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2008年10月

2008年10月31日 (金)

「渋谷事件」と総選挙の争点

自民党が実施した総選挙情勢調査で自民党惨敗予想が示されたために、麻生首相は月刊誌で明言した衆議院の解散総選挙を先送りすることを決定した。自民党の細田博之幹事長は、総選挙の早期実施を公言していたが、麻生首相と示し合わせて三文芝居を演じていたのだと思われる。

総選挙実施となれば候補者は選挙事務所開設などの対応を迫られる。当然、経費もかさむ。野党候補を疲弊させるための姑息な三文芝居が演じられたのだろう。また、総選挙実施に向けて、すべての国民に対する「給付金支給」、高速道路料金の引き下げが提案されている。

「政治権力を維持するためには手段を問わない」行動が示されている。日本経済は急激に悪化し、国民の生活は日を追って苦しさを増している。たしかに、給付金も高速道路料金引き下げも朗報には違いない。

しかし、有権者は次の総選挙で、より重要な判断を下さなければならない。目先の利益誘導政策に惑わされてはならない。

時代は重要な潮流変化の局面に差しかかっている。1980年以来、30年にわたって主要国を覆ってきた「市場原理主義」=「新自由主義」が馬脚を表し、転換の局面を迎えている。米国でもこのタイミングで大統領選挙が実施される。イラクへの侵略戦争にも終止符が打たれることになるだろう。

麻生首相は、支持率回復に必死だが、有権者は麻生政権の政治理念、哲学を吟味しなければならない。小手先の買収的手法、バラマキ政策に惑わされてはならない。

現在の日本政治を考察する際、10月26日の「渋谷事件」を曖昧に処理するわけにはいかない。「渋谷事件」には、いまこの国を覆っている、政治権力と警察権力との暗い不透明なつながり、警察の腐敗、メディアと政治権力との癒着の構造の片鱗が、くっきりと浮かび上がっているからだ。

野党は国会でこの問題を糺さなければならない。野党がその責任を放棄するなら、野党も現状への責任を負うことになる。

「渋谷事件」の概要は以下の動画をじっくりと見ることにより、明確に捉えることができる。問題を風化させないために、改めて動画にリンクを張る。

①麻生首相私邸へのウォーキングツアーを計画した若者が、渋谷警察署職員の指導と了解を得ている場面

②信号待ちを終えて歩き始めた若者グループ先頭の男性に、帽子をかぶった公安警察職員が接触して、先頭男性を「公務執行妨害」だとして逮捕した場面

③若者グループを逮捕する直前の信号待ちの時点で、公安職員と見られるグループが打ち合わせをし、帽子をかぶった公安職員に耳打ちした直後、若者に公安職員が接触して「公務執行妨害」だとして逮捕した場面

これらの動画により、事件の全容が明らかにされている。

なお、①の動画で、若者グループが渋谷警察署職員の了解を得ている場面では、右後方に公安職員の姿が明確に映し出されている。

問題はマスメディアが、事実とは異なる警察発表の情報をそのまま報道していることだ。一般の国民は、マスメディア情報を真実として理解してしまう傾向が強い。国民は不当逮捕の真実を知ることができず、逮捕された人々の重大な人権侵害が不問に付されてしまう。

麻生政権は10月30日に追加景気対策を発表した。総額2兆円の定額給付金、高速道路料金引き下げ、中小企業向け融資の緊急保証枠拡大などの措置が盛り込まれた。総額2兆円の定額給付金は年度内に実施する方針が示された。

定額給付金では、夫婦と子供2人のモデル世帯では6万4千円の給付になる見通しである。麻生政権はこれらの施策を含む補正予算案を国会で審議し、野党が反対する場合、補正予算の是非を問う形で解散総選挙に向かう戦術を描いているのだと考えられる。

また、第2子以降の未就学児に対しては、年間3万6千円の「子育て応援特別手当」を支給する方針も固めている。民主党が創設を公約に掲げた「子ども手当」を模倣した政策が盛り込まれている。

麻生首相は「解散につきましては、私が決めさせていただきます」の言葉を繰り返し、解散権が首相の特権であるかのような発言を示すが、日本国憲法に「衆議院の解散が首相の大権である」との規定が存在しているわけではない。憲法第7条に「天皇の国事行為」が規定されており、そのなかに「衆議院の解散」が掲げられている。

「天皇の国事行為」は「内閣の助言と承認」による、との規定があることから、内閣が解散の決定権を有し、したがって、首相が解散の大権を握ると解釈されているのだ。

しかし、もとより議会制民主主義は主権者である国民が、社会契約によって政治権力を創出しているのであり、首相が国民の意思と無関係に、私的な理由で行動することを認めているわけではない。重要問題に直面し、解散総選挙で国民の意向を確認する必要がある局面で、首相が「公の目的」を達成するために衆議院を解散するものなのだ。

自公政権は1年間に2度も政権を放り出した。2度目の政権放り出しに際して、福田前首相は、国民の審判を受ける必要があるとの認識を示し、後継首相が直ちに解散総選挙を行うことを前提に置いて、首相を辞任した。

麻生首相も『文藝春秋2008年11月号』に臨時国会冒頭での解散を記述した。その解散総選挙を、首相の地位に執着して先送りするのは、あまりに姑息である。

国民は、総選挙に際して、争点を明確にして投票に臨む必要がある。

問われている問題が三つある。

第一は、「誰のための政治であるか」だ。小泉政権以来の自公政権は、「市場原理主義」=「新自由主義」を基軸に据えて、「弱肉強食奨励」=「弱者切り捨て」=「セーフティーネット破壊」の政策を推進した。年金問題、後期高齢者医療制度、働く貧困層、非正規雇用、障害者自立支援法、生活保護圧縮、などの苛政が国民を苦しめてきた。

選挙に向けて、目くらましの政策が提示されても、政策の基本路線は変化しない。目先の利益誘導策ではなく、政策の根幹をしっかりと見極めなければならない。枝葉ではなく幹をしっかり見て、投票しなければならない。

第二は、官僚利権が完全に温存されることだ。高級官僚の天下り機関には、年間12.6兆円もの国費が投入されている。「天下り」を根絶すれば、膨大な資金節約が可能である。また、100兆円もの外貨準備を野晒しにしているために、10円の円高が生じると10兆円もの損失が生まれる状態が放置されている。

日本政策投資銀行、国際協力銀行、日本政策金融公庫人事では、財務省からの天下り特権が完全温存された。麻生政権は天下り廃止の考えをまったく保持していない。「天下り利権」が完全擁護されることを、明確に認識しなければならない。

麻生政権は3年後に消費税大増税を実施する。消費税は10%にまで引き上げられる。国民に過酷な負担を押し付ける前に、特権官僚の「天下り」利権を根絶するべきである。与野党の政策の決定的な相違がこの部分にある。

特権官僚の「天下り」利権を根絶しないままでの消費税大増税を絶対に許してはならない。次期総選挙で自公が過半数を確保し、政権を維持する場合、3年後の消費税増税は国民の了解を得たこととされる。「天下り」根絶がまず優先されるべきだと考える国民は、自公に過半数の議席を付与してはならないということになる。

第三は、いつまで対米隷属を続けるのかだ。アメリカ自身が11月4日の大統領選挙で“CHANGE”する可能性がある。インド洋での給油活動の是非を問う問題も、米国は強大な国だから日本は、戦略戦争であっても米国に加担するのかどうかが問われることがらなのだ。対米隷属から脱して自主独立外交を樹立するのか、今後も対米隷属を続けるのかが問われる。

今回の金融危機に際して、欧米首脳から日本の外貨準備活用、日本の資金負担を求める声があがっている。11月15日のワシントン首脳会議で、麻生首相が日本国民の利益を守り、安易な資金提供に応じない姿勢を貫けるかが注目される。

これまでの自公政権では、「政治」、「大資本」、「特権官僚」、「外国資本」、「メディア」が癒着し、「政官業外電の利権互助会」の利権を維持し、拡大することを目的に政治が運営されてきた。一般国民が搾取され、果実がこの利権互助会に吸い尽くされる構造だった。

政権交代を実現して、一般国民の幸福を実現する政府を樹立することが求められている。適正な所得再分配を実施して、すべての国民が健康で文化的な生活を送ることのできる、利権を排除した新しい政治を打ち立てることが求められている。

「渋谷事件」は警察権力の実態、メディア報道の実態を鮮明に映し出す氷山の一角である。麻生首相が逆切れしたぶらさがり記者会見の詳細なやり取りが、隠蔽されることも、国民の知る権利を妨げるものだ。日本政治の暗黒体質も排除しなければならない。

「政官業外電=悪徳のペンタゴン」は必死だ。心ある国民は、このことをしっかり認識して、不撓不屈の精神で、世直しを実現しなければならない。ネットの草の根から、真実の情報を発信し続けなければならないと思う。

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ブログ復旧のお知らせ

当ブログへのアクセスができない状況になりまして大変ご心配をおかけいたしました。過去掲載記事における記事転載に関連することがらについて、ココログ様より連絡をいただいていたメールの確認が遅れ、一時的にブログへのアクセスができない状況になりました。

連絡のあった記事は、10月23日付記事「「逃げ回る」醜態を晒す麻生首相」で、同記事に、「麻生首相:あす就任1カ月 連夜の「会合」批判にキレる」と題する、麻生首相のぶらさがり会見のやり取りと麻生首相の動静を伝える毎日新聞記事を、「毎日新聞記事を転載する」との記述をつけて転載いたしました。

この記事について、ココログ様より以下の連絡をいただきました。

「毎日新聞社より「毎日新聞の記事が全文転載されている。当該記事の全文掲載であるうえ、前後の脈絡から掲載する必然性もなく、著作権法上認められた引用にあたらない。」とのご連絡が弊社宛にございました。」

この連絡をいただいたメールの確認が遅れまして、ブログへのアクセスが遮断される措置が取られました。当方では、記事転載の記述を付けて記事を転載したものでありましたが、「引用」の範囲を超えた「全文掲載」でありましたので、当該記事をいったん非掲載とさせていただきます。後ほど、転載部分を消去した文章を掲載させていただきます。毎日新聞社にご迷惑をおかけしたことをお詫びいたします。ブログご購読の皆様には、なにとぞ、ご理解くださいますようお願い申し上げます。

ブログ閲覧の皆様に大変ご心配をおかけしましたことに対しまして、心よりお詫び申し上げます。

微力ではありますが、今後とも少しでも役立つ情報の発信に努めてまいりますので、なにとぞご支援賜りますよう謹んでお願い申し上げます。

(追記)毎日新聞社サイトの著作権に関する記述に従い、発表文を修文させていただきました。

(追記2)転載部分を削除した10月23日付記事「「逃げ回る」醜態を晒す麻生首相」をアップいたしましたので、ご高覧賜りますようご案内申し上げます。

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2008年10月29日 (水)

警察の実態を映し出す証拠映像

10月26日に渋谷から麻生首相の私邸までのウォーキングツアーを実施した若者グループの3人が警察に突然逮捕された。このことは、昨日付記事「麻生首相非正規雇用労働者蔑視発言ほか」で伝えた。

TBSがニュース報道した内容は以下の通り

10月26日20:00のTBSニュース

「麻生首相宅を見学」と称し無届けデモ

26日午後、東京・渋谷で、麻生総理の自宅を見学するツアーと称して無届のデモ行進が行われ、参加者の男3人が警視庁公安部に逮捕されました。

26日午後4時頃、「渋谷区にある麻生総理の自宅を見よう」という、ネットなどでの呼びかけに集まった市民グループおよそ50人がハチ公前から行進を始めました。

しかし、事前に集会やデモ行進の申請をしていなかったため、警視庁公安部は市民活動家の男1人を逮捕、さらに、それを妨害しようと警察官に暴行するなどした男2人を公務執行妨害の現行犯で逮捕しました。

公安部は、再三警告を行ったにもかかわらず、行進などを行ったとしています。

2620:00

このニュース報道の末尾に、以下の表現がある。

「公安部は、再三警告を行ったにもかかわらず、行進などを行ったとしています。」

 警察発表では、無届けのデモであるので、中止するように再三警告したが、市民グループは警告を無視してデモを実施したため逮捕したということになる。

 ところが、若者の市民グループはウォーキングツアーを始める前に、警察と話をし、警察も了解を与えていたことが明らかになった。

 「低気温のエクスタシーbyはなゆー」様「カナダde日本語」様「雑談日記(徒然なるままに、。)」様をはじめ、多くの方が動画を提供してくださっている。

 若者たちが警官グループにウォーキングの内容を説明して、了解を得ている場面がビデオに撮影されていた。

 「低気温のエクスタシーbyはなゆー」様が提供してくださった動画から、若者グループが警察の了解を得ている場面をご高覧いただきたい。

 ところが、この後、ウォーキングツアーを開始しようとした若者グループが突然逮捕された。

 若者グループは警察と協議し、車道を歩かないことなどの了解を取り、警察もウォーキングを認めている。

 同じく「低気温のエクスタシーbyはなゆー」様が提供してくださった逮捕場面である。

 先頭を歩く若者に手前横から帽子をかぶった男性が近づき、そのままぶつかった途端に逮捕されている。その後「こうぼうだ!こうぼうだ!」と叫び、「逮捕しろ!」と叫んでいる男性が公安の私服警官であると見られている。「こうぼう」とは「公妨」=「公務執行妨害」のことである。

 若者が警官に暴力を振るった形跡はまったくない。公安職員と思われる帽子をかぶった男性が、一方的に男性に接近し、接触した直後に「逮捕」の怒声が飛び交っている。

 若者が警察に拘束されようとするところ、同僚メンバーが必死に助け出そうとした。ところが、左からライトブルーのYシャツにグレーのベスト、肩からカメラらしきものを提げた男性が走って体当たりして、拘束した男性を助けようとする同僚から切り離した。この男性も公安職員なのだろう。

 若者が警官と話をしている動画を見たとき、私はすぐに逮捕の動画に登場する公安職員と見られる男が画面右奥に映っていることに気付いた。警官の了解を得てウォーキングを始める場面から、公安職員は把握していたのである。若者が警官と協議している動画を改めて確認していただきたい。

 このことを「雑談日記(徒然なるままに、。)」様が詳しくブログで解説してくださっている。

 (追記)「KNのブログ」様がウォーキングツアー先頭の若者に接触した防止をかぶった男性、「公妨」と叫び逮捕を指示した男性、仲間を救出しようとした同僚に体当たりしたライトブルーのYシャツとグレーのベストの男性が相談しながら歩く動画を掲示くださいましたので、その動画にリンクを張らせていただきます。これで、全体の流れが非常によく分かります。(追記ここまで)

 これらの一連の経過をたどると、TBSほかマスメディアが報道している内容と、真実には「天地の開き」が存在していることがよく分かる。

 TBS報道は「再三警告を行ったにもかかわらず、行進などを行った」と報道している。この報道が、ぎりぎりのところで救われるのは、「公安部は・・・としています」と表現していることだ。

 メディア報道の大きな問題は、警察当局の発表をそのまま垂れ流すことだ。何も知らない一般国民は、垂れ流された情報をそのまま鵜呑みにしてしまう。

 しかし、警察は一般に想定されているような善良な存在ではない。私は深くその真実を知っている。私が巻き込まれた冤罪(謀略?)事件では、私の無実潔白を証明する決定的証拠であった防犯カメラ映像が警察によって消去されてしまったが、今回の渋谷事件では、決定的証拠を市民が撮影していたため、真実を広く国民に知らせることができる。

 渋谷のウォーキングツアーの事例でも、若者は警察と協議し、警察の了解を得たうえでウォーキングツアーを開始しているのだ。「再三警告を行ったにもかかわらず、行進をした」との公安部の説明は、現在得られている動画情報などから得られる状況とは、明らかに食い違っている。

 若者はこうした経緯を経て「逮捕」されている。「逮捕」は基本的人権である「身体の自由」を奪う、極めて重大な国家権力の行使である。渋谷の事例が不当逮捕であるなら、国民の生活の安全を守るはずの警察権力が、極めて重大な人権侵害を犯していることになる。

 この動画を広く流布する必要がある。警察の行動の一端を国民が知ることが可能になる。警察は権力に迎合し、不当に権力を行使する存在であるとの仮説を、これらの動画は説得力をもってわれわれに迫る。

 「雑談日記(徒然なるままに、。)」様が主張されるように、野党はこの問題を重大な問題として国会で取り上げるべきである。渋谷警察署の警官と公安警察が事前に連絡し、ウォーキングツアーを実施させるように仕向けたうえで逮捕した可能性もある。

 マスメディアは続報をまったく伝えないが、日本の民主主義、警察の実態を知るうえで、この問題は極めて重要である。特別公務員暴行凌虐罪の適用も含めて、事件の徹底的な検証が求められる。

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2008年10月28日 (火)

麻生首相の非正規雇用労働者蔑視発言ほか

麻生首相が10月26日、首相就任後初めての街頭演説を秋葉原で行った。そのなかで麻生首相は非正規雇用の状況で働く多数の国民に対して、極めて侮辱的な発言を行った。また、同日午後、麻生首相の私邸へ徒歩で歩く人々が、突然、警察に逮捕された。

また、首相ぶらさがり会見で、連夜のバー通いについて質問した記者に、麻生首相が逆切れして詰め寄ったことも伝えられている。

ところが、これらの映像がマスメディアでほとんど報道されていない。インターネット情報の発達で、動画が配信されるため、メディアが伝えない真実の一端を知ることができるようになっているが、これらの事実がマスメディア情報の偏向を浮き彫りにしている。

10月26日のフジテレビ番組「サキヨミ」が年次規制改革要望書を報道したのを私も見た。関岡弘之氏が画面に登場するのも初めて拝見した。「神州の泉」主宰者の高橋博彦氏がこの問題を取り上げられた。また、私に対する身に余るお言葉を賜った。心より感謝申し上げる。

また、私の朝日放送に対する訴訟での和解について、高橋清隆氏に加え、ひらのゆきこ氏が貴重な記事を掲載くださった。また、「晴天とら日和」様が詳細な記事を掲載くださった。心より感謝申し上げる。

麻生首相の秋葉原発言については、「カナダde日本語」の美爾依さんが早速ブログで取り上げられ、また、首相私邸へのウォーキング市民逮捕についても伝えられている「きっこの日記」様「BLOG版ヘンリー・オーツの独り言」様も取り上げられた。

これらの問題について、「低気温のエクスタシー」様「雑談日記(徒然なるままに、。)」様「チラシの裏」様などが詳細な情報を提供してくださっている。メディアが伝えない重要情報がネットを通じて伝達されるようになった意義は極めて大きいと思う。草の根から真実の情報を伝播してゆかなければならない。ブログ閲覧者数を拡大してゆかなければならないと思う。ブログ閲覧者数を二ケタ拡大する必要がある。

麻生首相は、秋葉原街頭演説で、非正規雇用から正規雇用への転換を推進する方針を説明するなかで、九州でのある事例で、非正規社員が正規社員に転換されたことで婚姻率が上昇したことを紹介し、次のように述べた。

「やっぱり、女性がもう、結婚する相手が、なんとなーく、食いっぱぐれそうな顔してるとこりゃちょっと、結婚したらあたしが一人で働かないかんと。そら、なかなか結婚したくないよ。そら、女性のほうも選ぶ権利がある。当然のこととして、稼ぎが悪そうなのより、稼ぎがいいほうがいいに決まってる。そう思って結婚しないんだと思いますが、それがこれできちんと証明をされていると思います。」

麻生政権が、日本に存在する非正規雇用者のなかで、正規雇用への転換を希望するすべての労働者を、責任を持って正規労働者に転換することを決定したのなら、この発言も許されるかもしれない。ところが、現実には、非正規雇用者の大半が現状のまま放置されることは明白だ。そのなかでこのような発言を示す神経は尋常でない。

「オタクの聖地」と言われる秋葉原には、非正規雇用労働者が多数存在するはずだ。非正規雇用労働者を蔑(さげす)む麻生首相発言を、彼らはどのように受け止めただろうか。マンガばかり読んでいることで麻生首相は、秋葉原愛好者の一員になったつもりなのかも知れないが、麻生首相が一般国民の視点に立ってものを考えていないことは明白である。また、一般論として言えば、オタクの人々はマンガも読むが、読書好きな人が多く、知的水準が極めて高いのが通例だ。マンガだけ読んでいる人とは異なる。

そもそも、「稼ぎがいい方がいいに決まっていて、結婚はこのことを基準に決定されることがきちんと証明されている」との趣旨の言葉に示される麻生首相の価値観が問われる。麻生首相は「所得の多寡(たか)が人間を評価する基準である」ことを演説で堂々と訴えたのだ。

小泉政権以来の自公政権が「市場原理主義」=「新自由主義」に基づく人間性無視=効率至上主義の政策を推進して、冷酷な格差社会が生み出された。まじめに働いても年収が200万円に届かない「働く貧困層」、いつ「雇い止め」通知が来て、生活の危機に直面するかも知れないという恐怖に直面し続ける「非正規雇用労働者」、危険で過酷な労働に日替わりで対応しなければならない「日雇い派遣労働者」、が日本中を覆い尽くしている。

将来に夢と希望を持てない若者が急増していることは、もっとも深刻な日本の社会問題でもある。麻生首相は景気対策で、非正規雇用労働者の正規雇用への転換をどこまで進展させるのか。本格的な政策対応を示さずに、国民の歓心を買う言葉を並べ立てても、不興を買うだけだ。

麻生首相は九州トヨタの事例を引き合いに出したが、10月7日の衆議院予算員会で共産党の志位和夫議員は、トヨタが巧妙な配置転換により、派遣労働の3年期限規制を回避しているのではないかとの指摘をしている。労働市場の規制緩和が大資本の意向に沿って実施されたために、一般国民が極めて厳しい現実にさらされているなかで、麻生首相の発言は、あまりにも表層的に過ぎる。

「市場原理主義」=「セーフティーネット破壊」の悪政に苦しむ一般国民の視点に立ってものを考えることができないのだと思われる。

首相のぶらさがり記者会見は、政府が政府広報として実施しているものだ。そのなかでの首相の発言は、一部をカットせずに、きちんと放映されるべきだ。首相に都合の悪い部分を報道しないことは、国民の知る権利を妨害するものである。政府が都合の悪い部分を放映しないように圧力をかけているなら、検閲と言われてもやむを得ない。

渋谷駅から麻生首相私邸へのウォーキングを警察が逮捕した事件も、YOU TUBEで配信されている映像を見る限り、不当逮捕のように見える。この事件についても、事実関係を正確に伝える報道は極めて少ない。

民主主義が機能するためには、情報が正しく伝達される必要がある。国民にすべての正しい情報が伝達されなければ、国民が正しい判断を下すことはできない。

ぶらさがり記者会見での記者とのやり取りが、一部カットされず、全体が伝えられることによって、首相の人間性や価値観、哲学が国民に伝わるのだ。検閲され、加工された情報をもとに国民が正しく判断することは不可能だ。

日本が法治国家であるなら、法律は適正に運用されなければならない。警察当局の裁量権の拡大は、暗黒国家への道である。

マスメディア情報が政治権力によって著しく歪められている現状では、ネット情報が、その歪みを糺す役割を担う。

ネット情報が威力を発揮するには、より多くの国民がネット情報に接する必要がある。優良なネット情報が社会全体に浸透するための努力を拡大してゆかなければならないと思う。

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2008年10月27日 (月)

森田実氏が入手した「米国国債を売らない約束」

急激な円高は日本国民に巨大な損失を与えている。日本は1兆ドル(100兆円)の外貨準備を保有している。10円の円高が進行すると10兆円の損失が発生する。

100兆円の外貨準備を蓄積した期間の円ドルレートは1ドル=100円から1ドル=135円のレンジを中心に変動してきたから、ドル買いの平均コストは1ドル=110円程度だろう。円ドルレートが1ドル=90円になれば、20兆円程度の評価損が生まれてしまう。

外貨準備を100兆円に膨張させ、ドル上昇時にも外貨準備を減少させてこなかった責任を追及しなければならない。外貨準備を100兆円も蓄積する理由はまったく存在しない。

2002年10月から2004年3月にかけての1年半に外貨準備は47兆円も増加した。この期間に日本が米国に47兆円の資金を提供してドルを買い支えなかったなら、米国は超低金利政策を維持できなかった。金利引き上げに追い込まれていたはずだ。

日本政府が47兆円ものドル買いを実行したから、米国は超低金利政策を長期間維持した。この超低金利政策が米国の不動産バブルを生み出す原動力になった。米国の不動産バブル発生の遠因は日本政府の過剰なドル買い介入にあったと言うこともできる。

今回の金融危機に際して、日本の外貨準備を活用するとの話が浮上しているが、国民の同意を取ることもなく、政府の一存で外国に資金を提供することは間違っている。自公政権内部に、米国への資金提供を推進する勢力が存在するが、国会は「売国政策」の実態を明らかにして、「売国勢力」を早急に排除しなければならない。

この問題に関連して、政治評論家の森田実氏が2007年2月25日に、極めて重大な記事を掲載されていた。ある法曹家がメールでこの重要な事実を知らせてくれた。

記事は森田実氏のHP内の連載「森田実の時代を斬る」の2007年2月25日付記事だ。以下に引用する。

 
森田実の言わねばならぬ[82]

