« 新型インフルエンザ政府対応の誤りと影響 | トップページ | 失政主犯竹中平蔵氏延命に懸命の田原総一朗氏 »

2009年5月23日 (土)

西川善文日本郵政社長続投論を覆う黒い霧

5月22日付「日刊ゲンダイ」が伝えるところによると、西川善文日本郵政社長解任にブレーキがかかっている最大の理由は、自民党内市場原理主義勢力が麻生首相に対して、予算関連法案の衆議院再可決に関連して圧力をかけたことにあるという。

この2月12日に、小泉元首相が「ただただ笑っちゃうくらいあきれてる」発言をした。発言は、麻生首相による「郵政民営化に賛成でなかった」、「4分社化の見直しが必要」発言に対応したものだった。

小泉元首相は定額給付金法案の衆議院再可決に反対する意向を表明した。このことを中川前財務相が強烈に批判した。中川氏は、「あの方も(法案に)賛成されたんでしょう。総理までやられたお方がそのようなことを言われるのは理解に苦しむ」と述べた。正鵠を射た指摘だった。

中川氏がイタリア・ローマでのG7で「もうろう会見」を行い、失脚の原因を作ったのは2日後の2月14日だった。単なる偶然とは考えられない。

3月2日、小泉元首相は自民党議員約10名と会食し、「今後、政局の話をしない。政局にかかわらない」と発言したと伝えられた。その翌日、小沢氏の秘書が逮捕された。

自民党内の麻生おろしの動きがピタリと止んで、自民党は挙党一致体制で民主党攻撃に向かった。「かんぽの宿」疑惑追及は急速に後退した。

「かんぽの宿」疑惑を摘出し、「郵政私物化」を進めた勢力を追及しようとした麻生・鳩山一家と、「郵政私物化」を実行し、なおその温存を図ろうとする勢力に見える小泉・竹中一家が手打ちをしたように見えた。

ところが、鳩山総務相の西川善文社長の責任を問う姿勢は残存した。西川社長は6月末で任期満了を迎える。鳩山総務相は西川氏更迭(こうてつ)の判断を固めていたようである。

そこに横やりが入った。横やりを入れたのは菅義偉(すがよしひで)自民党選挙対策副委員長である。日刊ゲンダイは菅氏の横やりとその解説を次のように伝えている。

「補正予算が衆院を通過しても、関連法案は60日後の7月中旬に再議決になる。その際、衆院の3分の2の勢力が必要だが、6月末の日本郵政の株主総会で西川続投が却下されたらどうなるか。郵政民営化が政局になる。党内の郵政民営化賛成派は再議決に反対する可能性もありますよ」

「つまり、西川を更迭したら、小泉チルドレンらが再議決で造反するぞ、という“脅し”である。
 本当なら豪腕の菅ならではだが、同じ頃、小泉元首相も官邸に電話を入れ、同じような情報を麻生に伝えたという。だとすれば、西川更迭が唐突に白紙撤回された理由も納得だ。」

(ここまで転載)

2月の横やりと同じ手法で、麻生政権の「かんぽの宿」疑惑追及を封じ込めようとの動きが表面化している可能性があるのだ。

日刊ゲンダイの指摘は正しいと思う。

日本郵政の最高幹部が入れ替えられれば、西川社長時代のさまざまな事実=「知られざる真実」が明らかにされることになるだろう。

「知られざる真実」を知られてはまずい人々が存在するのだ。この人々こそ、日本郵政を、「郵政民営化」の名の下に「郵政私物化」してきた人々である。

ここで、二つの視点から問題を見つめる必要がある。

第一は、竹中平蔵氏と西川善文氏の個人的な接点において決定的に重要だと考えられる出来事が、2002年12月11日の密会であることだ。この日まで、西川氏は反竹中金融相の急先鋒(きゅうせんぽう)と言える存在だった。

ところが、12月11日の密会を境に、西川氏は竹中氏との蜜月時代に移行した。この密会こそ、秘密を解く鍵を握る。

第二の視点は、菅義偉氏が2005年11月に総務副大臣に就任し、その後、2006年9月に総務相に就任した事実である。2005年11月は竹中氏が総務大臣に就任した時期である。竹中氏は「郵政民営化」=「郵政私物化」=「郵政米営化」プロジェクトを実行するパートナーに菅氏を選任したのだと考えられるのだ。

