外貨準備を監視する法律を整備せよ
日本の外貨準備、郵貯資金を米国金融危機対策に流用すべきとの主張を提示しているのは、竹中平蔵氏、渡辺喜美氏、小池百合子氏、石破茂氏、高橋洋一氏である。中川昭一氏も10月11日のIMF(国際通貨基金)のIMFC(国際通貨金融委員会)で、外貨準備を活用した新興国への資金支援を提言した。
「チラシの裏」主宰者がこの問題を早期に、的確に指摘されてきた。下記の関係者発言等も、「チラシの裏」主宰者が摘示されてきたものである。上記の面々が「対米隷属派」に属することは一目瞭然である。中川昭一氏はこの人脈からは外れる。しかし、麻生太郎首相が対米隷属派に分類され、麻生氏が外貨準備の新興国支援へのゴーサインを出したのだと考えられる。
繰り返し主張するが、100兆円の外貨準備を早急に売却すべきである。同時に、国会の監視の働かないところで、米国経済支援のために巨大な日本国民の負担が発生することを防ぐための法律改正が求められる。外貨準備の取り扱いを国会決議事項にしなければならない。
竹中平蔵氏は、本年4月20日のBS朝日・朝日ニュースター『竹中平蔵・上田晋也のニッポンの作り方』第3回放送で、「「民営化された日本郵政はアメリカに出資せよ」とぜひ申し上げたい。日本にはかつてとんでもなく巨大なSWFがありました。それが今の日本郵政なんです。資金量でいうと300兆円。他のSWFとは比べ物にならないほどのSWFがあったんです。民営化したので、今はSWFではない。だからアメリカから見ると安心して受け入れられる、民間の資金なんです。アメリカに対しても貢献できるし、同時に 日本郵政から見ても、アメリカの金融機関に出資することで、いろいろなノウハウを 蓄積し、新たなビジネスへの基礎もできる」と述べた。
渡辺喜美元金融相は、本年7月16日、米国政府元高官に対して、「米政府が必要とすれば日本の外貨準備の一部を公社救済のために米国に提供するべきだと考えている」と述べたことが報道されている。
また、渡辺氏は英国の通信社ロイターのインタビューでも、「資本増強で国際的な枠組みを作るのであれば、外貨準備を使うことも、私が金融担当相のときの私的懇談会(金融市場戦略チーム)でブレーンストーミングをした。これもあり得ないことではない。運用している米国債を(金融機関の株式と交換する)デット・エクイティ・スワップ(DES)する話で、ドル危機後の新しい通貨秩序の形成にもつながる戦略になる」と発言している。
また、9月20日付ファイナンシャルタイムズ紙は、自民党総裁選に立候補した小池百合子氏、石破茂氏が、日本の外貨準備を米国金融危機対策に流用する提案を示したことを伝えている。
渡辺氏が言及した金融市場戦略チームのブレーンストーミングでの検討内容については、高橋洋一氏が9月24日付『フォーサイト』誌で説明している。
高橋氏は寄稿で、「いずれにしても当面、日本は巨額な外為資金を持たざるをえないだろう。であれば、その結果のリスクとリターンを考慮してポートフォリオを入れかえ、たとえば、ドル建て債券の代わりにアメリカのファニーメイ、フレディーマックなどの株式に投資するという政策は、十分に検討に値する」と記述している。
渡辺氏が主宰した勉強会での高橋氏の主張を、竹中氏、渡辺氏、小池氏、石破氏がオウムのように発言している図式がよく分かる。ところが、その出発点の高橋氏の主張に説得力がまったくない。
高橋氏は寄稿のなかで、まず、「一般論として、筆者は政府資産は今より少ないほうがいいと考えているので、まず、外為資金の圧縮を考えるべきである」と述べている。そのうえで、「本来ならば、そこでまず、為替変動を起こしにくくするというマクロ経済環境を整え、外為資金の残高自体を圧縮することを考えたほうがいい」と指摘し、「日本がいまだに外貨準備をもって為替政策を行なおうとすることが、おかしいのである」と記述している。