アメリカ国債を売らない約束

 05年5月に発売された週刊新潮で、櫻井よしこさんは「必ず中国は、台湾を軍事的に攻める。それを跳ね返すのは、日本の軍事力だ」という趣旨のことを書きました。この主張は、アメリカは戦争ができないという見方を前提にしているように見えます。
 アメリカは、日本に国債を買わせてアメリカの財政をつないできたのですが、もう日本だけでは足りないのです。日本も2015年くらいになると、アメリカにすべて吸い取られてしまうという分析もありますが、アメリカは、中国とインドに国債をもたせて「アメリカ帝国」を維持する方針のようです。中国にたくさんのドルを持たせて、その一部を国債にさせているのです。
 2002年2月18日の日米首脳会談で、アメリカに対し「日本がもっている国債は売りません」と、小泉が約束してしまっています。日本では明らかにされていませんが、事実です。ブッシュは帰国後、興奮して「アメリカ外交の勝利だ」と言ったそうです。
 そのことを教えてくれたチェイニー副大統領のスタッフに、「小泉は『あるとき払いの催促なしでいいよ』と言ったのか」と聞いたのですが、「アメリカには、そんな曖昧な表現はありません」と言うのです。「ブッシュの報告は、どのように理解されたのか」と聞くと、「いただいたとアメリカ側は理解している」と言いました。
 「アメリカはただただ奪うだけではないか、ひどすぎる」と私が言うと、彼は「ブッシュは小泉に、小泉が一番ほしいものを与えています」という返事が返ってきました。それは「小泉さんには、ブッシュは日本の政治史上最も偉大なるリーダーだという誉め言葉を与えています。ブッシュが歯の浮くようなお世辞を小泉に言い続けてきたのは、400兆の金をくれたことに対するお礼なのです」と彼は言いました。日本人にとっては冗談ごとではないと思います。
 中国は、相当のアメリカ国債をもっています。アメリカが中国に対して変な行動をしたら、アメリカ国債を売り払うことができます。そうするとアメリカ国債は暴落し、アメリカはパニックに陥ります。ですからアメリカは、中国に戦争を仕掛けたりオリンピックを潰すとかはできないでしょう。中国は安全保障の目的で、アメリカ国債をもっているのです。中国が、アメリカ国債を手放せば、アメリカの経済は潰れてしまいます。「どうぞ」といって金をあげてしまった日本は、まったく愚かです。
 4月の都知事選と7月の参院選で、共和党の手先になってしまった石原と安倍を信任したなら、日本は世界の笑い者になると思います。アメリカでは、昨年11月の中間選挙で「もうブッシュはたくさんだ」という結果がでました。下院においては大差で民主党が勝利し、ブッシュは完全に潰れたのです。ブッシュ政権は、自分たちの考える政治システム、アメリカの言葉どおりいえば「アメリカの民主主義」を、力をもってでも押しつけるという力の政策です。もう1つの側面は、アメリカ共和党が推進する経済政策を、世界の基準・グローバル・スタンダードにするのだという姿勢です。
 この両方が、11月の中間選挙で否定されたのです。 

(ここまで引用)

「400兆円の金をくれたこと」とは、郵貯、簡保、外貨準備を指している。

郵政民営化は米国政府の要請に沿って細目が定められた。郵政民営化は、小泉元首相の個人的怨恨(ルサンチマン)、銀行界の要請、米国の要望の3者の意向が融合して推進されたと見られる。小泉元首相は落選した最初の総選挙の際、特定郵便局が選挙支援してくれなかったことに強い恨みを抱いたと伝えられている。

米国は1994年以降、日本政府に突き付けてきている内政干渉文書=「年次規制改革要望書」で、郵政民営化を最重要要請事項に位置付けてきた。郵貯・簡保の350兆円の資金に狙いをつけている。

要望書では郵便貯金、簡易保険の商品特性を低下させるための具体的提案が満載されている。一方で、日本で米国保険会社が得意とする医療保険商品の販売戦略を急激に拡大させた。

また、郵貯資金を米国金融危機対応に流用するための工作活動も活発化させている。日本郵政は一等地不動産を大量保有しているが、民営化会社は不動産開発を積極化させている。将来、郵政会社株式が売却された段階で、米国資本が株式を取得することも念頭に入れていると考えられる。

外貨準備の100兆円、郵貯・簡保の350兆円の資金を、米国は丸取りしようと考えているのだ。問題は、日本の政治中枢に売国勢力が入り込んでしまったことだ。その中心が小泉竹中政権であったと考えられる。現在の自公政権は、その延長上に位置する。自民党では、清和政策研究会(町村派)が実権を握っている。清和研政治が対米隷属政治の基礎を支えていると判断される。

日本は経常収支で黒字計上を続けているが、経常収支の黒字は国民が働いて稼いだお金を国内で使い切らずに余らせて、その余剰資金を海外に提供していることを意味している。

汗水たらして働いたお金を稼いでも、倹約でお金を使い残し、そのお金を海外に提供している。しかし、海外に提供したお金は、円高で目減りしたり、債務免除で棒引きされてきた。

米国にとってこれほど便利な国はない。ブッシュ政権が小泉政権を絶賛したのは、小泉政権が米国の言いなりになって、侵略戦争に率先して協力し、米国への巨大な利益供与に応じてくれたからだと考えられる。

この危険な構造を維持してはならない。外貨準備問題を追及することで、小泉政権以来の政権の「売国体質」の実態を人々に知らせることができる。外貨準備を早急に圧縮すると同時に、日本政府の外国政府への資金融通を全面的に円建てに切り替える制度変更を決定するべきだ。

日本国民を犠牲にして、外国勢力に利益供与する政権を、直ちに排除しなければならない。

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2008年10月26日 (日)

「朝まで生テレビ」田原総一郎氏の偏向

10月24日深夜のテレビ朝日番組『朝まで生テレビ』が、「世界金融危機とニッポン」をテーマに設定して放映された。司会の田原総一郎氏は、「こんな時に総選挙をやっている場合ではない」と強引に論議を誘導した。総選挙から逃げ回る麻生政権の意向を受けての対応だと考えられる。

田原氏は小泉・竹中政権のテレビ広報部長とも言える存在だった。世界の流れが変化して、小泉・竹中路線が全面否定され始めている。当然の変化であり、総括が必要である。田原氏も当然、総括の対象になる。

田原氏は番組内で、小泉竹中路線から遠ざかりたいとの意向を鮮明に示していた。風向きの変化を認識し、ポジションを移動しようとの必死の思いが伝わってきたが、かたはらいたい姿だった。世の中はそこまで甘くない。市場原理主義=新自由主義の終焉とともに、田原氏が画面から消える日も遠くないと思う。

 

朝日放送が謝罪放送を行うことで和解が成立した訴訟について、「カナダde日本語」様「生き抜く力」様「晴天とら日和」様「kobaちゃんの徒然なるままに」様「植草一秀氏を応援するブログ」様「_~山のあなたの空遠く幸い住むと人のいう~」様Japonesian Trans-ApocalypseTrans-Modern New Platonic Trans-Creation, or philosopractical chaosmos」様Easy Resistance」様「階級格差社会をなくそう」様「自公政権打倒のために集まろう」様「私たちはみている」様「サラリーマン活力再生」様飄(つむじ風)」様「パタヤの風に吹かれて」様「空に向かって」様「ギャラリー酔いどれ」様「感動・感激・感謝ほねつぎ奮闘記」様「憲法と教育基本法を守り続けよう」様「原始人の日記・ぼやき・独り言」様をはじめ、多くの皆様から、ありがたい紹介ならびに温かいお言葉を賜りました。心より感謝申し上げます。

なお、9月下旬以降、これまでに多くの皆様から、本ブログ記事の紹介、ならびにありがたいお言葉を賜っておりますが、紹介できておりません。改めて、紹介させていただきます。

 

今回の金融危機はこれまでの危機とは属性が異なる。米国の評論家チャールズ・モリス氏は著書『なぜ、アメリカ経済は崩壊に向かうのか』で、米国の金融危機を生み出した原因が、1990年代の日本に見られた「資産バブル」ではなく、「信用バブル」であるとの見解を示している。

日本の金融危機は資産価格がピークから5分の1、10分の1に暴落したことによって発生した。資産取得のために提供された融資資金が資産価格暴落で、不良債権の塊に変質してしまったのだ。200兆円の融資資金のうち、150兆円程度が損失になった。1990年から2005年にかけて、この損失が処理された。問題解決に15年の時間を要した。

これまでも記述してきたように、米国の不動産価格下落は現状では、ピークから2割下落しただけに過ぎない。サブプライムローン残高1.3兆ドル(130兆円)の2割が損失になったとしても、その金額は26兆円にすぎない。

米国政策当局はすでに1兆ドル(100兆円)以上の公的資金投入の方針を表明している。しかし、金融市場の動揺はまったく沈静化していない。その理由は、米国の金融危機が「資産価格下落による損失」によって生じたのではなく、幾何級数的に拡大した「デリバティブ金融バブルの破裂」によって生じているからなのだ。

「カジノ経済」の必然的な帰結が今回の金融危機なのである。サブプライムローンに関係するデリバティブ金融の想定元本は6000兆円存在すると見られている。5%のロスが生じるとしても、損失額は300兆円に達する。現在の各国政府の対応では、問題処理終結が見えてこない。

しかも、根源的な背景である不動産価格下落は、まだ4合目近辺にしか達していない。2010年にかけて、不動産価格下落が進行すると予想されている。不動産金融不況はこれから到来するのだ。安易な見通しが成り立つ状況ではない。

「朝まで生テレビ」で、看過できない問題が三つあった。

第一は、竹中金融行政に対する正確な論評が示されなかったことだ。森永卓郎氏がひとつの正論を懸命に主張していたが、大村秀章氏や伊藤達也氏などが大声を出して森永氏の発言を遮るなどしたため、十分な説明がなされなかった。

第二は、世界金融危機に対する日本政府の資金支援についての論争が不完全だったことだ。

第三は、金融危機と政治との関わりを捉える歴史的視点が欠落するなかで、総選挙先送り論を強引に押し付ける田原氏を一刀両断する発言が示されなかったことだ。

2003年から2006年にかけて、不良債権問題が縮小したのは、資産価格が上昇したからだ。資産価格が下落する局面では、金融機関の損失が必ず表面化する。金融機関は苦境に追い込まれるが、損失を処理してしまえば、その後は楽になる。資産価格が上昇すると利益が発生し、状況は劇的に改善する。

2003年にかけて、日本の資産価格が暴落した。小泉・竹中経済政策が景気悪化推進政策を採用し、大銀行破たんを容認すると受け止められる言動を示したからだ。日本国民にとって「百害あって一利なし」の政策が実行された。

小泉・竹中政権が日本国民にとって「百害あって一利なし」の政策を実行した理由は、その政策が日本国民には「百害あって一利なし」だったが、外国資本にとって「百利あって一害なし」のものだったからだ。

「百害あって一利なし」の第二次大戦後最悪の経済状況がもたらされた。どれだけ多くの罪なき国民が失業・倒産・経済苦自殺の無間(むげん)地獄に送り込まれただろうか。日本経済は2000年にようやく再浮上しかけた。経済成長を持続させれば、金融問題は解決に向かう態勢が整っていた。

小泉・竹中経済政策は回復途上の日本経済を、意図的に大不況に誘導した。その結果、日本経済は金融恐慌の淵に差しかかった。ところが、最終局面で、金融行政における「自己責任原則」が放棄され、りそな銀行が2兆円の公的資金で救済された。「不正と欺瞞」の金融行政が実行された。

税金で大銀行が救済されたことから、資産価格は急激な上昇に転じた。当然の結果である。その後の資産価格上昇に伴って金融機関の不良債権が急減したのも当然だ。1990年から2003年までの13年間に、金融機関は超低金利政策によって、巨大な実質補助金を得ていた。年間7兆円の業務純益が13年蓄積されれば90兆円に達する。預金者である国民の犠牲によって得られた補助金だ。

超低金利政策がもたらした金融機関への補助金と、資産価格上昇によって不良債権問題は急激に縮小した。2000年の景気回復を政府が維持していたなら、金融問題ははるかに軽微で、早期に解決していたはずである。小泉・竹中政権は、日本国民を地獄に突き落とし、「不正と欺瞞」の金融行政に手を染めた。小泉・竹中経済政策は完全に破綻した。この真実・真相・深層が正しく知られなければならない。

2003年から2005年にかけての不良債権縮小は政策の成果によってもたらされたものではない。地獄を見たから、荒れ地が草原のように目に映っただけである。最大の問題は、これらの政策が米国資本への利益供与を目的に実行された疑いが濃厚なことだ。詳細は拙著『知られざる真実-勾留地にて-』をご高覧賜りたいが、「売国政策」の実態が、必ず明らかにされなければならない。

2002年10月から2004年3月にかけて、小泉政権は47兆円のドル買い・円売り介入を実施した。外国資本が日本資産を低いコストで買い占めることを日本政府が支援したと考えられる。また、47兆円の資金が日本資産買占めの資金として提供されたと考えられる。

これが第二の問題だ。今回の金融危機に際して、日本の外貨準備を活用するとの話が浮上している。すでに、中川昭一財務相兼金融相は10月11日のIMFC(国際通貨金融委員会)で、具体的提案を示している。この提案は撤回されなければならない。

この問題を国会は全面的に取り上げなければならない。「売国政策」の核心である。日本が100兆円の外貨準備を保有する理由は皆無だ。野晒しの100兆円外貨準備は、自宅前の路上になけなしの全財産をむき出しで放置するようなものだ。

円ドルレートは1ドル=90円の円高を記録した。自民党の鶴保庸介参議院議員が予算委員会で質問したため、1ドル=99円で外国為替資金特別会計の積立金がゼロになることが明らかにされた。1ドル=90円になれば、9兆円の損失が生まれる。

1.8兆円の補正予算を成立し、さらに5兆円の補正予算が検討されているが、これらの予算規模を吹き飛ばしてしまう損失が生まれつつある。原因は、100兆円もの外貨準備を野晒しにしていたことにある。

野党は政府の責任を徹底的に追及しなければならない。外貨準備を100兆円にまで拡大させた責任、ドルが上昇した局面で外貨準備を減少させなかった責任、そして、2002年から2004年にかけての異常なドル買い介入の本当の理由が明らかにされなければならない。

「朝まで生テレビ」では、自民党の大村秀章氏と伊藤達也氏、さらに公明党の高木陽介氏が、米国への資金提供に賛成意見を述べていた。10月19日付記事「外貨準備を監視する法律を整備せよ」に記述したように、竹中平蔵氏、渡辺喜美氏、小池百合子氏、石破茂氏、高橋洋一氏、中川秀直氏などが、米国への資金提供を推進している。

日本は米国の植民地ではない。対米隷属派を政治の中枢から排除しなければならない。大村秀章氏は2003年から2004年にかけての35兆円のドル買い介入をフリップに示して、米国への資金提供を提案していた。また、執拗に円高回避の必要性を訴えていた。輸出製造業と深い関係があるのだろうか。

民主党の大塚耕平議員は、米国に対して、円建て米国国債発行を要求するべきだと発言したが、当然の提案だ。より重要なことは、100兆円の外貨準備を早急に圧縮することだ。外貨準備は20-30兆円程度保持していれば十分である。

第三は、日本の政治についての論議に、今回の金融危機が「市場原理主義の終焉」、「新自由主義の終焉」を意味しているとの視点が欠落していたことだ。上述したチャールズ・モリス氏は著書のなかで、米国の政治思潮が25-30年周期で転換する傾向があることを指摘した政治学者アーサー・シュレジンジャー氏の主張を紹介している。

1980年代のレーガン政権誕生以来、新自由主義が世界経済を覆っていった。ミルトン・フリードマン氏が『選択の自由』を発表したのも1980年前後である。これから約30年の時間が経過し、ひとつの時代が終焉しつつある。

「市場原理主義」が蔓延し、金融市場の「カジノ化」が際限なく進行した。その必然の帰結が今回の金融危機である。「市場原理主義」がもたらした「弱肉強食社会」において下層に追い込まれた多数の国民は、富と所得を独占し続けた特権富裕層の象徴である「ウォール・ストリート族」を救済するための公的資金投入に、激しく反対するだろう。この「階級対立」が問題解決をより困難にする。

日本の総選挙は、時代の大転換点に位置するなかで、日本国民が新しい時代に対応する政権を選択する選挙である。新しい時代に対応し、根本的な体制転換を含めて、金融危機に対応するためには、総選挙が不可欠なのだ。

米国も11月4日に大統領選挙を実施する。新しい時代に対して、新しい政治体制が構築されることは、望ましいことである。田原総一郎氏が、不自然かつ強引に、論議を総選挙先送りに誘導するのは、麻生政権からの特命を帯びているようにしか映らない。

10月26日の『サンデープロジェクト』で、田原氏が同様の論議を誘導するなら、「政治的中立」を定める放送法にも抵触しかねない。重大な問題行動だ。

麻生政権は総選挙から逃げ回り、「政局より政策」と主張するが、「本格的な政策」を実行するには「本格的な政権」がどうしても必要だ。田原氏は、民主党に擦り寄るための時間を確保したいのかも知れないが、公共の電波を私的な目的に使用することは慎んでもらいたい。

「本格的な政策を実現する」ために、総選挙が求められている。「朝まで生テレビ」に出演した堀紘一氏は、2009年3月期決算での企業保有有価証券の時価評価先送りと、企業向けの融資拡大に向けての政府から銀行への指導強化・強制を、番組出演の国会議員に懇願していたが、私的に重大な問題を抱えているようにしか見えなかった。

日本政府が今回の金融危機、不況に、抜本的に対応しなければならないことは言うまでもない。しかし、日本政府が輸出大企業と米国の手先となって、円高抑制と米国への献金だけを追求するのでは、日本国民は不幸になるばかりだ。与野党で目指す政策の方向がまったく異なっている。主権者である国民の意向に沿った政策を実行するには、政府が本格的政策対応に入る前に、総選挙を実施し、政治体制を確立することが必要だ。

「格差社会」から「福祉社会」へ。政治が目指す方向が大転換する。変化する時代、変化する国民の思潮に政治が乗り遅れないために、総選挙の早期実施が必要だ。野党は、経済が歴史的転換点に位置していることを正確に国民に伝達し、早期の総選挙実施に対する国民の理解を得るよう、全力をあげるべきだ。

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2008年10月24日 (金)

朝日放送名誉毀損訴訟「お詫び放送」で和解

昨日10月23日、東京地方裁判所民事39部において、朝日放送株式会社に対して提起していた名誉毀損訴訟につき、和解が成立した。

本件は朝日放送が2006年9月21日に放送した番組「ムーブ!」中の「ムーブ!マガジンスタンド」のコーナーにおいて、週刊誌「女性セブン」に掲載された記事を取り上げ「原告が痴漢を行った過去7件の被害者について、示談が成立したために、これらの事件が明るみに出なかった」との事実無根の虚偽内容の記事を公表し、私の名誉を著しく傷つけたことに対して損害賠償を求める訴訟を提起したものである。

和解の骨子は以下の通り。

1 朝日放送は、上記放送が事実無根の情報を伝え、植草氏の名誉を毀損したものであることを認め、植草氏に謝罪する。

2 朝日放送は、和解金を植草氏に支払う(金額は公表しない旨合意した)。

3 朝日放送は、和解で確定した内容の文章を2回読み上げる方法でお詫び放送を行う。

4 朝日放送は、上記3のお詫び放送を行う間、画面にお詫び文の要旨を表示する。

弁護団団長の梓澤和幸弁護士は山梨学院大学法科大学院教授をも務められ、『報道被害』(岩波新書)他多数の著書を執筆されている報道被害訴訟の第一人者であり、弁護団の先生方は同分野の権威ばかりである。報道被害訴訟における今回和解の意義については、下記の弁護団配布資料のなかの「和解のポイント」に記述されているので、ご高覧賜りたい。

また、ひらのゆきこ様高橋清隆様が、本件についても、誠にありがたい取材と記事執筆をして下さってきた。この場を借りて、深く感謝申し上げたい。

現在、最高裁で係争中の刑事事件について、私は一貫して無実の真実を訴え続けている。しかし、多くのメディアが事実無根の虚偽の情報を流布し、印象操作が繰り広げられた。そのことによるダメージは計り知れない。

公表されている事件以外に、私が警察と係わった事案は1件も存在しない。公表された事件については、拙著『知られざる真実-勾留地にて-』にその概要を記述し、無実潔白の真実を訴え続けている。

現在係争中の刑事事件では、私を逮捕したという民間人が存在するが、犯行場面をまったく目撃していない。被害者も後ろを振り返ったが、犯人を直接目撃していない。また、被害者は犯人を掴んでもいない。犯人の手を目撃してもいない。

検察側の目撃証人は警察に出頭した日が2006年9月15日であったにもかかわらず、公判では9月16日に初めて警察に出頭したと証言した。公判では弁護側代理人から検察側証人に対して、警察に出頭するまでの経緯が詳細に尋問された。事件のあった9月13日の翌日にヤフーニュースで事件を知り、その翌日の15日に被疑者が否認していることを知り、京急のコールセンターに電話して蒲田警察署に電話するように言われた。蒲田警察署に電話して話した結果、翌日の16日に蒲田警察署に出頭した経緯が詳細に証言された。

ところが、当初開示されていなかった実況見分調書が開示された結果、検察側証人が9月15日に警察署で実況見分調書を作成していたことが発覚した。検察サイドは9月15日に実施した実況見分を隠ぺいしたかったのだと考えられる。

また、被害者調書では、事件発生当初以降、被害者は検察側証人と目が合ったとの供述を一切していなかったのが、9月下旬に被害者が検察庁に出頭したところから、検察側証人に目で合図した話が突然現れた。

検察側証人が出現して、被害者が検察側証人を認識していたとの架空のストーリーが後から作られたのだと考えられる。

検察側証人が法廷で詳細に説明した、証人と被害者等との距離は、現実の電車の図面に置き換えると、被害者が立っていた位置との距離とはまったく異なることも明らかにされた。検察側証人の証言は、あとから開示された実況見分調書とぴったり符合していることから、検察側証人は、実況見分調書作成時に作ったストーリーと再現実験を思い出しながら証言したのだと考えられる。

これらの問題については、「植草一秀氏を応援するブログ」様に膨大なデータが保管されており、mojoコメント備忘録」様「植草一秀氏の事件」様「植草事件の真相」様、をはじめとする多くのサイトにに多くの有益な情報が蓄積されている。ぜひ、ご高覧賜りたい。

さらに、検察側目撃証人は犯人の顔および左手を注視したと証言したが、眼鏡、肩かけバッグ、容貌、左手にかけていたとされる傘、などの諸点で、私が犯人であるとの仮説と完全に矛盾する証言を示した。

他方、事件発生当日、たまたま同じ電車に乗り合わせた乗客が名乗り出て、法廷で証言してくれた。この証人は私が無実であることを確実に証明する重大な証言をしてくれた。その証言内容は客観的に極めて信用性の高いものだった。

また、警察は私の手の付着物の鑑定を行ったが、該当する繊維が発見できなかったため、勾留期限終了間際に、あわててネクタイ鑑定、背広鑑定を実施した。しかし、当該繊維は発見できなかった。

科学警察研究所の繊維鑑定教科書によると、繊維鑑定では、顕微分光光度計を使用することにより、繊維の色調を主観的ではなく、プロファイル(波形)で客観的に評価、比較することができるとのことだ。警視庁科学捜査研究所が顕微分光光度計を利用できない可能性はない。

顕微分光光度計で私の手やネクタイに、女性が着用していたスカートの構成繊維が存在しなかったことを確認したために、その鑑定結果を開示していないのだと考えられる。

2006年5月23日の第164回通常国会の参議院法務委員会第19号議事録に、警察庁刑事局長網田修政府参考人答弁、「誤りのない捜査を厳格に行うということで、微物、繊維片の鑑定の積極的活用、繊維片等の異同識別をしっかりやるということを指示をしてございます」が掲載されている。警察庁は一線の警察に繊維鑑定をしっかりやるように指示を出しているのである。

弁護側代理人は、顕微分光光度計を用いた繊維鑑定を控訴審でも請求した。弁護側が実施した大学教授による専門家鑑定では、私の手から採取された3本の青色獣毛繊維は、蒲田駅駅員が着用していた制服の構成繊維と「極めて類似している」という結論が得られている。被告サイドが、より精度の高い分光光度計での繊維鑑定を求めているのに、その請求を認めないのは、審理不尽と言わざるを得ない。

控訴審での弁護側主張内容はNPJサイト控訴審第1回公判傍聴記」に示されているので、ぜひご高覧賜りたい。

この冤罪事件の重大な問題点については、改めて報告することとする。

刑事事件係争中の事案については現在、上告審で係争中であるが、法廷の場にとどまらずに無実の真実を明らかにするために闘い抜いて参る覚悟でいる。

名誉毀損損害賠償請求訴訟では、5件の訴訟ですべて、勝訴ないしは当方の要求を満たす和解を勝ち取ることができた(一件は控訴審へ移行)。一連の訴訟活動においては、梓澤和幸先生を団長とする7名の弁護団の先生より、身に余る多大のご支援とご尽力を賜ってきた。勝訴はその賜物である。この場を借りて弁護団の先生各位に心からの謝意を表明申し上げたい。

以下は、昨日の和解成立後の弁護団による記者会見で配布した弁護団作成資料と私のコメントである。

原状回復には程遠いが、「真実は必ず勝利する」の言葉を改めて胸に刻み、一歩ずつ進んで参りたい。

和解のご報告

2008年10月23日

植草一秀氏名誉毀損訴訟弁護団

本日、東京地方裁判所民事39部において、植草一秀氏が朝日放送株式会社に対して提起していた名誉毀損訴訟につき、和解が成立しました。

(番組の内容)

訴訟で問題とされていた放送は、朝日放送が2006年9月21日に放送した番組「ムーブ!」中の「ムーブ!マガジンスタンド」のコーナーにおいて、週刊誌「女性セブン」に掲載された記事を取り上げ「原告が痴漢を行った過去7件の被害者について、示談が成立したために、これらの事件が明るみに出なかった」との情報を伝えたというものでした。

(和解の骨子)

1 朝日放送は、上記放送が事実無根の情報を伝え、植草氏の名誉を毀損したものであることを認め、植草氏に謝罪する。

2 朝日放送は、和解金を植草氏に支払う(金額は公表しない旨合意した)。

3 朝日放送は、和解で確定した内容の文章を2回読み上げる方法でお詫び放送を行う。

4 朝日放送は、上記3のお詫び放送を行う間、画面にお詫び文の要旨を表示する。

(和解のポイント)

