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2008年11月

2008年11月30日 (日)

評価できる麻生首相の分かりやすさ

「カナダde日本語」の美爾依さんが「党首討論:小沢の圧倒的勝利で終わる」で、党首討論の総括を示してくださった。「きっこのブログ」様が実施した緊急アンケートを紹介されたが、11月30日午前10時45分時点で、アンケート結果は5660票対484票で小沢一郎民主党代表の圧勝を示している。

麻生首相は首相に就任した直後の臨時国会冒頭での衆議院解散に合わせて月刊誌で解散総選挙を宣言する小細工を施していた。実際、自民党はお祭り騒ぎに仕立てた自民党総裁選の勢いに乗って総選挙を実施する判断を固めていた。

ところが、自民党が実施した選挙予測調査で自民党惨敗予想が示されたために、麻生首相は一転して総選挙から逃げの一手に転じた。たまたま深刻化した世界的な金融市場の激動の流れに、「渡りに船」と飛び乗った。10月30日には追加景気対策を発表して、「政局より政策」の大義名分を掲げて総選挙を先送りする方針を示した。

総選挙を先送りする体裁を整えるためには、景気対策に全力をあげる政策運営スタンスが不可欠だった。麻生首相は記者会見で「ポイントはスピード、迅速に」と強調した。当然、臨時国会への第二次補正予算案提出が求められた。

ところが、補正予算案の目玉と位置づけた定額給付金に対する国民の評価が最悪だった。定額給付金政策の迷走に麻生首相の問題発言が重なり、また、麻生首相の首相としての能力不足が鮮明になり、自民党は臨時国会での麻生首相失脚、追い込まれ解散を警戒した。

大島理森国会対策委員長、細田博之幹事長、菅義偉選挙対策副委員長などの強い誘導で、麻生首相は補正予算案の国会提出を来年にまで先送りすることを決定した。麻生首相の決断の根拠は「政策より政局」=「公より私」だった。

党首討論はこの事実関係を誰の目にもはっきりと示すものだった。麻生首相がどのように言い逃れしようとも、麻生政権が国民生活を二の次にして、政治の責任をかなぐり捨てて政権の延命だけを追求していることが鮮明に示された。

「きっこのブログ」様が実施した緊急アンケート結果には、党首討論の客観的評価が明確に示されている。党首討論の内容については、「晴天とら日和」様が情報を分かりやすく整理してくださっている。

国民は政治の主権者だが、総選挙で誤った判断を下してしまうと、最長4年間、悪政に苦しむことになる。2005年9月の劇場型郵政民営化選挙で自民党に多数の議席を与えてしまったために、日本社会は根底から改悪されてしまった。自民党の首相が無責任に政権を何度も放り出しても、低次元の発想しかできない首相が国民の幸福実現を目指さずに首相の地位に居座ることだけに執着しても、国民にはなす術(すべ)がない。

こうした深刻な経験を踏まえて、次期総選挙では誤りのない選択を示さなければならない。政権を選択する基準は政策であり、基本政策に三つの対立軸がある。以下に示す対立軸を改めて確認する必要がある。

①弱肉強食奨励VSセーフティーネット重視
②官僚利権死守VS官僚利権根絶
③対米隷属外交VS自主独立外交

このことは以下のように置き換えることができる。
①は「大資本の利益VS国民の利益」
②は「官僚の利益VS国民の利益」
③は「外国(資本)の利益VS国民の利益」

第一は、「弱肉強食奨励」VS「セーフティーネット重視」である。小泉竹中経済政策が推進した弱肉強食奨励政策。大資本の労働コスト削減への猛進を小泉政権が全面支援した。その結果、分配における格差が拡大した。2002年から2007年の景気回復期に大企業は史上空前の利益を獲得したが、勤労者の所得は減少した。非正規雇用労働者、年間所得が200万円以下の世帯が激増した。

11月30日のテレビ朝日番組「サンデープロジェクト」に出演した竹中平蔵氏は、格差拡大の各種データを突きつけられたが、「改革を継続しないからこのような問題が起こるんだ」と訳の分らない言葉を繰り返すだけで、質問にまったく答えられなかった。

麻生首相は、この状況を放置したまま、2012年度に消費税率を大幅に引き上げる方針を発表した。官僚利権を温存したまま、国民に巨大な負担を押し付ける方針を示している。その一方で、法人税を引き下げる方針を示唆している。

小泉政権が日本社会に強制した「市場原理主義」=「弱者切捨て」=「新自由主義」が日本社会を変質させた。「セーフティーネット」を強化し、すべての国民の生活安定を重視する「福祉社会」重視の方向に政策を転換することが求められている。

第二は、「官僚利権死守」VS「官僚利権根絶」だ。麻生政権は財務省の天下り構造をそのまま温存する姿勢を示している。財務省にとっての天下り御三家は日本政策投資銀行、国際協力銀行、日本政策金融公庫である。麻生政権はこれらの機関への財務省からの天下りを完全に容認している。

また、政府は公務員制度改革の具体化を進めているが、内閣人事局の設置を2010年度に先送りすることを決定した。各省庁に付与されてきた人事権を内閣人事局に移管し、内閣府が人事権を確保する制度変更だが、実施が先送りされた。

先送りのポイントは、制度変更を総選挙後への先送りにある。選挙が終わってしまえば、内容の修正が可能になる。つまり、人事権の移管を実行する意思がないことを示している。

第三は「対米隷属外交」VS「自主独立外交」だ。小泉政権の経済政策は外国資本に巨大な利益を供与する政策だった。詳細は拙著『知られざる真実-勾留地にて-』をご高覧賜りたいが、日本の資産価格暴落誘導、不正と欺瞞の「りそな銀行救済」、優勢民営化政策は、すべて外国資本への利益供与政策であったと考えられる。

自公政権の対米隷属スタンスは、その後の政権も継承している。麻生政権は日本国民に巨大な損失を強制している100兆円のドル建て外貨準備資産を放置し、さらに、外貨準備から10兆円をIMFに拠出する方針を国会の了解も取らずに発表した。

サブプライム金融危機が市場原理主義の帰結であることは明らかであり、欧州を中心に金融市場に対する監視強化論が唱えられているにもかかわらず、麻生首相は米国の飼い犬のように市場原理主義への擁護発言を示した。

麻生首相はサミット議長国首相として、日本での金融サミット開催を提唱したにもかかわらず、11月開催は米国、来春開催は英国となり、発言が完全に無視されている。米国のイラク軍事侵攻の正当性が否定されているにもかかわらず、日本政府は米国にものを言えない状況を維持している。

日本国民の利益を最重視した外交が求められているが、自公政権は対米隷属を修正しようとしない。郵政会社株式が上場され、売却される株式が外国資本に支配されれば、日本国民の貴重な優良資産、350兆円の金融資産が根こそぎ外国資本に収奪されてしまう。日本郵政株式の上場および株式売却をまず凍結しなければならない。

麻生首相の政治姿勢の最大の問題は、「国民の利益」を重視していないことだ。「国民の利益」=「公」ではなく、「私」の利益が優先されている。不況が深刻化し、追加景気対策が論議されると、国民は目先の景気対策に惑わされて本質を見失いがちになるが、総選挙で正しい判断を示さないと、また苦しみの4年間を迎えてしまうことになる。

麻生首相を評価できるのは、麻生首相が国民の利益を重視していないことを、言葉の端々に分かりやすく表している点だ。国民の利益をまったく考えていないのに、国民の利益を優先しているかのような言葉の偽装を巧みに演じる過去の首相の方がたちが悪い。麻生首相が今後も、「公よりも私」の基本姿勢を率直に表出し続けてくれれば、次期総選挙で国民が再び判断を誤ることを防止できる。

政権交代を実現しなければ日本の世直しは進まない。国民は総選挙まで気を緩めずに対応し続けなければならない。

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2008年11月28日 (金)

党首討論が示した麻生首相「公より私」の政治姿勢

11月28日午後3時、麻生太郎首相と小沢一郎民主党代表による党首討論が、衆議院第一委員室で開催された。

麻生首相は質問に対して正面から答えず、筋の通らぬ主張を最後まで押し通した。客観的に見て、小沢代表の主張が理に適(かな)っていることが明確になった。麻生首相は国民の幸福でなく自分の幸福だけを考えていることが鮮明になった。

国民は麻生首相の政治姿勢を冷静に見つめ、日本の命運を決することになる次期総選挙で誤りのない審判を下さなければならない。麻生首相が解散権を私物化してしまっている以上、衆議院の解散、総選挙が実施される時期は不透明である。

麻生首相は国民生活よりも、自分自身の私的な利益を優先して、政権に最も有利なタイミングを見計らって総選挙を実施するのだと考えられるが、総選挙の時期がいつになろうとも、国民は冷静で的確な判断を示さなければならない。

党首討論での論点は以下の3点だった。
①麻生首相が「世界で一番早く景気対策に手を付けた国である」と述べた問題
②年末までの対応について、麻生首相が「今回の9兆円で年末は一応できるのではないか」と述べた問題。
③小沢代表が「来年に2次補正を送っているわけですから、12月に十分選挙できるじゃないですか」と述べた問題。

第一の「世界で一番早く景気対策に手を付けた国である」との麻生首相の発言は事実に反する。米国のブッシュ政権は本年1月18日にGDP比1%規模の緊急景気対策の骨子を発表し、2月13日に2年間で1680億ドル規模の、戻し減税を中心とする景気対策を成立させた。本年春から実施されている。これが、「世界で一番早く景気対策に手を付けた事例」である。

日本の対応は8ヵ月以上遅れている。補正予算の規模は1.8兆円で米国の10分の1である。麻生首相が自慢して発言する内容でない。

第二の「9兆円の対策で年末の対応ができる」の発言は、信用保証協会を活用した特別保証制度の資金枠を9兆円設定したことを指しているが、この施策で年末に向けての経済困難が解消されると考える者はいない。

小沢代表が指摘したように、中小企業の資金繰りが一段と深刻化しているだけでなく、不況進行によって国民生活の困窮が日を追うごとに深刻化している。

厚生労働省は本年10月から来年3月までの期間に非正規雇用労働者が3万人、雇用を喪失するとの見通しを公表した。調査対象に含まれない雇用喪失者も多数発生すると見込まれる。

2008年の上場企業倒産はすでに30社に達し、戦後最多になった。日本IBMが正規社員の1000人削減方針を打ち出すなど、雇用削減の動きは正規雇用にまで波及し始めている。

年末を控えて、どれほど多くの国民が経済悪化に心を痛めているのかを、麻生首相は少しでも考えたことがあるのか。安心できる生活の基礎は雇用の確保だ。中小零細企業経営者にとっては、企業を倒産させずに存続させることが死活問題だ。

首相は、国民生活を守るために全身全霊を注ぐべき存在だ。自分は安全な場に居座り、バー通いしつつ、国民生活を守るための行動をサボタージュするような首相には、直ちに退場してもらいたいと思うのが、不況に苦しむ一般国民の心情だ。

臨時国会に提出できる補正予算案をたなざらしにして、来年まで先送りする理由は皆無(かいむ)である。小沢代表は麻生首相に補正予算案提出を来年まで先送りする理由を繰り返し尋ねたが、麻生首相から説得力のある説明は一切示されなかった。

第三の、総選挙先送りについて、小沢代表は「初心に帰る」べきだと述べた。おそらく「初心」は「所信」への掛け言葉なのだろう。麻生首相は10月10日に発行された月刊誌に臨時国会冒頭での解散を明確に宣言した。

自民党の首相が二代にわたり政権を放り出し、国民の審判を受けずに3人目の首相が政権を組織した。政権を放り出した2人目の首相である福田前首相は、後継の麻生首相に早期の解散総選挙実施を申し送った。麻生首相自身が「総選挙に勝利して初めて天命を担える」と明言した。

自公政権が二代にわたって政権を放り出し、主権者である国民に大きな迷惑をかけたのは紛れもない事実だ。これらの不祥事を通じて、自民党自身が国民に対して、総選挙で国民の審判を受ける必要があるとの明確なメッセージを示してきたのではないか。

麻生首相は、首相に居座り、総選挙を先送りしていることは、議会制民主主義のルールに則(のっと)る正当な行動で、問題があると言われる筋合いはない、との主張を示した。

麻生首相は指摘された問題に対して正面から回答することを避けた。逃げた。麻生首相が自ら発した言葉で、また、自ら記したのかは分からないが少なくとも自らの氏名を冠して発表した文章で、早期の解散総選挙実施を宣言した。小沢代表が政治家は言葉の重みをかみしめるだと諭(さと)したのは当然のことだ。しかし、麻生首相が小沢代表の言葉の意味を理解できたかは定かでない。

麻生首相は、第1次補正予算で年末までの景気対策が十分であるとの趣旨の発言を繰り返した。小沢代表は、麻生首相がそのように判断するなら、12月に総選挙を実施できるではないかと指摘した。

麻生首相は100年に1度の暴風雨が荒れているから景気対策を優先したという。第1次補正予算で年末までの対応が完了したと判断し、第2次補正予算案の国会提出を2009年に先送りしても問題がないと判断するなら、早期の解散総選挙実施を宣言した麻生首相が12月に総選挙を実施することが、矛盾のない行動である。

麻生首相は年末資金の貸し手の行動に影響を与える「金融機能強化法」の採決を民主党が先送りしたことに対して、この法律成立を求めることを執拗に繰り返した。しかし、麻生政権が言葉に責任を持つ行動を示すなら、問題はたちどころに解消するはずだ。民主党は、審議をいたずらに引き延ばす対応をしないことを確約している。

結局、麻生首相は自民党惨敗の可能性に脅(おび)えて、自分が高らかに宣言した解散総選挙から逃げ回っているだけである。問題は、麻生首相の「私」的利益を追求する行動が、罪なき国民の生活を深刻に脅かし、苦しめていることだ。

不況深刻化に対して、すべての「私」を取り払い、「公」のために、「国民」のために全身全霊を注ぐのが、あるべき為政者(いせいしゃ)の姿だ。麻生首相の政治姿勢は「政局より政策」でなく、「政策より政局」=「公より私」である。

歪んだ現状を是正できる唯一の方法は、次期総選挙に際して、国民が正しい判断を下すことである。国民は今日の党首討論で改めて確認した麻生首相の「公より私」の政治姿勢を忘れてはならない。

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本日発売の新書『大恐慌を生き残るアウトロー経済入門』の解説を執筆

『週刊SPA』12月2日号(扶桑社、現在発売中)の特集記事「今こそ[反米経済主義]のすすめ」にインタビュー記事が掲載されています。短い記事ですが、ご高覧賜れればありがたく思います。

インタビュー記事には、須田慎一郎氏、副島隆彦氏、原田武夫氏、門倉貴史氏、宮崎学氏が登場しています。

また、『突破者』(南風社)の著者宮崎学氏と『官製不況』(光文社)の著者門倉貴史氏が対談形式で執筆した新書『大恐慌を生き残るアウトロー経済入門』(扶桑社)が本日11月28日に発売されます。

「なぜ、恐慌は起こったのか? サブプライム問題に端を発する、という話はすでに語りつくされた。が、本当はもっと根が深い。アウトロー作家の宮崎学氏と地下経済に精通する門倉貴史氏が対談形式でその根の深さを明らかにしていく新書。新書としてはおそらく初の試みであろう、エコノミスト・植草一秀氏による解説付き!」(『週刊SPA』紹介記事より)

というわけで、本日発売の新書の解説を書かせていただきました。ご高読賜りますようご案内申し上げます。

『月刊日本2008年11月号』には、「市場原理主義の終焉 小泉元首相退場とサブプライム金融危機」を出稿させていただきました。見開き8ページにわたる論考です。こちらもご高覧賜りますようお願いいたします。

同誌には政治評論家の森田実氏と中央大学客員教授の稲村公望氏による対談「米国経済の破綻は日本自立のチャンスだ!!」も併せて掲載されております。森田実氏には森田氏のHP上で、拙稿についてのありがたいコメントを頂戴いたしました。この場を借りて謹んでお礼申し上げます。

また、『週刊金曜日』第722号2008年10月10日号の巻頭特集「世界金融危機」に「米国カジノ経済破綻が日本を襲う」を出稿させていただきました。見開き4ページの論考です。併せてご高覧賜りますようお願い申し上げます。

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2008年11月27日 (木)

郵政株式売却強行が「売国政策」である理由

11月25日、米国連邦準備制度理事会(FRB)は、個人向けの信用収縮を和らげるため、最大で8000億ドルの新たな金融支援を行うことを発表した。住宅ローン関連で6000億ドル、クレジットカード、消費者ローンなど向けに2000億ドルの資金枠を設定した。

米国政策当局はすでにベア・スターンズ社救済に290億ドル、政府系住宅金融公社支援に2000億ドル、AIG救済に1500億ドル、金融機関の資本増強等に7000億ドルの資金投入を行う資金枠を設定しており、これらの合計金額は1兆8790億ドルに達している。

サブプライム金融危機に伴う米国金融機関の損失が最終的にどこまで拡大するかが明らかにされていない。今回の金融危機はデリバティブ金融商品によって、リスクの極めて高い金融商品の想定元本が幾何級数的に拡大している点に最大の特徴がある。市場原理にすべてを委ねる「市場原理主義」=「新自由主義」がもたらした必然の帰着点であるが、人類がかつて経験したことのない領域にリスクが拡散されていることを踏まえなければならない。

デリバティブ金融商品の想定元本は600兆ドル水準にまで膨張したと見られており、米国住宅価格下落に伴う損失が6兆ドル程度にまで拡大する可能性は決して小さくないと考えられる。

FRBは8000億ドルの追加金融支援策を発表したが、金融市場の反応はそれほど大きなものでない。米国最大の金融機関であるシティグループに対する金融支援策発表、数千億ドル規模の追加景気対策策定、オバマ次期政権の経済閣僚発表に続いてFRBによる金融支援策が発表された。政策総動員を印象付けて、市場環境の劇的な転換を実現することが目論(もくろ)まれたのだ考えられるが、金融市場の反応はさほど大きいものではなかった。

11月25日に発表されたS&Pケースシラー住宅価格指数では、全米主要10都市の住宅価格は前月比1.9%下落し、調査開始以来の最低値を更新した。2006年6月のピークからは23.4%の下落を記録した。米国の住宅価格下落はピークから23%にすぎないが、金融市場は大混乱に陥っている。

住宅着工件数は年率80万戸水準に激減しており、経済全体に対する波及効果が徐々に拡大している。自動車、住宅が米国経済の基調を判断するポイントであるが、乗用車販売は前年比30%減を記録し、個人消費全体が著しい抑制傾向を強めている。

米国の不動産価格は2010年に向けて下落し続けることが予想されており、不動産価格下落に連動するデリバティブ金融商品の価格下落も持続が見込まれる。このため、金融機関の生み出す損失は、今後も順次拡大することが予想される。

最終的に米国政策当局は数兆ドルの公的資金を投入せざるを得なくなる可能性が高い。米国政府は巨大な国債を発行し、FRBは連動して過剰な流動性を供給することになると考えられる。

こうした延長上に予想されることは米ドルの大幅な減価である。日本政府は外貨準備約1兆ドルの大半を米ドル建て資産で保有している。ドル下落は日本の外貨準備の円評価金額が減少することを意味する。

1ドル=95円までの円高進行で、すでに外貨準備には24兆円の評価損が生まれていることが明らかにされた。日本の財政状況が逼迫し、国民生活にとって必要不可欠な社会保障費までが、年間2200億円削減されつつある。さらに麻生首相は国民に過重な負担を押し付ける追加大型増税まで言及し始めている。

そのような財政逼迫(ひっぱく)の状況下で、外貨準備で24兆円もの損失を生むことが許されるはずがない。驚くことに、こうした状況下で麻生首相は11月15日のワシントン緊急金融サミットで、IMFに日本の外貨準備から10兆円を流用する方針を表明した。国会の同意を取ることなく、貴重な国民資産が安易に海外に提供されることを野放しにすることはできない。

また、途上国銀行に資本注入するために、世銀と3000億円の基金を設定し、日本が2000億円もの資金を拠出することまでが検討されているという。

11月13日付記事「憲法違反の外国為替資金特別会計」に記述したように、国会の決議を経ずに100兆円もの国民資金が野放しにされ、政府、財務省が勝手に巨大損失を生みだしている行為は、憲法違反の行動として糾弾されなければならない。

日本国民が不況にあえぎ、日本の金融システムが崩壊の危機に直面するなかで、巨大な損失を生みだしている政府の外貨準備管理の問題は、11月28日の党首討論でも重大な問題として追及されるべきだと考える。

日本の外貨準備残高が激増したのは、2002年10月以降である。竹中平蔵氏が小泉政権の金融相を兼務し、日本の資産価格暴落が誘導され、最終的に不正と欺瞞に満ちた「りそな銀行救済」が実行され、日本の株価の急上昇が演出された時期に、外貨準備が激増している。

日本は外貨準備の大半を米国国債で保有しているが、小泉元首相がブッシュ大統領に米国国債を売却しないとの約束をしたとの重大な情報を森田実氏が明らかにしている。小泉政権得以来の自公政権が売国政策を実行してきた疑いは濃厚である。

郵政民営化は、日本郵政が保有する巨大な優良資産を米国資本が収奪するために実行されている疑いが極めて強い。米国の金融資本は350兆円の郵政資金をターゲットにしているだけでなく、日本郵政が保有する巨大な不動産資産をも標的にしていると考えられる。

麻生首相が郵政株式の売却凍結を口にした途端、激しい麻生首相バッシングが噴出している。テレビ朝日は、小泉元首相、中川秀直元自民党幹事長、飯島勲元秘書、小泉チルドレンを画面に登場させ、郵政民営化見直し論議を封じ込めようとしているように見える。

日本郵政が不動産事業を本格化していることが報道されている。東京・目黒の社宅跡地で分譲マンション開発を進めるほか、東京中央郵便局の再開発にも着手している。日刊ゲンダイ紙は11月24日付記事「西川・日本郵政 国民の財産を勝手に切り売り」を掲載したが、貴重な国民資産が私的利益のために流用されつつある。

日本郵政が保有不動産の売却を開始した直接の理由は、当面の利益確保のためであると考えられる。決算において黒字を確保しなければ株式売却を実施できない。株式売却が凍結されぬ前に、できるだけ早く株式売却を実現しようとの思惑が透けて見える。

株式売却が実行され、日本郵政の所有権が日本国から民間に離れてしまえば、あとは株式を保有した民間資本の思いのままになる。日本郵政の優良資産は食い尽くされることになるだろう。これらの問題を「神州の泉」様「チラシの裏」様をはじめとする多くの識者が繰り返し指摘されてきた。

350兆円の資金、巨大な優良不動産を思いのままに処分できる。巨大な人員と採算の取れない郵便局ネットワークが現在の利益水準を抑制している要因だが、民営化が実現した段階で、これらの障害物が順次取り除かれるはずである。

障害物が存在しているために、当初は低い価格で株式が売却されることになる。安いい価格で郵政会社を購入し、障害物を取り除いて、株価上昇を誘導して高い価格で売り抜ける。その間に、日本国民が蓄積した巨大な優良資産の甘い蜜を吸い尽くすのだ。

売却された株式を直接、間接に外国資本に支配されれば、国民の貴重な優良資産がそっくり外国資本に収奪(しゅうだつ)されることになる。日本郵政の不動産事業はまだ本格化しない。当面は、株式売却を実現するための利益確保に限定される。民営化が実現した段階で、優良資産の本格的な収奪が実行されるだろう。

外貨準備の巨大損失、IMFや世界銀行への巨額資金拠出、郵政民営化、市場原理主義の日本への強制、これらは小泉・竹中政権が誘導してきた売国政策の延長上に位置づけられる施策である。

国民新党が郵政民営化凍結法案を提案し、民主党とこの問題で足並みをそろえることは、日本の政治を外国資本のためのものとせず、日本国民の幸福実現のためのものとする意味で、極めて重要な意味を有している。

日本郵政の事業展開に対する監視を強化しなければならない。まず求められることは、日本郵政の上場と株式売却を凍結することである。貴重な国民資産が根こそぎ外国資本に収奪された後で、後悔しても取り返しがつかない。

急(せ)いては事を仕損じる。これだけの巨大な国民資産の取り扱いを拙速(せっそく)に進めることを避けなければならない。郵政民営化をなんとしても強行しようとする勢力は、郵政民営化は2005年9月の総選挙で国民が示した総意だと主張するが、2005年9月に示した意向を主権者である国民が、冷静に見直し始めている。

2007年7月の参議院選挙結果は、その明確な意思表示である。次期総選挙で冷静さを取り戻した国民が最終判断を下し、政治がその意向に従うのが正しい対応である。日本の政治を「売国政治」から「国民の幸福を追求する政治」に糺(ただ)さなければならない。

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2008年11月26日 (水)

筋が通らぬ2次補正先送り

麻生首相が補正予算案の国会提出を来年に先送りすることを正式に表明した。10月30日に追加景気対策を発表した記者会見

「景気対策のポイントはスピード、迅速」、
「年末にかけて中小企業の資金繰りが苦しくなる。その中小企業の資金繰りを万全なものとする」
と国民に約束したことと矛盾するのでは、と記者から質問されると、麻生首相は、
「あ、それは、全然矛盾しません」
と強弁した。

