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2009年2月26日 (木)

「かんぽの宿」落札SPCの実態と政府紙幣発行論議

『金利・為替・株価特報』085号の発行日が2月27日になります。やや変則的な発行日となりましてご不便をおかけいたしますが、なにとぞご了承賜りますようお願い申し上げます。なお、086号の発行日は3月9日を予定しておりますので、併せてご案内申し上げます。

『月刊日本』2009年3月号に拙稿が掲載されましたので、なにとぞご高覧賜りますよう謹んでお願い申し上げます。

巻頭特集「小泉・竹中売国路線を断て!」に
「小泉路線にトドメを刺せ」 亀井静香
「郵政私物化を狙う宮内・西川を糾弾する」 稲村公望
「竹中売国政策を暴く」 植草一秀
の3本の論文が掲載された。

拙稿は見開き8ページの論文で、小見出しを列挙すると
噴出する小泉・竹中政治のツケ
財界の利益優先を図った竹中
「かんぽの宿」売却疑惑に竹中の影
郵政民営化の狙いは「郵政米営化」だった
官僚利権を温存した竹中
「竹中・西川・宮内」闇のトライアングル
マスコミに騙されるな
となっている。

文章タイトル、小見出しはいずれも編集部によるもの。論文前半では雇用情勢悪化のなかで浮かび上がった「市場原理主義経済政策」のひずみと、「かんぽの宿」疑惑によって浮かび上がった「郵政民営化」の実態を論じた。

後半では、小泉竹中経済政策の問題点を、マクロ経済政策の論点、金融危機対応策の視点から論じ、マスメディアの問題についても言及した。ぜひ、ご高覧賜りますようお願い申し上げたい。

「かんぽの宿」疑惑に関連して、衆議院の予算委員会や総務委員会で引き続き追及が続けられている。NHKのテレビ中継がなく、また大手メディアの報道が少ないが、重要事実が明らかにされている。

2006年2月の入札では、落札したコスモスイニシア以外に応札したのは1社だったが、その1社は「有限会社スルガホールディングス」という資本金300万円の企業であったことが明らかにされた。

日本郵政公社による国民資産払い下げでは、旧リクルートコスモスのコスモスイニシアを代表とする企業グループが、3回の入札で3回とも落札したことがすでに明らかにされているが、このグループでは、
コスモスイニシア
東急リバブル
穴吹不動産センター
リーテック
レッドスロープ
長谷工コーポレーション
などの企業が名前を連ねる。

また、
CAM7
CAM6
G7-1
という名の特別目的会社(SPC)が名前を連ねる。

このなかのCAM7はリサ・パートナーズ(ジャスダック8844)の連結子会社だと見られている。この会社の役員には旧日本長期信用銀行出身者が名前を連ねているとのことだ。

旧長銀の粉飾決算に関する刑事事件訴訟では最高裁で逆転無罪が言い渡された。この日本長期信用銀行内部調査委員会の委員長を務めたのが川端和治弁護士だが、この川端氏が、今回、日本郵政が設置した第三者検討委員会の3名の委員のうちの一人に選任されている。

「第三者検討委員会」と聞くと、つい中立公正の第三者機関と勘違いしてしまうが、人選によっては「中立公正」でない「出来レース」の委員会になってしまう。

郵政民営化に伴う国民資産不正売却疑惑は、問題発覚の端緒となった①「オリックス」ルート、以外に、②日本郵政公社時代の「コスモスイニシアルート」、さらに日本郵政が不動産開発事業を手掛ける日本郵政の③「CRE部門」ルートの三つのルートから追及してゆかなければならない。

②「コスモスイニシアルート」では、「ネットゲリラ」様「ふじふじのフィルター」様「わんわんらっぱー」様「東京サバイバル情報」様Tokyonotes 東京義塾」様「東京アウトローWEB速報版」様「誠天調書」様などが、丹念に事実関係を追跡されている。