本件は、対小学館「女性セブン」事件(下記①)で問題となった記事を、朝日放送が、上記のとおり放送したことに関する名誉毀損訴訟です。①事件が下記の結論となっていることから当然と言えますが、朝日放送がその雑誌の発売日に自らは何も取材をすることなく番組で記事を事実であるかのように取り上げ、植草氏の名誉を毀損したことについて、和解条項において謝罪をし、しかるべき金額の和解金を支払い、且つ、「お詫び放送」を行うこととなりました。

近時よく見られる、雑誌等の記事を、自らは何らの取材をすることなく安易に取り上げ、記事内容を真実であるかのように放送する手法の問題性が、本和解によって明確にされました。

また、この種の訴訟で放送メディアが「お詫び放送」を認めたことの意義は大きいと言えます。

(これまでの経緯)

植草一秀氏の虚偽の前科に関わる報道について提訴した下記の各訴訟は、仮に刑事事件の対象とされた人に対してであっても、個人の尊厳は何ものに優るという価値(憲法13条、憲法前文における基本的人権尊重主義)に立脚すれば、水に落ちた犬は叩けと言わんばかりの「弱いものいじめ」の報道は決して許されるものではないとの立場から提訴に及んだものです。

刑事事件に関わる相当な範囲での報道は、報道の自由の保障が及ぶ場合が多いでしょう。

しかし、提訴した5件の訴訟で問題とした記事は、植草氏の前歴等についての虚偽の事実を伝えるものであり、しかも、十分な取材が尽くされたものとは言えず、記事としての真実性・相当性を欠くものでありました。

以下は、関連訴訟に関する現在までの経過です。

①対小学館(女性セブン) 東京地裁民事第41部
 2008年4月4日、同誌への謝罪文の掲載及び植草氏への100万円の支払を内容とする和解が成立しました。なお、謝罪文は同誌6月12日号に掲載されました。

②対徳間書店(アサヒ芸能) 東京地裁民事第34部
 2008年5月21日、植草氏に対する名誉毀損を全面的に認め、同氏への190万円の支払を命ずる判決が下され、既に確定しています。

③対講談社(フライデー) 東京地裁民事第33部
 2008年7月28日、植草氏に対する名誉毀損を全面的に認め、同氏への110万円の支払を命ずる判決が下され、既に確定しています。

④対毎日新聞社(サンデー毎日) 東京地裁民事第42部
 2008年9月8日、被告毎日新聞社に対して33万円の支払を命じる判決が下されましたが、毎日新聞社が控訴しました。

以上

  

対朝日放送株式会社(「ムーブ!」)和解成立についてのコメント

                                    平成20年10月23日

植 草 一 秀

今回の和解は、朝日放送株式会社が2006年9月21日に放送した番組「ムーブ!」において、株式会社小学館発行の週刊誌「女性セブン」が報じた事実無根の内容を、裏付けをまったく取らずに事実であるかのようにそのまま報道し、私の名誉を著しく毀損したことに対して損害賠償を求めて提起した訴訟について成立したものです。

裏付けをまったく取らずに事実無根の虚偽情報をそのままテレビ番組で報道した点で、極めて悪質であると言わざるを得ません。

今回、和解条項に、

1.朝日放送は上記放送が事実無根の情報を伝え、植草氏の名誉を毀損したたものであることを認め、植草氏に謝罪する。

1.朝日放送は、和解金を植草氏に支払う(金額は公表しない旨合意した)。

1.朝日放送は、和解で確定した内容の文章を2回読み上げる方法でお詫び放送を行う。

1.朝日放送は、上記3のお詫び放送を行う間、画面にお詫び文の要旨を表示する。

が盛り込まれたために、判決を求めず、和解に応じました。通常の判決では謝罪放送が命じられる可能性が低いなかで、適正な方法により謝罪文書を2度読み上げ、謝罪内容を文字で表記して番組で放送することが確約されたことを重視して、和解による問題収拾を図ったものです。

社会に多大な影響力を持つメディアは報道にあたり、十分な事実確認、適正な裏付けの確保を求められています。虚偽情報の流布により人間の尊厳は大きく損なわれます。報道に関わるすべての言論機関、言論人にはこのことを改めて強く認識していただきたいと思います。

以上

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2008年10月23日 (木)

「逃げ回る」醜態を晒す麻生首相

10月13日付記事「デリバティブ金融危機の津波は残存する」に記述したように、世界の株式市場の波乱は残存している。各国政府が公的資金投入の方針を示し、株価は一時反発した。麻生首相は、日本が資本注入を提唱し、各国が方針を決定したと述べ、日本が金融危機打開へのイニシアティブをとったかのような発言を国会答弁で示した。しかし、現実の金融危機対応での日本の存在感はほとんどない。

11月15日にワシントンで開催されることが決まった「金融危機サミット」も、フランスのサルコジ大統領が提唱し米欧の間で協議されて決まったものだ。サミット議長国は日本で、麻生首相は成田での短時間のサミット開催構想を提示したが、主要国から完全に無視された。サミット議長国である日本に打診もなく、ワシントンでサミットが開催されることになった現実は、麻生首相が外交上の存在感をまったく認識されていないことを象徴している。

日本の1990年代から2003年にかけての金融危機処理は、最悪の金融処理の実例でしかない。住専問題が表面化したのは、1992年である。問題処理における「隠ぺい、先送り、場当たり」の三原則が、日本の金融問題処理の特徴だった。

1996年には住専処理に6750億円の公的資金が投入された。1997年に北海道拓殖銀行等の破綻が生じ、1998年に公的資金による資本増強が実施されたが、本格対応には程遠いものだった。その後、長銀破綻、日債銀破綻が生じ、巨額の公的資金投入が実施された。

事態はいったん改善に向かったが、2001年発足の小泉政権が日本経済破壊政策を実施し、株価暴落と金融危機をもたらした。最悪だったのは、小泉政権が「大手銀行の破綻も辞さない」と公言しておきながら、最終局面で大手銀行を税金で救済したことだ。

竹中平蔵氏は10月19日のテレビ朝日番組で、りそな銀行処理に際して、「経営者を入れ替えた」と発言し、責任追及を実施したかのような説明をしたが、まったくの詭弁である。金融機関が破綻する場合、問われるべき第一の責任は「株主責任」である。竹中金融相は株主責任を問うどころか、2兆円の公的資金投入で株主に利益を供与したのだ。

りそな銀行経営陣は、小泉政権の経済政策を堂々と批判する気骨ある優良経営者であった。りそな銀行は監査法人、会計士協会と連携した政策当局に陥れられた疑いが濃厚なのだ。詳細は拙著『知られざる真実-勾留地にて-』に記述したので、是非ご一読賜りたい。竹中金融相はりそな銀行幹部が小泉政権批判を公言していたから、りそな銀行を標的にした可能性が高いのだ。

りそな銀行幹部が追放され、小泉政権近親者がりそな銀行幹部に送り込まれた。その後、りそな銀行が自民党への融資を激増させ、その事実を報道した朝日新聞記者が東京湾で遺体となって発見されたことが伝えられている。朝日新聞は記者の死亡と記事とは関係ないと説明しているが、真相は明らかにされていない。

2003年の金融処理は、日本の金融行政史上最大の汚点と言って間違いない。金融危機が表面化して、責任ある当事者である金融機関を税金で救済すれば、悪い実例が歴史に刻まれることになる。銀行のハイリスク経営、放漫経営は抑制されるどころか、助長されてしまう。これを「モラル・ハザード」という。

世界的な金融危機の拡大に対応して、各国政府が金融機関への公的資金投入策を提示しているが、重大な「モラル・ハザード」を引き起こす可能性を十分に考えなければならない。金融と政治権力とは癒着しやすい傾向を有している。金融資本が政治権力の裏側に存在していることも多い。

10月22日、米国大手銀行ワコビアの2008年7-9月期決算が発表された。最終損益は237億ドル(約2兆4000億円)の赤字になった。サブプライム金融危機の余波が依然として、激烈であることを示している。NYダウは前日比514ドル安の8519ドルに急落した。10月10日の8451ドルに接近した。

日経平均株価も10月10日に8276円まで急落したのち、10月15日には9547円まで反発したが、10月23日午前には、一時8016円まで下落している。株価の底値はまだ確認されていない。

米国の不動産価格下落がまだ4合目程度しか通過していないと見られる。米国の金融危機の原点は不動産価格下落にあり、不動産価格下落がデリバティブ金融商品の拡散によって、巨大損失を発生させている。金融危機の全貌はまだ明らかになっていない。

欧米市場での金融問題拡大を背景に、為替市場では欧米通貨が急落している。また、原油を中心とする商品市況も急落している。日本は、相対的に金融危機の程度が軽微であり、日本円が主要通貨および商品に対して値上がりしている。

円ドルレートは10月23日の東京市場で、1ドル=97円台に上昇している。円は、米ドルだけでなく、ユーロ、ポンド、加ドル、豪ドルなどに対しても急反発している。

1ユーロ=170円(本年7月)が

1ユーロ=124円に、

1ポンド=215円(本年7月)が

1ポンド=157円に、

1加ドル=107円(本年月)が

1加ドル=77円に、

1豪ドル=104円(本年7月)が

1豪ドル=63円に、

急変している。

 日本円は、米ドルに連動して、2000年から2008年にかけて暴落してきた。行き過ぎた金融緩和政策が円暴落の原因だった。米国が超金融緩和政策を実施し、ドル暴落の危機に直面したが、日本政府は50兆円以上の円売り、ドル買い介入を実施して、米ドルの暴落回避に協力した。日本が米国のドル暴落路線に道連れにされたと表現することもできる。

 日本政府は1兆ドル(約100兆円)の外貨準備を野晒(のざら)しにしている。円ドルレートが1円円高になるごとに、1兆円の評価損が発生する。野党は国会で、為替レート変動に伴う外貨準備の損失と、外貨準備を放置した責任について、政府を徹底的に追及しなければならない。

 現存する外貨準備については、早急に残高を圧縮する必要がある。景気対策も社会保障関係支出も、国会で財源を論議している間に、日本の損失が激しく拡大してしまうからだ。

 政府は臨時国会に、地域金融機関に対して公的資金による資本注入を可能にする金融機能強化法改正案を提出する。強化法改正案が農林中金まで対象としており、「信用収縮対策」と「金融機関支援」の二つの関係が問題になる。

 国民の税金を投入するのは、「金融システム」という「社会の公器」を守ることに限定しなければならない。「金融」と「政治権力」は癒着しやすい。現実に癒着している。「金融システムを守る」の言葉を隠れ蓑にして、「金融機関への補助金」が投入され、政治と金融機関の癒着が強められてきた過去が存在する。野党は「責任処理を伴わない公的資金投入」を認めるべきでない。

 麻生首相は、『文藝春秋2008年11月号』の表題に「小沢代表よ、正々堂々と勝負しよう。私は絶対に逃げない」と明記しておきながら、逃げの一手に転じている。一国の首相が、活字にして全国民に明らかにした決意を実行しないのでは、世間の笑いもの以下になる。

 野党は、首相が求めた補正予算成立、テロ特措法議決、に全面協力した。総選挙への買収工作である「追加景気対策」を発表することも容認している。これだけの条件がそろえば、解散総選挙を回避する理由はなくなる。

 金融危機は発生しているが、金融危機は今後、数年間は持続する可能性が高い。米国でも大統領選挙は予定通り実施される。時代は大きな転換点にさしかかっている。国民の審判を仰ぎ、本格政権を樹立して、新しい時代に対応するべきである。

 市場原理主義を基軸に据え、大資本・官僚・外国資本の利益拡大を目指す政府と、セーフティーネットを強化し、すべての国民が健康で豊かな生活を実現できる社会の構築を目指す政府の、どちらを国民が望むのか。国民が政権を選択するのが総選挙の意味である。

 国民の審判を仰ぐことは正しい判断である。民主党の石井一代議士が予算委員会で「明確に書いたなら実行しろ、実行しないなら撤回しろ」と麻生首相に問い質したのは当然だ。これ以上「逃げる」醜態を晒すべきでない。

(追記)

本記事、本文後段に、

(追記)「麻生首相の連夜の会合について、北海道新聞記者とのやり取りを毎日新聞が伝えているので、転載する。」

と記述したうえで、毎日新聞社10月23日付朝刊配信記事

「麻生首相:あす就任1カ月 連夜の「会合」批判にキレる

 ◇有名ホテル、高級飲食店・・・密談説も」

と題する記事を転載して、挿入しておりました。本ブログ記事が首相の行動について記述したものであったため、読者の皆様の参考になると考えて転載させていただきましたが、記事部分を削除させていただきました。

 当初は、転載記事を挿入したのちに、文章を書き加える予定でしたが、ブログ編集サイトでリッチテキストモードに転換することができなくなり、加筆を断念した経緯がありました。そのため、引用部分についての説明が不十分になってしまいました。

 当該毎日新聞記事は、現在は削除されている模様です。

 なお、産経ニュースが

【麻生首相ぶらさがり詳報】「ホテルのバーは安全で安い」(22日昼)

と題する記事をネットに掲載され、ぶらさがり会見部分については、ほぼ同様の内容を記載していているので、リンクを張らせていただきます。ネット記事が削除される可能性がありますので、キャッシュを保存されることをお薦めいたします。

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2008年10月22日 (水)

日本政府は三浦和義氏他殺疑惑を米国に糺せ

10月22日発売の『月刊日本』2008年11月号の巻頭特集「「脱米」こそ「救国」への道!!」に拙稿「市場原理主義の終焉-小泉元首相退場とサブプライム金融危機-」が掲載された。

見開き8ページの小論で、以下に小見出しを紹介する。

・「改革」に逆行する世襲支援要請

・破たんした「財政再建原理主義」

・利権まみれの民営化と天下り温存

・「市場原理主義」で「カジノ」と化した金融市場

・検証求められる「売国政策」の実態

・言論弾圧を打破せよ

小論では、「小泉改革」の経済政策が、①財政再建原理主義、②「歪んだ官と民」政策、③市場原理主義、の三つの柱によって運営されたことを明らかにした。

さらに、「小泉改革」を論じる際に見落としてはならない、「対米隷属」、あるいは「売国外交」と呼ぶべき外交政策の問題点を示した。最後の論じたのは、小泉政権の権力濫用である。

巻頭特集では、政治評論家の森田実氏と中央大学大学院客員教授の稲村公望氏による対談「米国経済の破綻は、日本自立のチャンスだ!-日本は新自由主義を超克し、世界新秩序形成を主導せよ-」、大阪大学名誉教授の丹羽春喜氏の論文「今こそ、政府貨幣発行権発動を!-政府貨幣と日銀券の本質的な違いに着目せよ-」が、併せて掲載された。

森田実氏も、小泉政権の言論封殺、弾圧によってテレビ番組から締め出された人物である。日本の議院内閣制は、内閣総理大臣が権力濫用に暴走すると、独裁者になり得るという、制度的な欠陥を内包している。本来は政党が首相の暴走を抑止する牽制力を働かせなければならないが、政党の良識が欠落すれば、間違いが生じ得る。

日本から独裁者が生まれる危険を制度的に排除しなければならない。すべては、政権交代の実現から始まる。官僚が実権を握り、大資本と外国資本の利益増大を目指す政府を打倒し、国民の幸福を追求する政府を樹立しなければならない。メディアを支配し、言論空間を歪めることは、民主主義の死をもたらす亡国の対応である。

本ブログでは、日本の外貨準備について、繰り返し記事を掲載してきた。日本経済が疲弊し、財政赤字の累増が重大な問題になっている。人口構成の急激な高齢化進展により、今後の日本では、医療、介護、年金の問題が最重要事項となることが確実だ。国民生活の安定を考えもせず、官僚利権の温存だけに腐心する財務省は、財務省の天下り利権死守に膨大なエネルギーを注ぐ一方で、社会保障支出の切り込みだけを優先している。

政府の政策基本方針には、社会保障費の増額を毎年度2200億円削減することが明記されている。2200億円の切り込みは、国民の死活問題に直結する重要性を帯びている。

ところが、ふと目を外貨準備に振り向けると、そこには100兆円の外貨資産が完全無防備な状態で放置されている。円ドルレートが1円変動するだけで、1兆円の評価損益が発生する。2200億円の社会保障支出削減を巡って国会が激論を交わしている横で、100兆円の外貨準備を野放しにしていることに対して、国民は怒りの声をあげなければならない。

日本政府がこのようなリスクを抱える合理的理由は存在しない。浮かび上がるのは、小泉竹中政権の対米隷属姿勢なのだ。2002年10月から2004年3月の1年半の期間に、日本政府は47兆円の資金を米国に拠出した。日本を倒産価格で買い占めるための資金であった疑いが濃厚だ。

日本政府の最高幹部は、日本国民のために行動する責務を負っている。国民を犠牲にし、外国資本に利益を供与した事実が存在するなら、真実を明らかにし、国民を裏切った人々を断罪しなければならない。

ロス事件に関連した疑いで三浦和義氏が米国警察当局に逮捕された問題は、当初から、不自然さと不透明さに包まれていた。私が10月12日付記事タイトルを「三浦和義元社長死亡の深層」とし、「自殺」と表記しなかったのは、三浦氏の「死亡」が「自殺」によるものと断定できなかったからである。

三浦氏の代理人であるゲラゴス弁護士は10月19日、AP通信に対し、病理学者に依頼して独自の調査を行った結果、「自殺ではなく、他殺だった、との結論が出た」と語ったと伝えられている。

報道によると、遺体を検査した結果、のどに首を絞められてできたとみられる血腫、背中に殴られてできたとみられる傷が見つかったとのことだ。病理学者は「首つり自殺では、こういう傷や血腫はできない」と判断した、という。

最大の問題は日本政府の対応である。そもそも、サイパンで三浦氏が逮捕された段階で、日本政府は、米国警察当局に対して緊張感を持った対応を示すべきであった。一事不再理の大原則が存在する。日米捜査当局は、国境を越えて一事不再理の原則を認めているのであり、米国の対応が、この原則に反している可能性について、邦人保護の視点から、適切な対応を示さなければならなかった。

三浦氏が死亡したのであれば、政府が米国政府に対して、適切な対応を求めるのは当然のことである。米国に対して、言うべきことを言えない政府であるなら、日本国民はそのような政府には退場してもらう以外に選択肢を持たない。

原理原則の根幹を踏みにじる政府に対して、まったく批評も批判もできないメディアは目を覆うばかりだ。首相が海外で逮捕されたのであれ、無名の民間人が逮捕されたのであれ、三浦氏が逮捕されたのであれ、日本政府の対応に差異が生じることは間違っている。

米国は確かに強力な国である。現在の世界情勢を見つめたとき、米国と良好な関係を維持することは重要であると思う。しかし、米国を重要視することと、米国に隷属することとは、まったく違う。

日本政府が日本国民を第一に考えた対応を示さないことに、国民は敏感にならなければならない。米国の機嫌をとるために日本国民を犠牲にしてしまうような政府を、国民は支持してはならない。

2月22日の三浦氏逮捕は、2月19日のイージス艦漁船轟(ごう)沈事件と深く関わっていると考えられる。三浦氏の釈放が長期間たな晒しにされたのは、両者を結び付ける憶測が広がることを恐れたからだろう。三浦氏を他殺する動機は歴然と存在している。メディアがその疑惑に触れようともしないことが、疑惑を一段と深いものにしている。

日本の国民は、日本政府が米国にまったくモノを言えない状態に陥っている現実を、直視しなければならない。多くの国民が真実を知らないまま、背徳の政府を支持してしまっている。ネットの草の根からの情報を、すべての国民に伝達しなければならないと思う。

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2008年10月20日 (月)

正鵠を射た橋下大阪府知事批判

日本社会はいま、大きな曲がり角にさしかかっている。日本だけでなく、米国も同様に見える。新自由主義、市場原理主義が行き着くところまで行き着き、自己崩壊を始めた。弱肉強食奨励、格差拡大推進、セーフティーネット破壊の政策が、多くの国民を不幸にした。

一握りの人々に所得や富が集中し、多数の国民に苦しみが押し付けられた。「改革」の言葉は魅力的に響くが、「分配」における格差拡大が放置され、「再分配」による生活保障が軽視され、「改革」への人々の期待は消滅し、「改革」がもたらした「負の遺産」への正しい認識が広がり始めた。

「天夜叉日記」様、身に余るご紹介をありがとうございました。また、「さかえ古書店」様、拙著『知られざる真実-勾留地にて-』についての貴重なお言葉をありがとうございました。心よりお礼申し上げます。

サブプライム金融危機は、市場原理主義、新自由主義の終焉を象徴し、日本では小泉元首相が退場し、小泉竹中経済政策の罪が確認されるようになった。小泉竹中経済政策は国民に対する背信でもあった。日本国民の犠牲の上に、外国資本への利益供与が実行された。政権交代が実現した段階で、すべての巨悪を明るみに晒さなければならない。

弱肉強食を奨励し、セーフティーネットを破壊して、社会の二極分化を推進し、多くの人々の生存権を脅かす政治から決別し、分配の公正を重視して、すべての国民が幸福な生活を営める社会構築を目指す政治を、新たに構築することが求められている。日本はいま、時代の分岐点に位置しているのだと思う。

「カナダde日本語」の美爾依さんが、橋下徹大阪府知事が朝日新聞社説に激怒する橋下知事の知的レベルについて、的確な記事を掲載された。橋下知事は時代のあだ花であるのだと思う。小泉元首相流のパフォーマンスで有権者を惑わす劇場型政治が席巻した余熱が、大阪府民の判断を歪めてしまったのだろう。橋下知事は、新自由主義、市場原理主義の余韻のなかで誕生した知事であるが、時代の転換とともに姿を消してゆくことになるのだろう。

民主主義のなかでの知事は独裁者ではない。知事の権能に基づいて、すべての府民の人権を尊重し、ルールに基づいて行政を執行する役割を担っているだけにすぎない。小泉元首相も首相が独裁者であると錯覚していたきらいがある。自民党という「民主主義」を掲げた政党であるにもかかわらず、「郵政民営化」に賛成しない議員を追放し、刺客を放つ手法は、反対意見の存在すら認めない、独裁者がとる行動だった。

メディアへの監視を強め、言論空間から反対意見を抹殺する「ファッショ」的な体質が、日本社会を息苦しいものに変質させた。橋下知事は小泉元首相をモデルとしているのか、その言動は権力を笠に着る高圧的なもので、他者に対する心配りを欠いている。

橋下知事の言動がこれまでメディアを賑わしてきた。メディアが社会の木鐸として、中立公正の立場から、橋下知事を批評すれば、誤りが是正されることも期待できる。しかし、政治権力に迎合するメディアは、橋下知事に対する当然の批判を抑制してきた。メディアの偏向が橋下知事の不適切な行動を助長してきた面も否めない。そのメディアの姿勢にようやく変化の兆しが見られ始めている。

大阪府民は府民自身の選択とはいえ、時代のあだ花と言える、人権意識の欠落した、傍若無人知事に、残り3年以上も府政を委ねるのだから、大変気の毒だと思う。

橋下知事の言動を列挙してみよう。

①大阪府の財政収支を改善するために、府職員の給与を強引に切り下げた。府職員が財政赤字拡大の原因であるかのような言動を示した。しかし、客観的に見て、府職員が財政赤字の原因ではない。

府職員が勤勉に働くべきことは当然だが、大型プロジェクトの見直し、天下りや天下り機関の廃止など、優先すべき歳出削減策が講じられずに府職員を諸悪の根源のように扱った。メディアと府民を味方につけて、罪なき府職員をスケープゴートにする手法は卑劣極まりない。

②大阪府職員に対しては、「「たばこを吸うための休息なんてあり得ない」と言い切り、条例で認められている1日2回の15分「有給休息」をなくし、執務時間中は禁煙にする方針を示しながら、本人は、公務時間中に公用車でホテル内のスポーツジムに通っていたことも明らかにされた。

③山口県光市の母子殺害事件をめぐり、橋下氏は昨春、民放のテレビ番組で、少年だった被告の弁護団を批判し、「弁護団を許せないと思うんだったら懲戒請求をかけてもらいたい」と視聴者に呼びかけた。知事就任前の発言だが、刑事被告人の人権、刑事被告人の利益を守る弁護士の役割を無視した、弁護士とは思えぬ発言を示した。

④第2京阪道路の用地買収に応じなかった門真市の北巣本保育園の畑が行政代執行で強制収用されたことが報道された。保育園では、月末の芋掘り交流会に向け、園児たちが育ててきたサツマイモや落花生が引き抜かれ、整地された。登園前の保育園園児が現場に立ち寄り、刈り取られた野菜を前に涙ぐむ場面もニュースで伝えられた。

⑤学力テストの結果公表をめぐり、橋下知事は「くそ教育委員会、教育委員会のくそやろう」と発言した。また、「2009年度から(テスト結果の)開示・非開示によって、予算をつけるかどうか決めさせてもらう」と、市町村への予算配分にも反映させる考えを示した。

③に関連して、光市母子殺害事件の被告弁護団への懲戒請求呼びかけを巡る民事訴訟に関する10月3日付朝日新聞社説に対して、橋下知事は10月19日に開かれた陸上自衛隊記念行事の祝辞の中で、「人の悪口ばっかり言ってるような朝日新聞のような大人が増えると日本はダメになります」と発言した。

橋下氏は祝辞のなかでさらに、「一線を越えた批判や、からかい半分の批判には徹底して対抗しないといけない」と述べた。「カナダde日本語」の美爾依さんが、朝日新聞社説を掲載してくださったので、本記事末尾に転載するが、社説の内容は「一線を越えた批判」でも「からかい半分の批判」でもない。また、朝日一紙だけが橋下知事を批判しているわけでもない。

橋下氏は民事訴訟敗訴に際しての記者会見で「心からお詫び申し上げる」と発言していたのに、控訴した。説明のできない行動だ。選挙で選出された知事であるから、罷免することは容易ではない。

④の保育園強制代執行実施に関する報道に対して橋下知事は、「政治的な主張や反対の理由はあると思うが、園の所有者は園児たちの涙を利用して阻止しようとした。一番卑劣な行為だ」と批判した。