 「カナダde日本語」様「晴天とら日和」様が麻生首相発言の無責任さについて論評を掲載されているが、筋違いの誤りをゴリ押しで通用させては、日本の将来が暗くなる。

 首相に言葉の責任の重みを認識してもらわなければならない。

 振り返れば、小泉首相が30兆円以上国債を絶対に発行しない公約などを守れず、国会で追及されたとき、「この程度の約束を守れなかったとしてもたいしたことではない」と開き直って以来、為政者の無責任が放置されるようになった。

 自民党の首相は2代続けて、1年足らずで政権を放り出した。その無責任内閣を引き継いだのが麻生政権だ。

 麻生首相は「政局より政策」を主張して国民に宣言した衆議院の解散総選挙を先送りし、景気対策に全力をあげると国民に約束した。にもかかわらず、肝心要(かなめ)の補正予算案を国会に提出しない。「国会に提出しても、会期中に成立するかどうか確証を得られないから提出しない」と言うが、こんな理屈は通用しない。

 補正予算案を国会に提出し、成立に全力をあげることなくして、国民との約束を守る手立てはない。「野党に金融機能強化法の迅速な採決を求める」と言うが、そう主張するなら、まず補正予算案を国会に提出するべきだろう。

 メディアの一部は政治権力に迎合して、この期に及んでも、事態を「麻生首相と小沢一郎代表の駆け引き」と表現して、両者に問題があるとの印象付けに腐心するが、話の筋道をたどれば、この評価がいかにいかがわしいかが分かる。

 11月26日付日本経済新聞3面の編集委員菅野幹雄氏の署名記事は、両者の政治駆け引きを「景気より政局」と述べて、「政治は国民不在の迷走に陥った」と記述するが、偏向報道の典型的な一例である。

 民主党が早期の解散・総選挙の態勢を敷いたのは、麻生首相が早期の解散・総選挙の方針を明確に示したからである。日本国憲法第7条の「天皇の国事行為」に「衆議院の解散」が記載され、天皇の国事行為が内閣の助言と承認によって行われることから、内閣に解散権があるとの解釈が生まれた。内閣に解散権があるとの解釈から、内閣総理大臣が解散権を持つとの解釈が生じた。

 最高裁判例が統治行為論を用いて、解散権についての司法判断を回避し、首相の解散権が認められるようになったが、首相が勝手気ままに解散権を行使することが正当化されたのではない。

 自民党の首相が2代続けて政権を放り出し、自公政権は政権担当能力の欠如を露(あら)わにした。2007年7月の参議院選挙で与党が惨敗し、参議院は野党が支配権を確保している。衆参両院の支配勢力が異なっており、政治運営が極めて困難になっている。

 こうした経緯、状況を踏まえて、麻生政権は福田政権から政権を引き継ぐ段階で、早期の解散総選挙実施を明確に国民に宣言したのだ。この判断は順当なものである。だが、その判断も、元々は、マスコミを動員した自民党総裁選をお祭り騒ぎに仕立て、麻生政権の支持率を浮上させたタイミングで総選挙を実施しようとの姑息(こそく)な考えに立脚(りっきゃく)したものだった。

 このような状況下で、米国発の金融危機が世界的に波及し、日本経済も深刻な局面に直面した。未曾有(みぞう)の経済危機に対応するためにも、国民の負託を受けた本格政権を樹立することが、国民的見地から強く求められる。

 臨時国会が召集され、民主党は早期の衆議院解散・総選挙実施が、国民的見地に立って求められる最優先の課題であるとの認識の下で、臨時国会審議に積極的に対応した。これまで反対姿勢を示してきたテロ特措法審議を短期間で完了することについては、賛否両論が存在した。徹底審議をすべきだとの主張にも一理あることを、私も理解する。

 しかし、与党が数の論理で法案成立を強行する可能性が高いとの見通しが存在した。そのなかで、より緊急性、優先度の高い衆議院の解散・総選挙実現を促進するとの目的のために、法案審議を短期間に完了させるとの方針を民主党が採用した。これは、国会戦術上のひとつの選択肢として、許容されるものだと考える。

 こうした経緯で、民主党は臨時国会の迅速な審議実現に協力した。すべての前提に、麻生政権が早期の解散・総選挙を実施するとの方針を明示した事実が存在する。

 ところが、麻生政権が途中で、解散総選挙を先送りする気配を示し始めた。自民党が実施した調査で自民党惨敗予想が示されたことが原因と考えられる。国民に宣言した方針を、明確な理由もなく変更する麻生首相の行動がそもそも「信用できねー」行動である。

 麻生首相はその理由に「政局より政策」を掲げた。100年に1度の暴風雨が荒れていて、国民は総選挙より景気対策を求めているから、いまは解散・総選挙ではなく景気対策だと言った。

 民主党は国民生活を第一と位置付ける立場から、麻生政権が景気優先を掲げて景気対策を提示することを容認した。麻生首相は10月30日の記者会見で「年末の資金繰りが大切で、景気対策はスピード、迅速さがポイントだ」と述べた。

 この経緯を踏まえれば、麻生政権が補正予算案を臨時国会に提出するべきことは明白である。ところが、麻生首相が補正予算案を臨時国会に提出せずに、臨時国会を閉会する姿勢を示したため、民主党の小沢代表が急きょ、11月17日に麻生首相に対して党首会談を申し入れて、補正予算案の臨時国会提出を要請したのである。

 その際、民主党要請の実効性を高めるため、小沢代表は、麻生政権が補正予算案を臨時国会に提出するまで、テロ特措法と金融機能強化法の採決を行わない方針を表明した。変則的な手法ではあるが、補正予算案の臨時国会提出を促す実効性のある方策はこれ以外に考えられない。窮余の一策であった。

 だが、この小沢代表の行動を評価する際に最も重要なことは、行動の理由を考察することだ。小沢氏が私的な利害を優先して、このような対応を示したのであれば、小沢氏の行動は「政局優先」だと批判されるべきだ。しかし、小沢氏がこのような変則的な行動を取ったのは、国民生活が未曽有(みぞう)の経済混乱に直面し、2008年年末に向けて極めて厳しい情勢に置かれているからだった。

 麻生首相自身が「100年に1度の金融危機」と発言し、「迅速、スピードがポイントだ」と明言した景気対策である。景気対策は補正予算によって具体化され、実行に移されて初めて成果をあげる。国民生活を重視するなら、補正予算案をできるだけ早期に国会に提出し、迅速な審議を行って成立させ、実行に移すことが不可欠だ。

 小沢代表は麻生首相が、補正予算案を国会に提出しても迅速な審議を行ってもらえないとの懸念を表明したことを受けて、党首として責任をもって対応すると約束した。ところが、結局、麻生首相は補正予算案の国会提出を来年まで先送りすることを表明した。

 この経緯を踏まえたとき、これを「麻生首相と小沢代表の駆け引き」と表現するのは、明らかな偏向だ。現に、先述した論評が掲載された11月26日付日本経済新聞社説は「筋が通らぬ2次補正先送り」のタイトルの下で、麻生首相の決定を批判する論評を掲示している。

 麻生首相と小沢代表を同列に扱う論評は、明らかに偏向したものであり、真理と正義を重んじる国民は、麻生首相の不正義、姑息(こそく)な政権運営を徹底的に糾弾(きゅうだん)しなければならない。

 麻生政権が野党に採決を求めている「金融機能強化法改正案」の実態は、「金融機関救済法」でしかない。公的資金が金融機関に投入されれば、金融機関の破たんリスクは低下するが、金融機関が破たんリスクを抱えた一般事業会社に資金を融資することはほとんど期待できない。金融機関を救済する法律でしかないのだ。

 金融システムを守ることは重要だが、責任ある当事者の責任処理を曖昧(あいまい)にしたまま、金融機関だけを救済する施策を実行することは正当化されない。麻生政権が提示した追加景気対策は問題だらけだが、まず、補正予算案を国会に提出し、実りある国会審議を通じて予算案を修正し、成立させることが求められる。

 11月28日の党首討論で、一連の経過が明確に示されることを期待する。

 年末に向けて厳しい経済状況に直面する国民生活を切り捨て、党利党略、政局、「私」だけを優先する麻生首相に対する国民の厳しい審判が早晩下されることになるだろう。

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2008年11月25日 (火)

小沢民主党代表攻撃に躍起の偏向メディア

11月24日付日本経済新聞2面政治欄に「国会延長にらみ小沢氏積極姿勢」と題する記事が掲載された。小見出しには「政権追い込みに躍起」とある。

しかし、マスメディア報道を見ると、「小沢氏批判に躍起の偏向メディア」というのが現状だ。

11月23日のNHK日曜討論。

小沢氏が民主党の政策姿勢を真摯(しんし)に語った。問題は、麻生政権が「政局より政策」の看板を掲げながら補正予算案の国会提出を来年まで先送りしようとしていることだ。

国民に宣言した解散総選挙を麻生首相が先送りした表向きの理由は「100年に1度の金融危機」で、麻生首相は、いまは「政局より政策」を大多数の国民が支持していると述べた。

麻生首相は10月30日の記者会見
「景気対策のポイントはスピード、迅速」で、
「年末にかけて中小企業の資金繰りが苦しくなる。その中小企業の資金繰りを万全なものとする」
と国民に約束した。

こうした発言を示しておきながら、補正予算案の国会提出を来年に先送りすることは筋が通らない。

「晴天とら日和」様第2次補正予算案の国会提出問題に関する情報を丁寧にまとめてくださっている。国民の目線で政治を考えるとき、日本経済の悪化が急激に進行するなかで、補正予算の取り扱いは、最大の争点になる。補正予算案の国会提出を来年まで先送りするのは、国民生活切り捨て=政局優先=党利党略優先の行動そのものだ。

2008年の年末に向けて、多くの国民が生活不安に脅えている。「BLOG版ヘンリー・オーツの独り言」のヘンリー・オーツさんが「どんな師走が待っていることやら、背筋が寒くなる今日この頃です!」で、JANJANニュース「【ハケンという蟻地獄】大量解雇で多くの派遣労働者が路上に出る恐れ」を紹介された。

麻生首相は10月26日の秋葉原街頭演説で、九州トヨタの非正規雇用から正規雇用への転換事例を紹介したが、その自動車業界が派遣労働者大量削減の主役になっている。また、トヨタ系列企業での派遣労働の期間規制を回避する偽装行為疑惑に対しても十分な説明を示していない。

小沢民主党代表が国民生活の困窮を重視して、麻生政権に対して厳しい姿勢で臨むのは当然だ。メディアが小沢氏の行動を支持するなら理解できるが、小沢氏批判に躍起になるのは、あまりにも不自然である。

タブロイド紙の『日刊ゲンダイ』が11月22日付記事「大マスコミ報道に異議あり!悪いのは麻生自民だ」に、正論を掲載した。マスメディアの多くが政治権力に迎合するなかで、日刊ゲンダイは正論を示す稀有(けう)な存在だ。納得できる正論を頻繁(ひんぱん)に提示している。

上記記事の一部を以下に引用する。

「小沢代表の要請は単純。「総理は『選挙より景気対策だ』とあれだけ言ったではないか。だったら2次補正は今国会に提出すべきだ」「国民との公約を実行しようともしないのは理解できない」というものだ。「審議をいたずらに引き延ばすことはしない」とも約束している。
 実際、麻生首相は10月30日、「政策を実現して国民の生活不安にこたえることが最優先だ」とタンカを切り、追加経済対策を発表したのだから、大急ぎで第2次補正予算案を提出するのは、当たり前のことだ。」

日刊ゲンダイ紙はマスメディア報道の偏向を以下のように糾弾する。

「大新聞は「民主 新テロ法採決拒否へ」「民主禁じ手戦闘モード」という見出しを大きく掲げているのだから、どうかしている。これでは国民は、民主党が暴挙に出ていると勘違いするに決まっている。
 一応、「麻生首相が補正予算を提出しないのは筋が通らない」と批判しているが、必ず「テロ特措法を人質に取る形で提出を迫る小沢代表の姿勢も問題が多い」と民主党を強く批判。なかには、「強引ともとれる国会戦術には小沢氏の焦りがにじんでいる」とシタリ顔で解説する大新聞まで。
 しかし、公平中立に見て、麻生首相に非があることは明らかだろう。」
(ここまで引用)

11月24日のNHK日曜討論では、インタビュアーの影山日出夫氏が小沢氏のイメージを悪化させようとするピントはずれの質問を執拗に繰り返した。NHK日曜討論の偏向などの問題については、拙著『知られざる真実-勾留地にて-』にも記述したので、ご高覧賜りたい。

影山氏は以下の諸点について質問を繰り返した。

①世論調査では麻生VS小沢で、2倍程度の差がついているがどう思うか。

②一連の政治行動は麻生政権を追い込む政局優先の行動ではないか。

③テロ特措法、金融機能強化法を人質に取るのか。

④麻生政権を解散に追い込めないと小沢氏の求心力が低下するのではないか。

⑤党首討論を行うべきではないか。

 小沢氏は野党の党首である。世論調査における「次期総理に誰がふさわしいか」の質問で野党党首が圧倒的支持を得ることはない。一般的には人物像が明確でなく、あくまで野党党首としてしか認識されない。その小沢氏が2割ないし3割の支持を得ている。支持率の高さが注目されるべきで、このような数値をわざわざ引き合いに出すことが意図的である。

 同じ11月24日のテレビ朝日番組「サンデースクランブル」では、コメンテーターのテリー伊藤氏が執拗に小沢氏を攻撃する発言を繰り返した。テリー伊藤氏は小泉政権発足後に出演頻度を急増させたタレントであるが、常に特命を帯びているとの印象の偏向発言を繰り返している。

 麻生首相は福田政権から政権を引き継ぐ過程で、新政権が総選挙の洗礼を受けて初めて認知されるとの考え方を明確に示してきた。月刊誌でも臨時国会冒頭での解散を明確に宣言した。

 解散総選挙モードが全開になったのは、こうした事情が主因である。小沢代表が解散風を吹かせたわけではない。麻生首相が自民党調査での自民党惨敗予測を見て、突然、解散総選挙を先送りしたのが真相だろう。その結果の責任を小沢代表が負う必要はまったくない。小沢氏が民主党内での求心力を低下させる理由はなく、そのような事実も存在しない。

 NHK日曜討論で小沢代表が、麻生首相の「小沢氏を信用できなくなっちゃった」発言について、「チンピラの言いがかりみたいな話で、首相としては情けない限りだ」と発言した。この経緯については、11月23日記事「政策の約束手形不渡りで資金繰り倒産急増」に記述したが、そのなかで紹介した10月22日のぶらさがり記者会見でのやり取りも、「チンピラの言いがかり」そのものの対応ではないか。

 11月24日朝、麻生首相は訪問中のペルーの首都リマで記者会見を行い、質疑応答でこの問題について触れた。そのなかで、麻生首相は、
「あなたの答えに乗って、こっちはまた言うと、それをまた挑発のネタにされて、そっちはメシのタネになるかもしれないけど、こっちはそういうことになりませんから」
と述べたが、発言に品位がない。「チンピラの言いがかり」と言われてもやむを得ない語り口が常に示されているのではないか。

 状況が整えば、小沢代表は党首討論に応じるだろう。党首討論が実施されれば、どちらが正論を主張しているのかが、誰の目にも明らかになるだろう。

 総選挙に向けての自民党の情勢は一段と厳しさを増している。総選挙で野党が勝利すれば、文句なく政権交代が実現する。これまで「天下り」を中心に利権を吸い尽くしてきた特権官僚は、政権交代実現を心の底から恐れている。形成を逆転するには、民主党代表の小沢一郎氏の影響力を低下させなければならない。

 小沢氏に対するマスメディアの異常なまでの攻撃モードは、こうした事情を背景にしていると思われる。麻生首相が郵政株式売却凍結方針を公表した途端、一部マスメディアが麻生首相攻撃を開始すると同時に、中川秀直自民党元幹事長、小泉元首相、渡辺喜美氏などを頻繁に登場させるようになった。

 「神州の泉」主宰者の高橋博彦氏が指摘されているように、米国資本の代理人的存在の「偽装CHANGE」勢力の蠢(うごめ)きも、新たな展開を示している。この問題については、改めて考察したい。

 いずれにせよ、メディアの小沢民主党代表に対する攻撃モードは異常である。それほど、小沢民主党は既存の利権保持者にとっては脅威になっているのだ。「政官業外電の利権互助会=悪徳ペンタゴン」は小沢氏攻撃に全精力をあげている。そのなかで、野党支持、民主党支持、小沢氏支持を維持している小沢氏の力量は特筆するべきものだ。

 「悪徳ペンタゴン」は総力をあげて政権交代阻止に力を注いでいる。この抵抗を制圧して政権交代を実現しなければならない。政権交代が実現して初めて日本の暗黒の夜が明ける。偏向メディアによる情報操作のからくりを見破り、政権交代実現への王道から道を踏み外さぬように気をつけなければならない。

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2008年11月23日 (日)

政策の約束手形不渡りで資金繰り倒産が激増

「政局より政策」

「100年に1度の暴風雨が荒れている」

「こうした状況の中でなにより大事なことは、生活者の暮らしの不安というものを取り除くことだと確信しております。すなわち国民生活の安全保障であります」

「ポイントは、スピード、迅速にという意味です」

「これから年末にかけて中小企業の資金繰りが苦しくなります」

「第1次補正で緊急信用保障枠を6兆円としましたが、その後の国際金融情勢がより厳しいものとなっております。中小企業、小規模企業の資金繰りをより万全なものとするために、私の指示で20兆円までこの枠を拡大します」

これらはすべて麻生首相の公的発言である。

10月30日に麻生政権は追加景気対策を決定して、麻生首相は記者会見を行った。記者会見での言葉は、国民に対する約束である。

100年に1度の未曽有(みぞうゆ)の経済危機が国民を追い詰めている。小泉政権以降の自公政権が多数の一般国民の生活を破壊してきた。非正規雇用や働く貧困層が激増し、障害者、高齢者、母子世帯など、政府がしっかりと手を差し伸べなければならない人々に対する政府支出が冷酷に切り捨てられた。国民生活は破壊され、罪なき多くの国民が深刻化する不況を実感しながら、寒波が身にこたえる年末を迎える。

麻生首相は『文藝春秋2008年11月号』に「強い日本を!私の国家再建計画」と題する手記を寄稿した。標題には、次の言葉が添えられた。

「小沢代表よ、正々堂々と勝負しよう。私は絶対逃げない」

手記のなかで麻生首相は「今こそ国民に信を問う」との見出しを掲げて、以下のように明言した。

「私は決断した。本来なら内政外交の諸課題にある程度目鼻を付け、私の持論である政党間協議の努力も尽くした上で国民の信を問うべきであるかもしれない。だが、最低限必要な経済対策も、国際協調上当然のテロ撲滅の施策にすら、民主党はじめ野党は、聞く耳をもたぬ、ただ政局優先の姿勢なのである。国会の冒頭、堂々と私とわが自民党の政策を小沢代表にぶつけ、その賛否をただしたうえで国民に信を問おうと思う。」

「小沢代表よ、堂々の戦いをしようではないか。・・・」

さらに、「小沢代表との一騎打ちを望む」との見出しを掲げて麻生氏の筆は続く。

「何にせよ、今次総選挙が政権を賭けた民主党との乾坤一擲の戦いなのは言うまでもない」

麻生首相が乾坤一擲(けんこんいってき)などの難しい漢字を使うのは不思議だ。文章全体から受ける文体のイメージが麻生首相の話し言葉とかけ離れていると感じるのは私だけではないと思う。自分の言葉で文章を記さないと、読む者の心に響かない。

月刊誌で解散総選挙を高らかに宣言した麻生首相が総選挙を先送りした。自民党が実施した選挙予測調査で自民党惨敗予測が示されたからだと見られている。

「私は逃げない」と言っていたのに明らかに逃げている

ペルーの主都リマで開催されているAPEC首脳会議に出席している麻生首相はリマ市内で同行記者団と懇談して、17日に行われた民主党の小沢一郎代表との党首会談について、次のように発言した。

麻生首相は小沢氏が(民主党が第2次補正予算案の審議に協力しない場合)「辞めると私や鳩山由紀夫民主党幹事長ら合計7人の前で言った」と述べた。

そのうえで、「『言っていない』なんて言われたらこの人の話は危ないと思う。信用出来なくなっちゃった」と繰り返したと伝えられている。

これに対して小沢氏は「あまりにもレベルの低い話」と首相を批判し、(党首会談では)「約束したことを守れなければ党首としての責任を取ると申し上げた。(記者会見で)議員辞職するのかと聞かれたから、そんなことは言っていないと(答えた)」と反論した。

真偽のほどは定かでない。しかし、麻生首相の言葉の捉え方を示す実例から考えると、小沢代表の言葉に大きな誤りはないのではないかと思われる。

麻生首相の「ホテルのバーは安い」発言が話題になった10月22日昼の首相ぶら下がり会見。北海道新聞記者とのやり取りの一部を抜粋する。産経新聞記事から引用する。

--夜の会合に連日行っていて、一晩で何万もするような高級店に行っているが、それは庶民の感覚とはかけ離れていると思う。首相はどのように考えるか

「庶民っていう定義を使うのが北海道新聞よく使われるのですか。僕は少なくともこれまでホテルというものが一番多いと思いますけども。あなたは今、高級料亭、毎晩みたいな話で作り替えてますけど、それは違うだろうが」

 --あの高級

「そういう言い方を引っかけるような言い方やめろって。もうちょっと事実だけ言え。事実だけ。ずーっと、日程だけでも言えるから」

 --あの

「だろ」

 --ホテルが

「馬尻がいつから高級料亭になったんだ。言ってみろ。そういう卑劣な言い方だめ。きちんと整理して、ね、言わなきゃ。いかにも作り替えれるような話はやめたらいい」

(引用ここまで)

私が現場にいたわけではないから、記事がどこまで正確であるのか分からないが、麻生首相が高級料亭のことを問題にしているので、この部分についての詳細は正確ではないかと思われる。記事が正確であるとの前提で考えると、麻生首相は明らかに記者の発言を聞き違えている。

記者は、「一晩で何万もする高級店」としか言っていない。

それを、麻生首相が「高級料亭」と取り違えたのではないか。

記者は、麻生首相が何人か連れ立ってホテルのバーに通っているので、一晩の支払い料金が合計で何万円に達すると計算して質問したのだと考えられる。

それを麻生首相は「一晩で何万もする高級店」の表現を、「一人何万円もかかる高級料亭」のことを指したのだと勘違いしたのではないか。

一般庶民からすれば、お酒を数杯飲んで、何人か合計して何万円かかかるホテルのバーは「高級店」だと受け止める感覚を持つ。新聞記者は一般庶民よりも所得が多いかも知れないが、それでも、ホテルのバーを「高級店」と表現しても不自然ではない。

麻生首相は、北海道新聞の記者が「一晩で何万もする高級店」と表現した言葉を「高級料亭」のことを示したと勝手に思い込み、逆ギレしているのである。麻生首相が、間違えたのはあくまで記者だ、と主張するなら、ぶら下がり会見に同席した多数の記者に確認すれば、真相が明らかになるだろう。本ブログ10月23日付記事では、ぶら下がり会見のやり取りを引用してこの問題を記述しようとしたが、技術的な問題が生じ、記述できなかった

このことから類推すると、小沢民主党代表が「党首として責任を取る」と発言したことを麻生首相が「議員辞職する」と発言したのだと、勝手に取り違えたとしてもおかしくはない。

麻生首相は11月19日の全国知事会議で、地方の医師不足問題に関連して、

「(医師は)社会的常識がかなり欠落している人が多い。ものすごく価値観なんか違う。そういう方らをどうするかっていうのは真剣にやらないと。」と述べた。

 これまでの麻生首相の言動を見る限り、社会的常識がかなり欠落しているのがどちらであるかは明らかだと思われる。自民党の鴨下一郎元環境相は医師会執行部から「常識があるというヤツは常識がない」と言われたと語ったが、その通りだと思う。

 この言葉を使うと、「人を信用できないというヤツは信用できない」ということになるだろう。

 11月23日のNHK日曜討論に小沢一郎民主党代表が出演し、民主党の考えを真摯(しんし)に語った。メディアは民主党の行動を「政局絡み」と説明したがる。補正予算案の早期国会提出を求めてテロ特措法、金融機能強化法の参議院採決を先送りしたことを、麻生政権を解散に追い込む「戦略」と言いたがる。

 しかし、民主党が強く主張しているのは、補正予算案の国会への早期提出である。「政局より政策」と発言し、国民に宣言した衆議院解散総選挙を先送りして、景気対策に全力をあげることを国民に約束しておきながら、補正予算案の国会提出を来年まで先送りするというのは、どう考えても筋が通らない。国民的視点に立ち、中立公正に判断して、小沢氏の主張は正論そのものだ。

 自民党内部からも、小沢氏の意向に賛成する意見が噴出している。国民は生活、生命の危険に直面しているのだ。「政策より政局を優先」しているのは麻生首相である。

 麻生首相に補正予算案の提出を来年まで先送りすることを強く主張しているのは大島理森自民党国会対策委員長と細田博之自民党幹事長である。国民生活よりも自分たちの利益、党利党略を優先する、政治家として恥ずべき行動を、臆面もなく強行している。

