腐臭の立ち込める国に堕した日本
私たちはこの国のおかしさに気付かなければならない。3月3日に小沢民主党代表の秘書が突然逮捕されたとき、記者会見を行った小沢一郎民主党代表は検察捜査の不正を批判した。これに対して、自民党は激しい攻撃を浴びせた。「検察批判をするなど言語道断」だと言った。
ところが、漆間巌官房副長官の「自民党議員には捜査が波及しない」発言が飛び出した。小沢代表の資金管理団体とまったく同じ事務処理をした議員が自民党に多数存在するのに、小沢代表の資金管理団体だけが摘発された。
3月3日以降、マスメディアが小沢代表を誹謗中傷する報道を執拗に繰り返した。小沢代表が庶民の生活とかけ離れた巨額の企業献金を受け続けたとの攻撃が続いた。しかし、政治資金収支報告書を見る限り、小沢代表の政治資金管理団体は収入金額ランキングの上位10位にも登場しない。
2007年の政治家別政治資金収入金額ランキングは以下の通り。
1中川秀直(自) 4億4955万円
2亀井静香(国) 3億7725万円
3平沼赳夫(無) 2億9512万円
4古賀 誠(自) 2億7879万円
5山田俊男(自) 2億7695万円
6松木謙公(民) 2億7695万円
7森 善朗(自) 2億7021万円
8麻生太郎(自) 2億3383万円
9鳩山邦夫(自) 2億3182万円
10鳩山由紀夫(民) 2億2194万円
企業献金の金権体質に身も心も漬かり切っているのは自民党である。
自民、民主両党の2007年政治献金実績は以下の通り。
自民:総額224億円、うち企業献金168億円
民主:総額 40億円、うち企業献金 18億円
経団連加盟企業の経団連を通じる企業献金は、
自民:29億1000万円
民主: 8000万円
3月3日まで、小沢代表は「次の総理にふさわしい人物」調査で断トツのトップに君臨していた。政党支持率では民主党が自民党を大きく上回っていた。総選挙後の政権の姿として、民主党を中心とする政権を望む声が優越していた。
それが、3月3日の検察権力の行使、マスメディアの土石流のようなイメージ操作によって、すべて覆(くつがえ)された。自民党は「敵失」と言うが、本当に「敵失」か。「敵失」と言うからには、民主党が「失策」を演じていなければならない。しかし、民主党はまったくの「無実」である。
小沢代表が何をしたというのか。何もしていない。小沢代表は誠実に説明責任を果たした。この不条理、理不尽に直面して、涙を流さぬ者はいない。誠実そのものの姿勢を示し続けてきたのではないか。
1928年6月4日、関東軍司令部は奉天軍閥の張作霖を爆殺した。関東軍司令部は国民党の犯行に見せ掛けて張作霖の乗る特別列車を爆破して張作霖を暗殺し、それを口実に関東軍が満洲全土を軍事占領しようとの謀略を計画して実行した。
関東軍が爆殺事件の主犯であることについては、異説もあるが、ここでは深入りしない。関東軍による謀略との仮説に立つと、国民党は無実であったにも関わらず、奉天軍閥を率いる張作霖を暗殺したとの濡れ衣を着せられかけた。満州住民の批判が国民党に向けられかけたことは想像に難くない。
3月の小沢代表秘書逮捕は張作霖爆殺事件にもなぞらえられる。小沢代表が謀略を仕掛けられたと見るのが正しいと思われる。テレビメディアは次の総理にふさわしい人物調査で、小沢氏支持率が急落したことを確認して悦に入っている。麻生首相は笑いが止まらない心情を、分かりやすく表出している。
3月の小沢代表攻撃は同時に、民主党攻撃でもあった。「自民もだめだが民主もだめだ」の空気を生み出すキャンペーンだった可能性が高い。念頭に置かれていたのは3月29日の千葉県知事選挙だった。
民主党は候補者選定に手間取り、推薦候補確定が選挙直前にずれ込んだ。「自民もだめだが民主もだめだ」の世論誘導が誰に最も有利に働いたか。
