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2008年12月28日 (日)

小泉竹中政治を明確に否定すべし-NHK日曜討論より-

12月28日のNHK日曜討論では、「雇用悪化・・・2009年・政府は暮らしどう守る」をテーマに若手の論客による論議が行われた。各発言者の発言が簡潔で意味が明瞭であり、有意義な討論だった。

私は番組に出演した政策研究大学院大学教授の飯尾潤氏とは、佐々木毅元東大総長が代表を務めた「21世紀臨調」の政治部会で共に主査を務めた関係で、旧知の関係にある。私は「21世紀臨調」の政治部会で小泉政権に対する批判を明言していたことから、2003年7月に「新21世紀臨調」に組織が再編された際、一切の説明なくメンバーからはずされた。

政治に対して提言する超党派機関である「21世紀臨調」も政治権力から強い圧力を受けたと考えられる。しかし、政治に対して外部から提言を示す超党派の組織であれば、政治権力からの圧力をはねつける強い姿勢が求められる。

それはさておき、今日の討論を通じて、いま私たちが直面している問題が改めてクローズアップされたと感じる。

麻生政権の行き詰まりの大きな原因のひとつは、小泉竹中政治に対する明確な評価を示していないことにある。小泉政治を否定するのか継承するのかはっきりしない。小泉政権は「市場原理主義」、「財政再建原理主義」、「対米隷属主義」を採用した。今日の討論で「対米隷属主義」は論議の対象にならなかったが、麻生政権の小泉政治に対するスタンスが明確でない。

中川秀直氏、渡辺喜美氏、小池百合子氏、竹中平蔵氏、小泉チルドレンなどに代表される「偽装CHANGE勢力」は、麻生内閣の支持率暴落の機に乗じて、政治的復権を画策している。しかし、冷静に見つめれば、麻生政権の支持率が暴落した最大の原因は小泉政権の負の遺産にある。小泉竹中政治に対する明確な「否定的評価」を定めることが求められている。

番組に出演した飯田泰之氏は、グローバルな競争条件が変化するなかで、非正規雇用への労働者のシフトなどのコスト削減を進展させなければ企業そのものが存続できないとして、労働市場の規制緩和を正当化する。雇用問題の解消には成長の誘導が必要であると主張する。

しかし、飯田氏の指摘は間違っている。1998年度から2006年度にかけての分配所得の推移を比較してみよう。この期間に雇用者報酬は274.1兆円から263.0兆円へ4.0%減少した。一方、民間法人企業の企業所得は35.6兆円から48.5兆円へ36.2%増加した。また、法人企業統計における法人企業経常利益は21.2兆円から54.4兆円へ156.6%増加した。

大企業が史上空前の利益を計上する一方で、労働者の分配所得全体が減少し、さらに労働者のなかでの所得格差が急激に拡大した。その結果、多数の低所得者が生み出され、しかも大半の低所得者層が非正規雇用労働者となって、極めて不安定な雇用形態に追い込まれた。

「資本」=「企業」の生き残りのために、ぎりぎりの選択が実行されたのではなく、「資本の論理」=「企業の利益拡大」の目的のために労働者の所得水準、雇用安定が犠牲にされたのが実態である。

また、飯田氏は財政政策の効果がないと主張したが、主要国が同時に財政政策を活用する局面では、為替レート変動に伴う財政政策効果の減殺(げんさい)は生じない。また、財政政策の効果を否定しようとする論者は、馬鹿の一つ覚えのように「マンデルフレミング効果」を唱えるが、マンデルフレミング理論は特定の仮定の下での理論的推論を示しているだけで、実証的に裏付けられたものでない。

本題に戻るが「自由と平等」のバランスをどのように取るのかが問われる。小泉竹中政治は「新自由主義」=「市場原理主義」の看板を掲げて、①分配に対する規制を取り除いて「格差拡大=弱肉強食」を奨励し、②所得再分配を縮小し、③セーフティーネットを破壊してきた。

サブプライム金融危機を契機にした世界的な景気後退により、小泉竹中政治の歪(ひず)みが一気に表面化した。セーフティーネットは、①雇用に対する安全網、②年金・医療・介護の社会保障、③生活保護などの公的扶助、によって構成されるが、これらのすべてが冷酷に切り込まれてきた。

番組で自殺対策支援センター・ライフリンク代表の清水康之氏は、「自由」が行き過ぎて「人間の安全保障」が揺らいでいることを指摘した。日本の自殺者は1998年に3万人を突破して以来、10年連続で3万人を超えた。清水氏は多くの自殺者が「覚悟の死」ではなく、「生きる希望」を持ちながら「生きる手段」を失って死に追いやられていると指摘する。

2009年度予算で国債発行額が33兆円に急増する。本来国債発行するべき財源が、いわゆる「埋蔵金」と呼ばれる政府資産取り崩しによって調達される。実態上の財政赤字は38兆円を突破する。小泉政権が追求した財政健全化政策は破綻した。

財政健全化路線の破綻は、金融危機によってもたらされたものではない。セーフティーネットを破壊した結果、経済が後退局面に移行する局面では、巨大な生活支援策が必要になる。財政再建政策の破綻(はたん)は小泉竹中経済政策の破綻を意味している。

小泉竹中政治の破綻は、人間を資本の利益追求のための道具、機械部品として捉える、「市場原理主義」の人間性否定の哲学がもたらした必然の結果だった。飯尾氏も番組で指摘したが、政府はつらい立場にある人間をしっかりと支えるために存在するものと考えるべきである。飯田氏は「企業=資本」の利益増大に貢献するのが政府の役割だと認識しているのかも知れないが、不況深刻化に伴う未曾有の生活破壊を目の当たりにして、大多数の国民が小泉竹中政治の根本的な誤りに気付いた。

財政活動は多数の国民から少額の税を徴収して公共の目的のために財政支出配分を決定する行為である。定額給付金はその財政資金を、一人12,000円という少額にして均一な金額に細分化して配分する政策である。北海道大学公共政策大学院准教授の中島岳志氏は、麻生政権の定額給付金政策を「政治の放棄」だと切り捨てた。

麻生政権が政権末期の様相を強めるなかで、悪徳ペンタゴン「偽装CHANGE勢力」の復権を画策し始めている。「小泉一家」に連携する勢力をテレビに登場させる頻度(ひんど)が増加している。「偽装CHANGE勢力」は、「市場原理主義」=「新自由主義」の政策を推進してきたグループである。しかし、いま私たちは、「市場原理主義」を否定して「人間尊重主義」に、政策の目指す方向を転換することを求められている。

私たちが目指すべき社会の方向を誤りなく転換しなければならない。雇用、社会保障、公的扶助のセーフティーネットを完備すること、同一労働・同一賃金の規制を確立するとともに、不況時の労働者の生活を確実に支える制度を構築するべきだ。

「偽装CHANGE勢力」に国民の支持を誘導する「悪徳ペンタゴン」策謀(さくぼう)を見破らなければならない。飯尾氏が指摘するように「100年に1度の暴風雨」は「100年に1度のチャンス」かも知れない。「100年に1度の暴風雨」を日本刷新の原動力として活用する「逆転の発想」が大切だ。

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