、「かんぽの宿譲渡は経営判断の範囲内」との報告書を西川社長に提出したと報道された。

西川氏が社長を務める日本郵政はこの報告書を盾に、西川氏続投を強行しようとしているが、鳩山邦夫総務相が「内部のお手盛り」だと批判している。

第三者検討委員会については、委員会の設置当初から、「東京サバイバル情報」様が、極めて貴重な情報を提供し続けて下さってきた。この問題に関心のある方は、「東京サバイバル情報」様のカテゴリーアーカイブ「かんぽの宿不正譲渡 問題」の各記事を丹念に読み込まれたい。第三者委員会の実相が明瞭に浮かび上がる。

第三者検討委員会のメンバーは下記の通りである。 

 

Photo  

 

委員長は弁護士の川端和治氏。詳しくは「東京サバイバル情報」様を参照いただきたいが、ポイントは川端氏が「放送倫理検証委員会委員長」であること。「放送倫理検証委員会」はNHKと民放連で構成する放送倫理・番組向上機構(略称BPO)が作った、
「虚偽放送と疑われる事案が発生した場合に放送倫理上の問題の有無を審理する委員会」
である。

つまり、放送メディアは川端氏批判をおこなえないところがポイントだ。

また、川端氏は旧長銀の内部調査委員会委員長を務めたが、日本郵政公社による不動産バルク売却と旧長銀出身者が密接な関わりを持つことも明らかにされている。

澁井和夫氏は日本不動産鑑定協会常務理事だが、この「日本不動産鑑定協会」がもうひとつのポイントである。

「日本不動産鑑定協会」副会長に緒方瑞穂氏が在任し、この緒方氏が株式会社緒方不動産鑑定事務所代表を務めている。

「かんぽの宿」の帳簿価格が不正に引き下げられた疑惑が存在するが、「かんぽの宿」の著しく低い帳簿価格にお墨付きを与えた本尊である
「郵政民営化承継財産評価委員会」
委員のなかにただ一人、不動産鑑定士が名前を連ねている。その不動産鑑定士が
奥田かつ枝氏
である。この奥田氏が緒方不動産鑑定事務所取締役を務めるとともに、オリックスが出資する企業の社外取締役を務めている。

不動産鑑定協会の常務理事が協会副会長の鑑定事務所の業務を否定できるはずがない。また緒方瑞穂氏と竹中平蔵氏との関係を論じる怪文書も存在する。

また、日本公認会計士協会は金融庁の実質的監督下に置かれている。金融庁は竹中氏、元金融庁長官で現日本郵政副社長の高木祥吉氏とともに西川氏のお仲間である。

鳩山総務相が「お手盛り」と主張するのは当然である。初めから結論ありきの検討を行い、「アリバイ作り」をしたに過ぎない。マスメディアは「第三者検討委員会」の報告を西川社長続投論支持の根拠に掲げるに違いない。

また、日本経済新聞などの「郵政利権化」推進メディアは、日本郵政株式会社が委員会設置会社で、取締役選任が「指名委員会」に委ねられていることを強調するが、日本郵政株式会社の第一の法的根拠は「日本郵政株式会社法」であり、まずは、「日本郵政株式会社法」を正しく理解することが先決だ。

「日本郵政株式会社法」は本則が23条しかない簡素な法律である。この条文を読めば一目瞭然だが、日本郵政株式会社は完全に総務大臣の監督下に置かれている会社である。さらに、現状では株式の100%を日本政府が保有している。

日本郵政がじたばたしようとも、逆立ちしようとも、総務大臣の権限は「絶対」と言えるほど強いその権限行使が国民の貴重な財産の不正売却等を防ぐことを根拠とするなら、いかなる抵抗も筋違いの批判も通用しない

私は、本ブログのランキングカウント不具合問題のきっかけになったのは、5月23日付記事
「日本郵政西川善文社長続投論を覆う黒い霧」
だと考えているのだが、このなかで「日刊ゲンダイ」記事を紹介した。

菅義偉元総務相が麻生首相に対して、西川氏を解任すれば補正予算関連法案の衆議院再可決で、郵政民営化推進議員が反対に回る可能性を示唆して脅しをかけているとの観測があると書いた。

しかし、造反は不可能である。造反すれば補正関連法案が廃案になる。エコポイントなども実施できなくなる。解散総選挙になれば、二つに分裂する自民党は完全に崩壊する。この期に及んで自民党議員は絶対に補正関連法案再可決に反対できない。

したがって、鳩山総務相は権限を正当に行使して、日本郵政取締役人事を全面的に刷新するべきである。

郵政利権化疑惑の最大の闇は旧郵政公社時代の不動産売却にあると見られている。鍵を握る人物の一人が竹中平蔵氏であることは間違いないが、もうひとり、菅義偉(すがよしひで)氏の存在を見落とせない。菅氏は竹中総務相の下で総務副大臣を務め、その後に総務相に就任した。この時代に不動産売却が行なわれている。まだまだ、調べなければならないことが山積している。

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