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2008年12月22日 (月)

「大政奉還」を決断すべき麻生首相

12月22日の月例経済報告で政府は景気の基調判断を「景気は悪化している」に下方修正した。景気の基調判断に「悪化」の表現が盛り込まれたのは2002年2月以来6年10ヵ月ぶりである。

年の瀬を控えて、多くの国民が未曾有(みぞう)の不況に苦しんでいる。麻生首相は政策運営をサボタージュして相変わらず社会科見学を楽しんでおり、政権交代を求める国民の声は日増しに強まっている。ハローワークを訪問した人の実情を考えようともしない首相のKYな応対は迷惑以外の何者でもない。「カナダde日本語」様「晴天とら日和」様動画を掲載してくだっさっているのでご高覧賜りたい。

経済状況の深刻化に対応して麻生政権は景気対策を提示しているが、政策対応のちぐはぐさが際立っている。2011年度に財政再建目標を実現するとの方針を定めた2006年度の基本方針をどのように位置付けるのかがはっきりしない。景気対策を提示しながら2011年度に消費税を増税する方針を示している。

麻生内閣は不況深刻化、内閣支持率暴落に狼狽(ろうばい)して手当たり次第に政策を掲げているが、政策の目指す方向が明確でなく、また、「迅速、スピードが大切」と示すのに具体的対応を先送りするなど、支離滅裂(しりめつれつ)振りが際立っている。

不況が深刻化して多くの国民の生存権が脅かされているのだから、まずは緊急対応として国民の生存権を保障する政策対応が求められる。国民が年の瀬に仕事も住まいも失い、路頭に放り出される事態を解消するために政府は全力を注ぐ責務を負っている。「政局」を理由に予算審議を来年に先送りするなど言語道断の対応だ。

ただし、今回の不況への対応を一時的な対症療法だけで済ませてはならない。問題の根は深い。小泉政権が日本社会に強制した「市場原理主義」経済政策の弊害(へいがい)がいっぺんに表に表れたのが、今回の経済社会混迷の深層である。経済政策の基本路線転換が求められている。

小泉政権の経済政策を推進した「市場原理主義者」は「市場原理主義」の表現を嫌う。「市場原理主義者」は、市場原理を最大限に活用することを主張したのであって、市場に「失敗」がつきものであることを認識していると主張する。欧米でも市場原理そのものを否定する論議は存在しないと言う。

「市場原理主義」を否定する主張も「市場原理」そのものを否定しているわけではない。「市場原理主義」と表現される理由は、「分配の格差」をどのように捉えるか、「セーフティーネット」の重要性をどこまで重視するかという点についての基本判断にある。

私は「市場原理主義」を否定する立場に立って主張を示している。私が「市場原理主義」と表現している対象は、①「市場メカニズム」に委ねる結果として生まれる「格差」を放置するスタンス、②労働市場の無制限な規制緩和方針、③「セーフティネット」を取り除く政策スタンス、である。

「市場メカニズム」に過度の信頼を置いて、「市場の失敗」を補完するための諸施策=「分配」に対する規制、労働市場の規制、「セーフティネット」の強化、などを軽視する政策路線を「市場原理主義」と表現しているのだ。

不況深刻化で問題が表面化しているのは、単なる景気循環上の問題ではない。小泉政権が推進した「市場原理主義」政策の歪(ひず)みが表れた現象なのである。

小泉政権は「効率」、「成長」を重視して、「分配の公正」、「セーフティネット」を軽視した。その背景には、政治が「資本」と「国民=労働」のどちらの利益を重視するのかという問題が横たわっている。小泉政権の「改革」政策=「市場原理主義」政策は「資本」の利益を優先する政策路線なのだ。

「大企業」=「資本」の利益を優先する立場に立てば、①労働者の賃金が低く、②労働者をいつでも解雇でき、③企業の社会保障負担が低く、④法人税負担が低く、⑤株主および経営者の所得が高い、ことが望ましい。

小泉政権の「改革」政策路線は、「資本」の利益を優先する政策方針だった。労働市場の規制を撤廃した結果、非正規雇用労働者が激増し、非正規雇用労働者の雇用保障は消滅した。一生懸命に働いても年収が200万円に届かない低所得労働者が激増した。

