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2009年3月 2日 (月)

竹中平蔵氏の狼狽と「かんぽの宿」売却附則の矛盾

竹中平蔵氏は3月1日のテレビ朝日番組「サンデープロジェクト」で、
①鳩山総務相が「不透明だ不透明だ」と言って風評を煽っている。
②一括売却は国会附帯決議に基づいている。
③一連の動きは西川社長を追放する「陰謀」だ
と発言した。

一方、亀井静香議員は国民新党が調査しており、東京地検特捜部に刑事告発すると発言した。また、これは「犯罪だ」と明言した。

竹中氏は動揺を隠せなかった。

鳩山総務相が「不透明だ」と発言するのは当然だろう。

「カナダde日本語」の美爾依さんが「サンデープロジェクト」YOUTUBE映像と参考になる解説記事を掲載くださっているので、ご高覧賜りたい。「旧こづかい帳」様、ご回復をお祈りしています。ブログの継続も楽しみにしています。

西川善文日本郵政社長は「一般競争入札ではなかった」ことを認めた。日本郵政がプレスリリースした際に新聞各紙は「一般競争入札」と報道している。ところが、社民党の保坂展人議員が詳細を追及した結果、「一般競争入札」とは程遠い「不落随契」と呼ばれる「随意契約」だったことが明らかになった。

サンデープロジェクトが用意した一括売却のプロセスを記述したフリップには最も重大な事項が隠されていた。2008年10月31日に第2次選考が締め切られている。第2次選考参加資格企業がオリックス不動産、HMI社、住友不動産に絞られたが、選考に応募したのはオリックス不動産とHMI社の2社だけだった。10月31日の第2次選考が最終選考である。

この入札で、最高札を入れたのはHMI社である。日本郵政はこの最終選考ののちに入札条件を変更し、HMI社が入札を辞退したのだ。無理やりオリックス不動産を売却先に決定したことが鮮明である。この10月31日の最終選考がフリップに存在しなかった。あたかも、12月に最終選考がなされたかのような記載になっていた。テレビ朝日の姑息さには言葉もない。

これらの経緯が明らかになってくるときに、総務相が「不透明だ」と発言するのは当然である。しかも、日本郵政は総務省からの資料要求を拒み続けてきた。日本郵政株式会社法第14条、第15条に基づいて、鳩山総務相が立ち入り検査の可能性を示唆した結果、日本郵政はようやく関連資料を提出したのだ。「風評を煽っている」と言うのは言いがかり以外の何者でもない。

「かんぽの宿」問題を原点に帰って紐解いてみる。

「かんぽの宿」売却の根拠は2005年10月21日に成立した「日本郵政株式会社法」附則第2条に書き込まれた。民主党の原口一博議員によると、この附則は政府案決定の2日前に盛り込まれたとのことである。

法案に「かんぽの宿」売却を盛り込むことを指示したのは竹中平蔵担当相であったことが、衆議院予算委員会における政府委員の答弁で明らかにされた。

竹中氏自身は、著書『構造改革の真実』のなかで次のように記述している。

「メルパルクホールや簡保の宿など、本来の仕事つまりコア業務ではない(したがって競争力もない)ものは、資産を処分して撤退するべきだと判断した。」
(『構造改革の真実』177ページ)

 つまり、「かんぽの宿」は「本来の仕事=コア業務」でないから、処分して撤退するべきだと判断したと言うのだ。

 ところが、同じ竹中氏が2008年3月に次の発言を示している。小泉元首相と極めて親しい森稔社長の森ビルが経営するアカデミーヒルズのパネルディスカッションでの竹中氏の発言だ。以下に引用する。

「ここ数年で東京の開発はすごく進みましたが、六本木ヒルズを除けば、ほとんどがJRなどの跡地開発です。そうした開発しやすいリソースが今後どのぐらい出てくるんでしょうか。

ひとつは郵政がありますよね。ものすごい資産を持っていますから。ところが、郵政はこれまで法律で定められたこと以外はできなかった。東京駅前の一等地にありながら東京中央郵便局の有効利用できないのは、郵便と貯金と簡保しかやっちゃいけないからです。不動産事業はできなかった。

しかし、民営化すればそれができるようになる。日本全国にもっと有効活用できる施設がたくさんある。ちなみに、私の地元、和歌山の中央郵便局はお城の天守閣が一番きれいに見えるところにあるんですよ。これらの再生や活用も日本の都市を良くする1つのきっかけになるんじゃないかと期待しているんですが、どうでしょう。」

このパネルディスカッションに出席した隅研吾氏が次のように応じた。

郵便局はね、実は世界中で狙われている施設なんです。郵便制度が確立したのは20世紀初頭ですが、この頃の建物はグレードがいい。これは世界共通です。だから、その頃の郵便局の建物をホテルにした例ってすごく多いですよ。高級ホテルにぴったりなんですよね。日本でもそれができるとしたら、すごくおもしろいことになりますね。」

 郵政民営化以前、郵政は不動産業を行えなかった。ところが、民営化で不動産事業を行えるようになった。だから、東京駅や大阪駅近くの一等地不動産を活用して巨大な不動産業を行えるようになる。竹中氏は巨大不動産企業への転換を推進しているのだ。