それは「完全無所属」を前面に掲げた森田健作氏こと鈴木栄治氏だった。森田健作候補は、自民党籍を持ち、自民党政党支部長を務め、過去4年間に1億5030万円の政治資金を自民党政党支部から受け入れながら、有権者には、「政党とまったく関わりがない」ことを強調する「完全無所属」を徹底的にアピールした。
既成政党を嫌う有権者の多数が森田健作候補に投票した。この森田健作候補が政治資金規正法に違反していたことが明らかになった。
2005年、06年に、森田氏の政治団体は外国人持ち株比率が50%を超えている企業から980万円の献金を受けていたことが判明した。これは、政治資金規正法に明確に違反する行為である。
また、企業献金を政党支部で受け入れ、そのまま、森田氏の政治資金管理団体に移し替える「迂回献金」を行っていた。さらに、企業のCM出演など、個人の雑所得と見られる収入を、税金回避を目的に政治資金として計上したとの疑いも持たれている。
「森田健作氏を告発する会」が設立され、HPも開設された。本ブログにもリンクを張っていただいた。
公職選挙法第235条は、
「当選を得又は得させる目的をもつて公職の候補者の政党その他の団体への所属に関し虚偽の事項を公にした者は、2年以下の禁錮又は30万円以下の罰金に処する。」
と明記している。
森田健作氏は「違法でない」と主張するが、森田氏が「当選を得る目的をもって、自民党籍を持ち、自民党と強い関係を有しながら、自民党と関わりを持たない「完全無所属」であることを有権者にアピールした」ことは明白であり、公職選挙法第235条に定める「虚偽事項の公表罪」に抵触することは明らかである。検察当局が適正な対応を示さなければ有権者が黙っていない。
十分な説明を行った小沢代表に対して「説明責任を果たしていない」と主張し続けたマスメディアは、森田氏の行動を「説明責任を果たしていない」と追求しているか。
総選挙を目前にしたタイミングで、検察が無謀な権力行使に動いた裏側には、政治権力の意志が働いている。最強の政敵を、検察権力を行使して、根拠なく追い落とす、「卑劣な政治謀略」が実行されたことは明白である。
私たちが驚かなくてはならないのは、メディアがこうした事態推移を前にして、真相究明に動くのではなく、政権批判を封じ込めるとともに、政治権力の先兵として行動していることだ。合理性を持たない、不正な小沢代表批判を展開して、悪びれるところがない。
こうした腐った日本の腐臭に、敏感な人々が反応した。小沢氏を支持していない人でも、今回の推移の不正を見抜いた人々は、小沢氏辞任阻止に動いた。
関東軍の張作霖爆殺の謀略は真相が明らかにされ、奉天軍閥が国民党と和解して、日本は満州への影響力を失っていった。謀略は暴かれ、事態は再び逆転した。謀略が成功する保証はない。
問題は、小沢氏の留任が政権交代に有利か有利でないかの問題ではない。それ以前の問題だ。卑劣な政治謀略が成功を収める延長上に、「正道」は成り立ちようがない。「謀略」の成功を阻止して、「謀略」を粉砕(ふんさい)しなければならない。
この間、「かんぽの宿疑惑」が騒動の陰に隠れた。「年越し派遣村」でクローズアップされた「市場原理主義批判」も影が薄くなった。麻生首相は「政局より政策」を主張しながら補正予算提出を2ヵ月も先送りして支持率を10%割れに低下させた。しかし、この問題を記憶する人が少なくなった。
すべては、「悪徳ペンタゴン」の利権死守行動の結果である。
「腐った日本」の腐臭を感知しなければならない。「腐臭」のなかに居続けると、鼻が利かなくなって「腐臭」を「腐臭」と感じなくなってしまう。
日本は明らかにおかしくなっている。日本を立て直さなければならない。日本を立て直す責任を負っているのは誰か。それは日本国民、日本の有権者である。有権者が目を覚まし、腐臭を認知しなければ、日本人は身ぐるみ腐り果ててしまうだろう。
裁判員制度と知る権利 著者:梓澤 和幸,田島 泰彦 |
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