フジテレビ「サキヨミ」の偏向報道
10月26日放送では「対日規制改革要望書」を大きく紹介して驚きを与えたフジテレビ番組「サキヨミ」だったが、11月2日放送では、消費税増税容認へ論議を誘導する著しい偏向が観察された。
11月2日のフジテレビ情報番組「サキヨミ」は、冒頭で麻生首相の消費税増税発言を取り扱った。「ついに「消費税アップ」を明言 麻生首相「よく言った」と、A:思う B:思わない」を視聴者に問いかけ、投票結果が番組時間中に集計して発表された。
問いかけをして、視聴者が番組に対して投票を行う時間に放送された内容は、財務省所管の財政制度等審議会の委員会がまとめた消費税増税を見送った場合の将来シミュレーション結果だった。
シミュレーションでは、財政状況が悪化して、警察への支出が削減され、事件が発生して警察に通報しても警察が現地に到着するのに30分かかることが、ドラマで再現されて放送された。そのほか、地震発生時や不発弾が発見された場合の自衛隊出動も不可能になることが示された。
日本の財政状況が悪化するなかで、消費税増税を実施しなければ、日本の行政サービスは機能不全に陥ることを説明する内容だった。視聴者に麻生首相発言の是非を問いかけて視聴者に投票を呼び掛けている間にこのような内容の放送を行うことが、投票誘導であることは明白である。
このような手法で世論調査が実施されるのでは、調査結果に信頼を置くことなどできない。行政サービスの機能不全を求める国民など存在しない。将来、日本の財政状況が悪化して増税策採用が不可避になった時には増税措置採用がやむを得ないと誰しも考えている。
財政制度等審議会のシミュレーションが紹介された後、同審議会のメンバーである東京新聞の長谷川氏がVTRで登場して、財政審の将来予測が危機をあおっているとのコメントが紹介された。しかし、視聴者に呼び掛けた投票はすでに開始されており、その後まもなく投票が締め切られたから、長谷川氏のコメントを聞いて投票した視聴者は相対的に少なかったはずだ。
公正な投票を行うなら、麻生首相発言に対する賛否両論が紹介されたのちに投票を行うべきである。スタジオに戻ると、タレントのウエンツ氏以外のコメンテーターは麻生首相発言に対して「よく言ったと思う」との評価を与えていた。
政治評論家として出演している時事通信社の田崎氏は、常に自民党の主張をそのまま繰り返している。女性評論家の勝間和代氏、元プロ野球選手の長島一茂氏も同調した。スタジオに反対意見を提示する論客が存在しないのも異常である。
田崎氏は民主党が提言している選挙公約について、財源が明確でないとの発言を繰り返した。また勝間氏は民主党が子ども一人当たり月額2万6千円の子ども手当支給を公約に盛り込んでいることについて、年間4.8兆円の財源が必要で、実現可能性が乏しいとの趣旨の発言を示した。
スタジオは民主党批判のオンパレードである。政治的な中立を定めた「放送法」に抵触する番組内容と言って差し支えないと思われる。
麻生発言を論じる最大の論点は、「国民に不人気の消費税増税を明言したかどうか」ではない。民主党も将来の消費税増税の必要性を否定していない。
最大の論点は、消費税増税の前に「天下り」に代表される特権官僚の利権を排除するかどうかなのだ。視聴者からのメッセージには、「増税よりも無駄な歳出削減を優先すべき」との正論が示されていた。この論点を抜きにした論議はあり得ない。
民主党は、「天下り」機関に年間12.6兆円もの国費が投入されている事実を指摘したうえで、民主党が提示する政策プログラムを実現するための財源を段階的に確保する政策プログラムを発表している。
10月2日の衆議院本会議代表質問で民主党の小沢一郎代表は民主党が提示する政策の財源確保について、明快な説明を示している。「天下り」を根絶し、特殊法人、特別会計、独立行政法人を廃止し、2009年度に8.4兆円、10年度と11年度はそれぞれ14兆円、12年度には総予算の1割の20.5兆円の新財源を生み出すことが示されているのだ。
自民党は「天下り」利権を全面擁護している。特殊法人、特別会計、独立行政法人をそのまま温存して、特権官僚の天下り利権を全面擁護するのだから、新しい財源を見出すことができないのは当然だ。麻生首相の提案は、官僚利権を温存したままで一般国民に巨大な負担を押し付ける消費税増税に踏み切ろうとするものなのだ。この政策姿勢と民主党の政策を同一に論じることが欺瞞に満ちている。
自民党は民主党の提案を批判しているが、それは、自民党側の主張にすぎない。公共電波を占有する全国放送のテレビ番組が、政治問題に関わる重要テーマを取り扱うなら、賛否両論の論客を公平に出演させて、必要な論議を戦わせたうえで視聴者に見解を問う必要がある。
「天下り」制度が政府の無駄な支出の根源に存在している。「天下り」を根絶することによって、膨大な政府系機関を整理することが可能になる。「天下り」を根絶することによって、政府支出の1割程度の歳出削減を実現することは、不可能な政策プログラムではない。
自民党の代弁者をコメンテーターとして出演させるなら、反対意見を提示する論客を出演させなければ、視聴者が正しい判断を下すことは不可能である。次期総選挙での内政上の最大の争点は、①弱肉強食奨励=市場原理主義=弱者切り捨て=セーフティネット破壊=新自由主義の経済政策を踏襲するのか、と、②官僚利権温存=官僚主権構造を維持するのか、である。これと、③対米隷属外交を維持するか、という外交上の論点が争点になる。
フジテレビ番組の「国民に不人気の政策で、これまで小泉首相、安倍首相、福田首相が明言しなかった消費税増税を麻生首相が明言した」ことを強調する番組作りそのものが、著しく偏った論議の誘導になっている。
財政バランスの健全性維持が重要であり、人口構成の高齢化が進行するなかで、ある程度の社会保障水準を維持するには国民の負担増加が避けられないことを、ほとんどの国民は認識している。
問題は、そのような国民負担増加が避けられない近未来を前提にして、その前に、政府支出の無駄排除をどのように実行するのかなのだ。その問題の中核に「天下り」問題が存在する。「天下り」問題を避けた消費税増税論議はありえない。
番組が集計した投票結果は、麻生首相発言を「よく言ったと思う」との評価が43%、「よく言ったと思わない」が57%だった。これだけの偏向報道を展開しながら、投票者の57%が批判票を投じたことに、所期の目的を達成できなかった番組スタッフは落胆したと推察する。
全国ネットのテレビ放送が、このような政治的偏向に陥っている現実に十分な留意が必要である。「政官業外電=悪徳ペンタゴン」の活動は激しさを増している。正論がはじかれ、利権を維持しようとする断末魔の叫びが勢いを増している。
麻生首相が記者会見で説明した追加景気対策についても、フジテレビ世論調査の結果では、77%が「選挙対策」であると見抜いている。
真実を洞察しようとする国民の視線が従来より強くなっていることが救いだ。麻生政権が延命すれば、官僚利権が温存されたままで、過酷な大衆増税が実施されることが確実になった。国民に過酷な負担を求める前に、巨大な特権官僚の天下り利権を根絶することが先決である。野党は総選挙の明確な争点を丁寧に国民に浸透させてゆかなければならない。
同時に、偏向メディアの偏向放送に対して、適正な批判を提示し、国会でも問題を取り上げることが求められる。
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