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2009年1月18日 (日)

テレ朝「サンプロ」の偏向「市場原理主義者」擁護

1月18日のテレビ朝日番組「サンデープロジェクト」では、渡辺喜美氏が発足させた政策グループを、渡辺氏と江田憲司氏をスタジオに招いて紹介するとともに、竹中平蔵氏と金子勝氏の討論を放映した。

竹中平蔵氏は2001年から2006年にかけて小泉政権の下で閣僚を務め、小泉竹政治を推進する中核的な役割を担った。竹中氏と金子氏の討論のあとに登場した伊藤忠商事の丹羽宇一郎会長は、「いまどき市場原理主義を唱える人など1割も存在しない」と市場原理主義者を切り捨てたが、番組での討論では、市場原理主義者の総括がまったく実行されなかった。

田原総一郎氏は小泉竹中政治の市場原理主義政策を全面支援してきた経緯がある。小泉竹中政治=市場原理主義が糾弾(きゅうだん)されることは、田原氏自身が糾弾されることを意味する。番組の進行では、市場原理主義が批判一色にさらされることを防止しようとする姿勢が色濃く示された。

米国のサブプライム金融危機は、新自由主義=市場原理主義の破綻を象徴的に示している。小泉竹中政治は金融産業を、21世紀を代表する中核産業と位置付け、金融産業の技術的進化を肯定的に捉え、金融産業のグローバルな活動を絶賛してきた。

サブプライム金融危機は、新自由主義を標榜(ひょうぼう)する政策当局が提供したリスク感覚を欠いた自由放任の市場環境の下で、21世紀の中核産業と位置付けられた金融産業が、野放図に業務を膨張させた結果として発生したものである。デリバティブ金融商品の想定元本残高は600兆ドル規模に膨張したと見られている。

制御不能なレベルにまで膨張させた金融取引のバブルが、全人類の経済活動を麻痺(まひ)させるリスクをはらみながら破裂した。金融機関は政府の税金投入無くして存立しえない状況に追い込まれている。また、「市場原理主義」は市場原理に過度の信頼を置いて各種規制を撤廃するとともに、結果における格差拡大を放置して、経済的弱者を支えるセーフティネットを冷酷に切り込んでいった。

自分自身の労働力以外に資産を持たぬ労働者は労働を提供することによってしか生活を支えてゆくことができない。市場原理に委ねれば、「労働」が「資本の論理」に振り回され、労働者が不安定な雇用条件と低賃金に追い込まれることは、歴史が明白に証明してきたことだ。小泉竹中政治は労働行政にも「市場原理」を強制した。その結果として、深刻な格差拡大、非正規雇用労働者の激増、働く貧困層の激増などがもたらされてきた。

昨年末に日比谷公園に設置された「年越し派遣村」が象徴的に明示した「市場原理主義経済政策」が労働市場にもたらした災厄は、小泉竹中政治が促進した派遣労働の製造業への拡張がもたらした当然の帰結であった。

1月18日の放送では、「市場原理主義=小泉竹中政治」が糾弾(きゅうだん)されるどころか、市場原理主義者に空虚な弁明の機会が提供されただけであった。その原因は、事前に争点を明確にしたうえで、批判者に適正な批判を示すための十分な準備機会が提供されなかったことにあると思われる。「市場原理主義者」を擁護したい番組制作サイドが、「市場原理主義」の問題点を明示すること、批判者に十分な準備機会を提供することを、意図的におろそかにしたのだろう。。

竹中氏の弁明について、三つの問題点を指摘する。

第一に、竹中氏は現在の日本の政策対応について、「財政政策の発動が必要」と述べた。2001年から2003年にかけて、小泉竹中政権は超緊縮の財政政策を実行した。竹中氏は「財政政策を経済政策のなかに積極的に位置づけるとの考え方は時代遅れである。そのような考え方を取る先進国は存在しない」とまで言い切っていた。

ところが、小泉竹中政権は2001年度も2002年度もそれぞれ5兆円規模の財源調達を含む大型補正予算編成に追い込まれた。財政赤字を減少させると主張しながら、28兆円の財政赤字を36兆円にまで激増させた。

竹中氏は「埋蔵金があるから財政出動できる」と述べたが、2001年から2003年こそ、中立の経済政策を維持して、日本経済の破壊を回避するべきだった。小泉竹中政権は意図的に経済を破壊させる経済政策を実行して、第2次大戦後最悪の不況を招き、罪なき多くの日本国民を失業、倒産、経済苦自殺の灼熱(しゃくねつ)地獄に追い込んだ。