保育園は行政代執行実施の通知に対して、土地の強制収用の執行停止を大阪地裁に申し立てたが却下され、大阪高裁に即時抗告していた。大阪高裁は10月30日に決定を出すとしていたが、大阪府は高裁決定を待たずに代執行を実施した。

保育園の保護者ら64人は、10月15日に「月末の芋掘りまで待って下さい」「子どもたちは世話をしてきた落花生の収穫ができないと悲しんでいます」などとつづった要請書を国交相や府知事らに提出していた。

大阪高裁決定を10月30日に控えていたのだから、10月末日まで執行を延期する程度の譲歩はあって当然ではなかったか。保育園側も法の規定に沿った対応を示しているなかで、園児の心を踏みにじる形で公権力を行使したことを正当と評価することはできない。

⑤の学力テストの狙いは、学校や学校設置者の市町村教委が子どもの学力状況を把握し、学力向上に向けた指導改善につなげることである。結果を公表するためのテストではない。学力テストの参加主体は市町村教委であり、結果を公表するか否かは、学校運営に直接責任を持つ市町村教委の判断を尊重するのが筋である。そもそも府が強制力を働かせることが正しくない。

市町村別の結果を公表すれば、ランキングのみが独り歩きすることを止めることができない。所得水準や家庭環境、住環境などがテスト結果には強く影響するだろう。こうした属性との因果関係が強いと予想されるテスト結果を公表し、市町村間の序列が不当に取り扱われることについて、警戒感をもって対応を検討するのが、正しい姿勢である。

橋下氏の言動に対しては賛否両論が存在するだろう。メディアが問題を取り上げるなら、必ず両論を示すべきである。政治的理由で偏向した報道を繰り返すことが、誤った言動を野放しにする原因になる。

「市場原理主義」、「新自由主義」、「言論ファッショ」に対する見直しの機運が、草の根から広がり始めている。国民は正しい情報が適正に提供されれば、これまでの判断の誤りにも気付くはずである。橋本知事は気づいていないのかも知れないが、時代は大きく変化しつつある。昨日まで通用したことが明日は通用しないかも知れないのだ。

日本社会はすっかり住みにくい、生きにくい社会に変質してしまったが、政治を刷新して、すべての国民を幸福にする社会に作り変えなければならない。総選挙が近付いている。この総選挙で選択を誤ることは許されない。国民が正しい選択を示すことができるよう、草の根からの情報発信を拡大しなければならないと思う。

橋下TV発言―弁護士資格を返上しては(朝日新聞社説 10月3日)

歯切れのよさで人気のある橋下徹・大阪府知事のタレント弁護士時代の発言に、「弁護士失格」といわんばかりの厳しい判決が言い渡された。

山口県光市の母子殺害事件をめぐり、橋下氏は昨春、民放のテレビ番組で、少年だった被告の弁護団を批判し、「弁護団を許せないと思うんだったら懲戒請求をかけてもらいたい」と視聴者に呼びかけた。

その発言をきっかけに大量の懲戒請求を受けた弁護団が損害賠償を求めた裁判で、広島地裁は橋下氏に総額800万円の支払いを命じた。判決で「少数派の基本的人権を保護する弁護士の使命や職責を正しく理解していない」とまで言われたのだから、橋下氏は深く恥じなければならない。

この事件では、少年は一、二審で起訴事実を認め、無期懲役の判決を受けた。だが、差し戻しの控訴審で殺意や強姦(ごうかん)目的を否認した。

少年の新たな主張について、橋下氏は大阪の読売テレビ制作の番組で、弁護団が組み立てたとしか考えられないと批判した。弁護団の懲戒を弁護士会に請求するよう呼びかけ、「一斉にかけてくださったら弁護士会も処分出さないわけにはいかない」と続けた。

こうした橋下氏の発言について、広島地裁は次のように判断した。刑事事件で被告が主張を変えることはしばしばある。その主張を弁護団が創作したかどうかは、橋下氏が弁護士であれば速断を避けるべきだった。発言は根拠がなく、名誉棄損にあたる――。きわめて常識的な判断だ。

そもそも橋下氏は、みずから携わってきた弁護士の責任をわかっていないのではないか。弁護士は被告の利益や権利を守るのが仕事である。弁護団の方針が世間の常識にそぐわず、気に入らないからといって、懲戒請求をしようとあおるのは、弁護士のやることではない。

光市の事件では、殺意の否認に転じた被告・弁護団を一方的に非難するテレビ報道などが相次いだ。そうした番組作りについて、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は公正性の原則からはずれるとして、厳しく批判した。

偏った番組作りをした放送局が許されないのは当然だが、法律の専門家として出演した橋下氏の責任はさらに重い。問題の発言をきっかけに、ネット上で弁護団への懲戒請求の動きが広がり、懲戒請求は全国で計8千件を超える異常な事態になった。

橋下氏は判決後、弁護団に謝罪する一方で、控訴する意向を示した。判決を真剣に受け止めるならば、控訴をしないだけでなく、弁護士の資格を返上してはどうか。謝罪が形ばかりのものとみられれば、知事としての資質にも疑問が投げかけられるだろう。

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2008年10月19日 (日)

外貨準備を監視する法律を整備せよ

日本の外貨準備、郵貯資金を米国金融危機対策に流用すべきとの主張を提示しているのは、竹中平蔵氏、渡辺喜美氏、小池百合子氏、石破茂氏、高橋洋一氏である。中川昭一氏も10月11日のIMF(国際通貨基金)のIMFC(国際通貨金融委員会)で、外貨準備を活用した新興国への資金支援を提言した。

「チラシの裏」主宰者がこの問題を早期に、的確に指摘されてきた。下記の関係者発言等も、「チラシの裏」主宰者が摘示されてきたものである。上記の面々が「対米隷属派」に属することは一目瞭然である。中川昭一氏はこの人脈からは外れる。しかし、麻生太郎首相が対米隷属派に分類され、麻生氏が外貨準備の新興国支援へのゴーサインを出したのだと考えられる。

繰り返し主張するが、100兆円の外貨準備を早急に売却すべきである。同時に、国会の監視の働かないところで、米国経済支援のために巨大な日本国民の負担が発生することを防ぐための法律改正が求められる。外貨準備の取り扱いを国会決議事項にしなければならない。

竹中平蔵氏は、本年4月20日のBS朝日・朝日ニュースター『竹中平蔵・上田晋也のニッポンの作り方』第3回放送で、「「民営化された日本郵政はアメリカに出資せよ」とぜひ申し上げたい。日本にはかつてとんでもなく巨大なSWFがありました。それが今の日本郵政なんです。資金量でいうと300兆円。他のSWFとは比べ物にならないほどのSWFがあったんです。民営化したので、今はSWFではない。だからアメリカから見ると安心して受け入れられる、民間の資金なんです。アメリカに対しても貢献できるし、同時に 日本郵政から見ても、アメリカの金融機関に出資することで、いろいろなノウハウを 蓄積し、新たなビジネスへの基礎もできる」と述べた。

渡辺喜美元金融相は、本年7月16日、米国政府元高官に対して、「米政府が必要とすれば日本の外貨準備の一部を公社救済のために米国に提供するべきだと考えている」と述べたことが報道されている。

また、渡辺氏は英国の通信社ロイターのインタビューでも、「資本増強で国際的な枠組みを作るのであれば、外貨準備を使うことも、私が金融担当相のときの私的懇談会(金融市場戦略チーム)でブレーンストーミングをした。これもあり得ないことではない。運用している米国債を(金融機関の株式と交換する)デット・エクイティ・スワップ(DES)する話で、ドル危機後の新しい通貨秩序の形成にもつながる戦略になる」と発言している。

また、9月20日付ファイナンシャルタイムズ紙は、自民党総裁選に立候補した小池百合子氏、石破茂氏が、日本の外貨準備を米国金融危機対策に流用する提案を示したことを伝えている。

渡辺氏が言及した金融市場戦略チームのブレーンストーミングでの検討内容については、高橋洋一氏が9月24日付『フォーサイト』誌で説明している。

高橋氏は寄稿で、「いずれにしても当面、日本は巨額な外為資金を持たざるをえないだろう。であれば、その結果のリスクとリターンを考慮してポートフォリオを入れかえ、たとえば、ドル建て債券の代わりにアメリカのファニーメイ、フレディーマックなどの株式に投資するという政策は、十分に検討に値する」と記述している。

渡辺氏が主宰した勉強会での高橋氏の主張を、竹中氏、渡辺氏、小池氏、石破氏がオウムのように発言している図式がよく分かる。ところが、その出発点の高橋氏の主張に説得力がまったくない。

高橋氏は寄稿のなかで、まず、「一般論として、筆者は政府資産は今より少ないほうがいいと考えているので、まず、外為資金の圧縮を考えるべきである」と述べている。そのうえで、「本来ならば、そこでまず、為替変動を起こしにくくするというマクロ経済環境を整え、外為資金の残高自体を圧縮することを考えたほうがいい」と指摘し、「日本がいまだに外貨準備をもって為替政策を行なおうとすることが、おかしいのである」と記述している。

ところが、「とはいえ、マクロ環境を整えるためには日銀の協力が必要であるが、先進国では当然採用されているインフレ管理目標さえ拒否し、PDCAサイクル(plan-do-check-act cycle)もなく、目標がないので成果達成の責任もあいまいな日銀を、どのようにマクロ経済政策に協力させるのかという根本的な問題がある」ことを根拠に、突然、「よって、いずれにしても当面、日本は巨額な外為資金を持たざるをえないだろう。であれば、その結果のリスクとリターンを考慮してポートフォリオを入れかえ、たとえば、ドル建て債券の代わりにアメリカのファニーメイ、フレディーマックなどの株式に投資するという政策は、十分に検討に値する」との結論を導いている。

いわゆる「上げ潮派」と呼ばれるグループに分類される人々は、高橋氏の主張をそのまま援用している。高橋氏は、①霞が関埋蔵金を活用した積極財政、②小さな政府、③日銀による徹底的な金融緩和、を主張している。

竹中平蔵氏はどの講演会でも、①規制が強化されたことに伴うコンプライアンス不況、②改革逆行に伴う期待成長率の低下、③日銀の短期金利引き上げ、の三つが景気悪化の原因だとし、①法人税減税、②外資への市場開放を軸とする規制緩和、③日銀の金融緩和強化、を主張する。

これらが、「市場原理主義者」=「新自由主義者」=「対米隷属派」の主張である。「市場原理主義」は「資本優遇=労働搾取」を奨励し、「弱肉強食」と「セーフティーネット破壊」を推進してきた。外国資本の日本進出を奨励し、円安誘導で外国資本による日本資産の安値取得を側面支援する。

これらの人々が、日本の外貨準備や郵貯資金による米国金融危機への資金流用の流れを作り出している。財務省は、外貨準備を巨大化し、新興国支援に流用することが、財務省の利権拡大につながることから、これらの施策を肯定的に捉えていると考えられる。高橋氏は、高橋氏の主張が財務省の意向と対立しているかのような説明をするが、これは事実に反していると考えられる。裏側ではつながっていると考えられる。

高橋氏は、「外為資金の圧縮を考えるべきである」としながら、外貨準備をリスクの高い米国金融危機対策に流用することを主張しており、主張に一貫性がない。日本政府が外貨準備を活用して、米国の金融危機対策を実施する正当な根拠はまったく存在しない。国会論議、国会決議を経ずに、外貨準備を活用した金融対策について、日本政府が海外で意思表示することは、絶対に許されることでない。 

竹中氏の金融危機対策に郵貯資金を充てるべきとの提言は、郵政民営化そのものが、米国が350兆円の郵貯、簡保資金を米国のために利用するために画策した政策であったことを、明確に裏付けるものである。

日本の政治は日本国民の幸福実現を目的に運営されなければならない。小泉政権以降、米国による日本の属国化が日本政府の中枢から進行した。「市場原理主義」によって、日本社会も相互不信と相互敵対の「格差社会」に変質させられてしまった。

日本の政治から「対米隷属派」を排除しなければならない。日銀に超金融緩和政策を強制し、日銀を政府管理下に置くとの主張も、国民の利益に反する。円安誘導は外国資本による日本買い占めを促進する側面を持っており、日本国民の利益に反する政策である。

日銀の超金融緩和政策の延長には、日本でのインフレ誘発が期待されており、政府はインフレによる政府債務帳消しを密かに目論んでいると考えられる。財務省から日銀への天下りは、この意味でも遮断しておかなければならない。

「市場原理主義者」の罪を明らかにし、「市場原理主義者」の退場を確実に実行しなければならない。まずは、外貨準備の流用政策を国会論議で取り上げ、対米隷属派による国益喪失の政策にブレーキをかけなければならない。外貨準備管理を国会の厳しい管理下に置く法改正が早急に求められる。

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2008年10月18日 (土)

竹中経済金融行政の深い闇

日本が約100兆円の外貨準備を保有しており、中長期的に円高・ドル安が進行する環境下で、巨大なリスクを抱えていることを説明した。一般会計予算は通常国会の最重要討議課題であり、その詳細について徹底した論議が行われる。一方で、100兆円の外貨準備は、円ドルレートが1円変動するだけで、1兆円の評価損益を生み出す巨大リスクであるにもかかわらず、野放しにされている。

その最大の理由は、外貨準備に関する基本知識がほとんど共有されていないからだ。国会議員や政党が外貨準備に関する基礎知識を持つならば、直ちに国会で問題として取り上げるだろう。外貨準備の管理は国会の厳重な監視の下に置かなければならない。 

外国為替資金特別会計は財務省の所管とされており、100兆円の巨大マネーが国会の監視をまったく受けずに、政府、財務省の一存で管理されてきた。この100兆円に、巨大な闇が隠されている。

中川昭一財務相は10月11日のIMF(国際通貨基金)の国際通貨金融委員会(IMFC)で演説し、金融危機への対応で財政難に陥った新興国などを支援するIMF融資制度の創設を正式に提案した。日本は外貨準備を通じた協力を検討しているとしている。

財務相に就任したばかりの中川氏が発案したものでないことは間違いない。財務省が世界の金融危機のどさくさにまぎれて、権益拡大、権限拡大を狙って提示したものであると考えられる。

国会の承認もなく、国民の了解もなく、このような提案を国際社会で行うことは言語道断だ。外貨準備は政府が日銀から借金して、外貨を購入したものである。政府が外貨を購入するのは、為替市場の乱高下を防ぐために「ドル買い介入」した結果として、蓄積したものである。海外諸国に援助するための資金ではない。

10月15日付記事「100兆円外貨準備野放しの怪」に示したように、日本政府が外貨準備を蓄積する正当な理由はまったく存在しない。巨額の米ドル建て外貨準備は「百害あって一利なし」である。ドル買いが必要な局面で蓄積したドル資産は、ドル高が進行する局面で、売却するべきである。ドルを安く買って、高く売れば、為替利益を実現することができる。これが「正しい外為介入」である。

米国でも外国為替市場での介入に対しては、議会が厳しく監視する。議会が同意する根本ルールは「儲かる介入は良い介入、損する介入は許されない」というものだ。

趨勢的に下落するドルを100兆円も買い持ちにしたままでいるのは、米国に対する利益供与以外の何者でもない。米国は趨勢的に経常収支赤字国である。海外からの資本流入によって、経済を維持している。日本政府が安易に資金供給することが米国の赤字削減への取り組みをおろそかにさせる。

2002年10月から2004年3月までの1年半に日本政府は47兆円のドル買い介入を実施している。この期間に日本の外貨準備残高は4257億ドルも増加した。この期間のドル買い介入は巨大な闇に包まれている。

りそな銀行の自己資本不足誘導、株価暴落と反発の誘導、2003年11月総選挙、UFJ銀行の検査忌避事件、ミサワホームの産業再生機構送り、などの、巨大経済疑惑とすべてが結びついている。

2002年9月30日の内閣改造で、竹中平蔵経財相は金融相を兼務した。すべての疑惑はこの内閣改造からスタートしている。

2002年10月から2004年3月にかけて、日本政府は47兆円ものドル買い介入を行った。米国国債保有者に47兆円の資金が提供された。本来、下落するドルを進んで買う者など存在しない。日本政府が進んで47兆円もの資金を提供しなかったら、米国経済では何が生じただろうか。

米国は海外から経常収支赤字に見合う資金を調達しなければならないから、日本が資本を供給しなければ、金利を引き上げざるを得なかった。2002年から2004年にかけて、米国は史上空前の金融緩和を実行した。2003年から2004年にかけて、FRBの政策金利FFレートは1.0%の史上最低水準で推移した。この低金利持続を可能にしたのは、日本政府の無尽蔵とも言える巨大資金提供だった。

2002年から2004年にかけての超金融緩和政策が米国における不動産バブル発生の原動力になったと考えられる。2002年から2004年にかけて、FRBが早期に金融引締め政策を採用していれば、米国の不動産バブルを小規模にとどめることができたはずだ。

この意味で、2002年から2004年にかけての、日本政府による不自然極まる巨大なドル買い介入が、現在の世界金融危機、サブプライム金融危機の根源的な原因を作り出したとも言えるのだ。

2001年から2003年にかけて、小泉政権は強烈な景気悪化推進政策を採用した。「いまの痛みに耐えて、よりより明日をつくる」とのプロパガンダを流布し、史上最強の緊縮財政政策を実行した。小泉政権の財政政策が史上最大の緊縮策であったことは、一般会計のデータから裏付けられる。詳細は拙著『現代日本経済政策論』(岩波書店)を参照いただきたい。

意図的な景気悪化推進政策と、「大銀行破たんも辞さない」との方針明示により、日本の株価は順当に暴落した。日経平均株価は2001年5月7日の14,529円から2003年4月28日の7607円まで、2年間で半値に暴落した。

拙著『知られざる真実-勾留地にて-』(イプシロン出版企画)に詳述したように、小泉政権はりそな銀行を政治的な理由により標的と定め、りそな銀行を極めて悪辣(あくらつ)な手口で、自己資本不足の状況に追い込んだのだと考えられる。

最終的に小泉政権は、りそな銀行を破たんさせずに、公的資金で救済した。欺瞞と不正に満ちた金融問題処理が実行された。日本の金融行政に最大の汚点を残したと言って間違いない。りそな銀行の経営陣には、小泉政権近親者が送り込まれ、りそな銀行は自民党の機関銀行と化していった。

金融市場に対して竹中金融相は「金融恐慌」のリスクを喧伝(けんでん)し、株式の投げ売りを促した。多くの本邦投資家が二束三文で株式資産を処分した。不動産も同様である。しかし、最終局面で銀行を救済し、資産価格を反転させるシナリオが準備されていた。「りそな銀行救済」をきっかけに株価は急反発した。不動産価格も反転上昇に転じた。

この「用意されたシナリオ」に従い、巨大利得を手にした勢力が存在する。外国資本と小泉政権関係者である。確証を持たないから、あくまでも濃厚な疑惑であるのだが、疑惑は限りなくクロに近い。

2002年10月から2004年3月にかけての47兆円のドル買い介入は、外国資本に対する日本資産買収資金提供の側面を強く有すると考えられる。小泉政権は2003年11月に総選挙を実施した。日経平均株価は2003年4月に7607円のバブル崩壊後最安値を記録したのち、2003年8月には1万円の大台を回復した。47兆円のドル買い介入資金が、総選挙に向けての日本株式買い付け代金として提供された側面も重要だ。株価が反発したために、小泉政権は総選挙での大敗を免れた。

「風説の流布」、「株価操縦」、「インサイダー取引」が国家ぐるみで実行された巨大な闇の存在が強く疑われる。そして、一連の経済金融運営は、国民の生活を破壊し、多くの罪なき国民に地獄の苦しみを与えただけでなく、国民の貴重な資産を外国勢力に破格の条件で提供した、巨大ディールであった疑いが濃厚に存在する。

問題はこれだけにとどまらない。「空と大地と気高い心」様が紹介してくださったが、森永卓郎氏が、2006年2月13日付記事「大手銀行の好決算に隠された金融庁の暴走ぶり~UFJ銀行の“作られた”経営危機」で指摘する、もうひとつの重大な疑惑が存在する。

金融庁は2003年10月にUFJ銀行に対して特別検査を実施した。金融庁は金融庁に寄せられた一本の密告電話をもとに、UFJ銀行の検査忌避を追及した。金融庁はUFJ銀行に対する刑事告発を1年間留保することにより、UFJ銀行に対するさまざまな強制力を行使した。

最終的にUFJ銀行は刑事告発されることになったが、金融庁は刑事告発留保の強い立場を利用して、UFJ銀行の保有債権に対する引当率の著しい引き上げを強制した。その結果、多くの融資先が実質破たん処理されていった。

そのなかの一社がミサワホームである。ミサワホームは結局、産業再生機構送りにされ、トヨタ自動車が実質的に買収することになった。創業者の三澤千代治氏は、ミサワホームから追放されたが、2005年8月23日に、東京地検に対して、竹中平蔵元経財相兼金融相を公務員職権乱用罪で告訴した。告訴は2006年3月1日に受理された。

トヨタ自動車の資本傘下に入ったミサワホームでは、本年、竹中平蔵氏の実兄である竹中宣雄氏が社長に就任した。ミサワホームが産業再生機構に送られ、トヨタ傘下に組み入れられた経緯については、「トヨタホームとミサワホームの住宅問題の背景」様が、詳細な情報を提供してくださっている。

ミサワホームが産業再生機構に送られるきっかけになったのは、2005年3月期の中間決算が突然、修正されたことだった。2004年11月19日に発表された中間決算では、経常利益220億円、税引き後利益100億円が計上された。産業再生機構に送られる決算ではなかった。

それが、12月7日に突然修正され、税引き後利益が5.5億円に下方修正された。この決算修正により、ミサワホームは過大債務を抱えることになり、産業再生機構送りされることになる。

ミサワホームの監査法人は中央青山監査法人で、ミサワホームの三澤千代治氏は理事長の上野氏と親交が深かったが、上野氏は2005年5月に理事長職を辞任している。後任の理事長に就任したのが、奥山章雄氏である。奥山氏は竹中金融相が組織した金融再生プロジェクトチーム、および「金融問題タスクフォース」のメンバーでもあり、公認会計士協会会長として、「りそな銀行」の資本不足問題に、重大に関与した人物である。拙著『知られざる真実-勾留地にて-』においても、キーパーソンとして登場する。

UFJ銀行の解体、東京三菱銀行との合併、合併のスクープ報道、トヨタグループによるミサワホームの買収、など、解明しなければならない闇は果てしなく大きい。

2002年から2005年にかけての金融行政、為替管理、経済外交を検証しなければならない。政権交代が実現する場合には、過去の金融行政が適正に行われたかどうかを詳細に検証する、金融行政版の「日本版ペコラ委員会」を設置し、真相を明らかにしなければならない。

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2008年10月16日 (木)

総選挙・本格政権樹立で金融危機に対応せよ

『週刊金曜日』第722号(10月10日発売)に拙稿「米国カジノ経済破綻が日本を襲う」が掲載された。ご高覧賜れればありがたく思う。

また、高橋清隆氏の著書『偽装報道を見抜け!』(ナビ出版)が刊行された。高橋氏は、私が巻き込まれた冤罪事件について、これまで丹念な取材に基づく記事を発表してきてくださった。私の巻き込まれた事件が冤罪であることは紛れもない事実だが、今回の著書の中には、直接取材されずに執筆された他の事件についての記述があり、その内容には同意できない部分がある。しかし、全体を通してメディア報道の問題点を多角的な視点から指摘されており、この場を借りて紹介させていただく。

日経平均株価が10月16日、前日比1089円暴落した。10月14日の急騰が帳消しになってしまった。マスメディアは10月13、14日の株価急騰について、各国政府が資本注入を決定したことによる成果であると報道した。

私は10月13日付記事「デリバティブ金融危機の津波は残存する」のなかで、「各国当局の資本増強策推進についての合意を受けて、世界の株式市場は一時的に株価反発の反応を示すことが予想される。金融機関の破たんの連鎖が当面は、政府による資本増強策によって回避されるとの見通しが広がるからだ。しかし、事態を楽観視することはできない。理由は三つある。」と記述した。

メディアは、資本注入で安心感が広がったが、「新たに」景気悪化観測が広がって株価が下がったと説明している。資本注入策を絶賛したために、その後の株価暴落を説明できなくなり、苦し紛れの弁明を施している。

株価が急反落したのは、今回の金融危機の根が深いことを背景にしていると考えるべきだ。10月13日付記事に記述したように、金融危機の根源である米国の不動産金融不況が、まだ4合目にしか差しかかっていないのである。景気後退が本格化するのはこれからだ。米国の住宅価格は2006年6月のピークから、本年7月までに21%下落したが、恐らく2010年半ばまでに、さらに20-30%は下落するだろう。

不動産価格下落に連動して、サブプライムローンに付随して形成された巨大なデリバティブ金融のバブルが破裂する。住宅価格が20%下落した時点で、100兆円の損失処理がすでに求められている。最終的な損失規模を現段階で特定することは難しい。

各国政府が提示した資本注入政策では、問題解決を得ることは困難である。金融市場の反応は、こうした事実認識を反映しているのだと考えられる。米国は最終的に膨大なドル資金を投入せざるを得なくなるだろう。米国がドル過剰流動性を創出することは、ドル価値の暴落を招く。

日本政府は100兆円の外貨準備を保有しているが、極めて重大なリスクを負っていると言わざるを得ない。経営危機が表面化した米国の政府住宅金融公社ファニーメイとフレディマックが発行、保証する債権は約5兆ドル(約500兆円)に達する。日本は政府、日銀、民間金融機関合計で2300億ドル(約23兆円)の上記機関債券を保有している。

ドル下落リスクが極めて大きいことを踏まえて、日本政府は政府保有のドル建て資産を早急に売却しなければならない。リスクが大きいことを認識しながら、ドル資産を保有し続けて、日本国民に膨大な負担を強いることは許されない。

サブプライム金融危機の最大の特徴は、野放図に構築されたデリバティブ金融の巨大想定元本にある。「新自由主義」=「市場原理主義」の必然の帰着点に、主要国経済は到達してしまった。