 これに対して、「かんぽの宿」が「本来業務=コア事業」でないから、資産処分して撤退することにした、との記述は完全に矛盾している。同一人物の発言とは思えないものだ。

 東京中央郵便局の保存問題が再浮上している。重要文化財級の建造物の重要性を鳩山総務相が重視している。

 アカデミーヒルズのディスカッションを踏まえると、日本郵政は現在の東京中央郵便局の建物外観を維持して低層階と高層階をホテルにし、間を郵便局、商業施設、オフィスにすることを検討するのかも知れない。

 ホテルの名称は「JP・KANPOホテル」とでもするのだろうか。

 2005年10月の郵政民営化法では4分社化の骨格しか決めていない。「実」の部分を定めたのは「承継実施計画」なのである。郵政民営化法に基づいて2006年1月に「基本計画」が定められた。「基本計画」に基づき、「実施計画」が2007年4月までに定められることになった。

 ところが、2006年9月に小泉元首相が首相の座を退き、竹中氏は突然議員辞職した。竹中氏は辞任を前に、「実施計画」の骨格決定を前倒ししたのだ。この「実施計画」が郵政民営化の「実体」である。竹中氏は『構造改革の真実』240ページに、前倒しの骨格決定を記述している。無責任に議員職を放り出しておきながら、「実」の部分は確保しようとするのは、限りなくえげつないものに見える

 日本郵政公社の業務、人員、資産をどのように承継するのかが定められた。「実施計画」によって定められたのが、以下の人員、不動産配分である。

      人員(万人)   不動産(億円)
日本郵政   0.36     2250
郵便事業  10.01    14030
郵便局   12.07    10020
ゆうちょ   1.16     1200
かんぽ生命  0.54      900

 「ゆうちょ」、「かんぽ」は、340兆円の資金を引き継ぐが、人員と不動産をほとんど承継しない。「ゆうちょ」、「かんぽ」でのミソは、「独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構」が設立されて、旧法下の資金に「政府保証」が付与されたことだ。損失が生まれたら、政府が損失補填する条項が盛り込まれた。

 「ゆうちょ」、「かんぽ」の株式支配権を獲得する者は、損失補填の権利付きで340兆円の巨大資金を獲得できるのだ。

 日本郵政、郵便局、郵便事業の三社で2.6兆円の不動産を保有する。将来的に、お荷物になる「郵便事業会社」に人件費負担を押し付けて、「郵便事業会社」が切り離される可能性もあるだろう。拙著『知られざる真実-勾留地にて-』に記述したように、外資プラス売国勢力の「ハゲタカ一族」は当初から340兆円の巨大資金と日本郵政保有巨大不動産に狙いを定めていたと推察される。

 巨大で貴重な国民財産が私物化される。

 日本郵政は巨大営利企業になる。巨大不動産を日本郵政が政府、国会、国民の監視を完全に離れて、自由に処分、活用できることになれば、巨大利権の巣窟になる。

 たとえば日本郵政が保有する土地を、特定の利害関係者に不当に安く売却するなら、その経済効果は、貴重な国民資産が一部の利害関係者の利得に転換することを意味することになる。

 国民が支持した「郵政民営化」とは、このようなものだったのか。

 竹中氏は、「民営化」した以上、政治は日本郵政の経営に口出しするな、と言う。不透明な資産売却に「待った」をかけた鳩山総務相に対して「根本的に誤っている」と断言した。しかし、日本郵政株式の100%を日本政府が保有している以上、政治と行政と国民は日本郵政を監視する責務を負っている。根本的に誤っているのは竹中平蔵氏である。

 2008年10月2日付朝日新聞への投稿「私の視点・郵政民営化1年」には、「政治は邪魔をするな」のタイトルを付して、日本郵政の行動に対する政治の監視排除を主張している。Kanematsu Koichiro氏による関連ブログ記事を参照賜りたい。

 「議員をやめてせっかく巨大利権の刈り取りを開始したところだ」、「政治は邪魔をするな」ということなのだろうか。そのような邪推さえ生まれる。

 国会の附帯決議は「雇用の安定に配慮すること」だが、オリックス不動産に付された雇用維持期間は1年でしかなく、2年の転売規制も抜け穴規定で拘束力がないことが明らかになった。3200人の雇用維持と言うが、この人数は非正社員を含んでおり、具体的な雇用維持条件が公表されていない。

 この程度の条件であれば、施設売却と切り離すことも可能だったのではないか。いずれにせよ、国会附帯決議と一括売却は直接的に結びつかない。

 「かんぽの宿」売却は西川社長ファミリー直結のプロジェクトと考えられる。不動産事業を本格化する日本郵政が「本業でないから「かんぽの宿」を売却して撤退する」と言うことは、竹中氏の論理破綻を示している。

 「かんぽの宿」売却で特別背任未遂が明らかになれば、問題は刑事事件に発展する。これは「陰謀」でも何でもない。国民資産を収奪する行動が「陰謀」なのだ。

 東京駅前郵便局の改築に「待った」がかかったが、「郵政民営化」を根本から「見直す」ことが絶対に不可欠だ。「民営化」を進めるにせよ、国民の利益につながる「民営化」でなければならない。一部の関係者が利得をむさぼる「民営化」の現実がはっきりと見えてきた以上、新たなルールを定めるまで、すべての資産売却、不動産再開発事業を凍結するべきである。

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