 麻生首相が10月30日に記者会見で国民に約束した追加経済対策、この「約束手形」が不渡りになる可能性が浮上している。この手形が不渡りになると寒空の年末に向けて連鎖倒産が一斉に発生する。「麻生恐慌」の発生だ。自民党は日本経済を一気に奈落の底に突き落とした主犯として、多くの国民の心に取り返しのつかない傷を与えることになるだろう。

 政治は政治家の党利党略のために存在するものではない。国民の幸福を実現するために存在する。補正予算案の早期国会提出、早期成立、景気支援策実行は政局ではない。根源的な政策である。麻生首相が「私」を捨てて、「公」のために行動することが求められている。

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2008年11月21日 (金)

首相の資質を欠く麻生首相

麻生首相が私立幼稚園PTA全国大会で驚きの挨拶をしたが、「カナダde日本語」の美爾依さんが挨拶を伝えるニュース報道の動画をアップしてくださった。

麻生首相は挨拶のなかで次のように述べた。

「普段からー、お子さん、預かっておられるんだと思いますがー、そのー、お子さんの後ろにくっついている親で苦労してるでしょ。」

会場から笑いがこぼれたため、麻生首相はしたり顔で続けた。

「子供よりは親で苦労しているんだと、私はそう思ってんだけど。」

調子に乗った麻生首相の言葉が勢いをつける。

「やっぱり家庭の力が、たぶんなくなってきているんだと思いますね。」

「じいさん、ばあさん、やかましいおやじさんの存在が薄くなってきたせいもあって、幼稚園で何とかしろと負担が掛かってきている。しつけるべきは母親だ。」

しかし、会場の空気は冷え込んだ。カメラは冷え切った会場の様子をよく捉えている。動画の威力は大きい。渋谷事件での警察のよる不当逮捕も動画が決定的な証拠になるだろう。

PTAの大会だから、幼稚園児の親、母親が全国大会出席者の中心だった。その親に対して、「お子さんの後ろにくっついている親で苦労しているでしょ」と述べるのだから驚く。

幼稚園の先生の会合と勘違いしたのではないかと見られるが、原因は麻生首相の準備不足にある。

本ブログ9月23日記事に「首相の資質を問われる麻生太郎氏」と題する記事を掲載した。私は一国の首相の資質に関わる重要事案として三つの問題を提示した。以下が記事で記述した三つの問題だ。

第一は、政策主張の一貫性である。麻生氏は小泉政権の発足から2003年9月まで、自民党政務調査会長を務めた。政調会長は政策立案についての自民党最高責任者である。麻生氏は小泉政権の経済政策の最高責任者だった。小泉政権は「景気よりも目先の財政収支改善を優先」したが、現在の政策スタンスと明確な違いがある。政策についての主義主張を貫くことよりも、ポストを獲得することが優先されたのだと思われる。

理念や哲学よりも私的な利益を優先する行動様式が示されている。国民に対して解散総選挙を宣言し、総選挙で勝利して初めて天命を担うことができると明言しておきながら、選挙で惨敗する予想が示されると、恥も外聞もなく総選挙を先送りする姑息な行動は、現世利益優先の行動様式から導かれているのだと思われる。

第二は、後期高齢者医療制度や年金記録改ざん問題に対する発言迷走だ。麻生首相は福田政権末期に福田政権の閣僚である舛添厚労相が、福田首相の了解も取らずに麻生政権が実現した場合に後期高齢者医療制度の年齢区分を見直すと表明したことを明らかにした。舛添厚労相の行動は、人間としての信義則(しんぎそく)に反する行動だ。

麻生政権では定額給付金構想についても、首相が「全世帯」と明言した直後に、閣僚が「所得制限を設ける」と発言して混乱を招いた。首相が「道路特定財源から1兆円を使途自由の交付税を地方に配分する」と発言すると、自民党道路調査会幹部から「交付金を交付税と読み間違えたのではないか」と揶揄(やゆ)される。

組織を強固に保つためには、組織のトップがすべてを統率しなければならないし、組織の構成員は組織トップの権威を守らなければならない。組織のトップが言葉の重みを十分に認識して言葉を発し、上意下達(じょういかたつ)が徹底されていれば、無用の混乱を避けることができる。

第三は、麻生氏の説明が正確でないことだ。麻生氏は自民党総裁選で、「目先の財政収支よりも経済悪化を回避することが重要だ」と述べた。この見解は私の持論でもあり正当だと思うが、繰り返し例示した1997年度の事例が事実と大きく異なっていた。

麻生氏は「橋本蔵相の時代に消費税で5兆円、社会保障負担増加で4兆円、合わせて9兆円の増収を図ったが、結果的に税収は4兆円減少した。プラスマイナス13兆円も税収の見積もりを誤った」と繰り返し発言した。

97年の事例をあげたのだと考えられるが、事実は以下の通りだ。

政府が実施したのは「消費税増税5兆円、所得税増税2兆円、社会保障負担増加2兆円の合計9兆円の国民負担増加策」だった。政府税収見積もりは59兆4812億円だったが、実績は53兆9415億円にとどまった。97年度税収は96年度税収よりも1.9兆円増加した。つまり97年度税収は「7兆円の増税を実施したが1.9兆円しか増えなかった」というのが実態である。

「9兆円増税したのに4兆円税収が減少して、13兆円見積もりを誤った」事実は存在しない。また、97年度は橋本政権の時代で、「橋本蔵相の時」との発言も事実と異なる。私は麻生氏も出席した研究会で、「97年度に橋本政権が9兆円の国民負担増加策と4兆円の公共事業削減を実施し、13兆円のデフレ策を実行した」と説明したが、麻生氏はこのことと混同したのかもしれない。

ポイントは、麻生氏の説明が不正確であることだ。郵政株式の売却凍結、道路特定財源の一般財源化、など重要問題に関する麻生首相発言でも、首相発言の詳細(しょうさい)がぐらぐら揺れ動く。その理由は、最初の発言の段階で首相が詳細(しょうさい)を完全に把握していないことにあると思われる。

これらを通して考えてみると、やはり麻生首相の総理大臣としての資質に問題があるのだと思われる。

政治家として第一に求められることは、政治理念、哲学が明確で、ブレないことだ。目先の利害で主義主張がブレる政治家を信用することはできない。目先の財政収支よりも経済の回復が優先されるべきと考えるなら、なぜ、2001年度から2003年度の小泉政権の経済政策に異を唱えなかったのか。ポストを得るために政治信条、政策哲学をくるくる変える政治家を信頼することはできない。国民生活を大切にするとの約束も、麻生首相の個人的利害でいつ反故(ほご)にされるか分からない。

また、組織を一枚岩に保たなければ、政治の激流を乗り越えてゆけない。発言をころころ変える行動が国民の信頼を失わせるし、閣僚が首相と異なる見解を不規則に示すことが常態化すれば、もはや政権の体をなさない。

もっとも大切なことは、国民の生命、財産、生活を守るために、首相が政策運営に全身全霊を注がなければならないことだ。首相を目指し、総裁選に立候補するなら、水も漏らさぬ理論武装することは最低限必要だろう。4度も総裁選に立候補しながら、総裁選で何度も説明した最重要の政策提言の根拠で、事実すら正確に把握していないのは致命的だ。橋本首相の時代(1996-98年)と橋本蔵相の時代(1989-91年)はまったく異なる時代だ。

郵政民営化、道路特定財源、定額給付金など、首相が発言するなら、事前に詳細(しょうさい)を徹底的に詰めて、完全に理論武装して示すべきだ。そのためには、自宅に早めに帰って勉強することが必要ではないか。「新聞を信用しないから新聞を読んだことはないが、マンガは努めて読むようにしている」ことを望ましい習慣だと思う国民はいないだろう。

自分が挨拶する会合の属性を正確に把握すること、挨拶文に事前に目を通すことなど、非常に地味な仕事だが、おろそかにするべきでないと思う。国民の幸福を実現するために、全身全霊を注ぐ姿勢がまったく感じられない。

日本経済は本当にみぞうゆの危機に直面している。10月30日の記者会見では年末にかけての企業の資金繰りが非常に苦しくなると発言し、中小企業の資金繰りをより万全なものとすると発言したのではないか。

「政局より政策」と掲げて、総選挙を先送りしたのに、補正予算案を国会に提出しないなら、小沢一郎民主党代表が指摘するように、「金融危機」を解散総選挙を先送りするための口実に使ったことになる。

補正予算案を臨時国会に提出すべきとの主張が自民党内部からも提示された。「過(あやま)ちては則(すなは)ち改(あらた)むるに憚(はばか)ること勿(なか)れ」だ。APEC総会から帰国したら、補正予算案の臨時国会提出を決定し、補正予算成立後、直ちに解散総選挙を実施して、本格政権樹立を目指すべきだ。国民生活を第一だと考えるなら、本格政権に政策運営を委ねる道を選択するべきである。

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2008年11月20日 (木)

麻生政権の致命傷になる補正予算提出先送り

 11月20日、日経平均株価が8000円を割り込んだ。10月28日以来の7000円台突入である。株価が下落しているだけではない。日本経済が急激に大不況に移行していることが示唆されている。

NHKの定時ニュースで、当然トップニュースで取り扱われるべき事態である。ところが、NHK午後7時の定時ニュースでは、この経済急変がまったく報道されなかった。自動車産業の雇用削減が報道されたが、NHKは日本経済全体に迫る深刻な景気後退に警鐘を鳴らす株式市場動向をまったく伝えない。

理由は、日本経済がみぞうゆの経済危機に直面している現状を報道すると、それではなぜ麻生政権は景気対策を実行に移すために不可欠な補正予算の早期成立に取り組まないのかに焦点が当たってしまうからだ。

日本経済は極めて深刻な状況に直面している。麻生首相は10月30日に追加景気対策を決定して記者会見を行った。日経平均株価が7000円台に突入した直後だ。

麻生首相は「100年に1度の暴風雨が荒れている。100年に1度の危機と存じます」、「こうした状況の中でなにより大事なことは、生活者の暮らしの不安というものを取り除くことだと確信しております。すなわち国民生活の安全保障であります」と述べた。

そのうえで、「今回の経済対策は、国民の生活の安全保障のための、国民の経済対策です。ポイントは、スピード、迅速にという意味です」と明言した。

10月末と比べて現状は、深刻さがより増していると言わざるを得ない。10月末の株価急落後、世界の株式市場ではいったん株価が反発した。主要国の政策対応により、事態の悪化に歯止めがかかるとの期待が一時的には広がった。

しかし、日本の政策対応は完全に停止してしまった。麻生政権は10月30日に景気対策を決定したまま、完全なサボタージュに移行してしまった。11月14、15日にワシントンで20ヵ国首脳による緊急金融危機サミットが開催されたが、まったく成果をあげることができなかった。

麻生首相は「歴史に残る首脳会議だった」と自画自賛したが、金融市場はその後、株価急落の洗礼を麻生首相に浴びせた。麻生首相は金融危機サミットで、10兆円もの国民資金をIMFに拠出することを勝手に表明したが、国会の同意を得ていない。外貨準備は首相のポケットマネーではない。1ドル=95円で24兆円もの為替評価損を生み出している外貨準備から、さらに10兆円もの資金を新興国支援に流用することを表明してしまった。

日本国憲法第83条に「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない」との規定がある。国会の決議を経ていない10兆円の外貨準備流用表明は憲法違反であると思われる。

20ヵ国緊急金融危機サミットでは、各国が財政政策を含む景気対策に取り組むこと、金融市場に対する規制を強化することなどを確認したが、新たな効果的な政策を示すことができなかった。

株価は一時反発したのちに、再び急落している。日本経済の悪化も鮮明になっている。11月17日に発表された2008年7-9月期の実質GDP成長率は2四半期連続のマイナスを記録した。日本経済はつるべ落としで深刻な不況に突入しつつある。

麻生首相は「政局より政策」の大義名分を掲げて、国民に宣言した解散総選挙を先送りした。月刊誌で「私は逃げない」と言い切った総選挙だったが、自民党が惨敗するとの選挙予測が示されたために逃げの一手に転じた。それだけでも姑息な首相のレッテルを貼られてしまうが、「政局より政策」と主張した以上、景気対策を具体化する補正予算を臨時国会に提出しないことが通用するはずがない

景気対策の内容があまりにお粗末で、国会に提出すると、お粗末な政策の全貌が明らかにされ、支持率をさらに低下させてしまう恐れが高いことから、自民党は補正予算案提出を来年に先送りしようとしている。政治権力に迎合するマスメディアの一部は、必死に麻生政権を擁護しようとしている。

しかし、麻生政権の無責任極まりない対応で被害を受けるのは一般国民である。日経平均株価が8000円を下回ると、メガバンクでも保有株式が評価損を生み出す。地方銀行の自己資本比率は急落し、金融機関の融資姿勢は急激に慎重化する。

2008年度上半期に倒産した企業の負債総額は第2次大戦後2番目の高水準に達している。年末に向けて企業倒産の急増が予想される。11月20日のNHK定時ニュースは自動車メーカーが派遣労働者の大幅削減に踏み切る方針を報道したが、非正規雇用労働者を中心に、真冬の寒空の下に、雇用を切られる国民が激増する可能性が高い。

厚生省元事務次官を狙った卑劣な凶悪事件が発生する一方、麻生首相は常識を欠く軽はずみな発言を繰り返し、メディア報道が日本経済の悪化を十分に伝えていないが、日本経済は極めて深刻な状況に直面している。

病気への対応と同じで、景気悪化に対しては「早期発見早期治療」が、事態を深刻化させない鉄則である。10月末の株価急落局面で景気対策を決定して株価が反発したにもかかわらず、景気対策を具体化せず、悠長に補正予算案の国会提出を来年まで先送りするのでは、経済崩壊は必然である。

麻生政権が補正予算案の国会提出を見送るなら、麻生政権は今後の日本経済悪化の全責任を負わなければならないだろう。政府、政権が全身全霊を注いで国民生活支援に取り組み、それにもかかわらず経済が悪化するなら、政権に責任を負わせることは酷だろう。しかし、国民の負託を受けた政権として、当然実行しなければならない行動を放棄し、結果として国民に苦しみが押し付けられるなら、その不誠実さは徹底的に糾弾されなければならない。

補正予算案提出の来年への先送りを誘導する大島理森国対委員長の行動は、景気後退に苦しむ国民に対してあまりにも不誠実な行動である。鳩山邦夫総務相もテロ特措法と金融機能強化法の参議院採決に応じない民主党を非難する前に、国民の生活困難にしっかり目を向けるべきだ。

麻生首相が発言したように、今回の金融危機「100年に1度の暴風雨」である可能性が高い。その認識を持ちながら、景気対策をたな晒(ざら)しにして具体化を来年に先送りする神経は尋常(じんじょう)と言い難い。

政策のサボタージュを押し通す結果として、国民生活が破壊したとき、麻生首相の発言権は完全に消滅するだろう。民主党の小沢代表が変則的な手法を用いてまで、補正予算案の臨時国会提出を麻生首相に直談判したのは、今回の不況が国民生活に与える深刻で甚大な影響を真剣に憂慮するからだ。

倒産、失業が急増し、多くの罪なき国民が苦しみに直面している。この苦しみを直視せず、麻生政権が党利党略、政局優先の行動を貫くなら、麻生政権は必ずその報いを受けることになるだろう。

 年内に補正予算を成立させ、年末までに国民生活支援の政策が始動する状況を導くことが、国民に責任を持つ政治がとるべき行動だ。麻生首相は11月25日に補正予算の取り扱いを正式に表明する予定だ。「過(あやま)ちては則(すなは)ち改(あらた)むるに憚(はばか)ること勿(なか)れ」だ。方針を変更して補正予算案を今臨時国会に提出することを決定するべきだ。

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2008年11月19日 (水)

麻生政権を糾弾する正論の増加に注目

 麻生首相は今臨時国会への第2次補正予算案提出に消極的な姿勢を示している。自民党の国会対策関係幹部は、今国会に補正予算案を提出しない方針を固めたとも伝えられている。

 麻生政権の国民無視、党利党略優先、傍若無人の政治行動が許されるはずがない。日本経済はいま、みぞうゆうの経済悪化に直面している。米国発のサブプライム金融危機を麻生首相は100年に1度の暴風雨だと発言した。100年に1度の経済危機だということは、1930年代の世界大恐慌に匹敵する事態が発生する可能性があると発言したことと同義になる。

 現実に、住宅・不動産関連企業の大型倒産が頻発(ひんぱつ)し、企業倒産が戦後最悪の状況に迫りつつある。急激な円安是正により、輸出製造業の収益が急激に悪化している。自動車販売が前年比30%減少の非常事態に直面している。個人の消費心理が急激に冷え込み、GDPの56%を占める個人消費の急減が日本経済の悪化を加速させる可能性が濃厚だ。

 自民党が輩出した首相は2代にわたって政権を放り出した。1年間に2度も首相が職務を放棄する前代未聞の不祥事が起きた。憲政の常道に従えば、政権担当能力の欠落を露呈した自公政権は、いったん野党に政権を引き渡し、野党政権は早期に総選挙を実施して、国民の信託を受けた本格政権を樹立することが正しい対応となる。

 ところが、自公政権は政権をたらい回しにした。それでも、政権を放り出した福田前首相は国民の審判を受ける必要性を認識し、後継の麻生首相に早期の解散総選挙実施を申し送り、首相を辞した。

 麻生首相は首相就任に際して、一般国民に対して、月刊誌への寄稿手記を通して、臨時国会冒頭での解散総選挙実施を高らかに宣言した。ところが、自民党が実施した選挙予測調査が自民党惨敗予測を示したため、総選挙実施を先送りする行動を取り始めた。

 そのタイミングで米国の金融危機が深刻化したため、麻生首相は経済環境の変化を、解散総選挙先送りの口実に利用した。「国民は圧倒的に「政局より政策」と考えているのではないか」と麻生首相は説明した。

 米国発の金融危機は深刻であり、日本経済の悪化も深刻化しつつある。日本の金融機関のサブプライム金融危機からの直接的影響は比較的小さいが、日本の株価下落が進行すれば、日本の金融機関の破たんも十分に考えられる。日本経済もすでに危機的状況に移行したと考えるべきである。

 この意味では、麻生政権がまず経済危機に対して緊急対応を迅速に決定し、早急に経済対策を実行することについては、野党の支持、国民の支持が得られると考えられる。

 麻生首相は追加経済対策を決定した10月30日の記者会見で、「100年に1度の暴風雨が吹いている。ポイントはスピード、迅速にという意味だ」と明言した。景気対策を発表しても、予算を国会で成立させなければ、実効性のある経済対策を実行に移すことはできない。

 本年1月に米国のブッシュ政権が1500億ドルの減税を打ち出した時には、1か月以内の短期間に政策策定、議会審議、法律成立までを終えた。迅速な政策対応だった。

 経済危機に移行した日本経済の現状を踏まえるとき、補正予算の早期国会提出、成立は最優先の政策課題である。すでに多くの国民が経済悪化に苦しんでいる。非正規雇用労働者、働く貧困層が激増し、国民生活の根底が揺らいでいる。高齢者、障害者、生活困窮者、母子世帯、非正規雇用労働者などが、ぎりぎりのところで生活している。

 日本経済がさらに急激な悪化を示す時、そのしわ寄せは、これらの相対的に弱い人々を直撃する。この意味で、追加経済対策の具体化が何よりも優先される政策対応なのだ。

 民主党がテロ特措法と金融機能強化法の参議院採決を人質に取っているとの批判があるが、この手段を取らない限り、麻生政権が補正予算の早期審議に取り組む可能性はゼロである。国民生活を守るための、背に腹は代えられない対応策として、二法の採決拒否を提示したのである。この手法を批判する者は、採決を拒否せずに、麻生政権が早期の経済対策審議に応じる方法を示す必要がある。

 麻生政権が提示した景気対策は内容に大きな問題が多くある。定額給付金などは、理念も哲学もない選挙に向けての買収政策としか言いようのない施策だが、国会が全力をあげて経済危機に対応する政策を決定しなければ、犠牲になるのは一般国民である。補正予算審議を来年まで先送りする麻生政権の行動を擁護することは、一般国民の生活破壊を容認することと同義であることを十分に踏まえるべきだ。

 御用メディアは、国民生活の困窮を容認しているのか、麻生政権を擁護して、民主党の行動を政局優先だとする、筋違いの論評を提示している。例えば、読売新聞は社説で以下のように記述した。

「小沢民主党 安全保障を政局の具にするな」(11月19日読売新聞社説)

「民主党の小沢代表が、突如、麻生首相との党首会談を経て、与党との全面対決路線に転じた。参院で重要法案の採決を徹底的に拒否するという「政局至上主義」の復活だ。これでは、政治の責任は果たせまい。」

 しかし、麻生政権が補正予算案の国会提出を来年まで先送りすることに対する適正な批判が欠如している。

 産経新聞は「御用」の立場から、民主党攻撃に偏向した主張を繰り返しているが、補正予算問題については、さすがに麻生政権の対応を擁護しきれていない。

「党首会談 「政局」に戻してはならぬ」(産経新聞11月19日「主張」)

「特措法改正案は、今週中に衆院再議決を経て成立する運びだった。民主党がこれを補正予算案と結び付け、再び政局の材料にするというのは理解しがたい。」

「党首会談は、民主党が政府・与党に要求して行われた。首相は衆院解散よりも当面の経済対策を優先させると語った。それなら、追加経済対策を裏付ける補正予算案を早急に提出して審議すべきだ。民主党のそうした言い分には、もっともな点もある。」

 朝日新聞は、腰の引けた論説を掲載した。麻生政権批判を民主党の主張を紹介する形で記述し、朝日新聞としての見解を明示していない。民主党を積極的に支援したくないとの思惑が強いのだと考えられる。

「麻生首相―政策も政局も混迷模様」(朝日新聞11月18日社説)

「首相は先月末、米国発の金融危機が世界に波及したことを「100年に1度の経済の暴風雨」と呼び、年内の衆院解散・総選挙を先送りする方針を打ち出した。「政局より政策」とも言い、緊急経済対策を実施することが何よりも政治の優先課題だと語った。

 ならば、この国会を延長し、緊急の景気対策などを盛り込んだ第2次補正予算案を出すのかと思いきや、政府与党では30日の会期切れで国会を閉じ、来年1月の通常国会で補正予算案を審議するという方向が強まっていた。

 これでは筋が通らないではないか。何のための総選挙先送りだったのか。民主党はそう反発を強めていた。」

「首相には、就任直後から解散をずるずると先送りしてきたツケが次々と降りかかっている。どう打開するつもりなのか、首相の本当の考えを知りたい。経済対策が先なのか、解散先送りの方が大事なのか。国会の機能停止が許容される時ではあるまい。」

 しかし、新聞の社説で、麻生政権の筋の通らない行動を明確に批判する主張が登場し始めたことは特筆に値する。社会の木鐸としてのメディアの役割を踏まえるなら、国民生活を無視し、国民に対する約束を無視する麻生政権の政局優先、党利党略優先の行動は厳しく糾弾されなければならない。

 中日新聞、北海道新聞、河北新報、中国新聞などが、社説で麻生政権の不正義の行動を明確に批判している。以下に社説の一部を紹介する。

「麻生・小沢会談 駆け引きしている時か」(中日新聞11月18日社説)

「緊急経済対策を盛り込んだ第二次補正予算案の提出時期も明言しなかった。このため、小沢氏は予算案を今国会に提出するよう強く迫った。首相が景気最優先という以上、麻生政権としては早急に処理するのが当然だろうという考えに基づく。筋は通っている。

 首相は「いつ出せるかは今の段階では明快に答えられない。出せるように努力している」とだけ答えた。ここはみんなが首をひねるところだ。補正予算案を提出すれば、国会会期の延長が避けられなくなる。先送りしたい解散に追い込まれかねないことを恐れてのことであれば、情けない。

 日本の景気後退が鮮明になっている。雇用不安も広がっている。「政局より政策」といい、十分な景気対策を盛り込んだというのであれば、やはり早急に提出し、審議に付すべきである。」

「混沌国会 首相の「決断」が必要だ」(中日新聞11月19日社説)

「二次補正に盛り込む追加経済対策を発表した記者会見で、首相は現在の経済情勢を「百年に一度の金融災害」とたとえ「ポイントはスピード」とまで語っている。

 定額給付金などを柱とする二次補正を急ぎ提出するのが筋なのになぜか明言を避けている。」

「党首会談の意味/焦点は国会延長に移った」(河北新報11月19日社説)

「「政局より政策」と言うなら、首相は景気対策を表看板とする第2次補正を延長国会に提出し、できるだけ早く成立させるのが筋だろう。」

「参院委採決先送り 「景気最優先」はどこへ」(中国新聞11月19日社説)

「追加経済対策の裏付けとなる第二次補正予算案を、麻生太郎首相がなかなか提案しない。これに対し、民主党の小沢一郎代表が「すぐに出すと言って出さないのは公約違反だ」と迫る構図だ。