各国政府が採用し始めた「破たん前資本注入策」は、正当性を持たない政策対応である。「自由主義経済」は「自己責任」を大原則に置いているからだ。公的資金を投入する根拠は、「金融システム」という「公共の利益」を守るためであって、「個別金融機関」という「私的利益」を守るためではない。

公的資金を注入するからには、公的資金を受け入れる金融機関に対する適正なペナルティー付与が不可欠である。株価暴落のどさくさに紛れて、責任処理を伴わない公的資金注入論が大手を振っていることに対して、今後、必ず修正圧力が働くと思う。

米国経済の内需にとって、自動車と住宅はきわめて重要な意味を有している。米国人のライフスタイルのなかで、住宅の占める比重は極めて高い。住宅着工件数は2005年に207万戸あったのが、本年8月の年率換算値は90万戸に激減している。

9月の自動車販売台数は前年同月比22.7%減少した。また、9月の小売売上高は前月比1.2%減少した。住宅価格下落、株価下落が進行し、個人の消費心理が急激に悪化し、個人消費が今後、急激に減速を強める可能性が高い。

米国発の世界的な株価急落は世界の個人消費を停滞させる。最終需要が落ち込めば、企業の設備投資も大幅に減少する。2009年には世界同時不況が深刻化する可能性が濃厚である。

したがって、主要国が公的資金投入による金融機関の自己資本増強策を採用するとしても、現段階では、まだ先行きを楽観できない。

こうしたなかで、米国では11月4日に大統領選挙が実施される。大統領選挙に向けてのオバマ民主党候補とマケイン共和党候補の第3回テレビ討論について、「カナダde日本語」の美爾依さんが動画で紹介くださっているが、米国で大統領選挙を先送りすべきとの世論は発生していない。

幸い、日本の金融機関は1990年代以降の金融危機を経験した直後であったため、欧米金融機関のように、デリバティブ金融の想定元本を管理不能な水準に拡大させていない。したがって、金融システム全体が根底から動揺するリスクは現状では限定的である。

世界同時不況が進行するなかで、2009年にかけて、日本経済が悪化することは避けられないだろう。本格的な政策対応が求められる。そのために、日本の政治状況を転換することが強く求められる。

現在の衆参ねじれ状況の下では、政策運営の停滞を免れない。自公政権は衆議院で多数を確保しているが、直近の有権者の判断を示す参議院の議席構成で、野党が過半数を制しており、野党の主張が与党と対立する問題については、国会で結論を得ることが困難だからだ。

本日、10月16日に補正予算が成立した。8月29日に決定された緊急経済対策を実施できる状況が整った。2009年度に向けては、年末の予算編成がもっとも重要な意味を持つ。

政治のあり方について、主権者である国民が明確な判断を示し、国民の信を受けた政権が、今後の問題について、抜本的に対応することが望ましい。

麻生首相は『文藝春秋2008年11月号』に「強い政治を取り戻す発射台としてまず国民の審判を仰ぐのが最初の使命だと思う」と明記した。また、「私は逃げない。勝負を途中で諦めない。」とも記している。

11月23日大安、11月30日先勝、のいずれかの日程で総選挙が実施されることになると思われる。民主党が提示している政権公約は大規模な景気対策、国民生活安定化策の側面を有している。自民党の鶴保議員が、民主党が提案する「子ども手当」が子どものいる世帯を優遇しすぎることになるのではないかと主張した。しかし、「少子化」が極めて重大な問題であることを踏まえれば、「子ども手当」創設は、少子化対策の切り札になると考えられる。

金融市場の混乱が拡大して、「政権選択」という日本の命運を定める最重要問題が陰に隠れたが、改めて、この問題を中心に位置づけ、国民が誤りのない選択を示すことのできる環境を整備しなければならない。次期総選挙は日本の命運を定める決戦の場になる。

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2008年10月15日 (水)

100兆円外貨準備野放しの怪

10月14日の参議院予算員会質疑で、外為特会などの「埋蔵金」についての実態が明らかにされた。財務相は外為特会の積立金が円高で目減りし、1ドル=99円以上になるとゼロになると答弁した。

日本の外貨準備高は2008年9月末時点で、9958.9億ドル存在する。7月末時点では1兆0046.58億ドルで1兆ドルを超えていた。日本円に換算して100兆円という膨大な外貨建て資産を保有している。

最近、この外貨準備についてのさまざまな意見が提示されている。中川昭一財務相は10月11日にワシントンで開催された国際通貨金融委員会(IMFC)で、金融危機に対応するため日本の外貨準備を活用して資金面で支援する考えを表明したことが報道されている。

また、渡辺喜美元金融相は、英国の通信社ロイターのインタビューで、「資本増強で国際的な枠組みを作るのであれば、外貨準備を使うことも、私が金融担当相のときの私的懇談会(金融市場戦略チーム)でブレーンストーミングをした。これもあり得ないことではない。運用している米国債を(金融機関の株式と交換する)デット・エクイティ・スワップ(DES)する話で、ドル危機後の新しい通貨秩序の形成にもつながる戦略になる」と発言している。

いずれの発言においては、外貨準備があたかも自分の財布であるかのような感覚で提案がなされている。このような発言が野放しにされていることは不適切極まりない。外貨準備は政府が外貨を買い取った残高である。為替市場の状況によって、政府が外為介入することがある。その残高が外貨準備高である。

外為介入は政府が日銀から短期の借り入れを起こして行われる。日本銀行に対する円建て債務に見合う外貨資産が保有される。2008年9月末時点の外貨準備の構成は、外貨建て証券が9692億ドル、外貨預金が1050億ドルで、外貨建て証券の大部分は米国財務省証券、つまり米国国債である。

日本政府は日本銀行から100兆円の借金をして米国政府に100兆円貸し付けをしていることになる。

問題は外貨準備であるから、為替リスクを伴っていることだ。100兆円のドル資産を保有していると、円ドルレートが1円変化すると、1兆円の評価損益が生じる。1ドル=105円が1ドル=95円になると、10兆円の損失が発生する。

自公政権は高齢化進展に伴う社会保障費の増額に対して、毎年2200億円、社会保障支出を圧縮する方針を示している。社会保障支出削減は財務省が主導する「財政再建原理主義」の中核に位置付けられている。

「障害者自立支援法」は名称のイメージと裏腹に、障害者を施設から排除し、生存権を脅かす冷酷な施策である。生活保護も支出削減の対象とされ、老齢加算、母子世帯加算などが非情に切り込まれている。

「後期高齢者医療制度」も医療費抑制を目的に創設されたものである。財務省が提示する「経済規模に見合った社会保障」との大方針の下に制度が設計されている。本来、日本経済が低迷することと高齢者の比率が上昇して国民医療費が増大することの間には何の因果関係もない。

それにもかかわらず、「経済が停滞するから医療を受けるな」の暴論が大手を振っている。罹(り)患率の上昇する高齢者だけを対象にした制度が保険として機能するはずがない。窓口負担以外の高齢者の負担比率を1割に定めたとされるが、高齢者の医療費は急増するから、1割負担の金額は急増していく。制度発足当初だけ保険料が減少するのなら、詐欺的手法と言わざるを得ない。

10兆円もの資金があれば、社会保障をどれだけ充実できることか。外貨準備で損失が拡大すれば、一般国民にはさらに厳しいしわ寄せが押し付けられる。「母屋でおかゆを食べているのに、離れですき焼き」との言葉があったが、「家族がおかゆをすすっているときに、父親がばくちで散財」の図式である。

円高が急激に進行し、日本国民の生活の安定を確保するために、為替市場でドル買い介入しなければならない局面はあるだろう。外為介入が一概に否定されるものではない。しかし、下落する傾向を強く持つドルを購入するのだから、ドル建て資産の残高を保有している時には、常にドル下落リスクに最大の注意を払わなければならない。

ドル買い介入はドルが急落する局面で実施される。平均すれば安いドルを購入できることになる。ドル買い介入を実施して、為替市場が安定すれば、必ずドルが反発する局面がある。本来、政府はドル買い介入して蓄積したドルをドルが反発した局面で売却するべきである。ドルが反発する局面でドル売りを実行しても、為替市場に影響を与えない。日本政府が為替リスクを温存する理由は、後述する利権獲得に関連する理由を除けば、何一つ存在しない。

為替レートが横ばいであれば、金利差を得ることができる。円短期金利はゼロに近く、ドル長期金利は4%ある。為替レートが横ばいであれば、金利差を利益として確保できる。この金利差に狙いをつけた投機資金の行動が「キャリートレード」と呼ばれる行動である。円短期金利で資金調達し、ドル金利で運用する。この「キャリートレード」は「円売り・ドル買い」のオペレーションになるため、ドル高が進行する要因になってきた。

しかし、中長期では円高・ドル安が進行する。為替市場で円高傾向が強まると、「キャリートレード」を実行していた投資家は、一斉にポジション解消に動く。この行動は、急激な円高進行の原因になる。

いずれにしても、米ドル建て資産をそのまま保有することが、極めて大きなリスクそのものであることは紛れもない事実だ。

日本政府が100兆円のリスク資産を保有する正当な理由はまったく存在しない。外貨準備は外国為替資金特別会計が保有する。外為特会は財務省の所管である。上述した金利差は積立金として蓄積され、通常は外為特会が潤沢な資金環境に置かれることになる。各省庁は特会の資金を通常経費に充当する。猛毒米の杜撰な検査をしていた福岡の農政事務所の検査費用も、その大半が特会から支出されていたことが明らかにされている。

100兆円の米国国債保有者は国債ディーラーにとっては、最上位の重要顧客になる。100兆円もの資産保有が、さまざまな利権を生み出す源泉になることは間違いない。外貨準備の異常な膨張の背景には、財務省の利権拡大動機が潜んでいたと考えられる。外貨準備を新興国支援に活用するとなれば、資金管理者は新興国に対する強い立場を得ることにもなる。

9月1日付記事「「日本売国=疑惑の外為介入」政策の深層」、9月6日付記事「自民党の分裂と「上げ潮派」の詭弁」に記述したように、2002年10月から2004年3月にかけての47兆円の外貨準備増加は、暴落した日本資産購入資金を外国資本に提供したものである疑いも強い。

2002年年初から2008年7月15日までの為替レート変動を見ると、

1ドル=130円 から 1ドル=106円

1ユーロ=117円 から 1ユーロ=169円

に変動している。

 ドル運用とユーロ運用との時価評価の差額は、

100兆円の運用資金であれば63兆円、

50兆円の運用資金であれば31.5兆円

に達する。

 この期間、日本円が主要通貨に対して暴落したために、米ドル運用での損失が、たまたま表面化していないが、日本円が暴落していなかったなら、ドル運用の外貨準備は巨大損失を表面化させていたのである。

 野放しの外貨準備を国会の監視対象にするための法改正が絶対に必要である。外貨準備は本来、ゼロを基準に設定するべきものだ。外為介入で購入した外貨は、市況を見極めて、極力損失を発生させないで、市場で売却するべきだ。

 外貨準備を自分の財布のような感覚で、米国の金融危機対策に流用することなど、言語道断の対応である。仮に日本が国民の総意で外貨準備を米国金融危機対策に流用するなら、少なくとも、その意思を国際社会で表明する前に、国会での十分な論議と承認が不可欠である。

 

 最大の問題は、外貨準備の仕組み、諸制度、現状、法制などについての知識、認識が多くの国会議員、政党、そして一般国民に行き渡っていないことである。100兆円の巨大リスク資産についてのすべての情報がすべての国会議員と国民に共有されなければならない。

 国民負担に直結する100兆円のリスク資金が野放しになっている現状を是正する法改正が、直ちに求められる。

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2008年10月13日 (月)

デリバティブ金融危機の津波は残存する

10月10日に開かれたG7主要7ヵ国財務相・中央銀行総裁会議は行動計画を決定し、公表した。共同通信が配信した行動計画の要旨は以下の通り。

一、現在の状況は緊急かつ例外的な行動を必要としている。世界経済の成長を支え、金融市場の安定と資金の流れを回復するため共同作業を続けると約束。

一、金融システムで重要な金融機関の破たんを避けるため断固とした行動を取り、あらゆる利用可能な手段を活用。

一、金融市場の機能を回復し、金融機関が資金調達するのに必要な手段を講じる。

一、金融機関が信用を回復し、家計や企業への貸し出しを継続できる十分な量で、公的資金と民間資金により資本を増強できるようにする。

一、預金者が預金の安全性への信認を保てるよう、各国の預金保険制度を強化する。

一、証券化商品市場の再開に必要な行動を取る。適正な資産評価、透明性の高い情報開示、質の高い会計基準が必要。

一、マクロ政策手段を活用。金融危機の影響を受ける国を支援する国際通貨基金(IMF)の役割を強く支持。金融安定化フォーラムの提言実行を加速。

一、計画完遂へ協力を一層強化、他国と協働。

G7行動計画を受けてユーロ圏15ヵ国は10月12日にパリで緊急首脳会議を開催し、包括的行動計画を決定した。以下は共同通信配信の報道内容だ。

【パリ13日共同】

欧州で拡大する金融危機への対応をめぐり、ユーロ圏(15カ国)首脳は12日、パリで緊急会議を開き、経営難の金融機関に公的資金などを使って資本注入することや、来年末まで金融市場での銀行間取引を政府保証することを明記した包括的な共同行動計画を策定した。

欧州連合(EU)議長国フランスのサルコジ大統領は会議後の記者会見で「例外的な金融危機にためらいは許されない」と述べ、ドイツ、フランス、イタリアのユーロ圏主要国が今回の計画に沿った個別の対応策を13日中に公表し、各国が早期に実施に踏み切るとの見通しを強調した。

サルコジ大統領はブリュッセルで15、16の両日に開くEU首脳会議後に、主要国(G8)に中国、インドなど新興国を加えた緊急首脳会議を開くことで米国の理解を得ていることも明らかにした。

行動計画は金融機関の資本増強に関し「民間資本による増強を優先する一方、政府自身も資本注入に関与する」と表明。資金繰りが苦しい金融機関の資金調達支援や、資本注入を受けた金融機関の経営責任の明確化、リストラ計画策定も盛り込んだ。

(ここまで転載)

金融危機が深刻化すると、「金融恐慌」と「自己責任原則放棄」の二者択一を迫られることになる。「究極の選択」である。通常の政治判断では「金融恐慌」を選択できないから、「自己責任原則放棄」が選択されることになる。

金融機関に対する「破綻前資本注入」がモラルハザード(=倫理の崩壊)を引き起こすことを見落としてはならない。一般の事業会社が経営に失敗し、破たんの危機に直面しても、政府から資本増強の支援を得ることはない。米国のGMなどの大企業が今後どのように取り扱われるのかは不透明だが、企業の経営破たんの責任は、当事者が負うことが基本原則である。

金融機関に対する無制限、無尽蔵の資本注入が実施されれば、金融危機は回避される。しかし、この措置が「自己責任原則の崩壊」をもたらすことを忘れてはならない。

各国当局の資本増強策推進についての合意を受けて、世界の株式市場は一時的に株価反発の反応を示すことが予想される。金融機関の破たんの連鎖が、当面は、政府による資本増強策によって回避されるとの見通しが広がるからだ。

しかし、事態を楽観視することはできない。理由は三つある。

第一は、問題の根源である米国の不動産価格下落が今後も持続する可能性が高いことだ。米国の住宅価格はS&Pケースシラー住宅価格指数によると、全米主要10都市で、2006年6月から本年7月までに21.1%下落した。しかし、米国の住宅価格は本年7月までに1994年2月から3倍に、2000年1月からは2.26倍に上昇しており、価格下落はまだ4合目に差しかかったところである。

2010年にかけて、米国の不動産価格はさらに2-3割程度下落する可能性が高く、住宅価格下落に伴う証券化金融商品価格下落に伴う損失が拡大し続ける可能性が高い。10月8日付記事「日米株価急落と金融危機の深層」10月10日付記事「日米株価暴落と公的資金投入のあり方」に記述したように、「デリバティブ金融」で創出された「バーチャルな投資元本」は幾何級数的に拡大しており、金融機関の最終損失の規模がどこまで拡大するのかが、現段階では十分に把握されていない。巨大損失の津波到来が、幾重にも残されている可能性が高い。

第二は、金融機関に対する「破たん前資本注入」が金融機関救済を意味するため、議会や国民の反発を生む可能性が高いことだ。国民は金融システムの安定確保を望むけれども、責任ある当事者を税金で救済することには賛成しないからだ。

実質破たん金融機関を存続させる基本手法は一時国有化である。金融危機に対する対応の基本原則として、かつては“TOO BIG TO FAIL”=「大きすぎるから潰せない」の原則が掲げられた。1984年のコンチネンタル・イリノイ銀行の救済はこの考え方に基づいた。

しかし、この原則では、責任ある当事者が税金により救済されることになるため、「モラルハザード」を引き起こすとして、強い批判が生まれた。

“TOO BIG TO FAIL”に代わり、新たな基本原則とされた考え方は、“TOO BIG TO CLOSE”=「大きすぎるから閉鎖できない」の原則である。「経営体としての金融機関の破たんを容認するが、金融システムに組み込まれている金融機関の活動は存続させる」との考え方である。

株式価値を「ゼロ」として、政府が金融機関を国有化し、必要な資本増強等の措置を講じたうえで、金融機関の活動を存続させる。「一時国有化」の措置は、自由主義経済の根本原則である「自己責任原則」を維持するとともに金融システム崩壊を回避するための方策である。

米国では、コンチネンタル・イリノイ銀行救済への反省から、“TOO BIG TO FAIL”の原則が放棄されてきたはずである。3月のJPモルガン・チェースによるベア・スターンズ社買収に際しても、買収価格は下落した株価を基準に設定されており、株主責任が問われている。

米国において「破たん前資本注入」が実際に実施されるのかどうかは予断を許さない。仮に実施されるとしても、その手法決定には、十分な論議が必要になるだろう。

第三は、銀行間信用に政府保証を付けることが打ち出されたが、この措置も、典型的なモラルハザードの問題を引き起こすことだ。信用リスクの高い金融機関は短期金融市場での資金調達が困難になっている。資金を調達しようとすれば高い金利を支払う必要が生じる。

政府保証がつけば、政府の信用リスクに見合う金利で資金を調達できることになる。たしかに、資金繰り倒産発生のリスクは低下するが、金融機関の経営健全化への努力は不要になってしまう。これを「モラルハザード(=倫理の崩壊)」と呼ぶ。

個人に置き換えれば分かりやすい。多重債務を抱えて、普通の金融機関ではお金を借りることのできなくなった個人の借金に、政府が保証を付けるというのだ。多重債務者で、返済に対するリスクが限りなく高くても、貸金業者は政府が保証してくれるなら、無制限、無尽蔵に融資を実行するだろう。多重債務者は政府保証による借金を激増させるだろう。これで、金融市場の健全性は確保できるのか。

世界の主要国は「金融恐慌」のリスクに怯(おび)えて、税金による金融機関救済の道に大きく一歩足を踏み入れた。「金融システムの安定」を確保しなければならないのは当然だが、「モラルハザード天国」を創り出すことの弊害も大きい。両者を両立させる対応策が十分に検討されていないことが、重大な問題である。このことが、今後の金融問題処理において大きな障害になることが予想される。

日本政府は1兆ドルの外貨準備を活用した問題解決への取り組みを表明しているが、外貨準備は国民資産である。政府の私有物ではない。米国は問題処理に際して、日本の拠出する資金を念頭に置いていると考えられる。日本政府が米国の言いなりになって、外貨準備を国民の同意を得ずに流用することは許されない。

学費や渡航費として預かった顧客資金を、破たんしそうな企業経営の運転資金に流用した外国留学斡旋会社が破たんしたが、同じような行動になる。

小泉政権以来、日本外交は対米隷属、対米従属を基本路線に据えてしまっているが、この政策路線が日本国民の利益を喪失させてきた。郵政民営化、大義なきイラク戦争への加担、北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除の米国独断での決定、など、日本は米国に隷属するだけで、重要問題での連絡も受けず、協議にも関与できす、国民の利益を喪失させ続けている。

米国は、日本の350兆円の郵貯・簡保資金、日本郵政保有の巨大不動産、日本の1兆ドルの外貨準備に食指を動かしている。米国に隷属し、日本国民が米国に搾取される構造に対して、早急に歯止めをかけなければならない。この点に関しては、民主党内部にも対米隷属勢力が存在することを指摘しておかなければならない。

日本の外貨準備の位置づけ、これまでの経緯、今後の方策については、十分な論議が強く求められる。この問題については、改めて論じる。 

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2008年10月12日 (日)

三浦和義元社長死亡の深層

ロサンゼルス銃撃事件で米当局に逮捕された三浦和義元社長(61)の自殺が報じられた。三浦元社長が逮捕されたのは、2008年2月22日金曜日だった。

この直前、2008年2月19日に海上自衛隊イージス艦「あたご」が、千葉県の漁船「清徳丸」に衝突し、「清徳丸」が船体をまっぷたつに切断され、乗船していた2名の漁師が死亡する事件が発生した。

自衛隊によるインド洋での米軍への給油活動を定める旧テロ特措法は、2007年11月1日に有効期限が切れた。海上自衛隊はいったんインド洋から撤退した。政府が2007年10月17日に提出した法案は2007年11月13日に衆議院で可決されたが、2008年1月11日に参議院本会議で否決された。

福田政権は同法案を同日再可決して法律が成立し、自衛隊によるインド洋での給油活動が再開されることになった。日本国内では、政府が衆議院の数の力に頼り、参議院の決定を無視して給油法案を可決成立させたことに対する批判が渦巻いた。

海上自衛隊のイージス艦衝突事件は、こうした状況下で発生した。インド洋での給油活動を日本に強制しようとしていた米国にとって、最悪のタイミングでの事件発生だった。

事件が発生したのは火曜日だった。日本のメディアは連日イージス艦事件をトップニュースで伝えた。石破防衛相の引責辞任も当然の流れになった。週末の情報報道番組はイージス艦事件、給油法の是非をめぐる論議一色に染まることが確実な情勢だった。

そこに、突如降ってわいたニュースが三浦元社長のサイパンでの逮捕だった。テレビ報道はイージス艦事件報道から、三浦元社長逮捕報道に全面転換した。単なる偶然とは考えられない。

三浦氏の逮捕は、一事不再理の原則から判断して、明らかに無理筋だと考えられる。三浦氏は常識的な法律解釈からすれば、当然釈放されるべきものであったと考えられるが、早期に釈放すれば、不自然な逮捕の背景に対する疑惑が取りざたされる可能性が高かった。米国は三浦氏を早期に釈放できない状況に追い込まれたと考えられる。

時間をかけて審理しても、有罪立証するには、あまりにも無理があり過ぎたと考えられる。釈放もできず、有罪にもできない、難しい情勢のなかで、三浦氏自殺の突然の報道が伝えられた。

私の2005年裁判における第2回公判では、事件の数多くの不自然な事実と疑惑が明らかにされた。疑惑を伝える大規模な報道が予想されたが、公判当日の朝、突然、国松元警察庁長官狙撃事件の容疑者が逮捕された。報道はこの逮捕報道に完全に占領された。結局、逮捕された容疑者は勾留期間を経過して、証拠不十分で釈放された。事件発生から長い年月を経た段階での逮捕で、結局、証拠不十分とされた逮捕は、不自然さを象徴するものだった。

三浦元社長は、イージス艦による漁船轟(ごう)沈事件、あるいはテロ特措法の犠牲になったのではないだろうか。政治権力は恐ろしい存在であることを知っておかなければならない。

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2008年10月10日 (金)

日米株価暴落と公的資金投入のあり方

株価暴落が止まらない。先の見えない不安心理が株式売却を加速させている。10月3日に米国議会は7000億ドル(約70兆円)の公的資金投入を柱とする金融安定化法を成立させた。10月8日には、世界の10の中央銀行が同時金利引き下げを実施した。英国政府は10月8日に、最大500億ポンド(約9兆円)の公的資金を銀行の資本を増強するために注入する方針を発表した。

米国政策当局がこれまでに提示した公的資金投入金額は1兆ドル(約100兆円)を突破している。それにもかかわらず、金融市場は安定を取り戻していないNYダウは10月9日、前日比678ドル安の8579ドルに下落した。2003年5月以来、5年5ヵ月ぶりの安値を記録した。

日経平均株価は10月10日、前日比881円安の8276円まで下落した。日経平均株価も2003年5月以来、5年5ヵ月ぶりの安値を記録した。日経平均株価のバブル崩壊後最安値は2003年4月28日の7607円だが、この水準が視界に入ってきた。

問題の震源地は米国で、発端は不動産価格下落である。米国の住宅価格はS&Pケース・シラー住宅価格指に従うと、全米主要10都市の場合、1994年2月から上昇が始まり、2006年6月までにちょうど3倍になった。2000年1月を起点とすると、2006年6月までに2.26倍になった。

2006年から住宅価格は下落に転じたが、本年7月までの下落率は21.1%である。金融危機が広がって、大混乱が生じているから、不動産価格が半値、3分の1、10分の1に下落したのかと考えてしまうが、下落率はわずかに21%にすぎないのだ。

サブプライムローン残高は1.3兆ドル(約130兆円)だったから、住宅を最高値の2006年6月にすべて購入したとしても、26兆円の損失しか生まれない。住宅購入の時期はばらけているから、130兆円の評価損は限定される。

日本の1990年代では、3倍に上昇した資産価格が元の水準以下に暴落して、大混乱が生じた。200兆円融資して購入した資産の時価評価が50兆円程度になり、150兆円規模の損失処理が必要になった。その過程で、金融機関の破綻が広がった。

この日本の事例を念頭に入れたのでは、米国の金融危機は説明できない。謎を解く鍵は「レバレッジ=てこ」なのだ。「デリバティブ」と呼ばれる金融派生商品の世界が際限なく広がった。その機能を一言で説明すると、「少額の投資資金で巨額の金融取引が可能になる」ということだ。債券先物取引の例で示すと、証拠金比率1%での取引を認めると、投資家は100万円の元本で、1億円の債券を買うことができる。額面100円の債券価格が1円変動すると、100万円の損益が生まれる。100万円の元手が1日で倍になったり、ゼロになったりする。

