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2008年9月26日 (金)

「話し合い解散」受諾が最低限の良識

民主、社民、国民新党の野党3党は、9月25日の与野党国会対策委員長会談で、2008年度補正予算案について衆参各2日間の審議で採決に応じる代わりに、速やかに衆院解散・総選挙を実施するよう与党側に正式に申し入れた

麻生首相は衆議院の解散総選挙に先立つ補正予算の早期成立を求めており、野党は与党の主張を受け入れた。野党は補正予算の決議を先延ばししないことを確約しており、自民党は野党が提示した「話し合い解散」を拒絶する大義名分を失った。

麻生首相は、福田政権下での国会論議の紛糾の原因が、与党提案に反対する野党の行動にあると主張しているが、与党と野党は選挙に際して、異なる主張、政策公約を掲げており、国会論戦のなかで、野党の主張が与党の主張と一致しないのは当然だ。

野党は与党が提案する補正予算案に反対すると予想されるが、予算案決議については日本国憲法が衆議院の優越を定めており、参議院が政府予算案を否決しても、衆議院の議決により、補正予算は成立する。野党は不況下での国民生活に配慮し、補正予算の成立を実質的に認める一方、衆参両院の予算委員会での必要最小限の審議を求める提案を示したのであり、与党がこの建設的な野党提案を拒絶するには、正当な説得力のある説明が必要になる。

そもそも国政が混乱している最大の理由は、福田首相が突然、無責任極まりなく政権を放り出したことにある。1年前の安倍首相と合わせ、1年間に2度も首相が職場放棄する失態が演じられ、その結果、政治に巨大な空白が生まれた。自民党は、「政権放り出し」の不祥事に伴う自民党総裁選を、衆議院選挙の事前運動に転用する言語道断の行動を示し、自民党総裁選早期実施の環境を作り出してきた。

安倍、福田、麻生の三代の政権は総選挙による国民の審判を仰いでいないから、早期に総選挙を実施し、国民の信を問うべきことは当然だ。これらの事情を踏まえれば、野党の建設的な提案を受け入れて、自公政権は「話し合い解散」の提案を受諾することを早急に明らかにすべきである。

総選挙の争点は、

①経済政策運営の基本理念

②官僚主権構造の是非

③対米隷属外交の是非

の三点になる。

 麻生政権は「景気回復を目的とする財政政策発動」を主張しているが、民主党が提示している施策は「景気回復政策」を兼ねている。「景気回復政策の是非」は総選挙での争点にはならない。

 問われるのは、どのような政策理念、国家観、哲学の下に経済政策を運営するのかだ。具体的な政策提案は、明確なビジョン、理念の下に示される必要がある。小泉政権以来の自公政権は「市場万能主義=弱肉強食奨励=格差拡大=セーフティーネット破壊」の「新自由主義」を基軸に据えて、経済政策を推進した。

 その結果、日本社会は中国、ロシア、米国に次ぐ世界第4位の「格差大国」になり、労働者の3人に1人が非正規雇用労働者に転落させられた。年間所得が200万円に達しない「働く貧困層」は、国税庁の「民間給与実態統計調査」によると、2005年には、民間給与所得者4494万の37.6%にあたる1692万人に達している。

 大資本、外国資本を優遇し、一般国民を地獄に追い込んできた「政官業外電=利権互助会の利益を追求する政治」の是非が、次期総選挙で問われる。選挙を目前に控えて、麻生政権は「中小企業向け融資の拡充」、「中低所得者層を対象とする定額減税」を提案するが、政策運営の基本理念が転換されるわけではない。

 民主党の小沢一郎代表が政権公約のなかで明示した、

①年金制度一元化、

②基礎(最低保障)年金部分の全額税財源化

③後期高齢者医療制度の廃止、

④医療保険制度の一元化

⑤子供1人当たり月額2.6万円の「子供手当て」

⑥公立高校の授業料無料化、大学奨学金制度拡充

⑦農業者への「個別所得補償制度」

⑧高速道路無料化

⑨ガソリン、軽油の暫定税率廃止

の各施策はすべて、「制度変更を伴う支出」=「プログラム支出」の拡充であり、透明で、公正な「セーフティーネット強化」策である。

 財務省が推進してきた「歳出削減」では、①公共事業、②社会保障給付、③地方交付金、の三つが「歳出削減御三家」として、「歳出削減」のターゲットとされてきた。財務省や政治家の「権力の源泉」は「予算配分権」にある。「裁量的な支出」が「権力の源泉」になる。財務省は、「セーフティーネット支出」=「プログラム支出」を徹底的に削減し、「裁量的な支出」のウェイトを引き上げることに注力してきた。

 麻生政権が「景気回復ための財政政策出動」を検討する場合、その中心が「裁量支出」になることは明白だ。国民生活を安定させ、一般国民の生活の安心を生み出す「セーフティーネット強化」には、まったく関心が示されないと思われる。

