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2008年12月16日 (火)

りそなの会計士はなぜ死亡したか(8)

「退出すべき企業を市場から退出させる」
これが、小泉竹中経済政策の基本政策のひとつだった。

もうひとつの基本政策は
国債を絶対に30兆円以上発行しない=いまの痛みに耐える政策
だった。

超緊縮経済政策を実行し、企業の破たん整理を促進する。これが小泉竹中経済政策の基本方針だった。経済は坂を転げ落ちるように悪化した。企業の破たんが急増し、株価が暴落した。連動して不動産価格も暴落した。

私はこの政策が実行されれば、日本経済は最悪の状況に陥ることを確信した。小泉政権の発足時点から、このことを警告した。

現実は懸念した通りのものになった。日経平均株価は2001年5月7日の14,529円から2003年4月28日の7607円に暴落した。日本経済はマイナス成長に陥り、物価も下落し、深刻なデフレが日本を覆った。史上最悪の失業、倒産、経済苦自殺が国民を追い詰めた。

竹中金融相が「大銀行の破たんも辞さない」方針を明示して、銀行の財務計数を人為的に悪化させる方針を示したことが株価暴落を加速させた。竹中金融庁はりそな銀行を俎上(そじょう)に載せて破たん処理を断行する構えを示した。

ところが、最終局面で政策は手の平を返した。りそな銀行を「破たん処理」せず、2兆円の公的資金を投入して「救済」したのだ。「責任ある当事者に適正な責任を負わせる」「自己責任原則」は破棄された。小泉政権が政権発足時点から掲げていた「退出すべき企業を市場から退出させる」基本方針は撤回された。

金融危機に直面したりそな銀行は、責任を問われずに2兆円の公的資金の提供を受けた。りそな銀行株主は国から巨大な利益供与を受けた。

「退出すべき企業を市場から退出させる」政策が破棄され、「大銀行は税金により救済する」方針が示されたために、株価は急騰に転じた。「金融恐慌が発生する」との警戒感から株価は暴落していたが、政府が公的資金で銀行を救済する方針が明示されれば、「金融恐慌リスク」は消滅し、株価は大幅な水準修正を示す。現実に日経平均株価は2003年8月18日に1万円の大台を回復した。

資産価格が上昇に転じたことを背景に経済活動が改善に転じた。経済の改善は新たな株価上昇の要因になる。株価に連動して不動産価格も上昇に転じた。資産価格の上昇に連動して金融機関の不良債権は急激に減少していった。

2003年から2006年にかけての日本経済改善、不良債権問題の縮小は経済政策の成果としてもたらされたものではない。金融恐慌寸前の状況まで悪化した日本経済、金融情勢の反動として生じた現象に過ぎなかった。

38度の高熱は、それ自体が懸念される状況だが、一度42度の瀕死の状況を経過したあとで38度に到達すると、大幅に病状が回復したと認識される。本来なら38度の病状から36度の平熱に戻ることが可能だった患者が、治療の失敗で42度の死線に誘導された。そこで副作用の強い劇薬を使用して死を免れたのである。

2001年から2003年の日本経済悪化誘導は本来、まったく必要のない経路だった。経済悪化で税収が激減し、また景気対策が必要になって財政赤字も激増した。多くの国民が失業、倒産、経済苦自殺の経済苦地獄に送り込まれた。「百害あって一利なし」の経済政策運営だった。

あげくの果てに、最終的に「自己責任原則」が破棄されてしまった。金融行政で最も重要な基本原則が「自己責任原則」であり、税金によるりそな銀行救済は、日本の金融行政に歴史的な汚点を残すものだった。2003年5月17日のりそな銀行救済は、小泉竹中経済政策の破たんを意味するものだった。

小泉竹中経済政策が破たんした背景として二つの仮説を提示することができる。第一の仮説は、「意図せざる政策失敗と窮余の一策としての銀行救済」というものだ。第二の仮説は、「意図的な株価暴落誘導と銀行救済」である。

前者の筋書きは以下の通りだ。竹中経財相は、日本経済を回復させる処方箋として(a)緊縮財政と(b)企業の破たん処理推進、を位置付けた。不良債権の処理を進めることによって金融機関の与信活動が活発化するとの見通しを前提に置いた。

ところが、現実には緊縮財政が経済悪化を加速し、そのなかで企業の破たん処理を加速させたために、不良債権問題は見通しとは逆に拡大してしまった。新たに増加する不良債権が、処理を終えた不良債権をはるかに上回ったからである。

小泉竹中経済政策は当初の目論見とは逆に「金融恐慌」突入の絶体絶命の危機に直面してしまった。窮余の一策として竹中金融庁は預金保険法第102条第1項の「抜け穴規定」を活用して、「自己責任原則」を放棄した。ぎりぎりのところで小泉竹中経済政策は「金融恐慌」を回避した。これが第一の仮説だ。

