人間の運命を左右できる警察・検察の「裁量権」
法とその運用に関連するさまざまな事案が生じており、その考察が求められる。
小沢一郎民主党代表の公設第一秘書である大久保隆規氏は政治資金規正法違反の罪で逮捕、起訴された。保釈されたとの報道がないから、今も勾留され続けているのではないか。不当な長期勾留である。
小沢氏の政治資金管理団体は西松建設と関係のある「新政治問題研究会」と「未来産業研究会」の二つの政治団体から受け入れた企業献金を、二つの政治団体からの献金であると収支報告書に記載した。政治資金規正法の規定に則った適法処理であると考えられる。しかし、会計責任者の大久保氏の行為が「虚偽記載」だとされて摘発された。
まったく同じ事務処理をした、森喜朗元首相、二階俊博経産相、尾身幸次元財務相をはじめ、多数の自民党議員の政治資金管理団体に対しては、これまでのところ、まったく捜査が進展していないようだ。
数十万円の金品を窃盗した容疑で拘束された元財務相職員の高橋洋一氏は逮捕されず、書類送検されたことが報道されたが、その後、検察庁がどのように対応したのかが報道されていない。
大麻所持で摘発された大相撲力士の若麒麟は逮捕され、起訴されて執行猶予つきの有罪判決を受けた。同様に大麻所持で摘発された中村雅俊氏の長男中村俊太氏は、現行犯逮捕されたが起訴猶予処分で釈放された。
千葉県知事に当選した森田健作氏は、自民党籍を持ちながら選挙に際して、「完全無所属」であることを強調し、自民党と関わりのない候補であることを強調して当選した。
公職選挙法第235条は「当選を得る目的をもつて政党その他の団体への所属に関し虚偽の事項を公にした者」を処罰することを定め、第251条はその場合に「当選人の当選は無効になる」ことを規定している。
千葉県の多数の有権者が、森田健作候補が公表し、強調した「完全無所属」について、自民党と関わりのない候補者であると認識して森田氏に投票したと考えられる。
公職選挙法第235条を 「一般人の普通の注意と読み方を基準として解釈した意味内容」で捉える限り、森田氏の行為は同条文に抵触すると考えられる。千葉県の有権者が中心になって結成した「森田健作氏を告発する会」は、4月15日に、森田健作氏こと鈴木栄治氏を千葉地方検察庁に刑事告発した。
また、森田健作氏が代表を務める自民党政党支部が、政治資金規正法で禁止されていた外国人持ち株比率が50%を超える企業からの企業献金を、2005、2006年に受けていたことが明らかになった。
SMAPのメンバーである草なぎ剛氏が公然わいせつ罪の現行犯で逮捕されたことが報道されたが、検察は草薙氏を処分保留のまま釈放した。
私が巻き込まれた冤罪のケースでは、98年に足に湿疹があり掻いたことが犯罪とされた。2004年には、エスカレーターで立っていただけのところを警官に呼び止められ、罪を着せられた。私は防犯カメラ映像の検証を求め続けたが、警察は防犯カメラ映像を証拠として提出しなかった。また、被害者とされる女性から検察庁に、「被害届を出した覚えもない。起訴しないでほしい」との上申書が提出されたが、私は起訴され有罪とされた。
取り調べが開始される段階で、区検察庁の副検事が、「この件は地検が起訴する方針だ」と発言していた。はじめから起訴、有罪の方向が定められていたのだと思う。
2006年の事件は、現在、最高裁で公判係争中である。先日、最高裁で痴漢冤罪事件に関して、逆転無罪判決が示されたが、主な理由は、
①証拠が女性の供述だけである
②被害者が被害を回避する行動を示していない
③繊維鑑定の結果が有罪を示していない
ことなどであることが示された。
私が巻き込まれた冤罪事件では、
①被害者が犯行および犯人を直接目撃していない
②被害者が被害を回避する行動を示していない
③検察側目撃者が犯罪を立証する証人であるが、証言に著しい矛盾があり、その証言を信用することができない
④弁護側目撃証人が被告人の無罪を立証する証人であるが、証言は詳細な部分についてまで事実に即しており、極めて信憑性が高い
⑤繊維鑑定の結果が有罪を示していない
との構造が明らかにされている。
最高裁が、適正な判断を示すことが求められる。
日本国憲法は、罪刑法定主義(第31条)、法の下の平等(第14条)を定めているが、現実の法の運用において、広範な「裁量権」が警察および検察に付与されていることが、これらの原理、原則との関係で問題になる。
警察、検察は巨大な「天下り利権」を保持しているが、この「天下り利権」が警察・検察の巨大な「裁量権」と密接に関わっていることが推察される。
また、政治的な敵対勢力に対して、警察、検察権力が不正に、また、不当に利用されることも考えられる。
法律の定め以上に重要と考えられるのが、「法律の運用」である。とりわけ刑事事件における身体の拘束などの強制力行使、あるいは、刑事事件としての立件の判断などにおいては、「デュープロセス」の厳格な運用と、「法の下の平等」の確保が不可欠である。
日本の現状は、望ましい状況から程遠いと言わざるを得ない。
警察、検察は「取り調べの完全可視化」にも消極的であるが、先進国のなかで日本の警察、検察制度には、多くの前近代的な諸制度が残されている。
警察、検察行政は人間の運命を変える爆発的な力を有している。その運用が不透明であることは許されない。
「天下り」を中心とする巨大利権、警察、検察権力の政治利用の問題がとりわけ重大である。国民全体の問題として現実を検証し、必要な修正を実現してゆかなければならない。
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裁判員制度と知る権利 著者:梓澤 和幸,田島 泰彦 |
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知られざる真実―勾留地にて― 著者:植草 一秀 |
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