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2008年9月22日 (月)

小沢一郎民主党代表VS麻生太郎自民党総裁

9月21日、民主党は臨時党大会を開き、小沢一郎代表の無投票3選を正式に承認した。小沢代表は所信表明演説で、9項目からなる政権構想打ち出すとともに、自公政権について「市場万能、弱肉強食の政治を進めた結果、日本社会は公正さが失われ、格差が拡大した」と厳しく批判した。「今こそ日本を変えるときだ。変えるラストチャンスと言っても過言でない」と述べ、次期衆院選での政権獲得に強い決意を表明した。

一方、福田首相が9月1日に突然、政権を放り出したことに伴って実施されることになった自民党総裁選は、9月22日に実施され、麻生太郎前幹事長が総裁に選出された。

内外の重要問題が山積するなかで、福田首相が突然、無責任極まりなく政権を放り出したことに伴う総裁選であることを踏まえれば、自民党総裁選は、本来、密やかに、しかも短期日のうちに実施すべきだった。しかし、政権喪失の危機に直面する自民党は、総裁選を支持率回復の広告宣伝活動に利用する戦術を採用した。

自公政権に支配されるマスメディアは自民党総裁選を過剰報道し、総裁選を祭り騒ぎに仕立てたが、有権者に好感されたのかどうかは疑わしい。自民党総裁選報道では、自民党総裁候補者の民主党に対する誹謗中傷の発言が垂れ流されたが、「政治的な中立」を規定する「放送法第3条」に抵触する疑いが濃厚である。

また、石原伸晃氏などは、立会演説会で「衆議院選挙に立候補した石原伸晃です」と挨拶したが、各候補者の行動は総選挙の事前運動の色彩が濃厚であり、「公職選挙法」に抵触するのではないかと指摘されている。

自民党総裁選後に衆議院が解散され、総選挙が実施される見通しが強まっている。しかし、麻生太郎氏は8月29日に決定された「緊急経済対策」を実施するための「補正予算」の早期成立を求めている。自民党総裁選後の9月24日に召集される臨時国会では、9月29日に新首相の所信表明演説が行われる見通しだ。

その後、衆参両院で代表質問を実施し、短期日の補正予算審議を行ったのち、補正予算を成立させたうえで、衆議院が解散される可能性が高まっている。すでに民主党は補正予算を早期成立させたうえで衆議院を解散する「話し合い解散」を自民党に提案しており、自民党は民主党の建設的な提案を受け入れるべきだ。

この場合、11月9日が投票日になる可能性が高い。一部に、麻生太郎新首相が解散総選挙を年明けまで先送りするのではないかとの憶測があるが、新政権発足時の内閣支持率が非常に低くなければ、早期に解散総選挙が実施される可能性が高い。

自公政権は国会で追及される多くの問題を抱えており、国会審議の時間が長くなれば、政権支持率が低下する可能性が高い。また、新政権閣僚の政治資金スキャンダルが表面化することも予想され、与党は早期の総選挙実施が得策であると考えていると思われる。

麻生太郎政権は「景気回復」を前面に掲げ、「財政バラマキ」を政策の基軸に据えて総選挙に臨む可能性が高い。2011年度の財政再建目標達成は棚上げされる見通しだ。

「緊縮財政」から「バラマキ財政」に路線を転換する意味では、「小泉改革」路線から決別することになるが、「小泉改革」路線の基本方針は継承される。具体的には、

①「弱肉強食」奨励=「市場原理主義」=「セーフティーネット破壊」

②「天下り」=「官僚利権」温存

③「対米隷属」外交方針

の基本三方針が堅持される。

財政運営が「緊縮」から「バラマキ」に転換される点が、最大の路線修正点になる。選挙を目前に控え、「バラマキ」により有権者の投票を誘導する発想は「買収」に通じるものがあるが、有権者は麻生氏がどのような「政治理念」を持ち、どのような「政治のあり方」を実現しようとしているのかを見極める必要がある。

麻生氏はかつて、「創氏改名は朝鮮人が望んだ」と発言したことがあった。外交路線において、安倍晋三元首相、中川昭一元自民党政調会長などに近く、中国や韓国に対する強硬路線を示している。

また、麻生氏が野中広務元自民党幹事長に対して差別的な発言を行ったことを野中氏が自民党総務会で指摘したことが知られているが、麻生氏はこの件について、野中氏に明確な反論を示していない。

また、2007年7月には、日本と中国の米の価格について、「どっちが高いかは、認知症患者でも分かる」と発言して物議を醸した。総裁選期間中も、集中豪雨による洪水被害が発生したことについて、「岡崎でよかった」と発言した。首相に就任する者には、当然のことながら、高い人権意識が求められるが、麻生氏の人権意識に対する疑念は強い。

