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2009年5月20日 (水)

鳩山邦夫総務相の政治生命を決す日本郵政人事

日本郵政株式会社人事が大詰めの攻防を演じているが、この問題の処理が所管大臣である鳩山邦夫総務相の政治生命を決する重みを持つと言って過言でない。

鳩山総務相は本年年初以来、「かんぽの宿」疑惑にメスを入れた。

「かんぽの宿」疑惑は、「郵政民営化」の実態が「郵政私物化」であったことを鮮明に浮かび上がらせる事例である。2400億円の資金を投じた、固定資産評価額が856億円の貴重な国民資産が、極めて不透明な手続きを経て、オリックス不動産に109億円で売却されようとした。

郵政民営化を主導した竹中平蔵氏、竹中氏によって日本郵政初代社長に起用された三井住友銀行頭取だった西川善文氏、総合規制改革会議議長として郵政民営化論議に深くかかわった宮内義彦オリックス社長。このトライアングルが「郵政民営化の闇」=「郵政私物化疑惑」を解明する鍵を握るというのが、問題を見つめてきた識者の一致した見解である。

「かんぽの宿」70件プラス首都圏社宅9件の計79物件が109億円でオリックス不動産に売却されるとの契約が締結されたが、常識的に見て、まったくあり得ない不当廉売だと判断されてきた。

この点は、アドバイザーに選定されたメリルリンチ日本証券に支払われることになっていた最低手数料6億円が、売却価格の1.4%を手数料とするとの取り決めを踏まえると、物件が最低でも429億円で売却されることを前提としていたことからも明らかである。

79件の物件のなかには、「ラフレさいたま」という巨大な首都圏施設も含まれている。「ラフレさいたま」は約300億円の資金が投入された施設で、現状でも100億円程度の資産価値があると見られている。首都圏9ヵ所の社宅施設は地元不動産会社の鑑定では47億円程度の価値があると見られている。

鳩山総務相の指示に基づいて実行された調査により、売却先がオリックスに決定された経緯が極めて不透明で、公正さを欠いていることが明らかになった。

結局、日本郵政はオリックス不動産への売却契約を白紙に還元せざるを得なくなった。「かんぽの宿」競争入札は昨年4月に告知されたが、不動産売却を取り巻く環境は最悪で、このなかで売却を強行すれば、不当に低い価格での売却にならざるを得ないことも予想された。

アドバイザーのメリルリンチ日本証券は日本郵政に売却中止を提案したが、日本郵政は拒否した。日本郵政に不当に低い価格での売却を実現しようとの思惑があったのだと考えられる。

また、日本郵政に高価格での物件購入意向を示した一部の業者が、日本郵政サイドの判断で門前払いにされたことも明らかにされている。「かんぽの宿」は国民の貴重な財産である。売却するのであれば、1円でも高い価格での売却を実現するために、最善を尽くすことが求められるのに、日本郵政の行動は、不当に低い価格でのオリックス不動産への売却を誘導するものであったと言える。

日本郵政で「かんぽの宿」売却を担当したのは、CRE部門資産ソリューション部だったが、この部門は西川善文社長-横田邦男専務執行役-伊藤和博執行役のラインの西川社長特命チームによって専権的に担当されたことが明らかになっている。横田氏も、伊藤氏も西川社長人事で日本郵政に入社した人物である。

本ブログ5月1日付記事
「かんぽの宿不正売却で西川善文氏引責辞任へ」
に記述したように、「かんぽの宿」疑惑以外に、日本郵政の業務が「私物化」されているとの疑惑が数多く浮かび上がっている。

①郵便局会社が取り扱う第三分野保険で、アフラックのがん保険とともに住友生命の医療保険が選ばれたこと
②変額個人年金保険で、住友生命、三井住友海上メットライフ生命が選ばれたこと
③ゆうちょのカード事業で、三井住友ビザカードが選ばれたこと
④従業員持ち株会の幹事証券業務に大和証券SNBCが選ばれたこと
など、日本郵政が三井住友ファイナンシャルグループを優遇してきたとの疑惑が浮上している。