第二の仮説は、小泉竹中経済政策が意図して日本経済の崩壊を誘導し、また資産価格暴落を誘導し、金融恐慌寸前の状況で預金保険法102-1の「抜け穴規定」を利用することを当初から念頭に入れていたとするものだ。

日本国民の視点に立てば、第二の仮説が生まれる可能性は皆無である。第二の仮説に沿った現実が生じても日本国民はまったく利益を得ないからだ。無数の罪無き善良な日本国民が小泉竹中経済政策を原因とする戦後最悪の不況に巻き込まれ、失業、倒産、経済苦自殺に追い込まれた。

ところが、2001年から2006年にかけての日本経済、日本の資産市場で生じた出来事を鳥瞰(ちょうかん)すると、別の絵が見えてくる。経済の悪化推進、株価・地価の暴落推進、その後のりそな銀行救済によって巨大な利益を獲得した勢力が確実に存在するのだ。

竹中金融相は2003年2月7日の閣議後懇談会で株価指数連動投信(ETF)について、「絶対儲かる」と発言した。証券取引法は株式や投信の販売にあたって「絶対に儲かる」などの断定的な表現を禁止している。証取法を所管する金融相が「絶対儲かる」と発言して物議を醸(かも)した。

りそな銀行をスケープゴートに定め、りそな銀行を自己資本不足に追い込むための工作活動は2002年10月からスタートしている。11月12日には、竹中金融相が公認会計士協会に対して繰延税金資産の厳正な監査を要望した。

2003年2月25日には、公認会計士協会の奥山章雄会長が「主要行の監査に対する監査人の厳正な対応について」と題する会長通牒を提示した。繰延税金資産の合理性の確認を要請している。りそな銀行を自己資本不足に追い込むための工作が進められていたったと考えられる。

ただし、りそな銀行の決算を本当に厳格なルールに基づいて監査したなら、りそな銀行は「破たん処理」されなければならなかった。木村剛氏が5月14日まで強くその主張を提示した。しかし、最終決着は「3年計上」に基づく「救済」だった。竹中金融相、金融問題タスクフォース、奥山公認会計士協会会長、新日本監査法人が密接に連携して、「人為的な救済」決着が決定されたと考えられる。

りそな銀行は「破たん処理」ではなく「救済」でなければならなかったのだ。りそな銀行が救済されたことによって、日本の資産市場の資産価格は方向を転換した。りそな銀行が破たん処理されたなら、日本の金融市場は金融恐慌に突入していたはずだ。

「金融恐慌」のリスクが煽(あお)られて、日本の投資家は泣くに泣けない暴落価格で株式や不動産を投げ売りした。投げ売りによって資産価格は法外な安値を記録した。問題は誰が安値の資産を買い占めたのかである。

最終的に102-1の「抜け穴規定」を利用してりそな銀行が税金によって「救済」されることを知りうる立場の勢力が存在したなら、暴落価格の優良資産を買い占めたはずだ。

「金融恐慌」のリスクを喧伝(けんでん)し、最終的に税金による銀行救済を実行して株価の急騰を実現させ、これらのシナリオを事前に用意して安値で資産を取得して急騰後に売り抜けたなら、これらの行為は「風説の流布」、「株価操縦」、「インサイダー取引」に該当すると言ってよいだろう。

日本政府は2002年10月から2004年3月にかけて47兆円もの巨額のドル買い為替介入を実施した。米国国債を保有する外国資本に47兆円の円資金を提供したと捉えることもできる。暴落価格の日本の優良資産買い付け資金を日本政府が提供したとも考えられるのだ。

金融機関は不良債権の損失処理を会計上で済ませてしまうと、不良資産を二束三文で売却することが可能になる。金融機関が売却する暴落値の不良債権をまとめ買いして債権を回収すると、巨大な利益を確保できる。この種の不良債権ビジネスは外国資本の独壇場(どくだんじょう)だった。

りそな銀行はその後、自民党に対する融資を激増させた。この重大ニュースをスクープしたのが朝日新聞だった。しかし、この重大事実をスクープしたと見られている朝日新聞の敏腕記者はスクープ記事掲載と同時に東京湾で死体で発見されたと伝えられている。

①りそな銀行が標的にされた背景
 ②UFJが東京三菱に吸収された経緯
 ③ミサワホームの再生機構送りの背景
 ④金融行政スクープ記事の情報源
 ⑤郵政民営化への米国政府の関与
については、今後「竹中金融行政の深い闇」の続編シリーズ記事で記述してゆくこととする。

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