 背景に、解散の時期をめぐる与野党の党利党略が透けて見える。しかし国民が求めているのは、緊急対策を行ったうえで、実行力のある政権が本格的な経済政策にしっかり取り組むことであろう。与野党とも、その点を忘れてはなるまい。」

「終盤国会 袋小路の中の麻生首相」(北海道新聞11月19日社説)

「確かに小沢氏の行動には唐突感があった。だが、首相が「政局より政策」だと景気対策優先を唱えるからには、二次補正予算案を早急にとりまとめ、国会で審議を始めるべきだという言い分には理がある。」

 中立・公正の立場に立って事態の推移を見れば、「政局より政策」と明言して解散総選挙を先送りした麻生政権が、補正予算案を臨時国会に提出しないことを正当化する根拠はまったく存在しない。国民生活が危機的な状況に直面していることを踏まえれば、麻生政権の対応が糾弾されることは当然だ。麻生首相が行動を是正するよう、世論喚起に努めるとともに、政治権力に迎合する一部大手メディアの偏向報道を監視しなければならない。

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2008年11月18日 (火)

補正予算案提出先送りは麻生首相問責決議に該当

日本の国民にとっていま、最も切実な問題は景気の悪化だ。日本経済はつるべ落としで悪化している。年末を控えて、多くの日本国民が、切実な気持ちで暮らしている。麻生首相が首相の座に居座ることだけを考えて、国民感情を無視した行動を続けるなら、遅かれ早かれ国民の厳しい審判が必ず自身に降りかかることになるだろう。

「カナダde日本語」の美爾依さんが、麻生内閣の支持率急落の理由を9つ列挙されて、分かり易い解説を示されている。

補正予算の先送り、理念も哲学もない選挙向け買収活動でしかない定額給付金、庶民感覚とかけ離れた連夜のホテルバー通い、麻生邸見学ツアー主催者違法逮捕の渋谷事件へのだんまり、非正規雇用労働者への侮辱発言、KYに新しい意味を吹き込んだ漢字読み間違い連発、不況が深刻な状況下で消費税増税を宣言する元祖KYな感覚、など、どれも共感を呼ぶ麻生首相批判である。

経済悪化で先行したのは不動産・建設部門だった。昨年6月に改正建築基準法が施行されたが、政府の準備不足が致命的な影響を与えた。建築確認が下りず、マンション建設が完全にストップしてしまった。

このタイミングで米国のサブプライム金融危機が顕在化した。日本の不動産は外国資本の積極的な投資活動により、2003年から2007年にかけて、ミニバブルの様相を示した。その投資主体の外国資本の逆流が始まった。

連動して首都圏を中心に不動産価格が急激な下落に転じた。官製不況、サブプライム危機、不動産価格急落のトリプルパンチに見舞われて、不動産・建設業から深刻な不況が始まった。中小企業だけでなく、中堅企業、上場企業の破綻が激しい勢いで広がっている。

本年7月以降、経営環境が急変したのが輸出製造業である。2000年から2008年にかけて、日本円と米ドルは主要通貨に対して激しい下落推移をたどった。日米の超金融緩和政策が米ドルと日本円の長期暴落の理由だった。

本年7月以降、欧州経済の悪化、原油価格の急落が表面化し、米ドルと日本円は主要通貨に対して急激な上昇を示した。「円高」と言うよりも「円安是正」と表現すべきだが、日本円はユーロ、英ポンド、加ドル、豪ドルなどの主要通貨に対して急激な上昇を示した。米ドルに対しても、10%程度の上昇を示した。

急激な円高は輸出製造業の企業収益を直撃する。企業収益は軒並み3割、5割、7割減少し、赤字に転落する企業も生まれている。日本経済を牽引してきた輸出製造業の業況が急変した。

日本のGDPの56%を個人消費が占めている。個人消費が景気の基調を決定すると考えて間違いない。その個人消費が急激に萎縮し始めた。日経平均株価は10月27日に7162円まで下落した。2003年4月28日のバブル崩壊後最安値7607円を大幅に超えて、1982年10月7日以来、26年ぶりの安値を記録した。

日経平均株価は2007年7月9日の18261円から、本年10月27日の7162円まで、11099円、60.8%の暴落を演じた。株価暴落に連動して、個人の消費者心理が急激に冷えている。個人消費が減速傾向を強めている。日本の実質GDP成長率は本年4-6月期以降、マイナスに転落した。2009年に向けて、景気悪化が加速する可能性が高い。

日本経済は2002年2月から2007年12月まで景気回復を持続したとされているが、改善したのは企業収益だけだった。大企業労働者の一部は浮上したが、一般労働者に景気回復の恩恵は回ってこなかった。

小泉政権が日本社会に強制した「弱肉強食奨励」=「市場原理主義」=「新自由主義」の経済政策は、一般国民に苦しみしか与えなかった。労働市場の規制緩和が非正規雇用労働者と働く貧困層を激増させた。一生懸命に働いているのに、年収が200万に届かない労働者、雇用の安定を得られずに、いつ「雇い止め」の通知があるかを心配し続けなければならない労働者、「雇い止め」に直面しながら、失業給付を受け取ることができず、病気になっても医療を受けられない無保険労働者が激増した。

障害者、高齢者、生活困窮者、母子世帯など、社会が特段のケアをしなければならない人々に苦しみだけが押し付けられ、多くの人々の生存権が脅かされてきた。景気回復の期間が長かったと言っても、一般国民の生活は向上することがなかった。

米国発の金融危機は、ブッシュ政権、小泉政権が推進した市場原理主義の経済政策の破綻を意味する。市場原理にすべてを委ね、弱肉強食を奨励し、結果における不平等が日米両国で著しく拡大した。しかし、利益のあくなき追求を是認する新自由主義は、利益追求の欲望を制御不能なレベルにまで拡散させ、最終的に経済の破壊的な混乱をもたらしている。

経済政策運営の根幹を抜本的に修正することが迫られている。「市場原理主義」=「弱肉強食奨励」=「新自由主義」から、「セーフティーネット重視」=「生存権重視」=「社会民主主義」への路線転換が求められている。

国民生活に目線を合わせれば、急激な経済悪化に対応することが最優先の政策課題だ。麻生首相は「政局より政策」と発言し、国民に宣言した臨時国会冒頭の衆議院解散と総選挙実施を先送りした。先送りした以上、臨時国会に第2時補正予算案を提出するのは当然のことだ。

鳩山総務相は民主党を政局優先と非難したが、麻生政権の閣僚の一人として、麻生政権が補正予算案を国会に提出しないことをまず謙虚に批判するべきだ。

国民の視点に立てば、補正予算を早期に成立させた上で、早期に衆議院の解散、総選挙を実施すべきだ。麻生内閣の支持率が急落している。11月15、16日に実施されたテレビ朝日系列のANN世論調査では、麻生内閣の支持率が29.6%となり、先月の調査より13.2ポイント急落した。9月の政権発足直後の支持率50.4%から2ヵ月で3割を切った。一方、不支持率は46.8%と、10月の約37%から急増した。

麻生首相は麻生政権の「政局より政策」の方針が国民に支持されていると強弁しているが、麻生政権自身が国民からすでに支持されていないのだ。政治は国民のためのものである。政治家が私的な利害で政治を弄(もてあそ)んではならない。

政策優先を宣言したのだから、まず、補正予算案を今国会に提出すべきだ。麻生政権が補正予算案を国会に提出することが、テロ特措法、金融機能強化法を参議院で採決する前提条件だとする民主党の戦術は、政府に補正予算案の国会提出を迫る、極めて有効な手法である。

法案採決を人質にとる国会戦術を批判する意見は存在するが、①麻生政権が国民を無視した政治運営を押し通そうとしていること、②補正予算案の国会への早期提出が国民の視点から不可欠であること、を踏まえれば、民主党の戦術を非難することはできない。

民主党がお人好しに参議院での法案採決に応じても、麻生政権が補正予算案を国会に提出しない可能性が高いのだから、国民の視点に立った政策運営を実現するには、他に方法がない。

論点は明確だ。政策優先を明言しながら、補正予算案を国会に提出しようとしない麻生政権の不正義が糾弾される対象である。補正予算案提出を来年まで先送りすることを正当化する理由は存在しない。臨時国会への補正予算案提出を求める世論の喚起が求められる。麻生政権が補正予算案を臨時国会に提出しない場合、参議院が麻生首相の問責決議を可決することが正当化される。世論喚起にメディアも力を注ぐべきだ。メディアがその役割を積極的に担わないなら、政治的偏向の批判を免れない。

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2008年11月17日 (月)

政局優先の麻生政権とNHK偏向報道を糺(ただ)す

11月17日夕刻、自民党の麻生太郎首相と民主党の小沢一郎代表による党首会談が開催された。民主党の小沢代表が申し入れたものだった。

小沢代表は麻生首相に対して補正予算案を今臨時国会に提出することを求めた。これに対し、麻生首相は明確な回答を示さなかった。

小沢代表の主張は明快で、正当性を備えている。麻生首相は『文藝春秋2008年11月号』に手記を寄稿し、臨時国会冒頭での衆議院解散を明確に宣言した。「私は逃げない」とまで言い切った。

ところが、自民党が実施した選挙区調査が自民党惨敗を示唆したために、解散を急遽先送りした。自民党が輩出した首相は1年間に2度も政権を放り出した。国民に対して無責任極まりない対応を示した。

本年9月に政権を放り出した福田首相は、政権を放り出す決断を示した段階で、後継首相が直ちに衆議院の解散総選挙を実施して国民の審判を仰ぐことを麻生氏に言い含んだと見られている。麻生首相も総選挙で勝利して初めて天命を担うことができるとの発言を繰り返した。

ところが、自民党惨敗の予想が広がったことから麻生首相は逃げの一手に転じた。国民に解散総選挙を高らかに宣言したのに、敗色が濃厚となったために総選挙から逃げ回る姿は、見るに耐えないが、麻生首相は折りしも拡大した金融危機を、総選挙先送りの口実に使い始めた。

その口実を表現するのが「政局より政策」のフレーズだ。10月30日に追加景気対策を決定した際に麻生首相は記者会見で、国民の経済対策について、「ポイントは、スピード、迅速にという意味です」と明言した。「100年に1度の暴風雨が吹き荒れている」との認識の下に、追加景気対策を決めた。ポイントはスピードだという。

国民に宣言し、先代の首相からも申し送りされている解散総選挙を先送りする理由は、100年に1度の金融危機であり、危機に対応する政策の策定、決定、実行を優先することにあるのだという。

ならば、当然、臨時国会に補正予算を提出し、早期成立を目指し、早期執行が目指されなければ、辻褄が合わない。

ところが、麻生政権が臨時国会の会期を延長せず、補正予算案の国会提出を来年まで先送りするスタンスを示し始めた。

民主党がこうした事態に対応して、党首会談を求め、補正予算案の臨時国会提出を直接、麻生首相に要請したのは当然である。世界経済の急激な悪化は日本経済にも波及し、株価急落、急激な円安是正、消費者心理の急激な悪化により、日本経済は急激に冷え込んでいる。失業、倒産が2008年末に向けて、一般国民を厳しく追い詰めることが確実な情勢だ。

政府が政策対応を優先して、明確に宣言した解散総選挙を先送りするなら、臨時国会の会期を延長して補正予算早期成立、予算の早期執行に全精力を注ぐべきことは当たり前だ。政策優先と言いながら、補正予算をたな晒(ざら)しにして、国民生活の困窮に対して、無為無策を決め込むなら、そのような政権には直ちに退場してもらわなければならない。

メディアは麻生政権が政策優先を主張しながら、補正予算案の国会提出を来年に先送りする国民生活無視の政策運営姿勢を厳しく糾弾して当然である。

ところが、御用放送媒体に成り下がったNHKは、11月17日の午後7時定時ニュースで、またしても偏向報道を繰り返した。「日本偏向協会」に名称を変更すべきだと思う。

麻生首相と小沢代表による党首会談を民主党が急遽要請したのはなぜか、と問題提起した上で、麻生首相が衆議院の解散総選挙を来年に先送りする方針を示唆したため、揺さぶりをかけて、麻生政権を解散に追い込むためだと説明した。

極めて偏った解釈をニュース原稿のなかに盛り込むのは、あまりにも異常である。民主党が党首会談を求めたのは、麻生政権が政策優先と主張しながら、補正予算案の国会提出を来年まで先送りするのは、矛盾しており、政策優先を主張するのであれば、当然、臨時国会に補正予算案を提出すべきであるとの、正当性を備えた、国民の視点に立脚した主張を首相に直接伝えるためである。

こうした客観的な事実を伝えずに、あたかも、民主党が政局優先の行動をとっているかのような報道をするのは、重大な問題である。NHKの偏向問題は国会で論議されなければならない。

しかも、放送ではこの問題についての麻生首相のコメントだけを放送した。麻生首相は小沢代表からの申し入れを紹介した後、補正予算案は現在策定中であることを述べ、この問題をテロ特措法、金融機能強化法改正案の採決と絡めるのはおかしいとの発言を示した。

民主党は国民の視点に立って、日本が世界的な金融危機と自公政権の自壊に直面するなかで、解散総選挙を実施して、本格政権を樹立することが、いま、最優先されるべきとの判断に基づき、国会審議の迅速な進行に協力した。

ところが、麻生政権が国民への約束を守らず、総選挙を先送りしつつ、「ポイントはスピード」と述べた補正予算審議を来年まで先送りするとの、国民無視、傍若無人の政権運営に突き進むなら、民主党が国会運営に対する基本路線を根本的に変更しても、自民党は民主党の行動を批判できるはずがない。

不偏不党、政治的な公平を定めた「放送法」の規定を踏まえるまでもなく、麻生首相のコメントを放送するなら、民主党執行部の見解も併せて放送することが、当然の対応である。ニュース報道では麻生首相のコメントを放送して党首会談の話題を打ち切り、日本の景気後退の話題に移った。

NHKの活動は視聴者が支払う受信料で支えられている。視聴者はNHKが「不偏不党」、「政治的公平」という、放送法の規定を遵守して放送することを前提に受信料を支払っている。NHKがこのような偏向報道を維持するなら、多数の視聴者が受信料の支払いを拒絶しても、NHKの自業自得としか言いようがなくなる。

次期総選挙で自公政権が政権を失う危機に直面していることはよく分かる。しかし、最終的に審判を下すのは主権者である国民だ。国民が正しい判断を下すには、事実が正確に国民に伝えられることが不可欠な前提条件になる。国民は知る権利を有する。国民の知る権利を保障する上で、メディアの担う役割は極めて大きい。

そのメディアが偏向し、政治権力に迎合して、政府寄りの報道を繰り広げることは、日本の民主主義の危機を意味する。

NHKの偏向をすべての視聴者が監視し、NHKが行動を是正するように、NHKに対して「対話と圧力」で臨む必要がある。

麻生政権は政策を優先するなら、補正予算案を臨時国会に提出するべきだ。補正予算案の国会提出を来年にまで先送りして、「政策優先」の言葉は通用しない。麻生政権が筋の通らない対応を強行するなら、野党が国会審議で全面対立の姿勢を強め、法案審議が空転し、また、麻生首相に対する問責決議が参議院で可決されても、その責任は麻生政権にあると言わざるを得ない。

政治権力に支配されたマスメディアが正論を示さないなら、ネットの草の根から正論を広げてゆかなければならないと思う。

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2008年11月16日 (日)

成果乏しい20ヵ国金融危機サミット

11月14、15日にワシントンで開かれた20ヵ国による緊急金融危機サミットは、金融市場の改革を柱にした首脳宣言を発表して閉幕した。

首脳宣言が盛り込んだ主要な論点は以下の三点である。第一は景気支持のために各国が今後も財政政策発動を含む政策措置をとること。第二は危機の再発防止に向けて金融機関、金融商品などに対する規制を拡大すること。第三は資金力拡充を含めてIMFなどの機能を強化することである。

日本政府はIMFの機能強化のために10兆円の資金を拠出する方針を示したが、これまで論じてきたように、日本の外貨準備資金の取り扱いが国会の監視外に置かれている根本的な問題が存在しており、国会の同意を得ていない政府の独断による国際機関への資金拠出に対して国内で論議が生じる可能性がある。

米国のサブプライム金融危機の本質は、野放図に拡大したデリバティブ金融がもたらした信用バブルの崩壊である。金融市場がカジノと化した背景に市場原理主義の蔓延がある。市場原理に絶対不可侵の信頼を与えたことが、金融機関による際限のない利益拡大行動と、リスク負担能力をはるかに超えた金融行動を助長した。サブプライム金融危機は市場原理主義がもたらした必然の帰着点だった。

市場原理主義を見直し、金融市場、金融機関に対する規制を強化すべきとの主張は正当性を備えている。市場原理主義を基本にすえて、金融危機を発生させた当事者の米国政府はその責任を率直に認めず、規制の強化に抵抗しているが、主張の説得力は消滅している。

麻生首相は意見対立する米国と欧米の橋渡し役を演じると言うが、米国に対して言うべきことを言えない対米隷属の実態を露(あら)わにしただけだった。日本国民が小泉政権以来の市場原理主義経済政策でかつてない苦しみに直面するなかで、国会の同意も得ないで10兆円の資金拠出を約束したことに対する批判も急激に高まると考えられる。

今回の金融危機サミットでは事前に予想された討議内容以上の提案はまったく示されなかった。上述した三点の結論はすべて事前に予想されたものである。20ヵ国もの国家の首脳が集結したにもかかわらず、具体的な新提案は示されなかった。

米国政府はすでに1兆ドル(100兆円)の公的資金投入方針を提示しているが、金融市場の安定感はまったく確保されていない。ビッグスリーの経営も危機に直面しており、米国経済の混迷の根は極めて深い。

日経平均株価の下落が進行すると、日本の金融機関の財務状況が劇的に悪化する。国際機関に10兆円もの資金支援する余裕など存在しないのが現状である。麻生政権は二次にわたる景気対策を決定しているが、補正予算の措置が完了したのは第一次景気対策だけである。補正予算の規模は1.8兆円で、GDP比0.4%にも満たない。

第二次景気対策を裏打ちする5兆円規模の補正予算については、予算案の国会提出が来年に先送りされる可能性が高まっている。2009年初頭に向けて、日本経済の混迷が急激に強まる可能性が高い。「政局より政策」と発言するなら、まず臨時国会の会期を延長し、今国会会期中に補正予算を成立させることが最低限求められる。

小泉政権以来の市場原理主義経済政策によって、非正規雇用が激増し、社会保障政策が徹底的に切り込まれた。その結果、日本は世界でも有数の格差社会に変質してしまった。定額給付金はホームレスの人々や非正規雇用労働者のなかで住民登録を行っていない国民には支給されないと見込まれる。本当に困窮する国民に手を差し伸べない政策に「生活支援」の名は値しない。

雇用の安定、医療不安の除去、教育機会の提供、経済的弱者の支援が何よりも優先されるべき施策だ。衆議院の解散総選挙が実施されれば、抜本的な政策が提示され、国民が政策方針を選択できる。しかし、解散総選挙が先送りされ、政策決定も先送りされたのでは、国民は不況深刻化のなかで見殺しにされるだけだ。

10兆円もの国民資金が国会の同意を得ずに政府の独断で海外に拠出される事実、「政局より政策」と言いながら、補正予算審議を来年に先送りする政策姿勢。このような不正を押し通している麻生政権に対して、一般国民と野党が糾弾ののろしを上げなければ、なし崩しで不条理がまかり通る。

総選挙を先送りするなら、補正予算を臨時国会で成立させるべきだ。補正予算を来年に先送りするなら、年内に総選挙を実施するべきだ。国民に責任を負う政府は、筋の通らない党利党略=政局優先の行動をとるべきでない。

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2008年11月14日 (金)

麻生首相は「政策より政局」を「政局より政策」と読み間違えたのではないか

麻生首相は「政局より政策」と発言してきたが、「政策より政局」という原稿を読み間違えたのではないかと思われる。年末の中小企業の資金繰りが大変だと力説していた麻生首相が「政局より政策」と考えていたのなら、補正予算の国会提出を来年まで先送りすることは考えられない。元々「政策より政局」を基本に据えていたのだろう。

 

「Easy Resistance」様「私好みのimagination」様「こわれたおもちゃをだきあげて」様、ありがたいお言葉をありがとうございます。心より感謝申し上げます。

月刊誌『文藝春秋』に赤坂太郎とのペンネームによる政治解説連載記事がある。政治評論家が持ち回りで執筆していると言われるものだが、2008年12月号には、「麻生が「解散先送り」を決意した夜」と題する記事が掲載されている。副題に「批判の多いホテルでの会食。そのとき、麻生はある人物を招いた-」とある。因みに赤坂太郎は麻生首相のことを指しているわけではなく、長く続いているペンネームだ。

麻生首相は『文藝春秋2008年11月号』に手記を寄せ、臨時国会冒頭での衆議院解散をかなり明確に宣言した。ところが、選挙での惨敗の可能性が濃厚になり、解散総選挙を先送りしたと見られている。こうした経緯から、同誌は麻生首相擁護の論評を掲載したと考えられる。

『週刊東洋経済』の政治解説連載記事は「FOCUS政治」だが、2008年11月8日号には政治評論家の歳川隆雄氏が「任期満了が浮上 解散めぐりなおバトル」と題する記事を執筆している。

いずれの記事にも10月5日の夜、麻生首相が帝国ホテルのバー「ゴールデンライオン」を「かご抜け」して、階上のスイートルームで、ある人物と極秘裏に会ったことが記されている。東洋経済記事によると、その人物は日本銀行の川合祐子金融市場局キャピタルマーケット担当企画役で、白川方明総裁の最側近の一人だという。

記事の内容から推察すると、『文藝春秋』記事は歳川氏が執筆したとも考えられる。密会には麻生首相の外交演説に手を入れるスタッフライター、新聞記者OBも同席したという。麻生首相は世界の金融危機が深刻化するなかで、その後開催が正式に決まった20ヵ国首脳会議などの場での、日本政府の新興国の金融危機に対応する施策などについて意見が交わされたことが記されている。

11月13日記事「憲法違反の外国為替資金特別会計」に記述したが、政府が国会の了解を取らずに、外貨準備を外国政府支援に流用することを国際会議で表明することは、憲法違反の疑いが濃厚だ。

一般国民は外貨準備の構造についての基礎知識を持たないから、「政府の外貨準備」と聞くと、政府が余裕資金として外貨準備を保有しているのだと勘違いしてしまう。100兆円の外貨準備が存在すると聞くと、日本政府もなかなかの金持ちだと錯覚してしまう。

だが、外貨準備はそのような余裕金ではない。政府が日銀から借金して外貨を購入しているのだ。外貨といってもドル紙幣を保有しているのではなく、大半は米国国債だ。つまり、日本政府が日本銀行から100兆円借金してそのお金を米国政府に貸し付けているのである。

かつて、橋本龍太郎首相が、日本政府が保有する米国国債の売却を示唆して物議を醸(かも)したことがあった。米国政府が睨(にら)みを利かせているために、日本政府が保有米国国債を自由に市場で売却できないと言われることが多い。

しかし、外貨準備を保有する経緯を踏まえれば、こんなおかしな話はない。日本政府が外国為替市場でドルを購入するのは、円高・ドル安が急激に進行する局面で、行き過ぎたドル安、円高を回避するために、ドル買い介入をする場合に限られる。ドル安が行き過ぎた局面でドルを買うのだから、市場が落ち着けば、当然、ドルは反発する。ドルが堅調な局面でドルを売却しても混乱は生じない。日本政府は値上がりしたドルを売ることで為替売買益を獲得できる。

ただ、別の側面から見ると、異なる意味も浮上する。日本政府が購入するのは米国国債だ。ドルが下落する局面では、海外の投資家はドル資産購入を嫌う。米国政府がどうしても資金を調達するには金利を上げなければならない。このような局面で日本政府が米国国債を購入してくれれば、米国政府の利益は極めて大きい。

森田実氏が指摘されたように、小泉元首相がブッシュ大統領に、購入した米国国債は売らないと約束したのなら、それは、日本政府が米国政府に資金を贈与したことと同じになる。こんなことが許されるはずがない。

日本の外貨準備の管理を日本国憲法の規定に沿って、国会決議事項にしなければならない。内閣支持率が低迷して月刊誌で宣言した解散総選挙から逃げ回る麻生首相が、国際会議で点数を稼ぎ、支持率を上昇させるために、国民に10兆円もの資金負担を負わせる施策を、国会の同意を得ることもなく国際会議で表明することが許されてはならない。

麻生首相帰国後の国会での最重要議題の一つに、外国為替資金特別会計法の改正を取り上げなければならない。

米国発の金融危機マグニチュードは恐ろしく大きい。デリバティブ金融商品の想定元本は600兆ドル=6京円程度に拡大していると見られている。米国政府は米国最大の保険会社AIGに対する資金支援の規模を8.5兆円から15兆円に拡大した。

AIGは2008年7-9月期の3ヵ月にサブプライム関連損失を3.1兆円計上した。昨年夏以降の損失は760億ドル(7.6兆円)に達している。AIG社が抱えるCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の残高は4000億ドル(40兆円)に達しており、AIGが破綻すれば、金融市場に大激震が走る。

