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2008年12月 1日 (月)

麻生内閣支持率急落と高まる金融恐慌リスク

日本経済の悪化が加速している。

①本年の上場企業の倒産が31社に達し、過去最悪の記録をさらに更新した。
不動産関係の倒産が激増している。昨年6月に施行された改正建築基準法。国土交通省の準備があまりにも杜撰(ずさん)だった。マンションの建築許可がまったく下りない状況が持続して住宅着工が激減した。

ここに米国のサブプライム金融危機が直撃した。日本の不動産投資の主役であった外国資本の投資資金が逆流を始めた。都心を中心に急騰していた不動産価格が急落に転じた。

企業倒産を激増させている直接の引き金は金融機関の貸しはがし、貸し渋りである。銀行の不動産業、建設業に対する融資姿勢が一変した。多くの企業倒産が黒字倒産である。銀行が運転資金の融資を拒絶し、企業が資金繰りに行き詰まり、倒産している。

②本年7月以降、急変したのが輸出製造業である。2000年から2008年にかけて、日本円は主要通貨に対して長期暴落トレンドをたどった。主要通貨に対して大幅に下落したのは日本円と米ドルであった。

米国が2002年から2006年にかけて超金融緩和政策を実施した。欧州通貨などの主要通貨は米ドルに対して大幅に上昇した。日本円も自然体の政策運営を維持したなら、米ドルに対して上昇し、欧州通貨などに対して暴落しなかったはずだ。

ところが日本はゼロ金利政策、量的金融緩和政策などの超金融緩和政策を実行して、長期間維持した。同時に、50兆円もの規模で、下落する米ドルを買い支えるドル買い為替介入を実行した。これらの政策を最も積極的に推進したのは竹中平蔵氏だった。

米国が単独で超金融緩和政策を実行すれば、ドルが独歩安を示すことになる。米国は超金融緩和政策を中止せざるを得なかったはずだ。日本がドルを買い支え、超金融緩和政策を実行したから、米国は超金融緩和政策を維持することになった。

2002年から2006年の米国の超金融緩和政策が、米国の不動産価格バブルを発生させる主因になった。日本が理に適(かな)わない超金融緩和政策、巨額のドル買い介入政策を実行したことが、米国の不動産価格バブルを生み出す根源的な原因になったと言える。

本年7月以降、長期円安トレンドの修正が生じた。米ドルが欧州通貨や資源国通貨に対して反発するのに連動して、日本円の反発が急激に発生した。日本円の上昇は極めて急激なものになった。

1ユーロ:170円(7月)→113円(10月)
1ポンド:215円(7月)→137円(11月)
1加ドル:107円(7月)→70円(11月)
1豪ドル:104円(7月)→55円(11月)
1ウォン:0.108円(7月)→0.0615円(11月)

長期円安トレンドの修正が一気に表面化した。長期にわたって、緩やかに円高が進行するなら、輸出産業は緩やかに対応することができる。ところが、長期間、円安が持続し、あるときに急激な円安修正が表面化すると対応が難しくなる。

米国の金融危機は底の見えない深刻さを抱えている。米国の中央銀行FRB(連邦準備制度理事会)は政策金利を1.0%にまで引き下げたが、今後、ゼロ金利にまで誘導する可能性が高い。米国の金利引き下げ政策進行を予想して、日本円は米ドルに対しても上昇傾向を強めつつある。
1米ドル:110円(8月)→90円(10月)
と円高・ドル安が進行している。

米ドルの日本円に対する下落は日本の外貨準備の評価損を激増させており、1ドル=95円で、すでに24兆円に達している。

短期間での急激な日本円の上昇が、日本の輸出製造業の収益を直撃し、価格競争力を急激に低下させている。世界同時不況の影響も加わり、日本の輸出製造業の業況は一気に悪化している。

乗用車の販売台数が世界的に前年比30%も激減している。日本でも自動車産業のすそ野は極めて広い。11月28日に発表された10月の鉱工業生産指数は前月比3.1%減少した。11月、12月も生産減少が見込まれており、予測指数を基準に計算すると、10-12月期の鉱工業生産は前期比-8.6%の、史上空前の落ち込みを示すことになる。

