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2009年2月 1日 (日)

フジ「サキヨミ」-「かんぽの宿」疑惑のコメンテーター

フジテレビ番組『サキヨミ』が「かんぽの宿疑惑」を報道した。「神州の泉」主宰者の高橋博彦氏が指摘されたように「サキヨミ」は先般、米国による対日内政干渉文書である「年次規制改革要望書」を特集で取り上げた。マスメディアの行動に微妙な変化の兆しが見えている。

今晩の「サキヨミ」では、300億円近い費用が投入された「ラフレさいたま」の事例、鳥取県の1万円で譲渡され6000万円で転売された「かんぽの宿」の事例が紹介され、さらに1000円で譲渡された社宅が映像を織り交ぜて報道された。

スタジオに戻り、コメンテーターがコメントをしたが、エッセイストの岸本裕紀子氏と長嶋一茂氏が正論を述べたのに対して、元ルイ・ヴィトン・ジャパン社長の藤井清孝氏と時事通信社の田崎史郎氏のコメントは聞くに堪えなかった。

岸本裕紀子氏は、「細かなことはいろいろとあるのだろうけれども、多くの人が大変な思いをしているときに、ごく一部の人だけが不正な利益を手にしているのではないかとの思いを抱かせる「渡り」の問題などと重なって感じられる」といった趣旨の発言を示した。

また、長嶋一茂氏は、「そもそも郵政民営化や規制改革について、小泉元首相-竹中平蔵氏-宮内氏が関わり、その延長上で三井住友銀行から西川氏がこれらの人々によって日本郵政社長に起用された経緯を踏まえると、このような事態は問題が多いと思う。入札の情報が広く一般に知らされていなかったことがそもそも大きな問題なのではないか。雪のなかを一生懸命、郵便物を配る職員がいることを考えても、経営トップにある者は、株式会社形態に転じて間もない時期の行動であることを踏まえて、もっと透明な方法を取らなければならなかったのではないか」といった趣旨の発言を示した。

岸本氏と長嶋氏の発言は見識ある考えを示すものだった。問題の本質をお突いており、一般的に国民が感じる率直な感想も踏まえて的確に語られたと感じる。

これに対して、藤井氏と田崎氏の発言は奇怪極まるものだった。

番組司会者が、「そもそも今回の問題は、オリックスへの一括売却決定の経緯に不透明な部分が存在するところから発生した問題で、入札の方法にまったく問題が無ければ、鳩山総務相が問題提起することも無かった問題だと思います」と説明した上でコメントを求めたのにも関わらず、藤井氏は「入札が公明正大に実施されたことを前提として考えると」と前置きして意見を述べた。

その内容は、「「かんぽの宿」は年間50億円の赤字を計上している。これを100億円で売却する話が流れるのだから、1年後に150億円以上の価格で売却されなければならないし、その価格以上で売却できなければ、背任容疑も生じる」というものだった。

そもそも「入札の経緯に不透明な部分がある」ことが問題にされているのに、「入札が正当に行われたことを前提に」話をするのでは、話にならない。

本ブログで何度も記述し、番組の中で鳩山総務相もコメントしていたが、「かんぽの宿」の赤字を放置することが問題なのだ。「かんぽの宿」は利用者の福祉向上を目的に低料金が設定されていた。また、減価償却費が高いことも収支赤字の一因であると考えられる。黒字化する方策はいくらでも存在する。50億の赤字継続を前提にする計算が「トリックの核心」であるのに、それをそのまま援用するのは、日本郵政の弁解を代弁しているに過ぎない。

「背任」というが、「誰の誰に対する背任」なのか。鳩山総務相が貴重な国民資産の売却に不透明な部分が存在することを問題視し、不透明な部分を明らかにしようとすることは「背任」ではない。「正義」の行動だ。藤井氏の見識が疑われる。というより、藤井氏の背景が透けて見えた。

田崎氏は、「100億円にしか評価されない「かんぽの宿」に2400億円もの資金が投入されたことが問題である。また、発注先に郵政ファミリー企業が多数含まれている。今回の問題は自民党にとってマイナスに作用する」といった趣旨の発言を示した。まったく支離滅裂である。

