逆風を順風に転じさせる小沢民主党代表の英断
民主党小沢一郎代表の代表辞意表明会見が行われた。
小沢代表は次期総選挙での勝利、政権交代実現を優先し、不本意ながら代表の地位を辞することを決断した。このことが明瞭に伝わる辞意表明会見であった。
3月3日の小沢秘書逮捕は、結果的に振り返ってみても、筋の悪い「政治謀略」であったことは明らかである。本来、民主党は党を挙げてこうした「政治謀略」に抵抗するべきであった。「謀略」に屈服することは「謀略」を容認することであり、「謀略」を助長するものである。
この意味で、民主党は党を挙げて「政治謀略」を糾弾し、小沢氏代表体制を維持して総選挙に臨むべきであった。
ところが、この「正道」が二つの要因で維持されなかった。第一の要因は、一部民主党議員の腰の引けた対応が際立ったことだ。民主党内部には反小沢代表派の議員が少なからず存在する。こうした議員が、今回の「政治謀略」を党内政治に利用したことは極めて残念なことであった。
第二の要因は、「悪徳ペンタゴン」が小沢代表失脚を最重要目標に定めて、情報操作・世論操作を担う「御用メディア」が総力をあげて小沢氏攻撃を継続したことである。不正で低劣な情報操作だが、総力を挙げて展開されれば、総選挙にも影響が生じることを否定し切れない。
この二つの要因を踏まえ、小沢代表は「正道」を維持することを断念し、総選挙での勝利、政権交代実現を優先して、断腸の思いで代表辞任を決断したのだと思われる。
もとより、小沢代表は地位に恋々とするような政治家ではない。これまで何度も首相に就任する機会がありながら、政治ポストに執着することは一度もなかった。
小沢代表は「正義の筋を通す」ことと、「政権交代という大きな政治目標」を実現することを重視し続けてきた。この意味で、今回の代表辞任は、一時的に「正義の筋を通すこと」を脇に置いて「政権交代実現」を優先したものだと言える。
しかし、小沢代表は卑劣な「政治謀略」を容認したわけではない。政権交代が実現すれば、「政治権力による不正な警察、検察権力の使用」=「卑劣な政治謀略」を糾弾することが可能になる。順序は逆になるが、「正道」を回復することは不可能でない。大きな目標を優先して、「急がば回れ」の選択を示したのだと言える。
小沢代表が会見で明確に述べたように、小沢代表は引責辞任したのではない。西松事件に関する検察捜査の不当性を指摘しつつ、何よりも「政権交代実現」を優先し、民主党の挙党一致体制を確保するために辞任の決断を下したのだ。
麻生首相が小沢氏辞任の意味を理解できない旨の発言を示したが、漢字を読めないだけでなく、日本語の意味もよく理解できないのではないかと思われるコメントであった。
小沢代表が辞意を表明したことで自民党は攻撃の手掛かりを失うことになる。また、民主党が小沢氏辞任により、挙党一致体制を回復することができれば、最大の逆風を順風に変えることができる。
小沢代表は、代表に留まる場合の国民の得失と、代表を辞任する場合の国民の得失を冷静に比較考量し、代表辞任の決断をしたのだと考えられる。断腸の思いで立派な決断を示したと言える。
今後の問題が三つある。
第一は、民主党が適正な新代表を選出し、挙党一致体制を構築できるかどうかだ。
第二は、今後も激化すると予想される御用メディアの民主党攻撃に対してどのように対応するかである。
第三は、政権交代の目的、野党共闘に揺らぎを生じさせないことである。
ばらばらな民主党を取りまとめ、政権交代実現に手の届く位置に民主党をけん引したのは言うまでもなく小沢氏の力量だった。小沢氏が辞任することで民主党の結束が揺らぐ懸念がある。
第一の懸念を払拭するには、挙党一致で新代表を選出するとともに、小沢氏が引き続き、総選挙を指揮する要職に留まるなど、新執行部に残留することが求められる。
第二に、「悪徳ペンタゴン」の一角を担う「御用メディア」が本格的政権交代実現を阻止するために、民主党攻撃を継続することへの備えを急ぐことだ。小沢氏辞任にかこつけて「御用メディア」が小沢氏誹謗中傷報道を加速させる可能性がある。「引責辞任」でないことを執拗に攻撃する可能性もあるだろう。民主党は党を挙げて偏向報道に対応し、偏向報道を粉砕しなければならない。
小沢代表辞任に合わせて早速、権力の狗(いぬ)的存在に成り下がっている東国原宮崎県知事が、「説明責任が足りない」、「臭いものに蓋」、「民主党のイメージが悪化する」などの、見え見えの、権力迎合小沢氏批判を得々と展開している。情けないほどに醜悪(しゅうあく)な姿だ。
小沢代表が身を引いて総選挙勝利・政権交代実現を優先した意志を尊重し、民主党が本格的政権交代実現に向けて、挙党一致で揺るぎない方針を固めることが不可欠だ。
政権交代の意義は、これまでの利権政治を払拭することにある。60年以上継続した自民党政治は、「特権官僚」、「大資本」、「外国資本」の巨大利権を擁護し、「御用メディア」を用いて一般国民を欺く政治を維持し続けてきた。この「悪徳ペンタゴンによる利権政治」を破壊し、国民の利益を優先する政権を樹立することが政権交代を実現する意義である。
このために、小沢代表が提案した「企業献金全面禁止提案」を受け継ぐことが不可欠だ。また、「天下り全面禁止」提案を明確にマニフェストに盛り込むことも求められる。
麻生政権が掲げる2011年度消費税大増税に対しても明確な反対姿勢を明示することが必要だ。消費税大増税を論議する前に、「天下り利権」を根絶することが不可欠である。
「天下り根絶」、「企業献金全面禁止」、「消費税大増税阻止」の視点を踏まえれば、次期代表は菅直人氏を軸に選出するべきであろう。代表交代に伴って、この三つの方針が揺らぐことは、政権交代の意味を後退させることにつながる。
岡田氏が代表に就任する場合には、三つの方針を明示することが不可欠だ。ただ、岡田氏は前回総選挙で民主党を大敗させており、今回は出馬を控えるべきだ。菅直人氏は不当な理由で代表を辞任した。その雪辱を果たさせるべきだろう。
小沢氏の英断を生かし、民主党は結束して総選挙に勝利し、政権交代を実現しなければならない。小沢氏が推進した野党共闘も重要である。
小沢氏辞任とともに民主党内対立激化、野党共闘崩壊となれば、「悪徳ペンタゴン」の謀略が成就してしまう。小沢氏の意志を最大限生かし、民主党が挙党一致体制を確立することが政権交代への活路を確実にする。
この時期の代表辞任表明により、民主党は7月12日の同日選にも対応が可能になった。7月12日選挙でも8月選挙でも民主党は対応できる。小沢代表は総選挙勝利に向けて全力を注ぐものと考えられる。
柔軟な思考と対応が逆風を順風に転換する。政権交代を求める有権者も今日の小沢代表辞意表明をひとつの区切りとして、心機一転、政権交代実現に全力を注いでゆかねばならない。
知られざる真実―勾留地にて― 著者:植草 一秀 |
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