NHK偏向と消費増税派岡田克也氏まんじゅう説
NHKが本日5月13日午後7時30分から『クローズアップ現代』で、「民主党 揺れる~小沢代表辞任の波紋~」と題する番組を放送した。
番組冒頭、司会者の国谷裕子氏は、「選挙に強い小沢代表の存在が理由となって小沢代表の辞任が遅れたことで民主党の自浄能力が問われている」との趣旨の説明をした。
「権力迎合新聞」とも呼ぶべき産経新聞と匹敵する、歪んだ報道姿勢がいかんなく発揮されていると言わざるを得ない。「日本放送協会」はやはり、実態に即して「日本偏向協会」に協会名を変更すべきではないか。
『クローズアップ現代』の偏向報道は、私も現実に経験済みである。詳しくは拙著『知られざる真実-勾留地にて-』第二章「炎」第17節「政治権力に支配されるNHK」をご高覧賜りたい。
今回の問題の発端は3月3日の政治資金規正法違反容疑での小沢代表秘書逮捕だった。検察捜査に対する評価は真二つに割れている。検察当局は「悪質な偽装献金」だと主張するが、政治資金規正法運用の第一人者とも言える元地検次席検事の郷原信郎名城大教授が、今回の検察当局の活動を厳しく糾弾(きゅうだん)している。問題を詳細に検証する限り、郷原氏の説明が最も強い説得力を有している。
小沢代表の秘書は法律に則って政治資金を漏れなく正確に記載していた。当初、マスメディア報道が憶測で報じた「裏献金」、「収賄」、「あっせん利得」などの事実も発見されなかった。「裏献金」、「収賄」、「あっせん利得」の疑いは自民党議員に濃厚に残存している。
ところが、検察当局は自民党議員に捜査の矛先をまったく向けていない。警察庁長官出身の漆間巌官房副長官が「自民党議員には捜査が波及しない」と述べたが、この発言はやはり、観測ではなく、政府の方針であったと考えられる状況が生じている。
この意味で、小沢代表秘書逮捕は、政治目的で検察権力を行使した「卑劣な政治謀略」である疑いが色濃いのである。元自民党国会議員で自治大臣兼国家公安委員長を歴任した白川勝彦氏も当初から、この見解を示し続けた。
NHK放送は、「今回の事件でマイナスイメージを受けた民主党は、そのイメージ回復に努めなければならない」と説明し、事件について、民主党、小沢代表に非があるとの判断をベースに置いた番組制作を示したが、根本的に間違っている。
報道機関は、裁判員制度の発足に際して、事件報道のあり方を根本的に改める方針を定めたのではないか。日経新聞が掲載した方針の一部を転載する。以下は日本経済新聞5月6日付記事からの転載である。
「犯人視しない事件報道に 日本経済新聞社の指針」
から、「公判の報道」の項目にある記述を転載する。
「裁判報道では、公判が始まったばかりなのに、検察の冒頭陳述の内容を確定した事実のように表現することがあった。これからは検察の冒頭陳述や論告についても、検察側の主張であることを記事に盛り込み、弁護側の主張も可能な限り同等に扱って、対等報道を心がける。」
(転載ここまで)
フランス人権宣言第9条を記す。
「何人も、有罪と宣告されるまでは無罪と推定される。ゆえに、逮捕が不可欠と判断された場合でも、その身柄の確保にとって不必要に厳しい強制は、すべて、法律によって厳重に抑止されなければならない。」
今回の問題では、元地検次席検事を務め、政治資金規正法の運用に精通する郷原氏が検察捜査の不当性を指摘し、元自民党議員で国家公安委員長を歴任した白川氏が麻生政権の行動を「卑劣な行為」と断じている。
当事者の小沢氏は、検察捜査の不当性を指摘するとともに、今回の辞任が政権交代実現を優先するための戦術的な選択であることを明言した。小沢氏からすれば、小沢氏は犯罪者でも容疑者でもなく、卑劣な国策捜査と偏向報道の最大の被害者なのだ。私にはその気持ちがよく分かる。
献金に問題があったとする見解以外に、これと完全に対峙(たいじ)する無実の訴え、不正な検察捜査を糾弾(きゅうだん)する見解が存在することを紹介しない報道は、客観報道の基本を完全に見失った、典型的な「偏向報道」と断じなければならない。NHKの劣化、権力への媚(こ)びへつらいも深刻な状況にまで進展している。