今回の問題は「100億円が実態に比べて低すぎると判断できること」が出発点に位置する。それを「100億円にしか評価されないことが問題」というのは、100億円の評価が正しいということを前提にした発言だ。

「簡易保険が「かんぽの宿」事業を行う必要があったのかどうか」はまったく別の問題だ。これまでに議論され尽くされてきた問題でもある。年金資金も簡保資金も宿泊施設事業を行ってきたが、その問題点はこれまで指摘され尽くされてきた。問題の存在を否定しないが、今回の問題とはまったく別のテーマである。

田崎氏の発言は、今回の問題の追及を受ける側が、判で押したように示す「論理のすり替え」である。不効率な官僚機構の業務、「天下り」、利権の拡大行動は、別途いくらでも論じればよい。だが、いま問題になっているのは、「郵政民営化」の美名の下に、不透明な利権行動が展開されているとの疑惑が新たに浮上しているという問題なのだ。「他にも問題があること」を指摘するなら理解できるが、109億円での売却にはまったく問題が無く、2400億円を投入したことだけが問題だとする田崎氏の発言には、無理がありすぎる。

実際に、番組では「ラフレさいたま」の時価評価、社宅9施設の実態、1万円で売却された「かんぽの宿」、1000円で売却された社宅の事例について検証が実施されている。「ラフレさいたま」だけで100億円以上の価値があると見なされている。1000円の社宅は420万円の実勢価格があるとされた。 

田崎氏は3000人の雇用確保の条件が付されていると発言したが、「かんぽの宿」の転売制限は2年間に限られていると伝えられている。3000人の終身雇用が条件に付されているのか。詳細が判明していないので断定は出来ないが、終身雇用の保証までは求められていないのではないか。

田崎氏の「自民党にとってマイナスではないか」の発言に、田崎氏の立ち位置が明確に示されていた。

視聴者は「かんぽの宿疑惑」報道を、「自民党にとって有利か不利か」の視点で視聴していない。コメンテーターには、中立公正、正義・正当性の視点からのコメントを求めているのではないか。番組コメンテーターが国民の視点から問題を捉えるのではなく、自民党にとっての得失の視点で思考していることが露(あら)わになり、視聴者は唖然(あぜん)としたと思う。

田崎氏は、鳩山氏が問題究明を進めることについて、「自民党の改革が後退するとの印象を与える可能性が高い」と、鳩山氏の行動を批判すると受け取れる発言を示した。馬鹿なことを言ってもらっては困る。

貴重な国民資産が不透明に、不正に売却されることを防ぐために、所管大臣が問題の徹底解明を求めることが「改革に逆行する」と述べるのなら、そのような「改革」などドブに捨てたほうがましだ。田崎氏はこの発言ひとつで、完全に馬脚を現してしまった。

三宅久之氏と田崎史郎氏のテレビ登場頻度が過去5年間に激増したが、その背後で政治が蠢(うごめ)いた。三宅氏も田崎氏も「小泉一家」に連なる人脈、「小泉一家」によるメディア・コントロールの一環として、テレビメディアに登場したと考えられる。この日のキャスティングでは、藤井氏と田崎氏が「特命」を帯びた出演者だったと考えられる。

田崎氏は硬直した表情で発言していたが、無理筋の発言は見ているだけで痛々しかった。政権交代が実現する場合には、テレビ・新聞のマス・メディア言論空間偏向の深層を徹底的に検証し、総括しなければならない。

「サキヨミ」で「かんぽの宿」問題が大きく取り上げられたことは有益だった。「特命」を帯びたコメンテーターが「火消し」することが番組の狙いだったのかも知れないが、この目的は完全に失敗した。

「Tokyonotes 東京義塾」様がすでに記述されているが、オリックスの筆頭株主に名前を連ねる日本トラスティー信託銀行が日本郵政公社が外部委託する郵貯・簡保機構が保有する債券管理業務をマイナス9.8億円で落札した問題にも、新たに関心が注がれ始めた。

いずれにせよ、「かんぽの宿疑惑」の全容解明が不可欠である。重大な問題が明らかになった以上、日本郵政株式売却については、まずは凍結することが求められる情勢になった。

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