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2009年5月22日 (金)

鳩山邦夫総務相の真価が問われる日本郵政人事

日本郵政の最大の問題は、日本郵政の取締役に、日本郵政プロパー職員、日本郵政サービス利用者、生活者が一人も登用されていないことだ。この背景に、郵政民営化を仕切った竹中平蔵氏の歪んだ「郵政民営化解釈」が存在する。

「郵政民営化」についての竹中氏の見解を改めて記す。

日本郵政初代社長に三井住友銀行頭取の西川善文氏が起用された。起用したのは竹中氏である。竹中氏は自著に、2005年10月21日に郵政民営化関連法が成立し、2005年10月29日に西川氏に日本郵政初代社長就任を依頼したことを記述している。

このことに関連して竹中氏は「民営化」について次のように記述している。

「辞書によると、民営化とは、「民間の経営に任せること」とある。文字通り郵政民営化とは、郵政の経営を民間に任せることであり、政府はそれが可能なように、また効率的に行われるように枠組みを作ることである。これで、西川氏に、経営のすべて、民営化のすべてが委ねられることになった。」
(『構造改革の真実』239ページ)

また、竹中平蔵氏は2008年10月2日付朝日新聞記事「私の視点・郵政民営化1年」に、
政治は経営の邪魔をすべきではない
と指摘した。

「かんぽの宿」疑惑が表面化したのち、竹中氏は鳩山総務相に対する稚拙(ちせつ)な批判を、本年1月19日付産経新聞に「かんぽの宿は“不良債権”」のタイトルを付して寄稿した。竹中氏の主張は次のようなものだ。

「(「かんぽの宿」売却の時期や価格の判断は)市場や経営を知らない政治家や官僚に判断できる問題ではない。経営者が判断するべき問題である。そもそも民営化とは、民間の判断に任せることであり、経営判断の問題に政治が口出しすること、しかも機会費用の概念を理解しない政治家が介入することは、根本的に誤っている。

竹中氏の「民営化」についての見解は次のようなものだ。

①郵政事業の運営が株式会社形態に移行したことをもって「民営化」が実現したと判断する。

②「民営化」とは「民間の経営に任せること」であり、日本郵政社長に西川氏が就任したのちは、「西川氏に経営のすべて、民営化のすべてが委ねられる」。

③したがって、政治や行政が日本郵政の経営に介入することは許されない。

これが、竹中氏の「民営化」解釈であろう。しかし、この竹中氏の判断が根本的に誤っていることは明白だ。日本郵政は現時点で、株式の100%を日本政府が保有する「完全国有会社」である。行政府や立法府が、国民の視点で日本郵政を監視することは当然であり、責務である。竹中氏はとんだ勘ちがいをしている。

この西川体制で構築された日本郵政経営体制が次の布陣である。

代表取締役 西川 善文(にしかわ よしふみ)

代表取締役 高木 祥吉(たかぎ しょうきち)

社外取締役 牛尾 治朗(うしお じろう)
ウシオ電機株式会社代表取締役会長

社外取締役 奥田 碩(おくだ ひろし)
トヨタ自動車株式会社取締役相談役

社外取締役 西岡 喬(にしおか たかし)
三菱重工業株式会社相談役

社外取締役 丹羽 宇一郎(にわ ういちろう)
伊藤忠商事株式会社取締役会長

社外取締役 奥谷 禮子(おくたに れいこ)
株式会社ザ・アール代表取締役社長

社外取締役 高橋 瞳(たかはし ひとみ)
青南監査法人代表社員

社外取締役 下河邉 和彦(しもこうべ かずひこ)
弁護士

日本郵政が西川社長の続投方針を決めたと伝えられているが、続投方針を決めた日本郵政の指名委員会メンバーは以下の通りだ。

委員長 牛尾 治朗(うしお じろう)

委員  西川 善文(にしかわ よしふみ)

委員  高木 祥吉(たかぎ しょうきち)

委員  奥田 碩(おくだ ひろし)

委員  丹羽 宇一郎(にわ ういちろう)

鳩山総務相が指摘したとおり、完全な「お手盛り人事」である。泥棒に金庫の鍵を預けて、「金庫番を頼んでいるから大丈夫」と言っているようなものだ。

上記の人事布陣に、日本郵政の経営体質が如実に示されている。

日本郵政取締役を財界人が独占しているのだ。高木祥吉氏は元金融庁長官で竹中氏の軍門に下った人物である。株式会社ザ・アールオリックスが大株主の企業であり、ザ・アールは日本郵政公社から接客マナー研修で7億円もの業務を受注した。役員人事と取引関係に不透明な部分が多い。