竹中氏は2006年9月に突如、議員辞職を表明し、総務相を辞した。竹中氏の資金疑惑が週刊誌で報じられることに連動するかのような議員辞職だった。小泉政権を引き継いで安倍政権が発足したが、安倍政権が発足した2006年9月に菅(すが)氏が竹中氏の後継として総務相に就任した。この人事は竹中氏の意向を受けたものであったと考えられる。

第一の視点について内容を補足する。この会合は、米国投資銀行ゴールドマン・サックスのCEOであるヘンリー・ポールソン氏、同COOであるジョン・セイン氏と、西川善文氏、竹中平蔵氏の4名による密会であった。

この後、ゴルードマン・サックスは三井住友銀行に5000億円のファイナンスを実施した。三井住友ファイナンシャルグループは、このファイナンスを契機に、限りなくゴールドマン・サックスの影響を受けることになる。

このことについて、読売新聞の渡邉恒雄氏は『文藝春秋』2009年1月号に、次のように証言している。

「僕は竹中さんから直接聞いたことがあるんだが、彼は「日本の四つのメガバンクを二つにしたい」と明言した。僕が「どこを残すんですか?」と聞くと、「東京三菱と三井住友」だと言う。あの頃はまだ東京三菱とUFJは統合していなかったんだが、「みずほとUFJはいらない」というわけだ。どうして三井住友を残すのかというと、当時の西川善文頭取がゴールドマン・サックスから融資を受けて、外資導入の道を開いたからだと言う。「長銀をリップルウッドが乗っ取ったみたいに、あんなものを片っ端から入れるのか」と聞くと、「大丈夫です。今度はシティを連れてきます」と言った。今つぶれかかっているシティを連れてきて、日本のメガバンクを支配させていたらどうなったか、ゾッとする。」
(この部分は「文藝春秋」からの引用)

 つまり、日本のメガバンクを二つにするとの考えをもって、竹中氏がゴールドマン・サックスによる三井住友への出資を斡旋(あっせん)したと解釈することができる。このこと自体、問題にされなければならない行動である。

 三井住友グループによる日本郵政支配は、その裏側にあるゴールドマン・サックスによる日本郵政支配の図式のなかで捉えなければならないのだ。これが第一の視点である。

 第二の視点は、菅義偉(すがよしひで)氏の役割である。

 菅氏は2006年9月に総務相に就任し、翌2007年3月に日本郵政公社総裁の生田正治氏を解任している。生田氏を排除して、西川氏による日本郵政公社支配を生み出した。西川氏は日本郵政公社総裁職を兼務したのちに、2007年10月に発足した持株会社としての日本郵政社長に就任した。

 日本郵政はこれまで指摘してきたように、財界による日本郵政私物化を絵に描いたような人事を実行した。日本郵政プロパー職員、日本郵政サービス利用者、生活者が取締役に一人も登用されない、異様な姿での出立であった。

 また、日本郵政公社時代の日本郵政保有不動産のバルク売却の不透明性も表面化している。旧郵政公社時代の所管大臣が竹中平蔵氏と菅義偉氏である。

 安倍晋三氏と竹中平蔵氏をつなぐ人物に杉山敏隆氏が存在し、安倍元首相の後援会である「安晋会」や「竹中平蔵経済塾」などの名が浮上する。「安晋会」には穴吹工務店などが名を連ねるが、こうした企業がバルク売却の買い手に登場する。

 西川善文日本郵政社長を力づくで続投させねばならないと考える勢力が存在するように見える。

鳩山総務相が「かんぽの宿」疑惑追及で、「郵政私物化」の氷山の一角を白日の下に晒(さら)しながら、日本郵政株式会社法第九条が定める

 
(取締役等の選任等の決議)、
「会社の取締役の選任及び解任並びに監査役の選任及び解任の決議は、総務大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない」

 
との条項を生かすことができなければ、鳩山氏はもはや政治家として存続する意味を失うだろう。

鳩山総務相は、もはや一歩も引き下がることのできない場所に身を置いてしまっている。

人気ブログランキングへ

人気ブログランキングへ

知られざる真実―勾留地にて― Book 知られざる真実―勾留地にて―

著者:植草 一秀
販売元:イプシロン出版企画
Amazon.co.jpで詳細を確認する

« 新型インフルエンザ政府対応の誤りと影響 | トップページ | 失政主犯竹中平蔵氏延命に懸命の田原総一朗氏 »

西川善文日本郵政社長解任」カテゴリの記事

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 西川善文日本郵政社長続投論を覆う黒い霧:

