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2008年11月19日 (水)

麻生政権を糾弾する正論の増加に注目

 麻生首相は今臨時国会への第2次補正予算案提出に消極的な姿勢を示している。自民党の国会対策関係幹部は、今国会に補正予算案を提出しない方針を固めたとも伝えられている。

 麻生政権の国民無視、党利党略優先、傍若無人の政治行動が許されるはずがない。日本経済はいま、みぞうゆうの経済悪化に直面している。米国発のサブプライム金融危機を麻生首相は100年に1度の暴風雨だと発言した。100年に1度の経済危機だということは、1930年代の世界大恐慌に匹敵する事態が発生する可能性があると発言したことと同義になる。

 現実に、住宅・不動産関連企業の大型倒産が頻発(ひんぱつ)し、企業倒産が戦後最悪の状況に迫りつつある。急激な円安是正により、輸出製造業の収益が急激に悪化している。自動車販売が前年比30%減少の非常事態に直面している。個人の消費心理が急激に冷え込み、GDPの56%を占める個人消費の急減が日本経済の悪化を加速させる可能性が濃厚だ。

 自民党が輩出した首相は2代にわたって政権を放り出した。1年間に2度も首相が職務を放棄する前代未聞の不祥事が起きた。憲政の常道に従えば、政権担当能力の欠落を露呈した自公政権は、いったん野党に政権を引き渡し、野党政権は早期に総選挙を実施して、国民の信託を受けた本格政権を樹立することが正しい対応となる。

 ところが、自公政権は政権をたらい回しにした。それでも、政権を放り出した福田前首相は国民の審判を受ける必要性を認識し、後継の麻生首相に早期の解散総選挙実施を申し送り、首相を辞した。

 麻生首相は首相就任に際して、一般国民に対して、月刊誌への寄稿手記を通して、臨時国会冒頭での解散総選挙実施を高らかに宣言した。ところが、自民党が実施した選挙予測調査が自民党惨敗予測を示したため、総選挙実施を先送りする行動を取り始めた。

 そのタイミングで米国の金融危機が深刻化したため、麻生首相は経済環境の変化を、解散総選挙先送りの口実に利用した。「国民は圧倒的に「政局より政策」と考えているのではないか」と麻生首相は説明した。

 米国発の金融危機は深刻であり、日本経済の悪化も深刻化しつつある。日本の金融機関のサブプライム金融危機からの直接的影響は比較的小さいが、日本の株価下落が進行すれば、日本の金融機関の破たんも十分に考えられる。日本経済もすでに危機的状況に移行したと考えるべきである。

 この意味では、麻生政権がまず経済危機に対して緊急対応を迅速に決定し、早急に経済対策を実行することについては、野党の支持、国民の支持が得られると考えられる。

 麻生首相は追加経済対策を決定した10月30日の記者会見で、「100年に1度の暴風雨が吹いている。ポイントはスピード、迅速にという意味だ」と明言した。景気対策を発表しても、予算を国会で成立させなければ、実効性のある経済対策を実行に移すことはできない。

 本年1月に米国のブッシュ政権が1500億ドルの減税を打ち出した時には、1か月以内の短期間に政策策定、議会審議、法律成立までを終えた。迅速な政策対応だった。

 経済危機に移行した日本経済の現状を踏まえるとき、補正予算の早期国会提出、成立は最優先の政策課題である。すでに多くの国民が経済悪化に苦しんでいる。非正規雇用労働者、働く貧困層が激増し、国民生活の根底が揺らいでいる。高齢者、障害者、生活困窮者、母子世帯、非正規雇用労働者などが、ぎりぎりのところで生活している。

 日本経済がさらに急激な悪化を示す時、そのしわ寄せは、これらの相対的に弱い人々を直撃する。この意味で、追加経済対策の具体化が何よりも優先される政策対応なのだ。

 民主党がテロ特措法と金融機能強化法の参議院採決を人質に取っているとの批判があるが、この手段を取らない限り、麻生政権が補正予算の早期審議に取り組む可能性はゼロである。国民生活を守るための、背に腹は代えられない対応策として、二法の採決拒否を提示したのである。この手法を批判する者は、採決を拒否せずに、麻生政権が早期の経済対策審議に応じる方法を示す必要がある。

 麻生政権が提示した景気対策は内容に大きな問題が多くある。定額給付金などは、理念も哲学もない選挙に向けての買収政策としか言いようのない施策だが、国会が全力をあげて経済危機に対応する政策を決定しなければ、犠牲になるのは一般国民である。補正予算審議を来年まで先送りする麻生政権の行動を擁護することは、一般国民の生活破壊を容認することと同義であることを十分に踏まえるべきだ。

 御用メディアは、国民生活の困窮を容認しているのか、麻生政権を擁護して、民主党の行動を政局優先だとする、筋違いの論評を提示している。例えば、読売新聞は社説で以下のように記述した。

「小沢民主党 安全保障を政局の具にするな」(11月19日読売新聞社説)

「民主党の小沢代表が、突如、麻生首相との党首会談を経て、与党との全面対決路線に転じた。参院で重要法案の採決を徹底的に拒否するという「政局至上主義」の復活だ。これでは、政治の責任は果たせまい。」