問題は不況の局面で顕在化(けんざいか)する。不況に直面して日本を代表する大企業が一方的な解雇=雇い止めを通告している。不安定な労働条件の下で労働してきた多数の非正規雇用労働者が寒空の年末の路頭に放り出される事態が全国で一斉に発生している。

小泉政権は財務省の「財政再建原理主義」路線に沿って、「セーフティネット」の破壊(はかい)にいそしんできた。「高齢者」、「障害者」、「母子世帯」、「低所得者」、「非正規雇用労働者」に対する冷酷な政策が激しい勢いで推進されてきた。社会保障関係支出を年間2200億円切り込むなどの非人道的な政策が大手を振ってまかり通ってきたのだ。

一方で、財務省の天下り利権は完全に温存されてきた。最も分かりやすい事例として、私は日本政策投資銀行、国際協力銀行、日本政策金融公庫のいわゆる「財務省天下り御三家」への天下りが廃止されるかを注視し続けてきた。2005年から2006年にかけて、小泉政権が政権末期にこの問題を提示したので、「天下り」問題に対する最後の意思表示の機会として注目したが、結局、小泉政権は「天下り」を完全に温存する選択を示した。

中川秀直氏、竹中平蔵氏などが官僚利権根絶と主張しても、まったく信用できないのはこのためだ。彼らは小泉政権の中枢に存在しながら、「天下り」根絶をまったく推進しなかった。小泉政権の「市場原理主義」は「国民の利益」ではなく、「官僚の利益」実現を目指す政策路線でもある。

渡辺喜美元行革相は官僚の天下りをこれまでの各省庁による斡旋(あっせん)から、政府の「人材センター」に移管する制度変更を主導したが、これは「天下り根絶」ではなく、「天下りの合法化・制度化」である。「天下り」を制度的に確立する渡辺氏を「改革派」としテレビで紹介するところにマスメディアの堕落(だらく)が鮮明に示されている。

人材センターによる斡旋を再就職等監視委員会が監視することになるが、同委員会委員が国会同意人事の不調で選出されていない。そのため、天下りが一時的にでも中断する可能性が生まれていたが、政府は監視委員会に代わって、麻生首相が天下りにお墨付きを与える方針を決定した。この結果、「天下り」は今後も従来通りに実行されることになった。「カナダde日本語」の美爾依さんがこの問題も伝えてくれている。

サブプライム金融危機は市場原理に全幅の信頼を置き、金融市場での金融機関の活動を「自由放任」した結果として生じた「人災」である。金融機関の行動を「自由放任」する政策スタンスが「市場原理主義」と批判されているのだ。

小泉政権以来の「市場原理主義」経済政策は
①「弱肉強食奨励」=「大企業の利益」
②「官僚利権死守」=「特権官僚の利益」
③「対米隷属外交」=「外国(資本)の利益」
を追求する政策路線である。麻生政権もこの政策路線を基本的に踏襲(とうしゅう)している。

いま求められている政策路線の転換は、
①「セーフティネット強化」=「国民の利益」
②「官僚利権根絶」=「国民の利益」
③「自主独立外交」=「国民の利益」
を政策路線の基本に据えることだ。

「市場原理主義」の経済政策においては、「大資本」、「特権官僚」、「外国資本」の利益追求を「政治屋」と「マスメディア」が結託して推進した。これを私は「政官業外電=悪徳ペンタゴン」による「利権互助会の利益追求政治」と表現している。

「市場原理主義」を排して、「人間尊重主義」に基づく経済政策路線を基本に据えなければならない。セーフティネットを強化し、官僚利権を根絶し、自主独立外交を展開しなければならない。麻生首相が首相の座に1日でも長く居座るために、理念も哲学もなく政策手段を濫用することは、主権者である国民には、はなはだ迷惑なことだ。

政治は首相の私物ではない。国民の支持を完全に失っている首相は政治を私物化せずに、一刻も早く政治権力を主権者である国民に返還するべきである。「大政奉還」されれば国民は直ちに総選挙を実施して、危機に対応する本格政府を樹立することになる。

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