②「コスモスイニシアルート」の問題を明らかにすることが、全容解明につなげる近道かもしれない。「オリックスルート」の実態解明と並行して真相究明が求められる。

麻生首相が訪米したが、オバマ大統領が議会演説を控えていたため、日米首脳会談がスケジュールの合間を縫っての消化行事になってしまった。麻生首相はホワイトハウスへの最初の訪問者になりたかったのかも知れないが、訪米するなら、十分な時間を確保してじっくりと交流を深める必要があったのではないか。

世界経済は戦後最悪の不況に突入している。米国では大手金融機関の破綻懸念がくすぶっている。ビッグスリーの経営安定化はまだまったく見えていない。

日本経済は年率換算二桁のマイナス成長に突入し、金融機関の経営不安が表面化し始めている。

結論から言えば、大型財政政策の発動が不可欠である。麻生政権は2008年度の二次にわたる補正予算、2009年度本予算で、「75兆円の景気対策を用意した」と言うが、GDPを増大させる「真水」は12.5兆円しか盛り込んでいない。

財政政策の発動が不可欠なのだ。このなかで急浮上しているのが「政府紙幣発行論議」だ。最近になって「政府紙幣発行」を主張し始めたのは、高橋洋一氏、渡辺喜美氏、などに連なる「偽装CHANGE」勢力である。

一方、従来から「政府紙幣発行」を主張してきた人々が存在する。両者が混在して、論議が混乱している。

政府紙幣発行を主張する人々の系譜には二つの流れがあり、ひとつは「積極財政を主張する人々」であり、いまひとつは、「量的金融緩和論から政府紙幣発行論に転じた人々」である。

後者の立場の代表が、竹中平蔵氏を理論面で指導してきたと見られる高橋洋一氏である。しかし、このグループの人々の主張には安定感がない。

そもそも高橋洋一氏は「財政政策の無効性」を訴えてきた人物である。「財政政策の無効性」の根拠は、「リカードの等価定理」と「マンデル・フレミング理論」である。

簡単に言えば、「リカードの等価定理は、国債を発行して財政支出を増やしても、人々が将来の増税を予想して支出を減らすから効果がない」というもの。「マンデル・フレミング理論は、財政支出を増やしても金利が上昇し、為替レートが上昇して、効果が相殺される」というもの。

これらを根拠に高橋氏のグループは財政政策を否定してきた。高橋氏のグループが主張したのは量的金融緩和政策だった。私は、「ゼロ金利の下で日銀が短期金融市場に大量のベースマネーを供給しても効果はない」と主張してきた。限界的な信用乗数がゼロの局面では、量的金融緩和政策はマネーサプライ増大効果を持たない。

高橋氏が「ヘリコプターマネー」として「政府紙幣」をマネーサプライ増大のために主張するなら、従来の量的金融緩和政策論からの「転向」を意味する。ただし、この場合も、銀行部門に還流する政府紙幣を日銀が保有し続けなければ効果は持続しない。日銀が保有し続けることは、国債の日銀引き受けと同じ意味になる。

政府紙幣による財政支出が景気対策の効果を挙げるとするなら、高橋氏はそのメカニズムを明らかにする必要がある。合理的期待を前提とする「リカードの等価定理」からはこの結論は導かれない。高橋氏は「イリュージョン」の成立を前提にするのだろうか。

短い行数の説明では分かりやすい説明は不可能で、機会を改めるが、重要なのは、高橋洋一氏のグループの唱える「政府紙幣発行論」の論理的基盤が極めて脆弱であることを知っておかなければならないことだ。総選挙向けの「人気取り政策」の疑いが濃厚である。

財政政策の発動が必要であると主張するエコノミストグループは、オーソドックスに国債発行による財政政策発動を主張するべきである。世の中に「うまい話」は存在しない。政府紙幣発行による財政政策が有効である場合は、国債発行による財政政策発行も有効である。

「政府紙幣発行論」には「円天による経済政策」とも呼ぶべきイリュージョンに依存する側面がある。経済政策発動においては、イリュージョンへの依存を避けることが正しい。「政府紙幣発行」によらない財政政策発動を検討するべきである。

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