» NHKのニュース [森の木陰でなんじゃらほい♪]
筆者は関西在住です。ですから全国放送のニュースの後には地方局のニュースがはいります。インフルエンザのニュースなどは関西発のニュースが多いので同じ絵を2度見るはめになります。このあたりの工夫のなさは驚きでもありますが、もっと驚くのは兵庫県、神戸市のインフルエンザのニュースには学校や地域の人間が、大阪府のニュースになると橋下知事が出てきます。めったに井戸兵庫県知事や矢田神戸市長が画面に出ることはなく、橋下知事が突出しています。 民放でも、そのまんま知事と橋下知事のとりあげ方は異常です。経歴はご存知のよう... [続きを読む]

» 日本郵政社長をめぐり、孤立する鳩山総務相 [ 春 夏 秋 冬]
<日本郵政>西川社長「続投」表明 総務相「人事案はある」 5月23日0時43分配信 毎日新聞  日本郵政の西川善文社長は22日の会見で、続投への意欲を初めて公言した。「民営化の土台を築くことが私の責任で、途中で投げ出すわけにはいかない」との考えを表明。任期についても、「金融2社が上場できればいいが、上場の準備が整う状態になることが一つのめどになる」との考えを明らかにした。  鳩山邦夫総務相が「かんぽの宿」売却手続きに「不正義な部分があった」と発言していることにも「金融危機で不動産価格が下落するなど... [続きを読む]

» メディアが報じない民主党の実績 [とりにく]
ニュース見て気づきました?変更報道じゃ何をやっているか分からないでしょ。政権交代をするメリットはこれ。 [続きを読む]

» 警告!世界で一番危険な国 パキスタンの水爆開発 [米流時評]
  ||| クシャブ核施設の核兵器生産能力 |||  クシャブ核燃料炉2基を新設、年間4〜5発の核兵器用プルトニウム製造能力  援助資金を核施設建設に流用したパキスタン政府、米国側の指摘を否定できず いつもコメントをいただくうにまろさんは、今回の記事のパキスタンをはじめ、アフガニスタンや、イラン、そのほかにもお仕事で各国を旅された経験をお持ちのようで、普段のメディアでは聞けないような現地体験者の実感を、コメント欄で教えていただいてます。いつも本音のコメントをありがとう! unima... [続きを読む]

» 西川日本郵政社長続投表明 なぜ郵政にこだわるのか? [フォトライフ&はてブのダイアリー]
6月で任期満了を迎える日本郵政の社長・西川善文氏ですが、続投を表明しています。 これに異を唱えているのが鳩山総務相です。 http://b.hatena.ne.jp/entry/http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2009/05/post-88f5.html 民営化されたとはいえ日本郵政の株式は100%... [続きを読む]

» 小泉次男の世襲批判の隠れた理由は学歴問題か [non title]
【MSN産経ニュース】-「小泉さんらしからぬ」 町村氏が世襲批判 - 自民党の町村信孝前官房長官は17日のテレビ朝日番組で、小泉純一郎元首相が次男を後継指名したについて「率直に言っ... [続きを読む]

» 日本郵政 西川社長の続投に皆さんの意見をお願いします。 [ライフログ ダイアリー]
日本郵政・西川善文氏はかんぽの宿問題で総務省から業務改善命令を受け、さらに野党三党から特別背任未遂などの疑いがあるとして東京地検に刑事告発されながらも、指名委員会、取締役会での再任を受けて続投に意欲を燃やしています。 取締役の認可権限を持つ鳩山総務相は「....... [続きを読む]

« 新型インフルエンザ政府対応の誤りと影響 | トップページ | 失政主犯竹中平蔵氏延命に懸命の田原総一朗氏 »

有料メルマガご登録をお願い申し上げます

  • 2011年10月より、有料メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」の配信を開始いたします。なにとぞご購読手続きを賜りますようお願い申し上げます。 foomii 携帯電話での登録は、こちらからQRコードを読み込んでアクセスしてください。

    人気ブログランキング
    1記事ごとに1クリックお願いいたします。

    ★阿修羅♪掲示板

主権者は私たち国民レジスタンス戦線

  • 主権者は私たち国民レジスタンスバナー

    主権者は私たち国民レジスタンスバナー

著書紹介

サイト内検索
ココログ最強検索 by 暴想
2024年12月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        

関連LINKS(順不同)

LINKS1(順不同)

LINKS2(順不同)

カテゴリー

ブックマーク

  • ブックマークの登録をお願いいたします
無料ブログはココログ