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2008年11月26日 (水)

筋が通らぬ2次補正先送り

麻生首相が補正予算案の国会提出を来年に先送りすることを正式に表明した。10月30日に追加景気対策を発表した記者会見

「景気対策のポイントはスピード、迅速」、
「年末にかけて中小企業の資金繰りが苦しくなる。その中小企業の資金繰りを万全なものとする」
と国民に約束したことと矛盾するのでは、と記者から質問されると、麻生首相は、
「あ、それは、全然矛盾しません」
と強弁した。

 「カナダde日本語」様「晴天とら日和」様が麻生首相発言の無責任さについて論評を掲載されているが、筋違いの誤りをゴリ押しで通用させては、日本の将来が暗くなる。

 首相に言葉の責任の重みを認識してもらわなければならない。

 振り返れば、小泉首相が30兆円以上国債を絶対に発行しない公約などを守れず、国会で追及されたとき、「この程度の約束を守れなかったとしてもたいしたことではない」と開き直って以来、為政者の無責任が放置されるようになった。

 自民党の首相は2代続けて、1年足らずで政権を放り出した。その無責任内閣を引き継いだのが麻生政権だ。

 麻生首相は「政局より政策」を主張して国民に宣言した衆議院の解散総選挙を先送りし、景気対策に全力をあげると国民に約束した。にもかかわらず、肝心要(かなめ)の補正予算案を国会に提出しない。「国会に提出しても、会期中に成立するかどうか確証を得られないから提出しない」と言うが、こんな理屈は通用しない。

 補正予算案を国会に提出し、成立に全力をあげることなくして、国民との約束を守る手立てはない。「野党に金融機能強化法の迅速な採決を求める」と言うが、そう主張するなら、まず補正予算案を国会に提出するべきだろう。

 メディアの一部は政治権力に迎合して、この期に及んでも、事態を「麻生首相と小沢一郎代表の駆け引き」と表現して、両者に問題があるとの印象付けに腐心するが、話の筋道をたどれば、この評価がいかにいかがわしいかが分かる。

 11月26日付日本経済新聞3面の編集委員菅野幹雄氏の署名記事は、両者の政治駆け引きを「景気より政局」と述べて、「政治は国民不在の迷走に陥った」と記述するが、偏向報道の典型的な一例である。

 民主党が早期の解散・総選挙の態勢を敷いたのは、麻生首相が早期の解散・総選挙の方針を明確に示したからである。日本国憲法第7条の「天皇の国事行為」に「衆議院の解散」が記載され、天皇の国事行為が内閣の助言と承認によって行われることから、内閣に解散権があるとの解釈が生まれた。内閣に解散権があるとの解釈から、内閣総理大臣が解散権を持つとの解釈が生じた。

 最高裁判例が統治行為論を用いて、解散権についての司法判断を回避し、首相の解散権が認められるようになったが、首相が勝手気ままに解散権を行使することが正当化されたのではない。

 自民党の首相が2代続けて政権を放り出し、自公政権は政権担当能力の欠如を露(あら)わにした。2007年7月の参議院選挙で与党が惨敗し、参議院は野党が支配権を確保している。衆参両院の支配勢力が異なっており、政治運営が極めて困難になっている。

 こうした経緯、状況を踏まえて、麻生政権は福田政権から政権を引き継ぐ段階で、早期の解散総選挙実施を明確に国民に宣言したのだ。この判断は順当なものである。だが、その判断も、元々は、マスコミを動員した自民党総裁選をお祭り騒ぎに仕立て、麻生政権の支持率を浮上させたタイミングで総選挙を実施しようとの姑息(こそく)な考えに立脚(りっきゃく)したものだった。

 このような状況下で、米国発の金融危機が世界的に波及し、日本経済も深刻な局面に直面した。未曾有(みぞう)の経済危機に対応するためにも、国民の負託を受けた本格政権を樹立することが、国民的見地から強く求められる。

 臨時国会が召集され、民主党は早期の衆議院解散・総選挙実施が、国民的見地に立って求められる最優先の課題であるとの認識の下で、臨時国会審議に積極的に対応した。これまで反対姿勢を示してきたテロ特措法審議を短期間で完了することについては、賛否両論が存在した。徹底審議をすべきだとの主張にも一理あることを、私も理解する。