ところが、「とはいえ、マクロ環境を整えるためには日銀の協力が必要であるが、先進国では当然採用されているインフレ管理目標さえ拒否し、PDCAサイクル(plan-do-check-act cycle)もなく、目標がないので成果達成の責任もあいまいな日銀を、どのようにマクロ経済政策に協力させるのかという根本的な問題がある」ことを根拠に、突然、「よって、いずれにしても当面、日本は巨額な外為資金を持たざるをえないだろう。であれば、その結果のリスクとリターンを考慮してポートフォリオを入れかえ、たとえば、ドル建て債券の代わりにアメリカのファニーメイ、フレディーマックなどの株式に投資するという政策は、十分に検討に値する」との結論を導いている。
いわゆる「上げ潮派」と呼ばれるグループに分類される人々は、高橋氏の主張をそのまま援用している。高橋氏は、①霞が関埋蔵金を活用した積極財政、②小さな政府、③日銀による徹底的な金融緩和、を主張している。
竹中平蔵氏はどの講演会でも、①規制が強化されたことに伴うコンプライアンス不況、②改革逆行に伴う期待成長率の低下、③日銀の短期金利引き上げ、の三つが景気悪化の原因だとし、①法人税減税、②外資への市場開放を軸とする規制緩和、③日銀の金融緩和強化、を主張する。
これらが、「市場原理主義者」=「新自由主義者」=「対米隷属派」の主張である。「市場原理主義」は「資本優遇=労働搾取」を奨励し、「弱肉強食」と「セーフティーネット破壊」を推進してきた。外国資本の日本進出を奨励し、円安誘導で外国資本による日本資産の安値取得を側面支援する。
これらの人々が、日本の外貨準備や郵貯資金による米国金融危機への資金流用の流れを作り出している。財務省は、外貨準備を巨大化し、新興国支援に流用することが、財務省の利権拡大につながることから、これらの施策を肯定的に捉えていると考えられる。高橋氏は、高橋氏の主張が財務省の意向と対立しているかのような説明をするが、これは事実に反していると考えられる。裏側ではつながっていると考えられる。
高橋氏は、「外為資金の圧縮を考えるべきである」としながら、外貨準備をリスクの高い米国金融危機対策に流用することを主張しており、主張に一貫性がない。日本政府が外貨準備を活用して、米国の金融危機対策を実施する正当な根拠はまったく存在しない。国会論議、国会決議を経ずに、外貨準備を活用した金融対策について、日本政府が海外で意思表示することは、絶対に許されることでない。
竹中氏の金融危機対策に郵貯資金を充てるべきとの提言は、郵政民営化そのものが、米国が350兆円の郵貯、簡保資金を米国のために利用するために画策した政策であったことを、明確に裏付けるものである。
日本の政治は日本国民の幸福実現を目的に運営されなければならない。小泉政権以降、米国による日本の属国化が日本政府の中枢から進行した。「市場原理主義」によって、日本社会も相互不信と相互敵対の「格差社会」に変質させられてしまった。
日本の政治から「対米隷属派」を排除しなければならない。日銀に超金融緩和政策を強制し、日銀を政府管理下に置くとの主張も、国民の利益に反する。円安誘導は外国資本による日本買い占めを促進する側面を持っており、日本国民の利益に反する政策である。
日銀の超金融緩和政策の延長には、日本でのインフレ誘発が期待されており、政府はインフレによる政府債務帳消しを密かに目論んでいると考えられる。財務省から日銀への天下りは、この意味でも遮断しておかなければならない。
「市場原理主義者」の罪を明らかにし、「市場原理主義者」の退場を確実に実行しなければならない。まずは、外貨準備の流用政策を国会論議で取り上げ、対米隷属派による国益喪失の政策にブレーキをかけなければならない。外貨準備管理を国会の厳しい管理下に置く法改正が早急に求められる。
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