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2008年12月 2日 (火)

小沢氏批判&偽装CHANGE集団報道の深層

昨日12月1日記事「麻生内閣支持率急落と高まる金融恐慌リスク」に以下のように記述した。
「米国がシティグループ救済を発表し、FRBが8000億ドルの追加金融支援を発表したことを受けて、NYダウと日経平均株価が一時的に反発しているが、日米の株価チャートは、もう一度、株価が下落に転じることを暗示する危険な状況を示している。」

12月1日のNY市場ではNYダウが前日比679ドル安の8149ドルに下落した。本日12月2日の東京市場では日経平均株価が前日比533円安の7863円に下落した。米国のGMがチャプター11の適用を申請して破たんすれば、株価下落はさらに進行することになるだろう。経済金融市場の見通しの詳細ならびに投資環境分析については、『金利・為替・株価特報』をご高覧賜りたい。

11月20日に「麻生政権の致命傷になる第2次補正予算提出先送り」と題する記事を掲載した。年末にかけて、日本経済の悪化がさらに加速することは確実な情勢だ。世界の主要国が全力をあげて政策対応を進めているときに、日本の麻生政権だけが長期のサボタージュを決め込んでしまった。日本の政策対応は本年12月から来年3月末まで、完全な空白期間となる。

100年に1度の金融災害に見舞われているから、「政局より政策」だと発言し、国民に宣言した解散総選挙まで先送りしたのに、来年になるまで景気対策に手をつけずに、サボタージュを決め込むのだから、内閣支持率が急落するのは当然だ。

自民党は、わずか2ヶ月前に党をあげて祭り騒ぎを演じて麻生氏を首相に祭り上げた。その自民党議員に麻生氏を批判する資格はない。民主党に政権を委ねるか、総選挙を実施して国民の審判を仰ぐのが正道である。

ところが、「政官業外電=悪徳ペンタゴン」に組み込まれるマスメディアは、麻生政権は問題が多いが、小沢民主党も問題が多いと不自然な主張を展開する。

11月28日の党首討論も、客観的に評価して小沢民主党代表の圧勝だった。このことは、「きっこのブログ」様緊急アンケートでも、大手メディアの世論調査でも明らかにされている。フジテレビ番組「サキヨミ」では、麻生首相の岩手県での街頭演説に合わせて、岩手での麻生氏支援の街の声まで紹介して、小沢氏批判を展開したが、党首討論の勝者を問う視聴者投票では、小沢氏が圧勝した。

「サキヨミ」の視聴者投票にはひとつの意図が込められていた。選択肢を「麻生氏の勝利」、「小沢氏の勝利」の二択とせずに、「引き分け」を含めた三択としたことだ。党首討論の内容からして麻生氏勝利はありえなかった。そこで、投票結果を「引き分け多数」に持ち込むことが意図されたのだと考えられる。「引き分け」を印象付ける放送を繰り返して、視聴者の回答を「引き分け」に誘導しようとしたのだと考えられる。しかし、結果は「小沢氏勝利」が圧倒的多数を占めた。

麻生氏の言動、政策、資質に対する評価はほぼ固まってしまった。内閣支持率が3割を切り、不支持率が6割に達している。渋谷の街で社会科見学しても、レジを担当する女性に「レジやってんの?レジで正社員って珍しいな」、「だんなはいくらかせいでいるの」、したり顔で社長に質問して「やっぱりな。そこまで分かっているんならたいしたもんだ」と意味不明な虚勢を張る、などの言動をカメラに撮らせるのだから、支持率低下に歯止めがかかるはずがない。

「悪徳ペンタゴン」の一角のマスメディアにとっての最優先事項は、民主党を中心とする政権樹立を阻止することに転換している。麻生政権を浮上させることが不可能と判断した以上、いま、最も力を入れなければならないことは、民主党の人気浮上を阻止することである。

二つの手法が取られている。ひとつは、民主党を攻撃することだ。小沢代表に対する個人攻撃と、民主党に対する誹謗中傷が繰り広げられている。

もうひとつの方法は、自民党内の反麻生勢力=「偽装CHANGE集団」をクローズアップすることだ。

12月1日のテレビ朝日番組「TVタックル」に出演した江田憲司議員が重要な指摘を提示した。①国会議員を霞ヶ関に100人送り込み、②天下りを廃止し、③特別会計や独立行政法人を抜本的に見直す改革を、民主党を中心とする新しい政権が実行すれば、霞ヶ関には驚天動地(きょうてんどうち)の変化が起こる。江田氏はこのような見解を表明した。

中川秀直氏、渡辺喜美氏、小池百合子氏、小泉チルドレン、高橋洋一氏に連なる「偽装CHANGE集団」は、官僚利権廃絶を装いながら、実態は官僚利権の温存を狙っていると見るべきである。国土交通省、旧郵政省などの利権縮小には熱心だが、財務省利権の廃絶には熱意を示さない。むしろ、財務省利権の擁護を図っていると思われる。

そのなかで、江田憲司氏の発言はこれまでの枠を超えるものであった。江田氏は高橋氏と連携しているが、高橋氏とは同床異夢(どうしょういむ)であるのかも知れない。江田氏のスタンスが客観情勢の変化に連動して揺れ動いているが、明確に官僚利権根絶の路線を選択するなら、「偽装CHANGE集団」とは明確に一線を画すべきである。