 しかし、与党が数の論理で法案成立を強行する可能性が高いとの見通しが存在した。そのなかで、より緊急性、優先度の高い衆議院の解散・総選挙実現を促進するとの目的のために、法案審議を短期間に完了させるとの方針を民主党が採用した。これは、国会戦術上のひとつの選択肢として、許容されるものだと考える。

 こうした経緯で、民主党は臨時国会の迅速な審議実現に協力した。すべての前提に、麻生政権が早期の解散・総選挙を実施するとの方針を明示した事実が存在する。

 ところが、麻生政権が途中で、解散総選挙を先送りする気配を示し始めた。自民党が実施した調査で自民党惨敗予想が示されたことが原因と考えられる。国民に宣言した方針を、明確な理由もなく変更する麻生首相の行動がそもそも「信用できねー」行動である。

 麻生首相はその理由に「政局より政策」を掲げた。100年に1度の暴風雨が荒れていて、国民は総選挙より景気対策を求めているから、いまは解散・総選挙ではなく景気対策だと言った。

 民主党は国民生活を第一と位置付ける立場から、麻生政権が景気優先を掲げて景気対策を提示することを容認した。麻生首相は10月30日の記者会見で「年末の資金繰りが大切で、景気対策はスピード、迅速さがポイントだ」と述べた。

 この経緯を踏まえれば、麻生政権が補正予算案を臨時国会に提出するべきことは明白である。ところが、麻生首相が補正予算案を臨時国会に提出せずに、臨時国会を閉会する姿勢を示したため、民主党の小沢代表が急きょ、11月17日に麻生首相に対して党首会談を申し入れて、補正予算案の臨時国会提出を要請したのである。

 その際、民主党要請の実効性を高めるため、小沢代表は、麻生政権が補正予算案を臨時国会に提出するまで、テロ特措法と金融機能強化法の採決を行わない方針を表明した。変則的な手法ではあるが、補正予算案の臨時国会提出を促す実効性のある方策はこれ以外に考えられない。窮余の一策であった。

 だが、この小沢代表の行動を評価する際に最も重要なことは、行動の理由を考察することだ。小沢氏が私的な利害を優先して、このような対応を示したのであれば、小沢氏の行動は「政局優先」だと批判されるべきだ。しかし、小沢氏がこのような変則的な行動を取ったのは、国民生活が未曽有(みぞう)の経済混乱に直面し、2008年年末に向けて極めて厳しい情勢に置かれているからだった。

 麻生首相自身が「100年に1度の金融危機」と発言し、「迅速、スピードがポイントだ」と明言した景気対策である。景気対策は補正予算によって具体化され、実行に移されて初めて成果をあげる。国民生活を重視するなら、補正予算案をできるだけ早期に国会に提出し、迅速な審議を行って成立させ、実行に移すことが不可欠だ。

 小沢代表は麻生首相が、補正予算案を国会に提出しても迅速な審議を行ってもらえないとの懸念を表明したことを受けて、党首として責任をもって対応すると約束した。ところが、結局、麻生首相は補正予算案の国会提出を来年まで先送りすることを表明した。

 この経緯を踏まえたとき、これを「麻生首相と小沢代表の駆け引き」と表現するのは、明らかな偏向だ。現に、先述した論評が掲載された11月26日付日本経済新聞社説は「筋が通らぬ2次補正先送り」のタイトルの下で、麻生首相の決定を批判する論評を掲示している。

 麻生首相と小沢代表を同列に扱う論評は、明らかに偏向したものであり、真理と正義を重んじる国民は、麻生首相の不正義、姑息(こそく)な政権運営を徹底的に糾弾(きゅうだん)しなければならない。

 麻生政権が野党に採決を求めている「金融機能強化法改正案」の実態は、「金融機関救済法」でしかない。公的資金が金融機関に投入されれば、金融機関の破たんリスクは低下するが、金融機関が破たんリスクを抱えた一般事業会社に資金を融資することはほとんど期待できない。金融機関を救済する法律でしかないのだ。

 金融システムを守ることは重要だが、責任ある当事者の責任処理を曖昧(あいまい)にしたまま、金融機関だけを救済する施策を実行することは正当化されない。麻生政権が提示した追加景気対策は問題だらけだが、まず、補正予算案を国会に提出し、実りある国会審議を通じて予算案を修正し、成立させることが求められる。

 11月28日の党首討論で、一連の経過が明確に示されることを期待する。

 年末に向けて厳しい経済状況に直面する国民生活を切り捨て、党利党略、政局、「私」だけを優先する麻生首相に対する国民の厳しい審判が早晩下されることになるだろう。

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