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2008年10月 1日 (水)

麻生首相代表質問VS小沢代表所信表明演説

麻生太郎首相が9月29日、所信表明演説を行ったが、経済運営の具体的方針、目指すべき日本のビジョンがまったく示されなかった。鳩山由紀夫民主党幹事長の論評通り、「野党の代表質問」だった。

所信表明演説の冒頭、麻生氏は次のように述べた。

「わたくし麻生太郎、この度、国権の最高機関による指名、かしこくも、御名御璽(ぎょめいぎょじ)をいただき、第92代内閣総理大臣に就任いたしました。

(中略)

この言葉よ、届けと念じます。ともすれば、元気を失いがちなお年寄り、若者、いや全国民の皆さん方のもとに。」

御名御璽(ぎょめいぎょじ)とは、君主の名前(の署名)および公印のことを指して公的に用いられる呼称で、教育勅語の末尾にも見られる表現だ。時代錯誤も甚だしい。民主主義国家日本の首相に就任したのではなく、大日本帝国憲法下にある立憲君主制国家の首相に任命されたものと考えているのか。皇室と姻戚関係を持つことを、広く国民に知って欲しいとの希望の表明なのだろうか。

麻生首相の所信表明演説の動画を「カナダde日本語」様が掲載してくれているので、ご高覧賜りたい。冒頭のひと言からも、麻生氏の目線の位置が推し量られる。1979年の総選挙に立候補した際の立会演説会で、麻生氏が「下々の皆さん」とあいさつしたエピソードは有名だが、「優劣意識」の強さは「強い劣等感」の裏返しだと感じられる。中島敦『山月記』にある「臆病な自尊心」と言うべきだろう。

小泉政権以来の「市場原理主義政策」によって、日本社会は荒廃した。「非正規雇用や働く貧困層」の激増は、日本の若者の活力と未来への夢を奪っている。戦後の復興と発展に尽力した高齢者は、「姥捨て山制度」の「後期高齢者医療制度」の屈辱に直面させられている。ハンディキャップを背負った障害者に対する「障害者自立支援法」による政府支出削減は、国民の生存権を深刻に脅かしている。

「市場原理主義」は本家の米国でも破綻を示し、世界経済は深刻な不況に突入しようとしている。国民の不安は拡大し、政府に対する不信感は日増しに強くなっている。その国民の心情を、国民の立場に立って考えるのが、リーダーの務めだ。リーダーには、国民の心情を慮(おもんぱか)る「想像力」が求められるが、「下々」とは対極の「高み」にいることを「プライド」と勘違いしている麻生氏に、それを期待することは難しい。

「この言葉よ、届けと念じます。ともすれば、元気を失いがちなお年寄り、若者、いや全国民の皆さん方のもとに」の言葉に、麻生氏の潜在意識が集約して示されている。「届けと念じる」のは、麻生氏が「自分は国民から遠く離れた存在である」と考えているからだ。「国民の一人」ではなく、麻生氏は自分自身を「下々の一般国民とは離れた所に位置する」と考えたいのだと思う。

「ともすれば、元気を失いがちなお年寄り、若者、いや全国民の皆さん」の表現を聞き流すこともできない。

「元気を失いがちな国民」の表現も、「国民の問題」を「自分の問題」とは捉えていないことを如実に示している。福田前首相同様、麻生氏にとっても「国民の生活」は「他人事」に過ぎないことを示している。

また、「元気を失いがちな」の表現は、「国民が元気を失う傾向を有する」との麻生氏の「観察」を示すのだが、国民が原因もなく、勝手に「元気を失っている」わけがない。「国民が元気を失っている」と観察するなら、「国民が元気を失っている」原因は何であるのか、との考察に、なぜ思いを巡らせないのだろう。

麻生氏が中枢に存在し続けた、小泉政権以来の自公政権が国民生活を破壊してきたことについて、最低限の自責の念を抱くなら、「ともすれば、元気を失いがちな」の言い回しを、口にはできないはずだ。