日本郵政の事業、資産は、国民共有の貴重な財産である。民営化するなら、国民の視点、利用者の視点が経営に生かされるべきことは当たり前だ。

ところが、日本郵政取締役には、一般国民、利用者、生活者が一人も登用されていない。さらに驚くべきことは、日本郵政プロパー職員が一人も登用されていないことだ。これでは一部財界による「日本郵政乗っ取り」と言わざるを得ない。

本ブログ5月1日付記事
「かんぽの宿不正売却で西川善文氏引責辞任へ」に記述したように、
①郵便局会社が取り扱う第三分野保険で、アフラックのがん保険とともに住友生命の医療保険が選ばれたこと
②変額個人年金保険で、住友生命、三井住友海上メットライフ生命が選ばれたこと
③ゆうちょのカード事業で、三井住友ビザカードが選ばれたこと
④従業員持ち株会の幹事証券業務に大和証券SMBCが選ばれたこと
など、日本郵政が三井住友ファイナンシャルグループを優遇してきたとの疑いを裏付ける事実が明らかにされている。

「かんぽの宿」売却先決定は、西川社長直属の特命チームが担当した。このラインは以下の通り。
日本郵政取締役代表執行役社長 西川善文
同専務執行役 横山邦男
同執行役   伊藤和博

このほか、住友グループ企業関係者が日本郵政グループ幹部に多数配置されている。

日本郵政
執行役副社長  寺阪元之(元スミセイ損保社長)
常務執行役   妹尾良昭(住友銀行、大和証券SMBC)

郵便局
代表取締役社長 寺阪元之(元スミセイ損保社長)
専務執行役   日高信行(住友海上火災)
常務執行役   河村 学(住友生命保険)

ゆうちょ銀行
執行役副社長  福島純夫(住友銀行、大和証券SMBC)
常務執行役   向井理奇(住友信託銀行)
常務執行役   宇野 輝(住友銀行、三井住友カード)
執行役     村島正浩(三井住友銀行)

 これらのことがらが明らかにしていることは、「郵政民営化」の名の下で、「郵政私物化」が着々と進められてきたとの限りなく濃い疑惑である。

 郵政民営化関連法は国会で審議された。しかし、現実に巨大な郵政事業と郵政財産を4つの会社にどのように承継するかを具体的に定める「郵政民営化実施計画」や日本郵政人事は、国会の手を離れて決定された。

 その骨格は竹中氏が深く関与して決定されたのだが、竹中氏はこうした直接的な利害に絡む部分について、その後に行政や政治が介入することを拒絶する意向を示し続けてきた。

このことが、竹中氏自身がその巨大利権に深く関わりを有するとの疑いを惹起(じゃっき)させる原因になっている。

「かんぽの宿」売却規定は、郵政民営化関連法案が確定する直前に、竹中氏の指示によって法律に潜り込まされたことが、国会審議で明らかにされた。

竹中氏は「かんぽの宿」事業が「本業でない」=「コア事業でない」から売却することにしたと説明するが、竹中氏が積極推進する日本郵政の不動産事業も「本業」ではなく、「コア事業」でない。一般に「ホテル事業」は「不動産事業」の一部門と分類されることからすると、竹中氏の説明は説得力を持たない。

日本郵政の西川善文社長は国会議員12名により、商法の特別背任罪未遂容疑などで刑事告発されている。鳩山総務相は本年年初以降、「かんぽの宿」売却先決定が不正に進められたことを明らかにしてきた。

「民営化」に際して、限りなく「黒」に近い「グレー」が明らかになった以上、当該責任者の責任を厳しく追及すべきことは当然である。これを「改革の後退」と言うなら、「改革」など実行するべきでない。

国民の貴重な財産が、一部の特定利害関係者によって、私的利益に転換されていたとの疑惑は、重大である。

麻生首相は担当相である鳩山総務相の判断に委ねることを明言した。

鳩山総務相は責任を厳しく追及する方針を明示している。

この二つで答えは出ている。

与謝野馨財務相が、首相の判断に従う見解を示したが、その首相は総務相の判断に委ねる見解を明確に示している。

最後は、鳩山総務相が有言実行で判断を下せばよい。鳩山総務相は後継社長は民間人が望ましいと発言しているから、民間人でも構わないだろう。

結局、鳩山総務相は最後に鳩山総務相自身が最終判断を示す舞台を自分の手で整えたことになる。この期に及んで鳩山総務相が腰砕けになるなら、鳩山総務相が特定利害関係者の「操り人形」になっていることを示してしまう。腰砕けの判断はもはや許されない

また、参議院予算員会および総務委員会、財務金融委員会は竹中氏の予定を確認のうえで、竹中氏の参考人招致を実現する必要がある。竹中氏が「郵政民営化」の実態を「郵政私物化」にしてしまった原因を作り出した張本人であるとの疑惑が濃厚になっているからだ。

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