政権交代への胎動が響くさいたま市長選
5月24日に実施されたさいたま市長選挙で、民主党埼玉県連が支持する元県議清水勇人氏(47)が、自民、公明両党の県組織推薦で3選を目指した現職相川宗一氏(66)ら無所属5人を大差で破り、初当選した。
民主党新代表に鳩山由紀夫氏が就任して初めての与野党対立選挙となり、注目を集めた。民主党支持候補が自公推薦候補に圧勝したことで、政権交代実現に大きな弾みがついた。
投票率は42・78%で、前回を7・27ポイント上回った。当選の報を受けた清水氏は支持者を前に「さいたま市の政権交代から日本全体の政治改革へのうねりに変わっていくことを期待する」と国政レベルでの政権交代に対する期待感を表明した。
鳩山新生民主党は力強い第一歩を記した。
惨敗した相川氏は「政党選挙は望ましくないと言っていたが、もろにそうなって残念だ」と記者団に述べた。今回の市長選が国政レベルでの「政権選択」の行方を左右する与野党対決選挙であったことを裏付ける発言だ。
鳩山新生民主党を中心とする新しい政権と麻生首相が総指揮者である自公政権のいずれが望ましいか。次期総選挙は、文字通り「政権選択」選挙になる。
私は、「政権交代」が必要だと思う。
その理由を五つ、以下に示す。
第一の理由は、これまでの「大資本のための政治」を「生活者のための政治」に変えることだ。
自民党政治は、巨大な「企業献金」に土台を置く政治である。西松建設事件で自民党は小沢前代表を攻撃するが、「政治とカネ」の問題が深刻なのは自民党である。
新聞報道が伝えた民主党鈴木克昌衆院議員調べによる07年度政治資金収支報告では、小沢代表の収入総額は全国会議員中71位、企業団体献金額は全国会議員中27位である。小沢氏の政治献金が問題とされるのなら、その前に問題にされなければならない国会議員が数十人もいる。その大半は自民党議員である。
本ブログでたびたび紹介してきたが、
自民、民主両党の2007年政治献金実績は、
自民:総額224億円、うち企業献金168億円
民主:総額 40億円、うち企業献金 18億円
経団連加盟企業の経団連を通じる企業献金は、
自民:29億1000万円
民主: 8000万円
である。金権体質は自民党の問題である。
麻生政権は13.9兆円もの規模の補正予算を策定したが、その政策の大半は「生活者を支援する政策」ではなく、「大企業を支援する政策」である。
エコポイント、エコカー支援策は、経団連企業の在庫一掃セール支援策であって、環境対策ではない。企業に金を渡す政策が目白押しで、生活者に直接手を差し伸べる政策がほとんど盛り込まれていない。
野党は次期総選挙で、「企業献金全面禁止」を政権公約に掲げる。これが実現すると、政治は「大資本」でなく「国民」の側に向かうようになる。これまでの自民党政治は「巨大な企業献金」を目当てにした「大企業の側に向いた」政治であった。この基本路線を転換する。
第二は、「官僚主権の政治」を「国民主権の政治」に転換することだ。麻生政権が提出した補正予算では、日本政策投資銀行と日本政策金融公庫の肥大化策が盛り込まれた。これは、財務省の最重要天下り機関である両機関を増強するための施策である。
また、58基金に4.6兆円の国費が投入され、補正予算全体の2割にあたる2.9兆円が天下り機関に注がれる。国民が窮乏生活を強いられているときに、官僚の天下りを焼け太りさせる予算が「てんこもり」に計上された。
麻生政権に「天下り」を廃止する考えはない。国民に対する政策は、絞れるだけ絞り、官僚利権だけは「てんこもり」にするのが現在の政治姿勢である。政権交代は「官僚主権の政治」を「国民主権の政治」に転換するために不可欠なのだ。
第三は、大衆大増税になる消費税大増税を阻止することだ。現在の自公政権は、「政治屋」が「官僚」、「大資本」、「米国」と癒着し、「御用メディア」に世論を操作して利権構造を維持しようとするものである。これを「政官業外電の悪徳ペンタゴンによる利権政治構造」という。「悪徳ペンタゴン」は次期総選挙で政権を維持して、消費税大増税を実施しようとしている。
この企みを妨害する、もっともうとましい存在が小沢一郎民主党前代表だった。小沢氏を排除し、消費税増税派である岡田氏を民主党代表に据えて大増税を実現しようとした。