 「プログラム支出」VS「裁量支出」が、財政政策の基本理念を判定する、もっとも分かりやすい基準になる。「国民生活の安定を目的とする財政支出」と「政治家や財務省の利権拡大を目的とする財政支出」とは「似て非なるもの」なのだ。

 総選挙のより重要な争点は、「官僚主権構造」を温存するのか、廃絶するのかの対立だ。「特権官僚」の利権を温存するのか、根絶するのかの相違は、「天下り制度」に対する取り組みによって、誰の目にも明らかになる。

 民主党は「天下りの全面禁止」を明確に政権公約に盛り込んだ。自公政権は「人材センタ-」創設などの「小手先の目くらまし政策」を掲げても、「天下り根絶」を絶対に示せない。自公政権そのものが「官僚機構が政策決定の支配権を握る政治体制」であり、自公政権に「天下り」を根絶する考えは存在しない。

 小泉政権の5年半に、官僚機構の中軸に位置する「財務省」の権益は格段に強まった。小泉元首相が代表的な「大蔵族・財務族議員」であり、小泉元首相が財務省利権を徹底的に擁護したからだ。

 麻生首相は小泉政権以来の「財務省利権擁護」のスタンスを完全に継承していると見られる。麻生政権では、中川昭一財務相が金融相を兼務することになったが、財務省と金融庁の再統合は、財務省の悲願である。日銀総裁人事に如実に示されたように、自公政権は財務省が実権を握る、「官僚主権構造」に手も足も出せないのだ。

 福田政権の政権末期の9月22日、10月1日に発足する「株式会社日本政策金融公庫」の創立総会が開かれ、初代副総裁に元財務省事務次官の細川興一氏と元財務省財務官の渡辺博史氏を選出した。22名の経営陣のうち11名が中央官庁出身者で占められた。

 日本政策投資銀行、国際協力銀行、日本政策金融公庫の3機関が財務省の「天下り御三家」である。「官僚利権排除」、「無駄ゼロ政策」などと言いながら、天下り利権の中核である、「財務省天下り利権」は完全擁護されている。麻生首相が「天下り根絶」について、前向きの考えをわずかでも保持しているなら、まず、「日本政策金融公庫」の経営者人事を差し替えるべきだ。

 一般国民には、「年金記録消失」、「年金記録改ざん」、「障害者自立支援法」、「後期高齢者医療制度」、「年金保険料率引き上げ」、「医療保険料率引き上げ」、「医療窓口本人負担増加」、「非正規雇用者激増」、「働く貧困層激増」、「生活保護削減」、「消費税増税方針」などの施策で、「地獄の苦しみ」を与えておきながら、「特権官僚の天下り利権」には、まったく手を入れようとしないのが、自公政権の現実なのだ。

 政治を「政官業外電=悪徳ペンタゴン」の手から、国民の手に取り戻さなければ、いつまでたっても国民に幸福は訪れない。「国民を苦しめ、特定の利権集団だけが甘い汁を吸う現在の日本の政治状況」を打破するには、「政権交代」がどうしても必要だ。「政権交代」実現により、「官僚主権構造」を「国民主権構造」に転換することが、総選挙の最大の目標である。

 麻生新首相が日本国民ではなく、米国に忠誠を示していることは、これまでの発言、歴史的系譜から明らかだ。アジア諸国に対する挑発的な言動も、恒久平和を希求する日本国民の要請と相容れない。日本は米国の隷属国ではない。経済政策運営においても、日本国民の幸福を追求する視点から、米国に対して日本の主張を明示しなければならない。

 民主党と国民新党が「郵政民営化見直し」方針で合意した。「郵政民営化」の延長上に、外国資本による日本国民の優良資産収奪の謀略が隠されていることは明白だ。両党が合意を成立させたことは正当であり、政権交代を実現させて、悪事の進行を凍結しなければならない。

 総選挙で国民が誤りなく「政権選択」を示すことができるには、総選挙の争点が明らかにされることが不可欠である。次期総選挙では、上述した

①「弱肉強食奨励」VS「セーフティーネット重視」

②「官僚利権温存」VS「官僚利権根絶」

③「対米隷属外交」VS「独立自尊外交」

の3点が基本争点になることを明確にすることが求められる。

 また、臨時国会での論戦においては、「後期高齢者医療制度」、「猛毒米流通事件」、「年期記録改ざん問題」について、限られた時間ではあるが、徹底的な論議が求められる。自民党は自民党が輩出した総理大臣が2代続けて、無責任極まりない「政権放り出し」を演じ、大きな政治空白を生み出し、国民に多大の迷惑をかけたことを厳粛に受け止めなければならない。せめてもの償いとして、野党の建設的な「話し合い解散」提案を素直に受け入れるべきだ。この期に及んでの傍若無人の身勝手な振る舞いは許されないことを認識するべきだ。

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