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2009年1月23日 (金)

消費税:選挙にマイナスだから知らん顔ですか

 「かんぽの宿疑惑」について、社民党の保坂展人議員が本ブログ記事の内容を引用してくださった。保坂議員には国会での問題の徹底追及を強くお願い申し上げたい。保坂氏のブログ記事を読むと、日本郵政による入札が極めて短期間に行われたことがわかる。

HPのトップページなどに「重要なお知らせ」などとして、情報が行き渡る姿勢がとられていたのかどうかも確認する必要があると思われる。日本郵政は日本政府が株式を100%保有する国営事業であり、入札情報の詳細を、国政調査権を活用して調査することが当然求められる。国会での徹底的な対応をくれぐれもお願い申し上げたい。

消費税をめぐる自民党内の内紛が収束した。自民党は1月22日、09年度税制改正関連法案の付則案について、「11年度までに必要な法制上の措置を講ずる」と明記する一方、施行時期は別法案で定める「2段階方式」を採用することで決着した。

麻生首相が主張した「条件が整えば2011年度に消費税増税を実施する」との方針と、「総選挙に向けて消費税増税を明記したくない」自民党の方針を両立させる「玉虫色」の決着が図られた。

この自民党の決定の意味は次の通りだ。
①総選挙に際して自民党候補者は、「2011年度に消費税増税を行うことを自民党は政権公約に盛り込まなかった」、「消費税増税などしない」とアピールする。
②総選挙が終わり、自民党が政権与党の地位を維持する場合には、今回の法律付則を盾に消費税増税を断行する。大型増税は国政選挙直後でなければ実施できない。2010年には参議院選挙がある。タイミングとしては2011年度しかない。自民党は景気情勢にかかわりなく消費税大増税を実行するだろう。

自民党が分裂騒ぎにまで発展するような内紛を演じたのは、総選挙に向けて「増税隠蔽(いんぺい)」の偽装工作を演じなければならなかったからだ。しかし、一方で増税を実施するための「アリバイ」を残しておかなければ大増税を実施することはできない。

1986年の衆参同日選挙に際して、当時の首相だった中曽根康弘氏は「投網をかけるような増税はしない」と発言しながら、総選挙で大勝すると「売上税」導入を試みた。しかし、有権者から強い反発が生じて増税構想は挫折した。

大増税を実施するには、選挙前に何らかの「痕跡(こんせき)」を残すことが不可欠なのである。麻生首相は財務官僚に操られている。財務省の意向を受けて、消費税増税を実施しようとの意思を固めていると考えられる。

民主党は政権を獲得する場合、「天下り利権根絶」を実現することを明確に政権公約に盛り込んでいる。国家予算では毎年度、12.6兆円もの国費が天下り機関に投入されている。民主党は政府支出全体を根本から見直し、天下りを根絶することによって、年間21兆円の財源を絞り出すことを公約として掲げている。

ところが、自民党は天下りを温存し、麻生首相にいたっては「渡り」まで温存しようとしている。「特権官僚」の利権を根絶しないのなら、政府が財源不足に直面することは当たり前である。自民党は必ず消費税大増税に向かう。

麻生首相が消費税増税方針を示す一方で、自民党全体が消費税増税色を薄める「玉虫決着」に血道をあげた理由を端的に示しているのが、自民党議員2名の次の発言だ。

「(選挙に)勝とうと思うと(有権者に)一種の『目くらまし』をしなければしょうがない」(7月16日:伊吹文明自民党前幹事長)

「選挙にマイナスになるようなことは知らん顔するようなことでないと。勝ってなんぼやから」(1月15日:自民党町村派代表世話人谷川秀善参院議員)

「天下り」についても、自民党のスタンスは明確である。安倍政権、福田政権が公務員制度改革を検討したが、結局はこれまで各省庁が取り仕切ってきた天下りを、「人材交流センター」が一元管理する変更を示しただけで、「天下り」を完全に温存する方針が定められた。

この方針決定の最高責任者が渡辺喜美元行革相だった。「渡り」禁止についても、法律に明確な定めを置かなかったから、のちに「政令」で「渡り」を容認する文言が書き加えられる事態が生じたのだ。

「天下り利権」問題にもっとも敏感な官庁のひとつが、警察・検察勢力である。非常に多くの企業が警察OBを警察対応用心棒として採用している。警察関係の事案で手心を加えてもらうためである。

警察・検察権力も民主党を中心とする野党勢力による本格的な政権交代実現を強く警戒している。

自民党議員は麻生発言を本音では容認していると見られる。総選挙に向けて増税を明記したくはないが、総選挙さえ済んでしまえば、財布の規模が大きくなる消費税大増税には大賛成である。「玉虫色」の文言で総選挙を乗り切って、総選挙後に大増税を実施することに、すべての議員が本音では賛成していると考えられる。

「目くらまし」

 「選挙にマイナスになることは知らん顔するようでないと」

  
の言葉は、自民党現職議員の言葉であるだけに重みがある。

有権者は「目くらまし」や「選挙用の知らん顔」をしっかり頭に置いて、投票行動を決めなければならない。

自民党町村派は小泉元首相が所属する派閥である。1997年に橋本政権が「財政構造改革法」という名の緊縮財政を法制化する法律を制定した。この法律制定の中心人物が中川秀直氏だった。

小泉政権は超緊縮財政を強行実施して日本経済を破壊した。財政赤字を減少させると主張したが、経済を破壊して税収が減り、結局、景気対策も必要になって財政赤字を激増させた。

当時、私は経済成長を維持することが日本経済にとっても財政収支改善にも必要であることを訴えた。成長維持政策の重要性を唱えた。これに対して、小泉元首相、竹中平蔵氏、中川秀直氏などは次のように反論した。

世界的に財政政策の有効性を唱える主張は完全に消えた。財政政策の有効性を主張するのは「オールド・ケインジアン」だけだ。経済が改善して税収が増加することを期待することはできない。だから、歳出を削減するか増税を図るしかない。

その中川氏や竹中氏がいつの間にか「上げ潮派」と名乗って、経済成長による税収増加、経済成長による財政再建を主張するようになった。竹中氏は「財政政策の発動が重要だと思っています」と恥ずかしげもなくテレビで話している。すべての言葉を信用できない人々である。

自民党は総選挙を控えてがたついているが、有権者は自民党の政策を次の通りに理解しておくべきである。

①総選挙に際して自民党は消費税増税を全面的に否定する発言を繰り返す。
②しかし、総選挙後に自民党が与党の地位を維持すれば2011年度中の消費税増税を断行する可能性が限りなく高い。

 次期総選挙の争点として
①「弱肉強食奨励」VS「セーフティネット重視」
②「官僚利権温存」VS[官僚利権根絶]
③「対米隷属外交」VS「自主独立外交」


④「消費税増税」VS「消費税増税阻止」
が加わることになった。有権者は「目くらまし」や「知らん顔」にだまされないように十分注意しなければならない。

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