しかし、ここに鳩山由紀夫氏が立ちはだかった。鳩山氏は次の総選挙後の政権任期中に消費税増税を実行しないことを確約した。「悪徳ペンタゴン」はこれを無責任だと攻撃する。とんでもないことだ。
鳩山新代表が主張するのは、「天下り」に象徴される、「官の無駄」を排除することもせず、大衆大増税など絶対に許さない、ということだ。当たり前のことだ。鳩山新代表がしっかり説明すれば、国民は必ず、どちらの言い分が正しいか理解するはずだ。
消費税大増税は、巨大な官僚利権を維持するために目論まれている政策なのである。こんなことを許して良いはずがない。
新聞、テレビは幹部が財務省の「財政制度等審議会」、「政府税調」に取り込まれているから、官僚利権を守る発言しかできなくなっている。メディアの堕落が日本弱体化の大きな理由である。
第四は、政治から世襲色を取り除くことだ。本当に優秀なら世襲でも良いだろう。世襲を禁止するわけではない。しかし、「地盤、看板、かばん」をすべて受け継いで選挙に出るのでは、「機会の公平」を保てない。
同一選挙区からの世襲立候補を禁止する。もちろん、無所属で当選したのちに追加公認するなどは、「抜け穴」以外の何者でもなく、認められない。
世襲議員は、政治資金を受け継がず、選挙区を変えて立候補しなければならない。
第五は、政治における人間性を回復させることだ。小泉竹中政治は、政治から「ぬくもり」を消し去った。「友愛」の言葉を受け止められない人がいるが、政治に「愛」が吹きこまれて、政治は初めて命の息吹を獲得する。
政治は困難な状況に直面した人々のために存在する。政治の力によって、例外なくすべての人が支えられることが、政治が果たすべき最大の使命である。この目的が達成されたときに、社会は強い連帯を取り戻す。
「絆」、「ぬくもり」、「慈愛」を否定し、破壊したのが小泉竹中政治だった。日本社会に「ぬくもり」を取り戻すこと。これが「政権交代」を実現する第五の理由だ。
御用メディアは、民主党代表選を通じて、次期総選挙に向けての与党との争点が見えてこない、と主張する。節穴としか言いようがない。
ここに示した五つの政権公約がそのまま総選挙の争点になる。
「官僚中心の政治」は「中央中心の政治」でもある。
「大資本の論理」、「官僚の論理」、「中央の論理」を基軸とする自公政治から、「生活者の論理」、「国民の論理」、「地域の論理」を基軸とする政治に転換する。これらによって、「革命」と呼べる変化が実現する。
鳩山新生民主党を軸に、社民党、国民新党、新党日本などが、叡智を結集して、政権交代の意義を国民に訴えてゆかねばならない。「政権交代」を求める国民の声が、いま、大きなうねりになり始めている。この流れをより確かなものにしなければならない。
![]() |
![]() |
知られざる真実―勾留地にて― 著者:植草 一秀 |
« 失政主犯竹中平蔵氏延命に懸命の田原総一朗氏 | トップページ | 内外経済金融に残存する三つの重大リスク »
「決戦の総選挙(3)」カテゴリの記事
- 反消費税・反TPP・反原発国民会議創設を(2011.12.19)
- 総選挙の隠された最大の争点(2009.09.07)
- 国民が主人公で国民のために存在する政治(2009.08.30)
- 多くの皆様のご厚情に深謝申し上げる(2009.08.29)
- 「無血市民革命」実現に向けて全力を投入しよう(2009.09.01)
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: 政権交代への胎動が響くさいたま市長選:
» さいたまや 政権交代 胎動し/さいたまに 交代うねり 全国へ/予想越え わかちょるよ(声なき声)の 民の声 [アルデバランの 夢の星]
色々引用させていただきました。どうぞ、よろしくお願いします。 [続きを読む]
» ヤスミン植月千春さん動画(2) [喜八ログ]
ヤスミン植月千春さん(ピアニスト・カーヌーン奏者・声楽家)の音楽動画を紹介します。「もやい・こもれび荘」(東京・飯田橋)での「イラクの子供たち絵画展」情報もお伝えします。 [続きを読む]
» 平成21年度補正予算案 [NEWS&youtube最新動画]