検察捜査が不正で、不当なものであるなら、報道機関が擁護すべき対象は小沢氏であり、民主党であり、卑劣な行為を実行した政治権力は厳しい糾弾(きゅうだん)の対象にされねばならない。
現時点で、どちらが正しいと決めつけることはできないだろう。しかし、対立する二つの見解が存在する以上、二つの見解を公平に扱うことが、放送法第3条の2が定める「政治的公平」のルールである。
番組は前原誠司氏と岡田克也氏を偏重して登場させた。両者のコメントには、総選挙を目前に控えたタイミングで、卑劣な政治謀略が実行された可能性に対する、敢然(かんぜん)たる闘争の姿勢が微塵(みじん)も存在しない。
これまでに明らかになっている客観事実からすれば、小沢代表、郷原信郎氏、白川勝彦氏が指摘する、不正捜査、政治謀略の可能性が明らかに高い。このことを踏まえれば、「政治謀略」を断じて許さないとの毅然とした姿勢が、野党第一党幹部として最低限求められる。
前原氏と岡田氏は、3月3日以降、意図的に創出された小沢代表批判の「世論」に動揺し、「このままでは政権交代が遠のく」として、小沢代表辞任論に加担した。
前原氏や岡田氏は、テロリストから「要求を飲まなければ命を奪う」と脅されれば、正義も国民も、友人も家族でさえ、テロリストに差し出してしまうに違いない。
番組の意図が、民主党代表選における岡田氏支援にあることはあからさまに見て取れる。自民党関係者の「岡田氏が代表になると総選挙を闘いにくい」発言は、「まんじゅう怖い」発言そのものである。
岡田氏は2005年9月の前回総選挙で民主党を大敗に導いた。前回総選挙で、民主党は大金を注いで、岡田氏が登場する「日本をあきらめない」との、意味不明のテレビCMを大量放映した。
私は岡田氏に書状を送り、小泉自民党が「国家公務員を25万人も削減する郵政民営化に賛成か反対か」を訴える時に、このままでは大敗する。「郵政民営化」に対して、「天下り根絶」の旗を掲げ、「郵政民営化と天下りの全廃。あなたはどちらが本当の改革だと思いますか」とのキャンペーンを張るべきだと進言した。
さらに、
「障害者自立支援法に代表される弱者切り捨ての見直し」
「イラク戦争に見られる対米隷属からの脱却」
を主張するべきだと進言した。
進言は生かされず、民主党は大敗した。岡田氏が捲土重来(けんどじゅうらい)を果たすのはまだ早いのではないか。岡田氏が大敗したのは、何と言っても前回総選挙なのだから。ポストへの野心ばかりが目立ってしまう。
「悪徳ペンタゴン」が岡田氏の代表就任を渇望(かつぼう)しているのは、岡田氏が選挙で闘いやすいことに加えて、岡田氏が「消費税増税推進論者」であることが最大の要因だ。岡田氏が民主党代表に就任すれば、選挙結果に関わりなく、2011年度以降に消費税大増税を実現できる。
また、岡田氏は「企業献金」と「天下り」を根絶しないと読まれている。
小沢代表が統率する「決戦の総選挙」の図式は何ひとつ変化していない。民主党は次期総選挙に勝利を収めたうえで、政治謀略の真相を白日の下に晒(さら)さねばならない。小沢氏はそのために、いったん身を引いたにすぎない。
「大義」を実現し、「正道」を取り戻すためには、鳩山氏を代表に就任させなければならない。鳩山政権のものとで、小沢氏は副総理兼法務大臣を担うことになるだろう。これによって、日本政治構造の刷新が初めて可能になる。
民主党支持者は本質を見誤ってはならない。16日の代表選では圧倒的多数で鳩山氏を選出するべきだ。
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知られざる真実―勾留地にて― 著者:植草 一秀 |
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