政府系住宅金融公社(GSE)であるファニーメイとフレディマックが発行する債券や住宅ローン担保証券が総額5兆ドル(500兆円)存在し、そのうち1.5兆ドル(150兆円)が海外の中央銀行や金融機関に保有されている。11月10日、ファニーメイは2008年7-9月期の決算が289億ドル(290兆円)の最終赤字になったことを発表した。

両社の発行する債券には政府保証はついていない。2社だけで500兆円のハイリスク金融商品が世界の金融市場に広がっている。米国政策当局はすでに100兆円の公的資金枠を提示しているが、金融市場の不安心理は後退していない。日本の金融機関のなかにもGSE債を大量保有している金融機関がある。

麻生首相は日本の金融機関のダメージは相対的に小さいと主張して、日本の外貨準備資金を新興国の金融危機対応に流用するなどと発言しているが、日本の金融機関の現状は急激に悪化している。

日本の金融機関は株式を大量保有しているため、株価下落が自己資本比率に強い影響を与える。政府は地方銀行の保有有価証券について、時価評価規制を緩和するとの方針を示したが、極めて危険な対応である。時価評価の見送りは、損失の隠蔽(いんぺい)と先送りに他ならない。日経平均株価が8000円を割り込むと、日本の金融機関も破綻リスクを濃厚に抱え込むことになる。海外に資金を回す余裕などあっという間に吹き飛ぶ。

日本経済の急激な悪化、金融機関の自己資本不足から、激しい信用収縮が発生し始めた。企業倒産が急増し始めたが、銀行の貸し渋り、貸し剥(は)がし、はこれから、急激に拡大する。2008年年末に向けて、企業倒産の激増が予想される。

「政局より政策」が発言の本意だとすれば、補正予算案国会提出の2009年への先送りを理解することができない。麻生首相は「政策より政局」の意味で「政局より政策」発言をしていたのだとしか考えられない。

経済の急激な悪化に対する施策の決定、実行を数ヶ月先送りして、その結果、企業倒産激増、株価急落、景気深刻化加速が表面化した場合、麻生首相の責任は厳しく追及されることになる。解散どころではなく、麻生政権は総辞職せざる得なくなるだろう。

日本経済の悪化は急激に加速し始めている。日本経済への対応を数ヶ月も先送りして新興国への10兆円の資金支援を国会の承認をも得ないで発表するような、無責任極まりない政権には、一国も早く退場してもらわなければならない。日本国民が悲惨な地獄に突き落とされてしまう。

補正予算案を臨時国会に提出し、野党の意見を受け入れ、理念も哲学もない定額給付金を撤回して修正した補正予算を早急に成立させる。そのうえで衆議院の解散に踏み切るべきだ。これから到来する大不況に対応するには、国民の信託を受けた強固な本格政権が不可欠だ。

麻生首相は首相として、まず「私利私欲」から離れるべきだ。政治は「公」のものである。政治を「私」にすることは許されない。

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2008年11月13日 (木)

憲法違反の外国為替資金特別会計

麻生政権が外貨準備から10兆円の資金をIMFに拠出する方針を決めたことが報道された。外貨準備は麻生首相のポケットマネーではない。理念も哲学もない定額給付金支給も外貨準備の流用も、国民の貴重な財政資金を私有物と勘違いしているとしか思えない。

日本国憲法第7条の天皇の国事行為に列挙されている衆議院の解散を根拠に、内閣総理大臣に衆議院の解散権があるとの解釈は存在するが、与党の党利党略を満たすために解散権が行使されることが容認されているわけではない。衆議院の解散は国民の利益を満たすために実施されるもので、「私が決めさせていただきます」と私的な権利として取り扱うことは権力の濫用である。

外貨準備は為替レートの安定を確保するために活用されるものだ。ドルが急上昇する場合には、外貨準備で保有するドルを為替市場で売却し、急激なドル上昇を回避する。ドルが急落し、円が急上昇する局面では、外為市場でドルを買い入れ、ドル安進行を回避する。その蓄積が外貨準備である。

均衡の取れた為替レートを想定し、現実の為替レート変動において、ドルが下落しすぎる局面でドルを購入し、ドルが上昇しすぎる局面でドルを売却する。適正な外貨準備の保有量を念頭に入れて、安く購入したドルをドル上昇局面で売却するのが本来の姿だ。このように対応すれば、外為会計で利益を計上することはあっても、損失を生むことは限定的になる。

したがって、外貨準備を膨大な規模で蓄積する理由は存在しない。膨大な外貨準備を保有することは、巨大な為替リスクを野晒(ざら)しにすることを意味するから、外貨準備の規模は極力圧縮すべきである。とりわけ、中期的にドル下落が予想されるなら、なおさらドル保有量を極力圧縮すべきだ。

日本政府は約100兆円もの外貨準備を保有している。竹中平蔵氏が金融相を兼務することになった2002年10月から2004年3月までの1年半に外貨準備残高は一気に47兆円も増加した。理解不能な巨額の資金が米国に提供されたことになる。

財務省が10月29日に明らかにしたところによると、円高進行により、外国為替特別会計の評価損が23.9兆円に達したとのことである。外為特会の剰余金の積立金が19.6兆円存在することも明らかにされたが、両者を差し引いても14.3兆円の損失が発生している。

国家財政が疲弊し、国民に対するセーフティネットが次から次へと切り込まれ、国民負担増加策が激しい勢いで実施されるなかで、外為特会での巨額損失が容認されるわけがない。これだけの損失を計上しながら、10兆円もの資金を海外の金融危機への対応に流用することを政府が独断で決定することも無論容認されない。

外国為替資金特別会計の運用そのものに重大な問題が存在する。国民資金を扱い、巨大な損失を発生させる可能性がある以上、その取り扱いには国会による厳重な監視が不可欠である。しかし、現状の法制では、このことが十分に担保されていない。

日本国憲法には次の規定がある。

83条 国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。

85条 国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを必要とする。

これに対して、外国為替資金特別会計法に以下の規定がある。

(設置)

第一条 政府の行う外国為替等及びこれに伴う取引を円滑にするために外国為替資金を置き、その運営に関する経理を一般会計と区分して特別に行うため、特別会計を設置する。

(外国為替資金の運営)
第五条 外国為替資金は、外国為替等の売買に運用するものとする。

外国為替資金を管理する主務大臣は財務大臣で、財務大臣が「政府の行う外国為替資金及びこれに伴う取引を円滑にする」ことを目的に、外国為替資金を保有して運営しているのである。

この規定に従い、財務省は、全額日銀からの借金で、100兆円の外貨準備を保有し、財務大臣、内閣の一存で、10兆円の資金のIMFへの拠出などの流用を決定している。

外国為替資金特別会計の運用の実態は、日本国憲法第83条、および第85条に反していると言わざるを得ない。これだけの巨額の財政資金の取り扱いが、国会議決事項でなく、財務大臣、内閣の一存で決定されてしまうのでは、財政資金に対する国会の監視が届かない。

10月27日付記事「森田実氏が入手した「米国国債を売らない約束」」に記述したように、小泉元首相はブッシュ大統領に「米国国債を売らない約束」をした可能性がある。小泉政権下の2002年10月から2004年3月にかけての47兆円におよぶドル買い介入は、日本政府から米国への47兆円もの資金提供であった可能性が高い。

「返済のない融資」は「贈与」と同一である。日本国民に100兆円の資金を米国に贈与する意思はまったく存在しない。国会のチェックが入らない制度の抜け穴を利用して、日本政府が100兆円の資金を米国に供与したのであれば、日本国民に対するとてつもない背任行為になる。

財務省が外貨準備で23.9兆円の評価損を計上したことを発表した直後に、10兆円の外貨準備を国際金融危機対策に流用することを発表するのは、麻生政権が日本国民をなめきっている証左としか言いようがない。

10月10日のワシントンG7、11日のIMFCで、中川財務相兼金融相が日本の外貨準備を活用した金融危機対策発動の意向を表明したが、先述した通り、日本国憲法の規定に反する行動と言うべきものだ。国会の議決を経ずに、外国政府と条約を締結するような行為は認められるべきでない。

外国為替資金特別会計は独自に事務経費を計上し、官僚が経費を使用している。巨額の海外渡航費用が計上され、財務省官僚が海外渡航に利用している。外為特会の規模拡大、予算拡大は、財務官僚の利権拡大を意味している。

日本国民に対する社会保障政策が、国民の生存権を脅かす程度にまで切り込まれ、国民が耐乏生活を強いられているときに、ざるに水を注ぐような杜撰な資金管理が許されるはずがない。野党は、外為資金特会の巨額損失の責任を徹底追及しなければならない。

非正規雇用労働者、働く貧困層、障害者自立支援法に苦しめられる障害者、高齢者、母子世帯、中小企業、生活保護圧縮、など、国内で必要不可欠な施策が冷酷に切り込まれている。麻生首相が国際会議で得点を稼ぐために、国会の了承も得ずに国民に犠牲を強いることは許されない。

今回の20ヵ国首脳会議に向けて、欧米首脳は日本政府に外貨準備資金を拠出させる相談を公然と進めてきた。いじめ問題で取り上げられる「いじめる者によるいじめられる者に対するかつあげ」の構造が透けて見える。日本の金融機関も株価下落が進行すれば、深刻な自己資本不足に直面する。海外諸国に資金贈与する余裕は存在しない。

直ちに求められることは、外国為替資金特別会計法の改正である。100兆円規模のリスク資金を扱う外為資金が国会の議決を経ずに運用される現状は、明らかに日本国憲法に反している。外為資金の取り扱いの全体を国会監視下に移さなければならない。また、麻生首相は国際社会で10兆円の外貨準備流用を表明する前に、国会での了解を取ることが不可欠だ。

野党は国会で、この問題を最優先事項として審議するべきだ。また、100兆円の外貨準備残高を、損失を生じさせずに、20兆円程度の規模に圧縮すべきである。日本国民が100兆円の資金を米国に供与するいわれはまったく存在しない。

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2008年11月12日 (水)

観客激減の大相撲九州場所とNHK問題

公共放送の役割は大きい。国民が正しい判断を下すには、正確で偏りのない情報が広く提供される必要がある。議会制民主主義では主権者である国民が国民のための政治を実現するために、選挙によって国会議員を選出し、国会議員から構成される国会が政権が創設し、政権は国民の意思を反映して行政を執行する。政治権力が創出されるが、権力を付与する主権者はあくまでも国民である。

国民は政治の現状、実態を知る権利を有する。事実を正確に知ることによって、主として選挙の際の投票行動を通じて主権者としての権利を行使する。事実を正確に知ることは、主権者である国民が、間違いのない意思決定を実現する基礎条件になる。

国民が事実を知るうえで、最大の影響を受けるのが、マスメディアが提供する情報である。メディアが提供する情報に偏りがあれば、国民が正しい判断を下すことができなくなる。

逆に言えば、政治権力を握る勢力には、権力維持のために、メディアをコントロールしようとの強い誘因が生まれることになる。偏った情報が流布され、一般国民が偏った情報によって洗脳されてしまうことは、民主主義の根本にかかわる重大な問題である。

メディアのなかで圧倒的な影響力を持つのが全国紙とテレビメディアである。地方の新聞も共同、時事の2社が配信するニュース報道をそのまま報じることが多く、国民が入手する報道は、驚くほど少数の媒体によって供給される。

全国放送のテレビの場合、1%の視聴率は約100万人の国民が情報の受け手になることを意味する。視聴率15%のテレビ番組は1500万人の国民に、同時に同一の情報を提供するのだ。その影響力は計り知れない。

1000人の聴衆を集めた講演を1000回繰り返して、ようやく100万人の人々に情報を伝達することができる。テレビメディアを活用すると、わずか1%の視聴率でこの効果を達成してしまう。

民放の場合、放送会社の財政を支えるのはスポンサーである。放送会社はスポンサーの意向に従わざるを得ない。スポンサーは基本的に大資本である。民間放送は、構造的に大資本の意向に従わざるを得ない宿命を背負っている。

政府の不祥事を批判する報道を民放会社が繰り返すとき、政府と密接な関係を持つ大資本の代表者が、放送会社に対するスポンサー支出を削減するとの意向を伝えれば、放送会社は放送内容を修正せざるを得ない。民間放送がこのような基本構造を抱え込んでいることを十分に認識しておく必要がある。

こうした構造を踏まえて放送法は政治的な「不偏不党」、「政治的公平」を定めている。ところが、現実にはその規定が著しく歪められている。歪められている原因には、上述したような経済的、根源的な事情がある。

その意味でも公共放送の役割が重要になる。NHK問題については、拙著『知られざる真実-勾留地にて-』(イプシロン出版企画)でも記述した。「政治からの独立性」という「放送の公共性」が確保されなくなった原因は、1952年の電波監理委員会廃止立法にある。

この立法を実行したのが、麻生太郎氏の祖父にあたる吉田茂首相である。第2次大戦直後、GHQは日本の放送民主化のために「放送委員会」を設置した。「放送委員会」は1947年に「放送委員会法案要綱」を策定して、政府から独立した機関としての「放送委員会」を特殊法人として改めて設立する提案を行った。放送委員会がNHK会長を推挙し、周波数の割り当ての任務を行うこととされた。

ところが、東西冷戦が勃発し、GHQの統治方針が全面的に転換した。電波配分の権限は電波監理委員会に移され、さらに1952年の立法により、郵政省に回収され、「政治からの独立性」が維持されない構図が作られた。

つまり、冷戦が発生し、GHQは政府から独立した公共放送を実現しようとした当初の方針を撤回し、政府が公共放送を支配する構造を日本に創設してしまったのだ。NHKは予算を含めたすべての側面で、政治権力に従属する組織になることが、制度的に強制されてしまったのだ。

とりわけ、小泉政権発足後、この傾向が顕著になった。その理由は小泉政権が権力維持の力の源泉として重視した世論を誘導するための、最も重要で有力な手段がマスメディアのコントロールであることを認識して、マスメディアに対する支配を強化したためである。

NHKの側でさまざまな不祥事が発覚したこともあり、NHKは政治権力の御用機関になり下がるしか生きる道がなくなることになった。受信料の強制徴収制度の導入、予算の承認などの問題も存在し、NHKは政治権力に従属せざるを得なくなっている。

しかし、NHKの事業活動を支えているのは視聴者が支払っている受信料である。視聴者はNHKの事業活動を支える主役であり、視聴者が積極的に声を発することが事態を変化させる原動力になる。

NHKの報道番組、政治番組に対する監視を強めなければならない。代表的な政治番組である「日曜討論」、「NHKスペシャル」「クローズアップ現代」「定時ニュース」などへの監視を強化しなければならない。

本ブログで取り上げてきた金融機能強化法改正案審議をNHKニュースがほとんど報道しないのは極めて不自然である。ニュース番組の時間配分にも注意が必要だ。

政治番組ではないが、大相撲はNHKの重要番組と位置付けられている。11月9日から始まった九州場所のテレビ中継を見ると、客席の半分以上が空席になっている。傷害致死(殺人)事件、麻薬汚染、八百長疑惑の問題が次から次へと噴出するのだから、人気凋落は当然のことだろう。

私は以前、知人の元NHKのスポーツキャスターから、直接、相撲協会とNHKがかなりの取り組みについて、事前に勝敗を掌握しているとの話を聞いた。最近問題になっている八百長疑惑には、構造的に根の深い現実が存在するのだろうと推察している。

問題は、このような問題を抱える日本相撲協会にNHKから巨額の放映権料が支払われていることだ。伝えられるところによると、年間30億円もの資金が提供されていると言う。日本相撲協会の事業収入予算は年間88億円(2008年度)で、NHKの拠出金はその3分の1を占めていることになる。

NHKが支払う放映権料の元々の出資者である視聴者が、この程度の資金拠出は当然だと考えるのなら、正当化されるが、視聴者の多くが見直しを求めるなら、論議が必要だろう。

大相撲の問題が表面化すると、いつも横綱審議委員会が登場する。「審議委員会」との名称が付けられていることから、政府直属の審議会であるとの印象が持たれやすいが、そのような公的、法的権限を持つ組織ではない。横綱の推挙を決定するための機関に過ぎない。

NHKが横綱審議委員会を定時ニュースで大ニュースとして報道することも、バランスを欠いていると思われる。

日本の民主主義を考えるうえで、NHKのあり方をどのように変革するかは、極めて重要な問題である。一般国民が財政的に支える全国放送を実施する放送機関が存在するなら、その機関を政治的に独立させ、政治権力がメディア情報をコントロールすることを牽制する重要な役割を担う機関に刷新して育てることが望ましい。

「NHK問題」を国民的論議に高めることが求められる。

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2008年11月11日 (火)

消費税増税法案提出を論じる時代錯誤

麻生首相は11月11日昼、経済情勢が改善すれば2年後に消費税増税法案を提出する意向を表明した。麻生首相は解散総選挙宣言の不実行、給付金所得制限などの問題で発言の信用を著しく低下させている。

10月30日に追加景気対策を発表した記者会見で、麻生首相は3年後に消費税を引き上げる方針を表明した。その後、自民党や内閣閣僚から増税発言に対する抑制発言が広がると、経済状況を見定めて実施するかどうかを判断すると発言を後退させた。

11日の発言も経済情勢が改善することを前提としてのものであるが、2011年度から消費税増税を実施するとの政府方針が鮮明になってきた。曖昧な発言は混乱を招くだけで、2兆円の給付金支出政策も、所得制限を設けるかどうかで大混乱を招いてしまった。

この意味で発言を明確化することは重要だが、より重要なのは内容である。日本経済は急激な景気悪化に移行しつつある。11月11日に内閣府が発表した10月の街角景況感では、街角の景況感を3ヵ月前と比較した現状判断指数が前月比5.4ポイント低下し、22.6ポイントとなり、現在の調査方式が開始された2001年8月以降で最低値を記録した。

この調査は各種経済指標が一般的な景気実態を反映しにくいとの理由から開始されたもので、調査開始の経緯を踏まえると、景気実態をより正確に表示するはずのものである。その調査で調査開始以来の最低値を記録したということは、日本経済の悪化がいかに急激なものになっているかを示している。

日本政府は小泉政権以来、財政政策を全面的に否定し、財政再策に景気支持の役割を求めないことは世界の潮流とまで断言してきた。ところが、米国、欧州は、経済金融不況の深刻化を踏まえて、機動的に財政政策活用に方針を転換している。小泉政権以来の政権中枢が誤った判断を示してきたことが証明されている。

11月15日には米国ワシントンで緊急金融危機サミットが開催される。サミット議長国は日本であり、緊急サミットは日本がリードして開催するべきものだったが、日本のリーダーシップはまったく見えなかった。麻生首相が成田でのサミット開催を働き掛けたようだが、主要国首脳からはまったく相手にされなかった。

10月10日のG7、10月13日の欧州首脳会議で、緊急行動計画が示された。各国政府は金融危機を鎮静化させるために、あらゆる政策を総動員する方針を確認した。金利引き下げ、資本増強、流動性供給、預金保護、などの方針が確認されたが、財政政策の活用についても合意が得られた。

麻生政権は景気対策を決定し、発表したが、そのなかに消費税増税を提示するところに、経済運営のセンスのなさが象徴的に示されている。

追加景気対策の目玉は2兆円の給付金政策だが、各種世論調査が示しているように、国民は高く評価していない。お金の支給を受けて喜ばない人はいないはずだが、政策の理念も哲学もないことが透けて見えてしまっている。総選挙に向けて1人1万2000円の買収資金が配られると受け止めている国民が大半だと思われる。

麻生首相がポケットマネーで給付金を支給するなら、公職選挙法の縛りを除けば国民の人気を得るかも知れない。しかし、給付金と言っても元々国民が支払った税金が財源だ。税金で納めたお金を、「給付金」と「お上」から「下々」に「恵んでやる」と言わんばかりの方式で給付することに釈然としない国民も多いと思う。

10月10日のぶらさがり会見で、朝日の世論調査で6割以上が必要ないとの意見を表明したことについて聞かれると、麻生首相は「貧しいところは必要だと思っている方も多い。目先しんどくなったら、貧しいところはお金は必要」と述べた。

給付金は「貧しい人」に政府が恵みを与える「救貧政策」だと認識しているようだ。国民を「豊か」と「貧しい」に二分して捉える姿勢がそもそも問題ではないだろうか。政治の主権者は国民で、国民は自らの意思を代議士に託し、民意を受けた代議士が国会を舞台に政治を執行している。

内閣は国民の意向を代表する地位にあり、国民の上位に、国民を支配する地位に位置しているわけではない。麻生首相の言葉からは、政府が国民の上位に位置して、国民に対して上から施策を検討していると受け取れる発言が目立つ。

経済状況の急激な悪化で多くの国民が厳しい状況に直面している。国民の経済的困難は景気循環によってもたらされたものではない。小泉政権以降の自公政権が市場原理主義=新自由主義の経済政策を日本に強制した。もっとも重要な変化は労働市場に生じた。非正規雇用労働者の激増、まじめに働いても年収が200万円に届かない勤労者の激増、などの変化が国民生活を激変させた。

母子世帯、高齢者世帯、などに対して、政府はきめ細かい政策を実施する責務を負っている。障害者の生活は障害者自立支援法により、一段と厳しい状況に追い込まれた。老後の生活を支える年金の管理の杜撰さが多くの高齢者の生活を破壊している。後期高齢者医療制度が高齢者の尊厳をどれほど傷つけているか。

弱肉強食奨励、格差拡大推進、セーフティネット破壊の経済政策が国民生活を追い詰めてきた。そこに、急激な景気後退が日本を襲っている。

いま求められる政策は、経済政策路線の抜本転換である。市場原理主義を排除して、すべての国民の生活を守る方向に経済政策の基本を振り向けるべきだ。労働市場の制度変更が急務である。同一労働同一賃金制度の迅速な導入など、抜本策が求められている。

高齢者、障害者、母子世帯、中小企業などに対する、社会のセーフティネットを強化することが求められている。また、すべての国民に教育の機会を保証する、学費に対する助成が求められている。

社会保障関係支出は政府の方針で、毎年度2200億円削減されることが決められている。そのために、必要不可欠な政策が切り込まれてゆく。2兆円の財源があるなら、社会保障費の削減を回避する施策、所得の少ない世帯に対する教育費の助成、国民が必要不可欠な医療を受けることができるための政府支出、などに有効活用する方が望ましい。

同時に、消費税増税をこの時期に打ち出すことは理解できない。増税を実施する前に特権官僚の天下り利権を排除することが不可欠である。麻生政権は特権官僚の天下り利権を排除する考えをまったく持っていないと思われる。財務省の天下り利権は完全に擁護されている。

日本政策金融公庫日本政策投資銀行国際協力銀行、商工中金、農林中金、などへの天下り構造には、まったく手が入れられていない。特権官僚の天下り利権を排除しないまま一般国民に大増税を押し付けようとしても、国民が同意できるはずがない。

麻生政権が経済政策の路線を転換し、官僚利権を根絶する方向に舵を切るなら、経済悪化が加速する状況下で、政策運営を持続することにも同意が得られるかもしれない。

しかし、現実にそのような方針はまったく示されていない。よく吟味もしていない政策を思いつくまま発表し、発表した途端に政権内部から異論が続出する姿は、政権末期のものである。

麻生首相が国民のために政治が存在すると考えるなら、迅速に総選挙を実施することが何よりも求められる。経済悪化が加速するなかで、多くの国民が不況進行の犠牲になってしまう。国民の視点でものを考え、国民の視点で政策が打ち出されないなら、多くの同胞が悲惨な厳冬を迎えなければならなくなると思う。

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2008年11月10日 (月)

言葉への信用を失う麻生首相と細田幹事長

自民党の細田博之幹事長が解散総選挙について、11月9日のフジテレビ番組で「年内は今やない。もうちょっと先に延びた」と述べた。この幹事長はつい最近まで、11月に総選挙があると吹聴していた人物だ。

日本国憲法第7条:天皇の国事行為に衆議院の解散が規定されている。天皇の国事行為は内閣の助言と承認によって行われることから、内閣に解散を決定する権限があると「解釈」されている。

しかし、衆議院解散は内閣総理大臣の私的な権利ではない。衆議院議員の任期は4年であり、原則としては4年の任期が全うされるべきである。衆議院の解散は国政に重大な問題が生じ、主権者である国民の意思を問わねばならない事態が生じたときに、公共的な利益を満たすために実行されるべきものだ。

政権与党が政権維持という党利党略を満たすために解散権を利用するのは権利の濫用と言わざるを得ない。自民党は安倍晋三政権、福田康夫政権が二代続けて政権を無責任に放り出した。政権担当能力がないことを自ら表明したに等しい。

憲政の常道に従えば、自民党が野党に政権を引き渡し、野党が政権を引き継いだうえで国民の審判を仰ぐ総選挙を実施することが正しい対応である。政権与党の政権担当能力の欠落との国政運営上の重大な事態が生じたのであるから、いまこそ、総選挙を行わなければならない局面である。

昨年7月の参議院選挙では安倍晋三首相が「安倍政権と小沢政権のどちらを選ぶかの政権を選択する選挙だ」と明言した。自民党は惨敗し、野党が参議院の過半数を制した。国民は小沢政権を選択した。

