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2009年3月23日 (月)

「国策捜査」=「知られざる真実」への認識拡散効果

「国策捜査」に対する国民の認識と関心が高まった。

国民は警察・検察、司法を中立公正の存在=正義の味方と考えがちである。しかし、実態は間違いなく違う。

この事実を実感として正しく認識している者は少ない。

テレビ局は警察・検察、司法を「HERO」として描くドラマを繰り返し制作する。考えてみればすぐ分かる。事件報道のニュースソースの大半は警察・検察情報である。

多くの企業が警察、検察から「天下り」を受け入れる。警察・検察の判断は規定に基づく機械的なものでない。巨大な「裁量」に基づく。「裁量」は簡単に「利権」に転化する。企業が警察・検察からの「天下り」を受け入れるのは、警察・検察に巨大な「裁量権」が付与されているからである。

漆間官房副長官が西松建設献金事件に関連して、「自民党議員に捜査が波及することはない」と発言したことが大きな問題になった。小沢一郎民主党代表の公設秘書が突然逮捕されたことが「国策捜査」であったことを、漆間氏が告白する結果になった。

記者クラブに所属する20人の記者が漆間官房副長官の発言を確認しながら、その後、漆間氏の責任を追及できなかったことに、報道機関と政治権力の癒着が如実に示されている。

「国策捜査」について、多様な定義が施されているが、難しく考える必要はない。政治権力が政敵を攻撃するために警察・検察権力を活用することが「国策捜査」である。「国策捜査」との判断をめぐる意見について、「ふじふじのフィルター」様が示唆に富む考察を掲示してくださっているのでご一読賜りたい。

今回の小沢氏周辺に対する捜査は、典型的な「国策捜査」の一類型であると判断して間違いないと思う。各人の判断は異なるから、「私は今回のケースは「国策捜査」ではない」と考える人が登場しても不思議ではない。河村官房長官が記者会見で、「今回の捜査活動は「国策捜査」の一環である」と表明すれば決着はつくだろうが、恐らくそのようなことはしないだろうから、世間での評価は分かれるのだろう。

しかし、大久保隆規氏が逮捕された当初の段階で、小沢民主党代表が「検察権力の不当な行使」と述べた意味は大きかった。

小泉政権以降の自公政権が警察・検察権力を政治目的に活用してきていることは、関係者の間では常識に近かった。

警察・検察組織は制度上、行政機関に分類される。行政機関の長として指揮命令系統のトップに位置するのが内閣総理大臣である。

裁判所は司法機関として行政権から独立していることとされるが、最高裁判所判事の任命権は内閣にある。各裁判所の人事は最高裁に統括されるから、人事の運用方法によっては、内閣総理大臣は裁判所人事にも介入し得る。

報道機関は事件報道を警察・検察からのリークに依存する。事件捜査中に容疑者の供述内容や事件の背景などが「関係者によると」などの枕詞(まうらことば)とともに報道されるが、このほとんどすべてが当局からのリーク情報である。

報道機関はニュースソースを秘匿するから、情報源を確定することができない。ニュース報道は、「・・・が関係者への取材で分かりました」などと伝えるが、実際に報道機関が取材せず、検察のリーク情報などを書き換えていることがほとんどである。

マスメディアは所管官庁に許認可権限を握られている。NHKも予算を含むすべての監督権限を総務省に握られているから、政治権力に抵抗することができない。

民間のメディアは存立基盤をスポンサーに握られているから、スポンサーの意向に抵抗できない。スポンサーの大半は政治権力に対抗しようと考えない。政治権力に迎合する企業が大半を占める。

政治権力・大資本・外国資本・マスメディアは結託して「御用放送」を制作するのである。「官僚機構」も「天下り」維持の権益を確保し、利権互助会の一角を占める。

小沢民主党代表の公設第一秘書が逮捕され、マスメディアが小沢氏と民主党に対する土石流のような集中攻撃を実行したために、世論調査には少なからぬ変化が生じた。

麻生政権の支持率は僅かに上昇した。次期首相にふさわしい人物としての小沢氏の評価がやや低下した。政官業外電の悪徳ペンタゴンが、政権実現を死に物狂いで回避しようとしている現実が露わになった。

しかし、ネットにおける「国策捜査」批判の声も大きかった。自民党幹部は「国策捜査批判」を頭ごなしに否定したが、一般国民の受け止め方は違った。

①総選挙直前に野党第一党党首が狙い撃ちにされた
②秘書逮捕の容疑事実はこれまで報告書の修正で済まされてきた内容だった
③与党議員に大きな疑惑が存在するのに与党には捜査が及んでいない
④職務権限との関係では森喜朗氏、尾身幸次氏、二階俊博氏などへの政治献金の内容が明らかにされなければならないが、捜査が及んでいない
⑤マスメディアが小沢氏の「収賄」や「あっせん利得」を示唆するイメージ報道を繰り返した

⑥マスメディアが検察批判をせずに、民主党批判を繰り返した
⑦マスメディアが小沢民主党代表の辞任を執拗に要求している

これらの現実を冷静に見つめると、一連の捜査と報道の性格が誰の目にもはっきりと浮かび上がってくる。

麻生政権は窮地に追い込まれて、禁じ手に手を染めてしまったのではないか。「天網恢恢疎にして漏らさず」というが、「過ぎたるは及ばざるがごとし」である。

政治権力が政権交代を阻止するために、手段を選ばぬ攻撃を仕掛けてくることがわかった。この点においては、今後も油断は許されない。巨大な国家権力を握っていることの意味は重大だ。

しかし、問題の一部が露見したことによって、新たな活路も開けてくる。国民に「知られざる真実」を伝えることの重要性が著しく増大した。

日本社会の暗黒化をこれ以上許してはならない。明るい社会、安心して暮らせる社会を実現するには、政権交代によって巨大権力を国民の側に取り戻さなければならないのだ。

小沢代表続投は短期的には政権交代可能性を低下させる選択に見えるかも知れない。しかし、より重要なことは、今回の小沢氏排除を狙う一連の経過の意味を広く国民に知らせることである。

「知られざる真実」を国民に正確に伝え、日本の政治状況を根底から刷新する必要を訴えるには、当事者である小沢氏が先頭に立って進むことが必要だ。今回の国策捜査事件を風化させてはならない。

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