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2008年11月 5日 (水)

“CHANGE”を求めた米国民によるオバマ大統領選出

11月4日に実施された米国大統領選挙で、民主党候補のバラク・オバマ上院議員が圧勝した。オバマ氏は2009年1月20日に第44代米国大統領に就任する。副大統領にはジョゼフ・バイデン上院議員が就任する。米国史上初めての黒人大統領が誕生することになった。

大統領選挙と同時に実施された議会選挙でも民主党は共和党に圧勝し、上下両院で民主党が過半数を確保する状況が維持されることになった。民主党は2001年以来、8年ぶりに政権を奪還する。

世界情勢、世界経済は時代の転換点を迎えている。サブプライム金融危機は市場原理主義=新自由主義の終焉を象徴する事態である。弱肉強食奨励=弱者切り捨ての経済政策運営に対して、米国でも明確に“NO”の意思が国民から表明された。

弱肉強食の政策姿勢は米国の外交をも規定した。米国は突出する軍事力を背景に、正当性の乏しいイラクへの軍事侵攻を強行した。イラクへの軍事侵攻が米国の軍事産業、石油産業、政権の癒着から推進されたことは明白だった。

市場原理主義=弱肉強食奨励から、セーフティネット重視=所得再分配重視に、米国の政治思潮が大きく旋回していることが明らかになった。議会と政権の「ねじれ現象」が米国で解消された。時代の転換と100年に1度の金融危機に直面する米国は、大統領選挙と議会選挙を実施して、本格政権を構築した。

国民の意思を反映した本格政権樹立により、新たに発足するオバマ政権は、抜本的で大胆な政策を実行することができる。日本では、総選挙を恐れる麻生首相が、金融危機に直面するなかでの国政選挙は政治の空白を作るとの詭弁を弄して、総選挙を先送りしているが、国政選挙で本格政権を樹立することが、はるかに優れた選択であることは明白だ。

政治のキーワードは“CHANGE”である。米国大統領選挙は時代が根本的な転換を求めていることを証明した。

日本の政治状況が米国に連動する可能性は極めて高い。

日本ではブッシュ政権が発足した2001年に小泉政権が発足した。小泉政権は市場原理主義=新自由主義を基軸に定め、弱肉強食奨励=セーフティネット破壊の経済政策を推進した。

米国がイラクに対する軍事侵攻を決定した際、小泉政権は直ちに米国の対応を支持する見解を表明した。強いアメリカに隷属する、対米隷属が小泉政権の基本方針だった。

小泉政権以来の市場原理主義=新自由主義の経済政策が日本社会を根底から変質させた。非正規雇用労働者が労働者の3分の1を占めるようになり、年収が200万円に届かない働く貧困層がやはり労働者の3分の1に達している。

また、高齢者、障害者、母子世帯に対する冷酷な政策が強行実施されてきた。その一方で、官僚利権だけは完全擁護する姿勢が貫かれ、特権官僚の「天下り利権」は完全に温存されている。

市場原理主義からセーフティネット重視への基本方針の転換、官僚利権の根絶、対米隷属外交から自主独立外交への転換、これらの根本的な“CHANGE”が求められている。

日本の次期総選挙で野党が過半数を確保し、政権交代を実現すれば、日本でも衆参両院の「ねじれ現象」は解消される。政権を生み出す政党と議会多数党は一致して、政策運営における混乱は回避されることになる。

新しい時代に直面し、政局が混乱しているなら、総選挙を実施して、政治の体制を刷新することが賢明である。日本の国民も“CHANGE”の必要性を痛感している。米国大統領選挙は、日本国民の潜在的な意識をはっきりと表出させる効果を発揮することになるだろう。

巨額の財源を使用して中途半端なバラマキ経済政策を決定する前に、新しい時代に対応する政治体制を選択する機会を国民に提供することこそ、麻生政権に課せられた最優先の役割だ。

「総選挙を経て初めて天命を担うことになる」と言い切った麻生首相は、いつまでも総選挙から逃げ回るべきでない。総選挙で自民党が敗北することがあろうとも、それが国民の選択であるなら、麻生首相が私的な利害で流れに抗うことは正当ではない。

世界経済、日本経済が根源的な分岐点に立っているからこそ、総選挙が求められている。米国大統領選挙、議会選挙の意味を再確認し、日本も早急に本格政権を樹立して新しい時代に対応するべきだ。

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