③日本経済が完全に赤信号を点灯したのは、景気悪化が個人消費の全面的な悪化にまで波及し始めたからだ。11月28日に発表された家計調査では全国全世帯の消費支出が前年比実質3.8%減少した。民間消費はGDPの57%を占める。経済動向を決定する最重要のファクターだが、その民間消費の減少が加速している。

④景気悪化は若干のタイムラグを伴って、雇用情勢に波及する。非正規雇用労働者が一斉に、大量に解雇されつつある。雇用調整は非正規雇用労働者から正規雇用労働者にまで波及し始めた。当然、企業の新規採用人員も大幅に圧縮される。新卒学生は極めて厳しい就職難に直面している。

⑤麻生首相は他国の金融支援に外貨準備から10兆円もの資金を提供することを金融サミットで勝手に表明し、新興国の金融機関の資本増強に2000億円もの資金を拠出することを金融サミットで勝手に表明してきた。

ところが、足元の日本の金融機関の財務状況に火がついている。日経平均株価が10月と11月に8000円の水準を下回った。米国がシティグループ救済を発表し、FRBが8000億ドルの追加金融支援を発表したことを受けて、NYダウと日経平均株価が一時的に反発しているが、日米の株価チャートは、もう一度、株価が下落に転じることを暗示する危険な状況を示している。

米国政府がビッグ・スリー救済策を発表すれば、現在の株価反発がなお暫く持続する可能性はあるが、サブプライム問題で影響を受けるハイリスクのデリバティブ金融商品の残高は極めて大きく、巨額損失が今後も計上される可能性が高い。株価の先行きに対する強い警戒感を解くことはできない。

11月27日に農林中央金融公庫が2008年9月中間期決算を発表し、1000億円の損失処理実施を公表した。同時に9月末の有価証券含み損失が1.5兆円に達していることも明らかになった。農林中金は2.9兆円の資産担保証券(ABS)、0.8兆円の住宅ローン担保証券(RMBS)、0.7兆円の商業用モーゲージ担保証券(CMBS)、2.4兆円の債務担保証券(CDO)など、6.8兆円の証券化商品を保有している。極めてリスクの大きな財務体質を抱えている。

生命保険会社の大半が日経平均株価8000円で、保有株式の評価損失を計上する。株価下落に連動して、日本の金融機関の財務状況が危険水域に入りつつある。

金融機関の破たんを回避するために、金融機能強化法の成立が求められているが、この法律が成立しても、中小企業の資金繰りはまったく改善されない。金融機関は破たんを回避するのに精一杯の状況で、中小企業に資金を融通する余裕など存在しない。

2008年の年末を控えて、日本経済、日本金融は風雲急を告げている。

12月1日に発表されたFNN合同世論調査で、麻生内閣の支持率が27.5%に急落し、不支持率が58.3%に達した。日本の首相にふさわしい人物では、小沢一郎民主党代表が麻生太郎首相を上回った。

「100年に1度の暴風雨」が吹き荒れ、日本経済が非常事態に直面し、年末にかけて多数の国民が瀬戸際に追い込まれつつあるのに、自分が総理の座に居座ることのためだけに、景気対策を具体的に実行するための補正予算案の国会提出を来年に先送りしてしまうと言うのだから、支持率はゼロになってもおかしくない。

麻生首相は新聞を読まないそうだから、支持率が低下しても、ぶら下がり会見で記者に教えてもらうまで、その事実を知らないかもしれないが、「公より私」の基本姿勢を変えないのなら、総理の座を辞することを考えるべきだ。

このような事態をも念頭に入れて、憲政の常道は、政権与党が政権担当能力を失ったときには、野党に政権を渡し、野党政権が速やかに総選挙を行うこととしているのだと考えられる。

12月の政策空白の影響は極めて重大である。政府の予算案提出が2009年1月にずれ込むことは、補正予算、本予算、関連法案の成立が、確実に3月末以降にずれ込むことを意味する。12月の政策空白は12月から3月までの4ヶ月の政策空白を意味する。

12月に総選挙を実施すれば、1月から本格政権が本格政策をフル始動させることを可能にする。
「過(あやま)ちては則(すなわ)ち改(あらた)むるに憚(はばか)ること勿(なか)れ」
である。いまからでも遅くない。補正予算案を臨時国会に提出するべきだ。それができないなら、解散総選挙に踏み切るか、内閣総辞職すべきである。

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