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2009年4月11日 (土)

麻生内閣真水15.4兆円「自民党危機対策」を決定

麻生内閣は4月10日、財政支出15.4兆円を含む、事業規模56.8兆円の史上最大の景気対策となる「経済危機対策」を決定した。

総選挙を目前に控え、巨大政治利権を死守するための、「目的のためには手段を選ばない」行動の一環である。

真水で15.4兆円の経済対策は規模で言えば破格の大きさだ。これだけの資金を投入するなら、極めて大きな政策を実施することができる。経済危機を克服することは大切だが、政治がまず優先するべきことは、「未曾有(みぞう)」の不況で悲惨な状況に追い込まれてしまった国民に、しっかりと手を差し伸べることである。

また、小泉竹中政治によって、国民生活は苦境に追い込まれた。15.4兆円もの財政資金を投入するなら、まずは小泉竹中政治が破壊し尽くした「セーフティネット」を再構築が優先されるべきだ。

ところが、麻生首相が提示した「経済危機対策」はまったく異質のものである。自民党は巨額の政治献金を財界から受け入れている。小沢民主党代表が企業献金全面禁止の方針を明示したこととは対照的に、自民党は巨額の企業献金にとっぷりと浸かり、金権体質から離れようとしない。麻生首相は「企業献金が悪だという考えにはくみしない」と発言している。

景気対策では自民党が巨額の政治献金を受け入れている大企業を巨額の財政資金投入で優遇する政策が、目玉として組み込まれた。民主党が提示してきた政策である「子育て支援」の資金援助政策を盗用し、1年限りで実施することも盛り込まれた。

今回の景気対策の目玉は、
①ハイブリッドカー購入への5万円から25万円の資金支援
②第1子を含めて、1年限り、年間3万6000円の子育て支援金の支給
③住宅の改修・改築にかかる贈与税の非課税枠を610万円に拡充
④研究開発減税の拡充
⑤羽田空港など公共事業拡大
などである。

麻生首相の「経済危機対策」は、
①選挙向け買収政策
②大企業優遇政策
③経済的弱者よりも金持ちを優遇
に特徴がある。

小泉竹中政治の「弱者切り捨て=セーフティネット破壊」政策により、国民生活の安心、安全が崩壊した。

経済対策で重要なことは、「裁量的な支出」ではなく、「財政支出のプログラム」を変更することだ。また、企業にお金を出すのではなく、困難な状況に直面する国民にお金を出すプログラムを構築することが求められている。

昨年末以来の雇用情勢の急変を見れば、失業保険の給付を制度的に大胆に見直すことが求められる。また、所得と住居を失う国民が確実に住居を確保できる制度を構築することが求められる。

「プログラム」を変更して「制度を構築」すれば、今後、永続的にセーフティネットが強化されることになる。ところが、「裁量的な支出」で、一時的に支出を拡大させる施策では、対象期間が終了すれば、セーフティネットは消滅してしまう。

失業対策の費用は失業者に給付するべきものだ。ところが、麻生内閣の施策の大半は、失業者ではなく企業に資金が支出される。「企業優遇」のスタンスがここでも顔をのぞかせる。

「定額給付金」も「3万6000円の子育て支援金」も総選挙用の買収資金との側面が色濃い。選挙の時だけ「バラマキ」を実行して、投票を誘導しようとの卑劣な政策である。

これだけの費用をかけるのであれば、セーフティネットを格段に強化することができる。障害者自立支援法が求める本人負担は障害者の生活を深刻に追い詰めている。障害者自立支援法の抜本見直しも可能になる。

生活困窮者が生活保護を受けられずに餓死する悲惨な事例も生まれている。日本国憲法が保障する健康で文化的な最低限度の生活が保障されていない現実がある。大型景気対策を打つなら、こうした国民の生活保障に万全を期すべきではないのか。

未曾有の危機は、企業倒産と大量失業を生み出している。このような経済危機に直面した国民の日々の生活をしっかりと支えることが景気対策の出発点に位置付けられるべきであるのに、そのような国民目線がまったく感じられない。

ハイブリッドカーだけに巨額の補助金を支出するのは、政府の民間経済への非介入に反するし、企業献金との見返りとの側面を見れば、極めて「収賄性」の高い施策である。

自民党は政策決定権をちらつかせて、大資本に企業献金を迫る行動を拡大させることになるのではないか。自民党は西松建設の企業献金と公共事業の関係を批判的に論じるが、巨額の企業献金を提供した企業のビジネスに巨額の補助金を注ぎ込むなら、ここにも典型的な「収賄」の構図が浮かび上がる。

今回の大型景気対策の裏側で大型消費税増税が動き始めた。1回限りの「給付金」を受け取っても、それをはるかに上回る増税が控えるのなら、国民生活にはまったくプラスにならない。

麻生政権は景気刺激策として、贈与税の無税枠拡大を提示したが、「金持ち優遇」の政策である。市場原理の「競争」を正当化する「市場原理主義」は、その前提として「機会均等」が重要であると主張する。

ところが、巨大な資産が相続されると、スタート時点で「持つ者」と「持たざる者」の巨大な格差が生じてしまう。相続税はスタート時点の格差を縮小させる効果を持ち、「生前贈与の無税枠拡大」は逆にスタート時点の格差を拡大させてしまう効果を持つ。

①セーフティネット強化の視点欠如
②生活安定化プログラム強化の欠如
③金持ち優遇
④大企業優遇
⑤選挙向け買収政策
が、今回の経済危機対策の特徴だ。「経済危機対策」というよりも、「自民党危機対策」とした方が分かりやすい。

国民は目先のバラマキに騙されてはならない。ニンジンの後ろに巨大増税が大きな口を開けて待っている。セーフティーネットも強化せずに15兆円もの財政資金を散財するのは、国民に対する背任行為である。選挙用買収景気対策に騙されずに、国民は賢明に次期総選挙での政権交代を選択しなければならない。

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