問題の根源にあるのは、日本郵政が株式会社形態に移行したことによって、「民営化」が実現し、これ以後は、「経営のすべてが日本郵政社長の西川氏に委ねられ、政治は一切、日本郵政の事業に介入すべきでない」とする、竹中平蔵氏の歪んだ「民営化」解釈である。

二つの大きな問題がある。

第一は、日本郵政の経営が株式会社形態に移行したが、株式の100%を日本政府が保有しており、現時点では、日本郵政が完全な国有会社であることだ。「株式会社に移行した以上、日本郵政の経営のすべてを、西川社長の一存で決することができ、政治は一切介入すべきでない」との竹中氏の主張は、完全な誤りである。

このような判断に基づき、日本郵政の経営が実行されてきたところに、根源的な誤りの原点がある。竹中平蔵氏の責任も明確に追及されなければならない。

第二は、したがって、日本郵政の人事決定に際しては、国民の利益を最大化する視点での検討が不可欠であることで、本来は、日本郵政幹部人事を国会同意人事とするべきだった。

日本郵政は、340兆円の巨大な国民金融資産を保有し、また、不動産保有規模においても、日本最大級の水準を擁する巨大企業である。その企業の経営者が特定の人物によって選ばれ、選ばれた経営者が特定勢力の利益追求に走り、しかも、行政府や立法府による企業経営適正化に向けての指導、監督を許さない、との理屈が成り立つはずがない。

国会や政府による、「郵政私物化」を阻止するための強力な行動は、禁じられるべきものではなく、国民の利益を守るために推進されるべき「責務」である。

日本郵政の幹部人事を見てみよう。

以下が日本郵政取締役である。

代表取締役 西川 善文(にしかわ よしふみ)

代表取締役 高木 祥吉(たかぎ しょうきち)

社外取締役 牛尾 治朗(うしお じろう)
ウシオ電機株式会社代表取締役会長

社外取締役 奥田 碩(おくだ ひろし)
トヨタ自動車株式会社取締役相談役

社外取締役 西岡 喬(にしおか たかし)
三菱重工業株式会社相談役

社外取締役 丹羽 宇一郎(にわ ういちろう)
伊藤忠商事株式会社取締役会長

社外取締役 奥谷 禮子(おくたに れいこ)
株式会社ザ・アール代表取締役社長

社外取締役 高橋 瞳(たかはし ひとみ)
青南監査法人代表社員

社外取締役 下河邉 和彦(しもこうべ かずひこ)
弁護士

他方、日本郵政の役員人事案を決定する指名委員会委員は

委員長 牛尾 治朗(うしお じろう)

委員 西川 善文(にしかわ よしふみ)

委員 高木 祥吉(たかぎ しょうきち)

委員 奥田 碩(おくだ ひろし)

委員 丹羽 宇一郎(にわ ういちろう)

である。西川氏、高木氏が含まれ、5名全員が日本郵政の取締役である。

鳩山総務相が「お手盛り人事」と指摘したが、自らの処遇を自らで決めている。

繰り返すが、日本郵政はその株式の100%を日本政府が保有する完全国有会社である。したがって、その役員人事については、一義的に、日本政府に完全な決定権がある。鳩山総務相には、日本郵政役員人事について、法律で定められた認可権があり、取締役の全面的な刷新を図る必要も生じている。

日本郵政取締役人事の正統性は、唯一、100%株主である日本政府が適正であると認めることにのみ存在する。

日本郵政は「指名委員会」が西川社長の続投を決めたことを、西川氏続投の正統性の根拠とするが、指名委員会に所属する取締役自身が、日本政府のお墨付きを得て初めて、取締役として存在する正統性を確保する存在なのだ。