 しかし、麻生政権が補正予算案の国会提出を来年まで先送りすることに対する適正な批判が欠如している。

 産経新聞は「御用」の立場から、民主党攻撃に偏向した主張を繰り返しているが、補正予算問題については、さすがに麻生政権の対応を擁護しきれていない。

「党首会談 「政局」に戻してはならぬ」(産経新聞11月19日「主張」)

「特措法改正案は、今週中に衆院再議決を経て成立する運びだった。民主党がこれを補正予算案と結び付け、再び政局の材料にするというのは理解しがたい。」

「党首会談は、民主党が政府・与党に要求して行われた。首相は衆院解散よりも当面の経済対策を優先させると語った。それなら、追加経済対策を裏付ける補正予算案を早急に提出して審議すべきだ。民主党のそうした言い分には、もっともな点もある。」

 朝日新聞は、腰の引けた論説を掲載した。麻生政権批判を民主党の主張を紹介する形で記述し、朝日新聞としての見解を明示していない。民主党を積極的に支援したくないとの思惑が強いのだと考えられる。

「麻生首相―政策も政局も混迷模様」(朝日新聞11月18日社説)

「首相は先月末、米国発の金融危機が世界に波及したことを「100年に1度の経済の暴風雨」と呼び、年内の衆院解散・総選挙を先送りする方針を打ち出した。「政局より政策」とも言い、緊急経済対策を実施することが何よりも政治の優先課題だと語った。

 ならば、この国会を延長し、緊急の景気対策などを盛り込んだ第2次補正予算案を出すのかと思いきや、政府与党では30日の会期切れで国会を閉じ、来年1月の通常国会で補正予算案を審議するという方向が強まっていた。

 これでは筋が通らないではないか。何のための総選挙先送りだったのか。民主党はそう反発を強めていた。」

「首相には、就任直後から解散をずるずると先送りしてきたツケが次々と降りかかっている。どう打開するつもりなのか、首相の本当の考えを知りたい。経済対策が先なのか、解散先送りの方が大事なのか。国会の機能停止が許容される時ではあるまい。」

 しかし、新聞の社説で、麻生政権の筋の通らない行動を明確に批判する主張が登場し始めたことは特筆に値する。社会の木鐸としてのメディアの役割を踏まえるなら、国民生活を無視し、国民に対する約束を無視する麻生政権の政局優先、党利党略優先の行動は厳しく糾弾されなければならない。

 中日新聞、北海道新聞、河北新報、中国新聞などが、社説で麻生政権の不正義の行動を明確に批判している。以下に社説の一部を紹介する。

「麻生・小沢会談 駆け引きしている時か」(中日新聞11月18日社説)

「緊急経済対策を盛り込んだ第二次補正予算案の提出時期も明言しなかった。このため、小沢氏は予算案を今国会に提出するよう強く迫った。首相が景気最優先という以上、麻生政権としては早急に処理するのが当然だろうという考えに基づく。筋は通っている。

 首相は「いつ出せるかは今の段階では明快に答えられない。出せるように努力している」とだけ答えた。ここはみんなが首をひねるところだ。補正予算案を提出すれば、国会会期の延長が避けられなくなる。先送りしたい解散に追い込まれかねないことを恐れてのことであれば、情けない。

 日本の景気後退が鮮明になっている。雇用不安も広がっている。「政局より政策」といい、十分な景気対策を盛り込んだというのであれば、やはり早急に提出し、審議に付すべきである。」

「混沌国会 首相の「決断」が必要だ」(中日新聞11月19日社説)

「二次補正に盛り込む追加経済対策を発表した記者会見で、首相は現在の経済情勢を「百年に一度の金融災害」とたとえ「ポイントはスピード」とまで語っている。

 定額給付金などを柱とする二次補正を急ぎ提出するのが筋なのになぜか明言を避けている。」

「党首会談の意味/焦点は国会延長に移った」(河北新報11月19日社説)

「「政局より政策」と言うなら、首相は景気対策を表看板とする第2次補正を延長国会に提出し、できるだけ早く成立させるのが筋だろう。」

「参院委採決先送り 「景気最優先」はどこへ」(中国新聞11月19日社説)

「追加経済対策の裏付けとなる第二次補正予算案を、麻生太郎首相がなかなか提案しない。これに対し、民主党の小沢一郎代表が「すぐに出すと言って出さないのは公約違反だ」と迫る構図だ。

 背景に、解散の時期をめぐる与野党の党利党略が透けて見える。しかし国民が求めているのは、緊急対策を行ったうえで、実行力のある政権が本格的な経済政策にしっかり取り組むことであろう。与野党とも、その点を忘れてはなるまい。」

「終盤国会 袋小路の中の麻生首相」(北海道新聞11月19日社説)

「確かに小沢氏の行動には唐突感があった。だが、首相が「政局より政策」だと景気対策優先を唱えるからには、二次補正予算案を早急にとりまとめ、国会で審議を始めるべきだという言い分には理がある。」

 中立・公正の立場に立って事態の推移を見れば、「政局より政策」と明言して解散総選挙を先送りした麻生政権が、補正予算案を臨時国会に提出しないことを正当化する根拠はまったく存在しない。国民生活が危機的な状況に直面していることを踏まえれば、麻生政権の対応が糾弾されることは当然だ。麻生首相が行動を是正するよう、世論喚起に努めるとともに、政治権力に迎合する一部大手メディアの偏向報道を監視しなければならない。

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