衆議院と参議院の多数政党が異なる事態が生じ、国会での意思決定が円滑に進まなくなった。直近の国政選挙で国民が野党を信任して参議院の多数を野党が確保したのであるから、与党が政策運営において野党の意向を尊重すべきことは当然だ。それにもかかわらず福田政権は、野党の意向を無視した政策運営を強行した。

インド洋での自衛隊による給油活動、ガソリン暫定税率の復活強行など、自公政権は独断専行を貫いた。日銀首脳人事が混迷の極みを示したのも、福田首相が野党の提示した財務省からの天下り人事排除という明確な方針を拒絶しつづけたために生じた失態だった。

自民党が政権担当能力を失い、二代にわたって政権を放り出したことは紛れもない事実である。福田首相は新政権樹立後に直ちに解散総選挙を実施することを含んで首相を辞任した。後継首相に就任した麻生首相は、月刊誌に臨時国会冒頭での衆議院解散を明確に宣言した。

米国のサブプライム金融危機に端を発する世界的な金融市場の動揺が広がっている。機動的な政策対応が必要であることは事実だが、本格的な政策対応を実行するには本格的な政治体制が確立されていることが必要だ。米国は金融危機の震源地であるが、大統領選挙を実施し、政治体制大転換の方向を確定した。

日本の政治運営における最重要の政策決定は予算編成と決定である。2009年度予算の国会審議を始める前に政治の新体制を確立することが不可欠だ。衆参ねじれ状態が持続する以上、国会審議が紛糾することは避けられない。迅速な政策決定、強力な政策実行体制が求められる局面で、国政の混迷が持続することは国民に大きな不利益をもたらす。

麻生首相は自分の言葉に責任を持つべきである。小泉元首相が政権公約を守らなかったことについて、「この程度の約束を守れなかったことは大したことではない」と開き直って以来、日本の政治責任者の言葉は重みを完全に失ってしまった。

麻生首相は臨時国会冒頭での衆議院解散を実行しなかったことで、出鼻から「有言不実行」の行動様式を示してしまった。「全世帯に」給付すると断言した給付金に、所得制限を設けるかどうかで紛糾している。3年後に消費税増税を実施すると明言した直後に、曖昧な言い回しをし始めた。

このような言動を繰り返せば、何を発言しても信用されなくなるだろう。政治に求められる最大の資質は信用と信頼だ。参議院の予算委員会で民主党の石井一副代表が麻生首相の言行不一致を糺したが当然の追及である。

細田自民党幹事長が11月の総選挙実施を示唆する発言を繰り返したのは、野党議員が総選挙への準備態勢に急傾斜することをあおるためであったと考えられる。選挙への準備態勢を整えるには経済的負担を伴う。野党議員の資金を枯渇させるための三文芝居が演じられたのだとすると、その姑息さには論評する言葉もなくなる。

その細田幹事長が来年4月以降の総選挙と言い始めたことから、逆に年末解散の可能性が強まりつつあるのかとも感じられる。

言葉に対する責任感を失い、国民の幸福ではなく、政権維持という私的な利益だけを追求する政治姿勢を国民は冷静に見極めなければならない。麻生首相が説明した追加景気対策からは、国民生活の詳細を見つめ、真に必要とされる政策をきめ細かく実行しようとする政府の姿勢はまったく感じられない。

「村野瀬玲奈の秘書課広報室」様が、10月30日の景気対策発表の麻生首相会見の詳細について、的確な論評を示されている。

2兆円もの国費を投入するなら、日本経済の現状のなかで本当の苦しみに直面する人々の生存権をしっかり支える施策に、集中的に政策を対応すべきである。

障害者自立支援法が障害者の生存権を脅かしていることは、最近提訴された訴訟でも明らかにされている。医療を必要とする国民に医療が提供されない非情な状況が日本全体に広がりつつある。生活保護に対する締め付けが強化され、多くの国民が経済苦を原因とする自死に追い込まれている。

麻生首相は10月26日の秋葉原街頭演説で非正規雇用から正規雇用への移行を推進する方針を示したが、抜本的な施策は示されていない。村野瀬玲奈さんも指摘しているが、10月7日の衆議院予算委員会での志位和夫共産党委員長が提起したトヨタ自動車の派遣期間3年規制に関する偽装疑惑に対しても明確な答弁は示されていない。

限られた財源を活用して、労働者の生活向上、生活安定化に向けた施策を最大限工夫することが求められる。1回限りの給付金が支出され、3年後には消費税が大増税されるのでは、生活は安定化するどころか疲弊するばかりだ。

麻生政権はその一方で、法人税減税の方針を提示し始めた。自公政権が「政治」、「特権官僚」、「大資本」、「外国資本」、「メディア」の「政官業外電の利権互助会」の利権維持、拡大を指向していることが鮮明に示されている。

麻生首相は11月9日に渋谷の居酒屋で若者との会食に出席したパフォーマンスをテレビメディアに放映させたが、会食の話題は相も変らぬマンガ談義だった。世界経済が激動する局面では、寸暇を惜しんで情勢分析する机上での仕事や情報収集が必要と推察されるが、そのような時間を確保しているようには見えない。因みに居酒屋会合の若者は自民党学生部からの動員だった。

 

麻生首相は自公政権が無責任に政権を放り出した不祥事を背負って発足した政権の首相であるとの出発点を肝に銘じるべきである。政権発足時に国民に対して解散総選挙を宣言した事実は厳然と残っている。無責任な言動を繰り返し、解散総選挙実施という最優先の課題を疎(おろそ)かにする行動に対して、国民が厳しい視線を向けていることに気付くべきだ。「公」の国政を「私」にしてはならないと感じる。

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2008年11月 8日 (土)

理念なき麻生政権の財政政策

金融危機に対応するために、各国政策当局は政策総動員の体制を強化している。財政金融のマクロ経済政策を発動するとともに、公的資金を活用した資本増強策を推進している。

今回の金融危機は約200兆円規模のサブプライムローンが住宅ローン担保証券(RMBS)や債務担保証券(CDO)などに組み込まれ、想定元本が巨大に拡張されたハイリスク・ハイリターン型の金融商品の価格が急落したことに端を発している。

サブプライムローンから直接影響を受ける金融市場の規模は6600兆円と推定されており、こここら金融機関の巨額損失が発生している。また、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)と呼ばれる金融保証商品の市場規模も約6000兆円に達していると推定され、潜在的な巨額損失の温床になっている。

金融機関が計上する損失が最終的にどの程度の規模に達するかが明らかでなく、巨額の公的資金を確保しても、それで十分であると言い切れないため、金融市場の疑心暗鬼が広がっている。

金融危機の拡大に伴い、米国経済が本格的な不況に移行した。世界経済は米国に連動し、欧州、日本が景気後退に突入した。さらに、中国、インド、ブラジル、ロシアなど、新興成長国の経済状況も急変している。

資産価格下落-景気悪化-金融不安拡大の悪循環が始動しており、この悪循環を断ち切ることが求められている。金融市場がもっとも強く警戒するのは、金融不安である。大手金融機関が破たんし、金融機関と事業会社の破綻が連鎖して広がる状況を金融恐慌と呼ぶが、金融市場は金融恐慌のリスクを認識している。

政策当局は最大のリスクである金融恐慌リスクに対処するために、公的資金による資本増強の方針を提示した。公的資金を投入する際の金融機関の責任処理が重要な問題として積み残されているが、緊急対応として、大規模な金融機関の経営破綻を回避する政策スタンスが明示されている。

金融恐慌のリスクを排除することと並行して、経済悪化を緩和する施策が順次決定され、実施されている。財政金融両面のマクロ経済政策である。福田政権の大田弘子経財相は国会質疑で「主要国は景気安定化のための財政政策活用を否定的に捉えている」と答弁したが、結局、福田政権と麻生政権は財政政策出動を決定した。

小泉・竹中政権は2001年度から2003年度にかけて財政政策を否定し、超緊縮財政政策を実行して日本経済の崩壊を誘導してしまったが、誤った政策対応であった。金融危機が拡大し、経済の悪化が金融危機をさらに深刻化させるリスクが高い局面では、財政政策を活用して経済悪化を緩和することが求められる。

欧米の政策当局は、現在の経済状況を踏まえて、財政政策の発動を決定しているが、妥当な判断である。経済状況を無視して、やみくもに財政収支改善を追求する「財政再建原理主義」が間違った政策姿勢であったことを、改めて確認しておく必要がある。

日本銀行は、これまで金利引き下げ政策に慎重なスタンスを維持していたが、10月31日の政策決定会合で0.2%ポイントの利下げを決定した。世界の主要国が利下げ実施で足並みをそろえるなか、日本円の急激な上昇、原油価格等の一次産品価格の急落の環境を踏まえれば、妥当な決定を示したと言える。

9月の全国消費者物価上昇率は生鮮食品を除くベースで前年同月比2.3%を記録したが、円高と原油価格急落を踏まえれば、インフレが加速するリスクは存在しない。

追加的な金融緩和政策の経済効果は限定的であるが、政策スタンスを明示して景気心理を鼓舞するとの目的、利下げのシグナル効果を重視するなら、追加的な金融緩和政策が示される可能性は残存する。ゼロ金利政策、量的金融緩和政策の発動は、今後の政策メニューとして温存されていると考えておくべきだ。

麻生政権は財政政策発動を示しているが、政策の腰が定まらず、大きな効果を期待できない状況に陥っている。5兆円の真水を含む追加景気対策が決定されたが、補正予算案の国会提出時期が定まっておらず、機動性を欠いている。

景気対策の目玉は2兆円の給付金支給だが、総選挙向けの利益誘導政策であることが明白で、場当たり政策の典型だ。所得制限についての閣僚発言はばらばらで、政権の体をなしていない。

膨大な事務経費がかかることも「無駄ゼロ政策」などの掛け声と完全に矛盾するものだ。しかも、麻生首相は3年後に消費税増税することを明言した。一人1万2000円の給付金を得ても、3年後に消費税大増税が実施されると考えれば、給付金は完全に貯蓄に向かうだろう。政策対応のちぐはぐなさだけが際立っている。

時代は「市場原理主義」=「新自由主義」=「弱肉強食奨励」=「格差社会創出」指向から、「セーフティーネット重視」=「生存権重視」=「福祉社会創出」指向に大きく転換しつつある。米国大統領選挙は米国国民が“CHANGE”を求めていることの表れである。

財政政策を活用するのなら、新しい政治の方向を示す形で政策を決定するべきだ。人間性と生存権を重視し、すべての国民の幸福を実現するために、①労働行政の規制強化、②教育の機会保証、③国民皆健康保険の拡充、に重点を置くべきと考える。

消費税増税を検討する前に、特権官僚の天下り根絶を実行するべきだ。麻生政権の対応を見ると、地方出先機関の整理と、一般公務員の不祥事争点化ばかりが目立つが、それ以前の問題である、天下り根絶に取り組む姿勢はまったく示されていない。

日本の金融機関のサブプライム金融危機からの影響は相対的には軽微である。個別には、リスクの高い投資行動を採用した結果として財務状況が大きく悪化している機関もあるが、こうした事例に対しては、自己責任を基軸に対応策を検討すべきである。

直ちに日本の金融システムがぐらつくリスクは限定的であり、新しい時代に適応する政治体制の確立が、現時点での最優先課題だ。理念も不明確なバラマキ型の財政政策発動で貴重な財源を浪費することを回避するべきだ。

マスメディアの大半が政権の顔色を見ながら、選挙日程に関する世論誘導を実行しているように見えるが、上述した状況を踏まえて、12月解散、1月総選挙の日程を固める正当な政治日程確定に向けての論議を高めるべきである。

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本ブログアクセス禁止措置についての考察   (その2)

本ブログがココログよりアクセス禁止措置を受けたことについての専門的な立場からの考察論文を鬼頭栄美子弁護士よりご寄稿いただきました。第2回掲載分を掲示させていただきます。第1回掲載分と合わせてご高覧賜りますようご案内させていただきます。

<植草氏ブログ「知られざる真実」、アクセス禁止措置についての考察(その2)>

弁護士 鬼頭栄美子

ブログ主催者が、新聞記事等を利用する場合、一つ一つ利用許諾を得ればよいとの主張・見解がある。

しかし、営利目的の大規模利用を考えているわけでない一般ユーザーにとって、その選択は現実的ではない。インターネット上の情報流通は、即時性が重要である。また、新聞社にとっても、無数のユーザーからの利用許諾依頼に一々対応するのでは、そのコスト負担は過大なものとなるはずだ。現状では、利用許諾云々は、利用拒絶効果を持っていると言わざるを得ない。

毎日新聞社のココログ経由のクレームは、理解に苦しむ。

嫌味を言いたくはないが、かつて、「外務省秘密電文漏洩事件」の際(1971年の沖縄返還協定を巡る日米密約の存在に関して)、「国民の知る権利」を高らかに主張したのは、他でもない、かの毎日新聞社である。

その後の残念な成り行きも承知してはいるが、毎日新聞こそが、先頭に立ち、国民の「知る権利」に奉仕すべく、政府の国民に対する秘密を断固糾弾し続ける大々的キャンペーンを張ったのは、事実である。

あの事件が、取材の自由、ひいては国民の「知る権利」と国家秘密との関係を正面から争った、初の最高裁事件となった事をよもや忘れてはいまい(「外務省秘密電文漏洩事件」 最高裁昭和53531日決定)。

ここで、事実指摘を二つ。
先日(20089月8日)、「植草氏」対「サンデー毎日(毎日新聞社)」の訴訟(植草氏の名誉回復訴訟)において、毎日新聞社が敗訴した。これは、事実。
現在、毎日新聞社は、植草氏に対して控訴している。これも、事実。

しかし、まさか、国民の「知る権利」に奉仕するべく、日本初の一大キャンペーンを行った、栄えある毎日新聞社が、そして、今でも時々、目を引く良質な記事を掲載し続けている毎日新聞社が、そんな事を根に持って植草氏に言いがかりをつけたとは思いたくないのだが、真実はどうなのだろう。何か秘めた事情でもあるのだろうか。
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なお、本稿を書いている現時点においても、植草氏が引用した毎日新聞記事を、そっくりそのまま引用したブログが存在する。植草氏をあだ名で揶揄したブログである。
そこには、全く同様の毎日新聞記事がそのまま全文引用されているが、なぜか、記事削除もされず、アクセス禁止にもなっていない。

ブログ内容ゆえに、削除申し入れをしたりしなかったりするのだろうか。

電柱に、「迷い犬探しています」とか、「家庭教師いたします」とか、相当量ビラ貼りしても、逮捕されたという話は聞かない。
しかし、「政治的内容のビラ」だと、なぜかちょくちょく、軽犯罪法違反で逮捕されてしまったりする。逮捕される事例の圧倒的大半は、「政治的内容のビラ」である。

どちらも、表現の自由(憲法21条1項)の範疇にあるが、その価値からすれば、むしろ、立憲民主政との直接の関わりゆえ、「政治的内容のビラ」についてこそ、規制はより慎重にすべきである。しかるに、実務では逆となっている。
この点、関係者がどのような言い訳をするにせよ、表現内容ゆえに差別的取り扱いをしているのではないか、との疑念を払拭する事は難しい。

同様に、毎日新聞社の対応も、そのブログ記載内容ゆえの差別的取り扱いか、との疑念を生じてしまう。
麻生氏批判内容ブログであったからなのか。それとも、植草氏が相手であったからなのか。あるいは、その両方だったからなのか。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
近年、新聞社は、とみに著作権管理を強化している。
確かに、著作権保護は重要であり、私も賛成だ。

しかし、新聞社の「社会の公共財としての自覚」は、どこへ行ったのか。

植草氏ブログのような、「無料で提供」されている「政治・経済ブログ」が、「公人たる首相の政治姿勢等を批判する論評」をし、その「補完」として、首相言動を、「ぶら下がり取材による新聞報道から引用・掲載」したからといって、新聞社側にとって、いかなる不都合があるというのか。

出所、区分明示はきちんと記載してあり、植草氏ブログを読んだ毎日新聞を購読していないネット・ユーザー達は、「毎日新聞ってやるなあ。いい記事出しているなあ。」と思い、新たな購読者となる可能性だって大きい。毎日新聞社サイトへのアクセス数も、却って伸びるのではないか。
新聞社側から見れば、いわば、無料宣伝してもらったと考える事だってできよう。

「記者クラブ」についてだけ書いたが、日本の新聞社は、「記者クラブ」に加えて、「再販制度」「新聞特殊指定」によって、その既得権益が守られている。

先日(1027)も、河村官房長官が、「新聞の再販制度を維持すべき」と表明した。

普段は、増加するネット利用者に対して、著作権を盾に背を向ける態度を取りながら、いざ、「記者クラブ」「再販制度」「特殊指定」の見直しが問題になったときに、突如、新聞報道の公共的・公益的性格、国民の「知る権利」などの美辞麗句を持ち出し、その美名の陰に隠れようとするのではあるまいか。

インターネットが発達し情報流通が格段に進歩した今日、そのような欺瞞的態度をとるとすれば、新聞社の未来は暗い。

ネット人口増加は、避けようがない。
新聞社としては、ネット利用者との共生を模索していくしか生き残る道はない。徒らに、これを敵視し、著作権で締付ける行為を続けていては、新聞購読者は益々減少していく。

新聞社は、真に「国民の知る権利に奉仕する(博多駅最高裁判決)」べく、「無料ブログ、殊に政治・経済ブログが、新聞報道記事を引用・掲載利用する場合、出所明記、区分明瞭、改変なし、を守る限り、一切自由。」と発言するくらいの度量が必要だ。
そんな新聞社だったら、「株が上がる」だろうに、とつくづく思う。

植草氏ブログ「知られざる真実」は非常に人気が高く、影響は無視できない。
しかし、これは、植草氏ブログだけの問題ではない。
新聞社に、「特権」を与えられた「公共財としての自覚」があるなら、数多く存在する政治・経済ブログの読者全員を味方につけ、購読者増加方針を採用してはどうか。

もし、どこもそんな方針は採らないというなら、
「記者クラブ慣行その他の特権享受は即刻止めてもらい、引用・掲載自由方針を採るネット・ブロガー代表の取材チームを、国民代表として、官邸等の取材に送り込むべきだ。」という意見が、ネット利用者らから噴出する日も近いと考える。

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なお、植草氏ブログ(2008112日)によると、

Nifty,ココログから、「・・・・・期限までに対応を行っていただけない場合には、弊社会員規約に基づき、やむを得ず、弊社側で該当記事を削除させていただきますので、ご承知おきください。」という通知メール(20081028日付)あり、このメール確認をするのが遅れていたところ、なぜか、「その後、期限日時経過とともに、突然、ブログへのアクセス禁止措置が取られ、事後的にブログを閲覧できない状況にしたとの通知がありました。」との事だ。

不可解である。

指定した期日までに何ら状況が変わらなければ、事前にメールで通知した通り、「利用規約を基に、当該記事を削除」するのが、自然な流れであろう。

それをあえて、当初は予定していなかった「アクセス全面禁止処置」を取ったのは、いかなる理由によるものか。何らかの事情変化があったのか。
Nifty
、ココログの誠実な釈明を聞いてみたい。

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*ご注意*
1 本論稿は、ブログ主催者様や皆様に、新聞記事等の無断引用・転載をお薦めするものではありません。
2 本論稿は、新聞記事等の引用・転載が、著作権法違反にあたらないと保証するものではありません。
3 著作権法の解釈については、ご自分の責任と判断で行ってください。
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(以上)

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2008年11月 7日 (金)

本ブログアクセス禁止措置についての考察   (その1-再掲示)

本ブログがココログよりアクセス禁止措置を受けたことにつきましては、多くの皆様に大変ご心配をおかけしております。多くの皆様からありがたいメッセージをいただきました。身に余るご厚情を賜りまして心よりお礼申し上げます。

 「神州の泉」主宰者の高橋博彦様が新たに記事を掲載くださいました。心よりお礼申し上げます。

この問題について、弁護士の鬼頭栄美子先生より専門的な立場からの考察論文をいただきましたので、2回にわたり本ブログに掲載させていただきます。ご高覧賜りますようお願いいたします。以下に第1回論説の全文を掲載させていただきます。

 なお、文章のフォーマットをご寄稿いただいた通りに表示できなかったため、フォーマットを修正した記事を再掲させていただきましたので、ご了解賜りたく思います。

<植草氏ブログ「知られざる真実」、アクセス禁止措置についての考察(その1)>                                          弁護士 鬼頭栄美子

植草氏のブログ「知られざる真実」(Nifty、ココログ)が、「アクセス禁止措置」を受けた事は記憶に新しい。「「逃げ回る」醜態を晒す麻生首相」(20081023日付)と題する評論での新聞記事利用につき、毎日新聞社がクレームをつけた(「ブログ復旧のお知らせ」同月31日付)。
植草氏は当該記事を削除し、ブログを復旧。ご本人は謝罪してこの件を終わらせたが、釈然としないので、私見を述べる。

毎日新聞社の著作権についての意見、また依拠する日本新聞協会の見解(19785月付第351回編集委員会と、1997116日付第564回編集委員会)は、読んだ。

しかし、これはそもそも、対立当事者が述べた一意見に過ぎない。
主権者国民の代表機関たる国会が制定した法律条文であってさえ、後に裁判所によって違憲と判断されるケースは時々ある。
また、この一意見を述べているのは、「第四の権力」と称される「強大な力を持ったマスコミ」である事を忘れてはならない。

一方当事者の意見を、金科玉条の如き「守るべきルール」と考えてしまっては、多くの政治ブロガーに、報道情報の「公正な利用(フェア・ユース)」についてまで、萎縮効果をもたらす虞がある。思わず投稿したくなった所以である。
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そもそも、新聞社の使命は何か。

「報道機関の報道は、民主主義社会において、国民が国政に関与するにつき、重要な判断の資料を提供し、国民の「知る権利」に奉仕するものである。」(博多駅事件。最高裁昭和441126日大法廷決定)
この根っ子を、肝に銘じなければならない。

権力は常に腐敗する。
腐敗する権力を監視し、警鐘を鳴らすのが、新聞社の使命である。

「表現の自由」(憲法21条1項)が最大限の保障を受ける最も重要な理由は、「立憲民主政(国民が政治的意思決定に関与する)と密接不可分の関係にある」からに他ならない。

ブログ等により一般国民が情報の送り手となる事が一定範囲で可能となった現在と雖も、「政治」に関する「情報入手」は、マスコミの力を借りずには、ほぼ不可能である。

日本においては、他国に類を見ない、日本特有の「記者クラブ」慣行がある。
これにより、大手マスコミは、特権的・独占的に情報を入手している。
大手マスコミは、自らがこの特権的地位を享受している存在である事を、忘れてはならない。

(記者クラブとは、首相官邸、省庁、地方自治体、警察等に設置された記者室を取材拠点としている、特定の報道機関の記者らが集まった取材組織の事を言う。記者クラブ会員のみが、独占的に情報を入手できる特権を得ている。)

「記者クラブ」は、被取材者と取材者との間に馴れ合いを生じ、癒着が生じやすい。
これでは、権力を監視するという新聞社に課せられた使命が全うできず、政府発表の無批判報道や、官庁情報を早く取ってくるだけが仕事になりかねない危険を孕む。

勿論、記者クラブ・メンバーといえど、気骨のある記者は少なくない。
例えば、ある首相番記者(北海道新聞記者)は、麻生首相に対し、突っ込み質問をしている。 アッパレと言いたい!