認可権を有する総務相が、日本郵政取締役人事刷新を求めるなら、本来は、指名委員会がその意向に沿った決定を下すことが適正である。指名委員会が認可権を持つ総務相の意向に反する意思決定を示すなら、総務相は指名委員会の委員である取締役を解任し、適正な人事を実行するべきである。

「天下り」禁止が論議の対象になっている。

拙著『知られざる真実-勾留地にて-』にも記述したが、政府系機関の幹部人事にあたっては、当該組織のプロパー職員から幹部を登用することを基本とするべきである。

いかなる機関であれ、当該機関に対する忠誠心、愛着を持つ第一の存在はプロパー職員である。JRにしろ、たばこ産業にしろ、当初は、所管官庁からの「天下り」が続いた。日本政策金融公庫、日本政策投資銀行、国際協力銀行などの機関では、いまも「天下り」が続いている。

「天下り」廃止後の基本的な姿は、当該機関に永年勤務したプロパー職員のなかから、能力と貢献に応じて、幹部に登用することである。

多数の公益法人は「天下り」そのものを目的に設立されているから、「天下り」が廃止されれば、機関そのものの存在意義が問われることになる。

日本郵政を民営化する方針であるなら、日本郵政幹部は日本郵政プロパー職員から選出することを基本とするべきだ。JRなどでも、当初は旧運輸省などからの「天下り」によって経営幹部が占有されたが、その後は、JRプロパー職員が経営幹部に登用されている。

日本郵政人事について、西川社長の後任社長が旧郵政省職員になることを「官僚支配」の復活だとする意見が散見されるが、妥当でない。

総務省の郵政三事業に該当する部門が、行政部門から切り離されて日本郵政グループ会社に衣替えされたのだ。衣替えした日本郵政経営幹部に日本郵政プロパー職員が登用されることは、当然であり、むしろ望ましいことだと言える。

小泉政権の時代に顕著になったのは、民間人が政府部門の要職に重用(ちょうよう)されたことである。政府に重用された民間人のなかには有為な人材も存在するが、一方で、政府要職のポストが、民間人を利益誘導する材料として用いられてきたことも事実である。

政治権力に迎合する民間人に政府主要ポストを配分する、利益誘導人事は、「金権政治」に代わって「人事権政治」を生み出してきたことを否めない。この点についても、拙著『知られざる真実-勾留地にて-』に記述したので、ご高覧賜りたい。

政府系機関のトップへの民間人起用が散見されるが、実務に詳しくない民間人が「お飾り」として機関トップに据えられるだけで、実質的な最高経営責任者の機能がその下の「天下り」幹部に握られている例も多い。

また、民間から起用されたトップが、その人物の出身機関などに利益供与等の便宜供与を図っているとの疑いも浮上している。

民間人を経営幹部に据えることは「改革」でも何でもない。むしろ、特定の利害を有する勢力を、公的機関幹部に据えることの不透明性、国民への不利益が十分に認識されなければならない。

「日本郵政」が西川社長続投を決めた後に、鳩山総務相が西川社長続投人事を認可しないことを、マスメディアが「鳩山氏の横暴」との印象を付して報道する可能性が高いが、正義は明らかに鳩山総務相の側にある

「かんぽの宿」疑惑を白日の下に晒(さら)し、日本郵政の「郵政私物化」の実態を明らかにした鳩山総務相が、最も重要な局面で、腰砕(こしくだ)けになれば、鳩山総務相は政治生命を失うことになるだろう。

麻生首相は、「麻生おろし」を防ぐために、「郵政私物化勢力」、「郵政米営化勢力」に妥協し、日本郵政人事での西川社長続投を容認するのか。

日本郵政の現執行部が、政府の意向に反して、日本郵政幹部人事を決定する正統性は存在しない鳩山総務相は政府の意向に反する人事を決定しようとする日本郵政取締役を一掃すべきである。それが、日本郵政株式会社法に定められた政府の責務である。鳩山総務相がどのように行動するかが注目される。

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