「小泉一家」=「偽装CHANGE集団」と連携するテレビ朝日、日本経済新聞は、小沢民主党代表批判に注力すると同時に、「偽装CHANGE集団」を頻繁(ひんぱん)に画面に登場させ始めている。竹中平蔵氏、飯島勲氏、渡辺喜美氏、高橋洋一氏などがこの系譜に属する。「偽装CHANGE集団」の基盤は「市場原理主義」=「新自由主義」=「対米隷属(れいぞく)主義」である。「官僚利権廃絶」は「偽装」の疑いが濃厚だ。

「TVタックル」で民主党の長妻昭議員が指摘したように、渡辺喜美氏が主張している「天下り斡旋機関」の一元化は、天下りを根絶するものではなく、天下りの方式を変更するものに過ぎない。「えせ改革」=「偽装CHANGE」の典型であって、国民はこの種の偽装による「目くらまし」に十分警戒しなければならない。

「悪徳ペンタゴン」は「真正の改革」が実行されることを阻止するために、「偽装の改革」の旗を立てて、国民の目をくらまそうとしているのだと思われる。

麻生首相批判は国民のコンセンサスとなりつつある。このなかで、麻生氏支持を主張しても視聴者に受け入れられない。そこで、「悪徳ペンタゴン」が発する次善の策は「麻生氏は悪いが小沢氏も悪い」とのプロパガンダである。

テレビ番組を注意してみると、番組に登場する司会者やコメンテーターが無理やりこの方向に論議を誘導していることがよく分かる。NHKの日曜討論では、司会の影山日出夫氏が民主党の行動を、意図的に「戦術」、「政局」、「政略」などの用語を用いて説明する。「TVタックル」では、司会の阿川佐和子氏が必ず民主党批判の言葉を重ねる。同番組のVTR出演の常連である屋山太郎氏も麻生氏を批判するが、必ず小沢氏批判を強調する。

タレントのテリー伊藤氏の発言は常に偏向していると感じられる。テレビ朝日番組「サンデースクランブル」が麻生首相と小沢代表の党首討論を取り上げた際も、懸命に小沢氏批判を展開していた。最近コメンテーターとして登場頻度の高い勝間和代氏も、懸命に小沢氏批判、民主党批判を展開する姿勢が鮮明である。

麻生政権の失速が明確になり、政権交代阻止を至上課題とする「政官業外電=悪徳ペンタゴン」は、メディア報道における「小沢民主党批判」、「偽装CHANGE集団のクローズアップ」に注力し始めた。しかし、「偽装」はしょせん「偽装」で、ものごとを本質的に変革する力を持たない。

メディアは懸命に小沢氏批判、民主党批判を展開するが、冷静に、客観的に考察して、小沢氏や民主党の行動に重大な問題点は見出せない。
・自公政権が1年に2度も政権を放り出し、無責任を極めているから、総選挙で国民に信を問うことを求めた
・麻生首相が臨時国会冒頭の解散総選挙を月刊誌で宣言したから、その実行を求めた
・麻生首相の解散総選挙に踏み切るとの宣言を信用して、国会での早期審議完了に協力した
・経済環境が急変し、麻生首相が「政局より政策」と唱えたから、景気対策の早期実施に協力した
・麻生首相が「政局より政策」と唱えて総選挙を先送りする意向を示したから、補正予算案の臨時国会への提出を求めた
・党首討論で麻生首相が第1次補正予算で年内の景気対策に支障は生じないと断言したから、それでは12月に総選挙を実施するのが筋ではないかと主張した

これが、小沢代表および民主党の主張であり、中立・公正の立場から判定して、不当な主張はほとんど存在しない。あえて問題点を抽出(ちゅうしゅつ)するなら、①テロ特措法の審議を短期間で終結させようとしたこと、②麻生政権が第2次補正予算案を国会に提出するまで、テロ特措法と金融機能強化法の参議院での採決を見送ると表明したこと、の2点が、立場によっては問題にされうる。

しかし、日本経済がみぞうゆの経済危機に直面している現状を踏まえて、総選挙で本格政権を樹立して、経済危機に本格的に対処することが重要だと判断し、早期の総選挙実施を実現するために上述の戦術を採用したと考えれば、それはひとつの容認される選択であると思われる。

党首討論の冒頭で小沢氏は、「政権運営に行き詰まる麻生首相が危機を打開するための方策が二つある」ことを明言した上で、麻生氏に対する質問を展開した。

小沢代表はまず、麻生首相が「政局より政策」と主張するなら、補正予算案を国会に提出するのが筋ではないかと主張した。これに対して、麻生首相は年内の景気対策としては第1次補正予算で十分だと繰り返し力説した。

次に小沢代表は、麻生首相の見解に賛同はできないが、麻生首相がそこまで問題なしと主張するなら、首相就任時の宣言に基づいて、12月に総選挙を実施するのが筋ではないかと追及した。

極めて単純な論理構成だが、見事な論理の展開だった。小沢氏の理詰めの追及に麻生氏はぐうの音も出なかった。欲を言えば、小沢代表が日本経済悪化の現状をもう少し細かく説明し、全力をあげての政策対応が不可欠であることを強調して欲しかったが、論理の展開としては完璧だった。

麻生氏の「第1次補正で年内の対応は十分」の答弁を受けて小沢氏が、「それだったら12月に十分、総選挙を実施できるじゃないですか」と質した瞬間に、小沢氏が「一本勝ち」で勝利を収めた。この論評を示した御用コメンテーターはいない。

「私好みのimagination」様が指摘するように、麻生氏批判に小沢氏批判が添付されるマスメディア報道は、意図的な情報操作である。今後、小沢氏批判と「偽装CHANGE集団」報道が目立って増加するはずだ。悪徳ペンタゴンの意図を正確に見抜き、官僚主権構造=対米隷属構造を打破するために、必ず本格的な政権交代を実現しなければならない。

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