金融工学と表現すると聞こえが良いが、金融市場が「カジノ」になったのだ。デリバティブを扱う金融マンは億円単位の高額報酬を獲得した。破綻したリーマンブラザーズの最高経営責任者は2000年以降に494億円もの報酬を得ていた。

「市場原理主義」の終着点は「カジノ経済」だったのだ。26兆円の損失が100倍に拡大されれば、2600兆円になる。最終的な損失金額は不明であるが、100兆円の公的資金では、問題処理には程遠いことを認識しなければならない。

日本の政府関係者が、日本の経験を元に、金融機関への資本注入を提言するべきだなどと発言しているが、問題の本質をまったく理解していないと言わざるを得ない。米国の不動産価格は2割下落したが、理論価格=長期のトレンド上の価格に回帰するには、さらに2割から3割程度の下落が必要である。不動産価格調整はまだ4合目に差しかかったところだ。

この意味で、今回の金融危機に対しては、強い警戒感をもって対処する必要がある。デリバティブの想定元本の全体を把握し、最大で損失がどこまで膨張するかを予測し、その予測に見合う対応策を検討しなければならないのだ。

デリバティブ金融の想定元本は600兆ドルに達すると見られている。6京円の想定元本の1%が損失になるとしても、6兆ドル(約600兆円)の資金が必要になる。手元にはデータがないから、確かな推計はできないが、問題が途方もなく大きなものに膨れ上がってしまっている可能性は低くない。

サブプライム危機で常に取り上げられるCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)と呼ばれる、債務保証を商品化した金融商品だけでも、その残高は60兆ドルに達すると見られている。「市場原理主義」=「新自由主義」=「自由放任主義」は、取り返しのつかない「過ち」を犯してしまったのかも知れない。

米国の経済学者ジョン・ケネス・ガルブレイスは、著書『バブルの物語』(原題はA Short History of Financial Euphoria)に、「暴落の前に天才がいる」と記した。バブル生成には常に「神話の存在」と「金融の支援」が存在することを洞察した。日本のバブル生成の際も、銀行の過剰融資が存在した。過剰流動性による巨大な信用創造が生み出され、バブルが生成された。

2000年代の米国では、「金融」が「魔界」に突入してしまった。金融工学が人類の管理能力を超える「巨大宇宙」を創出し、その「巨大宇宙」で「ビッグバン」を発生させてしまった。

問題を処理するためには、巨大な資金が必要になるだろう。問題処理に際して不可欠なことがらは、「自己責任原則の貫徹」と「金融システムの安定性確保」の両立だ。損失の規模によっては、「金融システムの安定確保」が困難になることも否定はし切れない。しかし、最善の努力を注ぐ必要はあるだろう。

自己資本不足に陥る金融機関は、まず自己の責任で資本調達を実行しなければならない。自助努力での経営維持が不可能になれば、「実質破たん」状態になる。そのまま「破たん」させると、「破たん」が連鎖する可能性が高まる。「破たん」を連鎖させないために、公的資金が必要になる。問題は、どのような手順、ルールに従って公的資金を注入するのかだ。

答えは一つしかない。「実質破たん」金融機関を「一時国有化」することだ。実質破たん状況に陥った時点の株価で、政府が問題金融機関を買い取るのだ。問題金融機関の株主は、株価が下落した分だけ、有限責任を負う。「破たん」状態に至れば、株価評価は基本的に「ゼロ」になる。株主は出資した資金だけの責任を負う。

国有化した金融機関に、必要な資本を注入し、経営を再建させる。これが、「金融システムの安定確保」と「自己責任原則」を両立させる唯一の方法だ。破たん金融機関の経営者は免職させると同時に、適正な私財提供を求めるべきだ。経営破たんにより、公的資金が投入されるのである。責任ある当事者が、責任能力に応じて資金負担するのは当然である。

2003年の「りそな銀行」の処理は、これとまったく違う。「実質破たんさせたりそな銀行」の株主の株式にまったく手を付けずに、2兆円の公的資金を注入して、りそな銀行を救済したのだ。もっとも大きな利益を獲得したのは、「りそな銀行の株主」だった。経営者だけは入れ替えられ、政府の近親者が新経営陣に送り込まれた。新経営陣も巨大な利得を獲得したはずである。そして、「りそな銀行」は自民党の「機関銀行」になった。この問題をスクープしたと言われる朝日新聞の鈴木啓一記者が、記事発表と同時に疑惑の死を遂げていると伝えられている。私は命を落としていないだけ、ましかも知れない。

米国の金融危機に直面し、2003年の「りそな銀行処理」がいかに、「欺瞞と不正」に満ちていたのかを改めて検証する必要があるだろう。詳細を拙著『知られざる真実-勾留地にて-』に記述したので、是非ご高覧賜りたい。

私は「金融システムの安定確保」と「自己責任原則の貫徹」の両立を一貫して主張し続けた。自民党政権と金融業界は「責任処理を伴わない銀行救済」を一貫して主張し続け、結局、ごく一部のスケープゴートを除けば、「責任処理を伴わない銀行救済」が広範に実行されたのである。

長銀の粉飾決算事件では、財務省から送り込まれた最高裁判事が中心になって、経営者に対する司法の責任追及を放棄してしまった。日債銀に財務省OBが天下りで送り込まれ、刑事責任を追及されている。高裁有罪判決ののち、現在上告審で係争中だ。長銀事件逆転無罪最高裁判決は、日債銀に天下りした財務省OBの刑事責任を免責にするための工作である可能性が限りなく濃い。

資本注入論議が浮上すると、金融界と自民党は常に「責任追及のない資本注入」を主張する。小泉政権は「自己責任原則」を重視すると言いながら、「自己責任原則」を放棄した。この「不正」が糺されることなく、現在まで存続するのが「政官業外電=悪徳ペンタゴン」による利権政治=自公政権なのだ。

米国でも金融界は「責任追及のない資本注入」を強く求めているだろう。しかし、それは「公正と正義」に反する政策対応であると言わざるを得ない。

「大火が広がっているときは消火を優先しなければならない。失火の責任を追及している場合ではない」との主張をよく聞くが、このような発言を大声で主張した人物が、鎮火後に責任追及したことを見たことがない。

金融システムを守るために、公的資金の注入は不可欠だろう。しかし、それは、社会の「公器」である「金融システムを守るための方策」であって、「責任ある当事者を救済するための方策」ではない。米国が「金融システムの安定確保」と「自己責任原則の貫徹」の両者を両立させる政策対応を示すのかどうかを注視しなければならない。

「欺瞞と不正の金融処理」を実行した日本政府に、発言権などあるはずがない。日本の事例を説明するのなら、日本政府が「自己責任原則」を崩壊させた事実を正確に伝えるべきである。

「市場原理主義」=「自由放任」=「新自由主義」は金融危機とともに終焉する。新しい時代が幕を開けるが、その前に「市場原理主義」の「負の遺産」を解決しなければならない。その目的は「罪なき国民の生活を守ること」であって、「責任ある当事者の救済」ではない。関係者の私財提供にまで責任追及が及ばなければ、問題処理スキームは動き出さないだろう。

「こづかい帳」さんが指摘するように、日本でも米国でもいずれかの時点で新しい「ペコラ委員会」を設置して、問題を総括すると同時に、問題解決の基本形を定める必要がある。

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2008年10月 9日 (木)

文藝春秋麻生首相解散宣言で11月23日総選挙へ

10月10日発売の『文藝春秋11月号』に麻生首相が寄稿した手記「強い日本を!私の国家再建計画」が掲載される。麻生首相は手記に「私は決断した。国会の冒頭、堂々と私とわが自民党の政策を小沢代表にぶつけ、その賛否をただしたうえで国民に信を問おうと思う」と記述した。祭り騒ぎに仕立てた「政権放り出し首相後継総裁選」で内閣支持率を上昇させ、その勢いに乗って臨時国会の冒頭で解散を行おうとしていたことが明らかになった。

しかし、内閣支持率は期待したほど上がらず、自民党が実施した選挙結果予測調査で自民党惨敗予想が示された。総選挙惨敗を恐れた麻生首相は、解散総選挙先送りの逃げ道に隠れ込んだ。偶然、内外株式市場で株価が急落し、格好の口実を見つけた麻生首相は、「国民世論は選挙よりは景気対策を望んでいる」との言い回しを繰り返し始めた。しかし、手記が発表されたことで、見通しを誤ったことを自分で暴露する結果を招いた。月刊誌で華々しく選挙選の火ぶたを切って落とすとの目論見もタイミングを外してしまった。

政治権力に支配されるメディアは、「選挙より景気対策」のキャンペーンを展開し始めている。同時に麻生首相は株価急落を「大型景気対策決定」の大義名分に活用する戦術を採用した。金融不安深刻化を背景に、財政再建先送りが容認される空気が広がった。民主党が提示したインパクトのある「政権公約」に対抗し、選挙用「バラマキ景気対策」を発表して総選挙に臨む戦術に、明確にシフトしたと考えられる。

公明党は、国会での矢野絢也元公明党委員長および池田大作創価学会名誉会長の参考人招致を回避することを、最優先課題に位置付けていると見られる。衆議院が解散されなければ、参考人招致が実施される可能性が高いため、公明党は解散の先送りに強く反対すると考えられる。

結局、総選挙は11月23日に実施される可能性が高くなったと思われる。民主党は、補正予算とテロ特措法への対応について、戦術を大転換した。補正予算成立を遅らせることは、不況深刻化に対する不安を強める国民の意向に反すると判断し、補正予算の早期成立に協力することとした。

テロ特措法は野党が反対しても、与党が衆議院の多数を活用して成立させると判断し、早期に国会で議決されることを誘導する方針に切り替えた。麻生政権がテロ特措法審議を長引かせ、この問題を総選挙の争点に設定するスタンスを示し始めたことを受けて、戦術を転換したものである。総選挙の争点がすり替えられることを防ぐ意味で、正しい戦術転換であると考える。

麻生首相は自民党総裁に選出された自民党大会でのあいさつで、「私も今ここに立ちます時に、少なくともこれは麻生太郎に与えられた天命だと思っております。私はその選挙(=総選挙)に勝って初めて天命を果たしたということになるんだと存じます」と述べて、総選挙に勝利して初めて、首相の地位に就くことが正当化されるとの趣旨の発言を示した。

『文藝春秋』に「国会の冒頭、国民に信を問おうと思う」と記述したことについて、麻生首相は「いつ解散とは言っていない」と述べるなど、見苦しい言い逃れ発言を繰り返している。しかし、輿石東民主党参議院議員会長が、「首相が『私の天命は小沢民主党との選挙に勝利することだ。逃げない』というのなら、なぜ解散を逃げまくるのか」と指摘した通り、「私は逃げない」と宣言した言葉に対する責任を持たなければならない。また、誤りを認める潔さを持つべきだ。

安倍首相、福田首相の自公政権の首相が二代続けて政権を放り出した。麻生政権を含めて、国民の信を問わないまま政権をたらい回しすることは許されない。補正予算を成立させ、2009年度予算編成に支障を生じさせないタイミングで解散総選挙を実施することが、国民の意向を尊重する行動である。

総選挙を実施して本格政権を樹立し、その本格政権が経済問題に腰を据えて対応することが望ましい。現在の国会は、衆議院では自公の与党が3分の2以上の多数を確保しているが、直近の民意を示す参議院では野党が過半数を確保している。衆議院における与党の多数を利用した再可決で重要決定を重ねることは、参議院の形骸化を招くとともに、民意を無視した政治であるとの批判を免れない。

総選挙で自公が勝利する場合には、衆議院の意思決定が重みを増すだろう。参議院でも変動が起こり、政界再編が進むことも予想される。これまでの、衆参ねじれによる国会混乱は是正される可能性が高い。総選挙で野党が勝利すれば、衆参ねじれは解消する。民主党中心の本格政権が樹立され、新しい日本が新たな歩みを始めることになる。

11月に総選挙が行われることは、あらゆる情勢から判断して妥当である。民主党を中心とする野党が国会運営で、麻生政権に協力する姿勢を示していることを踏まえ、麻生首相はこれまでの自らの発言を踏まえて、11月総選挙を決断するべきだ。

日本国憲法の条文から、解散権は首相の大権との解釈が生まれているが、仮に首相に解散権の大権が付与されるとしても、その行使にあたっては「公益」が重視されなければならない。「私的利益」に基づく「解散権」行使は、「政治の私物化」と言わざるを得ない。

麻生政権が総選挙向けに「バラマキ財政」の方針を提示する可能性が高くなった。「国民の生活を重視する」民主党の政策方針との相違が見えにくくなる。自民党は「高速道路料金の大幅引き下げ」など、民主党が提示した政策の盗用と思われる政策まで検討し始めた。

しかし、総選挙は今後の4年間にわたって、日本の政治を委ねる「政権を選択する」選挙である。国民の側も目先の「バラマキ」だけに目を奪われてはならない。国民の苦しみが景気循環上の不況から生まれたものではなく、小泉政権以来の「市場原理主義」経済政策によって生まれたものであることを忘れてはならない。

総選挙の争点はこれまで繰り返し指摘してきたように、

①弱肉強食奨励VSセーフティーネット強化

②官僚利権擁護VS官僚利権根絶

③対米隷属外交VS自主独立外交

の三つである。麻生政権が「バラマキ財政」を展開することになるため、①の争点が見えにくくなる。しかし、国民は本質を正しく洞察して判断しなければならない。

 「誰のための政治か」、「誰の幸福を重視する政策方針であるか」を考えなければならない。小泉政権の「弱肉強食奨励」=「格差拡大推進」=「セーフティーネット破壊」=「市場原理主義」の政策方針が、一般国民の苦しみを生む原因になった。非正規雇用労働者、働く貧困層が激増し、多くの若者が将来に夢を持つことができなくなった。多くの一般国民が生活の安定を奪われた。

 障害者、高齢者、母子世帯などの経済的な弱者が、人間としての尊厳を傷つけられ、生存権を脅かされるようになった。一方で大資本は減税などのさまざまな優遇策で、史上空前の利益を享受した。米国に隷属する日本政府が実施した外為市場でのドル買い介入は、100兆円もの損失を日本国民に負わせる結果を生み出したが、円安で輸出製造業だけは巨大な利益を確保した。

 選挙用に「バラマキ財政」が実施されるが、その方法は旧態依然の利益誘導の裁量政策が中心になる。特定業界、特定利害団体が「バラマキ」の対象とされ、政治家が「口利き」で暗躍する「利権支出中心の景気対策」が編成されることは間違いない。

 政府の無駄を根底から排除する政策を伴わないから、「バラマキ財政」のツケは、最終的に一般国民に回される。麻生政権が消費税大増税に向かうことは明白だ。選挙で「バラマキ財政」を実行するのは、「政官業外電=悪徳ペンタゴン」の利権を死守するためなのである。

 小泉政権が創出した「弱肉強食社会」を「共生社会」に作り変える施策を、麻生首相はまったく示していない。景気対策が発動され、日本経済が回復に転じても、一般国民の生活が改善されないことを、国民はしっかり認識しておかなければならない。2002年から2007年にかけての戦後最長と言われた「感無景気」においても、一般国民の生活がまったく浮上しなかったことを忘れてならない。

 民主党が提示した政権公約の財源が不明確であると自民党は批判するが、民主党が提示した政権公約には、自民党が手を付けようとしない極めて重要な施策が盛り込まれていることを忘れてはならない。民主党の提案には「天下りの根絶」が盛り込まれているのだ。

 2万6千人の「天下り」が送り込まれている「天下り機関」に1年に12兆円もの国費が投入されている。一般会計と特別会計を合計した212兆円の1割にあたる22兆円の財源を、政府部門の無駄を根底から排除することによって捻出するとの提案は、決して非現実的ではない。

 与野党の政策の決定的な違いは、「天下り」を温存するのか、「天下り」を根絶するのか、という点に存在する。麻生政権は「日本政策金融公庫」、「日本政策投資銀行」、「国際協力銀行」の「天下りパラダイス」を完全に温存する姿勢を明確に示している。「官民人材交流センター」による「天下り体制強化」も全面的に支援する姿勢だ。

 「官僚」や「大資本」を優遇する政治を排除して、「国民生活」を政治の中心に位置付けることが「政権交代」の最も大切な意義である。民主党が政権公約で示した施策は、すべてが「一般国民」の生活を支援するものである。日本を、「大資本」と「官僚」の利益だけを追求し、「一般国民」を不幸にする「弱肉強食社会」から、「一般国民」が幸福に生きることのできる「共生社会」に作り変えることが「政権交代」の意味である。国民は目先の「利権支出バラマキ」に惑わされてはならない。

これまでの日本外交は「対米隷属」だった。日本国民の利益を損ねて、外国資本に利益供与する政策がまかり通ってきた。どれほど、米国の力が強くても、不正義の戦争に日本が加担することを、本来、日本政府は許すべきではなかった。米国に対しても「言うべきことは言う」政府でなければ、国際平和と日本国民を守ることはできない。

すべての国民が幸福を感じて生きてゆける社会をつくること、そのために、大資本と特権官僚への優遇を取り除くこと、米国に対しても言うべきことを言うこと、これらの基本原則に則った新しい政府を樹立するかどうかが、総選挙で問われる。

有権者は目先の利益誘導の罠に嵌(はま)り込んではならない。有権者は、「政権選択」の意味を正確に把握し、争点を明確に認識したうえで、政権を「選択」しなければならない。

 月刊誌の活字にまでして総選挙で民意を問うことを宣言した麻生首相が、これ以上逃げ回ることは許されない。補正予算を編成し、追加景気対策を決定したら、速やかに衆議院を解散し、総選挙を実施すべきである。有権者は「政権選択」の意味を正確に把握して、重大な判断を下さなければならない。日本の命運を定める総選挙になる。

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2008年10月 8日 (水)

日米株価急落と金融危機の深層

10月8日の日経平均株価が前日比952円下落して9203円に達した。2003年12月以来、4年10ヵ月ぶりに1万円の大台を割り込んだ。10月7日のNY株式市場ではNYダウが508ドル下落し、9447ドルに達した。2003年9月以来、約5年ぶりの安値を記録した。

日米市場だけでなく、アジア、欧州を含め、グローバルに株価下落が連鎖している。米国では10月3日に7000億ドルの公的資金投入を柱とする金融安定化法が成立したが、株価下落に歯止めをかける効果を発揮していない。

日本円に換算して70兆円もの巨額の公的資金を注入する方針が示されているのに、株価が下落し続けているのはなぜか。日本では、米国のような金融不安が広がっていないが、株価は米国に連動して下落している。
 日経平均株価は昨年7月9日の18261円から、本日10月8日の9203円まで、9058円、49.6%下落した。NYダウの下落は、昨年10月9日の14164ドルから10月7日の9447ドルまでの4717ドル、33.3%である。日本の株価はピークから半値になり、米国の株価はピークから3分の1下落した。金融不安の震源地の株価下落率が小さい。

グリーンスパン前FRB議長は、100年に一度の金融危機であると述べている。1929年に始まったNYの株価暴落では、株価が約9割下落した。今回の金融危機が1920年代の危機の再来になるのだろうか。

現段階では、目に見える混乱は株式市場に限定されているが、金融恐慌の恐ろしさは、金融市場の混乱がタイムラグを伴って実体経済に確実に波及する点にある。「資産価格下落-金融不安-経済悪化」が、断ち切れない「魔の悪循環」を形成する。実体経済の悪化は、倒産、失業、所得減少の形で、一般国民の生活をも直撃する。

「責任ある当事者が責任を負う」ことが、自由主義経済の基本ルールであり、問題発生源の金融機関が破たんするのは「自業自得」、「因果応報」ではあるが、金融恐慌の連鎖が罪なき一般国民の生活を直撃することに十分留意しなければならない。「責任論」を重視しながら、「一般国民を守る対応策」を考えなければならない。

米国の金融危機の基本背景は住宅価格の下落である。S&Pケースシラー住宅価格指数によると、全米主要10都市の住宅価格は1994年2月から上昇し、2006年6月までに、ちょうど3倍になった。2000年1月を起点とすると、2006年6月までに2.26倍になった。

米国の不動産価格は名目GDPの成長率に連動して上昇するトレンドを描いてきたが、2000年代に入ってからの上昇速度は極めて速かった。米国の政策金利であるFFレートは2003年から2004年にかけて、1%の低水準で推移した。2004年6月から、FRBは金利引き上げを開始したが、利上げのスピードは遅く、2006年にかけて、巨額の住宅融資が実行され、不動産価格が急騰した。

1980年代後半の日本と類似する「不動産価格バブル」が生まれたのだ。「バブル」は破裂する宿命を負っている。米国の住宅価格は2006年6月から下落し始め、本年7月までに21.1%下落した。

この不動産価格の下落に連動して問題が噴出している。

日本では1980年代の後半に株価、地価が急騰した。株価は1986年の年初から89年の年末までに、約3倍に上昇した。不動産価格は株価に対して約1年遅れて、87年年初から90年の年末にかけて、やはり3倍程度に上昇した。商業用不動産では5倍から10倍に上昇したものも多かった。

1987年から1990年までの4年間に金融機関の融資残高は100兆円から200兆円増加した。「銀行」と名の付く金融機関からの融資が100兆円、銀行と名の付かない金融機関およびノンバンクからの融資が約100兆円増えた。

この200兆円の資金が不動産や株式などの資産の取得に向けられた。ところが、1990年代に入り、資産価格が暴落した。200兆円で購入した資産が100兆円になれば、100兆円の損失が発生するし、70兆円になれば130兆円の損失が生まれる。

日本の場合、100兆円から150兆円の損失が発生したと考えられる。不良債権の処理が一段落したのは2005年ころで、仮に損失合計額が150兆円だったとすれば、1年あたり10兆円の資金を投入して問題を処理したことになる。それでも日本の株価は2003年まで下落し続けたから、2003年までは新たな不良債権が生まれ続けた。株価や地価が上昇に転じて、初めて不良債権処理は加速する。

この意味でも小泉政権が2001年から2003年にかけて景気悪化を推進して資産価格を暴落させたのは、最悪の政策対応だった。この政策で、日本経済は激しいいエネルギー消耗に直面し、日本の優良資産の大半を外国勢力に掠(かす)め取られてしまった。正確に言えば、小泉竹中経済政策は、外国勢力に日本を贈与するために、上述した経済破壊政策を実行したのだと考えられる。

話を本題に戻すと、資産価格下落に伴う損失処理額は、バブル価格での資産購入総額と資産価格下落率で、およその見当をつけることができるのだ。私は1996年段階で、不良債権の規模が100兆円から200兆円存在し、損失処理として50兆円から100兆円程度の資金が必要になるとの概算を念頭に置いて、問題処理の方策を提言した。

1997年2月のNHK「日曜討論」でも、この見解を表明した。番組に出演した吉冨勝経済企画庁調整局長(当時)は、「不良債権の規模が100兆円などとの冗談を言ってもらっては困る」、と鼻先でせせら笑った。当時の大蔵省は不良債権の規模を20兆円程度としていたのだ。

しかし、1997年に北海道拓殖銀行、山一証券などの経営破たんが表面化したのち、政府は不良債権規模が100兆円であることを認め始めた。

こうした基準に照らして考えると、米国の金融問題噴出を簡単には説明することができない。米国の住宅不動産価格は2006年6月をピークに下落に転じたが、本年7月段階でも、21%しか下落していない。サブプライムローンの残高は1.3兆ドル、約140兆円であり、すべてをピークで購入したとしても、その損失は30兆円に満たないのである。

米国政策当局は、ベア・スターンズ社買収に290億ドルの特別融資を実行、政府住宅公社救済に2000億ドル、AIG救済に850億ドル、金融安定化法で7000億ドルの公的資金枠をすでに用意した。これだけで100兆円を優に上回る。また、アブダビ、クウェート、サウジアラビア、シンガポール、中国などの政府系ファンドも昨年11月以来、兆円単位の資金を米国金融機関に投入してきている。

それにもかかわらず、金融市場の動揺がまったくおさまらない。その最大の理由は、「レバレッジ」である。「レバレッジ」とは「てこ」のことだ。「デリバティブ」と呼ばれる金融派生商品が急激に拡大した。「デリバティブ」の最大の特徴は、「投資元本」に対する「想定元本」が幾何級数的に大きいことである。サブプライムローンを原商品として、デリバティブが組成されることによって、巨大なポジション=想定元本が生み出されたのだ。その結果、金融商品の価格下落に伴う発生損失額が幾何級数的に拡大しているのだ。

「デリバティブ」に順風が吹くときに問題は顕在化しない。途方もない巨大利益を金融機関、トレーダーが謳歌したのだ。しかし、逆風が吹けば、惨事が発生する。その惨事がいま、少しずつ姿を表し始めている。

日本政府が日本の経験をもとに、「資本注入」を提言すべきとの意見が散見されるが、問題の属性が日本の金融危機と欧米の危機とで、まったく異なることを認識しなければならない。巨額の公的資金も「デリバティブ」の幾何級数的な損失の海においては、「大海の一滴」にしか過ぎない危険がある。

ゴールドマン・サックスの会長を務めたポールソン財務長官が、資本注入の必要性を認識していないはずがない。CDS(クリジット・デフォルト・スワップ)の市場規模だけでも60兆ドルに達していると見られる。金融派生商品の大海に、どれだけの魔物が棲み、潜んでいるのかが定かでないことが、問題解決の道筋を不透明にしている

2003年の日本で意図的に作られた金融危機では、問題が非常に単純であるなかで、最終的に「税金で銀行株主を全面救済する」との、「不正と欺瞞」に満ちた「自己責任原則を完全に放棄する」金融処理策がまかり通ってしまった。その結果、金融行政に取り返しのつかない「汚点」が残されたが、「金融恐慌」発生が回避された。

米国議会が安易な銀行救済を認めないことは、健全である。米国の問題処理に際しては、今後も「金融システムの安定確保」と「適正な責任処理」の両者が重視されながら、対応策が検討されてゆくものと考えられる。

