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2008年11月16日 (日)

成果乏しい20ヵ国金融危機サミット

11月14、15日にワシントンで開かれた20ヵ国による緊急金融危機サミットは、金融市場の改革を柱にした首脳宣言を発表して閉幕した。

首脳宣言が盛り込んだ主要な論点は以下の三点である。第一は景気支持のために各国が今後も財政政策発動を含む政策措置をとること。第二は危機の再発防止に向けて金融機関、金融商品などに対する規制を拡大すること。第三は資金力拡充を含めてIMFなどの機能を強化することである。

日本政府はIMFの機能強化のために10兆円の資金を拠出する方針を示したが、これまで論じてきたように、日本の外貨準備資金の取り扱いが国会の監視外に置かれている根本的な問題が存在しており、国会の同意を得ていない政府の独断による国際機関への資金拠出に対して国内で論議が生じる可能性がある。

米国のサブプライム金融危機の本質は、野放図に拡大したデリバティブ金融がもたらした信用バブルの崩壊である。金融市場がカジノと化した背景に市場原理主義の蔓延がある。市場原理に絶対不可侵の信頼を与えたことが、金融機関による際限のない利益拡大行動と、リスク負担能力をはるかに超えた金融行動を助長した。サブプライム金融危機は市場原理主義がもたらした必然の帰着点だった。

市場原理主義を見直し、金融市場、金融機関に対する規制を強化すべきとの主張は正当性を備えている。市場原理主義を基本にすえて、金融危機を発生させた当事者の米国政府はその責任を率直に認めず、規制の強化に抵抗しているが、主張の説得力は消滅している。

麻生首相は意見対立する米国と欧米の橋渡し役を演じると言うが、米国に対して言うべきことを言えない対米隷属の実態を露(あら)わにしただけだった。日本国民が小泉政権以来の市場原理主義経済政策でかつてない苦しみに直面するなかで、国会の同意も得ないで10兆円の資金拠出を約束したことに対する批判も急激に高まると考えられる。

今回の金融危機サミットでは事前に予想された討議内容以上の提案はまったく示されなかった。上述した三点の結論はすべて事前に予想されたものである。20ヵ国もの国家の首脳が集結したにもかかわらず、具体的な新提案は示されなかった。

米国政府はすでに1兆ドル(100兆円)の公的資金投入方針を提示しているが、金融市場の安定感はまったく確保されていない。ビッグスリーの経営も危機に直面しており、米国経済の混迷の根は極めて深い。

日経平均株価の下落が進行すると、日本の金融機関の財務状況が劇的に悪化する。国際機関に10兆円もの資金支援する余裕など存在しないのが現状である。麻生政権は二次にわたる景気対策を決定しているが、補正予算の措置が完了したのは第一次景気対策だけである。補正予算の規模は1.8兆円で、GDP比0.4%にも満たない。

第二次景気対策を裏打ちする5兆円規模の補正予算については、予算案の国会提出が来年に先送りされる可能性が高まっている。2009年初頭に向けて、日本経済の混迷が急激に強まる可能性が高い。「政局より政策」と発言するなら、まず臨時国会の会期を延長し、今国会会期中に補正予算を成立させることが最低限求められる。

小泉政権以来の市場原理主義経済政策によって、非正規雇用が激増し、社会保障政策が徹底的に切り込まれた。その結果、日本は世界でも有数の格差社会に変質してしまった。定額給付金はホームレスの人々や非正規雇用労働者のなかで住民登録を行っていない国民には支給されないと見込まれる。本当に困窮する国民に手を差し伸べない政策に「生活支援」の名は値しない。

雇用の安定、医療不安の除去、教育機会の提供、経済的弱者の支援が何よりも優先されるべき施策だ。衆議院の解散総選挙が実施されれば、抜本的な政策が提示され、国民が政策方針を選択できる。しかし、解散総選挙が先送りされ、政策決定も先送りされたのでは、国民は不況深刻化のなかで見殺しにされるだけだ。

10兆円もの国民資金が国会の同意を得ずに政府の独断で海外に拠出される事実、「政局より政策」と言いながら、補正予算審議を来年に先送りする政策姿勢。このような不正を押し通している麻生政権に対して、一般国民と野党が糾弾ののろしを上げなければ、なし崩しで不条理がまかり通る。

総選挙を先送りするなら、補正予算を臨時国会で成立させるべきだ。補正予算を来年に先送りするなら、年内に総選挙を実施するべきだ。国民に責任を負う政府は、筋の通らない党利党略=政局優先の行動をとるべきでない。

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