今回、植草氏がブログに引用・転載した記事は、国民に知らせるべき、「麻生首相の言動」事実について、上記記者がぶら下がり中に、首相に突っ込み取材したやり取りを中心とするものであり、また、公人たる首相の訪れたホテル・レストラン名、回数といった客観的事実も記載されていた。毎日新聞記者も首相の動きを丹念に伝えている。こちらにも、気骨ある記者らがいるに違いない。

権力に対して、新聞社のとるべき姿勢とは、どういうものか。
この「事の本質」を捉えていれば、そもそも、著作権だ何だと難癖つける話ではない。
それどころか、当の気骨ある首相番記者らは、無修正での好意的な引用・転載を、評価してくれているのではないかとさえ思う。
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ついでなので、著作権法についても、軽~く、述べておく。

「著作物」とは、そもそも、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」(法第2条1号)

「思想又は感情を創作的に表現」とあるので、新聞記事の場合、その全てが、「著作物」として著作権法の保護を受けているわけではない。
小説、音楽、舞踊、絵画、写真といった創作的表現は、「著作物」を例示した10条1項の具体的例示として挙げられているが、新聞記事は、具体的例示として挙げられてはいない。

「著作物か否か」の判断は容易に思えるかもしれないが、そうでもない。

これに関連し、読売新聞社の「著作物」主張が、東京地裁知財高裁の両方で、否定された重要判例がある(「記事見出し事件」)。

「著作物か否か」といった単純そうな論点一つとっても、新聞社の主張が失当である(正しくない)、と司法判断された事実が存在する。この事は、しっかりと記憶しておきたい。

(東京地判平成17324日)

(知財高判平成17年10月6日)

デジタルアライアンス社は、「業界の巨人」相手によく闘った。

http://linetopics.d-a.co.jp/linetopics/main/kenkai2.htm

しかし、同時に、次の指摘もしておきたい。

近年、関連団体からの著作権保護強化主張の高まりを反映してか、「著作物」(著作権法第10条1項)概念の解釈については、拡大方向での下級審判決が積み重ねられている。

そして、著作権法の保護対象とならないとされる「事実の伝達に過ぎない雑報及び時事の報道」(法10条2項)については、極めて縮小的に解釈されているのが現状である(例えば日経新聞事件。東京地判平成6年2月18日)。

著作権保護強化それ自体が悪いわけではない。

しかし、わが国著作権法は、頻繁に改正されてはいるが、骨格が古く、著作権の権利制限に関し、「個別列挙方式」を採用しているため(法第30条乃至第50条)、インターネット社会に対応できていない。

この状況下で、著作権保護のみに力を注ぐとバランスが崩れ、「公正な利用(フェア・ユース)」として許されるべき行為が、形式的に違法とされかねない事態を招く。

この点、20081029日、政府・知的財産戦略本部のデジタル・ネット時代における知財制度専門調査会は、「公正目的であれば著作物の利用許諾を不要」とする「日本版フェア・ユース規定」(一般的権利制限条項)を導入する方針を提言した。

(「フェア・ユース規定」とは、著作権侵害に対する抗弁の一つ。著作権者に無断で著作物を利用しても、その利用が「フェア・ユース(公正な利用)」に該当すれば、著作権侵害にならないとされる一般的権利制限条項である。アメリカなどで採用されている。
いかなる場合に「フェア・ユース(公正な利用)」に該当するかは、判断指針としては、①当該使用の目的及び性質、②当該著作物の性質、③使用された部分の量及び本質性、④当該著作物の潜在的市場又は価値に対する当該使用の影響などが、あげられる。)

この法理については、最終的には、個々のケースについて裁判所が総合判断することになるため、予見可能性に問題があり、紛争の訴訟化を招きやすいとの批判もないではない。

しかし、植草氏の場合に当てはめて考えるに、①商業的利用ではない(商業的利用でも、フェアと判断される事例は多い)。政治・経済評論である。植草氏はこれにより経済的利益を得ていないこと、②利用した表現物が、ネットでも公表されている新聞記事であり、その内容は、公人たる首相言動であったこと。国民の知る権利との関係で、むしろ、その情報流通が奨励される方向性を持つ、③当日の新聞記事全部をごっそり転載しているわけではない。あくまでも、首相批判に必要な首相言動部分の記事のみを利用していること、④植草氏の新聞記事利用により、毎日新聞社は損失を蒙っていないこと、が指摘できる。

以上から、「フェア・ユース規定」があれば、植草氏に対する今回の毎日新聞社のクレームは、フェア・ユース抗弁により一刀両断にされていたと考える。

なお、「フェア・ユース規定」導入までの過渡期である今日、判例においても、形式的解釈をすれば違法と判断されてもおかしくない事例において、著作物の「公正な利用」と判断される場合、(1)「複製」文言の解釈を工夫したり(「書と照明器具カタログ事件」 東京高判平成14年2月18日)、(2)「権利制限規定」を柔軟に解釈したり(「市バス車体絵画事件」 東京地裁平成13725日)して、結果の妥当性を図っている(後記する*1)。

これらはいずれも、著作者の許可がないばかりか、植草氏の記事利用と異なり、著作者表示さえもなされずに、著作物が利用された事件である。更に、植草氏ブログの場合と異なり、著作物が「商業的利用」されたケースでもあった。

「過渡期における現行法の解釈方向としては、「著作物」(法第10条)概念の歯止めなき拡大解釈は控え、また、権利制限規定(法第32条)は柔軟に解釈するなどに留意すべきである。また、事案によっては、権利濫用法理(民法1条3項)等の一般条項の活用も考え、妥当な結論を導くべきである。」

以上を踏まえ、植草氏の新聞記事利用について、検討する。

1 当該新聞記事の著作物性(法第2条、第10条等)
私見では、著作物性を否定するべき単なる事実伝達と考えるが、ここでは仮に、引用・転載した記事が「著作物」であったと仮定して、次を検討する。

2 権利制限規定(許される利用)
「公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。」(法第32条1項)

リーディングケースであるパロディ事件最高裁判決(最判昭和55年3月28日)判決によると、引用が許される要件は、次の通り。

A 「公表」された著作物である事(32条1項)
B
 引用目的上、正当な範囲内である事(32条1項)
C
 出所(引用元)を明示している事(48条1項)
D
 自分の著作部分と、明瞭に区分されている事(パロディー事件最高裁判決)、
E
 主従関係。自分の意見部分の方が、主である事(パロディー事件最高裁判決)、
F
 著作者人格権侵害態様の引用は許されない事(パロディ事件最高裁判決)、
G
 同一性保持権を侵害する改変は同意なき限り許されない(20条1項)

植草氏ブログの場合、
A
は、新聞及びネット公表済み記事ゆえ、問題なし。

Bは、「「逃げ回る」醜態を晒す麻生首相」と題し、首相の政治姿勢批判等を書き、その一環として当該記事を引用・転載。自論を補強したのであって、無関係の記事を転載したわけではない。
したがって、十分な関連性、必然性を有し、「目的上正当な範囲内」と考える。
Cは、「毎日新聞20081023日東京朝刊」と出所記載明示があり、問題なし。
Dは、「転載する」で始まり、「ここまで転載」と終了。区分明瞭ゆえ、問題なし。
Eは、藤田画伯絵画複製事件が著名(東京高判昭和601017日)。詳細省略するが、植草氏意見部分の方が分量(行数)も多く、記事部分は付従的に過ぎない。
したがって、「主従関係要件」も満たす。
Fは、人格権侵害が問題となっていないので、問題なし(パロディ事件は、モンタージュ写真事件ゆえ、F要件が問題となったに過ぎない)。
Gは、記事の改変は全くしていないので、問題なし。

以上から、本件は、上記ABCDEFG全ての要件を満たしており、植草氏の引用・転載は、著作権法上、何ら問題なかったと考える。

また、植草氏の行為が、同法113条所定の「著作権等侵害とみなす行為」のいずれにも該当しないことは言うまでもない。

なお、「一部引用は良いが、全文引用は駄目」の例として、東京地裁平成12229日判決がある。これは、無断で、中田英寿選手の中学時代の文集の詩を全文掲載し、写真も含めて出版したケースで、今回の植草氏ブログの件とは全く異なる。

また、「正当な範囲内を逸脱した引用」の例として、東京地裁平成7年1217日判決がある。これは、「最後の二ページのあとがき以外は、全て他人の著作物を集めただけの書籍」であり、今回の植草氏ブログの件とは全く異なる。

なお、植草氏の場合、新聞紙面をスキャナーで読み取って、ブログ上に再現したわけではない。文字情報を書いたに過ぎない。紙面のスキャナー読み取りであれば、記事配置、紙面づくりといった新聞社の創作的努力をそのまま利用する事になるため、著作権違反と認められ易くなる。しかし、植草氏のケースは、紙面配列は何ら関係していない。

12条関係については、紙面配列等の創作性を理由に新聞の編集著作権侵害主張が認められたケースがある(ウォール・ストリート・ジャーナル事件。最判平成7年618日)。
これは、ウォール・ストリート・ジャーナル新聞のほとんど全ての記事が、無断で和訳、紙面割付順序もほとんど一致した配列に作成され、頒布された事案であり、今回の植草氏のケースとは全く異なる。

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/905AD229B693D05449256A7600272B76.pdf

以上から、植草氏の行為は著作権法違反に該当しないと考える。

(*1)

(1)の判例
室内照明器具カタログに採録された部屋の写真中、床の間かけ軸の著名な書家の書が写されていた事案。書の「複製」が問題となった。

判例は、「複製」(法第2条1項15号)文言につき、形式的判断を避け、厳格かつ柔軟な解釈により、当該行為は、「複製」に該当しないと判断した。
「書と照明器具カタログ事件」 東京高判平成14年2月18)。

(2)の判例
画家が車体に絵画を描いた市バスの写真が、幼児向け書籍に掲載され、販売された事案。当該行為が、法第46条によって許された「著作物の利用」に該当するかが問題となった。

判例は、公開の美術著作物の利用に関する権利制限規定(法第46条)を、極めて柔軟に解釈し、形式的判断を避けて、これを許された利用行為と判断した。
「市バス車体絵画事件」 東京地裁平成13725)。

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*ご注意*
1 本論稿は、ブログ主催者様や皆様に、新聞記事等の無断引用・転載をお薦めするものではありません。
2 本論稿は、新聞記事等の引用・転載が、著作権法違反にあたらないと保証するものではありません。
3 著作権法の解釈については、ご自分の責任と判断で行ってください。
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その2に続く)

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2008年11月 6日 (木)

日米株価反落と金融機能強化法審議への監視

10月24日に発行した『金利・為替・株価特報2008年10月24日号』(077号)タイトルを「木枯らし前の小春日和に惑わされるな」とし、第1節「急落した日米株価」に次のように記述した。

「2008年7-9月期の金融機関決算が発表されて、株価は急落した。各国政策当局は10月10日から11月15日にかけて、あらゆる政策努力を示すと考えられる。巨額の公的資金も用意され、使われるだろう。金利引き下げと財政政策発動も迅速に決定されると考えられる。

10月下旬から12月初旬にかけて、金融市場は小康状態を取り戻す可能性がある。世界の株価が10-15%程度、反発することもあり得ると考える。

しかし、中期的な楽観は許されないと思う。季節で言えば、厳冬はこれから到来するのではないか。政策当局の対応により、一時的な安定がもたらされても、春が到来するのではないと思う。小春日和とは、木枯らしが吹く前に、春でも来たかのような穏やかな天候が訪れることを言う。小春日和につられて、冬仕度を中止すると、厳冬の到来に対応できない。先行き警戒感を緩めぬことが求められる。」

NYダウは10月27日に8175ドルまで下落し、2003年4月1日以来、5年7ヵ月ぶりの安値を記録した。日経平均株価は10月27日に7162円と1982年10月7日以来、26年ぶりの安値を記録した。

10月29日に日銀の利下げ観測が報道され、内外株式市場で株価が反発した。NYダウは11月4日に9625ドルに反発、日経平均株価は11月5日に9521円に反発した。安値からの上昇率はNYダウが17.7%、日経平均株価が32.9%に達した。

しかし、11月5日、NYダウは前日比486ドル安の9139ドルに、11月6日、日経平均株価は前日比622円安の8899円に反落した。急ピッチの株価反発に対する警戒感が強まったことが背景であると考えられる。

11月14、15日に米国ワシントンで20ヵ国による首脳会議が開催される。首脳会議に先行して13日には財務相会議が開催されることになった。首脳会議は米国のブッシュ大統領が主催者であるが、米国では11月4日の選挙でオバマ民主党上院議員が次期大統領に選出されることが確実になった。首脳会議にオバマ次期大統領が出席するかどうかがひとつの焦点だが、現段階では流動的である。

11月7日には10月米国雇用統計が発表される。米国経済は2008年7-9月期にマイナス成長に転落したが、2009年1-3月期までマイナス成長が持続するとの見通しが有力である。

デリバティブ金融商品の一類型であるCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)市場だけでその規模は60兆ドル(約6000兆円)に達しており、デリバティブ金融バブル崩壊に伴う金融機関損失が最終的にどこまで拡大するかは、現段階で特定されていない。

米国政府は10月3日に成立した金融安定化法によって7000億ドルの公的資金枠を確保し、そのなかの2500億ドルを資本増強に充当することを決定した。また、政府系住宅金融公社(GSE)支援に2000億ドル、保険会社AIG救済に850億ドルの公的資金を活用することをすでに明らかにしている。

合計1兆ドルを超す公的資金枠を確保して金融危機に対応する姿勢が示されているが、金融市場の不安心理は消滅していない。

日本でも金融機関の資本増強策として、期限の切れた金融機能強化法を改正する法案が国会で審議されているが、金融機関の責任追及と金融システムの安定確保とのバランス確保についての国会での同意が成立していない。

日本の場合、民主党を中心とする野党は、農林中金と新銀行東京に対する監視を強化することを強く求めている。農林中金はJAバンク(旧農協)、各都道府県の信用農業協同組合連合会(信連)を下部組織に持つ系統金融機関の中央組織であり、歴代理事長に農水省事務次官経験者が就任する官民癒着を象徴する金融機関である。また、自民党の有力な支援組織としての性格も備えている。

農林中金は系統金融機関から預託された資金の多くを内外の有価証券で運用する代表的な機関投資家のひとつである。1992、93年に問題になった住宅金融専門会社(住専)の不良債権処理では、6850億円の公的資金を農林系金融機関に投入することが大きな政治問題になった。

米国の金融危機で焦点となっている政府系住宅金融公社(GSE)のファニーメイとフレディマックが発行、保証する債券は5.9兆ドルに達しており、米国財務省証券発行残高を上回っている。米国金融危機の中核がこのGSE経営危機にあると言っても過言ではない。

農林中金は日本で最大のGSE債券保有金融機関である。2008年6月段階で保有債券の額面は5.3兆円に達している。11月6日の日経新聞報道によると、農林中金は2009年3月期通期決算の経常利益予想を当初の3500億円から1000億円程度に引き下げるもようである。また、2009年9月中間期の経常利益は200億円程度に激減する見通しである。

農林中金は米国の金融危機が表面化した当初から、日本の金融機関でもっとも大きな打撃を受けることが予想されてきた金融機関である。ハイリスク・ハイリターンを追求する投資行動を展開し、その結果として巨額損失が発生する場合、その責任は当事者である金融機関自身に帰せられるべきであることは当然だ。

自民党は総選挙で有利な結果を得るために農林系金融機関への責任追及なき公的資金投入をごり押ししようとしていると見られるが、こうした公的資金投入は金融機能強化法の基本目的から逸脱しており、まったく正当性を有していない。

また、新銀行東京については、設立当初より、政治家による融資斡旋の不透明性が指摘されており、現在捜査が行われている詐欺事件に象徴される、不祥事がまだ多く残されているとの見方も強い。

先の都議会では新銀行東京の損失を穴埋めする追加出資が与党の賛成多数で強行されたが、さらに損失が拡大している。新銀行東京の経営危機は米国の金融危機とは独立した重要な問題であり、金融危機対応に名を借りた公的資金投入が認められるはずがない。

農林中金に対する公的資金投入について、国会の事前承認を求めること、新銀行東京を金融機能強化法の対象から外す、との野党の要求は当然であり、政党である。

自公政権は11月6日に法案を衆議院で通過させたが、参議院では野党が主導権を握り、法案が修正される見通しである。麻生政権が金融システム安定と金融機関の自己責任の両者を重要視するなら、参議院で修正される法律案を承認するべきだ。

麻生政権が金融危機への対応を総選挙に向けての利益誘導策に悪用するとの姑息な姿勢に固執して、野党が求める正当な法案修正を拒否するなら、11月14、15日の首脳会議までに、日本の資本増強政策を確定することは困難になる。

金融システムの安定確保と、適正な責任追及の両立は、今回の世界規模の金融危機を打開するうえで、どうしても解決しなければならない関門である。欧米でも金融危機の切迫感が強まり、責任追及を伴わない公的資金活用が横行している傾向が強いが、最終的には、両者が満たされる問題処理スキームが示されなければ、危機対応策は立ち往生することになるだろう。

各国政策当局は財政・金融政策を総動員して世界経済の悪化緩和に注力することになる。こうしたマクロ経済政策と公的資金を活用した金融システム安定化策の全面的な発動により、危機は回避されることになると考えられるが、本格的な公的資金活用が認められるためには、責任ある当事者の責任追及が不可欠でなる。この問題が現段階では解消されていない。

日本政府は首脳会議で日本の外貨準備の流用を求められる可能性があるが、安易な協力を約束することは許されない。外貨準備の源泉が国民の税金であるにもかかわらず、現状では外貨準備に対する国会の監視が十分に行き届いていない。政府・財務省の一存で外貨準備の取り扱いを決定する法的正当性は存在しない。政府・財務省の独断による外貨準備の流用は財政法に違反する行動だと考えられる。

今後の金利・為替・株価の見通しについては、『金利・為替・株価特報2008年11月8日号』に記述する。内外株式市場は12月にかけて安値圏内でのもみ合いを示す可能性が高いが、2009年に向けての中期的な展望を的確に保持することが重要である。

金融機能強化法改正論議は、やや専門性の高い法案審議だが、金融問題処理における極めて重要な問題を内包している。与党が数の力によって、不正と欺瞞に満ちた法案成立を強行することを断固阻止しなければならない。

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2008年11月 5日 (水)

“CHANGE”を求めた米国民によるオバマ大統領選出

11月4日に実施された米国大統領選挙で、民主党候補のバラク・オバマ上院議員が圧勝した。オバマ氏は2009年1月20日に第44代米国大統領に就任する。副大統領にはジョゼフ・バイデン上院議員が就任する。米国史上初めての黒人大統領が誕生することになった。

大統領選挙と同時に実施された議会選挙でも民主党は共和党に圧勝し、上下両院で民主党が過半数を確保する状況が維持されることになった。民主党は2001年以来、8年ぶりに政権を奪還する。

世界情勢、世界経済は時代の転換点を迎えている。サブプライム金融危機は市場原理主義=新自由主義の終焉を象徴する事態である。弱肉強食奨励=弱者切り捨ての経済政策運営に対して、米国でも明確に“NO”の意思が国民から表明された。

弱肉強食の政策姿勢は米国の外交をも規定した。米国は突出する軍事力を背景に、正当性の乏しいイラクへの軍事侵攻を強行した。イラクへの軍事侵攻が米国の軍事産業、石油産業、政権の癒着から推進されたことは明白だった。

市場原理主義=弱肉強食奨励から、セーフティネット重視=所得再分配重視に、米国の政治思潮が大きく旋回していることが明らかになった。議会と政権の「ねじれ現象」が米国で解消された。時代の転換と100年に1度の金融危機に直面する米国は、大統領選挙と議会選挙を実施して、本格政権を構築した。

国民の意思を反映した本格政権樹立により、新たに発足するオバマ政権は、抜本的で大胆な政策を実行することができる。日本では、総選挙を恐れる麻生首相が、金融危機に直面するなかでの国政選挙は政治の空白を作るとの詭弁を弄して、総選挙を先送りしているが、国政選挙で本格政権を樹立することが、はるかに優れた選択であることは明白だ。

政治のキーワードは“CHANGE”である。米国大統領選挙は時代が根本的な転換を求めていることを証明した。

日本の政治状況が米国に連動する可能性は極めて高い。

日本ではブッシュ政権が発足した2001年に小泉政権が発足した。小泉政権は市場原理主義=新自由主義を基軸に定め、弱肉強食奨励=セーフティネット破壊の経済政策を推進した。

米国がイラクに対する軍事侵攻を決定した際、小泉政権は直ちに米国の対応を支持する見解を表明した。強いアメリカに隷属する、対米隷属が小泉政権の基本方針だった。

小泉政権以来の市場原理主義=新自由主義の経済政策が日本社会を根底から変質させた。非正規雇用労働者が労働者の3分の1を占めるようになり、年収が200万円に届かない働く貧困層がやはり労働者の3分の1に達している。

また、高齢者、障害者、母子世帯に対する冷酷な政策が強行実施されてきた。その一方で、官僚利権だけは完全擁護する姿勢が貫かれ、特権官僚の「天下り利権」は完全に温存されている。

市場原理主義からセーフティネット重視への基本方針の転換、官僚利権の根絶、対米隷属外交から自主独立外交への転換、これらの根本的な“CHANGE”が求められている。

日本の次期総選挙で野党が過半数を確保し、政権交代を実現すれば、日本でも衆参両院の「ねじれ現象」は解消される。政権を生み出す政党と議会多数党は一致して、政策運営における混乱は回避されることになる。

新しい時代に直面し、政局が混乱しているなら、総選挙を実施して、政治の体制を刷新することが賢明である。日本の国民も“CHANGE”の必要性を痛感している。米国大統領選挙は、日本国民の潜在的な意識をはっきりと表出させる効果を発揮することになるだろう。

巨額の財源を使用して中途半端なバラマキ経済政策を決定する前に、新しい時代に対応する政治体制を選択する機会を国民に提供することこそ、麻生政権に課せられた最優先の役割だ。

「総選挙を経て初めて天命を担うことになる」と言い切った麻生首相は、いつまでも総選挙から逃げ回るべきでない。総選挙で自民党が敗北することがあろうとも、それが国民の選択であるなら、麻生首相が私的な利害で流れに抗うことは正当ではない。

世界経済、日本経済が根源的な分岐点に立っているからこそ、総選挙が求められている。米国大統領選挙、議会選挙の意味を再確認し、日本も早急に本格政権を樹立して新しい時代に対応するべきだ。

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2008年11月 4日 (火)

「世界の片隅でニュースを読む」への返信

11月3日付記事「フジテレビ「サキヨミ」の偏向報道」について、意見が提示されているので、補足説明を示したい。指摘を受けた内容に同意できる部分もある。私の主張の中心は「特権官僚の天下り利権の根絶」にある。天下り機関そのものをすべて廃止すべきとは考えていない。セーフティネットを強化する政策の財源を明示することが求められており、その重要な財源候補のひとつとして、「天下り」利権を維持することを目的とした政府から天下り機関への国費投入の削減をあげられると考えている。

私の主張は、「特権官僚の天下り利権を根絶し、そのことに伴って削減できる政府支出が大規模に存在する」というものである。

しかし、この主張と天下り機関の原則廃止との間には隔たりがあり、天下り機関の原則廃止を示している民主党の主張に同意したとみなせる私の記述は誤りであり、この点については、記述を撤回するとともに、お詫びしたい。

「小さな政府」の表現は誤解を生みやすいことを認識している。11月3日付記事においても、「小さな政府論に賛成する」とは一切記述していない。

以前、kojitaken」氏が、問題点を指摘され、私は本ブログで、この問題について説明をしている。詳しくは

9月8日付記事「「良い小さな政府」と「悪い小さな政府」」

9月9日付記事「民主党小沢代表が「平成維新」基本政策を発表」

を参照いただきたい。

 9月11日付記事の記述のうち、「小さな政府」に関する部分を再掲する。

Kojitakenさんは、所得再分配機能を重視する政策を取るのであれば「小さな政府」では無理ではないかとの趣旨の指摘をされましたが、ご指摘の通りだと思います。私は「特権官僚の利権」排除を中心に政府支出の無駄を省く意味での「小さな政府」に賛成しますが、セーフティーネット強化、所得再分配政策強化の意味では、政府の役割は大きくあるべきと考えます。 

これまで、この意味で「大きな政府が望ましい」と記述したことはありませんが、この面での「小さな政府」を望ましいと考えていないことははっきりしております。すべての国民が安心して豊かに暮らすことのできる社会を構築するには、この側面において、ある程度「大きな政府」であることが必要になってくると考えます。ご指摘により啓蒙され、考え方を再整理することができました。感謝いたします。真意を正確に伝えることができるように言葉を選択して参りたいと思います。」

(転載ここまで)

 財政学者マスグレイブによる財政政策の三つの機能に照らすと、「小さな政府」に三つの類型があると言える。

①資源配分上の小さな政府

②所得再分配上の小さな政府

③景気安定化政策上の小さな政府

である。私が主張してきたのは、①「資源配分上の小さな政府」である。言い換えれば、「政府の無駄」を排除することである。問題は、「何が政府の無駄」であるかだ。この点について、私が一貫して主張してきているのは、「特権官僚の天下り利権」である。

 自公政権はこれまで、「政府の無駄」排除を論じる際に、「特権官僚の天下り利権」ではなく、「一般公務員の削減」を主張してきた。これに対して、私は「一般公務員の削減」ではなく、「特権官僚の天下り利権」を撤廃すべきだと主張してきた。本ブログでも、この主張に沿った内容の記事を繰り返し発表してきている。

 独立行政法人、特殊法人については、特権官僚の天下り利権を根絶したうえで、公共サービスとして必要であるか否かの基準に照らして、存続を決定してゆくべきだと考えている。

 公益法人のなかに、霞が関官庁が「天下り先確保」を目的に創設した機関が多数存在することは事実である。仮に「天下り確保」の目的以外に、これらの機関を存続させる公共サービス上の理由が存在しない場合には、こうした機関は廃止するべきだと考える。

 その際にもっとも重要な問題は、そのような公益法人に勤務する労働者の身分保障である。突然、職を失い苦難に直面することを回避するための対策は不可欠である。だが、このことは、こうした機関を永遠に存続させるべきだとの理由にはならない。

 これまでの著書でも記述してきたが、公益法人などのなかに、公共サービスとして必要不可欠で、優良な事業を実施してきている機関が多数存在していることは事実である。これらの、本来必要な公共サービスをしっかり維持すべきことはこれまでも明記してきている。一般国民が便益を享受でき、必要性の高い公共サービスは存続させるべきだと考えている。