しかし、金融問題の闇は深く、問題解決は容易でない。「市場原理主義」は「市場における自由放任」を容認してきた。この「自由放任」がコントロール不能の「デリバティブ金融商品の大海」を生み出す原因になった。

「市場原理主義」は「弱肉強食」を奨励し、金融市場の特殊な技法を活用して、労力を使わない「濡れ手に粟」の「一獲千金」の巨大利益獲得を「賞賛の対象」に祭り上げてきた。日本における「六本木ヒルズ族」に対する賞賛も同じ文脈上に位置付けられるだろう。

破たんしたリーマン・ブラザーズ社の旧経営者が2000年以降に494億円の報酬を得てきたことが明らかにされているが、こうした状況に対する素朴な疑問が否定されるところに、「市場原理主義」による「感覚の麻痺」が広がっていたことが表れている。

法外な巨大利得の裏返しが、逆境における、処理不能の巨大損失の発生なのだ。本来、自己責任での処理が求められるが、当事者に処理能力が存在しない。米国の金融危機に対して、米国政策当局は、時間をかけて、個別問題に丹念に対応してゆくしかないと考えられる。証券化商品の時価評価を緩め、問題を先送りしつつ、処理を進めてゆかなければならないのではないかと考える。問題解決の道筋は見えていない。

「市場原理主義」がもたらした「強者」と「弱者」の二極分化が問題発生時の利害調整を困難にしている点も見落とせない。納税者である「弱者」は、バブルに踊り、利得にとっぷりと浸かってきた「強者」のために公的資金を使うことを、決して許せないはずだからだ。

米国金融危機が「市場原理主義」=「新自由主義」に終焉をもたらす契機になることは間違いないだろう。しかし、その前に、いま存在する問題に対処しなければならない。米国の問題処理には、まだ多くの時間と多くのプロセスが求められると考えられる。株価下落がさらに進行するリスクは依然、小さくない。

日本が米国の言いなりになり、尻拭いさせられることを、十分に警戒しなければならない。安易なドル買い介入が巨額の国民負担を生み出してきた事実を忘れてはならない。日本の金融市場は現段階では相対的には安定しているが、世界の金融市場が不安定化すれば、当然強い影響を受けることになる。また、ドル建て金融資産の動向には最大の警戒が求められる。

 日本経済の悪化が加速している。不況深刻化の下での国民生活支援が政策の急務である。総選挙を早期に実施し、民主党中心の本格政権を一刻も早く発足させ、国民生活を防衛する万全の政策を早急に実行することが望まれる。

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2008年10月 7日 (火)

国会論戦で表出する麻生政権の問題点

予算委員会での論戦が始まった。「年金」、「資料事前検閲」、「天下り」、「猛毒米流通事件」など、国会で論じなければならない問題が山積している。論戦を通じて麻生政権の問題点が浮き彫りになっている。報道各社は国会論戦を詳細かつ正確に伝える必要があるが、多くのメディアが偏向報道を継続している。

年金データの杜撰(ずさん)な取扱いの問題に対して、国民は怒りと不信の気持ちを強めている。年金データが消滅した「消えた年金問題」に加えて、新たに社会保険庁が組織的に関与して年金データを改ざんした「消された年金問題」が明らかになった。

2007年7月の第21回参院選で安倍晋三首相は

「宙に浮いた年金5000万件は来年の3月までに名寄せして、最後のお一人までしっかりとお支払いします」

と演説した。

参院選で配布された「安倍晋三首相より、国民の皆さまへ」と題したビラは、安倍氏の署名をつけて、

「自民党は責任政党です。出来ることしかお約束いたしません」

「最後のお1人に至るまで、責任を持って年金をお支払いすることをお約束します」

と明記した。

安倍内閣メールマガジン(第31 2007/05/31)は、

「私の内閣においては、年金の「払い損」は絶対に発生させません。
1億人の年金加入者に対して、導入前に3億件あった番号を整理、統合する作業を始め、導入直後にも2億件が残りました。その後、一つひとつ、統合を進めた結果、今残っているのが5千万件です。これらについて、徹底的にチェックを進め、1年以内に全記録の名寄せを完了させます。」

と記述した。

これらの約束が守られなかったことは言うまでもない。

公約を守らなかったことについて町村信孝官房長官は、昨年12月の記者会見で、「来年3月までにやるのは、5000万件の(記録の)解明をすることだ。来年4月以降も精力的にやっていこうということで、最後の一人、一円まで(払うことを)全部、来年3月までやると言ったわけではない」と釈明した。

町村官房長官は、

「選挙中だから『年度内にすべて』と縮めて言ってしまった」

とも発言した。

また、舛添厚労相は紙台帳とコンピューターデータとの突合問題を「社保庁の後継組織ができる時(10年1月)には解決する決意」と表明していたが、公約実現が困難であることが判明すると、

「表明したのはその方向で取り組むとの「決意」であって「公約」ではない」

と言い逃れた。

 「消えた年金問題」を解決するには「紙台帳とコンピューターデータとの突合」を完了しなければならないが、紙台帳のデータは8.5億件ある。10月6日の国会質疑に従えば、これまでのデータ突合のスピードで単純計算すると、データ突合を完了するには25年の時間を要することになる。また、すでにコンピューターに入力されているデータについては、5000万件の問題されるデータのうち、これまでに処理された件数を基準に問題解決の時間を単純計算すると12年の時間を要することになる。

 舛添厚労相は10月6日の国会答弁で、「60年間の社保庁の不祥事の山をこつこつこつ明らかにしているんだ。初めから分かっていれば苦労しない」と逆切れし、問題処理についての見通しをまったく示さなかった。厚労相が社会保険庁の責任を負う立場にあることを認識しない発言である。企業が不祥事を起こしたら、組織のトップが最終責任を負うのは当然である。それを「社保庁の不祥事をこつこつ明らかにしている」と発言するのは、自己の問題と位置付けていない考えの表れだ。「社保庁の不祥事」との表現は、「自分に責任のない他人が引き起こした不祥事」であるとの姿勢を示している。

 野党が霞が関省庁に求める資料請求について、自民党の国会対策委員会が各省庁に対し、野党要求の資料を野党に提供する前に、自民党の国会対策委員会に資料を提出し、了解を取ることを求めた問題も国会で取り上げられた。公務員は行政部門の所属し、政治的な中立が求められる。議院内閣制の下では立法府における与党が内閣を組織するから、行政府と立法府における与党が強い関係を持つのは当然だが、政治的に中立でなければならない霞が関省庁が、与党からの直接的な指示に従うことは、明らかに違法である。

 10月7日の衆議院予算委員会の質疑で、石破農水大臣が自民党による事前検閲が問題であり、問題のある行動に対する謝罪を示したが、自民党による情報隠ぺい、行政官庁に対する違法な介入の実態の一部が明らかにされた。野党の要求を受けて、河村官房長官は与党と省庁の関係、野党やマスコミの省庁への資料請求についての政府統一見解をまとめ、国会に提示することを確約した。

 国会審議を通じて、自民党政権のさまざまなひずみ、歪みが明らかになっているが、麻生政権の政策基本姿勢の一端を明確に示したのが「天下り問題」に対するスタンスである。民主党の長妻昭議員は、2007年4月時点で、霞が関省庁からの政府関係機関への「天下り」が26,632人、4696機関に及んでいる事実を明らかにした。これらの「天下り機関」には、1年に12兆6047億円もの国費が投入されている。

 「天下り」は「官僚主権構造」、「官僚利権」の象徴である。「天下り」を根絶することが日本の統治システムを刷新する「決め手」になる。自民党政権は国家公務員制度改革を謳(うた)いながら、「天下り」を廃止する姿勢をまったく示していない。

 国家公務員法が改正され、「官民人材交流センター」が設立されることになっている。これまで各省庁が斡旋していた天下りを、内閣府に設置するセンターに一元化する構想だが、「天下り」を禁止するのではなく、「天下り」を制度的に確立するものである。センターが設置されると3年以内に各省庁の天下り斡旋は禁止されることになる。

 経過期間については、「再就職等監視委員会」が設置され、監視委員会が各省庁の「天下り」斡旋についてのルールを定めることとされている。麻生首相は、監視委員会の委員人事が国会同意人事であり、民主党が賛成せず、監視委員会を発足できないことを理由に、現状の天下りを容認する考えを示した。

 長妻議員は霞が関省庁が退職職員の2度目の天下りを斡旋し続けていることも指摘し、追及した。民主党は国家公務員の年功制賃金制度を修正し、国家公務員の終身雇用を保証したうえで、「天下り」の全面禁止を主張している。甘利明行革相は公務員には雇用保険が適用されないため、ハローワークを利用した再就職先探しは認められないとの答弁を示した。民主党は公務員にも労働基本権を認め、雇用保険も適用し、一般国民同様に、再就職を希望する場合にはハローワーク等を活用するべきだとの主張を示した。

 長妻議員は麻生首相に対して、各省庁が斡旋している「天下り」の「渡り」の斡旋を即時禁止することを要請したが、麻生首相は拒否した。

 麻生政権が官僚天下りを全面擁護する姿勢が明確に示されている。麻生政権は官僚機構を味方につけて総選挙を戦う戦術を採用していると考えられる。「国際評論家小野寺光一の政治経済の真実」主宰者の小野寺光一氏は、民主党が政権奪取するためには、官僚機構と敵対しないことが必要であるとの主張を示されている。

 しかし、私は「政権交代」により実現しなければならない目標は「官僚主権構造」の打破であり、「政官業外電=悪徳ペンタゴン=利権互助会の利益を追求する政府」を倒し、「一般国民の幸福実現を追求する政府」することだと考える。この意味で、「天下り」根絶は、総選挙における最重要の争点として掲示するべきだと考える。この問題については「カナダde日本語」の美爾依さんと見解を共有する。「政権交代」実現のために、「小異を残して大同に付く」ことが大切だが、「天下り」問題は本質に関わる問題であり、私の見解を改めて明示しておきたい。

 国会論戦の報道姿勢にバラツキが見られ始めている。NHK、日本テレビ、フジテレビの政権迎合姿勢は不変だが、TBSが野党の主張を従来に比べると詳しく紹介し始めた。「機を見るに敏」なみのもんた氏の発言姿勢が急変している。

 政権迎合番組の代表はテレビ朝日「TVタックル」と「サンデープロジェクト」だが、10月6日「TVタックル」では、MCの北野たけし氏が計算し尽くした発言を示したことを見落とすことができない。北野氏は「民主党は魅力的な若手が多いが、人気のない代表が最大の問題である」ことと、「蟹工船ブームの共産党に頑張ってもらわなくては」といった趣旨の発言をした。

 小沢氏のイメージを悪化させることが、「TVタックル」のメインテーマとされていると考えられる。この主題に沿った発言を、北野氏はタイミングを見計らって行ったのだと考えられる。また、反自民票の増加が見込まれるなかで、反自民票が民主党に流れれば、自民党は一段と厳しい状況に追い込まれる。反自民票が民主党ではなく、共産党に流れることを自民党は希望している。「TVタックル」では「共産党」を大きなテーマとして取り上げたこともあった。北野氏の発言はやはり計算され尽くした「政治的」発言と捉えられる。

 他方、同番組に出演している江田氏の発言が激変した。これまでの「自民党寄り」発言から、「民主党寄り」スタンスに激変した。次期総選挙での自民敗北の可能性が高まりつつあることを受けてのスタンス修正と考えられる。同じく「脱藩官僚の会」のメンバーであり、自民党の中川秀直氏と一体化している高橋洋一氏が、懸命に民主党批判を展開していることと好対照を示していた。

 フジテレビは10月7日朝の情報番組で、株価急落を理由に総選挙先延ばしを正当化する主張を全面的に展開し、麻生政権の総選挙先送りに対する援護射撃を積極的に買って出ていた。

 「年金」、「国会が請求する資料事前検閲」、「天下り」、「猛毒米」などの各問題についての国会論戦を通じて、与野党の基本政策が浮かび上がってくる。有権者は国会論戦を直接、じっくりと吟味して視聴し、偏向報道に惑わされずに、与野党の基本政策を正確に把握する必要がある。正しい情報に基づき、正しく「政権選択」しなければならない。

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2008年10月 6日 (月)

麻生政権②「財政政策の中味」が最重要

「政権選択」選挙においては、「一般国民」の利益を優先する政治と、一般国民ではない「特定の利害関係者」の利益を優先する政治、のいずれを国民が選択するのかが問われる。

与党と野党の主張する政策方針の対立軸は以下の三点だ。

①弱肉強食奨励VSセーフティーネット強化

②官僚利権擁護VS官僚利権根絶

③対米隷属外交VS自主独立外交

 政府の活動を知るもっとも分かりやすい資料は「予算」である。財政資金をどのように調達し、財政資金をどのように配分するかを示すのが予算である。

 財政政策の機能には、①資源配分、②所得再分配、③景気安定化、の三つがあるとされている。経済用語にすると分かりにくくなるが、①どのような対象に財政資金を使うか、②経済格差を政策がどのように調整するか、③不況対策に財政政策を活用するか、の三つの機能があるということだ。

 ③の「景気対策と財政運営」の問題について、二つの対立する考え方がある。ひとつは「景気対策は効果がなく、財政運営はひたすら緊縮に努め、財政赤字削減に努力すべきである」との考え方だ。これを私は「近視眼的財政均衡至上主義」と呼んできた。「財政再建原理主義」と言い換えることもできる。

 対立する考え方は、「国の役割は国民生活の安定であり、政府は必要に応じて財政政策を活用すべき。経済成長を維持することが財政再建には不可欠で、経済を無視した緊縮政策の強行は財政再建にも逆行する結果を招く」との考え方だ。

 私は後者の主張を貫いてきた。橋本政権が1997年度の「9兆円の負担増加策」を決めた時も、小泉政権が2001年度に超緊縮財政を強行した時も、私は「行き過ぎた緊縮財政は景気にも財政にも悪い結果を引き起こす」と警告した。実際に、ふたつのケースのいずれにおいても、警告通りの結果が生まれた。2001年度のケースでは、橋本元首相も小泉首相に警告を発したが、小泉氏は警告を無視した。

 小泉政権は結局、2001年度も、2002年度も5兆円の追加財源調達を含む大型補正予算編成に追い込まれた。偏向メディアが、「小泉政権は財政出動を実行せずに景気回復を実現した」との「大嘘」を流布しているが、小泉政権は2年連続で大型補正予算編成を実行している。

 麻生首相は、財政再建原理主義からの訣別を宣言した。また、自民党の中川秀直氏も同様だ。ただ、この主張は私が2001年の小泉政権発足当初から主張してきたもので、麻生氏も、中川氏も、「財政再建原理主義」から、私が主張してきた「経済成長重視主義」に「転向」したものである。

 麻生氏と中川氏は、小泉政権の中枢に座り続けた人物である。小泉氏に異を唱えて、自らの主張を貫いてきたわけではない。麻生氏は小泉政権が超緊縮財政を実行した2001年の小泉政権発足当初から2003年9月にかけて、自民党政調会長の職にあった。政調会長は自民党のおける政策決定の最高責任者である。小泉政権の政策決定責任者として麻生氏が小泉元首相の財政政策運営に強く反対した形跡はない。

 国民生活を重視して、小泉元首相と対峙してでも自らの主義主張を貫くような行動はまったく示されなかった。ひたすら小泉元首相に恭順の意を示して、小泉政権の政策に追従し、要職ポストを得ることに専心したのである。自己の政治的利益のためには原理原則をねじ曲げてしまう、「現世利益優先」の基本姿勢がうかがえる。

 財政政策運営において、「財政再建原理主義」を否定し、「経済成長重視主義」を唱える人々が増えてきたことは望ましいことだが、目先の自己の利害でくるくると変節する人物が多く、信頼することができない。福田政権の経済財政担当相だった大田弘子氏は、「財政政策を活用する国は存在しない」とまで言い切った。権力迎合のマスメディアも財政政策活用を全面批判し続けてきたのだから、麻生政権の景気対策を全面批判するのが順当だが、突然、筆鋒を鈍らせている。

 麻生首相が成長重視の主張を示したのに、私が麻生政権を支持しない理由のひとつは、麻生氏が「信念を貫くことより、ポストなどの現世利益を優先し、小泉政権の経済崩壊政策にすり寄り、加担した」ことだが、より重要な理由は「政府の役割」についての麻生氏の基本スタンスに同意できないことだ。

 「神州の泉」主宰者の高橋博彦氏が、麻生首相に対する不信感を表明されている。高橋氏は郵政民営化問題に対する麻生氏の基本姿勢に強い疑念を提示されている。小泉政権の「売国政策」を糾弾しなければならない、との視点から、私も高橋氏の主張に賛同する。国民新党の自見庄三郎議員が参議院での代表質問で指摘された極めて重大な問題については、改めて意見を提示する。

 「日本経済復活の会」の小野盛司会長は、「経済成長重視」の視点から、麻生氏が提示した方針を歓迎しており、この点については、私も理解できる。しかし、私は、財政の「資源配分機能」、「所得再分配機能」をより重視しており、「景気安定化機能」についての政策スタンスだけを理由に、麻生政権を支持することができない。

 財政活動は政府の行動の中核である。どのような政治理念に基づき、財政資金をどのように配分するかが、「政治そのもの」であると言っても過言ではない。「不況に際して財政政策を活用するかどうか」以上に、どのような理念の下に、どのような目的で「財政資金配分を実行するのか」が、「政治」を評価するうえで不可欠な視点である。

 財政出動をするのに、「不透明な利権に結びつく公共事業」を増額するのと、「子育て支援の給付金」を、ルールを定めて一律給付することは、まったく異なる効果を生み出す。「いくら使うか」以上に、「何にどのように使うか」が重要なのだ。

これまで何度か記述してきたように、政府支出を「裁量支出」と「プログラム支出」に区分することが可能だ。「裁量支出」は利権に結びつきやすい。政治屋と財政当局は「裁量支出」を強く選好する。「裁量支出」は、「さじ加減」で支出を決定できるから、「権力」=「利権」そのものになる。

これに対して、社会保障支出を中心とする「プログラム支出」は、制度を確定すると、制度にしたがって自動的に支出が実行される。透明な「プログラム支出」は「利権」に結びつきにくい。景気対策は透明性の高い「プログラム支出」を中心に実施するべきなのだ。

ガソリン価格急騰に伴う財政政策も、「ガソリン税暫定税率廃止」がもっとも透明で分かりやすい。漁業協同組合を介在させ、細かな基準を設定して補助金を配分する政策には、裁量と恣意が入り込みやすい。政治屋と財政当局は後者の手法を選好する。予算配分の「権力」=「利権」を手にできるからだ。

民主党が提案している諸施策は、「プログラム支出」を基軸にしている。「最低保障年金の全額税源化」、「年金制度一元化」、「子育て手当の支給」、「高速道路無料化」、「公立高校授業料無料化」、「私立高校授業料補助、大学学費補助」、「農家の戸別所得補償制度」などのいずれも、透明性を確保する「プログラム支出」に分類することができる。

破壊されたセーフティーネットを再構築する提案も多く示されている。「後期高齢者医療制度」をいったん廃止し、新しい高齢者の医療保障のあり方を検討するのは正しい手順だ。パートや派遣労働者の非正規雇用者の待遇を正規雇用者と同一にすることも、極めて重要な施策である。

財政政策で重要なことは、「透明な制度で施策を実行すること」と、「国民生活の安定を目的とする施策を実行すること」なのである。

自民党政治は、「市場原理主義」に基づき、「弱肉強食を奨励」し、「格差拡大を容認」し、「セーフティーネットの破壊」を推進するものだった。この施策に対する対極の政策が、「セーフティーネットの再構築、強化」、「高齢者、障害者、若者、労働者を支援し、これらの一般国民の生活を安定化させる施策の強化」なのだ。

日本経団連会員企業が2007年に実施した政党の政治団体に対する寄付総額を見ると、民主党への寄付が8320万円であったのに対し、自民党への寄付は29億1000万円だった。自民党が「大資本」の利益増大に向けての施策に熱心であるのは、自民党が「大資本」から「買収」される構造を有していることからすれば順当である。

また、麻生政権は日本政策金融公庫、日本政策投資銀行、国際協力銀行の、いわゆる「財務省天下り御三家」に対する、財務省からの天下り人事を全面的に擁護している。自民党総裁選でも「天下り利権排除」が大きな論点として提示されたにもかかわらず、麻生政権は「天下り利権」の完全擁護の姿勢を変えようとしていない。

麻生政権が「大資本」、「特権官僚」と癒着し、「大資本」と「特権官僚」の利益保護に軸足を置いていることがよく分かる。対極の政策は「大資本」と「特権官僚」の利権を排除して、「一般国民」の利益を重視する施策を実施することだ。民主党が提示した政策は、「一般国民」の利益重視を鮮明に示すものである。

「外交」の方針についての小沢一郎民主党代表の説明は明快だった。小沢氏は「日米同盟を日本外交の基軸に据える」ことを明確に示したうえで、「日米同盟を基軸に据えることは米国の言いなりになることではない」と述べた。小泉政権以来の自公政権が「米国の言いなり」になり、日本国民の利益ではなく、外国勢力の利益を優先して政策を運営してきたことを、根本から糺(ただ)す必要があることを強調した。

「セーフティーネットの再構築と強化」、「官僚利権の根絶」、「対米隷属を排除し自主独立外交を確立」、の三つの基本方針は麻生政権の基本方針に対する対論である。不況に際して財政政策を活用すべきは当然の判断であり、問題は政策の内容である。「誰のための政治であるか」が最も重要な視点だ。「政官業外電=悪徳ペンタゴン=利権互助会のための政治」を継続するのか、「一般国民の幸福実現のための政治」に転換するのか。「政権選択」で問われるのは、「CHANGE」を望むのか、いずれの政権を選択するのか、についての国民の判断である。

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2008年10月 5日 (日)

総選挙実施が麻生選挙管理内閣の役割

麻生政権は総選挙実施を先送りする気配を強めている。自民党の内部調査で自民党が惨敗する予測が得られたためだと見られる。自公政権は1年間に2度も政権を放り出した。有権者に対する背信行為だ。有権者は昨年7月の参議院選挙で自公政権に明確に「NO!」を突きつけた。そのなかで、国民の審判を受けずに3つ目の政権が作られた。民主党の小沢代表が指摘したように、政権担当能力の欠落を示した以上、自公政権は野党に政権を引き渡し、総選挙で国民の信を問うことが「憲政の常道」である。

自民党は日本経済の不況が深刻化し、世界金融恐慌のリスクが迫り、猛毒米の国内不正流通事件が広がるなかで、お祭り騒ぎの総裁選を3週間にわたって繰り広げた。「政権放り出し」の不祥事を自民党の宣伝活動に転用する言語道断の不適切な行動だった。そのなかで自民党執行部は、総裁選で自民党支持率を引き上げて解散総選挙になだれ込むとの意向を明確に示していた。

自民党の傍若無人の振る舞いに、多くの国民は強い憤りを禁じ得なかったが、総選挙により国民の信を問う方針が明確であったから、留飲を下げていたのだ。それが、政権を発足したところ、自民党支持率があまり上がらないから、総選挙を先送りというのは、あまりにも身勝手だ。

時間の経過にしたがって麻生政権の支持率は右肩下がりで下落すると予想されるから、総選挙の先送りは自民党にとって、とても得策には思えないが、日本国憲法第7条の「天皇の国事行為」としての衆議院の解散を、「私物化」するかのような麻生首相の姿勢は批判されるべきだ。

麻生首相は自民党総裁に就任した際の党大会でのあいさつで、「私も今ここに立ちます時に、少なくともこれは麻生太郎に与えられた天命だと思っております。私はその選挙(=総選挙)に勝って初めて天命を果たしたということになるんだと存じます」と述べて、総選挙に勝利して初めて、首相の地位に就くことが正当化されるとの趣旨の発言を示した。

日本経済の深刻な不況への突入、世界的な金融情勢の激動、年金、猛毒米、後期高齢者医療制度など、重要問題が山積している。これらの問題に腰を据えて対応するには、国民の信託を受けた本格政権でなければ不可能である。国民の審判を受けずに政権をたらい回ししてきたことに対する反省は、自民党も認めている。だからこそ、麻生首相は総選挙に勝って、初めて首相の地位が確かなものになると発言したのだ。

他方、自公政権は8月29日に緊急経済対策を決定し、1.8兆円の補正予算案を国会に提出した。小手先の個別対策で日本経済の方向を転換させることはとてもできないと考えられるが、無策で進むことはできないから、補正予算の対応は不可欠と考えられる。

こうした状況を踏まえて民主、社民、国民新党の三党は、衆議院解散の確約と引き換えに、補正予算の採決に応じる考えを麻生政権に繰り返し伝えている。いわゆる「話し合い解散」の提案だ。「政権放り出し」を繰り返し、国民に対して無責任な対応を続けてきた自公政権は、謙虚に「話し合い解散」提案を受けいれるべきだ。

それにもかかわらず麻生首相は、国会答弁で、「解散については私が決めさせていただきます」の発言を繰り返している。解散権は首相の大権だとされているが、その大前提は、首相が「公益」の視点から解散を決定することだ。首相が「私的利害」に基いて解散を好き勝手決定することを認めたものではない。

これまでの経緯を踏まえれば、首相が「権利、権利」と振りかざすのは筋違いであり、見苦しい。「権利」を主張するための前提は「義務」の実行である。無責任な政権運営を続けながら権利だけは「死んでも離さない」との姿勢は、国民の不信を買うばかりだ。自民党歴代政権の無責任極まりない対応に対する真摯な反省の気持ちを込めて、補正予算案採決後の衆議院解散の方針を明示するべきである。

補正予算について短期日の審議を実施して、与野党の主義主張の相違を明確にしたうえで、予算案を採決し、直ちに衆議院を解散すべきである。国民の意思を反映した政権を樹立したうえで、新しい本格政権が山積する難題に対応してゆくべきだ。

麻生首相は選挙管理内閣の首相であるとの就任当初の自覚を再確認すべきである。麻生政権が総選挙に勝利すれば、その段階で本格的な政策運営を始動させればよい。国民の審判を受けないまま、なし崩しで諸課題への対応を進めることは混乱を拡大させるだけで、問題が多い。政治の私物化は許されない。麻生政権の国会審議と解散総選挙に関する、私的利益優先の姿勢が国民の不信感を増幅している。