治療に失敗し続けて、病状を悪化させてしまった患者に対して、担当医が「ともすれば、病状が悪化しがちな患者に、この声よ、届けと念じたい。患者は元気にならねばなりません、と」と、発言しているようなものだ。

国民生活に対する政治の責任への自覚が微塵(みじん)も存在しないことがよく分かる。「国民が元気を失っている」なら、「政治のどこに問題があったのか」を自省し、「国民が元気になれる」ために、「何をすればよいか」をじっくりと考えることが政治家の務めであるはずだ。

小泉政権以来の自公政権の政治が、国民生活を疲弊させ、国民を不安と絶望の境遇に追い込んだことに対する自覚と反省が欠如している。

麻生氏は政治の停滞を「民主党の責任」だと言わんばかりの発言を繰り返したが、聞くに堪えないものだった。政治の意思決定が困難になっている原因は、「衆参ねじれ」にある。参議院の野党多数議席は国民が選挙で付与したものだ。野党の主張、行動は国民の声を代弁するものだ。

自公政権が政権として存在できるのも、国民が衆議院で与党に多数議席を付与しているからだ。政治の意思決定権限を持っているのは、国民なのだ。日本国憲法は「国民主権」を明確に定めている。国民の意思表示によって、参議院における野党の過半数確保が生じたことを踏まえれば、衆議院で多数を確保しているとはいえ、政権与党は参議院を支配する野党の意向を最大限、尊重する責務を負っている。

野党に対する礼を失した暴言、批判は、有権者を冒涜(ぼうとく)するものである。民主主義は多様な意見、主義主張の存在を認め、少数意見をも尊重しながら、討論と説得のプロセスを重視し、最終的には多数決で意思決定を実現する政治の仕組みだ。

麻生首相は自公政権を代表して、自公政権の目指す政策の方向、未来への国のビジョンを示すべきであった。総選挙を意識した、品格なき誹謗(ひぼう)中傷の言葉だけを盛り込んだ演説は、民主党の品格ではなく、自民党の品格を著しく引き下げたことを忘れてはならない。

麻生氏は民主党の政権公約の「財源」を問題にする。しかし、民主党は「財源」問題について、具体的かつ詳細な裏付けを明示しつつある。民主党は大きな財源を捻出して、一般国民に対するサービス、施策、プラグラムを充実させることを提案しているが、その基本構造は「政府内部の無駄を排除して、国民生活向上に向けての施策に再配分する」ことだ。

民主党は「官僚の天下り利権根絶」をマニフェストに明記する。自公政権には絶対に示すことができない政策である。これまで官僚が死守してきた「天下り利権」に初めて本格的なメスが入れられようとしているのだ。「天下り利権根絶」は私の20年来の持論である。私の持論を民主党が全面採用してくれたことを、非常に喜ばしく思う。

「政権交代」が実現すれば、初めて「山は動く」のだ。

官僚機構は「天下り利権死守」に向けて、総力を結集してくる。「政官業外電の悪徳ペンタゴン」は「政権交代阻止」に向けて、手段を選ばず、攻撃してくる。解散総選挙日程が先送りされる可能性が高まったのは、自民党の選挙区調査で「政権交代」予測が明らかになったからだ。

総選挙の争点は、

①弱肉強食奨励VSセーフティーネット強化

②官僚利権死守VS官僚利権根絶

③対米隷属VS独立自尊

の三点だ。民主党の①セーフティーネット強化策の財源は、②官僚利権根絶、から捻出される。具体的かつ現実実現性の高い財源論が示されつつある。

偏向NHKをはじめとするマスメディアは、「政官業外電=悪徳ペンタゴン」の広報部隊として、総選挙に向けて、民主党政権公約の財源問題を集中攻撃する。しかし、ひるむことはまったくない。民主党は堂々と財源問題を明確に示すべきだ。

「官僚・大資本・マスゴミ・外資+政治屋」が利権互助会を形成し、一般国民を食いものにしてきた政治を「CHANGE」しなければならない。「CHANGE」は「政権交代」である。10月1日の代表質問では、小沢一郎民主党代表による「所信表明」が示される。日本の新しい時代の幕開けを告げる演説になると考える。

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