 11月4日付記事の主要論点は、麻生首相が一般的に不人気の消費税増税を明言したことを評価する世論誘導を、マスメディアが実行していることに対する批判である。

①増税を提示する前に、政府の無駄の排除が優先されるべきであり、

②政府の無駄排除の最大の標的は「特権官僚の天下り利権」である、ことを主張した。

 これまで、繰り返し記述してきているので、この記事には記述しなかったが、

③「政府の無駄排除」を「特権官僚の天下り利権排除」ではなく、「一般公務員の削減」にすり替えるのは誤りである、

との主張も維持している。

 私が民主党提案を評価しているのは、これまでの自公政権が「政官業外電の悪徳ペンタゴン」の利権維持を優先し、「市場原理主義」=「弱肉強食奨励」=「新自由主義」=「セーフティネット破壊」を基軸に据えた政策を推進してきたのに対し、民主党が、「所得再分配重視」=「セーフティネット強化」の方向に明確に舵を切っているからである。

 「所得再分配機能」に対するスタンスの差が「小さな政府」についてのスタンスを示すとすれば、民主党の政策は明らかに「大きな政府」志向である。「所得再分配機能の重視」、「生存権の重視」の基本方針が明確に示されていると考える。

 私は持論として、今後の政治の方向として、

①セーフティネット強化、

②官僚利権根絶、

③対米隷属を排した自主独立外交、

の三つを提示し続けている。

 民主党の政策が完全であるなどとは考えていない。しかし、現実の政治状況を改善することを目標に定めた時、現状では民主党を軸に野党が結束して、まずは政権交代を実現することが重要だと考えている。

 野党内に意見の相違があることは十分に認識している。しかし、その相違を際立たせて野党内での対立を拡大させることは、自公政権を利するだけである。

 現状では、小異を残して大同につき、政官業外電の利権互助会による利権政治に終止符を打つことに総力を結集すべきだと考える。すべての国民の生存権を重視し、すべての国民の幸福を追求する政府を樹立するための、第一歩を印すことがまずは最重要だと考える。

 11月4日記事に、

「民主党も将来の消費税増税の必要性を否定していない」

「人口構成の高齢化が進行するなかで、ある程度の社会保障水準を維持するには国民の負担増加が避けられない」

と記述したが、私が消費税増税に賛成するとは一切記述していない。所得再分配機能を重視して、政府からの支出を拡充するには、必ず財源が必要になる。

 共産党は累進課税による所得税および法人税で、社会保障財源をすべて賄うべきだと主張し、消費税を全面的に否定している。わたしは、所得税による所得再分配、法人税の重要な役割を否定しないが、この二者ですべての社会保障財源を賄うことには懐疑的である。

 所得税の場合、所得の捕捉が不完全であると、税を負担する能力と現実の税負担に大きなかい離が生じてしまうとの大きな欠陥が存在している。非課税品目をきめ細かく定め、所得の少ない国民に消費税を還付する制度を導入して、消費税を活用することも選択肢の一つであると考えている。また、スタート時点での条件をならす意味での相続税の重視も検討するべきと考える。

 いずれにせよ、将来の税負担のあり方について、現段階で確定した提案を私はまだ固めていない。11月4日付記事で、「民主党が将来の消費税増税を否定していない」と記述したのは、自民党の民主党批判の中心が「民主党は財源問題をしっかりと考えておらず、無責任である」というものであり、その点を否定するためである。

 将来の税負担のあり方を論じるための時間は十分に存在する。自民党が3年後の消費税増税を明確に打ち出したのは、「天下り」を中心とした官僚利権を温存することを前提としているからである。私は将来、消費税を増税すべきとの結論を有していない。現行所得税制度の問題点を検証するなど、行うべき課題が残されており、時間をかけて結論を得てゆくべきだと考える。

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金融機能強化法改正論議を厳重に監視しよう

金融機関に公的資金を資本注入する金融機能強化法改正案が11月5日にも衆議院の財務金融委員会で採決され、与党多数で可決される見通しが広がっている。民主党は農林中金に関して資本注入前の国会承認を要求、「新銀行東京」については、改正法の対象外とするよう主張したが、自民党は特定金融機関の狙い撃ちは認められないとして、法案修正を拒絶している。

9月下旬以降、本ブログをご紹介くださり、また、貴重なコメントをいただきましてありがとうございます。大変遅れましたが、一部ご紹介させていただき、お礼申し上げます。

カナダde日本語様、生き抜く力様、晴天とら日和様、チラシの裏様、BLOG版「ヘンリー・オーツの独り言」様、kobaちゃんの徒然なるままに様、飄(つむじ風)様、カイザルのものは、カイザルへ様、目からウロコの、ホンモノ探し様、植草一秀氏の事件様、株式日記と経済展望様、自公政権打倒のために集まろう様、格差階級社会をなくそう様、Japonesian Trans-Apocalypse:Trans-Modern New Platonic T ...様、サラリーマン活力再生様、『海舌』 the Sea Tongue by Kaisetsu様、タクシードライバーの資格(司法書士&社労士)挑戦日記+α様、_~山のあなたの空遠く幸い住むと人のいう~様、いつも記事をご紹介くださり、また貴重なコメントを賜り、ありがとうございます。

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農林中金は自民党の有力な支持組織の一つであり、歴代理事長職は農水省事務次官経験者の天下りポストになっている。政官の癒着構造、官僚利権温存の代表事例の一つである。11月2日付記事「金融機能強化法改正での不正を許すな」に記述したように、農林中金は経営危機が表面化した米国政府系住宅金融公社(GSE)ファニーメイ、フレディマックの債券の、日本最大の保有金融機関である。

また、農林中金は各都道府県の信用農業協同組合連合会(信連)および、JAバンクを下部組織に有する系統金融機関の中央組織である。個別JAバンク、都道府県信連のいずれも、政治と密接な関わりを有している。

また、新銀行東京は石原慎太郎都知事の積極的な誘導によって設立された銀行だが、無担保無保証融資が大規模に焦げ付き、巨額損失を生み出している金融機関である。

米国発の金融危機が日本に波及し、日本の金融システムを混乱させることを回避することは重要だが、個別の経営責任に基づく財務状況の悪化を、金融機能強化法で手当てするのは筋違いである。自民党は農林中金と新銀行東京を法律から除外することに抵抗しているが、このことが、自民党が二つの金融機関に公的資金を投入して救済しようとする意向の表れであると推察することができる。

日経平均株価が9000円台を回復して、国内金融市場は混乱一服の状況を示している。個別問題を抱える、いわくつきの金融機関を金融機能強化法の対象に置き、経営責任を問うことなく公的資金を注入することを認めるべきでない。

「危機」の名に借りて、不正と欺瞞に満ちた公的資金による金融機関救済をこれ以上、認めるべきでない。

今回の金融危機は、「市場原理主義」のいかがわしさを鮮明に示している。市場原理を基軸に据える立場は、個別主体の自由な経済行動を認める一方で、結果に対する責任を当事者に負わせることを基本原則に置く。ハイリスク・ハイリターンの投資行動を実行した主体には、リスクが顕在化して投資行動で失敗した局面で、厳しく結果責任を問わなければならない。

ところが、いざ、失敗が明らかになると、慌てふためいて、政府が公的資金による尻拭いをするのでは、「自己責任原則」など存在しないのも同然だ。「市場原理主義」の底の浅さ、いい加減さが如実に示されている。

結局、「市場原理主義」は、経済強者が経済的利益を極大化するための大義名分にすぎなかったのだと考えられる。「市場原理」を盾に、利益をむさぼり、バブルを謳歌したことと引き換えに、バブル崩壊に際して本来は、結果に対する責任を当事者に負わせなければならないはずだ。

金融機能強化法改正にあたり、農林中金への公的資金投入に国会の議決を求めること、新銀行東京を法律の対象から除外すべき、との民主党の主張は、正当性を備えている。金融危機の名の下に両金融機関への資本投入をどさくさに紛れさせて実行し、金融機関の責任を隠ぺいする、あるいは、金融機関への公的資金投入を政治的に利用することを遮断すべきであるのは当然だ。

法案審議は参議院に移る。参議院では、十分な審議を行い、適正な法案修正を実行するべきである。自民党は、金融危機の下で、野党が法案成立を妨害しているとの誹謗中傷を示す可能性が高いが、与党と野党のどちらが正論を示しているのかを、国民が十分に理解できるように、論点を明確にして国民の前に示す必要がある。

金融システムの安定を確保することは重要だが、経済行動の結果に対する責任を当事者に負わせることも重要なのである。2003年のりそな銀行処理に際しては、政府はりそな銀行の株主責任を一切問わずにりそな銀行を救済した。

実行したのは、政府の経済政策を堂々と批判していた気骨ある経営者を追放し、政府の近親者を新経営陣に送り込んだことだった。りそな銀行はその後、自民党に対する融資を激増させた。

大手銀行の自民党に対する融資残高推移は以下の通りだ。

(年末値、億円、千万円以下を四捨五入)

     02  03  05

東京三菱  5   5   4

UFJ  10   9   8

みずほ  10   9   8

三井住友 10   9   8

りそな   5  24  54

合計   38  54  80

この事実は2006年12月18日付の朝日新聞朝刊1面トップで、「りそな銀行、自民党への融資残高3年で10倍」の見出しを伴ってスクープされた。記事を執筆したのは同社の鈴木啓一論説委員であると見られているが、鈴木氏は前日の12月17日に東京湾に浮かんでいるところを発見されて、「自殺」として処理されたとのことである。事実関係については、確認されていない点も残されているが、一般的にはこのように理解されている。

朝日新聞記事は、他の大手銀行が融資を圧縮する一方で、りそなだけが自民党への融資を激増させたことを指摘。また、この後3大メガバンクが自民への献金再開を準備し、これらの献金がりそな融資の穴埋めになる図式も解説された。記事がもっとも問題にしたのは、りそな銀行が事実上、自民党の私有銀行(機関銀行)化している疑いだった。

「融資」と「贈与」の実質的な線引きは難しい。日本は外貨準備で米国に100兆円の資金を提供しているが、日本政府が米国政府に米国国債を売らないと約束しているなら、100兆円は融資ではなく、贈与になってしまう。

金融機関を介在させる資金詐取が水面下に隠れていることは極めて多い。金融機関が破たんして初めて、不正融資が表面化することも多い。中小企業に対する信用保証は、不況下の中小企業支援策として大きな効果を発揮するが、巨大な資金詐取の温床になりやすい点については、十分な警戒が求められる。

「金融危機」に名を借りた、公的資金の不正流用を見逃してはならない。金融機能強化法改正案に野党が反対するのは当然である。法案審議における争点を明確にして、国民が理解できる説明を十分に示す必要がある。

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2008年11月 3日 (月)

フジテレビ「サキヨミ」の偏向報道

10月26日放送では「対日規制改革要望書」を大きく紹介して驚きを与えたフジテレビ番組「サキヨミ」だったが、11月2日放送では、消費税増税容認へ論議を誘導する著しい偏向が観察された。

11月2日のフジテレビ情報番組「サキヨミ」は、冒頭で麻生首相の消費税増税発言を取り扱った。「ついに「消費税アップ」を明言 麻生首相「よく言った」と、A:思う B:思わない」を視聴者に問いかけ、投票結果が番組時間中に集計して発表された。

問いかけをして、視聴者が番組に対して投票を行う時間に放送された内容は、財務省所管の財政制度等審議会の委員会がまとめた消費税増税を見送った場合の将来シミュレーション結果だった。

シミュレーションでは、財政状況が悪化して、警察への支出が削減され、事件が発生して警察に通報しても警察が現地に到着するのに30分かかることが、ドラマで再現されて放送された。そのほか、地震発生時や不発弾が発見された場合の自衛隊出動も不可能になることが示された。

日本の財政状況が悪化するなかで、消費税増税を実施しなければ、日本の行政サービスは機能不全に陥ることを説明する内容だった。視聴者に麻生首相発言の是非を問いかけて視聴者に投票を呼び掛けている間にこのような内容の放送を行うことが、投票誘導であることは明白である。

このような手法で世論調査が実施されるのでは、調査結果に信頼を置くことなどできない。行政サービスの機能不全を求める国民など存在しない。将来、日本の財政状況が悪化して増税策採用が不可避になった時には増税措置採用がやむを得ないと誰しも考えている。

財政制度等審議会のシミュレーションが紹介された後、同審議会のメンバーである東京新聞の長谷川氏がVTRで登場して、財政審の将来予測が危機をあおっているとのコメントが紹介された。しかし、視聴者に呼び掛けた投票はすでに開始されており、その後まもなく投票が締め切られたから、長谷川氏のコメントを聞いて投票した視聴者は相対的に少なかったはずだ。

公正な投票を行うなら、麻生首相発言に対する賛否両論が紹介されたのちに投票を行うべきである。スタジオに戻ると、タレントのウエンツ氏以外のコメンテーターは麻生首相発言に対して「よく言ったと思う」との評価を与えていた。

政治評論家として出演している時事通信社の田崎氏は、常に自民党の主張をそのまま繰り返している。女性評論家の勝間和代氏、元プロ野球選手の長島一茂氏も同調した。スタジオに反対意見を提示する論客が存在しないのも異常である。

田崎氏は民主党が提言している選挙公約について、財源が明確でないとの発言を繰り返した。また勝間氏は民主党が子ども一人当たり月額2万6千円の子ども手当支給を公約に盛り込んでいることについて、年間4.8兆円の財源が必要で、実現可能性が乏しいとの趣旨の発言を示した。

スタジオは民主党批判のオンパレードである。政治的な中立を定めた「放送法」に抵触する番組内容と言って差し支えないと思われる。

麻生発言を論じる最大の論点は、「国民に不人気の消費税増税を明言したかどうか」ではない。民主党も将来の消費税増税の必要性を否定していない。

最大の論点は、消費税増税の前に「天下り」に代表される特権官僚の利権を排除するかどうかなのだ。視聴者からのメッセージには、「増税よりも無駄な歳出削減を優先すべき」との正論が示されていた。この論点を抜きにした論議はあり得ない。

民主党は、「天下り」機関に年間12.6兆円もの国費が投入されている事実を指摘したうえで、民主党が提示する政策プログラムを実現するための財源を段階的に確保する政策プログラムを発表している。

10月2日の衆議院本会議代表質問で民主党の小沢一郎代表は民主党が提示する政策の財源確保について、明快な説明を示している。「天下り」を根絶し、特殊法人、特別会計、独立行政法人を廃止し、2009年度に8.4兆円、10年度と11年度はそれぞれ14兆円、12年度には総予算の1割の20.5兆円の新財源を生み出すことが示されているのだ。

自民党は「天下り」利権を全面擁護している。特殊法人、特別会計、独立行政法人をそのまま温存して、特権官僚の天下り利権を全面擁護するのだから、新しい財源を見出すことができないのは当然だ。麻生首相の提案は、官僚利権を温存したままで一般国民に巨大な負担を押し付ける消費税増税に踏み切ろうとするものなのだ。この政策姿勢と民主党の政策を同一に論じることが欺瞞に満ちている。

自民党は民主党の提案を批判しているが、それは、自民党側の主張にすぎない。公共電波を占有する全国放送のテレビ番組が、政治問題に関わる重要テーマを取り扱うなら、賛否両論の論客を公平に出演させて、必要な論議を戦わせたうえで視聴者に見解を問う必要がある。

「天下り」制度が政府の無駄な支出の根源に存在している。「天下り」を根絶することによって、膨大な政府系機関を整理することが可能になる。「天下り」を根絶することによって、政府支出の1割程度の歳出削減を実現することは、不可能な政策プログラムではない。

自民党の代弁者をコメンテーターとして出演させるなら、反対意見を提示する論客を出演させなければ、視聴者が正しい判断を下すことは不可能である。次期総選挙での内政上の最大の争点は、①弱肉強食奨励=市場原理主義=弱者切り捨て=セーフティネット破壊=新自由主義の経済政策を踏襲するのか、と、②官僚利権温存=官僚主権構造を維持するのか、である。これと、③対米隷属外交を維持するか、という外交上の論点が争点になる。

フジテレビ番組の「国民に不人気の政策で、これまで小泉首相、安倍首相、福田首相が明言しなかった消費税増税を麻生首相が明言した」ことを強調する番組作りそのものが、著しく偏った論議の誘導になっている。

財政バランスの健全性維持が重要であり、人口構成の高齢化が進行するなかで、ある程度の社会保障水準を維持するには国民の負担増加が避けられないことを、ほとんどの国民は認識している。

問題は、そのような国民負担増加が避けられない近未来を前提にして、その前に、政府支出の無駄排除をどのように実行するのかなのだ。その問題の中核に「天下り」問題が存在する。「天下り」問題を避けた消費税増税論議はありえない。

番組が集計した投票結果は、麻生首相発言を「よく言ったと思う」との評価が43%、「よく言ったと思わない」が57%だった。これだけの偏向報道を展開しながら、投票者の57%が批判票を投じたことに、所期の目的を達成できなかった番組スタッフは落胆したと推察する。

全国ネットのテレビ放送が、このような政治的偏向に陥っている現実に十分な留意が必要である。「政官業外電=悪徳ペンタゴン」の活動は激しさを増している。正論がはじかれ、利権を維持しようとする断末魔の叫びが勢いを増している。

麻生首相が記者会見で説明した追加景気対策についても、フジテレビ世論調査の結果では、77%が「選挙対策」であると見抜いている。

真実を洞察しようとする国民の視線が従来より強くなっていることが救いだ。麻生政権が延命すれば、官僚利権が温存されたままで、過酷な大衆増税が実施されることが確実になった。国民に過酷な負担を求める前に、巨大な特権官僚の天下り利権を根絶することが先決である。野党は総選挙の明確な争点を丁寧に国民に浸透させてゆかなければならない。

同時に、偏向メディアの偏向放送に対して、適正な批判を提示し、国会でも問題を取り上げることが求められる。

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2008年11月 2日 (日)

金融機能強化法改正での不正を許すな

ブログへのアクセス禁止措置に際しましては、多くの皆様にご心配をおかけしまして、誠に申し訳なく存じます。ココログ様からのメール確認が遅れたことが、ブログ一時閉鎖の原因になりましたが、若干の補足説明をさせていただきます。

ブログへのアクセス禁止措置が取られた後で確認できた内容ですが、10月28日付のココログ様からのメールには、以下の記述がありました。

「毎日新聞社より著作権に関するご連絡をいただいた内容について、権利者の許諾を得ていない場合は速やかに該当箇所を削除いただくよう弊社より連絡させていただきましたが、あらためて確認いたしましたところ、現在も状況に変化が見受けられませんでした。

つきましては、1030日(木)正午までに、下記の項目についてご対応いただきますようお願いいたします。期限までに対応を行っていただけない場合には、弊社会員規約に基づき、やむを得ず弊社側で該当記事を削除させていただきますので、ご承知おきください。」

ところが、その後、期限日時経過とともに、突然、ブログへのアクセス禁止措置が取られ、事後的にブログを閲覧できない状況にしたとの通知がありました。

ココログ様の事前通知通りに、該当記事が削除されたのであれば大きな混乱は生じなかったはずですが、事前予告なく突然、ブログへのアクセス禁止措置が取られたために、皆様に大変なご心配をおかけしてしまうことになってしまいました。当日午後は、朝日放送で民事訴訟和解に基づく「お詫び放送」が実施されましたので、ブログへのアクセス数が急増することが予想されておりましたが、そのタイミングに合わせてブログへのアクセス禁止措置が取られたことについては遺憾に感じております。

 

世界的な金融危機深刻化を背景に、日本でも地域金融機関などへの公的資金による資本注入を可能にする金融機能強化法改正案が国会で論議されている。

民主党などの野党は、農林中央金庫(農中)および新銀行東京への資本注入に反対の意向を示している。

米国発の金融危機が拡大して政策当局による資本投入が進展している。自由主義経済の基本原則のひとつが「自己責任原則」である。自由主義経済の下では経済活動の自由を認めているが、結果に対する責任は自己で負わなければならない。

今回の金融危機は「市場原理主義」=「新自由主義」のなれの果てである。資金余剰主体から資金不足主体への資金の循環を担うべき金融が、その本分から逸脱し、金融工学の技術を活用してデリバティブと呼ばれる金融派生商品を生み出し、自己増殖的に拡大させた。杜撰(ずさん)なリスク管理の下でデリバティブの想定元本を、制御不能な規模に拡大させてしまった。

米国の不動産格は2006年6月のピークから本年8月までで、22%しか下落していない。問題とされているサブプライムローンもその残高は200兆円に満たない金額でしかない。200兆円の20%が損失になったとしても、損失額は40兆円で、経済規模との比較では、さほど大きな金額ではない。

それにもかかわらず、世界の金融市場では「大恐慌の再来」が真剣に懸念されている。米国政府はすでに100兆円以上の公的資金枠を確保した。それにもかかわらず、金融市場の安定は確保されていない

その理由は、デリバティブ金融が想定元本を幾何級数的に拡大させているためだ。欧米の金融機関は四半期決算ごとに兆円単位の損失を計上している。米国の不動産価格下落は4合目に差しかかった段階であり、2010年にかけて価格下落の持続が予想されている。金融市場の不安定性は持続することが予想される。

市場原理主義の名の下に経済のカジノ化が進展した。拡大した虚業が生み出すバブルの利益に多くの金融機関が膨大な不労所得を蓄積した。破綻したリーマン・ブラザーズ社のCEOが2000年以降に490億円もの報酬を受け取っていたのは、その氷山の一角である。

経済状況が変化してデリバティブ金融のバブルが破裂した。その影響が世界経済に金融恐慌の危機をもたらしている。金融システムが崩壊すれば、その影響は金融バブルとは無縁の一般国民にも及ぶ。したがって、金融システムの安定を確保することは重要な課題になる。

だが、このときに忘れてならないことは、守るべき対象が金融システムの安定性であって、金融機関そのものではないことだ。金融機関の責任によって生じた経営上の困難の責任は当事者である金融機関自身が負わなければならないのだ。

金融システムの安定を確保するために、公的資金投入は必要になりつつあると考えられる。しかし、公的資金は税金であり、その使用は公共の目的に限定されなければならない。金融機関に公的資金を投入する際には、適正な責任追及が不可欠なのである。

麻生政権が提案している金融機能強化法改正案では、当初、経営責任を問わない資本注入が認められていた。この点について、野党が反対するのは当然だ。与党は必要な責任を追及することに同意したが、問題はその運用である。

農林中金は農林系金融機関の中央組織であり、その系列下に各都道府県の信用農業協同組合連合会、個別農協が連なっている。これらの農林系金融機関は政治との関わりが深く、金融機関への資本注入が政治的に利用される可能性が高い。

米国の金融危機の中心に、ファニーメイ、フレディマックと呼ばれる政府系住宅金融公社(GSE)の経営危機がある。2社が発行する債券残高は2008年6月末時点で1兆6308億ドル、2社が発行、保証するMBS(住宅ローン担保証券)残高は4兆2689億ドル存在し、両者合計5兆8997億ドルは、米国財務省証券発行残高5兆2506億ドルを上回る。日本円に換算すれば、600兆円近くに達する。日本のGDPの規模を上回る。その2割強を海外投資家が保有する。

このGSE関連債券の日本での最大の保有金融機関が農林中央金庫なのだ。その保有残高は5兆5000億円に達すると見られている。一般的に日本の金融機関は米国の金融危機との関わりが欧米金融機関と比較して大きくないが、個別金融機関によっては、リスクの高い資産を大量に保有しているケースが存在する。

大和生命が破たんした際、中川昭一金融相は、大和生命は資金運用におけるリスク管理に問題があり、日本の金融機関一般の動向とは切り離して評価するべきであるとの趣旨の発言を示した。この文脈からすれば、農林中金に対しても、行政府および立法府は、同金庫のリスク資産の内容を十分に吟味したうえで対応策を検討する必要がある。

また、新銀行東京は石原慎太郎東京都知事の強い誘導によって設立された銀行だが、杜撰な経営により巨大な損失を発生させてきた。今回の金融危機とは無関係に経営危機が生じており、改正される金融機能強化法の対象から除外することは当然の措置である。新銀行東京の杜撰な経営実態の詳細が明らかにされる必要があり、当然、責任が追及されなければならない。

すでに、新銀行東京を舞台にした不正融資が刑事事件として表面化しており、これまで指摘されてきた政治家による口利き、融資斡旋に関わる疑惑が解明されなければならない。

金融危機の名の下に安易な公的資金投入論が横行していることに対して、立法府は歯止めをかけなければならない。「金を出さなければ金融恐慌が起こるぞ」との言葉で、「責任追及なき公的資金投入」がごり押しされるのは、「恐喝」と言わざるを得ない。

金融システムの安定確保は不可欠だが、公的資金を活用する以上、適正な責任追及が不可欠なのだ。政治権力は金融資本と癒着しやすい傾向を有している。立法府が毅然とした姿勢で監視しなければ、「金融危機」の名目の下に、「公的資金による金融機関救済」が横行することになる。

りそな銀行の事例では、政府が不正と欺瞞に満ちたりそな銀行救済を実行したのち、りそな銀行は自民党に対する融資を激増させた。この事実を指摘した朝日新聞記者の鈴木啓一氏はスクープ記事掲載と同時に原因不明の死を遂げたと伝えられている。

麻生政権は金融機能強化法改正に民主党が反対すると、民主党が政府の金融危機対応を政局の視点から反対していると誹謗中傷すると予想されるが、野党は筋の通らない麻生政権の歪んだ主張に対して、毅然とした姿勢で対応するべきだ。

「金融システムは守る。しかし、責任ある当事者には適正な責任を求める」の基本を崩してはならない。

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