総選挙実施についての責任あるスタンス提示が求められる。

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2008年10月 3日 (金)

麻生政権①「政と官」癒着の構造

「政官業外電=悪徳ペンタゴン」=「利権互助会」が利権を死守するため、政権交代阻止に向けて、総力を注いでいる。攻撃の対象は民主党である。次期総選挙を想定する場合、小沢一郎氏が民主党代表として陣頭指揮を執り、民主党が結束して選挙戦に臨むことが与党にとって最大の脅威になる。自民党は小沢一郎代表の求心力を低下させるための工作活動を仕掛け続けてきた。

昨年の福田政権下での大連立構想は、民主党が受け入れれば、脅威を取り込むことができ、民主党が大連立提案を拒否すれば、小沢氏の求心力を低下させることができた。小沢氏の影響力を低下させるための謀略であった可能性が高い。

日銀総裁人事では、福田政権の最後の提案であった渡辺博史氏元財務省財務官の副総裁起用案は、自民党が民主党内の工作を進め、民主党の国会同意人事検討委員会の了解を取り付けつつ、他方、小沢代表が財務省からの天下りに反対の意向を有しているとの感触をつかみ、小沢代表の影響力を排除するための謀略が画策され、実行された可能性が高い。

NHKが単独インタビューの形態で小沢一郎氏を日曜討論に出演させ、渡辺氏人事案に反対の意向を語らせる一方で、民放では、テレビ朝日「サンデープロジェクト」が鳩山由紀夫民主党幹事長から渡辺氏人事容認と受け取れる言質を引き出した。小沢氏のNHKでの発言が民主党決定で否定されれば、小沢氏の影響力を排除できるとの謀略が画策されたものと考えられる。

複数候補による民主党代表選をメディアが執拗に誘導しようとしたのは、民主党代表選挙報道を通じて、小沢氏に対するネガティブ・キャンペーンを大々的に展開するためだった。対立候補が立候補すれば、必ず小沢氏批判と受け取れる発言を行う。報道は発言を針小棒大に報道し、小沢氏のイメージを徹底的に低下させようと待ち構えていた。また、財源問題、安全保障問題での党内対立を際立たせることが目的だった。

小沢代表の政治資金管理団体が不動産を所有していた問題も、小沢氏攻撃の材料として利用されている。新しい政治資金規正法では不動産の取得について規定が設けられたが、従来の法律には規定が存在していない。政治資金管理団体の不動産保有はまったく法的問題がないが、自民党は今後もこの問題を蒸し返す可能性がある。

すべての事項は、自民党が、小沢一郎氏が求心力を維持した民主党を心底恐れていることの表れである。政治権力に支配され、かつ迎合しているテレビメディアは、小沢氏のイメージを引き下げることに必死である。次の総理にふさわしいのは麻生氏か小沢氏かと質問すれば、首相に就任直後の麻生氏の数字が高いのは当たり前である。この数字を引き合いに出して、「国民人気の低い小沢一郎氏」のプロパガンダを懸命に流布している。

10月1日付記事「麻生首相代表質問VS小沢代表所信表明演説」に記述したように、自民党が総選挙日程を先送りする意思を固めたのは、自民党による選挙区調査で自民惨敗の予想を得たからだ。自民党は60年余にわたり、日本の政治権力を欲しいままにしてきたが、いよいよ退場の時を迎えつつある。断末魔の叫びをあげている。

自民党が急速に支持を失いつつある背景を示すのが、「政官業外電=悪徳ペンタゴン」=「利権互助会」である。かつての自民党も本質は変わらなかったが、一部に「あいまいさ」を残していた。「自営業者」、「農林漁業従事者」、「大企業従業員」、「地方名士および土木建設業者」に利権の一部を配分し、自民党支持者として取り込んでいた。

しかし、小泉政権は「あいまいさ」をすべて除去し、「官業外電」の利権と自民党が直結する政治を実行した。「外」=「外国資本」を利権集団に明確に組み込んだのは小泉政権である。「外」に重心を強くシフトさせ過ぎた部分が「売国政策」として表面化した。

「電」=マスメディアを完全支配したのも、小泉政権だった。テレビメディアから正論を主張する言論人はほとんど排除された。とりわけ「NHKの偏向」は顕著になっている。政権交代が実現した場合、「NHKの解体的な抜本改革」が最優先課題のひとつに位置付けられなければならない。

小沢一郎代表が10月1日に衆議院本会議の代表質問を行い、民主党政権の所信を表明したが、民主党は「政官業外電の利権互助会」に正面から対峙する姿勢を鮮明に示した。経済活動の結果得られる果実は、「資本」と「労働」に分配される。「資本」に有利な政策は必然的に「労働」には不利なものになる。自民党政権は「大資本」の側に立つ政策を実行してきたが、民主党は明確に「働く国民」の利益重視のスタンスを採用した。

「労働」の利益のみを追求し、企業が全滅すれば「働く国民」も共倒れになる。「企業」と「労働」は共存しなければならないが、小泉政権以来の自民党政権は「資本」の利益だけを追求したと言って間違いない。

「弱肉強食奨励」の「市場原理主義」は「セーフティーネット破壊」の原動力でもあった。年金・医療・介護の社会保障、高齢者、障害者、子育て世帯、一般労働者、農林漁業従事者、中小企業、に対するセーフティーネットが破壊され、国民生活が根底から揺らいでいる。民主党の政権公約は「一般国民の生活を防衛することが政治の役割である」との政治理念を、具体的政策に形を変えて示したものである。

「大資本」、「外資」、「権力と癒着したマスメディア」の利害の対極に位置するのが「一般国民」の利害であり、政治の対立軸がこれほど鮮明に、明確に示されたことはかつてなかったと言ってよい。

麻生政権は「官」とも「利権互助会」で結合している。

その明白な証左が三つ明らかになっている。

第一は「日本政策金融公庫」が「天下りパラダイス」として発足したこと。

第二は「日本政策投資銀行」「国際協力銀行」が「天下りパラダイス」として発足したこと。

第三は霞が関省庁が自民党の出先機関と化している動かぬ証拠が明らかになったことだ。

「日本政策金融公庫」は取締役22名のうち、11名が霞が関天下り官僚である。財務省元次官の細川興一氏、元財務官渡辺博史氏が副総裁に就任した。統合された各機関のプロパー職員出身の取締役は22名のうち6名にすぎない。

日本政策投資銀行、国際協力銀行についても、まったく同様だ。トップの総裁には民間人を起用しているが、実質的な権限は財務省天下り官僚の副総裁が握る。自民党総裁選で「霞が関をぶっ壊す」と、遠吠えのように叫んだ候補者がいたが、自民党は「特権官僚の天下り利権」を排除する考えをまったく持ち合わせていないことが、事実によって明らかにされた。

麻生政権が「官僚利権の排除」、「霞が関の無駄を排除したうえでの国民負担増加策検討」を主張するなら、まず、財務省から「日本政策金融公庫」、「日本政策投資銀行」、「国際協力銀行」への天下りを全面的に排除するべきだ。この三つの公的機関は「財務省の天下り御三家」なのである。民営化されれば、ますます国会の監視が届きにくくなる。財務省はJT(日本たばこ産業株式会社)においても、国民資産を利権の源として「天下り利権」を確保し続けている。

もうひとつの重大な問題は、野党から霞が関省庁への資料請求について、自民党が各省庁に対し、事前に自民党の国会対策委員会に相談せよとの要請をし、各省庁がその要請に従っていた事実だ。

三権分立に反する、重大な問題である。

国家公務員法は次の規定を置いている。

(政治的行為の制限)

第百二条  職員は、政党又は政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法を以てするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除く外、人事院規則で定める政治的行為をしてはならない。

野党からの資料請求に対する対応を、与党に事前相談するのは、国家公務員法の「政治的行為の制限」規定に明白に違反する行為であると考えられる。日本国憲法にも抵触すると考えられる自民党の行動は、国会で厳しく追及されなければならない。

私が大蔵省財政金融研究所で研究官として勤務した1985年から87年にかけて、当時の中曽根政権が「売上税」導入を国会にはかった。自民党が「売上税」導入の方針を決め、内閣が方針を閣議決定して、大蔵省は内閣の指揮の下で準備作業に取り組む。これが正しい手順である。

しかし、実際には自民党が発行した自民党と記載のある「売上税Q&A」と題するマニュアル本を、閣議決定よりもはるかに早い段階で執筆、制作したのは大蔵省だった。私の直属の上司は、「このような行動は憲法違反であるので、決して口外しないように」と私に注意した。上司の人物を特定することもできる。

霞が関と自民党は一体となって行動していたのだが、大蔵省官僚が明言したように、これは明らかに「憲法違反」である。

「政官業外電のペンタゴン」が癒着して、一般国民を不幸にする政治を一掃しなければならない。多くの国民が自分たちが粗末に扱われ、不幸にさせられているのに、自民党を支持している。国民は目を覚まさなければならない。目を覚まし、現実を直視すれば、何をすべきかが見えてくる。政治を国民の手に取り戻さなければならない。「官僚がすべてを仕切り、官僚の利権を温存する政治」が国民を不幸にしている。

政権交代を勝ち取り、「国民を幸福にする政治」を実現しなければならない。

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2008年10月 2日 (木)

威風堂々の民主党小沢代表所信表明演説

10月2日に行われた衆議院の代表質問で、小沢一郎民主党代表は、民主党が政権を担うことを踏まえた所信を表明した。麻生太郎首相は、所信表明で提示した民主党への質問に対する十分な答弁が民主党から得られなかったとの不満を表明した。

偏向メディアの大半は事実を正確に伝えないが、小沢代表の演説は、民主党の政権公約を明確に示すものであり、極めて内容の濃いものだった。代表質問で野党が所信を表明するのは変則的な行動だが、これは、麻生首相が所信表明で代表質問を行ったことに対する「意趣返し」であり、麻生氏が苦情を申し立てるのは筋違いである。

麻生氏の所信表明演説は、民主党への誹謗(ひぼう)中傷に終始する、聞くに堪えないものだった。鳩山由紀夫民主党幹事長が指摘したように、「品格を欠いた」演説だった。鳩山幹事長は、野党には答弁権が認められておらず、代表質問のなかで答弁しろと言うのなら、答弁時間を確保するべきであると発言したが、当然の主張である。

小沢代表は、「首相の省所信表明とは首相の政治理念とビジョンや政策を明らかにするものである」と述べた。小沢氏の所信表明は、政治理念、ビジョン、政策を明確に示すものであったが、麻生氏の所信表明演説には、明白な理念も具体的なビジョンも政策も、まったく示されていなかった。

与党と野党が逆転した所信表明、代表質問だった。国会では、各政党が異なる主義主張を正面から提示して、「建設的な」論戦を交わすことが期待される。民主党の小沢代表が威風堂々と党としての政治理念、ビジョンと政策を具体的に提示したのに対して、麻生首相の発言は民主党に対する誹謗と中傷に終始したのであり、どちらの行動に非があるのかは明白だ。

民主党の小沢代表は総選挙に向けての「政権公約=マニフェスト」の骨格を、国民に向けて発表した。小沢代表は「国民の皆様」と表現するが、麻生首相は「国民」、あるいは「国民の皆さん」と表現する。国民に対する基本姿勢にも両者には大きな隔たりがある。

小沢代表が発表した基本政策案の柱は、

①年金・医療・介護、

②子育て・教育、

③雇用、

④農林漁業・中小企業、

⑤生活コスト

の5分野でセーフティーネットを作り、財政構造の転換、国民主導政治の実現、真の地方分権により日本の統治機構を根本改革し、地球に貢献する国にするというビジョンである。

民主党は総選挙のマニフェスト(政権公約)を取りまとめ、「新しい生活をつくる五つの約束」を中心とする政策公約の骨格を発表した。

「五つの約束」の概要は以下の通りだ。

①官僚の天下りと「税金の無駄遣い」をなくし、税金を国民の手に取り戻すこと。

国から地方への「ひも付き補助金」は廃止し、地方に自主財源として一括交付する。

特別会計、独立行政法人などは原則廃止する。

2009年度に8.4兆円、10年度と11年度はそれぞれ14兆円、12年度には総予算の1割の20.5兆円の新財源を生み出す。

②年金加入者全員に「年金通帳」を交付し、「消えない年金」、「消されない年金」に改める。年齢で国民を差別する後期高齢者医療制度は廃止し、被用者保険と国民健康保険を段階的に統合し、将来の一元化を目指す。

③子育ての心配をなくし、みなに教育のチャンスを作るため、子ども一人当たり月額2万6千円の「子ども手当」を中学卒業まで支給する。公立高校の授業料を無料化し、私立高校、大学も学費負担を軽減する。

④雇用の不平等をなくし、まじめに働く人が報われるようにする。パートや契約社員を正規社員と均等待遇にし、2ヵ月以内の派遣労働を禁止する。中小企業を支援しながら、最低賃金の全国平均を時給千円に引き上げる。

⑤農林漁業の生活不安をなくし、食と地域を再生する。農業の個別所得補償制度を創設、林業と漁業でも検討する。食品安全行政を総点検、一元化し、食の安全を確実にする。中小企業は法人税率の原則半減などで再生させる。

 新政権の初の予算編成となる第一段階の2009年度には、ガソリン税などの暫定税率を廃止し、2.6兆円の減税を実施。高速道路無料化、子ども手当などは09年度に一部実施し、第二段階の10-11年度に完全実施する。農業の戸別所得補償制度は10年度から一部実施、第三段階の12年度に完全実施する。消費税の税収全額を財源として、最低保障年金を確立する年金改革は、3年かけて制度設計などをし、12年度に実施する。

 外交・安全保障の基本方針の第一の原則は日米同盟の維持・発展である。同盟とは対等関係であり、米国の言うままに追随するのは同盟とは言えない。米国と対等のパートナーシップを確立し、より強固な日米関係を築く。

 第二の原則は、アジア・太平洋諸国と本当の友好・信頼関係を構築すること。特に日韓、日中関係の強化は日本が平和と繁栄を続けていくうえで極めて重要である。

 第三の原則は、日本の安全保障は日米同盟を基軸としつつ、最終的には国連の平和維持活動によって担保されるということ。日米同盟と国連中心主義は矛盾しない。

 以上が、小沢代表が明らかにした、民主党の政権公約、ビジョン、政策の具体的内容だ。極めて分かりやすく、かつ具体的に内容が示されている。

 小沢代表は当面の政局について、日本の進路について各党の主張を明確にしたうえで、速やかに総選挙を実施し、国民の審判を仰ぐ必要がある、国民の支持を得た政権がリーダーシップを発揮して金融危機などに対処するのが「憲政の常道」である、と発言し、代表質問を締めくくった。

 私は、次期総選挙の争点が以下の三点であると訴え続けてきた。

①弱肉強食奨励VSセーフティーネット強化

②官僚利権死守VS官僚利権根絶

③対米隷属VS独立自尊

 小沢代表が明示した、民主党の政権公約には、この三つの政策方針がもれなく、明確に示されている。

①年金・医療・介護、②子育て・教育、③雇用、④農林漁業・中小企業、⑤生活コスト、の5分野のセーフティーネット整備が①の争点に対応する政策である。

 天下りの全面禁止、特別会計、独立行政法人の廃止は②の争点に対応する。

 日米同盟を基軸に据えつつも、米国の言いなりになる外交から決別し、アジア諸国との関係をも強化し、対等な日米関係を構築するとの方針は、③の独立自尊外交方針に対応する。

 私は拙著『知られざる真実-勾留地にて-』第三章「不撓不屈」5「望ましい政治」(182ページ-194ページ)に、望ましい政治のあり方についての「7つの提案」を記述した。民主党の政権公約には、そのほぼすべてが盛り込まれたと感じている。

 小泉政権以来の自公政権が突き進めた「市場原理主義」=「新自由主義」に基づく政策路線が生み出してきた「弱肉強食」=「格差拡大」=「セーフティーネット破壊」による「国民生活破壊」に対する、明確な対論が正々堂々と示されたことを大変喜ばしく思う。

 「政官業外電の悪徳ペンタゴン」が「利権互助会」を形成し、一般国民を食いものにして、利権の甘い汁を吸い尽くしてきた構造に、抜本的なメスを入れ、政治の構造、統治機構を全面的に再構築する提案を民主党は提示したのである。社会民主党、国民新党と強力な共闘体制を構築し、総選挙で勝利を収め、新しい日本の政治状況を生み出すことが強く求められる。

 共産党は総選挙に向けて、民主党との相違を強調する戦術を示す構えを示しているが、民主党との違いを強調する戦術が、自公政権の政権延命に手を貸す結果につながりかねない点に十分、留意する必要があると思われる。「特権官僚・大資本・外国資本・政治屋」プラス「偏向メディア」の利権維持に加担することは、共産党の目指す方向と矛盾すると感じられるからだ。

 NHKの定時ニュースは、小沢代表の代表質問での発言内容の主要部分をまったく放送しなかった。NHKの偏向は国会で重要問題として取り上げるべき段階に至っていると考えられる。NHK政治部の「政治化」問題を、民主党は国会で本格的に取り上げる必要がある。政権交代が実現した段階で、「NHKの解体的抜本改革」を速やかに実施する必要があると考える。

 日本の言論空間が「開かれた、自由な」ものであるなら、麻生首相の所信表明演説と小沢民主党代表の代表質問を、正当に評価する論評が一斉に示されるはずである。客観的に見て、横綱の小沢代表と格下の麻生首相の感は否めない。自民党に好意的な論評が存在することは順当だが、小沢代表の発言を高く評価する論評が多数提示されるのが当然と思われる。マスメディア報道の大半が、民主党に対する肯定的評価を極力抑制している点に、日本の言論空間の閉塞性、「ファッショ化」が如実に表れている。

 草の根からの情報発信に全力をあげなければならない。「政権交代」を実現し、「利権互助会の利権を死守するための政治」を「国民の生活を第一と考える、国民を幸福にするための政治」に転換しなければならない。いよいよ決戦の火ぶたが切って落とされる。緊張感を維持して戦いに臨まなければならない。

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2008年10月 1日 (水)

麻生首相代表質問VS小沢代表所信表明演説

麻生太郎首相が9月29日、所信表明演説を行ったが、経済運営の具体的方針、目指すべき日本のビジョンがまったく示されなかった。鳩山由紀夫民主党幹事長の論評通り、「野党の代表質問」だった。

所信表明演説の冒頭、麻生氏は次のように述べた。

「わたくし麻生太郎、この度、国権の最高機関による指名、かしこくも、御名御璽(ぎょめいぎょじ)をいただき、第92代内閣総理大臣に就任いたしました。

(中略)

この言葉よ、届けと念じます。ともすれば、元気を失いがちなお年寄り、若者、いや全国民の皆さん方のもとに。」

御名御璽(ぎょめいぎょじ)とは、君主の名前(の署名)および公印のことを指して公的に用いられる呼称で、教育勅語の末尾にも見られる表現だ。時代錯誤も甚だしい。民主主義国家日本の首相に就任したのではなく、大日本帝国憲法下にある立憲君主制国家の首相に任命されたものと考えているのか。皇室と姻戚関係を持つことを、広く国民に知って欲しいとの希望の表明なのだろうか。

麻生首相の所信表明演説の動画を「カナダde日本語」様が掲載してくれているので、ご高覧賜りたい。冒頭のひと言からも、麻生氏の目線の位置が推し量られる。1979年の総選挙に立候補した際の立会演説会で、麻生氏が「下々の皆さん」とあいさつしたエピソードは有名だが、「優劣意識」の強さは「強い劣等感」の裏返しだと感じられる。中島敦『山月記』にある「臆病な自尊心」と言うべきだろう。

小泉政権以来の「市場原理主義政策」によって、日本社会は荒廃した。「非正規雇用や働く貧困層」の激増は、日本の若者の活力と未来への夢を奪っている。戦後の復興と発展に尽力した高齢者は、「姥捨て山制度」の「後期高齢者医療制度」の屈辱に直面させられている。ハンディキャップを背負った障害者に対する「障害者自立支援法」による政府支出削減は、国民の生存権を深刻に脅かしている。

「市場原理主義」は本家の米国でも破綻を示し、世界経済は深刻な不況に突入しようとしている。国民の不安は拡大し、政府に対する不信感は日増しに強くなっている。その国民の心情を、国民の立場に立って考えるのが、リーダーの務めだ。リーダーには、国民の心情を慮(おもんぱか)る「想像力」が求められるが、「下々」とは対極の「高み」にいることを「プライド」と勘違いしている麻生氏に、それを期待することは難しい。

「この言葉よ、届けと念じます。ともすれば、元気を失いがちなお年寄り、若者、いや全国民の皆さん方のもとに」の言葉に、麻生氏の潜在意識が集約して示されている。「届けと念じる」のは、麻生氏が「自分は国民から遠く離れた存在である」と考えているからだ。「国民の一人」ではなく、麻生氏は自分自身を「下々の一般国民とは離れた所に位置する」と考えたいのだと思う。

「ともすれば、元気を失いがちなお年寄り、若者、いや全国民の皆さん」の表現を聞き流すこともできない。

「元気を失いがちな国民」の表現も、「国民の問題」を「自分の問題」とは捉えていないことを如実に示している。福田前首相同様、麻生氏にとっても「国民の生活」は「他人事」に過ぎないことを示している。

また、「元気を失いがちな」の表現は、「国民が元気を失う傾向を有する」との麻生氏の「観察」を示すのだが、国民が原因もなく、勝手に「元気を失っている」わけがない。「国民が元気を失っている」と観察するなら、「国民が元気を失っている」原因は何であるのか、との考察に、なぜ思いを巡らせないのだろう。

麻生氏が中枢に存在し続けた、小泉政権以来の自公政権が国民生活を破壊してきたことについて、最低限の自責の念を抱くなら、「ともすれば、元気を失いがちな」の言い回しを、口にはできないはずだ。

治療に失敗し続けて、病状を悪化させてしまった患者に対して、担当医が「ともすれば、病状が悪化しがちな患者に、この声よ、届けと念じたい。患者は元気にならねばなりません、と」と、発言しているようなものだ。

国民生活に対する政治の責任への自覚が微塵(みじん)も存在しないことがよく分かる。「国民が元気を失っている」なら、「政治のどこに問題があったのか」を自省し、「国民が元気になれる」ために、「何をすればよいか」をじっくりと考えることが政治家の務めであるはずだ。

小泉政権以来の自公政権の政治が、国民生活を疲弊させ、国民を不安と絶望の境遇に追い込んだことに対する自覚と反省が欠如している。

麻生氏は政治の停滞を「民主党の責任」だと言わんばかりの発言を繰り返したが、聞くに堪えないものだった。政治の意思決定が困難になっている原因は、「衆参ねじれ」にある。参議院の野党多数議席は国民が選挙で付与したものだ。野党の主張、行動は国民の声を代弁するものだ。

自公政権が政権として存在できるのも、国民が衆議院で与党に多数議席を付与しているからだ。政治の意思決定権限を持っているのは、国民なのだ。日本国憲法は「国民主権」を明確に定めている。国民の意思表示によって、参議院における野党の過半数確保が生じたことを踏まえれば、衆議院で多数を確保しているとはいえ、政権与党は参議院を支配する野党の意向を最大限、尊重する責務を負っている。

野党に対する礼を失した暴言、批判は、有権者を冒涜(ぼうとく)するものである。民主主義は多様な意見、主義主張の存在を認め、少数意見をも尊重しながら、討論と説得のプロセスを重視し、最終的には多数決で意思決定を実現する政治の仕組みだ。

麻生首相は自公政権を代表して、自公政権の目指す政策の方向、未来への国のビジョンを示すべきであった。総選挙を意識した、品格なき誹謗(ひぼう)中傷の言葉だけを盛り込んだ演説は、民主党の品格ではなく、自民党の品格を著しく引き下げたことを忘れてはならない。

麻生氏は民主党の政権公約の「財源」を問題にする。しかし、民主党は「財源」問題について、具体的かつ詳細な裏付けを明示しつつある。民主党は大きな財源を捻出して、一般国民に対するサービス、施策、プラグラムを充実させることを提案しているが、その基本構造は「政府内部の無駄を排除して、国民生活向上に向けての施策に再配分する」ことだ。

民主党は「官僚の天下り利権根絶」をマニフェストに明記する。自公政権には絶対に示すことができない政策である。これまで官僚が死守してきた「天下り利権」に初めて本格的なメスが入れられようとしているのだ。「天下り利権根絶」は私の20年来の持論である。私の持論を民主党が全面採用してくれたことを、非常に喜ばしく思う。

「政権交代」が実現すれば、初めて「山は動く」のだ。

官僚機構は「天下り利権死守」に向けて、総力を結集してくる。「政官業外電の悪徳ペンタゴン」は「政権交代阻止」に向けて、手段を選ばず、攻撃してくる。解散総選挙日程が先送りされる可能性が高まったのは、自民党の選挙区調査で「政権交代」予測が明らかになったからだ。

総選挙の争点は、

①弱肉強食奨励VSセーフティーネット強化

②官僚利権死守VS官僚利権根絶

③対米隷属VS独立自尊

の三点だ。民主党の①セーフティーネット強化策の財源は、②官僚利権根絶、から捻出される。具体的かつ現実実現性の高い財源論が示されつつある。

偏向NHKをはじめとするマスメディアは、「政官業外電=悪徳ペンタゴン」の広報部隊として、総選挙に向けて、民主党政権公約の財源問題を集中攻撃する。しかし、ひるむことはまったくない。民主党は堂々と財源問題を明確に示すべきだ。

「官僚・大資本・マスゴミ・外資+政治屋」が利権互助会を形成し、一般国民を食いものにしてきた政治を「CHANGE」しなければならない。「CHANGE」は「政権交代」である。10月1日の代表質問では、小沢一郎民主党代表による「所信表明」が示される。日本の新しい時代の幕開けを告げる演説になると考える。

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