金融危機を回避するために財政政策を発動することが正当であり、財源として巨額の「埋蔵金」が存在するなら、2001年から2003年こそ、当初から超緊縮財政政策ではなく、中立の財政政策運営を実施すべきだった。小泉政権が景気破壊政策を実行しなかったなら、2001年から2003年の日本経済の地獄を回避できた。

第二の問題は竹中氏が2002年から2003年にかけての金融行政を正当化する発言を繰り返していることだ。残念ながら金子勝氏はこの問題の本質を的確に把握していない。番組制作者は、金子氏がこの問題を的確に把握して批判していないことを確認したうえで、番組に登場させているのだと考えられる。金子氏が「資産査定の厳格化と資本注入を主張していた」と発言すると、竹中氏の政策が正当化される印象が視聴者に与えられてしまう。

竹中金融行政の問題は、2003年にかけて日本経済の破壊を誘導し、「大銀行破綻容認発言」などにより株価暴落を誘導しつつ、預金保険法102条の抜け穴規定を活用して、犯罪的とも言える「欺瞞(ぎまん)」と不正に満ちたりそな銀行処理を強行した点にある。番組ではこの問題について、一言も触れられなかった。

日経平均株価は2001年5月の21,500円から2003年4月には7600円に暴落した。小泉政権の日本経済破壊政策によって、本来健全経営を維持できた金融機関が自己資本不足に追い込まれた。

竹中氏は2003年の金融危機で、金融機関の責任を追及して公的資金を注入して金融危機を克服したと説明するが、詐欺師の弁明とでも言うべきものである。詳細は拙著『知られざる真実-勾留地にて-』ならびに、本ブログのシリーズ記事「りそなの会計士はなぜ死亡したか」を参照いただきたいが、三つの問題がある。

①そもそも、2003年にかけて日本経済を意図的に破壊する必要はなかった。
②2002年9月から2003年5月にかけての金融行政は、正当性と透明性を備えたものでなかった。金融機関の資産査定を厳格化し、自己資本充実を目指すべきことは当然で、私はその主張を1992年から一貫して示し続けた。竹中金融行政の問題は、金融行政のルール変更に求められる正当なプロセス、時間的猶予の提供を欠き、極めて不透明な密室処理によって恣意的な行政運営が強行された点にある。

③2003年のりそな処理においては、適正な責任処理がまったく行われていない。小泉政権はりそな銀行株主を全面的に救済する一方で、りそな銀行を実質的に乗っ取る行政運営を実行した。その後、りそな銀行は自民党の機関銀行と化し、この重大情報を朝日新聞1面トップでスクープしたと見られる記者が東京湾で死体となって発見されたとの後日譚が付いている。

 第三の問題は、格差拡大、深刻な雇用不安、労働者の生存権危機発生の原因が、小泉竹中政治の「市場原理主義」政策にあったことが明白であるにもかかわらず、竹中氏が一切の非を認めずに、詭弁を弄し続けていることだ。丹羽宇一郎氏は「非を非として認めない論議は不毛だ」と述べたが、竹中氏は最低限求められる潔ささえ保持していないように見える。

 小泉政権の下で製造業にまで派遣労働を解禁した最大の理由は、企業にとって「安価で切り捨てやすい、極めて便利な労働力」である派遣労働が好都合だったからだ。竹中氏は「同一労働・同一賃金制度」の重要性を申し送りしたと強弁していたが、それらのセーフティネット整備、あるいは制度変更は派遣労働解禁とセットで実行しなければまったく意味はない。

 好況があれば不況がある。竹中氏は「ITの進化によって景気変動が消滅する」と唱えていたから、不況が到来することをまったく想定していなかったのかも知れないが、そうだとすれば経済政策担当者としてあまりにもお粗末な能力しか備えていなかったことになる。

 日本経済が未曽有の不況に突入して、労働市場のセーフティネット不備の深刻な問題点が明らかになった。不況下で顕在化する問題に対する対応を、不況が到来してから慌てふためいて論議する失態は、小泉竹中政権時代の思考能力の欠如が原因である。

 テレビ朝日は、「市場原理主義者」と連携する渡辺喜美氏を軸とする「偽装CHANGE新党」を全面支援する一方で、糾弾されなければならない「市場原理主義者」の不適切な弁明の機会提供に尽力している。中立、公正の正当な論議によって、「市場原理主義者」を適正に糾弾しておかなければ、国民が再び悪質な「リフォーム詐欺」の被害者になることを防げない。公正で透明性の高い公開論議が求められる。

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