「景気対策」も国民目線からの提案ではなく、総選挙対策として提唱されているとしか考えられない。麻生氏が「財政健全化は手段であって目的ではない。景気回復を実現することが優先される」との主張を政治信条、信念として位置付けるなら、なぜ小泉政権以来の政権の主要ポストに在職しているときに、その主張を示さなかったのか。

小泉政権は「財政再建」を文字通り「目的」に位置付け、「国民生活」を犠牲にしての「赤字削減」に突き進もうとした。麻生氏が小泉首相の政策路線に対して堂々と反論を展開した事実は存在しない。政権内部で重要なポストを維持することが「政治信条」より優先されたのではないか。「公益」よりも「私的な利益」を優先する行動様式が如実に示されている。

麻生氏の頭の中は、「政権を絶対に民主党に渡したくない」との考えで一杯なのだと思う。小泉政権以来の政策方針のどこにどのような問題があったのかをじっくりと考え、政策運営の基本理念を根本から見直す姿勢がまったく感じられない。

「自民党は開かれた政党であり、どっかの政党のように出たいやつを出させないことはしない」との発言に示されるように、対立政党を口汚くののしり、「後期高齢者医療制度」が国民に不人気であると知れば、これまでの政権与党としての行動に対する責任に言及することなく、「制度見直し論」に飛びついてしまう。また、小泉政権の主要閣僚として「弱肉強食政策」、「景気悪化促進政策」を推進してきたことを忘れたかのように、「景気重視・財政政策発動」の方針をふりかざす。

「後期高齢者医療制度」見直し論についても、これまで同制度を絶賛し、とてつもない国費を投入してきた政府が方針を転換するなら、根本的な責任明確化がまず求められる。責任論に言及しない制度見直し論は「勝手気ままな悪たれ二代目三代目」の言動と批判されても反論できないだろう。

麻生氏は安倍氏、福田氏の「政権放り出し」についても「謝罪」の言葉を明確に示さない。安倍氏は「病気」だったと正当化し、福田氏の場合は、政府提案に反対した民主党が悪いと言わんばかりの主張を繰り返した。

安倍氏が病気だったなら、参議院選挙後の適切な時期を見計らって辞任表明すべきだった。施政方針演説を行い、代表質問直前に突如辞任を表明したことを麻生氏は正当化するのか。民主党が民主党の理念と哲学にしたがって政府案に反対するのは当然のことだ。野党が反対するから政権を放り出すのが当然と麻生氏が考えるなら、麻生氏も首相に就任することを辞退するべきだ。

福田首相辞任、総裁選、総裁選出の一連の流れから、「清冽な流れ」がまったく感じられないことが非常に残念だ。自民党が政権喪失の危機に直面して、焦燥感にかられていることはよく分かる。しかし、自民党が窮地に追い込まれているのは、自民党が推進してきた政策に最大の原因がある。

「障害者自立支援法」、「年金記録」、「ガソリン税率」、「後期高齢者医療制度」、「猛毒米流通事件」、「非正規雇用労働者激増」、「ワーキングプア激増」、これらのすべての問題に対する自民党の対応が国民の怒りを招いているのだ。

現実を直視し、非を非として認め、過ちをどのように是正してゆくのかを、謙虚に思慮深く国民に訴えかけるなら、国民の多くが耳を傾けるだろう。しかし、自民党にその姿勢はまったく感じられない。与謝野馨氏の言動には辛うじて政治家としての品格が感じられたが、他の総裁選候補者からは謙虚な姿勢がまったく感じられなかった。

これまでの自民党政治を実行した政権の枢軸に位置し続けた麻生氏が、これまでの政策を「他人事」のように取り扱い、総選挙での得票を誘導するための軽薄な主張を大風呂敷に広げるなら、麻生氏は有権者の厳しい審判を受けることになるだろう。

反対勢力に対する敬意と尊重の姿勢を持ち、建設的な提言を闘わせるのが、政治家による政治論争の望ましい姿だ。自らの誤りを直視もせずに、口汚く敵対勢力をののしる政治手法の延長上に、明るい日本社会の未来は見えてこない。

すべてを刷新すべき時期が来た。自民党にはもはや政権担当能力がない。「格差がなく、公正で、ともに生きてゆける社会」を新たに構築しなければならない。「特定の人々の利権を死守しようとする政治」を排除して、「国民本位の政権」を作らなければならない。

「悪徳ペンタゴン」の一角を占めるマスメディアは「偏向報道」に明け暮れるが、「真実」を見抜く市民が連携して、「真実の情報」を伝達し、「悪政」を打倒しなければならない。本当の戦いはこれから本番を迎える。日本の未来のために、心ある者が全力を注いで戦いに挑まなければならない。

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