河村官房長官:09年度補正予算・関連法案の早期成立で、対策効果が十分 ...09年度補正予算・関連法案の早期成立で、対策効果が十分に出てくる=GDPで雇用の大幅調整など懸念材料あり、景気下押しリスクに配慮必要=13月期GDPで 発信元:ザイFX! 為替のとれたてニュース.(続きを読む)
政権交代への胎動が響くさいたま市長選また、58基金に4.6兆円の国費が投入され、補正予算全体の2割にあたる2.9兆円が天下り機関に注がれる。国民が窮乏生活を強いられているときに、官僚の天下りを焼け太... [続きを読む]
» 憲法改変は絶対に受け入れてはならない [ 春 夏 秋 冬]
先日憲法改正を主張しているブログのコメント欄に書きました事を、このブログにもコピーしましたが、あのコメント欄は、コメントの応酬がいまだに続いており、年がいもなく私も、いまだに反論を繰り返してきています。
双方とも、最後に残ったコメントが一番印象深くなると思うから、
相手に書かせっぱなしにするわけにはいかないということのようです。
その中で、sirokazeと名乗る人のコメントを見て、右翼とは此処まで言っているのかと呆れたコメントがありました。
その一部をコピーします。
北朝鮮に武力行使して、拉致被害... [続きを読む]
» 疑惑と陰謀の迷宮 パキスタン陸軍諜報部 I S I [米流時評]
||| 陰謀の迷宮 パキスタン諜報部 I S I |||
疑惑と陰謀の迷宮:冷戦時代にCIAが息を吹き込んだパキスタン陸軍諜報部 I S I
パキスタン・クシャブ核施設の鍵を握るのは、イスラム原理主義者の I S I 司令官
第1章 衛星写真で発覚!パキスタン・クシャブの新しい核施設
第2章 警告!世界で一番危険な国、パキスタンの水爆開発
第3章 真相暴露!パキスタンの核とアルカイダの危険な関係
からの続きです。冒頭は過去のアルカイダ関連記事のコメント欄から:
コロンブス... [続きを読む]
» 麻生総理は、日本郵政「西川社長の進退」をどうする? [ふじふじのフィルター]
昨日は、盧泰愚(ノテウ)前大統領が飛び降り自殺するというびっくりする報道があっ [続きを読む]
» 日本郵政 西川社長の続投に皆さんの意見をお願いします。 [ライフログ ダイアリー]
日本郵政・西川善文氏はかんぽの宿問題で総務省から業務改善命令を受け、さらに野党三党から特別背任未遂などの疑いがあるとして東京地検に刑事告発されながらも、指名委員会、取締役会での再任を受けて続投に意欲を燃やしています。
取締役の認可権限を持つ鳩山総務相は「....... [続きを読む]
» 【さいたま市長選】民主党は国民の期待に応えて、自公シロアリ政権を打倒せよ!【結果分析】 [ステイメンの雑記帖 ]
民主党の鳩山新体制発足直後24日に投開票が行われたさいたま市長選で、 自公シロアリ政権が推した現職や仲間割れして出馬した前衆院議員を押さえて圧勝を納めた民主党埼玉県連支持の清水勇人氏 が、26日午前に行われた民主党常任幹事会に出席したようである。
そしてその場で清水新市長は、 「さいたま市で“政権交代”を実現することができた。今後もさいたま市から新しい政治をつくっていきたい」と挨拶 し、出席者から盛んな拍手を浴びたようである。
そんな中、アホウ政権や産経など シロアリ勢力に大打撃を与えた今回の... [続きを読む]
» 裁判員制、5年前に「衆院は全党派一致で賛成、参院では2名だけが反対」⇒なぜこんなことが起きたのか? [雑談日記(徒然なるままに、。)]
以下は、平成海援隊BBSに投稿したものです。採録しておきます。 (No.20595)2009/05/22 20:04:11 裁判員法(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律)は平成16年・2004年5月21日に成立。衆院は全党派一致で賛成、参院では2名だけが反対(反対したのは社民党の山本正和参院議員と、既に故人の自民党の椎名素夫参院議員) ところが、現在では様々な問題点が理解されて昨日裁判員法施行日には「裁判員制度を問い直す議員連盟」総会が開催され、共産党以外の各党60名余の議員が参集しました。... [続きを読む]